オーストラリア連邦(Commonwealth of Australia)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 インフラ・運輸・地方開発・通信・スポーツ・芸術省(DITRDCSA)

Department of Infrastructure, Transport, Regional Development, Communications, Sport and the Arts

Tel. +61 2 6163 7111
URL https://www.infrastructure.gov.au/
所在地 Nishi Building, level 9/2 Phillip Law St, Canberra ACT, AUSTRALIA
幹部 Anika Wells(通信担当大臣/Minister for Communications)
所掌事務

DITRDCSAは通信、放送分野の政策立案のほか、ブロードバンドの普及や地上デジタル放送への移行等、情報通信の普及・振興に関する施策を実施する。

2 オーストラリア通信メディア庁(ACMA)

Australian Communications and Media Authority

Tel.

キャンベラ +61 2 6219 5555

シドニー  +61 2 9334 7700

メルボルン +61 3 9963 6800

URL https://www.acma.gov.au/
所在地

キャンベラ Level 3, 40 Cameron Avenue, Belconnen ACT 2617, AUSTRALIA

シドニー Level 5 The Bay Centre, 65 Pirrama Road, Pyrmont NSW 2009, AUSTRALIA

メルボルン Level 32 Melbourne Central Tower, 360 Elizabeth Street, Melbourne, Victoria 3000, AUSTRALIA

幹部 Nerida O’Loughlin(長官/Chair)
所掌事務

2005年7月1日に、オーストラリア通信庁(Australian Communications Au­thority:ACA)及びオーストラリア放送庁(Australian Broadcasting Authority:ABA)が統合し、通信、放送分野の規制監督機関として設立された。ACMAは以下の事項を所掌する。

3 オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)

Australian Competition and Consumer Commission

Tel. +61 2 6243 1111
URL https://www.accc.gov.au/
所在地 23 Marcus Clarke Street, Canberra ACT 2601, AUSTRALIA
幹部 Gina Cass-Gottlieb(議長/Chair)
所掌事務

1995年に設立された。「2010年競争・消費者法(Competition and Consumer Act 2010)」及び州・準州における競争規則の執行面での責務を負う。同委員会は、電気通信分野に関しては、料金規制、相互接続、番号ポータビリティ、公正なブロードバンド環境整備等にかかわる事業者の規制・監督を所掌している。

4 ネット安全(eSafety)コミッショナー

eSafety Commissioner

Tel. +61 2 6219 5555
URL https://www.esafety.gov.au/
所在地 Red Building, Benjamin Offices, Chan Street, Belconnen ACT, AUSTRALIA
幹部 Julie Inman Grant(委員長/Commissioner)
所掌事務

2015年6月に設立された。「2021年オンライン安全法(Online Safety Act 2021)」に基づき、オンライン上のネットいじめや虐待、有害・違法コンテンツの排除に関する各種施策を所掌している。また、市民に対するオンライン安全に関する情報提供、啓発活動も行っている。

Ⅱ 法令

1 1997年電気通信法(Telecommunications Act 1997

1997年7月に施行された電気通信法は、事業免許の許認可、事業者事前選択、番号計画、技術基準等にかかわる規定で構成される。2020年5月に成立した「2020年電気通信法改正(競争及び消費者)法(Telecommunications Legislation Amendment(Competition and Consumer) Act 2020)」により、超高速ブロードバンドサービス(有線・無線含む)をユニバーサルサービスとして提供することを義務付けられた「法定基盤提供者(Statutory Infrastructure Provider:SIP)」が新たに規定された。

2 2010年競争消費者法(Competition and Consumer Act 2010

電気通信事業者に対する競争規定及び電気通信分野における消費者保護基準を規定している。電気通信分野には、第ⅪB章の反競争行為及び記録保持規則、第ⅪC章のアクセス制度等が適用される。

