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3−5.自治体EA導入(その5):共同アウトソーシング

☆自治体EA導入のきっかけ

共同アウトソーシングによって地方自治体の情報システムの共同化を進める際、各地方自治体で行われていた業務をあらかじめ標準化しておくことが必要になります。
実際に業務の標準化を進めるには、「何をもって標準とするのか」についての、各地方自治体における対象業務の原課担当者間の協議が必要になります。
また、共同アウトソーシングにおいて対象業務の標準化を行う際には、単に各地方自治体間でいずれかの団体の業務に合わせるのではなく、業務の効率化に向けた見直し作業を行うことが大きなポイントとなります。各地方自治体の業務内容をつき合わせて、無駄な部分は削除し、残った部分もできる限り効率化を図ることにより、情報システムの効果的な共同化が可能となります。

自治体EAは、共同アウトソーシングにおける業務の標準化検討のたたき台となる「参照モデル(総務省標準第一版)」を提供します。これは、総務省の平成17年度自治体EA事業の中で、人口規模が異なる複数の地方自治体の業務分析結果や評価に基づいて策定したものです。地方自治体の情報システム導入に多くの実績がある複数の企業がモデル策定に参加しており、策定された参照モデル(総務省標準第一版)については参加企業間での情報共有が図られています。「参照モデル(総務省標準第一版)」に基づいて見直された業務をシステム化する際には、そのシステムの調達における要件定義書の中で対象業務の内容を説明する資料として、「参照モデル(総務省標準第一版)」を標準的な業務内容として、多くの修正を加えず、そのまま使うことができます。
自治体EAは、業務の標準化検討において各地方自治体の対象業務の原課担当者間の共通認識を深めるための「原課職員が自ら行う業務の「見える化」作業の実施手法」を提供します。地方自治体の業務は、地方自治体の原課職員が一番良く知っています。業務の標準化検討作業を、外部の支援業者に任せるのではなく、対象業務の原課職員が自ら行うことによって、「何をもって標準とするのか」についての原課担当者間の共通認識が深まるとともに、業務の効率化に向けた見直し作業をより効果的に進めることができます。

☆自治体EA導入の体制づくり

共同アウトソーシングにおける自治体EA導入では、まず最初に、共同アウトソーシング事務局の担当者の中から自治体EA導入検討の担当者を決めます。
共同アウトソーシングにおける自治体EAの導入では、共同アウトソーシングの参加団体の情報政策担当部署および対象業務の原課担当者が参加した「複数団体の横断的な体制」を組む必要があります。すでに共同アウトソーシングの推進体制がある場合は、その体制を自治体EAの導入体制とすることもできます。また、実際に自治体EAの各種作業を行う職員を集めたワーキング・グループを構成します。ただし、策定作業を行うワーキンググループを作ることよりも、活用や評価するためのワーキングループを作ることの方も重要であることを忘れてはなりません。
実際に自治体EAにおける各種作業を始める前には、自治体EAに係る関係者向けの説明会、「グループ学習」による自治体EAにおける各種作業の試行などを行い、自治体EAに対する関係者の理解を深めます。これらは、関係者の積極的な協力を得るためにも必要です。ただし、学習に負荷がかかりすぎないよう、学習を簡略化することについても配慮が必要です。
自治体EA導入検討の担当者となった職員は、自治体EA導入の事務局の役割を担います。事務局の作業には、各団体の関係部署に向けた自治体EAに関する各種情報の発信、スケジュール調整、各種作業結果(分析図表など)の管理、EA講習会などの各種イベントの企画、EAに係る作業の一部を外部に委託する際の委託先の選定や管理等があります。事務局はあくまで、団体間の調整や全体の進捗管理といった「プロジェクト・マネージメント・オフィス(PMO)」の位置付けであり、各種分析・検討作業の実施主体は各地方自治体の原課担当者です。

☆自治体EAにおける各種検討作業の実施

自治体EAの導入体制や作業内容、役割分担の一例は次の表のとおりです。

作業項目 実施
※1
作業量
※2
作業分担※3
自治体EA体制 外部の
支援
企業制
各団体 EA
事務局
原課 情報部門
1.刷新化の方向性策定 各種資料の収集
首長の方針提示
環境分析 1
組織目標の確認
行動成功要因分析 1
目的手段分析
3段階工程表検討
行動目標設定 1
2A.現状分析 (業務分析) 既存資料の収集
業務の機能構造分析 2
機能・情報実現手段分析
業務情報の抽象化 1
真の業務の姿の把握 1
2B.現状分析 (システム分析) 既存資料の収集
インフラの現状整理 1
アプリの現状整理 1
3.刷新化対応構造(あるべき姿)検討 1
4.個別課題の解決方策の検討 3
※1 ◎:必須項目、○:簡易に実施可能、●:省略可能
※2:1回2時間のグループ作業を1単位とした場合の、原課職員1人当たりの作業量
※3 ◎:主たる作業者、○:作業者、△:支援者

