アンゴラ共和国(Republic of Angola)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 通信・情報技術・社会コミュニケーション省(MINTTICS)

Tel. +244 222 210 740
URL https://minttics.gov.ao/
所在地 Av. 4 de Fevereiro, Rua da Alfândega, no 10, Luanda, ANGOLA
幹部 Manuel Gomes da Conceição Homem(大臣/Minister)
所掌事務

通信・情報技術省(MTTI)は2008年に設立。通信部門の政策担当省として、関連法の整備、市場振興やICT普及に関する政策の策定を所掌し、関連国際会議等において国の代表を務める。

2020年4月に社会コミュニケーション省と合併、マスメディアの管理も行うようになっている。

2 アンゴラ通信庁(INACOM)

Tel. +244 222 210666
URL https://www.inacom.gov.ao/
所在地 Avenida Dr. António Agostinho Neto, no 25, Zona C, Praia do Bispo, Cx Postal 1459, Luanda, ANGOLA
幹部 Pascoal Borges Alé Fernandes(長官/President of Administrative Comission)
所掌事務

「1992年5月25日の政令第99/12号」により設立、「2011年電子通信・情報社会法」「2014年9月9日の大統領令第243/14号」により所掌が再定義された。通信担当省下の事業者規制機関として、主に以下を所掌する。

Ⅱ 法令

1 2011年電子通信・情報社会法

正式名称は、「2011年6月20日の法律第23/11号」。それまで電気通信分野の基本法令であった「2001年電気通信法」に代わり、2011年6月に発効した。全国へのブロードバンド網・サービスの普及を主目的に規制機関の所掌を再定義し、政府サービスやデータ保護を含む各種通信サービスの提供の目的と規制原則を提示している。

2 2016年の大統領令

INACOMは2016年8月、通信市場の発展に応じた規制側の体制改革を図り、通信事業免許に関しては「2016年6月9日の大統領令第122/16号」、電子通信市場規制に関しては「2016年5月25日の大統領令第108/16号」、周波数割当及び番号資源管理に関しては「2016年5月10日の大統領令第95/16号」を通信市場規制の基本的枠組とすると発表した。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「2016年6月9日の大統領令第122/16号」により、通信事業に関する免許は、固定・移動を問わずすべてのサービスを消費者に提供し得る「グローバル統一免許」と1種類のサービスのみを提供する「マルチサービス免許」の2種に大別された。2020年6月までに「グローバル統一免許」を付与された事業者は、固定通信の国営事業者Angola Telecom(AT)、移動体通信で国内シェアを2分するUnitel及びMovicel、英国に本拠を置き親会社を米国に持つレバノン系移動体通信事業者Africellの4社である。その他事業者は衛星、ケーブルテレビ、ISP等で「マルチサービス免許」を取得している。

電気通信各分野の事業者は、10%を超えて同一の分野の事業者の資本を所有してはならないとされている。また、外資比率の上限は49%である。

2 競争促進政策

(1)民営化

政府は2019年8月、国営企業全般の大幅な民営計画を発表した。通信部門では、2022年までにAT株式の45%、AT傘下のケーブルテレビ会社TV Cabo株式の約50%、その他政府が間接的に株式を所有する通信会社の株式の一部が他社に売却あるいは一般公開される予定である。

(2)料金規制

INACOMは2016年10月、固定・移動通話及びインターネット接続に関し、物価上昇に応じて、2005年以来据え置かれていた消費者料金基準を1.4倍弱引き上げた。その後各事業者の料金引上げについて、消費者からの懸念が高まったことに応じ、2018年6月の通達で、各事業者は料金体系の変更については規制機関への申請を行い、許可を得た後実行予定日の30日前には消費者への通知を行うこととした。2019年11月、INACOMは固定・移動ともに通話発信及び通話時間1分ごとの消費者料金の上限を定め、同12月に実施した。

(3)卸売提供制度とMVNO促進政策

「2016年7月6日の大統領令第166/14」により、ICTサービスを提供する事業者はすべて、サービス提供コスト軽減と競争促進を主目的にインフラを共有することが可能になった。政府は2018年2月に通信事業者のインフラ共有促進のための委員会INFRACOMを設立した。2020年7月には、ルーラル地域の移動体通信サービス普及を目的に、移動体通信事業者間のインフラ共有を支援する「国内ローミング規則」が採択された。

上記の大統領令は、MVNOの市場参入を可能にするものであり、2019年にはATと新規参入事業者間で交渉が行われたが、2020年7月には白紙に戻された。

3 情報通信基盤整備政策

ユニバーサル・サービス

ユニバーサル・サービスの内容は、通話、ファックス及びインターネット接続可能な速度のデータ通信、公衆電話、緊急通信等である。ユニバーサル・サービス事業者については、電話サービス提供事業者各社から得た情報を基に、通信規制機関が料金やサービス地域を指定する。固定通信事業者は、年ごとに一定の額をユニバーサル・サービス基金に拠出する。

