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高知市で「地域課題の解決を目指したICT研究開発の成果発表会」を開催

 四国総合通信局は、四国情報通信懇談会との共催で、6月26日(金)に高知市の高知工科大学永国寺キャンパスにおいて、「地域課題の解決を目指したICT研究開発の成果発表会」を開催しました。
 本発表会は、四国で実施された地域課題の解決を目指したICT研究開発の成果発表とデモンストレーションを行い、ICT研究開発の必要性を広く認識いただくとともに、四国におけるICT研究開発への参加・協力・連携等の新たな展開を推進することを目的に開催したものです。

 発表会では、まず、国立大学法人愛媛大学 教授 木村 映善(きむら えいぜん)氏から平成26年度に終了した総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)ICTイノベーション創出型研究開発である「医療サービスの継続性を担保する電子カルテ秘密分散バックアップ技術の研究開発」の成果について発表がありました。
 この研究は、先の東日本大震災で被災病院から医療情報が紛失し、患者が適切な医療サービスを受けられない事態が多く発生したことを教訓に開発されたものです。電子カルテのデータを複数の医療機関が暗号化のうえ分散して保存することにより、災害発生時に病院のデータが紛失した場合でも、被災地以外の医療機関が保有しているデータを集めて復元することが可能となります。この秘密分散技術を活用することで、安全に低コストで診療情報を保管することができるほか、一部のデータが外部に流出した場合でもそれだけでは復元できず、安全性も高いとのことでした。

 

 次に、国立大学法人愛媛大学 准教授 都築 伸二(つづき しんじ)氏から同じく平成26年度に終了したSCOPE地域ICT振興型研究開発である「スマート環境センシング基盤の構築と地域デザインへの応用に関する研究開発」の成果について発表がありました。
 この研究は、松山市でも温暖化が進んでいることから、松山市内の小中学校の百葉箱や太陽光発電設備を利用して各種環境情報を収集し、土地利用と気象との関係、特にヒートアイランド等の都市型気象形成メカニズムを解明していくものです。
 研究開発の結果、収集した気象データや発電量データを、学校の環境教育に使えるコンテンツ「校区のお天気」にしてリアルタイムに配信するとともに、太陽光パネルの気象センサ(日射計)化や発電状況告知サービスを開発しました。
 今後の課題として、小中学校で収集したデータの2次利用、いわゆるオープンデータ化、が挙げられます。
 また、これらの収集したデータから、地域デザインへの応用にかかる結果として、人工排熱パラメータは気温に強く影響を及ぼし、都市部風下で上昇気流を発生させ、雲の発達や降水の頻発化の原因になっていると言えます。したがって、街をコンパクト化してエネルギーの消費を抑えることと、建物の高断熱化を促進すること、エネルギー効率の高い機器を導入するなどして、人工排熱を出来る限り抑えられるよう地域をデザインすることが重要であるという結論が、気象シミュレータの評価からも得られたとのことです。

都築(つづき)先生のデモの様子

 

 続いて、高知工科大学 教授 菊池 豊(きくち ゆたか)氏から同じく平成26年度に終了したSCOPE地域ICT振興型研究開発である「災害時に事業継続性を発揮する情報通信インフラのための運用計画改善手法および冗長化技術の研究開発」の成果について発表がありました。
 南海地震などの大規模災害が発生すると、高知県は甚大な被害を被ることとなりますが、こうした大規模災害発生時に関係機関が一体となって地域の通信網を迅速に復旧し、通信環境を確保することを目的とする技術を研究開発し、その有効性を検証しました。
 その結果、高知市中心部を経由せず、県外トランジットをマルチホームとして利用できる実用性のある県外通信路を確立し、また、運用中のISPの標準的な課金モデルを対象とし、低コストでバースト通信を許容するバックアップ用リンク機能を確立したとのことでした。
 研究では、人為的な障害の発生による防災訓練も行い、ネットワークの冗長構成の一部が正常に動作しないことや、運用に関する人的ネットワークの一部が機能しないことなどが判明し、これらの結果をネットワークシステムや運用体制に反映しました。
 今後は、L2/L3サービスへの付加価値による高機能化を行うなどの展開を図っていくとのことでした。

