共同アウトソーシングによって地方自治体の情報システムの共同化を進める際、各地方自治体で行われていた業務をあらかじめ標準化しておくことが必要になります。
実際に業務の標準化を進めるには、「何をもって標準とするのか」についての、各地方自治体における対象業務の原課担当者間の協議が必要になります。
また、共同アウトソーシングにおいて対象業務の標準化を行う際には、単に各地方自治体間でいずれかの団体の業務に合わせるのではなく、業務の効率化に向けた見直し作業を行うことが大きなポイントとなります。各地方自治体の業務内容をつき合わせて、無駄な部分は削除し、残った部分もできる限り効率化を図ることにより、情報システムの効果的な共同化が可能となります。
自治体EAは、共同アウトソーシングにおける業務の標準化検討のたたき台となる「参照モデル(総務省標準第一版)」を提供します。これは、総務省の平成17年度自治体EA事業の中で、人口規模が異なる複数の地方自治体の業務分析結果や評価に基づいて策定したものです。地方自治体の情報システム導入に多くの実績がある複数の企業がモデル策定に参加しており、策定された参照モデル(総務省標準第一版)については参加企業間での情報共有が図られています。「参照モデル(総務省標準第一版)」に基づいて見直された業務をシステム化する際には、そのシステムの調達における要件定義書の中で対象業務の内容を説明する資料として、「参照モデル(総務省標準第一版)」を標準的な業務内容として、多くの修正を加えず、そのまま使うことができます。
自治体EAは、業務の標準化検討において各地方自治体の対象業務の原課担当者間の共通認識を深めるための「原課職員が自ら行う業務の「見える化」作業の実施手法」を提供します。地方自治体の業務は、地方自治体の原課職員が一番良く知っています。業務の標準化検討作業を、外部の支援業者に任せるのではなく、対象業務の原課職員が自ら行うことによって、「何をもって標準とするのか」についての原課担当者間の共通認識が深まるとともに、業務の効率化に向けた見直し作業をより効果的に進めることができます。
共同アウトソーシングにおける自治体EA導入では、まず最初に、共同アウトソーシング事務局の担当者の中から自治体EA導入検討の担当者を決めます。
共同アウトソーシングにおける自治体EAの導入では、共同アウトソーシングの参加団体の情報政策担当部署および対象業務の原課担当者が参加した「複数団体の横断的な体制」を組む必要があります。すでに共同アウトソーシングの推進体制がある場合は、その体制を自治体EAの導入体制とすることもできます。また、実際に自治体EAの各種作業を行う職員を集めたワーキング・グループを構成します。ただし、策定作業を行うワーキンググループを作ることよりも、活用や評価するためのワーキングループを作ることの方も重要であることを忘れてはなりません。
実際に自治体EAにおける各種作業を始める前には、自治体EAに係る関係者向けの説明会、「グループ学習」による自治体EAにおける各種作業の試行などを行い、自治体EAに対する関係者の理解を深めます。これらは、関係者の積極的な協力を得るためにも必要です。ただし、学習に負荷がかかりすぎないよう、学習を簡略化することについても配慮が必要です。
自治体EA導入検討の担当者となった職員は、自治体EA導入の事務局の役割を担います。事務局の作業には、各団体の関係部署に向けた自治体EAに関する各種情報の発信、スケジュール調整、各種作業結果(分析図表など)の管理、EA講習会などの各種イベントの企画、EAに係る作業の一部を外部に委託する際の委託先の選定や管理等があります。事務局はあくまで、団体間の調整や全体の進捗管理といった「プロジェクト・マネージメント・オフィス(PMO)」の位置付けであり、各種分析・検討作業の実施主体は各地方自治体の原課担当者です。
自治体EAの導入体制や作業内容、役割分担の一例は次の表のとおりです。
作業項目 | 実施 ※1 |
作業量 ※2 |
作業分担※3 | ||||
自治体EA体制 | 外部の 支援 企業制 |
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各団体 | EA 事務局 |
||||||
原課 | 情報部門 | ||||||
1.刷新化の方向性策定 | 各種資料の収集 | ● | ○ | ◎ | △ | ||
首長の方針提示 | |||||||
環境分析 | ● | 1 | ◎ | △ | △ | ||
組織目標の確認 | |||||||
行動成功要因分析 | ● | 1 | ◎ | △ | △ | ||
目的手段分析 | ● | ◎ | △ | △ | |||
3段階工程表検討 | ● | ◎ | △ | △ | |||
行動目標設定 | ● | 1 | ◎ | △ | △ | ||
2A.現状分析 (業務分析) | 既存資料の収集 | ◎ | ○ | ◎ | △ | ||
業務の機能構造分析 | ○ | 2 | ◎ | △ | △ | ||
機能・情報実現手段分析 | ○ | ◎ | △ | △ | |||
業務情報の抽象化 | ○ | 1 | ◎ | △ | △ | ||
真の業務の姿の把握 | ◎ | 1 | ◎ | △ | △ | ||
2B.現状分析 (システム分析) | 既存資料の収集 | ◎ | ○ | ◎ | △ | ||
インフラの現状整理 | ◎ | 1 | ◎ | △ | △ | ||
アプリの現状整理 | ◎ | 1 | ◎ | △ | △ | ||
3.刷新化対応構造(あるべき姿)検討 | ◎ | 1 | ◎ | ◎ | △ | △ | |
4.個別課題の解決方策の検討 | ◎ | 3 | ◎ | ◎ | △ | △ |
※1 ◎:必須項目、○:簡易に実施可能、●:省略可能 ※2:1回2時間のグループ作業を1単位とした場合の、原課職員1人当たりの作業量 ※3 ◎:主たる作業者、○:作業者、△:支援者 |
上記の各種作業項目のうち、「1.刷新化の方向性策定」と「2A.現状分析(業務分析)」「2B.現状分析(システム分析)」「3. 刷新化対応構造(あるべき姿)検討」とは、並行して実施することが可能です。
共同アウトソーシングの目的が「情報システム費用の削減」など明確になっている場合は、「1.刷新化の方向性策定」作業は省略可能です。また、本手引きの「資料編2:参照モデル(総務省標準第一版)」を業務標準のたたき台として活用することにより、「2A.現状分析(業務分析)」作業の一部を簡易に実施することができます。
参考 川口市での作業状況(その5)
■作業名 | 基幹業務:福祉関連業務 児童福祉(保育以外)現状分析(業務分析)作業(第2回) | |
■日時 | 平成 17年11月17日(木) 15:00 〜 17:00 |
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■場所 | 第二庁舎第一会議室 | |
■参加者 | 職員: 児童福祉課 川辺課長補佐 池田主任、 瀬切主任 増田主任 |
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支援企業:【基幹】 日立製作所 榎本、大谷 | ||
■使った資料 |
業務説明表(確認用)
DMM(確認用) DFD(確認用) DMM(第1回業務分析成果物) DFD(第1回業務分析成果物) 川口市次世代育成支援行動計画 |
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■概要 | ||
【作業の目標】
【当日の流れ】15:00〜15:10 作業内容および前回業務分析結果の説明(10分)15:10〜15:30 DMMの確認(第1回業務分析の成果物と比較しながら)(20分) 15:30〜17:00 DFDの作成(90分) 【作業内容】
【出てきた意見】
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■成果物 | ||
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■ポイント | ||
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■目次 |