【東海総通】マイメディア東海

平成27年3月24日
東海総合通信局

コラムvol.24 ワイヤレス給電

はじめに

 電化製品に電源を供給するには電源コードが必要ですが、電磁波を使って電源コード無しで電力を供給する技術が脚光を浴びています。ワイヤレスに電力を給電する技術は、19世紀末頃から研究されています。

 ワイヤレス給電が普及すると、私たちの生活はどのようになるのでしょうか。

 電気自動車は、駐車場に駐車しているだけで満充電になり、オフィスや家庭からはコンセントがなくなり、パソコンや携帯型AV機器は机の上に置いておくだけで充電ができてしまうようになるのでしょうか。

 次のような予想もあります。

  • 国内のワイヤレス給電ができる電気自動車は、2015年にリリースが開始され、2020年以降に本格的に普及する見込み。(2020年:15〜20万台/年、2030年:50〜75万台/年)
  • ワイヤレス給電システムを搭載したスマートフォン(携帯電話)が2015年に、産業向けIT装置が2016年にリリースされ、タブレットPC、ノートPCにも順次搭載され、2018年には本格的に普及(2017年:3.3億台/年:世界市場でワイヤレス給電を搭載した機器の普及予測)

 今時、ACプラグがある電化製品をもっているの?という世界は、すぐ近くまで来ているのかもしれません。

ワイヤレス給電

 電源コードが不要になれば、住宅内で家電の自由な配置が可能になるだけでなく、バッテリー内蔵の機器の小型化が実現するほか、給電困難な機器(カプセル内視鏡など)への給電も可能になるなど、様々な利用方法が期待されています。

 電波はエネルギーであるということは、既にコラムで紹介しました。(注)

ワイヤレス給電には、次のような方式があります。

 注記

表:ワイヤレス給電の方式
方式 電磁誘導方式(変圧器型) 共鳴方式(共振) 電波受信方式
磁界共鳴方式 電界結合方式(電界共鳴方式)
特徴
送電側のコイルに電流を流すと磁束が生じ、受電側のコイルにも電流が流れることにより充電する。

送電側と受電側にコイルを埋め込み、それぞれのコイルを共鳴させることによって生じた電力により充電する。

送電側と受電側の、電極が接近したときに発生する電界を利用して電流を伝送して充電する。

受信側で受信した電波を整流回路で電流に変換することにより充電する。
  1. 数kW程度の電力を流せる。
  2. 位置ずれに弱い。
  3. 電動歯ブラシ等で商用化。
  1. 数kW程度の電力を流せる。
  2. 位置ずれにも強い。
  3. 電磁誘導方式よりも距離を長くとることが可能。
  1. 100W程度以下の電力で運用可能。
  2. ほぼ密着した状態で使用する。
  3. iPad2のワイヤレス充電等で商用化。
電波を整流回路で直流に変換して利用。

 最近、トランスという単語を聞かなくなりました。電子機器の電源に必ず使用されていましたが、現在の電源回路は、トランスレスのものが多くなっています。実は、トランスの動作原理は、ワイヤレス給電の一方式である電磁誘導方式と基本的には同じで、複数のコイルと電磁誘導を利用したものでした。

 ワイヤレス給電の商品化や発展を進めるきっかけとなったのが、2007年に米国MIT(マサチューセッツ工科大学:Massachusetts Institute of Technology)が提唱した共鳴送電方式でした。共鳴送電は、メガヘルツオーダーの電磁誘導(磁界)作用にキャパシタンス(静電容量)を加えて共鳴現象を起こし、ワイヤレス給電の距離を伸ばすことができる技術です。この技術により、ワイヤレス給電の商品化や標準化が進みました。

自動車タイヤ実験

 今回のコラムでは、豊橋技術科学大学の大平 孝(おおひら たかし)教授が行っている電気自動車へのワイヤレス給電の実験について紹介します。

写真1:豊橋技術科学大学

 電気自動車への充電は、磁界を使った方式が主流です。それは、送受電のコイルなどをピッタリくっつける必要がなく、その上、ある程度の位置ずれにも強いからです。一方、大平研究室では電界結合方式を採用しています。

 この方式は、ほぼ密着状態であることが必要ですが、自動車は常にタイヤと道路と接触しているという点に着目しました。

 ゴム製のタイヤには通常の50/60ヘルツの電流は流れませんが、高周波電流の場合、ゴムは誘電体として働くという性質や、タイヤには金属製のスチールベルトが埋め込まれている等の特徴を利用して、電流をメガヘルツ帯の高周波エネルギーに変換し、タイヤを介して車両に電力を供給するシステムを考え、実験を行いました。

 このシステムの実現には、色々な問題点がありましたが、工夫を行うことで解決し、路面下のアルミ電極板から左右のタイヤを介して車軸間にエネルギーが伝わり、白熱電球が点灯しました。

図1:自動車タイヤ実験の構成

写真2:自動車タイヤ実験の様子

走行中給電実験

 次の段階では、金属板をはめ込んだ電化フロアを人が乗車した電動カートの走行実験を行いました。

 写真4では、電化フロアから電動モーターに高周波エネルギーが給電され、実際に人を乗せた状態で電動カートを走行させることができました。

 なお、この実験は、総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)の平成25年度研究開発課題に採択されています。

 このシステムは、走行コースが固定の用途(工場内搬送車)に利用できるほか、将来は高速道路での給電走行等の可能性にもつながるものです。

写真3:実験室と電動カート

写真4:人が乗車した走行実験

おわりに

 最近、宇宙空間に太陽光パネルを設置して、発電した電力を電波で地上に送る構想が発表されました。無線送電の技術が開発されれば、離島への電力供給も可能となりますが、実現には時間がかかりそうです。

 ワイヤレス給電システムが普及するためには、電磁波のエネルギーを空間を介して伝えなければならないという特徴から、

  1. 他の機器に影響がないように漏えい電磁波を制限すること
  2. 人の近くで使用する機器であるため、人体に悪影響があってはならないこと

などの課題を解決しなければなりません。

 総務省では、1、2などの問題を解決し、快適な生活空間で仕事や生活ができるよう、情報通信審議会の電波利用環境委員会にワイヤレス電力伝送作業班を設置して、技術的条件等の検討を行っています。


連絡先
東海総合通信局 企画広報室
電話:052-715-5110

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