オーストラリア連邦(Commonwealth of Australia)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 インフラ・運輸・地方開発・通信省(DITRDC)

Department of Infrastructure, Transport, Regional Development and Communications

Tel. +61 2 6271 1000
URL https://www.communications.gov.au/
所在地 Nishi Building, 2 Phillip Law Street, Canberra ACT 2601, AUSTRALIA
幹部 Paul Fletcher(通信担当大臣/Minister for Communications, Cyber Safety and the Arts)
所掌事務

DITRDCは通信、放送分野の政策立案のほか、ブロードバンドの普及や地上デジタル放送への移行等、情報通信の普及・振興に関する施策を実施する。2020年2月の省庁再編により「通信芸術省」を「インフラ・運輸・地方開発省」と統合し「インフラ・運輸・地方開発・通信省」が発足。

2 オーストラリア通信メディア庁(ACMA)

Australian Communications and Media Authority

Tel. キャンベラ +61 2 6219 5555
シドニー  +61 2 9334 7700
メルボルン +61 3 9963 6800
URL https://www.acma.gov.au/
所在地

キャンベラ Red Building, Benjamin Offices, Chan Street, Belconnen ACT 2617, AUSTRALIA

シドニー Level 5 The Bay Centre, 65 Pirrama Road, Pyrmont NSW 2009, AUSTRALIA

メルボルン Level 32 Melbourne Central Tower, 360 Elizabeth Street, Melbourne, Victoria 3000, AUSTRALIA

幹部 Nerida O’Loughlin(長官/Chair)
所掌事務

2005年7月1日に、オーストラリア通信庁(Australian Communications Authority:ACA)及びオーストラリア放送庁(Australian Broadcasting Authority:ABA)が統合し、通信、放送分野の規制監督機関として設立された。ACMAは以下の事項を所掌する。

3 オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)

Australian Competition and Consumer Commission

Tel. +61 2 6243 1111
URL https://www.accc.gov.au/
所在地 23 Marcus Clarke Street, Canberra ACT 2601, AUSTRALIA
幹部 Rod Sims(委員長/Chairman)
所掌事務

1995年に設立された。「2010年競争・消費者法(Competition and Consumer Act 2010)」及び州・準州における競争規則の執行面での責務を負う。同委員会は、電気通信分野に関しては、公正競争の観点からの料金規制、相互接続、番号ポータビリティ、公正なブロードバンド環境整備等にかかわる事業者の規制・監督を所掌している。

Ⅱ 法令

1 1997年電気通信法(Telecommunications Act 1997

1997年7月に施行された電気通信法は、事業免許の許認可、事業者事前選択、番号計画、技術基準等にかかわる規定で構成される。

なお、同法を補完する法律として主に以下が制定されている。

また、2020年5月に成立した「2020年電気通信法改正(競争及び消費者)法(Telecommunications Legislation Amendment(Competition and Consumer) Act 2020)」により、超高速ブロードバンド・サービス(有線・無線含む)をユニバーサル・サービスとして提供することを義務付けられた「法定基盤提供者(Statutory Infrastructure Provider:SIP)」が新たに規定された(Ⅲ-3(2)参照)。

2 2010年競争・消費者法(Competition and Consumer Act 2010

電気通信事業者に対する競争規定及び電気通信分野における消費者保護基準を規定している。電気通信分野には、第ⅪB章の反競争行為及び記録保持規則、第ⅪC章のアクセス制度等が適用される。

3 1992年無線通信法(Radiocommunications Act 1992

無線通信分野における競争を促進し、周波数管理制度を確立することを目的としている。2020年8月に同法を改正するための法案「無線通信法改正(改革及び近代化)法案(Radiocommunications Legislation Amendment (Reform and Modernisation) Bill 2020)」が連邦議会に提出された。同法案は、周波数及び無線機器免許の期間延長、免許付与に関する意思決定の柔軟化、ACMAによる情報収集権限の強化等を企図する内容となっている。同法案は2020年11月に下院議会を通過している。

4 1999年電気通信(消費者保護及びサービス基準)法(Telecommunications(Consumer Protection and Service Standards)Act 1999

「1997年電気通信法」及び「1997年電気通信(ユニバーサル・サービス基金)法」に基づき、消費者保護及びユニバーサル・サービスに関する詳細を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

オーストラリアの電気通信事業者は、「1997年電気通信法」の規定に基づき、「電気通信事業者」と「サービス提供事業者」に分類される。電気通信事業者は公衆に搬送サービス(電磁的方式により通信を伝送するサービス)を提供するためのネットワーク設備を所有している事業者で、ACMAへ申請手続を行い、免許を取得する必要がある。