3 1992年無線通信法(Radiocommunications Act 1992

無線通信分野における競争を促進し、周波数管理制度を確立することを目的としている。2021年6月の改正により、周波数及び無線機器免許の期間延長、免許付与に関する意思決定の柔軟化、ACMAによる情報収集権限の強化等が新たに規定された。

4 1999年電気通信(消費者保護及びサービス基準)法(Telecommunications(Consumer Protection and Service Standards)Act 1999

「1997年電気通信法」及び「1997年電気通信(ユニバーサルサービス基金)法」に基づき、消費者保護及びユニバーサルサービスに関する詳細を規定している。2025年8月には、ACMAの規制権限を強化し、不正事業者の排除と通信事業の透明性向上を目的とした「通信搬送サービス事業者登録制度(Carriage Service Provider Registration Scheme)」を導入するための法案が議会に提出されている。

5 2021年オンライン安全法(Online Safety Act 2021

2015年6月に成立した「2015年子どものオンライン安全強化法(Enhancing Online Safety for Children Act 2015)」を基盤として、オンライン上の安全に関する法制度は継続的に強化されてきた。「2021年オンライン安全法」は、これらの法制度を包括的に取りまとめたものであり、独立規制機関であるeSafetyコミッショナーの設置根拠法でもある。

また、ネットいじめやオンライン虐待に関する苦情申告制度を定めるとともに、オンライン事業者が最低限順守すべき安全対策を示す「オンライン上の安全に関する基本的な期待事項(Basic Online Safety Expectations:BOSE)」や、有害及び違法コンテンツの自主削除を促す「産業コード(Industry Code)」等についても規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

オーストラリアの電気通信事業者は、「1997年電気通信法」の規定に基づき、「電気通信事業者」と「サービス提供事業者」に分類される。電気通信事業者は通信サービスを提供するためのネットワーク設備を所有している事業者で、ACMAへ申請手続を行い、免許を取得する必要がある。

サービス提供事業者は、更に「搬送サービス事業者(Carriage Service Provider)」と「コンテンツサービス事業者(Contents Service Provider)」に分類され、免許は不要である。搬送サービス事業者は、電気通信事業者のネットワーク設備を使用して搬送サービスを提供する者を指し、ISPは搬送サービス事業者に該当する。一方、搬送サービスを利用して上位レイヤのコンテンツを提供する事業者は、コンテンツサービス事業者と規定される。

2 競争促進政策

相互接続規制

ACCCは、電気通信市場において市場支配力を有する事業者が反競争的行為に及ぶ可能性がある場合には、「2010年競争消費者法」に基づき、これを規制する。ACCCは、規制の対象となる特定の電気通信サービスを「告示(Declaration)」することにより、告示サービス(Declared Service)のすべての提供者に対し、当該サービスの相互接続を義務付ける。

また、ACCCは「標準アクセス義務(Standard Access Obligation)」として、告示サービスの提供者が同サービスの提供に必要な設備を保有している場合、当該事業者に対して、他事業者からの要請に応じて設備の相互接続を行うことを義務付けることができる。なお、2024年10月現在で、告示サービスは以下の表に示すとおりである。

相互接続規制の対象となる告示サービス一覧
サービス名 発効時点 有効期限
超高速ブロードバンドアクセスサービス 2021年7月 2026年7月
卸売ADSL 2021年12月 2029年6月
移動体着信アクセス 2019年6月 2029年6月
NBN接続サービス、及び付属サービス、設備アクセスサービス(NBN Co提供) 2013年12月 2040年6月
国内回線容量サービス 2019年4月 2029年3月
卸売回線レンタル 2018年11月 2029年6月
市内搬送 2018年11月 2029年6月
固定発信アクセスサービス 2018年11月 2029年6月
固定着信アクセスサービス 2018年11月 2029年6月

