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松山市で「4K・8Kに関する技術セミナー」を開催
≪4K撮影・編集workshop と今後の展開を知る≫

 四国総合通信局は、四国情報通信懇談会及び四国情報通信協力会との共催で、平成28年1月29日(金)、松山市の株式会社愛媛CATV大会議室において「4K・8Kに関する技術セミナー」を開催しました。

 総務省は、超高精細な映像技術を活用した4K・8Kによる次世代放送・通信サービスの実現に向けた取組を推進しています。
 2015年12月1日には、四国内の4社を含むケーブルテレビ事業者が4K実用放送を開始するなど、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、4K・8Kは着実に進展している状況にあります。
 本技術セミナーは、4K・8Kの最新の技術動向について御理解いただくとともに、4Kの撮影・編集体験から見えてきた課題や解決方法等について考える機会とするため開催したものです。

会場の様子

 

 最初に、NHK放送技術研究所 テレビ方式研究部の池田 哲臣(いけだ てつおみ)部長が、「4K・8K放送の技術動向」と題して講演しました。
 池田(いけだ)講師からは、主にNHKで進めている8K放送の技術動向について、研究所の立場から御紹介いただきました。
 まず、フルスペック8Kスーパーハイビジョン制作に向けた研究・開発状況として、フルスペック8Kに関する撮像の「3,300万画素3板式」、「1億3,300万画素単板式」、「3,300万画素単板式プラスデモザイク処理」といった3通りのアプローチ方法や、制作用機器間インターフェースの特徴、記録装置、高ダイナミックレンジ(HDR)といった番組制作技術について解説があり、従来方式と比較して、明暗の大きなシーンにおいては白飛びや黒つぶれが出にくくなる等のメリットが紹介されました。
 次に8Kスーパーハイビジョンの伝送について、衛星放送とケーブルテレビによる伝送技術とその特長が解説されました。衛星放送では、映像・音声・データ・字幕・アプリといった番組構成要素をパッケージ化し、放送と通信の複数伝送路により配信(トランスポート)し、指定する時刻にディスプレーの指定位置へ表示(同期合成・提示)するMMT(MPEG Media Transport)多重方式等について解説され、技研公開2015における衛星による8K伝送実験の様子も紹介されました。また、ケーブルテレビについては、大容量8K信号を1チャンネルの伝送容量以下に分割し、実用化されている複数TSフレームに多重し、受信信号からフレームを取り出して合成し8Kを復元する複数搬送波伝送方式等について解説され、ケーブルテレビ伝送に向けた国内・国際での規格・標準化スケジュール等も紹介されました。
 さらに、家庭視聴用の音響・表示再生技術についても、8K対応のディスプレーやスピーカーの開発動向が解説されました。家庭用音響再生技術は、低域強調用サブウーハーを4個組込み、ディスプレーの周りに12個のスピーカーを設置したディスプレー一体型枠型スピーカーの開発等について紹介された後、家庭用表示再生技術も、直視型やシート型のディスプレーの開発や曲げた状態でも安定した動画表示ができるディスプレーの試作等が紹介されました。

池田(いけだ)講師の御講演の様子

 

 続いて、株式会社愛媛CATVの白石 成人(しらいし なると)常務取締役が、「4K時代の映像制作技法とケーブルテレビの挑戦≪4Kをむつかしく考えない!≫」と題して講演しました。
 まず、地域オリジナル4Kの試験放送や「タウンチャンネル4K」へのバージョンアップといった愛媛CATVによる4Kへの取組が紹介されました。
 次に、白石(しらいし)講師の独自の見解として「4Kで高解像度になったと言われるが、映画のフィルムはもともと高精細であり、映画では高画質を活かした制作手法が採用されてきた。高解像度時代の映像制作手法は、映画界に学ぶべきである。」と提言されました。
 また、初期の4K画像を見た人が「何か疲れた。」「酔った。」との感想を持った原因については、肉眼と映像の情報量の格差から来ているものとし、4K制作の場面ではこれまで以上に画面を通じて作り手の意思を反映させ、見てほしいものに集中させることが要求されるだろうと述べました。そのため、いかに不要な情報を間引くかが重要であり、その手法として「フォーカス(ピント)」、「明るさ(露出)」、「動き」について、それぞれ具体的に解説されました。
 そして、4Kを難しく考えないことが大切であるとし、その具体例として、「4Kカメラは暗部に弱いと言われるが、明るいところで撮れば大丈夫。」「ピントがシビアだと言われるが、作り手の主張を反映できるチャンスと考えよう。」、「データの保存が大変だと言われるが、現地でできるだけ編集して、情報量を軽くしてスタジオにもって帰ればよい。できるだけ保存しなくてもよい方法を考えよう。」等のアドバイスがありました。さらに、愛媛CATVの4K設備や編集方法について、同社放送部の福原(ふくはら)課長により紹介されました。

白石(しらいし)講師の御講演の様子

 