サービス提供事業者は、更に「搬送サービス事業者(Carriage Service Provider)」と「コンテンツ・サービス事業者(Contents Service Provider)」に分類され、免許は不要である。搬送サービス事業者は、電気通信事業者のネットワーク設備を使用して搬送サービスを提供する者を指し、ISPは搬送サービス事業者に該当する。一方、搬送サービスを利用して上位レイヤのコンテンツを提供する事業者は、コンテンツ・サービス事業者と規定される。

2 競争促進政策

(1)相互接続規制

ACCCは、電気通信市場において市場支配力を有する事業者が反競争的行為に及ぶ可能性がある場合には、「2010年競争・消費者法」に基づき、これを規制する。ACCCは、規制の対象となる特定の電気通信サービスを「告示(Declaration)」することにより、告示サービス(Declared Service)のすべての提供者に対し、当該サービスの相互接続を義務付ける。

また、ACCCは「標準アクセス義務(Standard Access Obligation)」として、告示サービスの提供者が同サービスの提供に必要な設備を保有している場合、当該事業者に対して、他事業者からの要請に応じて設備の相互接続を行うことを義務付けることができる。なお、2020年11月現在、告示サービスは以下の表に示すとおりである。

相互接続規制の対象となる告示サービス一覧
サービス名 発効時点 有効期限
超高速ブロードバンド・アクセス・サービス 2016年7月 2021年7月
市内ビットストリーム・アクセス 2012年4月 なし
卸売ADSL 2012年2月 2022年2月
移動体着信アクセス 2019年6月 2024年6月
NBN接続サービス、及び付属サービス、設備アクセス・サービス(NBN Co提供) 2013年12月 2040年6月
国内回線容量サービス 2019年4月 2024年3月
ローカル・ループ・アンバンドリング 2018年11月 2024年6月
ライン・シェアリング 2018年11月 2024年6月
卸売回線レンタル 2018年11月 2024年6月
市内搬送 2018年11月 2024年6月
固定発信アクセス・サービス 2018年11月 2024年6月
固定着信アクセス・サービス 2018年11月 2024年6月

出所:ACCC「s.152AQ declared services register

(2)超高速ブロードバンド接続の設備開放

ACCCは2017年5月に超高速ブロードバンド接続サービス(Superfast Broadband Access Service:SBAS)に対する規制について最終決定を示した。決定では、上り5Mbps・下り25Mbps以上の通信速度で固定ブロードバンド接続を提供する事業者に対して設備開放を義務付け、接続料金を指定している。なお、全国ブロードバンド網(National Broadband Network:NBN)により提供されるサービスは規制の対象とならない。

規制対象とされるサービスはテルストラ(Telstra)、TPGテレコム(TPG Telecom)、Vocus、LBN、Opticomm及びOPENNetworks等、NBNによるサービスが不在である新興住宅街や中心市街地の共同住宅等において提供されているサービスである。

なお、ACCCは2020年7月に、NBNの全国展開が進展していることを踏まえ、SBASに対する規制を継続するべきかどうかについて、意見公募を行うための討議文書を発表している。

3 情報通信基盤整備政策

(1)高速ブロードバンド基盤整備

2009年4月、オーストラリア政府は全国域でFTTx網を新規に構築するNBN計画を開始した。NBN計画は2020年までに国内の90%の建造物にFTTxによる通信速度100Mbps級のブロードバンド・サービスを提供することを目標としている。

NBNは計画発表と同時に設立された政府完全出資のFTTx卸売サービス専業事業者NBN Coにより運営され、同社はテルストラやオプタス(Optus)の所有する銅線網及びHFC網等の設備基盤を取得、これを用いて新規FTTx網の構築を進めている。

NBNは2010年8月にタスマニア州で初の商用サービスが提供された。計画では郊外市区から網構築が実施され、5大都市等の都市圏は計画後半期からの実施となった。

政府は2020年3月、NBN接続可能な建造物数が1,100万に到達、週単位で3万~4万件のペースで接続件数が増加し、NBN計画の95%以上が既に完了していることを明らかにした。また、国内約680万件の世帯及び企業がNBNの小売サービスに加入しており、既存加入者の67%及び新規加入者の80%が通信速度最大50Mbps以上の料金プランを選択していることも明らかにした。

なお、政府は、従来の計画どおりに2020年6月末でNBN計画を完了したとするものの、同年9月に45億AUDを予算とする計画の更新を発表した。この新計画は、2023年までに国内の大都市圏及び地域における固定回線接続施設の最大75%に最大1Gbpsでの超高速ブロードバンド接続を提供することを目標としている。

