平成171213

都市農村交流対策に関する行政評価・監視

<評価・監視結果に基づく勧告>
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 「行政評価・監視」は、総務省が行う評価活動の一つで、行政の運営全般を対象として、主として合規性、適正性、能率性、有効性、効率性等の観点から評価を行い、行政運営の改善を推進するものです。
 本行政評価・監視は8管区行政評価局(支局を含む。)及び12行政評価事務所が平成16年8月から11月にかけて実地に調査した結果等に基づき、農林水産省に対して17年12月13日に勧告するものです。


 概略
背景
  •  都市では農林漁業・農山漁村体験等への期待の高まり
  •  農山漁村地域では過疎化・高齢化等により活力が低下し、地域の振興が大きな課題
  •  政府は、都市と農山漁村の共生・対流の推進に向け、内閣官房副長官及び7省の副大臣によるプロジェクトチームを設置(平成14年9月)
  •  平成16年度予算から政策群の一つとして位置付け
  •  食料・農業・農村基本法等は、都市と農山漁村との交流の促進等を規定
調査対象
<農林水産省の都市農村交流対策>
 農村休暇法に基づく各種の措置 
  •  市町村計画の作成等(20都道府県及び38市町村)
 地方公共団体の様々な取組を支援する各種補助事業
  •  ハード事業(20都道府県の90施設(やすらぎ空間整備事業、山村・都市交流促進事業等4事業)
  •  ソフト事業(96事業主体(グリーン・ツーリズム総合戦略推進事業等7事業)
 財団法人都市農山漁村交流活性化機構に対する補助事業
 財団法人漁港漁場漁村技術研究所及び社団法人フィッシャリーナ協会に対する委託事業
<参考>
 政策群「都市と農山漁村の共生・対流の推進」における農林水産省の関連予算は、平成16年度497億円(6省全体)のうち283億円(約6割)
本行政評価・監視の基本的考え方
 自立的・主体的な取組への重点的な支援が重要
  •  都市農村交流対策に関する制度や関連補助事業の実効性を一層高め、農山漁村地域における受入体制の整備を進めるためには、地域自ら考えた意欲あふれる自立的・主体的な取組を重点的に支援することが重要
 都市部における取組の活性化等も重要
  •  都市住民を対象とした施策を効果的・効率的に実施することも重要
主な勧告事項
1  農村休暇法に基づく市町村計画の在り方の見直し
II2  地方公共団体等に対する補助事業の効果的・効率的な実施
III3  民間団体に対する補助事業・委託事業の見直し



○ 勧告日 平成17年12月13日
○ 勧告先 農林水産省


 勧告事項I1 農村休暇法に基づく市町村計画の在り方の見直し
市町村計画
 地域の都市農村交流の将来構想と位置付け
 整備地区の区域、整備方針、農作業体験施設等の整備に関する事項等を内容
 市町村計画の作成又は作成見込みが都市農村交流を目的とした補助事業の採択要件
調査の視点
 支援対象の重点化
  •  都市農村交流対策の実効性を高めていくためには、都市農村交流の担い手となる人材が確保され、活動の継続的な実施が見込まれる地域の取組を支援対象として重点化していくことが重要
 
問題点1

 市町村計画では都市農村交流の担い手となる人材の確保状況が明らかでない
  •  都市農村交流において役割を発揮できる個人、団体の具体的な記載なし
    (市町村計画を作成済みの36市町村中25市町村)
  •  補助事業により整備した都市農村交流施設が、担い手がいないため有効に活用されていない(36市町村中5市町村)
 計画期間や定量的な目標が未設定
  •  具体的な計画期間が設定されておらず、目標も定性的な記載のみ(36市町村すべて)
  •  市町村計画の達成状況の検証を実施できない状況
勧告要旨
 都市農村交流の担い手となる人材が確保されていること又は確保される確実な見込みがあることを具体的に記載させ、都市農村交流活動の継続的な実施が見込まれる地域の取組を厳正に採択する仕組みとすること
 具体的な計画期間を設定させ、かつ、定量的な達成目標を設定させることにより、その達成状況について評価することを可能とすること
問題点2
 将来構想が明確でない、市町村計画の作成見込みの段階で補助事業が採択
  •  補助事業の採択を受け、既に事業が終了しているにもかかわらず、市町村計画が作成されていない例 等(27市町村中5市町村)
勧告要旨
 市町村計画の作成見込みの段階で事業採択を行う場合は、市町村計画案を添付させるとともに、当該採択年度内に市町村計画を確実に作成することを条件とすること


 勧告事項II2 地方公共団体に対する補助事業の効果的・効率的な実施
ハード事業
問題点1
 現状の計画達成状況報告では、都市農村交流施設の利用実態を的確に把握できず、是正措置が講じられていない
  •  平成15年度の利用実績の70%以上が村内住民に利用されているなど、都市農村交流に利用されていないもの等(90施設中13施設)
 
