平成14年度地方税制改正について

総務省
平成14年4月

一 外形標準課税について

 法人事業税への外形標準課税の導入は、すべての法人が、その事業活動規模に応じて薄く広く、かつ、公平に地方公共団体の幅広い行政サービスの対価を負担するものである。このことは、応益課税としての事業税の性格を明確にし、地方公共団体には、地方分権を支える安定的な地方税源を保障するものとなる等、地方税として望ましい方向の改革である。
 今回、旧自治省案で2分の1導入することとした外形基準の部分について、付加価値額を基本としつつ、資本等の金額による課税方式を補完的に併用する案を示した。この案では、報酬給与部分の割合が大幅に下がり、課税の仕組みが簡素化されたが、なお、さまざまな意見があり、結論を得るに至らなかった。
 今後、各方面の意見を聞きながら検討を深め、具体案を得たうえで、景気の状況等も勘案しつつ、平成15年度税制改正を目途にその導入を図る。

改革案の概要



二 平成14年度地方税制改正(案)の概要
I 土地・住宅税制 
 特別土地保有税の徴収猶予制度の拡大
(1) 計画変更等の時点要件の撤廃
 事業計画変更等に係る特例措置の時点要件(平成13年4月1日において徴収猶予を受けている者に限る。)を撤廃し、平成13年4月2日以降に徴収猶予を受けている者についても、計画変更等ができるよう措置する。

(2) 計画変更等の対象範囲の拡大
 事業計画変更等に係る特例措置の対象に現行の住宅等のみでなく、建物・構築物(オフィスビル、店舗等)を追加し、変更した計画に基づき当該建物・構築物が整備された場合にも納税義務が免除されるよう措置する。

2 民間活力を活かした市街地再開発事業に係る特例措置
  都市再開発法の改正により、一定の民間事業者による市街地再開発事業の施行が制度化されることに伴い、不動産取得税、固定資産税、特別土地保有税及び事業所税において所要の税制上の措置を講ずる。

3 マンション建替え事業の制度化に伴う税制上の措置
  マンションの建替えの円滑化等に関する法律(仮称)の制定によりマンション建替え事業が創設されることに伴い、不動産取得税、特別土地保有税、事業所税等において所要の税制上の措置を講ずる。

4 新築住宅に係る固定資産税の軽減措置の適用期限の延長
  新築住宅に係る固定資産税の軽減措置(一般住宅:最初の3年間税額の1/2を軽減、中高層耐火住宅:最初の5年間税額の1/2を軽減)の適用期限を2年延長する。

5 個人住民税における土地等の譲渡益に対する9%税率の廃止
  個人住民税において平成16年度分までその適用が停止されている土地・建物等に係る長期譲渡所得に対する税率について、課税長期譲渡所得金額8,000万円超の 部分の9%(所得税:30%)の税率を廃止するとともに、当該部分の税率を7.5%(所得税:25%)とする。

6 固定資産税における情報開示の推進
  固定資産税に対する納税者の信頼を確保するとともに、市町村による資産評価事務の一層の適正化等を図るため、固定資産税における情報開示を推進するため、以下のような制度改正を実施する。(一部を除いて、平成15年4月1日から施行)
 
(1) 縦覧制度を改正し、納税者が、固定資産の評価額が適正かどうかを判断しやすくするため、縦覧対象範囲を拡充。
(現行:固定資産課税台帳の自己の資産に関する部分に限定 → 改正案:新たに縦覧帳簿(仮称)を整備)

(2) 固定資産課税台帳の閲覧制度及び固定資産の評価額等の証明制度を創設するとともに、借地人・借家人等が、借地・借家対象資産の固定資産税額を閲覧できる措置を講ずる。

II 金融・証券関連税制
○ 個人住民税における株式等譲渡益に係る申告不要の特例の創設
  平成15年1月からの申告分離課税への一本化に当たり、一般の個人投資家の申告負担の軽減に配慮する観点から以下の措置を創設する。
 
(1) 証券会社は、一定の特定口座(1証券会社当たり1口座限定)を設定している投資家について、当該特定口座内の年間譲渡損益等を一括記載した報告書(年間取引報告書(仮称))を作成し、当該投資家の翌年1月1日現在の住所所在の市町村の長に同月31日までに提出する。

