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3−3.自治体EA導入(その3):基幹システム更新(レガシーシステムの見直し)

☆自治体EA導入のきっかけ

地方自治体における基幹システムの更新(レガシーシステムの見直し)は、単に「既存システムで行っていた業務をそのままオープンシステムなどに移行して、システムコストを下げる」という発想ではなく、業務や組織の見直しを行う「絶好の業務改革の契機」として積極的に捉える必要があります。
レガシーシステムの上で実現されている業務機能は、その地方自治体の過去からの業務変更を積み重ねたものです。レガシーシステムの見直しの際、それまでの業務をそのままにしてオープンシステムなどへ移行しても、システム構築の際に膨大な個別の改修(カスタマイズ)が発生することになり、システムコストを大幅に下げることは困難です。このため、レガシーシステムの見直しの際にはあらかじめ、その地方自治体で行われていた業務の不要な特異性(いわゆる「方言」)を削除し、残った部分もできる限り効率化を図って庁内各部署の業務を標準化しておくことで、システム構築の際の不要なカスタマイズが発生しないようにすることが重要です。
レガシーシステムの見直しの際、システムコストの削減を第一とするあまり「一番安価に調達できる基幹システムが提供する業務機能に、庁内各部署の業務を合わせる」といった安易な標準化を行うと、そのシステムの業務機能の特異性が高い(方言がきつい)場合、「レガシーシステムの見直しを行ったら、以前よりも業務効率が落ちた」といった悪い結果となってしまう可能性があります。このため、レガシーシステムの見直しにおける庁内業務の標準化を行う際には、単に各部署の間で業務を合わせるだけでなく、業務の効率化に向けた見直し作業を行います。

自治体EAは、レガシーシステムの見直しにおける組織全体の目的・目標と部署毎の業務見直し項目および見直しの達成目標との関係を明らかにする「目的・手段の明確化手法」、および、庁内の全組織の部長・課長や担当者がレガシーシステムの見直しの意義と実施の必要性について共通認識を持つための「組織横断的な知識共有手法」を提供します。これにより、レガシーシステムの見直しの実施における原課職員の積極的な参加が得られるようになります。
自治体EAは、レガシーシステムの見直しにおける業務の標準化検討のたたき台となる「参照モデル(総務省標準第一版)」を提供します。これは、総務省の平成17年度自治体EA事業の中で、人口規模が異なる複数の地方自治体の業務分析結果や評価に基づいて策定したものです。地方自治体の情報システム導入に多くの実績がある複数の企業がモデル策定に参加しており、策定された参照モデル(総務省標準第一版)については参加企業間での情報共有が図られています。「参照モデル(総務省標準第一版)」に基づいて見直された業務をシステム化する際には、そのシステムの調達における要件定義書の中で対象業務の内容を説明する資料として、「参照モデル(総務省標準第一版)」を標準的な業務内容として、多くの修正を加えず、そのまま使うことができます。
自治体EAは、業務の標準化検討において各部署の担当職員間の共通認識を深めるための「原課職員が自ら行う業務の「見える化」作業の実施手法」を提供します。従来の業務・システムは「各企業それぞれが考える地方自治体の業務」をベースにして作られていました。しかし、地方自治体の業務は、地方自治体の原課職員が一番詳しく内容を知っています。業務の標準化検討作業を、外部の支援業者に任せるのではなく、対象業務の原課職員が自ら行うことによって、「何をもって標準とするのか」についての原課担当者間の共通認識が深まるとともに、業務の効率化に向けた見直し作業をより効果的に進めることができます。

