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【ICT訪問記】広島から世界へ進出
ラクサス・テクノロジーズ株式会社 児玉社長に聞く

児玉社長

  インターネットを通じて場所、モノ、乗り物、スキルなどの貸し借りを仲介する「シェアリングサービス」が注目されています。広島を拠点として、ブランドバッグのシェアサービス事業を展開されているラクサス・テクノロジーズ株式会社の児玉社長にお聞きしました。


 

【ラクサス・テクノロジーズ株式会社】

バッグの棚

  2015年2月、毎月定額でエルメスやシャネルなどの有名ブランドバッグが使い放題になるファッションシェアリング「Laxus(ラクサス)」を立ち上げ、当初100個のバッグ、30人の会員から始め、現在では、会員数20万人、2万点以上のバッグを取り揃える。

ICチップ

ICチップ

  スマートフォンでの面倒な情報登録等の入力を簡略化した、ユーザービリティの高いアプリを自社で開発。また、レンタルされる全てのバッグに自社開発のICチップを組み込み、バッグ毎の詳細なデータを登録し、IoTにて効率的な在庫管理を行う。レコメンドエンジンもスリランカ出身のエンジニアを雇って自社開発AIを実装する等、Web、サービス、アプリ、全てを自社開発でサービス展開している。

現在の事業を始められるまでの経緯ときっかけを教えてください。

児玉社長

  「シェアリングエコノミー」という概念は2006年にアメリカで生まれました。当時まだ別会社を経営していましたが、10年後に「シェアリングサービス」が商売になるかどうかを考えたとき、車でも洋服でも「買うこと」は「使うこと」という目的を達成するための手段であり、手段は増やした方が絶対成功すると考えました。そして、使うために「借りる」というサービスの今の会社を始めることになり、「シェアリングサービス」が「大量生産・大量消費」が生む社会課題を解決するものだと思っています。
  大量生産・大量消費の人口増加に伴った好景気にはプッシュ型の販売で良かったが、必ず閉じていく世界だと考えた。そんな世界にモノを売っていくのではなく、本当に「いいもの」、「いいもの」なので高くて買えない、買わないで我慢している「いいもの」を皆で消費することによって、「使うこと」に意味をもたせることを考えました。

なぜ、広島で起業されたのですか。

  広島出身だったからというのが理由のひとつ。また、インターネットの進化と共に、資金調達と情報収集以外は地方であってもあまり関係がなくなりました。20年以上前は、地方で起業し東京へ進出、東京で成功したら世界へといったルートが一般的だったが、2000年くらいから地方から東京を介さず世界へというのが増えてきました。地方からでも世界で戦えるようになってきたということです。

一番苦労されたことは何ですか。

  資金調達ですね。起業経験のない投資家に起業を説明して理解を得ることが難しかったですね。今では理解していただけるいい投資家の方と出会えてよかったと思います。

人材確保での苦労はなかったですか。

児玉社長

  人材は大企業であれベンチャーであれ、皆苦労していると思います。人材では私たちも十分苦労はしましたが、資金調達ほどの苦労はありませんでした。スタートアップは3人か4人くらいのコアな人間がいると推進することができるんです。


 

ここまで業績を伸ばされたポイントは何ですか。また、他社との差別化をどうされていますか。

児玉社長

  ひとつは、今までの「買わないと使えない」というルールを「買わなくても使える」に変えたことです。ユーザーの潜在的な需要を掘り起こしたのが理由だと思います。
戦略として考えたのは、「模倣困難性を高める」こと、私たちのまねをしようとしたときに、相手が「戦略矛盾を起こす」組み立てです。まねはできても自分のメインストリームと競合するものでは、だいたい上手くいかない。
  私たちの相手というのは、鞄屋さんや質屋さんだったりとかですが、彼らが我々のまねをしようとしても、「売る」という彼らのメインストリームで戦略矛盾を起こしてしまい、シェアリングビジネスとは別物になってしまうんです。(また、私たちの事業が常に「新規事業」になるような組み立てで、大企業に対抗していきます。)
  また、「模倣困難性」という点では、全てのバッグにICチップを組み込んだことで、膨大な人件費や作業量を技術で解決したことです。
  こういった戦略を複雑に進めていったというところでしょうか。

今後の展望について、教えてください。

  グローバルということを考えています。日本人が作って世界で通用するスタートアップだと考えています。日本初の技術で海外に出ていきたいと思います。

職場風景

地域貢献にとってのシェアリングエコノミーの可能性は?

  広島に拠点を置き、週休3日:週4日だけ働く正社員を雇用することによって「働き方改革」によって社会に貢献したいと思っています。私たちはLGBTも受け入れているのですが、広島で初めての企業だと聞いています。こういった点では、地方ではタイムラグがありますので、拠点のある東京でキャッチアップしたものをこちらに持ち帰りたいと思っています。
 

その他、お伝えになりたいことがあれば、聞かせてください。

児玉社長

  今私たちが対比する課題は、「マインドチェンジ」です。バッグのシェアリングはまだ理解してもらえていない。レンタカーは解るがカーシェアがいまひとつ理解できないのと同様、今までの定番の「前の〇〇より良い〇〇」といったリプレイス型の広告が打てない。新しいものが受け入れられるには、なんらかのキーが必要で、そのキーとなるものを見つけることがこれからの課題だと思っています。

(平成30年2月7日取材)

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