3 情報通信基盤整備政策

(1)高速ブロードバンド基盤整備

2009年よりネットワーク構築が開始された光ファイバ網「全国ブロードバンド網(National Broadband Network:NBN)」は、2025年8月現在、加入件数が全国で863万件、加入可能な世帯及び事業所は1,259万件に達し、概ね全国カバレッジを達成している。また、FTTH方式での接続が可能な世帯及び事業所は、前年の388万件から474万件と大幅に増加、通信速度1Gbps以上のサービスに接続可能な世帯及び事業所が全体の86%に達しており、ネットワークの高速化が顕著である。

NBNの運営事業者NBN Coは2025年9月、全国でのNBNのFTTH化について最終段階となる作業が開始されたことを発表した。連邦政府は最大30億AUD、NBN Coは8億AUDを投じて、全国で約62万2,000世帯及び事業所を対象にFTTHへの切替えを同年1月より開始、9月現在で22万8,000を超える施設で工事が開始されている。この施策は、既存のFTTNに対するアップグレード計画(総額24億AUD)を更に拡張するもので、全国で150万を超える家庭や企業が、新たにFTTHでのブロードバンド接続を利用できる見通しである。

(2)ユニバーサルサービス制度

ユニバーサルサービス制度は「1999年電気通信(消費者保護及びサービス基準)法」が原則を規定しており、主として支配的事業者であるテルストラ(Telstra)にユニバーサルサービス義務(Universal Service Obligation:USO)が課されてきた。

「2020年電気通信法改正(競争及び消費者)法」が2020年5月に成立、上り5Mbps/下り25Mbps以上の伝送速度の超高速ブロードバンドサービス(有線・無線含む)を全国民に提供することを義務付けられた「法定基盤提供者(SIP)」が新たに規定された。SIPには主としてNBN Coが指定されたが、他の事業者もSIPとなることは可能とされた。

また、連邦政府は2025年9月に「ユニバーサル屋外モバイル義務(Universal Outdoor Mobile Obligation:UOMO)」の法案草案を公表した。UOMOは、全国において「空が見える場所であればほぼどこでも」屋外でモバイル音声通話やSMSを利用可能にすることを目的とした施策であり、通信事業者には合理的な手段によって広範囲に基本的な移動体通信サービスを提供する責任が課される。

この施策により、全国の移動体通信のカバレッジは500万km2以上に拡大すると見込まれており、遠隔地域や地方部でのアクセシビリティ向上が期待されている。通信事業者は、既存の移動体通信網と低軌道(Low Earth Orbit:LEO)衛星を通じて提供される衛星直接通信(Direct to Device:D2D)を組み合わせてサービスエリアを拡大する意向である。

4 ICT政策

ソーシャルメディア最低年齢(SMMA)規制

連邦政府は子どもたちをオンライン上の危険から確実に保護することを目指し、2024年11月に16歳未満の子どもがソーシャルメディアを利用することを原則禁止する法案「2024年オンライン安全性改正(ソーシャルメディア最低年齢)法案(Online Safety Amendment(Social Media Minimum Age)Bill 2024)」を成立させた。「2021年オンライン安全法」の改正法である同法案は、オンライン事業者に対して、16歳未満の子どもによるアカウント作成を防ぐために、実効性のある措置を講じることを義務付ける内容を有している。一方で、子どもや保護者に課される義務は規定されていない。同法は2025年12月10日に施行された。

また、政府は2025年7月、「2025年オンライン安全(年齢制限付きSNSプラットフォーム)規則(Online Safety(Age-Restricted Social Media Platforms)Rules 2025)」を議会に提出し、規制対象となるオンライン事業者には、Facebook、Instagram、Snapchat、TikTok、X、YouTube等が含まれることを発表した。これら対象事業者が未成年によるアカウント作成を防止するための適切な措置を講じなかった場合、最大4,950万AUDの罰金が科される可能性にも言及した。

