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高知市で「防災・災害対策とICTに関する技術セミナー」を開催

 四国総合通信局は、四国情報通信懇談会、高知県公立大学法人高知工科大学と共催で、平成28年9月9日(金)に高知市において「防災・災害対策とICTに関する技術セミナー」を開催しました。

 平成23年の東日本大震災においては、災害時におけるラジオの有用性や携帯電話の通信の確保の重要性が改めて認識されるとともに、インターネットサービスとしてのSNSの情報が災害対策への有効性が注目され、その教訓を踏まえて開発されたツイッターの「つぶやき」を分析し、刻々と変わる被災者の困りごとをリアルタイムで自動整理する「対災害SNS情報分析システム(DISAANA:ディサーナ)」が、平成28年熊本地震で提供されるなど、災害対策としてのICTの利活用が進展しつつあります。
 熊本地震など大規模災害では、発生直後の避難所等でのネット利用環境整備から、復旧復興に向けた活動のあらゆる場面において、通信・放送の確保が必要不可欠なものであり、そのための研究開発が益々重要となっています。
 本セミナーは、30年以内に70%程度の確率で起こるとされる南海トラフ地震への備えを念頭に、防災・災害対策としてのICT利活用や研究開発の状況を紹介し、この分野におけるICT利活用の動向について御理解いただくとともに、ICTによる新たな課題解決方法等について考える機会とするため開催したものです。

セミナー会場の様子

 

 はじめに、香川大学 工学部/危機管理先端教育研究センター(併任)の井面 仁志(いのも ひとし)教授が、「遠隔仮想防災訓練シミュレータによる遠隔地訓練への取り組み」について講演しました。
 香川大学危機管理先端教育研究センターでは、東日本大震災の教訓をもとに、想定を超える災害発生時において、「適切な状況判断」、「素早い意思決定」、「速やかな行動」ができる、実践力(コンピテンシー)を備えた人材の育成を目的に、「災害状況再現・対応能力訓練システム」を開発し、学校教員や地域の方々を対象に公開訓練を実施してきております。香川大学では、「災害状況再現・対応能力訓練システム」の広域活用を目指して、システムが再現する災害状況映像や音声をタイムラグなくリアルタイムで送信可能するための遠隔仮想防災訓練シミュレータの開発に取り組んでいます。
 講演では、香川会場(高橋 亨輔(たかはし きょうすけ)助教と高橋 真里(たかはし まり)技術補佐員が担当)と高知会場間をJGN(ギガビットの高速ネットワーク)で結び、高知会場の2人の方に遠隔仮想防災訓練シミュレータによる遠隔地訓練を体験していただくとともに、訓練システムの概要と遠隔地訓練の取組を御紹介いただきました。

井面(いのも)講師の御講演の様子

遠隔仮想防災訓練シミュレータによる遠隔地訓練の様子

 

 次に、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)総合テストベッド研究開発推進センターの鷹取 耕治(たかとり こうじ)専門調査員が「NICT総合テストベッドの概要について≪テストベッドを活用した地域防災研究例紹介≫」について講演しました。
 国立研究開発法人情報通信研究機構(略称:NICT)では、平成11年度から研究開発テストベッドネットワーク「JGN」の運用をおこなっています。JGNは、研究開発の目的であれば、原則として誰でも利用することができるネットワークです。
 JGNは技術動向を踏まえながらネットワーク機能・性能を拡充し、その運用を通じて先端的な研究開発や多様なアプリケーションの実証実験等、幅広い研究活動を推進してきました。今回の講演ではJGNを含めたNICTの総合テストベッド概要について、熊本地震におけるDISAANA(対災害SNS情報分析システム)など地域防災研究に用いられた事例を含めて御紹介いただきました。

鷹取(たかとり)講師の御講演の様子

 

