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近年、ファイル共有ソフトを利用して、映像や音楽などの著作物を違法にダウンロード・アップロードしたとして、著作権者から発信者情報開示請求や損害賠償請求がなされる事例が急増しています。多くの利用者は「自分はダウンロードしただけ」「アップロードしているつもりはない」などと、違法性の認識が乏しいまま利用しており、意図せず著作権を侵害してしまい、発信者情報開示請求や損害賠償請求の対象となってしまうケースが少なくありません。

注意喚起

軽い気持ちの利用が
「損害賠償請求」に発展する
事例が多発

ファイル共有ソフト利用に関する
3つの要点

  1. ダウンロードだけ”では済みません

    多くのファイル共有ソフトは、ダウンロードと同時に自動でアップロードされます。

  2. 著作権を侵害する場合があります

    著作権者の許諾のないダウンロード・アップロードは著作権法違反に当たる場合があります。

  3. あなたの氏名・住所が開示され、損害賠償請求の対象に

    IPアドレスが容易に特定され、著作権者からの発信者情報開示請求や損害賠償請求の対象となる事例が多発しています。

実際に発生している事例

全国の消費生活センター等には、「ファイル共有ソフトを使い、違法に著作物をアップロードしたとして、プロバイダ事業者から意見照会書が送られてきた」、「著作権者から損害賠償請求するという文書が届いた」という相談が寄せられています。このうち多くの消費者は、アップロードしている認識がないままファイル共有ソフトを使用しています。

著作権を侵害しているとして、アダルト動画の制作業者から文書が届いた

アダルト動画の制作業者の代理人から、私宛てに文書が届いた。書面には「ファイル共有ソフ トを利用して、著作物Aを違法にダウンロード・アップロードし、制作業者の著作権を侵害して いる。あなたの著作権侵害行為により多額の経済的損害を被っているので、損害賠償請求する」「和解を希望する場合は著作物Aの和解金として約 20 万円、A以外の著作物も含めた和解金であれば約 50 万円を支払うように」「書面到着後、1週間以内に連絡がない場合は法的手段を取る」 等と記載されていた。全く心当たりがない。どうしたらいいか。

2022年5月受付、50 歳代、男性

動画を見るためにダウンロードしただけで、アップロードされるという認識はなかった

先日、契約先のプロバイダ事業者から「発信者情報開示に係る意見照会書」と記された通知が届いた。通知には、アダルト動画の製作者が著作権を侵害されたとの理由で自分の情報開示を求めている、開示に同意するか否かを書面で回答するようにとあった。2カ月程前にパソコンでアダルト動画を閲覧した際に、ファイル共有ソフトに動画をダウンロードしたことが原因だとわかった。ネットで調べてみると、このファイル共有ソフトはデータをダウンロードすると同時にアップロードされると知った。しかし、自分にはアップロードの認識はなかった。2週間以内に回答するよう通知に記載されているが、どう対処すべきだろうか。

2025年3月受付 50歳代 男性

著作権を侵害したとして、弁護士事務所から示談書が届いた

先日、弁護士法人名で示談書が届いた。ファイル共有ソフトを利用して違法にダウンロードやアップロードし、著作権を侵害したとして、1作品なら30万円、複数なら70万円の示談金で和解するとの内容だった。以前、プロバイダ事業者から発信者情報の開示について問い合わせる書面が届いていたが、覚えがなかったため放っておいた。現在、私が使用しているパソコンは自分専用であるが、その前に使用していたパソコンは家族で共用し、子どもも使用していた。支払わなければならないか。

2025年3月受付 60歳代 男性

ファイル共有ソフトの仕組みと注意点

ファイル共有ソフトは、インターネット上で不特定多数の人とファイルのやり取りを可能にするソフトウェアです。

昨今は、利用者同士のコンピュータが直接つながり、互いにファイルを送受信する「P2P(ピア・ツー・ピア)」という仕組みを利用するものが主流となっており、この仕組みでは、各利用者のコンピュータの一部がネットワーク上で共有され、他の利用者からアクセスできる状態になります。

そのため、ファイルをダウンロードしている途中や完了後に、自動的に他の人へデータが送られてしまう場合があります。つまり、「ダウンロードしただけ」のつもりでも、そのファイルが自分のコンピュータから他の利用者に送信されてしまうことがあります。