(2)ユニバーサル・サービス制度

ユニバーサル・サービス制度は「1999年電気通信(消費者保護及びサービス基準)法」が原則を規定しており、主として支配的事業者であるテルストラにユニバーサル・サービス義務(Universal Service Obligation:USO)が課されてきたが、NBN計画により、将来的に全国の通信設備基盤がNBN Co所有の光ファイバ網に差し替えられることになったため、政府は当該の市場環境に対応可能な新しいユニバーサル・サービス制度の導入を計画してきた。

政府は2017年以降、地方・遠隔地における高速ブロードバンド・サービスへのアクセスを改善するための施策を規定する法案を提出してきたが、「2020年電気通信法改正(競争及び消費者)法」が2020年5月に成立したことにより、上り5Mbps・下り25Mbps以上の伝送速度の超高速ブロードバンド・サービス(有線・無線含む)を全国民に提供することを義務付けられた「法定基盤提供者(Statutory Infrastructure Provider:SIP)」が新たに規定された。SIPには主としてNBN Coが指定されたが、他の事業者もSIPとなることは可能とされた。

これに先立ち、政府は2018年12月に新たなユニバーサル・サービス制度である「ユニバーサル・サービス保証(Universal Service Guarantee:USG)」の概要を発表している。USGは、全国民に対してブロードバンドへのアクセスを、通話サービスと同様に保証するものとし、現状のUSOで保証されている固定電話及び公衆電話サービスはルーラル地域、遠隔地域でのみ保証対象となるとした。また、USGでは、ブロードバンド・サービスの提供にNBNを、ルーラル地域、遠隔地域での通話サービスにテルストラ所有の銅線網を使用するとされた。なお、公衆電話については、現状ではサービスの提供が保証されるものの、今後、移動体通信の普及状況を鑑み、その必要性を検討していくこととされた。

4 ICT政策

(1)「子どものネット安全」促進政策

オーストラリアでは2015年7月に、ネットいじめ対策法である「2015年子どものオンライン安全促進法(Enhancing Online Safety for Children Act 2015)」が施行され、ネットいじめの要因となるテキストや画像を迅速に削除する告発システムが構築されている。

2017年6月、同法は「2017年子どものオンライン安全促進改正法(Enhancing Online Safety for Children Amendment Act 2017)」により改正され、従来、子どもを対象としていた同法の各規定が成人も含む全国民に適用されることとなった。同時に、法改正により関連政策を所掌してきた「子どものネット安全コミッショナー(Children’s e-safety Commissioner)」が、「ネット安全コミッショナー(e-safety Commissioner)」に改称されることとなった。

同コミッショナーの所掌する政策内容は、ソーシャルメディアに対する規制や、「いじめ」「同意のない個人画像の共有」等の違法な有害コンテンツを投稿したエンドユーザに対する削除告知等、原則、変更はない。ただし、違法な有害コンテンツの苦情受付ポータルの構築や高齢者に向けたネットスキルの改善プログラムの実施等が新たな政策として追加された。

また、政府は2019年12月に、「2015年子どものオンライン安全促進法」と、違法なオンライン・コンテンツ全般の規制根拠となっている「1992年放送サービス法(Broadcasting Services Act 1992)」の関連条文を統合し、違法な有害コンテンツの規制及び削除システムを統一的に確立するための法律である「オンライン安全法(Online Safety Act)」を提案する討議文書を作成し、意見公募を行っている。

(2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策

オーストラリアではシンガポールの BlueTrace技術(Bluetoothを応用)を使った「COVIDSafe」アプリが 2020年4月にリリースされた。

COVIDSafeでは、アプリをインストールする際に入力した個人情報(移動電話番号、氏名、年齢層、郵便番号)は、政府サーバで保管する。なお、個人情報は登録後に削除することもできる。アプリは、BlueTraceを使い、アプリがインストールされたスマートフォン同士が一定時間近接した場合、それぞれの端末にその記録(接近情報 ID)を残し、その情報は端末で保管される。端末で保管された情報は、21日後に自動的に削除される。なお、新型コロナウイルス蔓延収束後は政府サーバに保管された情報も消去される仕組みとなっている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信機器の基準認証制度は、「1997年電気通信法」、電磁環境両立性(Electromagnetic Compatibility:EMC)を定めている「1992年無線通信法」及びそれらに基づく告示が規定し、すべての端末機器及び無線設備(放送設備等除く)に対して自己適合宣言制度が適用されている。ただし、技術基準規定がない場合、端末機器に対しては電気通信事業者や機器製造業者の同意又はACMAの接続許可が、無線設備に対しては無線局の許可が必要となる。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

