【東海総通】マイメディア東海

平成26年3月24日
東海総合通信局

コラムvol.11 電波はどこまで飛ぶの?

はじめに

 皆さんは、出力1ワットの送信機でどのくらいの距離まで電波が届くと思いますか?

 アマチュア無線家のAさんは、短波帯だったら、電離層反射で1000キロメートルくらい届くと言い、同じアマチュア無線家のBさんは、せいぜい数キロメートルくらいだよと言います。
宇宙のことに詳しいCさんは、無線機出力はわからないけど、小惑星イトカワから地表サンプルを持ち帰った「はやぶさ」は2700万キロメートルの通信をしているよと言います。

 誰の言っていることが正しいのでしょうか?

 コラムVol.9 トランシーバーで、通信距離の説明は難しいのです。と書きました。
通信距離を決める要素は無線機の出力だけではありません。
どんなアンテナを使うか?(アンテナの性能はどれだけか)、周波数は?(電離層に反射するのか)、受信機の感度は?(信号復調に必要な受信機入力)、送信地点、受信地点間は見通しかどうか?反射はあるかどうか?(障害物の有無)、送信局/受信局が動くかどうか?、等々あまりにも多くの要素に左右されるからです。

 1ワットの無線機でどこまで電波が飛びますか?といった単純な質問をされても簡単に答えることができません。
このコラムでは、条件を限定して説明をしていきたいと思います。

 まず、説明に使う用語の解説からしていきます。

用語解説

デシベルってなに?

 電波の説明をするときに、「デシベル」という単位を使います。
「デシベル」とは、基準値の信号と比較してどの程度大きいと表現する方法です。
コラムVol.2 重要無線局障害対応でも、電波の強さを50デシベル、80デシベル、100デシベルなどと使っていましたね。(単位は、dBμVです。)

 私たちが、「デシベル」という単位を使うのは、主に2つの理由があります。

 一つ目の理由は、あつかう数値が広範囲な無線機の出力電力や電界強度などは、単位をデシベルにするとあつかいやすいからです。(例:0.01ワット〜1000ワットをデシベルにすると、10デシベル[dBm]〜60デシベル[dBm]となります。)

  • 1ミリワットを基準としたときのデシベルの単位(dBm(デシベル))
  • 1マイクロボルトを基準としたときのデシベルの単位(dBμV(デシベル・マイクロボルト))
  • 1マイクロボルト毎メートル(電界強度)を基準としたときのデシベルの単位(dBμV/m(デシベル・マイクロボルト毎メートル))

 二つ目の理由は、電界強度計算などに必要な要素を、デシベルの単位にしておけば、いろいろな計算をするときに、各要素の足し算、引き算で計算できてしまうことです。

通信距離を計算するための要素について説明します

無線機出力
無線機出力、0.01ワットをデシベルの単位にすると、10デシベル[dBm]になります。
これは、1ミリワットを基準値として1ミリワットの10倍の電力なので、10デシベル[dBm]となります。ちなみに、1ワットは1ミリワットの1000倍なので30デシベル[dBm]になります。
アンテナの性能
アンテナの性能が20デシベルというのは、基準アンテナの100倍の性能ということです。
360度すべての方向に拡散する電波を一定方向に集中して放射する性能をいいます。
マイナスが付くと基準アンテナよりも性能が悪くなります。(マイナス5デシベル=0.3倍)
周囲の建物などによる損失
送信地点と受信地点の間に建物などの障害物があると、電波は、障害物に反射したり吸収されるため、弱くなってしまいます。これらの影響で、電波の強さが何分の一になるかをいいます。
自由空間伝搬損失
送信点から、dキロメートル離れたときに、電波の強さ(エネルギー)が何分の一になるかをいいます。
電波は、基準アンテナから放射されると、球状(360度)に拡散します。
図1:自由空間伝搬損失の説明
距離 d1の電波の強さと、距離 d2の電波の強さを比較すると、電波は球の表面積に比例して弱くなります。
従って、周波数が同じであれば、送信点から距離 dメートル離れた受信点での損失は、4πd2分の1になります。
また、送信に使用する周波数によっても損失は変化します。
基準アンテナ(等方性アンテナ)の実効面積は、λ2/4π(注)なので、周波数と距離を考慮した損失は、4πd2×4π/λ2となります。
自由空間伝搬損失は、(4πd/λ)2となります。
 注記
  • λ(ラムダ)は電波の波長です。λメートルは、300/周波数(F)メガヘルツで計算できます。
受信機の感度
電波はアンテナから電気信号として受信機の受信回路に入り音声信号になります。
弱い電波(受信機入力電力)でも明瞭に音声が復調できれば受信感度が良い受信機となります。
一般的な受信機の感度は、マイナス120デシベル(dBm)前後のものが多いので、計算例に使用する受信感度は確実に音声が復調できるマイナス110デシベル(dBm)としました。

