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3−6.自治体EA導入(その6):市町村合併

☆自治体EA導入のきっかけ

市町村合併では、合併に参加する各地方自治体の業務・システムを統合する必要があります。
実際に業務・システムを統合する場合、「各地方自治体の中のいずれか1つの団体の業務・システムに、他の団体の業務・システムを合わせる」という方法が一般的です。また、合併に合わせて基幹システムを新規導入する場合には、「一番安価に調達できる基幹システムが提供する業務機能に、各団体の業務を合わせる」という方法をとることも考えられます。しかしこれらの方法では、統合の基準とした地方自治体や基幹システムの業務の特異性が高い(方言がきつい)と、各地方自治体の業務・システムの変更個所が必要以上に多くなり、業務・システムの統合が合併期日までに完了しない場合があります。そのような場合は、合併前の複数の地方自治体の業務・システムが合併後も混在することになり、業務効率の低下やシステム費用の増大を招く原因となります。また、業務・システムの統合が合併期日までに完了した場合でも、合併後の業務・システムが最適なものとならず、業務効率の低下やシステム費用の増大が起きる可能性があります。

自治体EAは、市町村合併における業務の統合化検討の基準となる「参照モデル(総務省標準第一版)」を提供します。これは、総務省の平成17年度自治体EA事業の中で、人口規模が異なる複数の地方自治体の業務分析結果や評価に基づいて策定したものです。地方自治体の情報システム導入に多くの実績がある複数の企業がモデル策定に参加しており、策定された参照モデル(総務省標準第一版)については参加企業間での情報共有が図られています。「参照モデル(総務省標準第一版)」に基づいて見直された業務をシステム化する際には、そのシステムの調達における要件定義書の中で対象業務の内容を説明する資料として、「参照モデル(総務省標準第一版)」を標準的な業務内容として、多くの修正を加えず、そのまま使うことができます。
自治体EAは、業務の統合化検討において各地方自治体の対象業務の原課担当者間の共通認識を深めるための「原課職員が自ら行う業務の「見える化」作業の実施手法」を提供します。地方自治体の業務は、地方自治体の原課職員が一番良く知っています。業務の統合化検討作業を、外部の支援業者に任せるのではなく、対象業務の原課職員が自ら行うことによって、「どのような業務に統合するのが良いか」についての原課担当者間の共通認識が深まるとともに、合併後の業務効率をより高めるための統合化検討作業を効果的に進めることができます。

☆自治体EA導入の体制づくり

市町村合併における自治体EAの導入では、まずはじめに、合併事務局の担当職員の中から自治体EA導入検討の担当者を決めます。
市町村合併における自治体EAの導入では、合併に参加する各地方自治体の全ての原課の担当者および情報政策担当部署の担当者が参加した「複数団体の横断的な体制」を組む必要があります。すでに市町村合併の推進体制がある場合は、その体制を自治体EAの導入体制とすることができます。また、実際に自治体EAの各種作業を行う職員を集めたワーキング・グループを構成します。ただし、策定作業を行うワーキンググループを作ることよりも、活用や評価するためのワーキングループを作ることも重要であることを忘れてはなりません。
実際に自治体EAにおける各種作業を始める前に、自治体EAに係る関係者向けの説明会、グループ学習による自治体EAの各種作業を試行などを行い、自治体EAに対する関係者の理解を深めます。これらは、関係者の積極的な協力を得るためにも必要です。ただし、学習に負荷がかかりすぎないよう、学習を簡略化することについても配慮が必要です。
自治体EA導入検討の担当者となった職員は、自治体EA導入の事務局の役割を担います。事務局の作業には、各団体の関係部署に向けた自治体EAに関する各種情報の発信、スケジュール調整、各種作業結果(分析図表など)の管理、EA講習会などの各種イベントの企画、自治体EAにおける作業の一部を外部に委託する際の委託先の選定や管理等があります。事務局はあくまで、団体間の調整や全体の進捗管理といった「プロジェクト・マネージメント・オフィス(PMO)」の位置付けであり、各種分析・検討作業の実施主体は原課の職員です。

☆自治体EAにおける各種検討作業の実施

自治体EAの導入体制や作業内容、役割分担の一例は次の表のとおりです。

作業項目 実施
※1
作業量
※2
作業分担※3
自治体EA体制 外部の
支援
企業制
各団体 EA
事務局
原課 情報
部門
1.刷新化の方向性策定 各種資料の収集
首長の方針提示
環境分析
組織目標の確認
行動成功要因分析
目的手段分析
3段階工程表検討
行動目標設定
2A.現状分析 (業務分析) 既存資料の収集
業務の機能構造分析 2
機能・情報実現手段分析
業務情報の抽象化 1
真の業務の姿の把握 1
2B.現状分析 (システム分析) 既存資料の収集
インフラの現状整理 1
アプリの現状整理 1
3.刷新化対応構造(あるべき姿)検討 1
4.個別課題の解決方策の検討 3
※1 ◎:必須項目、○:簡易に実施可能、●:省略可能
※2:1回2時間のグループ作業を1単位とした場合の、原課職員1人当たりの作業量
※3 ◎:主たる作業者、○:作業者、△:支援者