2005年度以降、加入数、加入率は減少傾向で推移している。固定電話加入数の減少の原因として、利用者が移動電話やVoIP等の他の通信手段に移行していることが原因として挙げられる。主な固定電話事業者はテルストラで2019年6月末現在の市場シェアは57%と大きい。競合事業者はオプタス及びTPGテレコム(2の項参照)であるが市場シェアはそれぞれ20%前後である。

2 移動体通信

テルストラ、オプタス及び、ボーダフォン・ハチソン・オーストラリア(Vodafone Hutchison Australia:VHA)の3社が設備を有する移動体通信事業を行っている。また、amaysim等のMVNOが約30社存在している。2019年6月末の市場シェアはテルストラが41%、オプタスが27%、VHAが19%である。

なお、VHAは2020年7月にTPGテレコムと合併し、新生「TPGテレコム」となった。旧TPGテレコムは2019年から2017年にかけて700MHz帯及び1800MHz帯を取得し、移動体通信市場への進出を計画していたため、旧VHAの所有する周波数を加えて、移動体通信市場への経営資源を大幅に強化することとなった。

5Gについては、テルストラが2019年5月より商用サービスを開始、2020年10月現在で全国60都市にカバレッジを拡大している。一方、オプタスは2019年11月より商用サービスを開始、大都市圏を中心に全国で約800基の基地局を運用している。また、VHA(当時)は2020年3月に5G商用サービスを開始、2021年末までに5大都市及び首都キャンベラでの人口カバレッジを85%にまで拡大する計画である。なお、使用帯域は各社共に3.5GHz帯であるが、オプタスは2020年2月より2.3GHz帯による5Gサービスをシドニー及びメルボルンで開始している。

3 インターネット

固定ブロードバンドの市場シェアは2019年6月現在、テルストラが47%と最大であり、(旧)TPGテレコムが25%、オプタスが15%と続いている。

接続方式別の加入者数は、2019年6月現在、大部分が光ファイバ接続であるNBNに対する接続が約490万、DSLが約190万と光ファイバの優位が顕著となっている。ケーブルモデムを含むその他の接続方式は約94万と減少の傾向にある。他方、モバイル・インターネットについては、ネット接続が可能な移動電話の数が約2,750万となっている。

Ⅵ 運営体等

1 テルストラ

Telstra

Tel. +61 3 8647 4838
URL https://www.telstra.com.au/
所在地 Level 41, 242 Exhibition Street, Melbourne, Victoria 3000, AUSTRALIA
幹部 Andrew Penn(最高経営責任者/CEO)
概要

市内通信、長距離通信、国際通信、移動体通信、データ通信サービスを提供する国内最大手の総合通信事業者である。「2005年テルストラ(完全民営化)法(Telstra(Transition to Full Private Ownership)Act 2005)」により、政府保有株式の完全放出が可能となり、純民営企業へと移行した。

海外投資については撤収を進める傾向にあり、2014年9月に香港所在のCSLニューワールド・モビリティをHKTに、2015年12月にシンガポール及びタイ所在のPacNetを現地のIT企業体DeCloutに売却している。

2018年6月には「テルストラ2022」と称する事業戦略に基づき、事業効率化を目的に自社の固定インフラ部門を機能分離した事業部門「Telstra InfraCo」を設立することを発表している。

また、2019年10月に移動体通信の3Gサービスを2024年6月に終了する計画を発表した。

2 オプタス

Optus

Tel. +61 2 342 7800
URL https://www.optus.com.au/
所在地 Optus Centre Sydney, 1 Lyonpark Road, Macquarie Park, Sydney NSW 2113, AUSTRALIA
幹部 Kelly Bayer Rosmarin(最高経営責任者/CEO)
概要

市内通信、長距離通信、国際通信、移動体通信、データ通信サービス(ケーブルテレビ含む)を提供し、固定電話及び移動体通信の双方で国内第2位の事業シェアを有する総合通信事業者である。また、通信衛星OPTUSシリーズを運用し、国内の衛星通信及び放送の独占的プラットフォーム事業者である。

2001年9月にシンガポールのシンガポール・テレコム(シングテル、SingTel)への売却手続を完了し、シングテルの完全子会社となった。

3 TPGテレコム

TPG Telecom

Tel. +61 2 9850 0800
URL https://www.tpgtelecom.com.au/
所在地 65 Waterloo Road, North Ryde, NSW 2113, AUSTRALIA
幹部 Iñaki Berroeta(最高経営責任者/CEO)
概要

