海上通信

海上通信の概要

 海上には、様々な船舶が様々な目的をもって航行しています。食料、石油、鉱石等を運搬する貨物船、旅客を運ぶ旅客船、魚を獲る漁船、海上の安全を守る海上保安庁等の官庁船等が、ひしめく港内や大海原を航行しています。

 船舶がいったん出発すると、陸上との通信手段は無線に頼るしかありません。特に船舶は遭難等、人命の安全に係わる事態が発生した場合、捜索救助機関等に直ちに通報し、迅速な捜索救助が開始されなければなりません。

 したがって、海上における無線通信は、第一に人命の安全のために、第二に船舶のそれぞれの目的のために利用されています。

 海上通信では、中波帯からレーダや衛星通信設備を含めたマイクロ波帯までの広い範囲の周波数帯を、それぞれの船舶の用途や目的、航行する海域等によって最適な周波数が利用されています。

 

 海上通信の分類

海上通信 人命の安全に対する通信
一般通信 電気通信業務用
海上保安通信
港務通信
漁業通信
船舶運航通信
スポーツ・レジャー用
その他諸事業用
海上無線航行

 

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遠洋船舶との通信

 電気通信事業者がサービスを提供しているものでは、現在では、別項で述べるインマルサットシステム及びN-STARによるものが主流となっています。

海上保安通信

 海上保安通信は、海上保安庁が海上の安全を確保するために行う通信です。

 海上保安通信は、遭難船舶の捜索救助、船舶ふくそう航路及び狭水道における船舶の交通整理、海上無線航行のためのサービス等をおこなっています。

 海上保安通信のうち、人命の安全及び海上無線航行に関するものは、「GMDSS」及び「海上無線航行」の項で紹介することとし、これ以外の2例について紹介します。

海上の交通整理

 船舶は、外洋を航行する際は自身の責任で航行しますが、船舶がふくそうする航路や狭い水道を航行する場合には一定の規制のもとで航行します。

 東京湾の各港へ入出港する船舶が航行する浦賀水道航路等がこれにあたります。

 ここでは、一定の規模以上の巨大船や危険物運搬船等が航行しようとする場合は、事前の通報が必要であり、また航行の方法も決められています。

 海上保安庁では、これらの船舶を無線電話やレーダーで監視しながら、入航の調整や船舶間の間隔の調整等を行い、船舶が安全に航行できるようにしています。

JASREP

 JASREPPは、「日本の船位通報制度」で、船舶が航海する際にあらかじめ自船の航海計画や位置情報を海上保安庁に通報することによってコンピュータに登録され、海上保安庁が船舶の動静を常に把握することができるシステムです。

 JASREPへの参加は任意ですが、船舶がJASREPに参加することによって、その船舶に遭難等が発生した場合に迅速な捜索・救助活動が可能になります。

 JASREPに参加した船舶は、おおむね24時間毎に位置情報を通報することになっており、この通報によって正確な位置の更新が行われ、船舶がJASREPの対象海域を出るまで、そのサービスを受けることができます。

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AIS(船舶自動識別装置)航行支援システム

船舶の航行の安全性の向上を図るため、航海情報を定期的に送受信する船舶用の装置で船名や位置、針路、速力などの動的情報を2-3秒ごとに自動的に発信し、陸上側の海岸局で動的情報を受信し、湾や港の入出港を管理する海上交通センターに送られ、管制用レーダー画面上に動的情報を表示させ、船舶の安全かつ効率的な運行を図る航行支援システムです。

 AISの設置は、SOLAS条約により一定の船舶に対して義務化されており、旅客船、300総トン以上の外航船、500総トン以上の船舶に搭載されています。

LRIT(船舶長距離識別追跡)システム

 LRITシステムは、インマルサットシステムを利用して、AIS航行支援システムの通信圏以遠を航行する国際航海に従事する旅客船及び総トン数300トン以上の船舶に対し、自動的に船舶(装置)のID、船舶の位置、当該位置を取得した日時を各主管庁が設置したデータセンター(我が国では、海上保安庁)へ伝送するためのシステムで、2009年1月から、世界的に設置が義務付けられています。

港務通信

 外国船が入港する港や一定規模以上の船舶が入港する港では、入出港の通知、バースや錨地の指定、動植物の検疫、入管、税関等の手続を取るため、港務通信を行う海岸局と船舶局との間で通信を行っています。

 港務通信を扱う海岸局は、主に港湾管理者が開設しており管内では、京浜港と千葉港、茨城県の鹿島港にあります。

 使用周波数は、国際VHF(150MHz)帯が使用されています。

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漁業通信

 漁業通信は、海上関係無線局の中で最も多くの局数を占めています。

 漁業は、沿岸漁業から遠洋漁業まで地理的に広範囲にわたっているため中波帯から極超短波帯までの広い周波数帯のうちから、それぞれの漁船の操業海域に応じた最も適した周波数を利用しています。

 漁船の船舶局は、それぞれの漁業根拠地等に開設している漁業用海岸局に加入し、漁業用海岸局は漁船に対して漁海況等の情報を提供するほか、漁船からの情報を海岸局が事務所等に中継しています。