一方、eSafetyコミッショナーは2025年9月にオンライン事業者向けのSMMA規制ガイドライン「Social Media Minimum Age - Regulatory Guidance」を公表、16歳未満の子どもがSNSアカウントを保有することを防ぐため、事業者が講じるべき合理的な措置を明確に示した。具体的には、年齢確認技術の導入、アカウント削除時の明確な通知、ユーザとの透明なコミュニケーション、再登録防止策等が事業者に求められる。自己申告に依存しない仕組みや、誤判定があった場合の見直し手続へのアクセス確保も重視されている。

また、年齢確認に政府発行IDの使用を義務付けることは禁止されており、プライバシーに配慮した代替手段の提供が必須とされることから、情報コミッショナー事務局(Office of the Australian Information Commissioner:OAIC)は2025年10月、SMMA規制におけるプライバシー保護についての規制ガイドライン「Privacy Guidance on Part 4A (Social Media Minimum Age) of the Online Safety Act 2021」を公表した。同ガイドラインには、個人情報の収集は最小限にとどめ、目的を果たした後は速やかに破棄する必要があることや、過去に取得した情報の再利用は条件付きで可能であること等が規定されている。また、収集情報の2次利用には明確な同意が必要で、同意の撤回も容易でなければならないことが規定されている。

なお、教育や健康促進を目的としたサービスについてはSMMA規制の対象外であり、引き続き16歳未満の子どものアカウント作成が可能となっている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信機器の基準認証制度は、「1997年電気通信法」、電磁環境両立性(Electromagnetic Compatibility:EMC)を定めている「1992年無線通信法」及びそれらに基づく告示が規定し、すべての端末機器及び無線設備(放送設備等除く)に対して自己適合宣言制度が適用されている。ただし、技術基準規定がない場合、端末機器に対しては電気通信事業者や機器製造業者の同意またはACMAの接続許可が、無線設備に対しては無線局の許可が必要となる。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

NBNの全国普及により、銅線網によるPSTN固定電話が激減している。2024年6月現在では、NBNを使用するVoIPの加入数が約540万であるのに対して、PSTNの加入数は約18万に過ぎない。主な固定電話事業者はテルストラで加入数シェア(VoIP、PSTN双方含む)は約54%である。競合事業者はオプタス(Optus、市場シェア21%)及びTPGテレコム(TPG Telecom、同22%)である。

2 移動体通信

テルストラ、オプタス及びTPGテレコムの3社が設備を有する移動体通信事業を行っている。また、ALDImobile、amaysim等のMVNOが約30社存在している。2025年6月現在の市場シェアはテルストラが約41%(サブブランド含む)、オプタスが約29%(同)、TPGテレコムが約17%(同)である。

SA方式の5Gサービスは、TPGテレコムが2021年7月にシドニーで提供を開始、続いて、オプタスが2022年8月、テルストラが2022年11月に大都市の特定地域で提供を開始している。その一方、TPGテレコムが2024年1月に、テルストラとオプタスが2024年10月に3Gネットワークの運用を終了している。

3 インターネット

固定ブロードバンドの市場シェアは2025年6月現在で、テルストラが34%と最大であり、TPGテレコムが18%、オプタスが12%と続いている。

接続方式別の加入者数は、2025年6月現在で、光ファイバ接続が約898万(NBN接続が約873万、NBN以外の接続が約26万)と大多数を占める一方、DSLは約8万9,000、ケーブル接続は約2万8,000と激減しており、固定ブロードバンドの光ファイバ網への移行は事実上完了したといえる。

Ⅵ 運営体等

1 テルストラ

Telstra

Tel. +61 1300 368 387
URL https://www.telstra.com.au/
所在地 Level 41, 242 Exhibition Street, Melbourne, Victoria 3000, AUSTRALIA
幹部 Vicki Brady(最高経営責任者/CEO)
概要

国内最大手の総合通信事業者である。「2005年テルストラ(完全民営化)法(Telstra (Transition to Full Private Ownership)Act 2005)」により、政府保有株式の完全放出が可能となり、純民営企業へと移行した。