固定ブロードバンド市場第2位のシェアを有するTPGテレコムと移動体通信市場第3位のシェアを有するボーダフォン・ハチソン・オーストラリア(VHA)が2020年7月に合併し、誕生した総合通信事業者である。

事業者名は「TPGテレコム」となるが、新会社に対する持分比率はVHAが50.1%、TPGテレコムが49.9%となる。なお、新生TPGテレコムは、ボーダフォンや、TPG、iiNet、AAPT、Internode等の過去の合併により統合した事業者のブランドを引き続き使用することになる。

4 NBN Co

Tel. +61 2 9926 1900
URL https://www.nbnco.com.au/
所在地 Level 13, 100 Mount Street, North Sydney NSW 2060, AUSTRALIA(経営部門)
幹部 Stephen Rue(最高経営責任者/Chief Executive Officer)
概要

NBNを建設・運営するために設立された、政府出資によるブロードバンド運営事業者で、通信事業者に向けた卸売サービスのみを提供する。

NBN計画は2020年6月に第1フェーズを完了したが、同年9月に、2023年までに国内の大都市圏及び地域における固定回線接続施設の最大75%に最大1Gbpsでの超高速ブロードバンド接続を提供するという計画に更新されたため、引き続き、NBN Coは全国で光ファイバによるバックホール回線とアクセス回線を構築することになる(Ⅲ-3の項参照)。

また、NBN Coはルーラル地域や遠隔地域では、衛星ブロードバンドやLTE技術を応用した固定無線ブロードバンドも提供している。2015年10月にNBN初のブロードバンド衛星「Sky Muster」打上げに成功、2016年4月にNBNは衛星ブロードバンドの卸売サービスを開始した。地方に住む約40万人の国民に高速ブロードバンド・アクセスを提供することで、デジタル・ディバイドの解消に貢献するとしている。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 インフラ・運輸・地方開発・通信省(DITRDC)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

テレビ・ラジオ分野に関する政策策定及び関連機関への助言提供を所掌する。

2 オーストラリア通信メディア庁(ACMA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

テレビ・ラジオ分野に関する視聴者環境の整備、周波数管理、国際的利益の検討を所掌する。

Ⅱ 法令

1 1983年オーストラリア放送協会法(Australian Broadcasting Corporation Act 1983

1983年7月に施行され、公共放送であるオーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation:ABC)の組織、業務、運営等について規定している。

2 1992年放送サービス法(Broadcasting Services Act 1992

テレビ放送の多チャンネル化への傾向を踏まえ、放送制度を改革することを目的としたもので、「1942年オーストラリア・ラジオ放送法(Australian Broadcasting Act 1942)」に代わって1992年10月に施行された。同法はデジタルテレビ用免許の交付等の規定を有するほか、2017年10月の改正によりクロス・オーナーシップ規制の撤廃や、商業テレビ放送事業者に対する地域コンテンツの提供義務強化等を規定している(Ⅲ-4の項参照)。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「1992年放送サービス法」により、放送サービス免許の種類は以下の六つに区分されている。

(1)公共放送サービス(National Broadcasting Services

ABCが提供する放送サービス、議会議事放送サービスである。ただし、ABCが行う有料放送サービス、有料・無料専門放送サービスは含まれない。

(2)商業放送サービス(Commercial Broadcasting Services

営利事業者が、広告収入に基づき一般に利用できる機器により受信できる番組を、視聴者に対し無料で提供するサービスである。商業放送のチャンネル7、チャンネル9、チャンネル10等が実施している。

(3)コミュニティ放送サービス(Community Broadcasting Services

非営利団体が、コミュニティの目的のために、一般に利用できる機器により受信できる番組を、一般公衆に対し無料で提供するサービスである。

(4)有料放送サービス(Subscription Broadcasting Services

視聴者が、契約料金の支払いによってのみ利用できる有料サービス。衛星による有料放送等である。

(5)有料専門放送サービス(Subscription Narrowcasting Services

サービス対象、サービス地域、サービス期間、番組内容のいずれかを限定し、契約料金の支払いによってのみ利用できる有料サービスで、ケーブルテレビや衛星放送等が行っている飲食店やクラブ向けの放送等がある。

(6)無料専門放送サービス(Open Narrowcasting Services

教育放送等のサービス対象、サービス地域、サービス期間、番組内容のいずれかが限定されたサービスである。なお、国際放送サービスは本区分に含まれている。

2 地上デジタル放送

オーストラリアでは2001年1月にDVB-T方式で地上デジタルテレビ放送が開始、2004年1月には全国域での受信が可能となった。アナログ停波は2010年6月より開始され、2013年12月10日に地上デジタル放送への移行が完了した。

