地方分権推進計画の要旨


第1 地方分権推進の基本的考え方
第2 国と地方公共団体との役割分担及び国と地方公共団体の新しい関係
第3 必置規制の見直しと国の地方出先機関の在り方
第4 国庫補助負担金の整理合理化と地方税財源の充実確保
第5 都道府県と市町村の新しい関係
第6 地方公共団体の行政体制の整備・確立
第7 地方分権の推進に伴い必要となるその他の措置


第1 地方分権推進の基本的考え方


第2 国と地方公共団体との役割分担及び国と地方公共団体の新しい関係

 国と地方公共団体との役割分担の在り方を定めるとともに、国と地方公共団体の新しい関係を構築するため、各般の制度の改革を推進。
 法律改正により措置すべき事項については、所要の法律案を平成11年の通常国会に提出することを基本とする。

1 国と地方公共団体との役割分担の在り方

 国と地方公共団体とは、次の原則に従い、役割を分担することを旨とする。

 ア 国が担うべき事務

 イ 地方公共団体の担う事務

2 機関委任事務制度の廃止

 国と地方公共団体との関係について、地方自治の本旨を基本とする対等・協力の新しい関係を築くため、機関委任事務制度を廃止することとし、所要の措置を講ずる。

3 地方公共団体の事務の新たな考え方

自治事務  :地方公共団体の処理する事務のうち、法定受託事務を除くもの
法定受託事務: 法律又はこれに基づく政令により都道府県又は市町村が処理する事務のうち、国が本来果たすべき責務に係るものであって、国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から都道府県又は市町村が処理するものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの

○ 新たな事務区分の制度上の取扱い

  自治事務 法定受託事務
条例制定権法令に反しない限り可法令に反しない限り可
(法律・政令の明示的な委任が必要)
地方議会の権限
監査委員の権限
原則及ぶ
地方労働委員会及び収用委員会の権限に属するものに限り対象外
原則及ぶ
国の安全、個人の秘密に係るもの並びに地方労働委員会及び収用委員会の権限に属するものは対象外
行政不服審査原則国への審査請求が不可原則国への審査請求が可
代執行不可一定の手続を経た上で可

4 地方公共団体に対する国又は都道府県の関与等の在り方

(1)地方公共団体に対する国又は都道府県の関与等の基準

○ 法定主義の原則
 地方公共団体に対する国又は都道府県の関与は、法律又はこれに基づく政令に定めのある場合でなければ、行うことができない。

○ 一般法主義の原則

(2)地方公共団体に対する国又は都道府県の関与等の手続(公正・透明の原則)


(3)地方公共団体の意見の申出と国の回答義務


5 国と地方公共団体との間の係争処理の仕組み


6 従前の個別の機関委任事務の在り方


7 従前の個別の団体(委任)事務の在り方


8 地方事務官制度の廃止

 機関委任事務制度の廃止に伴い、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は廃止することとし、社会保険関係事務及び職業安定関係事務に従事してきた地方事務官は、それぞれ厚生事務官及び労働事務官とすることとする。

9 権限委譲の推進

 権限委譲を積極的に推進することとし、国の権限を都道府県又は市町村に、また、都道府県の権限を市町村に委譲する。(64項目(別紙3)原則、法改正を要するものは平成11年の通常国会に法律案を提出し、法改正を要しないものは平成10年中に措置)
 これに関連して、一定の人口規模等(20万以上など)を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて委譲するための必要な法制上の措置を講ずることとする。

 【権限委譲の推進の具体例】

  国から都道府県へ委譲

  都道府県から指定都市へ委譲

  都道府県から人口20万以上の市へ委譲

  都道府県から市及び福祉事務所設置町村へ委譲

  都道府県から市町村へ委譲

第3 必置規制の見直しと国の地方出先機関の在り方

1 必置規制の見直し

 必置規制については、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化・効率化を進めるため、その廃止・緩和を推進する。
 地方分権推進委員会の勧告において指摘を受けた個別事項などについて、必要な措置を講ずる。(75項目(別紙4)原則、法改正を要するものは平成11年の通常国会に法律案を提出し、法改正を要しないものは平成10年中に措置。)
 また、法律又はこれに基づく政令に拠る必置規制については、地方分権推進委員会第2次勧告(平成9年7月8日)に沿った考え方により見直し、必要最小限のものにとどめることとする。
 さらに、法律又はこれに基づく政令に拠らない必置規制については、必置規制として存置することが必要不可欠なものは法律又はこれに基づく政令に規制根拠を置くこととし、その他のものは廃止する。(これらについては、原則、法改正を要するものは平成11年の通常国会に法律案を提出し、法改正を要しないものは平成10年中に措置。)

