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徳島県上勝町における彩(いろどり)事業
≪これまでの情報化の取組やその意義について≫

取材日:平成25年12月12日

 徳島県上勝町は、徳島市中心部から車で一時間程の場所に位置し、山林が88.5%を占め、人口1,840人(平成25年10月1日現在)、高齢者比率が50%という高齢化が進んでいる町です。
 ここには「彩(いろどり)」として全国的にも有名な、葉っぱ(つまもの)を中心にした彩事業が展開されています。昭和56年の異常寒波により、町内のほとんどのみかんが枯死し農業が大打撃を受けた中、この危機を乗り切るために、町の高齢者が活躍できる事業として昭和61年にスタートしたものです。
 彩事業では、ICTが有効に活用されているのが特徴です。現在では、株式会社いろどりから彩生産農家150軒に向けて、PC・タブレット端末、農協の同報無線を利用した同報無線FAXを使って注文情報などの提供をおこなっています。町内には光ファイバーによる超高速ブロードバンド環境が整備されており、農家の方はPCを駆使して注文を受注しています。光ファイバーに無線LANを使っている農家もあります。
 今回、彩事業を立ち上げてこられた株式会社いろどりの横石(よこいし)代表取締役に、これまで行われてきた情報化の取組やその意義についてお話を伺いました。

最初の取組である、農協の同報無線を利用した同報無線FAXについて、導入当時の状況をお聞かせ願います。

 当初は、同報無線の音声により、当日の売上情報を流していました。しかし生産農家以外の町民にも聞こえてしまい、「やかましい」という苦情が寄せられました。
 情報というものは必要な人に聞いてもらったら喜ばれるが、必要のない人には煩わしいものになると強く感じました。このため注文等の情報を音声ではなく、紙ベースで発信することを検討しはじめました。当時の四国電気通信監理局とも相談させていただき、平成3年頃に同報無線を利用した同報無線FAXの実験を行いました。その後、FAX本体に「彩」「スダチ」「野菜」などの項目分けをしたボタンを作り、それぞれの生産農家へボタン一つで注文情報等を送れるように工夫をしました。
写真:同報無線を利用した同報無線FAX

同報無線を利用した同報無線FAX


 
 それまでは同報無線の音声で市況を読み上げるだけで20分も30分も時間がかかっていましたので、同時に150軒を越す生産農家へ瞬時に送信できる同報無線FAXは非常に画期的で、仕事の効率化につながりました。ただ、天候(季節や雨、雪など)によっては無線を受信出来ない農家があり、全戸に届かないという課題もありました。 

その次に導入されたのがPCでしょうか。

 PCは平成10年度に導入し平成11年度春から稼働しています。当初は、ブラウン管式の大きいものを導入していましたが、お年寄りでも操作をしやすいトラックボールとキーボードは最初から導入しています。
 コンビニのPOSの仕組みを拝見した時、商品の仕入れから売上などの一連の動作全てがシステムを使って管理されており、非常に効率的だと感心しました。この仕組みを今後の事業展開への参考にさせていただきました。必要な人に、必要な時に、必要な情報を伝えること、これが重要だと思います。当時は役場でもやっとPCを導入し始めたころで、周りには難しいという声もありましたが、やり方次第では高齢者でもできるという自信もあったので実証実験を経てスタートさせました。
 個人の成績表とランキング(月別・日別実績)、注文取りを見れば、みんなが使わざるを得ない、使わなければ損と思うような仕組みを作りました。特に、個人の成績表、これは自分の売上順位が見えるので、皆さんは楽しみにしているようです。

写真:彩注文取りシステム

彩注文取りシステム
 

写真:トラックボールを操作する西蔭(にしかげ)さん

トラックボールを操作する西蔭(にしかげ)さん

 

同報無線FAXの時は電話で注文を受けていたそうですが。

 そうです。農協から注文のFAXを生産農家へ一斉送信し、出荷ができる農家が農協へ電話で連絡をとります。PCになって、瞬時に受注ができるようになりました。
 これは葉っぱを売っているのではありません、情報を受けて、相手が求めているもの、それがいくらで売れるのか、自分の畑にあるものが何か分かっていて、それを照合している。このビジネスは、葉っぱを動かしているのではなく、情報を動かしている。まさに情報に価値があるということです。