電波はどこまで飛ぶのか

 次のとおり、条件を限定して計算します。

  1. 特定小電力トランシーバーを計算例とします。
  2. 周波数は、420メガヘルツ
  3. 無線機出力は0.01ワット(10デシベル[dBm])
  4. アンテナの性能は、マイナス5デシベル
  5. 受信機の感度(受信機入力:マイナス110デシベル[dBm])
  6. 周囲の建物などによる損失は、周りの状況で大きく変化します。
    ここでは、30デシベル[dB]としました。

以下の計算例では、通信距離が約570メートルとなりました。

順番に計算していきます。
まず受信に必要な受信機入力電力を決めます。(マイナス110デシベル[dBm]とします。)
そして、通信距離が長くなる要素(プラスの要素)と短くなる要素(マイナスの要素)を足し算、引き算すると、通信距離が計算できます。

プラスの要素
  • 無線機出力(10デシベル:dBm)
  • 送信アンテナ利得(−5デシベル:dBi)
  • 受信アンテナ利得(−5デシベル:dBi)
マイナスの要素
  • 距離による自由空間伝搬損失(Lデシベル:dB)
  • 周囲の建物などによる損失(30デシベル:dB)

受信機入力電力(−110dBm)=無線機出力(10dBm)+送信アンテナ利得(−5dBi)+受信アンテナ利得(−5dBi)−自由空間伝搬損失(LdB)−周囲の建物などによる損失(30dB)

自由空間伝搬損失Lは、80dBとなります。
自由空間伝搬損失Lが80dBとなる距離は、
20log(通信距離 d)[km]=80(自由空間伝搬損失 L)−32.4−20log 420(周波数 F)[MHz]から
通信距離は、約570メートルとなります。

図2:通信距離の計算

 できるだけ、遠くと通信しようとする場合は、アンテナが高性能のトランシーバーを選択したり、山の上など、障害物がない場所で通信するとよいことがわかります。

周波数と通信距離の関係

 先ほど、通信距離を計算した式、
20log(距離 d)[km]=80(自由空間伝搬損失 L)−32.4−20log(周波数 F)[MHz]
を見て、何か気づきませんか?
自由空間伝搬損失 Lが同じなら、周波数の違いのみによって通信距離が変わってきます。

例えば、周波数を800メガヘルツとすれば、通信距離は、299メートルとなります。
周波数を2ギガヘルツとすれば、通信距離は、119メートルとなります。
計算上は、周波数が低いほど通信距離が伸びることになります。
無線局のシステムを設計する際には、周波数が高いほど、高利得のアンテナが作りやすいなど、その他の条件を考慮して、システム設計をします。

おわりに

 トランシーバーの電波はどこまで届くのか。の説明については、限定的な説明になってしまいました。
でも、このコラムを読んで、少しでも電波のことに興味を持っていただけたら、うれしいです。

 短波帯の電波は、電離層反射で遠距離通信ができ、マイクロ波帯の電波では、雨雲をとらえることができるなど、電波が、皆様のお役に立っているということを紹介していけたらいいなと思っています。

 宇宙空間との通信例では、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士と小学生がアマチュア無線で通信をしています。興味がある方は、マイメディア東海の記事国際宇宙ステーションの飛行士と小学生が交信をご覧ください。


連絡先
東海総合通信局 企画広報室
電話:052-715-5110

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