同社は2022年7月にオセアニア島嶼各国で事業を展開するディジセル・パシフィック(Digicel Pacific)を買収した。この買収に際しては、政府がテルストラに対して公的融資を実施し、支援を行った。この政府支援はオセアニア島嶼地域に対する影響力拡大を模索する中国への対応策であると考えられている。

2 オプタス

Optus

Tel. +61 2 8082 7800
URL https://www.optus.com.au/
所在地 Optus Centre Sydney, 1 Lyonpark Road, Macquarie Park, Sydney NSW 2113, AUSTRALIA
幹部 Stephen Rue(最高経営責任者/CEO)
概要

固定及び移動体通信を提供する総合通信事業者である。同時に、通信衛星OPTUSシリーズを運用し、国内の衛星通信及び放送の独占的プラットフォーム事業者である。2001年9月にシンガポールのシンガポール・テレコム(シングテル(SingTel))への売却手続を完了し、シングテルの完全子会社となった。

3 TPGテレコム

TPG Telecom

Tel. +61 2 9964 4646
URL https://www.tpgtelecom.com.au/
所在地 Level 24, 200 Barangaroo Ave Sydney NSW 2000, AUSTRALIA
幹部 Iñaki Berroeta(最高経営責任者/CEO)
概要

固定ブロードバンド市場第2位のシェアを有するTPGテレコムと移動体通信市場第3位のシェアを有するボーダフォン・ハチソン・オーストラリア(Vodafone Hutchison Australia:VHA)が2020年7月に合併し、誕生した総合通信事業者である。

事業者名は「TPGテレコム」となるが、新会社に対する持分比率はVHAが50.1%、TPGテレコムが49.9%となる。なお、新生TPGテレコムは、VHAや、旧TPGテレコム等の過去の合併により統合した事業者のブランドを引き続き使用することになる。

4 NBN Co

Tel. +61 2 9926 1901
URL https://www.nbnco.com.au/
所在地

1)Level 13, 100 Mount Street, North Sydney NSW 2060, AUSTRALIA

2)Tower 5, Level 14, 727 Collins street, Docklands VIC 3008, AUSTRALIA

幹部 Ellie Sweeney(最高経営責任者/Chief Executive Officer)
概要

NBNを建設・運営するために設立された、政府出資によるブロードバンド運営事業者で、通信事業者に向けて、主に光ファイバ接続の卸売サービスを提供する。

また、NBN Coはルーラル地域や遠隔地域では、衛星ブロードバンドやLTE技術を応用した固定無線ブロードバンドも提供している。2025年8月には、Amazonによる衛星ブロードバンドプロジェクトProject Kuiperの低軌道衛星技術を活用し、国内の地方部及び遠隔地に高速な卸売固定ブロードバンドを提供する契約を締結した。サービス開始は、2026年半ばを予定している。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 インフラ・運輸・地方開発・通信・スポーツ・芸術省(DITRDCSA)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

テレビ・ラジオ分野に関する政策策定及び関連機関への助言提供を所掌する。

2 オーストラリア通信メディア庁(ACMA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

テレビ・ラジオ分野に関する視聴者環境の整備、周波数管理、国際的利益の検討を所掌する。

Ⅱ 法令

1 1983年オーストラリア放送協会法(Australian Broadcasting Corporation Act 1983

1983年7月に施行され、公共放送であるオーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation:ABC)の組織、業務、運営等について規定している。

2 1992年放送サービス法(Broadcasting Services Act 1992

テレビ放送の多チャンネル化への傾向を踏まえ、放送制度を改革することを目的としたもので、「1942年オーストラリア放送法(Australian Broadcasting Act 1942)」に代わって1992年10月に施行された。同法はデジタルテレビ用免許の交付等の規定を有するほか、クロスオーナーシップ規制の撤廃や、商業テレビ放送事業者に対する地域コンテンツの提供義務強化等を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「1992年放送サービス法」により、放送サービス免許の種類は以下の6種類及び追加免許1種類に区分されている。