 10分間の休憩後、「4K撮影・編集workshop」発表会が開催されました。
 発表にあたり、四国情報通信懇談会コンテンツ部会の白石(しらいし)代表幹事から、本Workshopの趣旨について、4Kの映像を制作する上での映像素材の選択や、撮影・編集での技術面の課題を探し出すため、これまで2Kでの映像制作に携わってきた人たちに実際に4Kを体験してもらう機会を設けたものであるとの説明がありました。
 その後、Workshopに参加した愛媛大学総合情報メディアセンター教育デザイン室(1作品)、愛媛大学メディアサポーターズ映像部(1作品)及び河原デザイン・アート専門学校(4作品)の3団体6作品が会場で上映され、各作品の代表者が、撮影・編集等にあたって苦労した点や感想等を発表しました。
 愛媛大学総合情報メディアセンター教育デザイン室の都築(つづき)さんからは「カメラを手持ちで撮影したが、思ったよりも画面がぶれた。撮影には三脚が必要だと感じた。」、また愛媛大学メディアサポーターズ映像部の小笠原(おがさわら)さんからは「4Kはピントがシビアであった。また、イルミネーションが綺麗に撮影できたので、そこを印象的に見せるように編集した。」、「4Kは青がきれいに表現できる」とのコメントがありました。さらに、河原デザイン・アート専門学校の立入(たちいり)さん、久岡(ひさおか)さん、宮道(みやじ)さん、宮ア(みやざき)さんからは「4Kのカメラは狭い室内での撮影が難しいと感じた。」、「解像度が高いので、人物が現実に近い画で撮影できる。」との感想やコメントがありました。
 発表会の最後には、白石(しらいし)代表幹事が「今回、学生の皆様の柔軟な対応力に驚いた。4Kはまだまだ新しい技術であるが、まずは慣れていくことが重要。ぜひ若い人たちを中心に、今後も機会をとらえて4Kの撮影にチャレンジしてほしい。」とまとめました。

「4K撮影・編集workshop」発表会の様子

 

 技術セミナーの最後は、国立研究開発法人情報通信研究機構 テストベッド研究開発推進センター テストベッド構築企画室の鷹取 耕治(たかとり こうじ)専門調査員が、「新世代通信網テストベッド(JGN-X)について」と題して講演しました。
 新たなネットワークの実現に不可欠な要素技術を統合した大規模な研究ネットワークであるJGN-Xは、大規模エミュレーション環境(StarBED3)を構築し、エミュレーションから開発・実証まで行える総合的なテストベッド環境を利用して、新世代ネットワーク技術のスパイラル的進展を目指しています。広く産学官にも開放し、タイムリーなアプリ開発等、利活用も促進しており、 海外の研究機関とのネットワーク接続等も整備し、国際共同研究・連携や国際展開を推進しています。
 講演では、まず、全国のJGNユーザ活用事例について、高帯域活用事例として「リアルタイム指向ネットワークコンピューティング技術を用いたストリーミングクラウド機能の検証」と、さっぽろ雪まつり期間に2014年から3年連続で実施した情報通信研究機構主催の実証実験「8K/4K映像のネットワーク伝送実験」の事例が紹介されました。続いて、防災事例として「スパコン連携によるリアルタイム津波浸水・被害予測シミュレーションシステムの高度化」が、広域網活用事例として「JGN-Xの広域L2網を活用した全国地震データ交換・流通システムの構築」が紹介されました。
  次に、四国における活用事例について、愛媛大学等によるSCOPE事例として「スマート環境センシング基盤の構築と地域デザインへの応用に関する研究開発」、高知工科大学等による地域間連携医療事例「南海トラフ大規模災害に備えた仮想化技術による地域間連携医療情報ネットワーク」、仮想化環境利用事例として愛媛大学等による「医療情報の秘密分散バックアップ技術の研究開発」が紹介されました。
  最後に、JGN-Xの利用を参加者に呼び掛けて、講演は終了しました。

鷹取(たかとり)講師の御講演の様子

 

 なお、本技術セミナーでは、同会場において協力企業による4Kカメラ・編集機材、ドローン等の展示・実演も行われ、多くの参加者が興味深く見学していました。

展示の様子

 

 今回の技術セミナーには、愛媛県内外から90名が参加され、4K・8Kの最新の技術動向や編集技術について理解を深めていただくことができました。四国総合通信局では、今後もICTの研究開発推進のため最新の技術動向を紹介して参ります。


表:4K・8Kに関する技術セミナー 講演資料
演題 講師 資料ダウンロードURL
4K・8K放送の技術動向 NHK放送技術研究所 テレビ方式研究部
 部長
 池田 哲臣(いけだ てつおみ)氏
資料(PDF 3.2MB)PDF
4K時代の映像制作技法とケーブルテレビの挑戦
≪4Kをむつかしく考えない!≫
株式会社愛媛CATV
 常務取締役
 白石 成人(しらいし なると)氏
資料(PDF 1.8MB)PDF
新世代通信網テストベッド(JGN-X)について 国立研究開発法人 情報通信研究機構
 テストベッド研究開発推進センター
 テストベッド構築企画室
 専門調査員
 鷹取 耕治(たかとり こうじ)氏
資料(PDF 5.1MB)PDF

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