 

 続いて、国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 助教 樫原 茂(かしはら しげる)氏から「ドローンを用いた罹災状況収集システムの利活用に向けて」と題して講演が行われました。最近注目されているドローンを使った災害情報の収集や避難行動要支援者の存在確認情報の収集支援等の取組事例について説明されました。
 災害発生時の被害状況等を迅速に把握するため、ドローンにカメラとセンサーを設置し、空から動画像とともに、スマートフォンからのWi−Fiの電波を受信することにより、屋内にいる被災者の存在も確認できる可能性が大きい罹災状況収集システムについての発表がありました。
 発表の合間には、実際に会場内でドローンのデモフライトも行われましたが、安定して飛ばすのが非常に難しいとのことです。
 実証試験する際の問題点として、都道府県によっては、ドローンの飛行を禁止している場所等があり、自由に飛ばせる状況になく、天候、特に風に左右され墜落の危険性もあるとのことでした。
 今後の課題として、ドローンを使えるものにするため、どのようにしていくのか、どのように実際の運用に組み込むか、引き続き研究していきたい。また、自治体の聴講者から、土砂崩れで、電話、電気すべて断線し孤立した地区の被災者の把握にドロ−ンが使えないのかとの質問があり、被災者がスマートフォンを保持していれば、確認できる可能性が大きいとのことでした。

樫原(かしはら)先生の講演の様子

樫原(かしはら)先生のデモの様子

 

 続いて、高知医療センター 北村 和之(きたむら かずゆき)氏から「高知県における地域連携ネットワーク構築の取組について」と題して、高知県内の災害拠点病院を中心とした13の病院で設立された高知県医療ICT連絡協議会での取組についての発表がありました。
 これは、平成26年に通常国会で成立した「医療介護総合確保推進法」に基づき医療機関の機能分化促進が検討されているが、その解決方法として、医療情報連携が最も有効である。さらに高知県においては、医療情報を消失したことにより、適切な医療の提供が出来なかった東日本大震災を教訓に、平時から診療情報が蓄積されている地域連携ネットワーク等を活用することで、有事においても最低限の医療サービスの継続が可能となるとし、高知県医師会をリーダーとした強力な体制を整えるとともに、3年後を目途に地域連携ネットワークの整備をするとのことでした。

北村(きたむら)氏の講演の様子
【講演資料】高知県における地域連携ネットワーク構築の取組について(PDF 4.2MB)PDF

 

 最後に、国立研究開発法人情報通信研究機構 専門調査員 鷹取 耕治(たかとり こうじ)氏から「新世代通信網テストベッド(JGN-X)の活用事例」と題して、JGN-Xにおける研究プロジェクトの活動状況について説明がありました。
 平成11年5月から運用開始し、機能アップされてきたJGN-Xのネットワークの特徴や構成について説明があり、四国管内のアクセスポイントは、現在、香川県と高知県の2ヶ所に設置されていますが、アクセスポイントが設置されていない地域においても他のネットワーク(SINET等)経由で接続が可能になることを四国の事例をあげて説明されました。
 また、従来のL2/L3サービス上での実験・検証に加えて、新しいネットワーク技術の機能・運用検証が行えるサービス環境(パートナーシップサービス)も順次提供しています。
 四国地域におけるSCOPEを含むICT研究開発件数は11件で、関東地域、近畿地域に次いで3番目に多く活用されていると紹介されました。

鷹取(たかとり)氏の講演の様子
【講演資料】新世代通信網テストベッド(JGN−X)の活用事例(PDF 3.9MB)PDF

 

 本発表会には、高知市内はもとより近隣の自治体からもICT研究開発に関心のある76名の方々が参加され、四国で実施されたICT研究開発の成果について理解を深めていただくことができました。

 四国総合通信局では、今後もICT研究開発推進のため情報通信に係る最新技術の動向を紹介して参ります。

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