(1)公共放送サービス(National Broadcasting Services

ABCが提供する放送サービス、議会議事放送サービスである。ただし、ABCが行う有料放送サービス、有料・無料専門放送サービスは含まれない。

(2)商業放送サービス(Commercial Broadcasting Services

営利事業者が、広告収入に基づき一般に利用できる機器により受信できる番組を、視聴者に対し無料で提供するサービスである。商業放送の7ネットワーク(Seven Network)、9ネットワーク(Nine Network)、ネットワーク10(Network Ten)等が実施している。

(3)コミュニティ放送サービス(Community Broadcasting Services

非営利団体が、コミュニティの目的のために、一般に利用できる機器により受信できる番組を、一般公衆に対し無料で提供するサービスである。

(4)有料放送サービス(Subscription Broadcasting Services

視聴者が、契約料金の支払いによってのみ利用できる有料サービス。衛星による有料放送等である。

(5)有料専門放送サービス(Subscription Narrowcasting Services

サービス対象、サービス地域、サービス期間、番組内容のいずれかを限定し、契約料金の支払いによってのみ利用できる有料サービスで、ケーブルテレビや衛星放送等が行っている飲食店やクラブ向けの放送等がある。

(6)無料専門放送サービス(Open Narrowcasting Services

教育放送等のサービス対象、サービス地域、サービス期間、番組内容のいずれかが限定されたサービスである。なお、国際放送サービスは本区分に含まれている。

(7)国際放送サービス(International Broadcasting Services

オーストラリア国内の無線通信送信機を使用し、海外に提供されるサービスである。上記の免許分類「商業放送サービス」「コミュニティ放送サービス」「有料放送サービス」の保有者が、本免許を取得することで、サービスの提供が可能となる。

2 地上デジタル放送

オーストラリアでは2001年1月にDVB-T方式で地上デジタルテレビ放送が開始、2004年1月には全国域での受信が可能となった。アナログ停波は2010年6月より開始され、2013年12月10日に地上デジタル放送への移行が完了した。

また、難視聴地域では2010年より「視聴者アクセス衛星テレビサービス(Viewer Access Satellite Television:VAST)」が提供されている。VASTは公共放送及び民間放送について全国一律に番組を提供し、地域報道については、ABC及び少数民族向け公共放送の特別放送サービス協会(Special Broadcasting Service:SBS)が各州において個別のチャンネルにより提供することが可能である。

3 動画配信サービス規制

「2023年通信法改正(プロミネンス及び反サイフォン制度)法案(Communications Legislation Amendment(Prominence and Anti-siphoning)Bill 2023)」が2024年7月に成立した。同法は、国内の地上テレビ放送番組が国際的な動画コンテンツに淘汰されることを防ぐため、動画配信サービス事業者に対して、これら番組の「再送信義務」を課す内容を含む。

また、同法は「国家的に重要なイベント」の独占放送を禁止する反サイフォン制度の対象に、新たに動画ストリーミング事業者を含めた。法案提出に併せて、改めて反サイフォンリストが提示されたが、リストに記載されたイベントはすべてオリンピックやラグビー、サッカー、クリケット等のスポーツイベントである。

4 商業放送事業者への免税措置

連邦政府は2025年2月、商業放送事業者の財務基盤への支援として商業放送事業税(Commercial Broadcasting Tax:CBT)を1年間免除することを発表した。CBTは、商業テレビ及びラジオの電波利用に関して商業放送事業者に課されるもので、2025年6月9日~2026年6月8日の1年間、すべての商業テレビ放送及びラジオ放送事業者を対象にCBTの支払いを完全免除する。近年、商業放送事業者の財務環境は悪化しており、今回の措置により、市民への良質な情提供手段であるテレビ及びラジオの事業継続性を確保するとされる。同措置による商業放送事業者の支出削減額は5,030万AUDが見込まれている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

