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成長懇イレブン リレーコラム
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麻倉怜士

次世代デジタル技術の利活用で、
デジタル・エンターテイメント大国を目指せ!

麻倉 怜士
津田塾大学講師 デジタル・メディア評論家





壁がそのままテレビだ。
2015年、テレビは限りなく大きくなり、「壁掛けテレビ」を超え、壁自体が映像を映し出す。コンテンツも従来のテレビの延長のものではなく、ICTを活用して、壁ディスプレイにふさわしい新たな分野が開拓されている。 マルチスクリーンにより、家族が別々の番組を楽しめるし、”壁紙”は毎日でも変えられる。リモコンでスイスボタンを押すとマッターホルンのシーンに変わる。壁が別世界に誘ってくれるのである。
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 ICTはインフラであり、アプリケーションである。インフラとしては今後、さらに速く(転送レート)、安く(使用料金)、美味しく(性能が高い)と、より吉野屋化していく。 利活用されていないという現状の問題は、インフラはリッチなのに、コンテンツと端末側の、両側のアプリケーションが貧弱だからだ。 その改革にはコンテンツ、サービス、ネットワーク、ハードの360度ソリューションを徹底しなければならない。

まずコンテンツのクリエーション過程で、ICTの力を使う。アーティストが想記したイメージを楽譜、音、映像……といったメディアに定着する過程において、 ICTの力が大いに発揮されることはもちろん、クリエイターどうしのコラボレーションなどを活用する。

 ユーザー側の再生環境整備は単なるユーザーマターではなく、産業的にも傾斜投資が必要な分野だ。ICTの時代になる以前から、コンテンツを再生するディスプレイの進化が、コンテンツ自身の進化を促してきた。SDからハイビジョンになり、コンテンツの内容が大きく変わったことは、その好例だ。 本格的ICTの時代には、きわめて速い転送レートにて、高情報量、高品位な信号がやり取りできる。そのインフラの下で、2015年、ディスプレイ技術の圧倒的な進化が、新しいコンテンツの創造を誘う。

 ディスプレイ進化とは、冒頭に述べた「壁化」と「フレキシブル化」だ。今、薄型テレビは急速な勢いで、超薄型化が進み、夢の壁掛けテレビも現実のものになっているが、2015年には、有機ELが今のプラズマや液晶に代わり、 ディスプレイの主役に躍り出る。有機ELは紙のように薄く、壁紙のように壁全体に貼れる。画質は圧倒的に素晴らしい。
 壁ディスプレイがサポートするのが、今のハイビジョンの16倍の解像度のスーパーハイビジョンだ。 150インチの画面を分割し、そこにさまざまなコンテンツを 映してもいいし、テレビ電話は立体映像で眼前の相手と、しゃべることができる。有機 ELは折り曲げできるペーパーテレビや巻きものテレビにも発展する。胸ポケットに入る、高画質なユビキタスシアターで、いつでも、どこでもリッチなエンターテイメント体験ができる。 このような魅力の出口環境を整備するならば、360度ソリューションにより、優秀なコンテンツを創造する鍵になる。

 ICTでの国の成長を考えるなら、個人の幸せ、個人の楽しみをICTが実現するという観点がきわめて大切だ。新しいデジタル・テクノロジーが、新しいエンターテイメントニーズを喚起し、 新しいクリエイターを増やし、新しいユーザーをつくる……ICTをテコにしたデジタルとエンターテイメントの高循環の時代はかならずやってくる。
 ICTはあくまでもインフラである。ネットワークの両端でICTをアクティブに活用することこそ、重要なのである。

 さて、楽しんでいただけたでしょうか、私の担当はここまで。そろそろ3番手の岡村選手、いえ、弁護士の岡村先生にバトンをお渡しします。岡村先生、よろしくお願いします。






略歴
1973年 横浜市立大学卒業 日本経済新聞社を経て、プレジデント社入社 雑誌『プレジデント』副編集長、雑誌『ノートブックパソコン研究』編集長を経て、
1991年 オーディオ・ビジュアル/デジタル・メディア評論家として独立
著書・論文等
「松下電器のBlu-ray Disc大戦略」日経BP社
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)--ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年。アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)--プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年。韓国版も)--ソニーのネットワーク戦略
「DVD--12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)--DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)--記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)--互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)--プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)--新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房。1994年)--シャープの鋭い商品開発のドキュメント
「松下電器のBlu-ray Disc大戦略」(日経BP.2006年)--松下電器がBlu-ray Discに賭けて,次世代DVD戦争に勝ったドキュメンタト
「イロハソニー」(日経BP.2006年)--ソニーの液晶テレビをお祭りにした色にまつわる研究書
アスキー新書「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー、2007年)--オーディオ再入門へのアドバイス
アスキー新書「絶対ハイビジョン主義」(アスキー、2008年)--ハイビジョンのすべて
他多数
その他
○日本画質学会副会長

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