 【必置規制の見直しの具体例】
 名称に関する必置規制を緩和(施設や職員の名称が自由に付けられるようになる。)

 施設の職員の資格、専任、配置基準等に関する必置規制を廃止又は緩和(職員の配置が自由になる。)

 社会経済情勢の変化に応じ必置規制を廃止

2 国の地方出先機関の在り方

 地方分権の推進に伴う権限委譲、機関委任事務制度の廃止、国の関与の縮減・廃止、国庫補助負担金の廃止・交付手続の簡素化などにより事務量が減少すると見込まれる国の地方出先機関については、積極的に組織・業務の縮減・合理化を図る。


第4 国庫補助負担金の整理合理化と地方税財源の充実確保

1 国と地方の財政関係の基本的な見直しの方向と国と地方の経費負担の在り方

(1)国と地方の財政関係の基本的な見直しの方向
 地方公共団体の自主性・自立性を高める見地から、以下の三点を基本的な方向として見直し
  1.  国庫補助負担金の整理合理化
  2.  存続する国庫補助負担金の運用、関与の改革
  3.  地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実確保

(2)国と地方の経費負担区分の原則並びに国庫負担金と国庫補助金の区分の明確化

(3)国と地方の経費負担の在り方と新しい事務の区分との関係

2 国庫補助負担金の整理合理化

(1)基本的考え方
  1.  地方分権推進委員会第2次勧告を踏まえ、国が負担する性格の「国庫負担金」と国が奨励的ないし財政援助的意図に基づいて支出する「国庫補助金」の区分に応じて整理合理化
    •  「国庫負担金」については、国と地方公共団体の役割分担の見直しに伴い、国の関与の整理合理化等とあわせて見直し等を行う。
    •  「国庫補助金」については、補助率の低いものや創設後一定期間経過したもの等についての見直しのほか、国庫補助金削減計画の策定等を行う。

  2.  国庫補助負担金については、財政構造改革の下で見直しを行うこととしているため、当面、財政構造改革の集中改革期間(平成10年度から平成12年度までの期間)中において、「財政構造改革の推進について」(平成9年6月3日閣議決定)との整合性を確保
    •  財政構造改革法の「制度等見直し対象補助金等」について制度・施策・事業等の見直しに当たっては、国庫補助金及び国庫負担金の区分に応じて整理合理化を進める。
    •  同法の「その他補助金等」については、集中改革期間中の毎年度、各省各庁の所管ごとに対前年度当初予算比10%以上という削減率を定めて削減を行う(「国庫補助金削減計画」)。

(2)必要な地方一般財源の確保

 国庫補助負担金の廃止・縮減を行っても引き続き当該事務・事業の実施が必要な場合には、地方財政計画の策定等を通じて所要財源を明確にし、地方税・地方交付税等の必要な地方一般財源を確保

3 存続する国庫補助負担金に係る運用・関与の改革

  1.  国の過度の関与等により地方公共団体の自主的・自立的な行政運営が損なわれることがないよう、運用・関与の改革
    •  統合・メニュー化
    •  交付金化、運用の弾力化(他の施設との複合化等)
    •  補助条件の適正化・緩和
    •  補助対象資産の有効活用・転用
       (補助対象資産の他の公共施設等への転用の簡素化等)

  2.  国庫補助負担金の制度・運用の在り方の見直し
    •  事務手続の簡素化等
    •  交付申請から交付決定までの標準的な期間の設定等

4 地方税財源の充実確保

(1)地方税
  1.  地方税の充実確保
    •  地方における歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小する観点に立ち、地方税を充実確保
    •  所得、消費、資産等の間における均衡がとれた国・地方を通じる税体系の在り方等を踏まえつつ、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築
    •  平成10年度においては、事業税の外形標準課税の課題を中心に、地方の法人課税について総合的に検討
    •  当面は、国庫補助負担金の廃止・縮減を行っても引き続き当該事務の実施が必要な場合や国から地方公共団体への事務・権限の委譲が行われた場合、その内容・規模等を考慮しつつ、地方税等の必要な一般財源を確保