地域づくりについてどのようにお考えですか。

 地域リーダーの中には、地域の中で他の人との間に距離感が出ている場合があるのではないかと思います。弊社では、現場での立ち位置の距離感をなくすために「見たら得する情報」の提供をおこなっています。ここでは、私自身の情報、世の中がどう変わっていっているか、どうしなければならないかを、毎日、情報提供しています。
 例えば東京に講演に行った時に、朝、築地に行く。現場の写真を撮りながら築地ではこうなっている、今何をしなければならないか、どうしてそれが大事なのかを情報提供しています。ICTで情報提供をできる仕組みをもっていると、リーダーと現場の価値観を共有化できます。地域の中でコミュニケーションを取りながらリーダーの言っていることを分かってもらうためには時間と労力がかかりますが、ICTを活用すると、それを容易に行うことできます。

ほとんどの問題はコミュニケーションがうまくいけば解決する。それをうまくやっていく仕組みにICTを活用されているということですね。

 当初は同報無線FAXでおこなっていたもの、今はネットを活用して送っています。
 弊社の強さは、この現場の人たちに情報の共有化をすることで、均一に情報を伝え、これが個々に理解されていく。ICTでこのようなコミュニティのような仕組みを作ることが重要を考えています。

今後の取組としてお考えのことがあればお聞かせください。

 彩事業だけでなく、集落全体の経済価値を高めるため、タブレット端末を使った新たな取組を検討しています。
 これまでは自宅や事務所にいないと出来なかったものが、今は飛行機に乗っている時間以外は情報の発信のチャンスがあります。なぜ、そこまでやるか。それだけ情報に価値があるからです。情報に価値があるから、情報を取ろうとするし見ようとするのです。このために地域の中でどう仕組みを作るかがこれからの大きな課題となります。
 多くのICT利活用事業がなぜうまくいかないかというと、最初に絵を描いて動かそうとする、現場のことを踏まえて動かそうとしないからです。
 今考えているタブレット端末の活用では、地域の中でコミュニティがとれる地元密着型の小さなアプリを数多くつくることが大事となります。地域の中のものだから値打ちがあります。
 
写真:タブレット端末を持つ西蔭(にしかげ)さん

タブレット端末を持つ西蔭(にしかげ)さん


 そのような仕組みをどのように作るか、みんなが気付けば過疎地高齢が進む山村でも未来があります。地域の活性化にはICTの利活用しかありません、これをどう使うかが重要になってくると考えています。

システムや情報の話も、特化していているのも、求められているものがはっきりしているので成功しているのですね。

 本日はお忙しい中、お話をいただきありがとうございました。

彩農家訪問

 彩事業では、高齢者の方が畑や裏山などで育てた季節の葉や花を出荷し、毎日いきいきと働いています。
 そんな彩農家の西蔭(にしかげ)さんのところでは、毎朝、携帯電話のメールに入る情報を見て、朝9時にはPCの前に座り株式会社いろどりから送られてくる注文に受注申込みをしています。操作は、PCのトラックボールとキーボードで簡単にできるようになっており、「以前は同報無線FAXを使っていたけど今はPC。受注は早い者順なので大変だけど、周りのみんなもやっているのでやれるだろうと思った。」と笑います。
 お宅をお伺いした際にも、インターンシップの学生を受け入れており、葉っぱのパック詰めの作業中でした。「日本の学生だけでなく、中国、韓国、インド、ドイツなど世界中の人が来てくれる。先日もオーストラリアの放送局から取材に来てたんよ。」と、訪問者がメッセージを残した記念のノートを広げてくれました。タブレット端末で訪問者と一緒に撮影した写真も見させて頂きました。御自身でもフェイスブックをされている西蔭(にしかげ)さん、交流の輪はますます広がっています。

写真:携帯電話へのメール

携帯電話へのメール
 

写真:訪問者がメッセージを残した記念のノート

訪問者がメッセージを残した記念のノート
 

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