また、難視聴地域では2010年より「視聴者アクセス衛星テレビ・サービス(Viewer Access Satellite Television:VAST)」が提供されている。VASTは政府が37億5,400万AUDを出資し、構築した衛星配信プラットフォームであり、公共放送及び民間放送について全国一律に番組を提供し、地域報道については、ABC及び少数民族向け公共放送SBSが各州において個別のチャンネルにより提供することが可能である。VASTは2018年7月時点で、国内の地方部と一部の大都市圏で、旅行者も含む約23万5,000の視聴者に利用されている。

3 コンテンツ規制

ACMAは2005年12月より、地上商業放送事業者の放送コンテンツに関する実務規範である「オーストラリア制作コンテンツ基準(Australian Content Standard:ACS)」を発効させている。なお、ACSは10年間の発効期限を終了し、2016年3月に更新、再発効されている。ACSはコンテンツの国内制作比率、番組あるいはCMの内容基準等に関して規定している。コンテンツの国内制作比率については、午前6時から深夜までの放送時間の55%を国内制作コンテンツに割り当てなければならないという規定が存在する。

4 放送規制の見直し

「2017年放送法令改正(放送改革)法案(Broadcasting Legislation Amendment (Broadcasting Reform)Act 2017)」が2017年10月に成立し、「1992年放送サービス法」に依拠した放送規制が大幅に改正された。法改正により、メディア所有に関する「population-reach rule」及び「two-out-of-three rule」と称される規定が撤廃された。改正法の附則1により撤廃された「population-reach rule」とは、1人の個人又は一つの事業者がオーストラリアの人口の75%以上をカバーする商業テレビ放送事業者免許を所持することを規制するもので、同様に、附則2により撤廃された「two-out-of-three rule」は、1人の個人又は一つの事業者が新聞、ラジオ、テレビの3分野をまたいで事業を行うことを規制するものであった。

また、改正法附則4は、政府が市民に対して無料で放送されるべきコンテンツとして定めるリストを作成し、有料放送事業者による独占を防止する制度である「anti-siphoning scheme」について、当該コンテンツの自動的なリスト除外期間を2,016時間から4,368時間に延長し、また、デジタル多チャンネル放送を対象とした当該コンテンツの放映制限規定を撤廃することで制度の強化を図っている。

同時に、改正法では放送事業者の財務環境の悪化に対応し、放送免許料の廃止、周波数利用料の縮減(附則5)、テレビ及びラジオ放送事業者に対する年間9,000万AUDの財務支援措置(附則6)が規定されている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

公共放送ABCが「Radio National」(総合編成)、「News Radio」(ニュース)、「ABC Classic FM」(音楽)、「Triple J」(音楽・トーク)やデジタル専門チャンネルを含めて12系統(ストリーミングを除く)の全国放送を実施している。SBSもメルボルン、シドニー等の主要都市を対象に7系統で放送を行っている。

他方、商業放送事業者は多数存在し、広域に放送を実施している代表的事業者にSouthern Cross AustereoやAustralian Radio Networkがある。

また、国際ラジオ放送はABCが「ABC Radio Australia」の名称で短波放送サービスを提供していたが、2017年1月にDABやストリーミング放送に切り替えられ、主に英語コンテンツを提供することとなった。

2 テレビ

ABC、SBSの公共放送事業者2社、7ネットワーク(Seven Network)、9ネットワーク(Nine Network)、ネットワーク10(Network Ten)の商業放送事業者3社が全国向けに各1系統の放送を行っている。

3 衛星放送・ケーブルテレビ

フォクステル(Foxtel)が、DTHとケーブルテレビによる有料放送を行っている。ケーブルテレビはオプタス及びテルストラ所有の同軸ケーブル網によって視聴者に提供されている。フォクステルは競合事業者であったオースター(Austar)を2012年5月に買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。

なお、2020年6月現在でのフォクステルのサービス加入者数は約200万であり、IPTVサービスの「Foxtel Now」や、2020年5月に開始された動画配信サービスである「Binge」等の加入者が急増しており、衛星・ケーブルの加入者は減少傾向にあるとされる。

Ⅴ 運営体

1 オーストラリア放送協会(ABC)

Australian Broadcasting Corporation

Tel. +61 2 8333 1500
URL https://www.abc.net.au/
所在地 ABC Ultimo Centre, 700 Harris Street, Ultimo NSW 2007, AUSTRALIA
幹部 David Anderson(代表取締役/Managing Director)
Ita Buttrose(会長/Chairman)
概要