上記の各種作業項目のうち、「1A.現状分析(業務分析)」と「1B.現状分析(システム分析)」は、並行して実施することが可能です。また本手引きの「資料編2:参照モデル(総務省標準第一版)」を業務標準のたたき台として活用することにより、「1A.現状分析(業務分析)」作業の一部を簡易に実施することができます。

参考 川口市での作業状況(その6)

作業名 基幹業務:福祉関連業務 現状分析(業務分析)作業(第3回)
日時 平成 18年1月19日(木)
9:30 〜 12:00
場所 川口市役所5F大会議室
参加者 職員:
福祉課
加藤主事
児童福祉課
池田主任、
二味主任
高齢福祉課
森田課長補佐
障害福祉課
金杉主任
介護保険課
河内主事、
上田主事
住宅課
小林課長補佐、
戸田主任
支援企業:【基幹】
日立製作所 前田、榎本
インテック 安平
使った資料
  1. DFD(児童福祉)
  2. DFD(障害者福祉)
  3. DFD(生活保護)
  4. 抽象化整理表(様式)
  5. 取引パターン明細表(様式)
  6. イベントエンテティ表(様式)
概要

【作業の目標】

  • これまで業務単位で把握してきた業務について、今回は福祉全般を捉え、職員自ら論理化(一筆書き)、抽象化(パターン分析)の作業を実施し、業務が基本的な機能や情報の組み合わせで実現できることを確認します。

【当日の流れ】

9:30〜10:00 論理化・抽象化作業の狙いと作業方法の説明(30分)
10:00〜10:50 業務機能の論理化(50分)
10:50〜11:25 業務機能の抽象化(35分)
11:25〜11:35 情報分析に関する説明(10分)
11:35〜11:50 作業の感想・意見交換(15分)
11:50〜12:00 総括(10分)

【作業内容】

  • 今回の作業はこれまでの分析(業務個別の可視化作業)と異なり、業務横断的かつ機能を一般化するといった視点が重要となることから、本作業の狙いと実際方法について、認識の共有を図るべく、30分程度時間を掛け説明を行いました。その後、「まずは手を動かそう」ということで、論理化(一筆書き)の作業に取り掛かりました。
  • 論理化(一筆書き)の作業では、第2回までに策定した機能情報関連図(DFD:以下「DFD」という)をもとに分析を開始することから、比較的業務の流れが見えやすくできているものから順に取り掛かることにしました。(「児童福祉」→「障害者福祉」→「生活保護」の順に実施)
  • 一筆書きは、初めだけは支援企業が線を引きましたが、それ以降はすべて職員が線を引き、「一筆書き」を完成させました。
  • その際、一つのDFDの機能から複数の情報が流れる分岐については、多少迷うところもありましたが、そこは処理の主流にて判断することを説明すると、その後は職員の経験から判断が速く、円滑に線を引くことができました。
  • なお、この作業を通じ、これまで担当した業務以外の成果物を職員間で相互に確認したことから、機能をくくる単位が業務ごとに多少異なっていること、および福祉全般において類似業務がいくつか存在することを共有することができました。その上で、次の抽象化作業に取り掛かりました。
  • 抽象化の作業では、抽象化整理表の肝となる横軸(類型化された機能)について、事前にある程度類推した単語を提示するようにし、それをたたき台に、先の論理化作業での結果を加味しながら確認・決定しました。
  • ここでの分析対象は、福祉全般で実施されている申請・審査決定、給付、請求支払といった処理を例に取って進め、各々がほぼ同じ流れであって同様の機能を使って処理されていることを確認しました。
  • なお、先の論理化作業において、類似業務の勘所を確認・共有しながら進めていたこともあり、あまり異論なく業務の抽象化(一筆書きの線の分類)を行うことができました。
  • この時点で多少時間に余裕があったことから、今後の作業の情報分析について、これまでの業務分析との繋がり、情報分析の成果物の見方等を説明しました。
  • さらに今回の作業の感想等意見交換を行い、終了を迎えました。

【出てきた意見】

  • 今回の作業を通じ、「作業の初めは目標が見えなかったが、やってみると業務の基本機能というものが浮かび上がり、有効性が見えてきたように感じる。」「抽象化作業は、業務を深く知る者には違和感があるかもしれない。どれだけ抽象化の考えが持てるかは人によって異なると感じた。」「この後の課題の解決方策への繋がりについては見えない部分が多い。」といった意見がありました。
成果物
(1)論理化(一筆書き)(3枚)・・・「児童福祉」「障害者福祉」「生活保護」について論理化作業を実施し、DFDの一筆書きを作成しました。
(2)抽象化整理表(1枚)・・・・・・「児童福祉」「障害者福祉」「生活保護」を中心に、福祉関係業務の基本処理(申請・審査決定、給付、請求支払)について、抽象化整理表を作成しました。一部「介護保険」「高齢者福祉」「公営住宅管理」についても実施しました。
ポイント
  • 参加者の意見にもあった通り、抽象化の度合いをどこまで上げて考えるかは人により異なるところです。業務の流れや処理内容が見えやすい業務から順に取り掛かるなど、抽象化の考え方を浸透させ、作業の中で抽象化の程度を作り上げていくといった工夫が重要と考えます。
  • 論理化・抽象化の作業では、他の業務にどのような業務機能があり、どのような機能のくくり方をしているかを参加者間で共通認識することから始まります。できれば、本作業の前に他の業務での成果物を共有しておくことも有効かと思われます。


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