  2.  法定外普通税の許可制の廃止 − 同意を要する事前協議制へ(税源の所在及び財政需要の有無は協議事項から除外)

  3.  法定外目的税の創設 − 同意を要する事前協議制

  4.  個人市町村民税に係る制限税率の廃止

(2)地方交付税
  1.  地方財政計画の策定等を通じた地方交付税総額の安定的確保
  2.  国と地方の役割分担の見直し等に対応した算定方法の簡素化の検討
  3.  地方交付税の算定方法に対する地方公共団体の意見申し出制度の創設
  4.  市町村の合併を支援していく観点から、合併算定替の期間の延長、合併市町村の行政の一体化に係る経費等の具体化
  5.  補正係数の見直し、単位費用化等算定方法の簡素化

(3)地方債
  1.  地方債許可制度の廃止 − 協議制度へ移行
    •  地方債の円滑な発行の確保、地方財源の保障、地方財政の健全性の確保等を図る観点から、原則、協議制度へ移行
    •  協議制度の主な内容についてはできうる限り法令化
    •  同意した地方債についてのみ、政府資金等公的資金を充当するとともに、元利償還金について地方財政計画等を通じた財源措置
    •  同意されない地方債を発行する場合、当該地方公共団体の議会に報告
    •  赤字・公債負担が一定水準以上の地方公共団体等については、原則、起債禁止
       (一定の場合、許可により起債禁止を解除)

  2.  財政構造改革期間中における許可制度の維持

(4)国から地方公共団体への事務・権限の委譲が行われた場合における地方税・地方交付税等の必要な地方一般財源の確保


第5 都道府県と市町村の新しい関係

 都道府県と市町村の関係については、それぞれの性格に応じた相互の役割分担を明確にし、対等・協力の新しい関係を構築する。所要の法律案を平成11年の通常国会に提出。

1 都道府県と市町村の役割分担

 市町村は基礎的な地方公共団体。都道府県は市町村を包括する広域の地方公共団体。

2 市町村に対する都道府県の関与


3 条例による事務の委託

 都道府県は、条例の定めるところにより、当該都道府県の処理する事務の一部を当該都道府県の区域内の市町村が処理するものとすることができる。

4 自治紛争調停制度の見直し

 市町村に対する都道府県の関与に関する係争処理については、国と地方公共団体との間の係争処理手続に準じて、現行の自治紛争調停制度を見直す(最終的には司法手続による解決)。


第6 地方公共団体の行政体制の整備・確立

1 行政改革等の推進

(1)行政改革大綱と実施計画

(2)定員管理、給与の適正化等 − 定員適正化計画の着実な実行・見直し、公表等

(3)人事交流と人材の育成 − 人事交流の人数等の公表、人材育成基本方針の策定等

(4)地方行革への取組についての住民への情報提供等

2 市町村の合併等の推進

(1)市町村の合併の推進

(2)広域行政等の推進

3 地方議会の活性化

(1)議会の機能強化等

(2)議会の組織・構成 − 議員定数の見直し等

(3)議会の運営 − 議会審議の公開性の向上等
4 住民参加の拡大・多様化

(1)住民意思の把握・反映等

(2)民間活動等との連携・協力
 コミュニティ活動との連携の強化、ボランティア活動等の環境整備の推進のための情報提供等

(3)直接請求制度の見直しの検討

(4)住民投票制度の検討
 現行の代表民主制における長と議会の関係に十分留意し、制度化について引き続き慎重に検討

(5)町村総会への移行

5 公正の確保と透明性の向上

(1)情報公開の推進 − 情報公開制度の整備促進及び内容充実のための情報提供等

(2)行政手続の適正化 − 行政手続条例等の整備及び内容の充実等

(3)監査機能の充実強化 − 外部監査制度の定着等

6 首長の多選の見直し

 首長の多選の制限については、首長の選出に制約を加えることの立法上の問題点や制限方式のあり方等について幅広く研究


第7 地方分権の推進に伴い必要となるその他の措置

 地方分権推進委員会の第2次勧告の第7章に沿って、同章I及びIIの措置を講じ、第2から第6までの措置が講じられた後に国が処理することとなる事務量を適切に見通した上で、より簡素で効率的な組織・人員体制の実現に努めることとする。
 また、地方公共団体に対し、同様の観点からのより簡素で効率的な組織・人員体制の実現に努めるよう要請することとする。