公共放送ABCが20系統の全国放送を実施している。公共放送SBSもメルボルン、シドニー等の主要都市を対象に5系統で放送を行っている。

他方、商業放送事業者は多数存在し、広域に放送を実施している代表的事業者にSouthern Cross AustereoやAustralian Radio Networkがある。

2 テレビ

ABC、SBSの公共放送事業者2社、7ネットワーク、9ネットワーク、ネットワーク10の商業放送事業者3社が全国向けに各1系統の放送を行っている。

3 衛星放送・ケーブルテレビ

フォクステル(Foxtel)が、DTHとケーブルテレビによる有料放送を行っている。ケーブルテレビはオプタス及びテルストラ所有の同軸ケーブル網によって視聴者に提供されている。フォクステルは競合事業者であったオースター(Austar)を2012年5月に買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。

なお、2024年9月末現在でのフォクステルの有料放送サービス(ストリーミングを除く)加入数は約142万2,000 である。

Ⅴ 運営体

1 オーストラリア放送協会(ABC)

Australian Broadcasting Corporation

Tel. +61 139 994
URL https://www.abc.net.au/
所在地 ABC Ultimo Centre, 700 Harris Street, Ultimo NSW 2007, AUSTRALIA
幹部 Hugh Marks(代表取締役/Managing Director)
概要

1932年に設立の公共放送事業者である。「1983年オーストラリア放送協会法」に基づき、組織運営及び放送事業を実施する。受信料制度は1974年に廃止されており、主要財源は政府交付金である。政府交付金の金額は議会で決定され、財務大臣がこれについてABCに対し指示する権限を有する。

2 特別放送サービス協会(SBS)

Special Broadcasting Service Corporation

Tel. +61 1800 500 727
URL https://www.sbs.com.au/
所在地 Locked Bag 028, Crows Nest NSW 1585, AUSTRALIA
幹部 Jane Palfreyman(社長代行/Acting Managing Director)
概要

少数民族向けの多言語放送を実施する公共事業者である。1980年に設立され、ラジオ及びテレビの全国放送を実施している。財源の85%が政府交付金であるが「1991年特別放送サービス法(Special Broadcasting Service Act 1991)」によって広告収入が認められている。放送時間の半分について、英語以外の言語での放送が義務付けられており、64種以上の言語で放送が実施されている。

3 フォクステル

Foxtel

Tel. +61 2 9813 6000
URL https://www.foxtel.com.au/
所在地 5 Thomas Holt Drive, North Ryde NSW 2113, AUSTRALIA
幹部 Patrick Delany(最高経営責任者/CEO)
概要

1995年にテルストラとニューズ・コープ(News Corp)が折半投資で設立した有料放送事業者である。2018年4月にニューズ・コープの100%子会社FOXスポーツ(Fox Sports)を経営統合した結果、両社のフォクステルの持株比率はテルストラが35%、ニューズ・コープが65%となった。2012年5月に唯一の競合事業者であったオースターを買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。なお、フォクステルは2024年12月に保有する全株式をスポーツ専門動画配信事業者DAZNに売却する計画を発表、2025年4月に合併を完了した。

4 その他の主な事業者

事業者名 URL
7ネットワーク https://www.sevenwestmedia.com.au/
9ネットワーク https://www.nineforbrands.com.au/
ネットワーク10 https://10play.com.au/ (国内のみアクセス可)

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)インフラ・運輸・地方開発・通信・スポーツ・芸術省(DITRDCSA)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)オーストラリア通信メディア庁(ACMA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

