特定のチャンネルだけ受信できない場合に想定される原因は次の場合が考えられます。
受信アンテナの高さによって受信できる電波の強さが大きく変化することがあります。
これをハイトパターンといい、図2のように山から山、谷から谷の間隔をハイトパターンピッチと言います。
受信場所によって、デジタル放送チャンネルのハイトパターンがアナログ放送チャンネルのハイトパターンと異なる場合があるため、アナログ放送用に設置されているアンテナ高で十分な強さのデジタル波を受信できない場合、受信不良が発生することがあります。
また、チャンネルごとにハイトパターンが大きく異なり、受信レベルに差が生じると特定チャンネルが受信不良となることがあります。
アンテナの高さ調整を行うと改善される場合があります。
図2 ハイトバターン
「デジタル時代の放送受信技術―地上・BSデジタル放送受信 ノウハウ編― 2010」
テレビ受信向上委員会編より引用
※ UHFはハイトパターンが顕著にあらわれることから、アンテナ高を高くすれば受信レベルが上がるとは限りません。
アンテナ高を下げることによって受信レベルが上がる場合もありますので、アンテナ調整の際には細心の注意が必要です。
UHFアンテナの受信帯域が地域のデジタル放送チャンネルと適合していない場合、十分な強さの受信アンテナ出力が得られず、安定して受信できないことがあります。
既設のアナログ放送用のUHFアンテナの受信帯域がデジタル放送周波数に対応しているか確認し、対応していない場合は、デジタル放送対応のアンテナに交換します。
UHF帯域はL帯域(13〜30ch)、M帯域(31〜44ch)、H帯域(45〜62ch)の3つに区分されています。
また、UHFアンテナには受信する帯域に応じて、図3のような種類があります。
図3 UHFアンテナの種類
テレビ受信向上委員会HPより引用
※ UHFアンテナを交換または設置する場合には、全帯域用アンテナもしくは地域のチャンネルに合ったアンテナを設置する必要があります。
全帯域用アンテナの目印として基本的にアンテナの先端や後器のキャップなどが黄色く塗られています。全帯域に対応したアンテナの識別表示例を図3−1に示します。
図3-1 全帯域用アンテナの識別表示例
地上デジタル放送は建造物の影響を受けにくい特徴があり、強電界地域では建造物遮蔽による受信障害は発生しにくいため、電波の到来方向が建造物に遮蔽されていても個別アンテナによる受信が可能です。(立地条件によっては受信障害が発生します。)
しかし、送信所から離れた中・弱電界地区では、建造物遮蔽により受信電界強度が低下し、受信障害となることがあります。
中・弱電界地域では、高利得アンテナ、指向性の鋭いアンテナへの変更や低雑音、高利得のブースターを用いることにより改善される場合があります。
また、強電界地域では、アンテナの高さ、方向調整、設置場所を変更することにより改善される場合があります。
地上アナログ放送では、マルチパス(遅延波)の影響を受けると、遅延した信号により映像が二重に映るゴースト障害が発生しました。
地上デジタル放送でも電波的にはマルチパスは発生しますが、地上デジタル放送で使用されているガードインターバル技術により、一定以内のマルチパスの影響は取り除くことができます。ガードインターバルの概念図を図4に示します。
しかし、マルチパスがガードインターバルを超えるような遠距離から到来し、希望波とのDU比(希望波と遅延波との比率)が28dBに満たないと受信障害になる場合があります。
マルチパスのイメージ
図4 ガードインターバルの概念図
送信所からの電波をより多く受信するように、アンテナの方向の調整や指向性の鋭いアンテナへの交換、またはマルチパスの影響を軽減するような位置にアンテナを設置することで改善できることがあります。
アンテナには最大感度方向がありますので、安定した放送受信をするためには送信所に正しくアンテナを向けます。
なお、最大感度方向の利得から3dB低下する2つの方向を挟む角度を半値幅といい、半値幅が小さいほど鋭い指向性になります。
アンテナの指向性
「デジタル時代の放送受信技術
―地上・BSデジタル放送受信 ノウハウ編― 2010」
テレビ受信向上委員会編より引用