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成長懇イレブン リレーコラム
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徳田 英幸

一身のパワーアップなくして
一国のパワーアップなし

徳田 英幸
慶應義塾大学
環境情報学部長兼教授






 篠崎先生に続いてコラムを担当させていただく、慶応大学の徳田です。ICT成長力懇談会では、毎回、いろいろな視点から、日本のICT(Information and Communication Technology)インフラの整備は、 世界でもトップレベルになっているにもかかわらず、その利活用がまだまだ進展していないのはなぜか、さらに日本の成長力や競争力向上に役立つにはどうすべきかが議論されています。 今回は、福澤諭吉が「学問のすすめ」の中で述べた「一身の独立なくして一国の独立なし」という言葉をベースに 「一身のパワーアップなして一国のパワーアップなし」という題でコラムを書くことにしました。

 まず、福澤諭吉が「学問のすすめ」を記した時代である明治維新後が、現在のICTインフラの発達によって世界がフラット化し、 爆発的に情報が溢れている状況と時代的にも非常に似たものがあると思います。 当時は、さまざまな海外の国々との交流が飛躍的に発展し、次々に新しい情報や物が入ってきました。 さらに、このメッセージをもって、福澤諭吉が伝えたかったことは、これまでの封建制度を崩壊し、 一人一人が持っていた「お上にたよる体質」から脱却し、自分自身で判断し、自分を律することができなければ、一国の独立もありえないという考え方でした。 一方、現在において、ICTインフラ整備が世界最高水準に達しても、一人一人が、 情報を伝達、蓄積、変換、検索、編集、共有など、情報処理や通信に関するICTリテラシーを身につけることが、 もっともICT利活用の促進、成長力や競争力の向上に貢献すると私は考えているからです。

 現在、研究開発がすすめられているユビキタスネットワーク技術を活用すれば、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークに接続でき、我々のさまざまな行動支援を行うことが可能です。 たとえば、ビジネスにおいては、ネットワーク化されていないかった時代におけるビジネスモデルと、 ネットワーク化された後のビジネスモデルでは、まったく新しいモデルを構築することが可能です。 いろいろな文書を持ち運びせず、より安全に文書などを伝達することが可能ですし、音楽や動画なども、 CD、DVDといったパッケージメディアを使わずに、デジタル化されたデータだけを直接販売・購入することが、いつでも、どこでも可能となります。 物流管理などにおいても、電子タグの利用にとどまらず、超小型無線センサノードを商品やトレーにとりつけることにより、 「モノのスマート化」を実現でき、商品の温度や振動などの管理が物流過程のすべてにおいて、容易にかつリアルタイムに行うことが可能となります。 さらに、モノとモノとが「つながる」ことにより、消費者の購買行動やモノの人気度や注目度をリアルタイムに分析することなども可能となり、新しいマーケティング手法なども開発できます。

 これら日々進化しているICT環境やユビキタスネットワークを使いこなす「メタな力」として、何が大切なのでしょうか?  私は以下のの4つが大切かと思っています。

1)知的好奇心
2)学習・体験する力
3)コラボレーションする力
4) 問題発見解決力

 知的好奇心を持ちつづけ、自らが学習し体験する力と他の人々とコラボレーションする力をもち、問題が何であるかを見極め、解決していく力があれば、 新しい技術にふりまわされることなく、ユビキタスネットワークを利活用できる姿勢が生まれてくると思っています。  ユビキタスネットワーク技術の真価は、個人、組織やコミュニティのエンパワーメントだけでなく空間や環境のエンパワーメントもできるところです。 これらを使いこなし、自分や自分の組織、強いては日本のパワーアップは、いずれも我々自身にかかっています。 以上、「一身のパワーアップ」の大切さについて述べましたがいかがでしたでしょうか?
次のコラムの担当は、ICT利活用ビジネスに関する調査や戦略コンサルティング事業を展開していられる(株)イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長の野原佐和子さんです。 では、野原さん、よろしくお願い致します。






略歴
1975年 慶應義塾大学工学部卒
1977年 同大学大学院工学研究科修士課程修了
1983年 ウォータールー大学計算機科学科博士課程修了
1990年 カーネギーメロン大学計算機科学部研究准教授
1996年 慶應義塾大学環境情報学部教授
1997年-2001年 慶應義塾常任理事
2001年 同大学大学院政策・メディア研究科委員長
2007年 同大学環境情報学部長
専攻
計算機科学, オペレーティングシステム, ユビキタスシステム、
リアルタイムシステム, コンピュータネットワーク
その他
日本学術会議連携会員
情報処理学会理事、技術応用委員会委員長、ユビキタスコンピューティングシステム研究会初代主査
ネットワークロボットフォーラム会長
ユビキタスネットワークフォーラム技術部会長&電子タグ高度利活用部会長
総務省ユビキタスネット社会の実現に向けた基本政策WG副委員長、ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する調査研究会座長
研究教育業績に関してMotorola Foundation Award, IBM Faculty Award, 経済産業大臣賞、総務大臣賞などを受賞

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総務省情報通信国際戦略局
情報通信政策課


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