☆自治体EA導入の体制づくり

基幹システム更新(レガシーシステムの見直し)おける自治体EA導入では、まず最初に、情報政策担当部署の職員の中から自治体EA導入検討の担当者を決めます。
全庁的な情報システム再構築には全庁的な業務の見直しが必要であるため、行革担当部署と連携しながら自治体EAを導入することが求められます。
自治体EAを全庁的なシステム再構築の実施方策として導入する場合にあたっては、首長をはじめ全庁の各部署の役職や担当者が参加した「庁内の上下横断的な体制」を組む必要があります。すでに全庁的なシステム再構築の実施体制(助役、局長、CIO等の組織・体制)がある場合は、その体制を自治体EAの導入体制とすることもできます。また、実際に自治体EAの各種作業を行う職員を集めたワーキング・グループを構成します。ただし、策定作業を行うワーキンググループを作ることよりも、活用や評価するためのワーキングループを作ることも重要であることを忘れてはなりません。
自治体EAを全庁的に導入する場合には、各部署を統括する役職(首長や助役等)の自治体EAに対する理解が重要になります。
実際に自治体EAにおける各種作業を始める前には、自治体EAに係る関係者向けの説明会、「グループ学習」による自治体EAにおける各種作業の試行などを行い、自治体EAに対する関係者の理解を深めます。ただし、学習に負荷がかかりすぎないよう、学習を簡略化することについても配慮が必要です。
自治体EA導入検討の担当者となった情報政策部署の職員は、自治体EA導入の事務局の役割を担います。事務局の作業には、庁内各部署に向けた自治体EAに関する各種情報の発信、スケジュール調整、各種作業結果(分析図表など)の管理、EA講習会などの各種イベントの企画、EAに係る作業の一部を外部に委託する際の委託先の選定や管理等があります。事務局はあくまで、庁内調整や全体の進捗管理といった「プロジェクト・マネージメント・オフィス(PMO)」の位置付けであり、各種分析・検討作業の実施主体は原課の部長・課長や担当者です。

事例:

  • 川口市では、総務省の「平成17年度自治体EA事業」において、同市の情報化推進体制である「IT推進会議(議長:助役、委員:各部の部長)」と「IT推進委員会(委員:各課の課長)」が自治体EAの推進体制となりました。また、情報政策課が事務局となり、行革担当部署である行政経営推進室と調整しながら、自治体EAの導入を進めました。
     →川口市における取組み
  • 川口市では、総務省の「平成17年度自治体EA事業」において、基幹系・内部管理系の原課担当者が参加した「業務分析作業のグループ演習」を行いました。
     →業務分析(1) 作業日誌

☆自治体EAにおける各種検討作業の実施

自治体EAの導入体制や作業内容、役割分担の一例は次の表のとおりです。

作業項目 実施
※1
作業量
※2
作業分担※3
自治体EA体制 外部の
支援
企業
首長 原課 情報部門
部長・
課長
担当
1.刷新化の方向性策定 各種資料の収集
首長の方針提示
環境分析 1
組織目標の確認 1
行動成功要因分析
目的手段分析 1
3段階工程表検討
行動目標設定 1
2A.現状分析 (業務分析) 既存資料の収集
業務の機能構造分析 2
機能・情報実現手段分析
業務情報の抽象化 1
真の業務の姿の把握 1
2B.現状分析 (システム分析) 既存資料の収集
インフラの現状整理 1
アプリの現状整理 1
3.刷新化対応構造(あるべき姿)検討 1
4.個別課題の解決方策の検討 3
※1 ◎:必須項目、○:簡易に実施可能、●:省略可能
※2:1回2時間のグループ作業を1単位とした場合の、原課職員1人当たりの作業量
※3 ◎:主たる作業者、○:作業者、△:支援者

上記の各種作業項目のうち、「1.刷新化の方向性策定」と「2A.現状分析(業務分析)」「2B.現状分析(システム分析)」「3. 刷新化対応構造(あるべき姿)検討」とは、並行して実施することが可能です。
基幹システムの更新(レガシーシステムの見直し)の目的が、情報システム費用の削減といったように明確になっている場合は、「1.刷新化の方向性策定」作業は省略することができます。また、本手引きの「資料編2:参照モデル(総務省標準第一版)」を業務標準のたたき台として活用することにより、「2A.現状分析(業務分析)」作業の一部を簡易に実施することができます。