4 ICT政策

(1)Angola Online

2014年9月、MTTI(当時)は2017年までに国内のインターネット接続利用者を500万に引き上げる「Angola Online」計画を発表した。この計画は、人口の多い地域を中心に、学校や公共施設のインターネット接続機器を一般に開放、2時間までの無料アクセス・サービスを提供するというものである。2018年末のカバー地域は約50自治体で、2019年末までにこれを194に引き上げるという目標が再設定された。2021年8月現在、同計画のサイト上で発表されている全国18州のカバー自治体数合計は192であるが、うち100がCunene州に集中している。

(2)電子政府

政府は市民向け電子政府ポータル「SEPE」を開き、登録者に各種統計・政府データの公開、企業からの各種申請受付、証明書の発行等のオンライン・サービスを提供している。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「2014年9月9日の大統領令第243/14号」により、INACOMが、電気通信設備の認可やネットワーク上での運用条件の設定、認可手続の策定等を実施することが規定されている。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

3社がPSTNサービスを提供しているが、全国をカバーしているのはATのみで、固定電話全体の加入者シェアの約40%を占めている。移動体通信の普及に伴い、近年のPSTN回線数は減少傾向にある。IP電話サービスは自由化されており、2020年12月現在、加入数は固定電話全体の半数に近づいている。

2 移動体通信

2021年3月現在の加入数は1,449万、うち9割以上がプリぺイド契約に加入している。

旧国営のMovicelと、ポルトガル・テレコム(Portugal Telecom:PT)と国内企業のコンソーシアムであるUnitelの2社がサービスを提供しており、Africellも2021年末の市場参入計画を発表している。

Movicelは2006年、Unitelは2008年に3Gサービスを開始、2021年3月現在、国内全域の都市部でサービス利用が可能で、人口カバレッジは50%を超えている。スマートフォンはiPhone、サムスン(Samsung)のほか、アルカテル(Alcatel)やノキア(Nokia)等の製品を販売している。

LTEについては、Movicelが2011年に技術中立で利用許可を取得した1800MHz帯を利用し、2012年4月、華為技術(HUAWEI)の協力を受けて商用LTE網の運用を開始、2018年半ばにはLTE-Advancedサービスも開始された。Unitelは、2012年12月にルアンダの中心部においてLTEサービスを開始、2016年にはLTE-Advancedサービスを導入した。

5Gについては、2021年4月にUnitelがエリクソン(Ericsson)とネットワーク展開に関する3年間の技術協力で提携を結んだものの、政府の周波数割当計画等は不明である。

3 インターネット

2020年11月までに11事業者が固定インターネット接続サービスの免許を取得し、固定インターネット、ケーブル、光ファイバ/LAN等によるサービスが提供されている。ケーブル及びLAN/FTTxを提供するTV Caboが約4割のシェアを占めているが、近年は有料テレビ会社ZAPの傘下にあるZAP FibraのLAN/FTTxサービス加入が大幅に伸び、同社のシェアは30%を超えている。ATのサービスはDSLが主で、同社のシェアは13%強である。

モバイル・インターネット接続は、プリペイド、ポストペイド双方の加入者が利用可能である。月のデータ利用量の上限は加入プランにより100MB~50GBで、音楽・ビデオの視聴やダウンロードのほか、フェイスブック(Facebook、現メタ(Meta))接続サービス等も提供されており、2020年末の利用者は約664万である。

Ⅵ 運営体

アンゴラ・テレコム(AT)

Angola Telecom

Tel. +222 700000
URL https://www.angolatelecom.ao/
幹部 Adilson Miguel dos Santos(最高経営責任者/CEO)
概要

1992年に国営総合通信事業者として設立された。ケーブルテレビ事業者TV Caboの株式の50%、2009年に民営化されたMovicelの株式を18%所有するほか、電話番号案内サービス会社eltangola等を傘下に持つ。

放送

Ⅰ 監督機関等

通信・情報技術・社会コミュニケーション省(MINTTICS)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

放送事業を含むメディア全般の政策策定を所掌する。

Ⅱ 法令

1 テレビ事業活動に関する法律

2017年1月に発効したメディア関連規則パッケージの一つで、テレビ事業の免許取得方法、資本規制、番組規制等の原則を規定している。

2 ラジオ事業活動に関する法律

「テレビ事業活動に関する法律」と同一のパッケージに含まれ、テレビ同様にラジオ事業規制の原則を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

テレビ事業免許は、MINTTICSへの申請の後、審査を通過した事業者に付与される。免許期間は10年で更新が可能である。ラジオについては、全国あるいはローカル事業においてそれぞれ定められた資本を所有することを証明すればMINTTICSへの届出のみで事業活動が可能である。ラジオ・テレビとも、1社における外資の上限は30%とされている。

