トップページ > 導入編「自治体EAの導入方法」 > 3−4.自治体EA導入(その4):個別システム導入

3−4.自治体EA導入(その4):個別システム導入

☆自治体EA導入のきっかけ

地方自治体において、各部署で個別の業務システムの導入や更新を行う場合、単に「現行業務をそのままシステム化する」「既存システムの業務機能をそのまま次期システムに移行する」という発想ではなく、業務の見直しを行う「絶好の業務改革の契機」として積極的に捉えることがポイントになります。
個別のシステム導入や更新の際、それまでの業務をそのままシステム化したり次期システムに移行しても、システム構築の際に膨大な個別のカスタマイズが発生することになり、システムコストが割高になります。このため、システム導入や更新の際にはあらかじめ、その部署で行われていた業務の不要な特異性(いわゆる「方言」)を削除し、残った部分もできる限り効率化を図って標準的な業務にしておくことで、システム構築の際の不要なカスタマイズが発生しないようにします。
また、システム導入や更新の際、システムコストの削減を第一とするあまり「一番安価に調達できるシステムが提供する業務機能に合わせる」といった安易な業務見直しを行うと、そのシステムの業務機能の特異性が高い(方言がきつい)場合、「業務をシステム化したら(次期システムに移行したら)、以前よりも業務効率が落ちた」といった悪い結果となってしまう可能性があります。このため、システム導入や更新の際は、業務の効率化に向けた見直し作業を行います。

自治体EAは、個別のシステム導入や更新における業務の見直しやシステムの要件定義検討のたたき台となる「参照モデル(総務省標準第一版)」を提供します。これは、総務省の平成17年度自治体EA事業の中で、人口規模が異なる複数の地方自治体の業務分析結果や評価に基づいて策定したものです。地方自治体の情報システム導入に多くの実績がある複数の企業がモデル策定に参加しており、策定された参照モデル(総務省標準第一版)については参加企業間での情報共有が図られています。「参照モデル(総務省標準第一版)」に基づいて見直された業務をシステム化する際には、そのシステムの調達における要件定義書の中で対象業務の内容を説明する資料として、「参照モデル(総務省標準第一版)」を標準的な業務内容として、多くの修正を加えず、そのまま使うことができます。
自治体EAは、業務の見直しやシステムの要件定義検討において「原課職員が自ら行う業務の「見える化」作業の実施手法」を提供します。地方自治体の業務は、地方自治体の原課職員が一番良く知っています。業務の見直しやシステムの要件定義検討を、外部の支援業者に任せるのではなく、対象業務の原課職員が自ら行うことによって、業務の効率化に向けた見直し作業をより効果的に進めることができるとともに、システムの要件定義にかかる費用を抑えることも可能となります。

☆自治体EA導入の体制づくり

個別システム導入おける自治体EA導入では、まず最初に、情報政策担当部署の職員の中から自治体EA導入検討の担当者を決めます。
全庁的なシステム導入の際は対象業務の見直しが必要であるため、行革担当部署と連携しながら自治体EAを導入することが求められます。
自治体EAを「個別システムの導入」の実施方策として導入する場合には、対象となる情報システムを利用する原課の役職(部長・課長)や担当者と情報政策担当部署が主に参加する体制を組む必要があります。
実際に自治体EAにおける各種作業を始める前には、自治体EAに係る関係者の勉強会を開き、本手引きを活用し自治体EAの概要把握や各種作業の試行などを行い、自治体EAに対する関係者の理解を深めます。これらは、関係者の積極的な協力を得るためにも必要です。
自治体EA導入検討の担当者となった情報政策部署の職員は、自治体EA導入の事務局の役割を担います。事務局の作業には、課内に向けた自治体EAに関する各種情報の発信、スケジュール調整、各種作業結果(分析図表など)の管理、EA勉強会の開催等があります。

☆自治体EAにおける各種検討作業の実施

自治体EAの導入体制や作業内容、役割分担の一例は次の表のとおりです。

作業項目 実施
※1
作業量
※2
作業分担※3
自治体EA体制
原課 情報
部門
部長・
課長
担当
1.刷新化の方向性策定 各種資料の収集
首長の方針提示
環境分析 1
組織目標の確認 1
行動成功要因分析
目的手段分析 1
3段階工程表検討
行動目標設定 1
2A.現状分析 (業務分析) 既存資料の収集
業務の機能構造分析 2
機能・情報実現手段分析
業務情報の抽象化 1
真の業務の姿の把握 1
2B.現状分析 (システム分析) 既存資料の収集
インフラの現状整理 1
アプリの現状整理 1
3.刷新化対応構造(あるべき姿)検討 1
4.個別課題の解決方策の検討 3
※1 ◎:必須項目、○:簡易に実施可能、●:省略可能
※2:1回2時間のグループ作業を1単位とした場合の、原課職員1人当たりの作業量
※3 ◎:主たる作業者、○:作業者、△:支援者

上記の各種作業項目のうち、「1.刷新化の方向性策定」と「2A.現状分析(業務分析)」「2B.現状分析(システム分析)」「3. 刷新化対応構造(あるべき姿)検討」とは、並行して実施することが可能です。
システム導入における業務の見直し項目や達成目標がすでに明確になっている場合は、「1.刷新化の方向性策定」作業は省略可能です。また、本手引きの「資料編2:参照モデル(総務省標準第一版)」を業務標準のたたき台として活用することにより、「2A.現状分析(業務分析)」作業の一部を簡易に実施することができます。

