有識者インタビュー (柴崎 亮介)

有識者インタビュー

柴崎 亮介(しばさき りょうすけ)

東京大学 空間情報科学研究センター 教授。
1982年東京大学大学院工学部土木工学科修了。建設省土木研究所勤務の後、1988年東京大学工学部助教授、1991年同大学生産技術研究所助教授を経て、1998年より現職(2005-10年センター長)。2008-2010年GIS学会長。ISO(国際標準化機構)TC211(地理情報)にて空間データの品質評価手法の国際標準作成に関するプロジェクトリーダー(1998-2003)、GEO(地球観測グループ)のデータ・構造委員会共同議長(2008〜現在)を務める。2013年よりG空間×ICT推進会議座長。

NRI
東京大学の柴崎先生は、G空間シティ構築事業を実施するきっかけとなった、総務省の「G空間×ICT推進会議」でも座長を務められる等、G空間の分野で幅広く活躍されてこられました。この「G空間シティ構築事業」でも、評価委員のお一人として携わってこらわれたわけですが、その先生から、選定された10事業のうち、いくつかについて今後の実証における期待をお伺いしたいと思います。
柴崎先生
はい、ではよろしくお願いいたします。
NRI
まず、東北大学(災害科学国際研究所)の「リアルタイム津波浸水・被害予測・災害情報配信による自治体の減災力強化の実証事業」についてお伺いします。この取り組みについては、津波が来た際に沖合でいち早く災害情報を検知し、警報を通知する等、津波防災をメインターゲットとして、災害に対して高度なICTとG空間情報を幅広く使いこなすことを目的とした案件です。この案件は多くの方々から、高い評価をいただいているようですね。
柴崎先生
具体的なシミュレーション結果があるし、モデルが明確ですからね。実施地域に限らず、全国展開を可能にすべき技術ですね。今後は、文部科学省の防災科学技術研究所(NIED)や海洋研究開発機構(JAMSTEC)等多様な機関と連携し、津波防災に関する情報の相互利用が広まるとよいのではないのでしょうか。現在、G空間シティ構築事業と並行して事業が進められているG空間プラットフォームは、全国をターゲットとして、多くのG空間情報を集約しようとするわけなので、こういったモデルの地域への導入と併せて、G空間プラットフォームへ情報が提供されていく可能性を探るべきですね。一言要望があるとすれば、地震発生に伴う災害という意味だと、津波の他に火災があり、これもまた被害が大きいので、今後の展開では火災分野での適用も検討頂けたらよいですね。
NRI
北九州市「災害時の「電力確保」まで想定した世界最先端のG空間防災モデルの構築」は、すでに北九州市が保有する自治体クラウドを通じて、自治体へのG空間情報の実装を大幅に拡大しようという案件ですね。その目玉として、災害時に大きな課題となる、避難所へのエネルギー供給を考えているようです。北九州市のような大規模都市になると避難所が400か所あるため、それら全ての非常用電源の設置となると、膨大な予算が掛ります。そこで、G空間情報を活用して再生可能エネルギーから生成した電力を、電気自動車(EV)を使って効率的に配送しようというのが、このプロジェクトの狙いのようです。
柴崎先生
なるほど、電気自動車は1回の充電でどれくらい持つのですか。
NRI
その点は、北九州市でこれから検証するとのことです。
柴崎先生
どの自治体でも実現可能かどうかも検証してほしいですね。同じ九州の熊本県人吉市の事業は水害に関する災害情報を可視化するという事業です。このような斜面崩壊や洪水をターゲットとした成果は、ぜひ他地域へ展開できるようにしてほしいと思います。特にリアルタイムに水防に関わる情報を集めたり、水害や土砂災害発生のシミュレーション、災害発生危険度調査などの情報の取り扱いについては、モデルを全国各地へ広げていくべきですね。また、人口が少なく、情報通信環境がリッチでないエリアについて、災害情報の伝達をどのように実施するのかというところも、大きな実証のポイントでしょう。
NRI
株式会社横須賀テレコムリサーチパークの取り組みは、横須賀市内と池袋駅を主な対象として屋内データを整備中とのことです。豊島区が中心となり行政が力を入れているモデルですね。3次元のG空間情報の整備が盛り込まれた案件なので、今後の東京オリンピックを見すえても期待が大きいと思います。
柴崎先生
この3次元のG空間情報は、一般の市民の方々にも公開されてほしいですね。G空間シティ構築事業の中には、屋内をテーマとした事業は立命館大学の事業(東京、大阪、名古屋)もあります。屋内での地図整備や場所把握(いわゆる測位)は複数の場所で実施するので、多様なモデルの中から、全国展開できるモデルが浮かび上がってほしいところです。もう、屋内については実験段階の検証は終了して、実用化されるべきと思います。
NRI
なるほど、その他の提案についてはいかがでしょうか。
柴崎先生
その他、ここまでに上がっていない事業についても、よい成果が出ること、特に利用者にとって、どの程度使いやすいものなのか、検証して頂きたいですね。例えば、準天頂衛星を使った災害情報のメッセージ送信については、湘南広域都市行政協議会や沖縄県久米島等が取り組むわけですが、自治体にどの程度使いやすいものか、十分に検討し、今後の準天頂衛星の活用に向けて、その改善点を取り込んで頂きたいと思います。
NRI
ありがとうございました。

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