自治体EAを全庁的に導入する場合、その対象業務の範囲を最初から広げすぎてしまうと、現状分析作業等の段階で原課職員に過度の負担を強いることとなり、具体的な課題解決の検討まで至らない可能性があります。
このため、自治体EAを全庁的に導入する場合においても、まず最初は自治体EAを適用する業務を限定することが考えられます。これにより、一定期間内に具体的な課題解決の検討まで至り、一定の導入効果を出すことが可能となります。さらに、その導入効果を庁内に報告することで、自治体EAの導入に関する庁内合意を得ることができます。その後、自治体EAの対象業務を段階的に拡大することで、最終的に庁内の全業務への自治体EAの適用を行います。
自治体EAを最初に適用する業務としては、窓口業務、各種税・手数料の収納業務、職員の人事給与や厚生に係る諸手続といった、複数の部署に共通する業務が適していると考えられます。

参考 川口市での作業状況(その3)

作業名 基幹業務:福祉関連業務 児童福祉 現状分析(業務分析)作業
日時 平成 17年10月27日(木)
13:00 〜 15:00
場所 川口市役所5F大会議室
参加者 職員:児童福祉課
池田主任、川辺課長補佐、
毛塚課長補佐、二味主任、
緒方主事
支援企業:【基幹】
日立製作所 岩崎
NTTコミュニケーションズ
笠井
使った資料
  1. 「自治体業務・システム刷新化事業」現状分析(業務分析)作業について
  2. 平成17年版 川口市の保健・福祉
  3. 川口市次世代育成支援行動計画
概要

【作業の目標】

  • 児童福祉に関する業務範囲・業務目標の設定と、現行業務がどのように行われているのか共通の記述様式を使って整理します。

【当日の流れ】

13:00〜13:10 業務分析の目的と本日の作業についての説明(10分)
13:10〜13:20 業務説明表の記入(「業務の目的・概要」欄のみ)(10分)
13:20〜14:50 機能分析表(DMM:以下「DMM」という)の作成(90分)
14:50〜15:00 機能情報関連図(DFD:以下「DFD」という)の作成(10分)

【作業内容】

  • 当日出席した参加者5名のうち、3名が9/28の会議に出席しており試行作業も行ったとのことでしたが、2名は初めてでしたので、業務分析の目的と本日の作業について若干時間をかけて説明を行いました。
  • 業務説明表における業務の目的・概要の記入に当たっては、児童福祉が非常に広範囲の業務を取り扱っているため、業務全体を周到した内容に纏めることが難しいようでした。
  • DMM作成に際しては、「広範囲の業務をどのように切り分けるか」が課題でした。
  • そこで、階層1では職員が持参した資料を参考にしながら広く抽象化した業務分類を行い、階層2以降で分類した各業務の詳細機能について順に切り分けていくこととしました。
  • 時間内に広範囲な業務全てについて分析を終えることは難しいと判断し、出席した職員5名の主担当業務を優先して分析を進めました。DMMの作成方法、完成像の共有は達成できたと思われます。
  • 作成したDMMの1機能について実際にDFDを作成しました。DFD作成方法、完成像の共有は達成できたと思われます。

【出てきた意見】

  • 業務の範囲が広く、またそれぞれの業務が独立していることから、それらをすべて「児童福祉」として扱い表現することが難しいとの意見が出ました。
成果物

(1)業務説明表・・・「業務の目的・概要」欄のみ記入しました。
(2)DMM(1枚)・・・階層1にて業務の種類を整理しました。以下、参加した職員の担当業務を優先して、一部階層2〜4まで作成しました。
(3)DFD(1枚)・・・階層1「手当給付」のみ作成しました。

ポイント
  • 児童福祉で取り扱っている業務は、手当給付、保育所、乳幼児、母子父子など幅広く、さらにそれぞれは独立した業務です。児童福祉課内でも担当係が別々であることからも、児童福祉という大きな枠組みではなく、もう少し細分化したほうが、分析・検討がしやすいと考えます。実際、本市では来年度、保育所関係と子育て支援関係で課が分かれます。
  • DMMを作成する際に、職員には「機能の順序」や「外部環境との関係」にも注意を払ったため、DFDの作成は滞りなく行うことができました。


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