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3−1.自治体EA導入(その1):全庁的な業務改革

☆自治体EA導入のきっかけ

全庁的な業務改革を実施する際には、各部署ごとに個別に目標の達成を図る(個別最適を図る)のではなく、他の部署とのつながりを考えながら目標の達成を図る(全体最適を図る)ことが求められ、各部署等の間における業務の重複や情報の滞留を改善する必要があります。しかし、原課職員が日常的に他の部署の業務を把握をしていることは少ないことから、業務改革の内容が部分最適にとどまってしまう恐れがあります。この点、自治体EAでは、業務に精通している担当職員が共通の記述方式に基づき自らの業務を「見える化」することにより、他の部署の職員も業務を把握することができるようになります。この結果、各部署等の間における業務の重複や情報の滞留を改善し、組織を通じた全体最適化を図ることができるようになります。
今回の総務省の平成17年度自治体EA事業では、庁内の個々の業務機能の標準として、「資料編2:参照モデル(総務省標準第一版)」を提供します。これは、人口規模が異なる複数の地方自治体の業務分析結果や評価に基づいて策定したものであり、これを活用することにより、原課職員が担当業務と参照モデル(総務省標準第一版)との差を明らかにしていくことで業務分析を一通り行うことができます。
全庁的な業務改革を実施する際には、庁内の各組織の部長・課長や担当者が業務改革の意義と実施の必要性について共通の認識を持ち、原課職員が計画実行に積極的に参加することが求められます。自治体EAでは、業務改革における組織全体の目的・目標と部署毎の改革項目・達成目標との関係を明らかにする目的・手段の明確化手法、および、庁内の全組織の部長・課長や担当者が行財政改革などの意義と実施の必要性について共通認識を持つための職員の組織横断的な知識の共有手法を提供します。


☆自治体EA導入の体制づくり

自治体EAを全庁的な業務改革の実施方策として導入する場合にあたっては、トップのリーダーシップが重要なポイントになります。また、庁内の各部署の役職者や担当者が参加した「庁内の上下横断的な体制」を組む必要があります。すでに全庁的な業務改革の実施体制(助役、局長、CIO等の組織・体制)がある場合は、その体制を自治体EAの導入体制とすることもできます。また、実際に自治体EAの各種作業を行う職員を集めたワーキング・グループを構成することも必要です。ただし、策定作業を行うワーキンググループを作ることよりも、活用や評価するためのワーキングループを作ることも重要であることを忘れてはなりません。

事例:

  • 川口市では、総務省の「平成17年度自治体EA事業」において、首長と総務省の事業責任者が直接話す機会を設けて、自治体EAに係る首長の理解を深めました。
     →川口市市長インタビュー

実際に自治体EAにおける各種作業を始める前には、自治体EAに係る関係者向けの説明会、「グループ学習」などを行い、自治体EAについての関係者の理解を深めます。これらは、各部署の理解と積極的な協力を得るためにも必要です。ただし、学習に負荷がかかりすぎないよう、学習を簡略化することについても配慮が必要です。
自治体EA導入検討の担当者となった事務局の職員は、庁内各部署に向けた自治体EAに関する各種情報の発信、スケジュール調整、各種作業結果(分析図表など)の管理、EA講習会などの各種イベントの企画、EAに係る作業の一部を外部に委託する際の委託先の選定や管理を行う必要があります。事務局は、庁内調整や全体の進捗管理を行う「プロジェクト・マネージメント・オフィス(PMO)」としての役割を果たすものであり、各種分析・検討作業は原課の部長・課長や担当者が行います。

事例:

  • 川口市では、総務省の「平成17年度自治体EA事業」において、同市の情報化推進体制である「IT推進会議(議長:助役、委員:各部の部長)」と「IT推進委員会(委員:各課の課長)」が自治体EAの推進体制となりました。また、情報政策課が事務局となり、行革担当部署である行政経営推進室と調整しながら、自治体EAの導入を進めました。
     →川口市における取組み
  • 川口市では、総務省の「平成17年度自治体EA事業」において、基幹系・内部管理系の原課担当者が参加した「業務分析作業のグループ演習」を行いました。
     →業務分析(1) 作業日誌

☆自治体EAにおける各種検討作業の実施

自治体EAの導入体制や作業内容、役割分担の一例は次の表のとおりです。

作業項目 実施
※1
作業

※2
作業分担※3
自治体EA体制 外部の
支援
企業
首長 原課 行革
部門
部長・
課長
担当
1.刷新化の方向性策定 各種資料の収集
首長の方針提示
環境分析 1
組織目標の確認 1
行動成功要因分析
目的手段分析 1
3段階工程表検討
行動目標設定
2A.現状分析 (業務分析) 既存資料の収集
業務の機能構造分析 2
機能・情報実現手段分析
業務情報の抽象化 1
真の業務の姿の把握 1
2B.現状分析(システム分析) 既存資料の収集
インフラの現状整理
アプリの現状整理
3.刷新化対応構造(あるべき姿)検討 1
4.個別課題の解決方策の検討 3
※1 ◎:必須項目、○:簡易に実施可能、●:省略可能
※2:1回2時間のグループ作業を1単位とした場合の、原課職員1人当たりの作業量
※3 ◎:主たる作業者、○:作業者、△:支援者
 

上記の各種作業項目のうち、「1.刷新化の方向性策定」と「2.現状分析(業務分析)」「3. 刷新化対応構造(あるべき姿)検討」とは、並行して実施することが可能です。
例えば集中改革プランなどの中で全庁的な業務改革の方向性(達成目標など)が示されている場合は、「刷新化の方向性策定」作業を省略することができます。また、本手引きの「資料編2:参照モデル(総務省標準第一版)」を業務標準のたたき台として活用することにより、「現状分析(業務分析)」作業の一部を簡易に実施することができます。