電波監理部門においては、周波数の計画及び管理、無線局免許要件の順守、電波干渉の調査を所掌する。周波数の管理所掌は、ACMA通信基盤局(Communication Infrastructure Division)の傘下の周波数計画エンジニアリング(Spectrum Planning and Engineering)部が主に所掌している。なお、地域事務所は、免許と周波数配分に関する周波数へのアクセス業務、及び電波干渉監視と規制上の各種問題を持ち込む際の窓口となっている。

2 標準化機関

オーストラリア標準化協会

Standards Australia

Tel. +61 2 9237 6000
URL https://www.standards.org.au/
所在地 Level 9, The Exchange Centre, 20 Bridge Street, Sydney NSW 2000, AUSTRALIA
幹部 Tracey Gramlick(会長/Chair)
所掌事務

1922年に設立されたStandards Association of Australiaが1999年に現在の組織名に変更された。連邦政府の承認を受けて同国の標準化機関という位置付けを得ており、同協会が策定する規格が国家規格となる。国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)及び太平洋地域標準会議(Pacific Area Standards Congress:PASC)において同国を代表する。電気通信規格は、ACMA、オーストラリア通信産業フォーラム(Australian Construction Industry Forum:ACIF)、DITRDCSAとの連携の下で制定される。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

「1992年無線通信法」の施行により、新たな電波監理機関の導入、技術中立的な周波数免許及びクラス免許の導入、オークション制の導入、新たな技術標準への順応のための柔軟な枠組みを含む市場主導の電波監理制度が導入された。また、1997年の法改正により、周波数再配分の手続の導入、オークションに関する競争原則の設定、健康と安全に関する電磁波基準にかかわる規定等が定められた。周波数の2次取引は、1998年6月に施行された「1998年無線通信(周波数免許取引規則)決定(Radiocommunications(Trading Rules for Spectrum Licences)Determination 1998)」により制度化された。

政府は2020年8月、「1992年無線通信法」の改正法案である「無線通信法改正(改革及び近代化)法案」を議会に提出、同法案は2021年7月に施行された。この改正により、周波数に関する計画、免許、設備に関する規則を簡略化し、特に周波数帯の割当てに関する規制・手続をより円滑にし、政府、ACMA、及び周波数帯使用者の役割を明確にし、安定性の維持に留意しつつ放送用周波数帯を一般の周波数帯と同じ枠組みに移行させ、違反に対する罰則を整備することが可能となった。

2 周波数再編

ACMAは2025年4月、2028年から2032年にかけて有効期限を迎える複数の周波数免許の今後の取扱いに関する予備的見解を発表した。見解の対象となった周波数帯は700MHz帯、850MHz帯、1800MHz帯、2GHz帯、2.3GHz帯、2.5GHz帯、3.4GHz帯であり、いずれも移動通信や固定無線アクセス(Fixed Wireless Access:FWA)等、国内の主な広域無線ブロードバンド(Wide-area Wireless Broadband:WBB)サービスを支えている。

ACMAはこれらの帯域について、「通信事業者による投資や地方・郊外地域への接続性向上等を通じ、長期的な公共の利益に寄与している」と評価し、原則として免許を11~16年の期間で更新する方針を示した。特に、NBN Coが地方部や遠隔地域に提供しているFWAネットワークも、この更新対象に含まれる。

また、ACMAは全国規模の免許制度を維持しつつも、地方レベルで新規参入を希望する小規模通信事業者への周波数割当機会を拡大する可能性にも言及している。

更に、ACMAは地方部及び遠隔地域における通信アクセスの改善を重点課題と位置付け、低軌道衛星を活用した移動電話サービスの導入可能性についても検討を進めるとしている。

Ⅲ 周波数分配状況

国内の周波数分配は、「オーストラリア無線周波数スペクトラム計画(Australian Radiofrequency Spectrum Plan)」に示されている。現行の計画は2021年版であるが、2025年10月に変更内容が公表されている。同計画は、4年を基準に開催されるITUの世界無線通信会議(World Radiocommunication Conference:WRC)のファイナルアクト(Final Acts)に対応して、定期的に見直される。