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平成31年版
地方財政白書
(平成29年度決算)

4 地域の安全・安心の確保

(1)防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に基づく事業への対応

近年の豪雨、高潮、暴風・波浪、地震、豪雪など、気候変動の影響等による気象の急激な変化や自然災害の頻発化・激甚化に我が国は晒さらされている。このような自然災害に事前から備え、国民の生命・財産を守る防災・減災、国土強靱化は、一層重要性が増しており、喫緊の課題となっている。

また、平成30年7月豪雨、平成30年台風第21号、平成30年北海道胆振東部地震をはじめとする近年の自然災害により、ブラックアウトの発生、空港ターミナルの閉鎖など、国民の生活・経済に欠かせない重要なインフラがその機能を喪失し、国民の生活や経済活動に大きな影響を及ぼす事態が発生している。これらの教訓を踏まえ、重要インフラが、自然災害時にその機能を維持できるよう、平時から万全の備えを行うことが重要であり、その対策が急務となっている。

このため、「重要インフラの緊急点検の結果及び対応方策」(平成30年11月27日重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議報告)のほか、ブロック塀、ため池等に関する既往点検の結果等を踏まえ、

  • 防災のための重要インフラ等の機能維持
  • 国民経済・生活を支える重要インフラ等の機能維持

の観点から、特に緊急に実施すべきハード・ソフト対策について、3年間で集中的に実施することとし、我が国では「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30年12月14日閣議決定。以下「3か年緊急対策」という。)を取りまとめた。

「3か年緊急対策」は、「国土強靱化基本計画」(平成26年6月3日閣議決定、平成30年12月14日改訂)における45のプログラムのうち、重点化すべきプログラム等20プログラムに当たる施策に関して、平成30年度から32年度までの3年間で実施することとしており、想定される事業規模はおおむね7兆円程度を目途としている。このうち初年度の対策として速やかに着手すべきものについては、平成30年度第2次補正予算により対応することとし、さらに平成31年度当初予算及び32年度当初予算の臨時・特別の措置を活用することとしている。

総務省では、平成30年度補正予算(第2号)に計上された3か年緊急対策に基づく直轄事業負担金及び補助事業費の地方負担については、補正予算債による地方財政措置を講じている。

また、平成31年度及び32年度地方財政計画の投資的経費(直轄・補助)に3か年緊急対策に基づく直轄事業負担金及び補助事業費を計上するとともに、その地方負担については、新たに創設する「防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債」による地方財政措置を講じることとしている。

(2)緊急自然災害防止対策事業費の創設

地方公共団体が3か年緊急対策と連携しつつ、単独事業として緊急に自然災害を防止するための社会基盤の整備に取り組んでいけるよう、地方財政計画の投資的経費(単独)に新たに「緊急自然災害防止対策事業費」を計上するとともに、その全額については、新たに創設する「緊急自然災害防止対策事業債」による地方財政措置を講じることとしている。

緊急自然災害防止対策事業債については、安心して暮らせる地域をつくるため、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止することを目的として、河川、治山、農業水利施設等について、地方公共団体が策定する緊急自然災害防止対策事業計画に基づき実施される地方単独事業を対象とすることとしている。

(3)災害に対応できる人材の確保

ア 被災市区町村応援職員確保システム(短期の応援職員派遣)

総務省では、平成30年3月に、大規模災害発生時に被災市区町村を支援するための全国一元的な応援職員派遣の仕組みとして、全国知事会等とともに「被災市区町村応援職員確保システム」(以下、「本システム」という。)を構築した。

本システムにおいては、(1)避難所の運営や罹災証明書の交付等の災害対応業務を支援するための応援職員の派遣、(2)災害マネジメントに関する首長への助言等を行う災害マネジメント総括支援員の派遣を目的としている(第128図)。

第128図 被災市区町村応援職員確保システム

応援職員の派遣に当たっては、被災都道府県内の地方公共団体による応援職員の派遣だけでは対応が困難な場合、まずは第一段階支援として、被災地域ブロック内の都道府県又は政令指定都市が対たい口こう支援方式(都道府県又は政令指定都市をカウンターパートとして、原則1対1で被災市区町村に割り当て、集中的に支援する方式)により応援職員の派遣を行い、第一段階支援だけでは対応困難な場合には、第二段階支援として、全国の地方公共団体による応援職員の派遣を行うこととしている。なお、対口支援を行う都道府県は、原則として政令指定都市を除く区域内の市区町村と一体的に応援職員の派遣を行うこととしている。また、応援職員の派遣については、これらを基本としながらも、災害の規模等に応じて柔軟に運用することとしている。

本システムが初めて適用された平成30年7月豪雨においては、7月11日から9月15日までの間、被災20市町に対し、29都道県市から延べ15,033名の応援職員が派遣された。また、被災市区町村の首長への助言等を行う「災害マネジメント総括支援員」についても、被災10市町に対し13団体から32名が派遣された。さらに、平成30年9月に発生した北海道胆振東部地震においても、9月12日から10月7日までの間、被災3町に対し、7県から延べ2,951名の応援職員が派遣された。

これらの災害においては、迅速に応援職員を派遣できたという評価がある一方、本システムの運用を始めたばかりであることから、受援側での本システムの認知度が低い、円滑な派遣に向けた応援側の事前準備が必要等の課題が挙げられている。

総務省では、今回の災害における課題を踏まえた制度・運用の見直しを行うとともに、会議や説明会等における本システムの周知や、関係省庁との連携による受援体制整備の推進、地方公共団体と連携した訓練の実施などにより、本システムのより効果的な運用に努めていくこととしている。

イ 被災地方公共団体への中長期の応援職員派遣

被災地方公共団体においては、復旧・復興を進めるための人材の確保が重要な課題となっており、全国の地方公共団体からの職員派遣による支援や被災地方公共団体における任期付職員の採用等による人員確保が不可欠な状況となっている。

被災地方公共団体への中長期の職員派遣について、被災都道府県に対しては全国知事会が、被災市町村に対しては総務省が全国市長会及び全国町村会と連携し、派遣のための調整を行っており、平成30年度においては、東日本大震災、平成28年熊本地震、平成29年7月九州北部豪雨、平成30年7月豪雨及び平成30年北海道胆振東部地震の被災地方公共団体に対し、全国の地方公共団体から応援職員が派遣されている(平成30年4月1日現在、東日本大震災、平成28年熊本地震及び平成29年7月九州北部豪雨の被災地方公共団体に対し、1,793名の応援職員が派遣されている。)。

総務省では、これらの派遣調整のほか、総務大臣から全国の都道府県知事及び市区町村長に対して協力を依頼する書簡を発出するとともに、各種会議等における働きかけなどを行っており、引き続き、全国の地方公共団体に対し応援職員の派遣について協力要請を行うとともに、復旧・復興業務を円滑に実施することのできる体制の整備を推進していくこととしている。

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