事例:

  • 川口市では、総務省の「平成17年度自治体EA事業」において、同市の情報化推進体制である「IT推進会議(議長:助役、委員:各部の部長)」と「IT推進委員会(委員:各課の課長)」が自治体EAの推進体制となりました。また、情報政策課が事務局となり、行革担当部署である行政経営推進室と調整しながら、自治体EAの導入を進めました。
     →川口市における取組み

自治体EAを全庁的に導入する場合、その対象業務の範囲を最初から広げすぎてしまうと、現状分析作業等の段階で原課職員に過度の負担を強いることとなり、具体的な課題解決の検討まで至らない可能性があります。
このため、自治体EAを全庁的に導入する場合においても、まず最初は自治体EAを適用する業務を限定することが考えられます。これにより、一定期間内に具体的な課題解決の検討まで至り、一定の導入効果を出すことが可能となります。さらに、その導入効果を庁内に報告することで、自治体EAの導入に関する庁内合意を得ることができます。その後、自治体EAの対象業務を段階的に拡大することで、最終的に庁内の全業務への自治体EAの適用を行います。
自治体EAを最初に適用する業務としては、窓口業務、各種税・料の収納業務、職員の人事給与や厚生に係る諸手続といった、複数の部署に共通する業務が適していると考えられます。

参考 川口市での作業状況(その1)

作業名 内部管理業務:財務会計 現状分析(業務分析)作業
日時 平成18年1月19日(木)
13:30 〜 16:00
場所 川口市役所
本庁舎五階大会議室
参加者 職員:
財政課 岩城課長補佐、会計課 田村副主幹、妹尾主任、園田主任、山本主事、契約課 荒井主任、管財課 相原課長補佐、室井主査、買田主査、森主査、総合政策課 永井係長、行政管理課 板倉主査
支援企業:
大和総研 堀井、京都電子計算鶴衛、行政システム 渡辺、NTTデータ 角田 他
使った資料
なし
概要

参加者は、作業前に本日の作業(業務機能の論理化・抽象化)の主旨、手順を確認した後、業務分析第2回目までに作成した機能情報関連図(DFD:以下「DFD」という。)を使って、業務機能の論理化(一筆書き)・抽象化の作業を行いました。まず、財務会計全体を対象に階層1のDFDの機能間を流れる情報を確認し、一筆書きを行いました。ただし、政策事業評価と情報公開は業務として独立しており、個別の作業となりました。その後、財政課、会計課、契約課を一つのグループ、管財課を一つのグループ、総合政策課、行政管理課を一つのグループとしてさらに詳細化した階層2のDFDを材料に論理化(一筆書き)を行いました。一筆書きが終わった後、課題と注釈も入れました。次に、論理化した階層2のDFDを対象に、策定チーム側で用意した用紙に機能の抽象化の作業をしました。最後に機能を記入した業務をパターン分けし、分析作業を終了しました。

【作業の目標】

業務を「機能」と「機能間の情報の流れ」としてとらえた時に、どこまでを一つのくくりとしてまとめること、また機能を類型化し、基本機能の組み合わせでパターン化することを目的としました。

【当日の流れ】

13:30〜13:55 業務分析作業手順についての説明(25分)
13:55〜14:55 論理化(一筆書き)作業(60分)
14:55〜15:55 抽象化作業(60分)
15:55〜16:00 作業全体についての説明(5分)

【作業内容】

(1) 論理化(一筆書き)作業

機能間の連携を想定して、情報の流れを記述しました。財務会計の予算、歳入歳出の範囲については、情報の流れがお金の流れになるので想定し易いのか作業は順調に進みました。逆に、財産管理については、情報を財産自体とするか、それに関する契約または金銭とするかで議論になりましたが、情報自体は複数あってもかまわないとし、作業を進めました。作業は違う色のペンを使い情報の違いを明確にしました。業務間(歳出執行管理と契約管理)についても論理化を行いました。

(2) 抽象化作業

企業側で事前に第2回目までの業務分析で作成したDFDから機能名を抽出してシートを作成し、当日参加者はそのシートに個別の業務につき、どの機能が該当するか印をつけていきました。あらかじめ用意した機能の名称は複数ある機能を抽象化したものであり、作業の開始時点では参加者に説明が必要でしたが、その後は順調に全ての機能について印付けを行っていきました。その後、印をつけた機能について、違う色のペンなどを使って表にパターン分けの作業をしました。

【出てきた意見】

参加者から出てきた主な意見は以下のとおりです。

  • 類型化は、階層の分け方が難しい。
  • 全ての機能は同じではない。(財産管理は)独自性が高いと感じている。
  • 各市によって違うと思うが、パターン化できるものばかりではない。業務により、向き、不向きがある。
成果物
  • 業務機能論理化図(DFD)(13枚)
  • 抽象化整理表(5枚)
ポイント

【作業を実施して気付いた点】

  • 論理化(一筆書き)においては、主たる情報を何にし、展開するかによって作業の進み方が違ってくると感じました。主たる情報の選定自体も各自ばらつきがあると感じました。主たる情報については、職員が事前に絞りこみを行っておくと作業が進めやすいと感じました。
  • 各課によって、今回の業務分析の類型化に対する反応はまちまちでした。特に類型化しにくい計画策定を内容とする業務では1年を期間として展開していく必要があるので、その中から類型するものを探すこと自体に違和感を覚えているようでした。
  • 一筆書きをすることによって、組織間での情報のやりとりが目に見える形で表わされ、改めて職員の方が情報の流れを認識されたようでした。
  • パターン分けについては、担当者によって意見が分かれることもあると感じました。

【作業をうまく進めるためのポイント】

  • 部署やシステムなどの枠を取り払って考えるようにしました。


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