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国連の公的統計の基本原則(1994年国連統計委員会採択、2013年前文改定、2014年総会決議)

国連の「公的統計の基本原則」とは

 国連の「公的統計の基本原則」(United Nations Fundamental Principles of Official Statistics)は、前文と10の個別原則からなるもので、世界の全ての国々の政府統計部局が、公的統計を作成する際に遵守するべき国際的な基準として、1994年に国連統計委員会(United Nations Statistical Commission:UNSC, 注1)において採択されました。その後、2013年2月の同委員会において、同原則の前文の改定が行われ、さらに、本改定を踏まえた同原則は、同年7月の経済社会理事会において採択され、翌2014年1月の国連総会にて、我が国も共同提案国となって決議を得ました。


 公的統計は、国民にとって合理的な意志決定を行うための基礎となる重要な情報であり、中央政府や地方政府の施策立案、施策評価などのために必要不可欠なものです。それだけに、公的統計は、正確で信頼できるものであることがとても重要です。

 統計調査が統計理論などの科学的方法に基づいて計画され、結果数値について必要な精度が確保されていることは重要な要素です。

 しかし、それだけでなく、公的統計の作成に関する枠組み(統計法などの法制度の確立、個人情報の厳重な秘匿など秘密保護の遵守、結果の利用者への公平な提供など)について、国際的に幅広く合意を得た基準を満たしていることもまた、重要な要素です。これらの要素を取り入れた「公的統計の基本原則」は、当初、1992年に欧州統計家会議(Conference of European Statisticians:CES, 注2)及び国連欧州経済委員会(United Nations Economic Commission for Europe:UNECE)で採択され、その後、1994年に国連統計委員会において採択されて以来、世界各国の公的統計作成における国際的な基準として位置付けられています。

 我が国でも、平成18年6月に統計制度改革検討委員会が取りまとめた「統計制度改革検討委員会報告」の中で、この原則が取り上げられており、我が国の統計法や統計行政にもこれらの原則の主旨は取り入れられています。


 総務省政策統括官(統計基準担当)は、統計関係者のみならず国民の皆様にも広くこの考えをご理解いただくとともに、この「公的統計の基本原則」に則り、各府省の統計作成部局と協力しつつ、公的統計の更なる発展・改善の推進に努力する所存です。


 以下に掲載するものは、平成26年3月現在、 国連統計部ホームページ〔英語〕別ウィンドウで開きます で紹介されている英語版の「I.基本原則が作成された背景」、及び平成26年1月に総会決議を得た「II.公的統計の基本原則」を、総務省政策統括官(統計基準担当)の責任で日本語に仮訳したものです。


注1:UNSCの概要については、国連統計委員会参照。

注2:CESは、国連欧州経済委員会(Economic Commission for Europe:ECE)の下部機関の1つ。主に欧州諸国の公的統計機関の長等(Statistician)が参加する総会を毎年1回開催し、欧州の公的統計及び国際比較性の改善並びに欧州における統計活動の調整等について議論を行う。

I.基本原則が作成された背景

 中央ヨーロッパ諸国が中央計画経済から市場志向的な民主主義へと変化し始めた1980年代末、公的統計を司る一連の原則の必要性が明らかになった。そのような国における国家統計制度が、確かな専門的、科学的基準を伴った適切かつ信頼できるデータを作成することができるようになることを確実にすることが重要であった。この目的に向けて、欧州統計家会議は、1992年に「公的統計の基本原則(Fundamental Principles of Official Statistics)」を開発し、採択した。世界の他の国々の統計家も、しばらくしてまもなく、これらの原則は、より広範囲でグローバルな重要性を持つものであることを理解した。国際的な協議プロセスに続いて、国連統計委員会が、1994年4月11日−15日の特別会合で、国連の「公的統計の基本原則」として、改定された前文とともに全く同じ原則を採択したとき、国際統計の歴史におけるマイルストーンが 達成された。

 2011年の第42回国連統計委員会において、同委員会は、「公的統計の基本原則」について議論を行い、原則は過去においてそうであったように現在においても依然として適切なものであり、10の個別原則については改定の必要はないと認めた。しかし、同委員会は、議長の友人グループにより、原則が初めて策定されて以来の新たな展開を考慮に入れるため、「公的統計の基本原則」の前文については見直し、更新するよう勧告した。2013年の第44回会合において、同委員会は、改定された前文を採択した。

II.公的統計の基本原則

 前文

 総会は、


  • 国家及び世界の開発課題に係る公的統計の基本的重要性を強調した総会及び経済社会理事会の近年の決議(注)を想起しつつ、
  • ますますつながりを増している世界において、オープン化や透明性を求める国家や人々の相互知識及び取引のためのみならず、持続可能な開発や平和と安全保障に資する分析や十分な情報に基づいた政策的な意思決定に資する高品質な公的統計情報の重要な役割に留意しつつ、
  • 公的統計制度の高潔性に対する公衆からの必要不可欠な信用及び統計に対する信頼は、自らを理解し、その構成員の権利を尊重することを求める社会の基礎となる基本的な価値と原則の尊重に大いに依存していること、またこの文脈において統計機関の専門的独立性と説明責任が非常に重要であることにも留意しつつ、
  • 統計業務を司る基本的価値と原則を効果的なものとするためには、これらの価値と原則が法的及び制度的枠組によって保証されるとともに、全ての政治レベル及び国家統計システムの全てのステークホルダーによって尊重されなければならないことを強調しつつ、

1994年に国連統計委員会によって採択され、2013年に再確認され、決議2013/21において経済社会理事会によって承認された、下記の公的統計の基本原則を承認する。


注:これらの決議には、「世界統計の日」に関する総会決議64/267、世界人口・住宅センサスプログラムに関する経済社会理事会決議2005/13、統計能力の強化に関する同理事会決議2006/6及び公的統計の基本原則に関する同理事会決議2013/21が含まれる。

原則1

 公的統計は、経済・人口・社会・環境の状態についてのデータを政府、経済界及び公衆に提供することによって、民主的な社会の情報システムにおける不可欠な要素を構成している。この目的のため、公的な情報利用に対する国民の権利を尊重するよう、公的統計機関は、実際に役に立つ公的統計を公正にまとめ、利用に供しなければならない。

原則2

 公的統計への信頼を保持するために、統計機関は、科学の原理と専門家としての倫理を含む厳密に専門的な見地から、統計データの収集、処理、蓄積及び公表の方法及び手続を決定する必要がある。

原則3

 データの正しい解釈を促進するため、統計機関は、統計の情報源、方法及び手続に関する情報を科学的基準に従って提示しなければならない。

原則4

 統計機関は、統計の誤った解釈及び誤用に関して意見を述べる権利を有する。

原則5

 統計を作成するためのデータは、統計調査又は行政記録など全ての種類のデータ源から入手し得る。統計機関は、品質、適時性、費用及び報告者負担の観点からデータ源を選定するべきである。

原則6

 統計機関が統計作成のために収集した個別データは、自然人に関するものであれ、法人に 関するものであれ、厳重に秘匿されなければならず、統計目的以外に用いてはならない。

原則7

 統計システムを運用するための法律、規則及び諸手続は、公にされなければならない。

原則8

 国内統計機関間の調整は、統計システムの一貫性及び効率性を達成するために不可欠である。

原則9

 国際的な概念、分類及び方法を各国統計機関が用いることは、全ての公的レベルの統計システムの整合性及び効率性を向上させる。

原則10

 統計における二国間及び多国間協力は、全ての国の公的統計のシステムの改善に寄与する。

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