2 広告規制

2017年3月の「広告法」により、ラジオ放送の広告放送時間は放送時間全体の20%まで、テレビ放送の場合は、30分以上の番組に限り、公共放送は放送時間の20%まで、民放は30%までと定められた。

3 番組規制

「テレビ事業活動に関する法律」第Ⅳ章により、テレビ放送事業者は、社会的多様性尊重の原則に基づき、人権侵害や差別を助長する類の内容の番組及び政治的プロパガンダを放送してはならない。映画放送等で当該の内容のコンテンツが含まれる場合には、事前の注記が必要とされる。成年向け番組の放送時間は23時より翌4時に限られる。

4 地上デジタル放送

2012年1月、アンゴラを含む南部アフリカ開発共同体(Southern African Development Community:SADC)に属する国々は、地上デジタル放送の伝送方式にDVB-T2を採用することを決定し、移行の目標を2013年12月に定めた。アンゴラにおいては、「2014年4月25日の大統領令第41/14」にて地上デジタル放送の伝送方式にDVB-T2を採用することを決定し、同年10月に新たな移行計画を発表、2017年6月までに117の自治体をカバーし、同年内に移行を完了する見通しを示したが、その後移行に関する公式発表は行われなかった。他方、「2019年3月20日の大統領令第33/19」により、上記2014年4月25日の大統領令が取り消され、地上デジタル放送の伝送方式としてISDB-Tの採用が決定された。2020年2月、政府は首都でのパイロット・プロジェクトを開始し、5年から8年の間に全土で移行を完了する計画を明らかにした。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

アンゴラ国営ラジオが、総合放送、教育・文化放送、ローカル言語放送、FM音楽放送及び国際放送を実施している。放送言語は、ポルトガル語のほか英語、仏語、スペイン語で、地域向けの放送では、九つのローカル言語も用いられている。

商業放送事業者は、ルアンダを中心にFM放送を実施しており、宗教、ニュース等の専門放送が中心である。

2 テレビ

地上放送は、国営のアンゴラ公共テレビ(TPA)が2系統で24時間の全国放送と国際放送を実施している。商業放送事業者には、TV Zimboがある。

3 衛星放送

2019年の加入件数は約179万である。南アフリカのマルチチョイス(MultiChoice)子会社のマルチチョイス・アンゴラが七つの基本パッケージと四つの外国語パッケージを提供しており、ビデオ・オン・デマンド(VOD)やキャッチアップ・サービスも利用可能である。

2009年3月からは、ポルトガルのZon Multimediaの関連会社が「Zap」のブランド名でサービスを実施し、五つのパッケージを提供している。

4 ケーブルテレビ

2019年の加入件数は約9万である。TV Cabo Angolaが、首都を中心に国内主要都市でマルチチョイス・アンゴラ及びZAPのパッケージを提供している。VODサービスも利用可能である。

Ⅴ 運営体

アンゴラ公共テレビ(TPA)

Tel. +244 2 320 025
URL https://tpa.sapo.ao/
幹部 Francisco Mendes(総裁/President)
概要

1975年に設立された国営テレビ放送事業者で、総合放送であるTPA1、若年層向け娯楽番組放送のTPA2、国外在住者向けのTPA Internationalを放送している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)通信・情報技術・社会コミュニケーション省(MINTTICS)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)アンゴラ通信庁(INACOM)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2 標準化機関

アンゴラ標準化協会(IANORQ)

Instituto Angolano de Normalização e Qualidade

Tel. +244 930 011313
URL https://ianorq.gov.ao/
所在地 Rua Cerqueira Lukoki no 25, 7° andar, AO- Luanda, ANGOLA
所掌事務

1996年に産業省内に設立された標準化機関。国内での製造品や提供サービス、及び輸入品に関する標準を策定する。認可業務は、外部の認定機関が実行する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

電波監理については、「2001年電気通信法」第4条においておおむね以下のとおりに規定されている。

なお、周波数の管理と監督、国家周波数計画の策定と更新はINACOMの所管であることが第7条で規定されている。

2 無線局免許制度

「2001年電気通信法」第34条において、無線局を運用する場合、無線局免許の保有が必要であることが規定されている。電波を放射するすべての無線局は、INACOMに登録されなければならないが、短距離通信向け小出力無線局に関しては登録義務が免除される。

3 電波利用料制度

「2001年電気通信法」第35条において、周波数システムを所有し利用する者は、電波利用料を支払うことが規定されている。料金表は、MTTI(現MINTTICS)と財務省が共同で作成・発出する。国防、公共安全に利用される周波数については、電波利用料の支払いを免除される。

通信事業者の年ごとの周波数利用料に関する料金表は、「2019年10月4日の政令第312/19号」に記載されている。

4 電波の安全性に関する基準

電磁界へのばく露に関する人体への制限値の基準は、EU理事会が加盟国に適用を勧告している国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の「時間変化する電界、磁界及び電磁界によるばく露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)」(1998年)に準拠している。