(2) 次のいずれかに該当する一定の投資家は、道府県民税及び市町村民税の申告書を提出することを要しない(申告不要)。
 前年中に特定口座内上場株式等の譲渡に係る所得のみを有する者
 前年中に特定口座内上場株式等の譲渡に係る所得及び給与所得のみを有する者
 前年中に特定口座内上場株式等の譲渡に係る所得及び公的年金等に係る所得のみを有する者

III その他の主な改正項目
1 連結納税制度への地方税の対応
  法人事業税及び法人住民税については、地域における受益と負担との関係等に配慮し、単体法人を納税単位とする。
 各法人の課税標準については、基本的には、法人税の連結所得金額及び連結税額の計算過程において連結グループ内の単体法人に配分される所得金額又は税額を基に算定する仕組みとする。
2 個人住民税の所得割及び均等割の非課税限度額の引上げ
  低所得者層の税負担に配慮するため、平成14年度分以後の個人住民税所得割及び均等割の非課税限度額を引き上げる。
(1) 所得割の非課税限度額
改正案所得金額 ≦ 35万円 × 家族数 + 加算額 36万円
現行所得金額 ≦ 35万円 × 家族数 + 加算額 32万円
(2) 均等割の非課税限度額
改正案所得金額 ≦ 35万円 × 家族数 + 加算額 24万円
現行所得金額 ≦ 35万円 × 家族数 + 加算額 19万円
(注)(1)及び(2)の加算額は、控除対象配偶者又は扶養親族を有する場合のみ加算
3 認定農業者が取得する創設農用地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の創設
 
市町村が認定する担い手農業者が創設農用地を取得した場合
→ 課税標準から農用地の価格の1/3を控除
4 漁協等の信用事業譲渡に係る課税標準の特例措置の創設
 
 (不動産取得税) (特別土地保有税)
信用事業の全部譲渡 価格の1/2控除  非課税(取得分)
(〜H15.3.31)
5 と畜場におけるBSE対策関連設備に係る固定資産税の特例措置の創設
 
 と畜場に設置される牛海綿状脳症(BSE)対策実施のための償却資産(冷却保存設備、洗浄・消毒装置、せき髄除去装置、頭部破砕機、焼却炉)に係る課税標準の特例措置の創設
→最初の3年間 1/2
(〜H16.3.31)
6 鉄道事業者が取得した安全対策施設に係る固定資産税の特例措置の拡充
 
 鉄道事業者が政府から近代化設備助成を受けて取得したATS等の安全対策施設に係る課税標準の特例措置の特例率の拡充
→最初の5年間 1/4(現行は1/2)
(〜H15.3.31)
7 新世代通信網を構築する施設に係る固定資産税の特例措置の拡充
  新世代通信網を構築する施設に係る課税標準の特例措置の対象に、IPv6対応型ルーターを追加
8 公害防止用設備、廃棄物再生処理施設に係る固定資産税の特例措置の見直し
  公害防止用設備、廃棄物再生処理施設に係る課税標準の特例措置について、所要の見直しを行ったうえで、対象に廃棄物焼却溶融施設、土壌浄化施設、食品循環資源メタン化設備、廃木材乾燥熱圧装置を追加
9 低燃費車に係る自動車取得税の課税標準の特例措置の延長
  課税標準から30万円を控除する特例措置の1年延長

IV 非課税等特別措置の整理合理化(主な項目)
1 一般電気事業者等が設置する変電施設に係る固定資産税の特例措置
 
 一般電気事業者等が設置する変電施設に係る課税標準の特例措置の特例率を改める。
→最初の5年間3/5、その後5年間3/4  
(現行:最初の5年間1/2、その後5年間3/4)
2 JR北海道等が旧国鉄から承継した資産に係る固定資産税の特例措置
 
 JR北海道、四国、九州及びJR貨物が旧日本国有鉄道から承継した資産に係る課税標準の特例措置の特例率を改める。
→価格の3/5(現行:価格の1/2)
3 特定優良賃貸住宅に係る固定資産税の特例措置
 
 特定優良賃貸住宅に係る固定資産税の軽減措置の軽減率を改める。
→税額の3/5減額(現行:税額の2/3減額)

※ 平成14年度改正における非課税等特別措置の整理合理化状況
 
 廃止 34件 
縮減合理化61件

 合計 95件