上記の各種作業項目のうち、「1.刷新化の方向性策定」と「2A.現状分析(業務分析)」「2B.現状分析(システム分析)」「3. 刷新化対応構造(あるべき姿)検討」とは、並行して実施することが可能です。
共同アウトソーシングの目的が「情報システム費用の削減」など明確になっている場合は、「1.刷新化の方向性策定」作業は省略可能です。また、本手引きの「資料編2:参照モデル(総務省標準第一版)」を業務標準のたたき台として活用することにより、「2A.現状分析(業務分析)」作業の一部を簡易に実施することができます。

参考 川口市での作業状況(その5)

作業名 基幹業務:福祉関連業務 児童福祉(保育以外)現状分析(業務分析)作業(第2回)
日時 平成 17年11月17日(木)
15:00 〜 17:00
場所 第二庁舎第一会議室
参加者 職員:
児童福祉課
川辺課長補佐
池田主任、
瀬切主任
増田主任
支援企業:【基幹】
日立製作所 榎本、大谷
使った資料
業務説明表(確認用)
DMM(確認用)
DFD(確認用)
DMM(第1回業務分析成果物)
DFD(第1回業務分析成果物)
川口市次世代育成支援行動計画
概要

【作業の目標】

  • 児童福祉業務(保育以外)について、第1回業務分析で作成した機能分析表(DMM:以下「DMM」という)を見直し、機能情報関連図(DFD:以下「DFD」という)の作成を通じて、現行業務の流れを可視化します。

【当日の流れ】

15:00〜15:10  作業内容および前回業務分析結果の説明(10分)
15:10〜15:30  DMMの確認(第1回業務分析の成果物と比較しながら)(20分)
15:30〜17:00  DFDの作成(90分)

【作業内容】

  • 第1回業務分析で作成したDMMを基に、参加者間で階層1のDMMを第2回業務分析の実施前に整理していました。また、DFDは第1回業務分析時に作成した「手当給付」のみ、事前に整理しておきました。
  • 第2回業務分析では、児童福祉業務が広範囲であることに鑑み、保育業務と保育業務以外に分けて、業務分析を行うこととしました。
  • DMMの確認作業は、第1回業務分析で作成したDMMと事前に整理しておいたDMMを横に並べ、まず2つのDMM間の対応関係を説明し、機能の抜け漏れがないことを確認しました。
  • 各機能単位での詳細な確認は、第1回業務分析でDFDを作成していた「手当支給」から開始しました。 ・ 「手当支給」のDMMは、第1回業務分析と事前に整理したDMMとの間に変更はなかったため、すぐにDFD上での情報の流れおよび流れる情報名の確認作業に移りました。
  • 続いて、参加した職員の一人が乳幼児医療費助成を担当していたため、「医療給付」のDMMを確認しました。なお、その職員が事前に作成した乳幼児医療費助成のDMMを持参していたため、それを基に確認を進めました。
  • 担当者が持参したDMMには、県への報告および補助金申請が機能として挙げられており、実際には「手当支給」にも同様の機能があることが分かりました。そこで、「手当支給」のDMMに機能を追加する必要がありましたが、既に8つの升目が埋まっていたため、一部の機能を集約することによって、DMMを修正しました。
  • 「医療給付」には、乳幼児医療費助成、ひとり親等家庭医療費助成等、複数の事業を含んでいるため、1つずつ順に業務の流れを記載していきました。その際、乳幼児医療費助成の流れを赤色、ひとり親医療費助成の流れを黒色のペンで記載することによって、事業間の違いが明確になるようにしました。
  • 「育成支援行動計画策定」「児童保護支援(相談)」機能については、それぞれの担当者が異なっており、残り時間が少なくなっていたため、同時並行でDMMの確認およびDFDの作成を進めていきました。
  • なお、保育業務は別途分析することとしたものの、児童保育側の機能が1つにまとまる様子であったことから、最終的には保育と保育以外の分析結果を合わせ、児童福祉業務として整理することとしました。

【出てきた意見】

  • 「児童保護支援(相談)」のDFD作成時に、当初は児童虐待に対する支援の流れのみを記載していきました。しかし、実際の業務範囲としてドメスティックバイオレンス(DV)への対応を含んでおり、業務の流れが全く異なるので表現しきれないのでは、との意見が出されました。そこで、業務を抽象化して考えた場合には、概ね児童虐待に対する支援の流れと同様の機能で表現されることを説明し、参加者の納得を得た上で1つの機能に纏めることとしました。
成果物
  • 業務説明表(1枚)・・・「根拠法令等」「所管課」欄について、確認しました。
  • DMM(1枚)    ・・・階層1について、確認しました。
  • DFD(1枚)    ・・・階層1について、保育以外の5機能のうち、児童健全育成を除く4機能分を作成しました。
ポイント
  • DMMの機能名称は、抽象度の高い表現になることが多く、一目見ただけでは具体的にどのような業務(事業)を含んでいるのか、把握し辛くなります。そこで、各機能が含んでいる業務(事業)をDMM上に記載しておくことによって、参加者の理解促進につながると考えられます。
  • 保育と保育以外に分けて分析したとはいえ、児童福祉業務は依然として広範な業務であるため、今回の分析では対象事業毎に対応する職員が変わっていました。中には急遽対応することになった職員もいたので、より円滑に分析作業を進めるためには、広く事業範囲を網羅できる形で、職員側の体制を準備しておくとよいと思います。


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