ソフト事業
問題点
<85事業を調査>
 体験交流活動に対する補助事業が、補助事業終了後の地域による自立的・継続的な取組へつながっていない
  •  補助事業終了後に体験交流活動が実施されていないもの
    (13事業)
  •  10年間の長期にわたる助成を受けるなど、3年を超えて補助を受けているもの等(5事業)
 体験交流活動の自立的・継続的取組
  •  補助事業で体験交流活動を立ち上げ、補助事業終了後も実費負担を求め、活発に都市農村交流を行っているもの(10事業)
問題点2
 利用が低調な施設、赤字運営の施設についての改善方策が不十分
  •  利用計画に対する利用実績の3か年の平均が70%未満(56施設中18施設)
  •  3年以上にわたって赤字運営(56施設中2施設)
制度の転換
◎ 補助金 → 交付金(平成17年度予算から新設)
事後評価重視   交付金の配分に事業計画の評価によるポイント制の導入
◎ 交付金の実施要綱等では対応されていない
利用実態を的確に把握できない報告様式   補助事業終了後の自立的・継続的な実施の見込みが評価ポイントの要素として取り上げられていない
勧告要旨
 都市農村交流施設の利用状況を的確に把握し、施設の利用について適正な措置を講ずること。また、計画達成状況報告の様式を見直すこと。
 利用が低調、収支均衡が図られていない等事業効果の発現に問題が生じている地区について、事業実施要領等において、改善計画を作成させるなど必要な措置を講ずること。
 
勧告要旨
 長期にわたる補助の見直し、補助事業終了後も参加者の実費負担を含め自主財源による継続的な実施が見込まれることを事業計画の評価ポイントの要素として取り上げるなど、地域による自主的・継続的な取組を重点的に支援する方策を検討すること


 勧告事項III3 民間団体に対する補助事業・委託事業の見直し


財団法人都市農山漁村交流活性化機構
都市住民のニーズ調査等を行う育成事業、交流マッチング活動等を行う機能確立事業を実施
 
財団法人漁港漁場漁村技術研究所・社団法人フィッシャリーナ協会
都市漁村交流ガイドラインの作成、都市漁村交流関係情報の提供等を行う都市漁村交流促進委託事業等を実施
問題点1
 補助金交付決定の内容どおりに実施していない事業があるにもかかわらず、補助金等適正化法に基づく補助金等実績報告書では、交付決定の内容どおりに事業を実施したとして実績を報告し、執行実績と補助金等実績報告書の記載内容が乖離
    補助事業の成果が補助金等の交付決定の内容等に適合するものであるかを十分に調査しないまま、補助金を交付
 公開を義務付けられている補助金等支出明細書では、人件費等への支出があるにもかかわらず、人件費等を記載すべき欄は空欄
 
問題点1
 行政改革大綱(平成12年12月1日閣議決定)では、「官民の役割分担の徹底、役員報酬の適正化の観点から、公益法人に対する補助金等において、役員報酬に係る助成は行わないこととする。」と規定されているにも係わらず、受託費から役員報酬を支出
  • 財団法人漁港漁場漁村技術研究所(8,887千円)
  • 社団法人フィッシャリーナ協会(953千円)
問題点2
 当初計画において外部に支出するとしていた経費を人件費等に充当し、計画どおりの事業が実施されていないものや事業実績が低調であるなど所期の補助効果が乏しい状況
  •  支出額に占める人件費等の割合:平成14年度35.6%、15年度51.9%
 
問題点2
 受託業務の一部を外部発注するに当たって見積合わせなど競争原理を導入することにより減額の余地あり
農林水産省は十分な検査を行っていない
勧告要旨
 補助金の使途その他必要な事項について厳正な報告を求めるとともに、補助金の額の確定を行うに当たっては、実績報告書の支出内容の厳格な検査を行うこと。
 また、補助金等実績報告書及び補助金等支出明細書において事実と異なる内容及び項目については、早急に厳格かつ適正な対応措置を採ること。
 所期の事業内容を適切に実施していないものや効果の乏しいものについては、廃止を含め抜本的に見直すこと。
 
勧告要旨
 閣議決定に従って、委託費の適正な執行を確保するため、財団法人漁港漁場漁村技術研究所及び社団法人フィッシャリーナ協会に対し早急に厳正かつ適正な措置を講ずること。
 委託費の効率的な執行を図るため、受託者から事業費の使途その他必要な事項について厳正な報告を求めるとともに、委託費の額の確定を行うに当たっては実績報告書の支出内容について厳格な検査を行うこと。
[本件連絡先]
  総務省行政評価局 農林水産、環境担当評価監視官室
   評価監視官 角田 祐一 (内線:9083)
   調査官 濱田 稔  (内線:9088)
   総括評価監視調査官 田部 昭雄 (内線:2522)
   上席評価監視調査官 大塚 雄蔵 (内線:2483)
    電話  (直通)03−5253−5437〜5439
         (代表)03−5253−5111
         (FAX)03−5353−5443