参考 川口市での作業状況(その4)

作業名 内部管理業務:人事給与 旅費管理 現状分析(業務分析)作業
日時 平成17年11月21日(火)
13:00 〜 14:45
場所 第二庁舎第一会議室
参加者 職員:
総務課 大津課長補佐、宇田川主任
会計課 妹尾主任
支援企業:
富士通 中山笠井
使った資料
使った資料一覧を最終頁に記載
概要

【作業の目標】

10月25日に実施した第一回業務分析作業で作成した旅費管理業務の業務説明表および機能情報関連図(DFD:以下「DFD」という。)、機能分析表(DMM:以下「DMM」という。)について、確認をしました。今回は業務をさらに詳細に分析し、漏れのないものにすることが目的です。また、新規に作成した情報実体一覧表と業務要件定義表も併せて確認しました。
旅費管理業務に関する業務改善策の検討材料を、参加者が自ら作成する為、以下の作業を実施しました。

【当日の流れ】

13:00〜13:10 業務説明表の内容の追記(10分)
13:10〜13:40 DMMの見直し作業(30分)
13:40〜14:30 DFDの見直し(50分)
14:30〜14:35 情報実体一覧表の見直し( 5分)
14:35〜14:45 業務要件定義表の見直し(10分)

【作業内容】

(1)業務説明表の内容の追記
前回の分析作業で把握した内容をもとに作成した業務説明表を確認しました。
特に業務の規模を表現するにあたり、職員数、旅費総額、出張件数などについて把握しましたが、財務会計情報を科目で抽出しないと正確な値が不明であることから、決算書から集計することとしました。

(2)DMMの見直し作業
前回作成したDMMについて、業務分割が適性に表現されているかの観点から見直しを実施しました。

  • 予算残額確認については、所属長からの出張命令の時に実施されることから、出張命令業務の最初の機能として位置づけました。
  • 旅費計算業務と請求業務を統合化しました。請求業務は財務会計業務として捉え、旅費計算後の事務としました。
  • 審査業務は出張命令書記載項目のすべてについての審査が行われており、これまではそれぞれをひとつの機能として捉えていましたが、業務機能としての統一が可能であることから、統合化しました。また、請求業務は財務会計業務として捉え、支出命令と支払についても財務会計業務として、旅費業務範囲外の位置づけとしました。

(3)DFDの見直し
DFDの作成において、実際の帳票がいつ作成されて、どのような順で利用されるか、について着目して見直しを実施しました。市内出張命令書兼旅費請求書と市外出張命令書兼旅費請求書は、請求書を兼ねることから、支出命令書と同等の扱いになります。出張命令書と旅費請求書は宿泊を伴う出張時に利用することから、市内市外の命令書と別の扱いをするように修正しました。
また、旅費計算作業が当業務の中で最も時間を必要とすることが判明しました。各課の庶務担当が時刻表を参照し、最適ルートを探索しており、1処理あたり1時間程度を要するようです。
業務改善の中心部分になることを職員は認識しました。
DMMと同様に財務会計事務については、旅費から分離して記述するよう変更しました。

(4)情報実体一覧表の見直し
DFDに表現されている情報のすべてについて、その内容を確認しました。今回の見直し作業でDFDが大幅に変更されるので、各分析資料の修正後にメールで送付することとしました。

(5)業務要件定義表の見直し
DFDに記載されている業務機能についての詳細を説明したものです。こちらもDFDが大幅変更になったことより、再度確認することとしました。

【出てきた意見】

  • 業務説明表(1枚)
  • DMM(階層1が1枚、出張命令、旅費計算、審査、精算)
  • DFD(5枚、全体、出張命令、旅費計算、審査、精算)
  • 情報実体一覧表(1枚)
  • 業務要件定義表(1枚)
成果物

(1)業務説明表・・・「業務の目的・概要」欄のみ記入しました。
(2)DMM(1枚)・・・階層1にて業務の種類を整理しました。以下、参加した職員の担当業務を優先して、一部階層2〜4まで作成しました。
(3)DFD(1枚)・・・階層1「手当給付」のみ作成しました。

ポイント

【作業を実施して気付いた点】

  • 本日の作業完了時点になって、総務課で多くの時間を要している各課庶務担当からの問合せ対応業務がDMMに現れていないことが判明しました。本来、旅費管理のDMMとしては、上記の問合せ対応業務や旅費計算のルール策定(条例、旅費計算ツールの統一等)なども含めるべきであると考えられますが、それらの業務はDMMに網羅されずに終了しました。最終的には、他の業務分析結果も合わせ、再度業務全体の内容や範囲を吟味し、網羅性を上げていくことが必要であることを再認識しました。

【作業を実施するにあたり、難しい点】

  • DFD作成時点でもDMMの見直しは発生するものであり、両者は何度も繰り返し見直して作成する必要があると認識しています。DMM、DFDの精度を上げる為には、今回の2時間という時間設定では多少不足しており、今後は作業日程を考慮する必要があります。


前へ 次ヘ

目次

ページの先頭へ