1932年に設立の公共放送事業者である。「1983年オーストラリア放送協会法」に基づき、組織運営及び放送事業を実施する。受信料制度は1974年に廃止されており、主要財源は政府交付金である。政府交付金の金額は議会で決定され、財務大臣がこれについてABCに対し指示する権限を有する。

2 特別放送サービス協会(SBS)

Special Broadcasting Service Corporation

Tel. +61 1800 500 727
URL https://www.sbs.com.au/
所在地 14 Herbert Street, Artarmon NSW 2064, AUSTRALIA
幹部 George Savvides(会長/Chairman)
概要

少数民族向けの多言語放送を実施する公共事業者である。1980年に設立され、ラジオ及びテレビの全国放送を実施している。財源の85%が政府交付金であるが「1991年特別放送サービス法(Special Broadcasting Service Act 1991)」によって広告収入が認められている。放送時間の半分について、英語以外の言語での放送が義務付けられており、64種以上の言語で放送が実施されている。

3 フォクステル

Foxtel

Tel. +61 2 9813 6000
URL https://www.foxtel.com.au/
所在地 5 Thomas Holt Drive, North Ryde NSW 2113, AUSTRALIA
幹部 Patrick Delany(最高経営責任者/CEO)
概要

1995年にテルストラとニューズ・コープ(News Corp)が折半投資で設立した有料放送事業者である。2018年4月にニューズ・コープの100%子会社FOXスポーツを経営統合した結果、両社のフォクステルの持株比率はテルストラが35%、ニューズ・コープが65%となった。2012年5月に唯一の競合事業者であったオースターを買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。

4 その他の主な事業者

事業者名 概要 URL
7ネットワーク 商業放送では国内最大の放送ネットワークを有し、視聴率でも首位。2011年4月より、メディア総合事業者であるSeven West Media が運営。 http://www.sevenwestmedia.com.au/
9ネットワーク メディア総合事業者Nine Entertainment傘下の地上テレビ放送事業者。2007年までは視聴率で首位にあったが、現在は7ネットワークに次ぎ第2位。 https://www.nineforbrands.com.au/
ネットワーク10 事業規模、視聴率共に国内第3位の商業放送事業者。経営破たんに瀕していたが、2017年8月に米国CBSによる完全買収に合意した。 https://10play.com.au/

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)インフラ・運輸・地方開発・通信省(DITRDC)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)オーストラリア通信メディア庁(ACMA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

電波監理部門においては、周波数の計画及び管理、無線局免許要件の順守、電波干渉の調査を所掌する。周波数の管理所掌は、ACMA通信基盤局(Communication Infrastructure Division)の傘下の周波数計画エンジニアリング(Spectrum Planning and Engineering)部が主に所掌している。なお、地域事務所は、免許と周波数配分に関する周波数へのアクセス業務、及び電波干渉監視と規制上の各種問題を持ち込む際の窓口となっている。

2 標準化機関

オーストラリア標準化協会

Standards Australia

Tel. +61 2 9237 6000
URL https://www.standards.org.au/
所在地 Level 10, The Exchange Centre, 20 Bridge Street, Sydney NSW 2001, AUSTRALIA
幹部 Tracey Gramlick(会長/Chair)
所掌事務

1922年に設立されたStandards Association of Australiaが1999年に現在の組織名に変更された。連邦政府の承認を受けて同国の標準化機関という位置付けを得ており、同協会が策定する規格が国家規格となる。国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)及び太平洋地域標準会議(Pacific Area Standards Congress:PASC)において同国を代表する。電気通信規格は、ACMA、オーストラリア通信産業フォーラム(Australian Construction Industry Forum:ACIF)、DITRDCとの連携のもとで制定される。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

「1992年無線通信法」の施行により、新たな電波監理機関の導入、技術中立的な周波数免許及びクラス免許の導入、オークション制の導入、新たな技術標準への順応のための柔軟な枠組みを含む市場主導の電波監理制度が導入された。また、1997年の法改正により、周波数再配分の手続の導入、オークションに関する競争原則の設定、健康と安全に関する電磁波基準にかかわる規定等が定められた。周波数の2次取引は、1998年6月1日に施行された「1998年無線通信(周波数免許取引規則)決定(Radiocommunications(Trading Rules for Spectrum Licences)Determination 1998)」により制度化された。

ACMAは2020年9月、2020~2024年の5年間にわたる周波数戦略「Five-year spectrum outlook(FYSO)2020-24:The ACMA’s spectrum management work program」の最終版を発表した。同戦略では、周波数帯管理計画を「監視(Monitoring)段階」「初期調査(Initial investigation)段階」「再編準備(Preliminary replanning)段階」「実行(Implementation)段階」の四つの段階に分類しており、実行段階には、既に周波数オークションの準備が進められている850/900MHz帯、26/28GHz帯が含まれている(2の項参照)。また、このほかの帯域では、遠隔地における1800MHz帯や3400-3575MHz帯、5.6GHz帯が実行段階に含まれている。