 漁業通信に利用されている周波数帯

周波数帯 主な使われ方
中波〜短波帯 遠洋漁業等、比較的遠距離の通信
27MHz帯 沿岸漁業通信
40MHz帯 沿岸漁業通信、海岸局の中継で事務所等と直接連絡可能
VHF・UHF帯 船間通信

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国際VHFを使用した船舶共通通信システム

 我が国の船舶に設備されている無線通信システムは、船舶の規模・用途ごとに異なった設備が多く、洋上でこれら規模・用途の違う船舶が出会った場合、危険回避行動等の連絡を相互に取り合うことが難しい状況となっていました。このような中、用途等の異なる船舶間で共通に利用できる通信システム(船舶共通通信システム)として、平成21年10月から、任意に無線設備を設置する船舶に対して、技術基準適合証明を取得した国際VHF(注)の無線設備を比較的簡易な手続きにより免許することとしました。空中線電力は、据置型25W以下、携帯型5W以下となっています。

(注)F3E156MHz〜157.45MHzの周波数を使用する国際的に共通した無線設備。従来、条約船や国内船でも100トン以上の船舶等には、型式検定を取得した設備の設置が義務付けられています。

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海上無線航行 <船舶の道しるべ>

 船舶は、沿岸を航行するには目標物がありますのであまり問題はありませんが、外洋を航行する際は、船舶の位置や航行している方向を何らかの方法で知る必要があります。

 この情報を提供するものが海上無線航行です。

 

DGPS

 DGPS(ディファレンシャル・ジー・ピー・エス)は、GPSから位置の測定精度をさらに高めたもので、船舶はGPSから得られた位置信号と中波無線標識局から送られてくる誤差信号とによって、10メートル以内の高い精度で位置を決定することができます。

 

ロランC

 ロランCは、主局と従局から発射される電波の到達時間差によって位置を決定するもので、双曲線航法と呼ばれています。 100kHzの非常に波長の長い長波帯を使用しています。

レーダービーコン

 9GHz帯の周波数を利用したシステムとして、レーダービーコンがあります。

 これらは、いづれも船舶に設置されているレーダによって電波を受信して、方位を知ることができます。

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GMDSS(Global Maritime Distress and Safety System)
 <全世界的な海上における遭難及び安全に関する制度>

 この海上における遭難安全システムは、船舶相互間の救助を基本とし、伝統的なモールス無線電信や無線電話の国際遭難周波数を使用して救助を求める形態となっていました。

 このシステムは、船舶の位置によっては陸上と通信ができない場合や船舶の大きさにより、使用する周波数が異なることから船舶相互間でも通信ができない場合などがあり、突発的な遭難に際して対応できない危険性がありました。

 このような問題点を踏まえ国際海事機関では、「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」を改正して、最新の電気通信技術を利用したシステムを1992年から段階的に導入し、1999年2月1日には全面的に実施されています。それがGMDSSです。

 GMDSSは、衛星通信やデジタル通信技術を利用し、大幅に機械化・自動化が取り入れられ、従来のシステムの問題点を改善しています。この国際的な遭難安全システムによって、船舶がどんな海域にあってもいつでも迅速、かつ、確実に陸上の捜索救助機関や付近を航行する船舶との間で遭難通信を行うことが可能となります。

 

GMDSSにおける航行区域

 GMDSSで定められる船舶の航行区域は次の4海域に分けられており、この航行海域によって搭載要求設備が定められています。

 A1海域: 陸上にあるVHF海岸局の通信可能範囲(沿岸20〜30海里)

 A2海域: A1海域を除いた中波海岸局の通信可能範囲(150海里程度)

 A3海域: A1,A2海域を除いた静止型衛星の通信可能範囲

        (概略 北緯70度から南緯70度までの間)

 A4海域: A1,A2,A3海域以外の海域

        (概略 北緯70度以上、及び南緯70度以上の極地方)

 

  

GMDSSの対象船舶

 GMDSSの無線設備を装備しなければならない船舶は、「国際航海に従事する総トン数300トン以上の貨物船及びすべての旅客船」です。

 航行区域の概念図

航行区域の概念図

(GMDSS実務マニュアル―全世界的な海上遭難・安全システム― 庄司和民、飯島幸人 共著より引用)

GMDSSの対象船舶に搭載される主な無線設備

送信設備及び受信設備の機器 インマルサットシステム、VHF無線設備、MF/HF無線設備
遭難自動通報設備の機器 捜索救助用レーダートランスポンダ(SART)
衛星非常用位置指示無線標識(衛星EPIRB)
海上安全情報を受信するための機器 ナブテックス受信機、
インマルサット高機能グループ呼出受信機(EGC受信機)
その他のGMDSS対応機器 船舶自動識別装置(AIS)
地上無線航法装置(ロラン)
衛星無線航法装置(GPS)
双方向無線電話
船舶航空機間双方向無線電話
レーダー
船舶保安警報装置(SSAS)
船舶長距離識別追跡装置(LRIT)
デジタル選択呼出装置(DSC)
狭帯域直接印刷電信装置(NBDP)等

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