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「船舶の安心・安全な社会づくりに向けて」に関するセミナーを開催

 四国総合通信局及び一般社団法人全国船舶無線協会四国支部は、平成27年5月22日(金)、ホテルJALシティ松山において、「船舶の安心・安全な社会づくりに向けて」に関するセミナーを開催しました。本セミナーは、船舶の安心・安全な社会づくりを目指して、電波法及び海上分野における新しいシステムを紹介し、電波の有効利用を促進することを目的に情報通信月間協賛行事として開催されたものです。

セミナーの様子

 

 主催者を代表して、四国総合通信局無線通信部 大野 真(おおの まこと)部長から挨拶がありました。本日は、制度化、商品化される携帯用位置指示無線標識(Personal Locator Beacon、 以下「PLB」という。)を中心に、これまでの制度改正を含めた取組経過、開発に携わった専門的なお話をしていただくこととしている。これから先、小型船舶の上ではキラーコンテンツになる可能性があるので御理解いただき、皆様においてより良い活動に寄与すればと期待していると話されました。

大野 真(おおの まこと)無線通信部長

 

 セミナーでは、最初に、総務省総合通信基盤局電波部衛星移動通信課 新井 孝雄(あらい たかお)課長から「海上無線通信の動向と今後の展望」と題した講演がありました。
 電波は特性に応じて、通信・放送への利用、測位、遠隔測定への利用及びエネルギー利用など大きく3つの分野で利用されており、ここ9年間で無線局数は約1.7倍増の約1億6,400万局となっていることや、今後、IoT(Internet of Things)など医療、教育など様々な分野で活用されることが予測され、有限、希少な資源の有効活用に向けた電波監理が求められていること、海上無線通信分野においてもモールス信号主流の時代から時を経て、平成11年2月GMDSSが完全導入されデジタル通信技術や衛星通信技術を用いた捜索救助活動が可能となったことなど我が国の現状について説明がありました。
 続いて最近導入された海上通信設備として、一定規模の義務船舶局へ設置が義務化されているVDR(航海情報記録装置)を備えた衛星位置指示無線標識、気象条件に左右されることなくより安全・安心な運行をサポートできる航路標識AISについて紹介がありました。
 次に、PLBに係る国際状況やシステムの概要が説明され、我が国では本年8月までに制度整備が終わり、その後、市場への導入が進むことの話がありました。
 このほか、現在、ITU(国際電気通信連合)のWRC(世界無線通信会議)で論議されている次世代GMDSSの概要について、海上ブロードバンドの向上に向けた検討として、現行の10倍となる10Mbps以上の通信速度を実現する次世代衛星通信システムの開発に取り組んでいることなどの説明がありました。

新井 孝雄(あらい たかお)講師
【講演資料】海上無線通信の動向と今後の展望(PDF 4.4MB)PDF

 

 続いて、太洋無線株式会社生産本部技術部無線技術課 市村 隆之(いちむら たかゆき)主幹から、「PLBの開発現状と展望について」と題した講演がありました。
 日本の捜索救助体制は非常に優れており、コスパス・サーサット衛星からの位置情報を利用することにより200海里以内なら最も早い場合、1時間程度で航空機が遭難現場付近まで到着できること、現在のコスパス・サーサット衛星システムやビーコンの種類、これらの将来像の紹介があり、コスパス・サーサット衛星システムをめぐる国際情勢では、遭難者が最も気になるリターンリンク(注:遭難信号をコスパス・サーサット衛星で受信したことをビーコンに通知する機能)のプロトコルの仕様の検討が加速していることが紹介されました。
 また、現在、制度整備が進められているPLB(携帯用位置指示無線標識)について、海難事故の多数を占める小型船舶の事故において救助率の向上に成果を上げるものと考えている。しかし、その反面、保守・サービスなど運用面における取決め事項が課題であると話されました。
 さらには、現在、世界最小である太洋無線のPLBのこれまでの開発目標、コンベックスメジャーがベースとなったアンテナの作成経緯や操作・動作内容などとともに、今後の事業商用化について、コスパス・サーサット規格に適合する性能評価試験の結果、新たに追加された仕様に対応するための必要な対応について紹介がありました。

市村 隆之(いちむら たかゆき)講師
【講演資料】PLB(Personal Locator Beacon)の開発現状と展望について(PDF 1.9MB)PDF

 

PLB 1

 

PLB 2

 
 

 閉会の挨拶では、一般社団法人全国船舶無線協会四国支部 吉良 洋(きらひろし)支部長から、現場の人間として次世代GMDSSの紹介もあり非常に役立つお話であったこと、サーチ&レスキューを目的にGMDSSの一環としてEPIRB(衛星非常用位置指示無線標識)などが存在するが、本来の人命にピンポイントを当てた場合PLBは可能性が高いことが理解できたと述べられました。

吉良 洋(きら ひろし)支部長

 

 本セミナーには約50名が参加され、船舶の安心・安全な社会づくりについて、電波を有効利用した迅速・確実なシステムの確立の重要性について考える機会となりました。

 四国総合通信局では、今後もセミナーや研修会、講演会等の開催を通じ、海上分野における電波の有効利用の推進を図って参ります。

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