 続いて、KDDI株式会社 復興支援室の阿部 博則(あべ ひろのり)室長が「東日本大震災からの復興に向けた取り組み」と題して講演しました。
 東日本大震災において、情報通信は社会インフラとして重要な役割を果たす一方で、強化すべき耐災害性の課題も明らかになりました。この経験を通じて得られた教訓から、KDDIが進める非常時に強い通信インフラ整備の取り組みを紹介するとともに、被災地で進める復興活動、ICT/IoT活用や今後の社会課題等などを御紹介いただきました。

阿部(あべ)講師の御講演の様子

 

 最後に、一般社団法人九州テレコム振興センター(KIAI)の広岡 淳二(ひろおか じゅんじ)専務理事が「熊本地震について」と題して講演しました。
 講演では、熊本地震について、主に九州総合通信局における災害対策用移動通信機器・移動電源車のPUSH型貸出しや臨機の措置による臨時災害放送局の免許などの対応を紹介していくとともに、1被災者として災害時の情報通信に求められる点についてもコメントされました。

広岡(ひろおか)講師の御講演の様子

 

 講演の後は、四国情報通信懇談会 ICT研究交流フォーラム 代表幹事であり、高知工科大学情報学群の福本 昌弘(ふくもと まさひろ)教授の司会により、災害に役立つICTに関するミニ討論会として、講師の方々とセミナー参加の方々とを交えて意見交換等を行いました。
 ミニ討論会では、ツイッターについては一部の人の声が大きく広がることや、時間変化が適切に更新される必要があることなどの難しさが指摘され、熊本地震では避難所へ入らずに車中泊の人が多かったことから、これら自助の人への情報提供やサポートが課題となったとの意見がありました。
 また、被災した自治体では、救援物資の配分やボランティアの配置などの対応ができないため、周辺自治体がサポートする体制が必要だが、熊本地震のような直下型地震は、発生確率が低くてもいつどこで起こるかわからない。南海トラフ地震に対する災害対策拠点となっている香川県でも、直下型地震が発生することがあることを想定して、サポート体制を考えておく必要があるのではないか、などの意見が出されました。

福本(ふくもと)司会によるミニ討論会の様子

 

 セミナーの最後に、四国総合通信局の松田(まつた)情報通信部長から、「防災訓練の中でも情報通信の位置づけが重くなってきていると実感しているが、災害が起きたときは、確かな情報をどうやって迅速に集めて、どう伝えていくかが一番重要。また、事前に決められることは決めておくことが必要だが、東日本大震災の例でも災害時は想定していないことが起きるのが災害で、想定すればいくらでもいろいろなパターンが出てくる。標準マニュアル以外の事態が起きたときにどう対処するか、臨機応変に対応できる人材作りが必要になってくる。訓練の仕方としても、シミュレータのようにパターンがどんどん変わって、柔軟に対応できるように訓練をすることが必要ではないか。ICTを災害時にどう使っていくかも、地域に根ざして永続的にやっていく人材を見つけて育てていくことが重要で、改めて人材育成がいろいろな分野で必要と実感した。」と締めくくりました。

表:防災・災害対策とICTに関する技術セミナー 講演資料
演題及び講師 資料ダウンロードURL
(1)演題:「遠隔仮想防災訓練シミュレータによる遠隔地訓練への取り組み」
  講師:香川大学 工学部/危機管理先端教育研究センター(併任)
    教授 井面 仁志(いのも ひとし) 氏
    助教 高橋 亨輔(たかはし きょうすけ) 氏
資料(PDF 2.8MB)PDF
(2)演題:「NICT総合テストベッドの概要について
  ≪テストベッドを活用した地域防災研究例紹介≫」
  講師:国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)
    総合テストベッド研究開発推進センター
    専門調査員 鷹取 耕治(たかとり こうじ) 氏
資料(PDF 7.8MB)PDF
(3)演題:「東日本大震災からの復興に向けた取り組み」
  講師:KDDI株式会社 復興支援室
    室長 阿部 博則(あべ ひろのり) 氏
公開資料なし
(会場での紙配布のみ)
(4)演題:「熊本地震について」
  講師:一般社団法人九州テレコム振興センター(KIAI)
    専務理事 広岡 淳二(ひろおか じゅんじ) 氏
資料(PDF 2.5MB)PDF

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