こうした行為については、著作権者の許可なく著作物を公開したとみなされ、著作権侵害にあたるおそれがあるほか、後述する情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開示請求の対象となります。

これをジグソーパズルに例えると、以下のようになります。(図1参照)

(図1)ファイル共有ソフトの仕組み(P2Pネットワークの流れ)

ファイル共有ソフトのネットワーク(輸)に入ることになる

図の解説

  1. 最初に、「完全なファイルを持っている人(=シーダー)」が、ファイルをピースに分割して他の人に渡します。
  2. ピースを受け取った人は、「受け取りながら送る人」になります。
  3. 自分の手元にあるピースを他の利用者に渡しながら、新しく受け取ったピースを集めて、自分のパズルを完成させていきます。
  4. すべてのピースをそろえてパズルを完成させた人は、その後も自動的に他の利用者へピースを渡し続けます。
  5. このように、ファイル共有ソフトでは「受け取る人」も同時に「送る人」として機能し、データが次々と広がっていく仕組みになっています。

発信者情報開示請求の増加

著作権者は、違法に配信されたコンテンツの発信者を特定するため、「情報流通プラットフォーム対処法」に基づいて、インターネットの接続事業者(プロバイダ)に対し、発信に使われたIPアドレスを基に、発信者情報(氏名・住所等)の開示を求めることができます。(図2参照)

ファイル共有ソフトの不適切な利用に関する発信者情報開示請求の件数は急激に増加しており、総務省が実施したアンケート調査によれば、令和6年にプロバイダに対して申し立てられた発信者情報開示請求 (訴訟、仮処分、非訟、任意請求の総数)154,484件のうち、約95.6%に相当する147,746件が、特定のP2Pファイル共有ソフトを用いたアダルト動画の著作権侵害を内容とする事案であることが判明しています※1。(図3参照)

なお、現在では、P2P通信の記録から接続に使われたIPアドレスを特定できるシステムが普及しており、IPアドレスは容易に特定されてしまいます。 「匿名で利用しているから特定されない」との認識は誤りです。
※1 アンケート調査は、プロバイダに対し、任意で回答を求めたものであり、実態としては更に大量の請求がなされている可能性があります。なお、上記件数のうち大部分は任意請求によるものです。

(図2)発信者情報開示請求
の流れ

図の解説

  • ①ダウンロードすると同時に送信されます

    ファイル共有ソフトで動画などをダウンロードすると、自分のパソコンからも他の人にそのデータが送られます。

  • ②著作権者が通信を特定します

    著作権者は専用の仕組みで、違法なやり取りを見つけ、IPアドレスなどの情報を特定します。

  • ③発信者情報開示を求める手続きが始まります

    著作権者は、プロバイダに直接、または裁判所を通じて「発信者情報の開示」を求めます。

  • ④~⑧あなたの氏名・住所が開示されることもあります

    プロバイダから意見照会の書面が届き、その後、プロバイダの判断や裁判所の命令で氏名・住所などが開示されます。その後、著作権者から損害賠償を求める訴訟や、弁護士から示談金の請求が届くことがあります。

(図3)発信者情報開示請求
件数の割合

総務省アンケート調査 令和6年にプロバイダに対して申し立てられた発信者情報開示請求件数の割合 アダルト動画の著作権侵害 95.6% 147,746件 その他の案件4.4%  6,738件

利用者が気を付ける
べきポイント

違法ファイルのダウンロード・
アップロードは行わない

  • 著作権者の許可なくアップロードされた動画コンテンツなどをダウンロード・アップロードする行為は、著作権法違反となり、損害賠償請求等を受ける可能性があります。
  • また、「自分はアップロードしていない」と思っていても、自動的にアップロードされる場合があることに注意してください。

ファイル共有ソフトの仕組みを
理解せずに利用しない

  • ファイル共有ソフトは、ダウンロードと同時に他の利用者へデータを送信(アップロード)する仕組みを持つものがあります。
  • この仕組みを理解しないまま利用すると、知らないうちに、違法ファイルのダウンロードだけでなくアップロードを行い、あなたが更なる著作権侵害を促進してしまうおそれがあります。出所不明のファイルや、著作権者の許諾が確認できないコンテンツを扱う行為は控えてください。