政府は2016年3月、「1992年無線通信法」の改訂案について協議文書を発表した。この中で政府は、改訂の方針について、計画、免許、設備に関する規則を簡略化し、特に周波数帯の割当てに関する規制・手続をより円滑にし、政府、ACMA、及び周波数帯使用者の役割を明確にし、安定性の維持に留意しつつ放送用周波数帯を一般の周波数帯と同じ枠組みに移行させ、違反に対する罰則を整備することを提案した。その後、政府は2020年8月、これらの提案を含む「1992年無線通信法」の改正法案である「無線通信法改正(改革及び近代化)法案」を議会に提出、同法案は2020年11月に下院議会を通過し、上院議会で審議中となっている。

2 周波数オークション

(1)3.6GHz帯

ACMAは2017年10月、首都圏や地方での5G利用に資するため、3.6GHz帯(3575-3700MHz)を配分する案を発表した。3.6GHz帯は現在、固定衛星サービス(Fixed Satellite Service:FSS)の地球局、ポイント・ツー・ポイントのリンク、及びサイトベースの無線ブロードバンド・サービスに使用されている。3.6GHz帯は地域免許として割り当てられ、免許期間は3.4GHz帯の免許期限である2030年12月20日までの約12年間とされている。ACMAは2018年8月、3.6GHz帯オークションの実施概要を公表した。入札対象は国内14地域における計350ロットで、入札申請料金は1万AUD(払戻不可)と設定。入札予定価格は都市地域(パースを除く)で1MHz/人口当たり0.08AUD、パースでは1MHz/人口当たり0.053AUDとされる一方、郊外地域は1MHz/人口当たり0.03AUDである。オークションは2018年11~12月に実施され、結果は2018年12月10日に公表された。落札総額は8億5,285万3,300AUDで、テルストラが143ロットを3億8,600万8,400AUDで、オプタスが47ロットを1億8,506万9,100AUDで、TPGテレコムとVHAのジョイントベンチャーが131ロットを2億6,328万3,800AUDで、Dense Air Australiaが29ロットを1,849万2,000AUDで落札した。

(2)ミリ波帯

ACMAは2020年10月、26/28GHz帯における5G事業免許の申請を同年11月から受け付けることを発表した。ACMAは、同帯域におけるミリ波によって、輸送、医療、教育、製造、鉱業、更には無線ブロードバンド、衛星、IoT等の広範囲にわたる分野において、プライベートかつローカライズされた5G活用が可能となるとしている。

ACMAは同帯域の割当てについて、免許事業者のニーズに対応可能な柔軟性の高い、エリア限定設備免許(Area-Wide apparatus Licences:AWL)、高密度ネットワークが必要な人口の多い地域の免許、そしてユビキタスな低出力デバイス免許等、複数の種類を組み合わせた事業免許を用意するという。

ACMAによると、2020年11月中に第1次ラウンドとして、26/28GHz帯におけるAWLの周波数分配及び事業免許の発行を実施し、その他のAWL割当については、周波数オークション実施後、2021年前半に第2次ラウンドを実施する計画である。

(3)850/900MHz帯

政府は2020年10月、「2020年無線通信(周波数再分配-850/900MHz帯)布告(Radiocommunications (Spectrum Re-allocation-850/900 MHz Band) Declaration 2020)」を発表し、850/900MHz帯の再編が実施されることが確定した。なお、政府はこれに先立つ2020年5月に、同帯域の活用に関する以下の五つの政策目標を発表している。

ACMAはこの政策目標に呼応し、同じく5月に、現在同帯域を割り当てられている移動体通信事業者を含む関係者に対して、同帯域の再分配に関するコンサルテーションを実施し、周波数オークションの準備を進めている。なお、同オークションは2021年後半に実施する計画となっている。

Ⅲ 周波数分配状況

国内の周波数分配は、「オーストラリア周波数計画(Australian Radiofrequency Spectrum Plan)」に示されている。現行の計画は2017年版である。同計画は、周波数の管理の基礎をなし、それぞれの周波数帯で運用可能なサービス及びそれに付随する諸条件を無線通信の利用者に情報提供するものである。同計画は、4年を基準に開催されるITUの世界無線通信会議(World Radiocommunication Conference:WRC)のファイナル・アクト(Final Acts)に対応して、定期的に見直される。