Department of Infrastructure, Transport, Regional Development, Communications and the Arts
Tel. | +61 2 6274 7111 |
---|---|
URL | https://www.infrastructure.gov.au/ |
所在地 | Nishi Building, 2 Phillip Law Street, Canberra ACT 2601, AUSTRALIA |
幹部 | Michelle Rowland(通信担当大臣/Minister for Communications) |
DITRDCAは通信、放送分野の政策立案のほか、ブロードバンドの普及や地上デジタル放送への移行等、情報通信の普及・振興に関する施策を実施する。2022年6月の労働党政権発足により「インフラ・運輸・地方開発・通信省」から「インフラ・運輸・地方開発・通信・芸術省」に改称。
Australian Communications and Media Authority
Tel. | キャンベラ +61 2 6219 5555 シドニー +61 2 9334 7700 メルボルン +61 3 9963 6800 |
---|---|
URL | https://www.acma.gov.au/ |
所在地 | キャンベラ Red Building, Benjamin Offices, Chan Street, Belconnen ACT 2617, AUSTRALIA シドニー Level 5 The Bay Centre, 65 Pirrama Road, Pyrmont NSW 2009, AUSTRALIA メルボルン Level 32 Melbourne Central Tower, 360 Elizabeth Street, Melbourne, Victoria 3000, AUSTRALIA |
幹部 | Nerida O’Loughlin(長官/Chair) |
2005年7月1日に、オーストラリア通信庁(Australian Communications Authority:ACA)及びオーストラリア放送庁(Australian Broadcasting Authority:ABA)が統合し、通信、放送分野の規制監督機関として設立された。ACMAは以下の事項を所掌する。
Australian Competition and Consumer Commission
Tel. | +61 2 6243 1111 |
---|---|
URL | https://www.accc.gov.au/ |
所在地 | 23 Marcus Clarke Street, Canberra ACT 2601, AUSTRALIA |
幹部 | Gina Cass-Gottlieb(委員長/Chairman) |
1995年に設立された。「2010年競争・消費者法(Competition and Consumer Act 2010)」及び州・準州における競争規則の執行面での責務を負う。同委員会は、電気通信分野に関しては、公正競争の観点からの料金規制、相互接続、番号ポータビリティ、公正なブロードバンド環境整備等にかかわる事業者の規制・監督を所掌している。
1997年7月に施行された電気通信法は、事業免許の許認可、事業者事前選択、番号計画、技術基準等にかかわる規定で構成される。
なお、同法を補完する法律として主に以下が制定されている。
また、2020年5月に成立した「2020年電気通信法改正(競争及び消費者)法(Telecommunications Legislation Amendment (Competition and Consumer) Act 2020)」により、超高速ブロードバンド・サービス(有線・無線含む)をユニバーサル・サービスとして提供することを義務付けられた「法定基盤提供者(Statutory Infrastructure Provider:SIP)」が新たに規定された(Ⅲ-3(2)の項参照)。
電気通信事業者に対する競争規定及び電気通信分野における消費者保護基準を規定している。電気通信分野には、第ⅪB章の反競争行為及び記録保持規則、第ⅪC章のアクセス制度等が適用される。
無線通信分野における競争を促進し、周波数管理制度を確立することを目的としている。2021年6月の改正により、周波数及び無線機器免許の期間延長、免許付与に関する意思決定の柔軟化、ACMAによる情報収集権限の強化等が新たに規定された。
「1997年電気通信法」及び「1997年電気通信(ユニバーサル・サービス基金)法」に基づき、消費者保護及びユニバーサル・サービスに関する詳細を規定している。
オーストラリアの電気通信事業者は、「1997年電気通信法」の規定に基づき、「電気通信事業者」と「サービス提供事業者」に分類される。電気通信事業者は公衆に搬送サービス(電磁的方式により通信を伝送するサービス)を提供するためのネットワーク設備を所有している事業者で、ACMAへ申請手続を行い、免許を取得する必要がある。
サービス提供事業者は、更に「搬送サービス事業者(Carriage Service Provider)」と「コンテンツ・サービス事業者(Contents Service Provider)」に分類され、免許は不要である。搬送サービス事業者は、電気通信事業者のネットワーク設備を使用して搬送サービスを提供する者を指し、ISPは搬送サービス事業者に該当する。一方、搬送サービスを利用して上位レイヤのコンテンツを提供する事業者は、コンテンツ・サービス事業者と規定される。
ACCCは、電気通信市場において市場支配力を有する事業者が反競争的行為に及ぶ可能性がある場合には、「2010年競争・消費者法」に基づき、これを規制する。ACCCは、規制の対象となる特定の電気通信サービスを「告示(Declaration)」することにより、告示サービス(Declared Service)のすべての提供者に対し、当該サービスの相互接続を義務付ける。
また、ACCCは「標準アクセス義務(Standard Access Obligation)」として、告示サービスの提供者が同サービスの提供に必要な設備を保有している場合、当該事業者に対して、他事業者からの要請に応じて設備の相互接続を行うことを義務付けることができる。なお、2022年11月現在、告示サービスは以下の表に示すとおりである。
サービス名 | 発効時点 | 有効期限 |
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超高速ブロードバンド・アクセス・サービス | 2021年7月 | 2026年7月 |
市内ビットストリーム・アクセス | 2012年4月 | なし |
卸売ADSL | 2021年12月 | 2024年6月 |
移動体着信アクセス | 2019年6月 | 2024年6月 |
NBN接続サービス、及び付属サービス、設備アクセス・サービス(NBN Co提供) | 2013年12月 | 2040年6月 |
国内回線容量サービス | 2019年4月 | 2024年3月 |
ローカル・ループ・アンバンドリング | 2018年11月 | 2024年6月 |
ライン・シェアリング | 2018年11月 | 2024年6月 |
卸売回線レンタル | 2018年11月 | 2024年6月 |
市内搬送 | 2018年11月 | 2024年6月 |
固定発信アクセス・サービス | 2018年11月 | 2024年6月 |
固定着信アクセス・サービス | 2018年11月 | 2024年6月 |
ACCCは2017年5月に超高速ブロードバンド接続サービス(Superfast Broadband Access Service:SBAS)を規制する決定を行った。決定では、上り5Mbps/下り25Mbps以上の通信速度で固定ブロードバンド接続を提供する事業者に対して設備開放を義務付け、接続料金を指定している。なお、全国ブロードバンド網(National Broadband Network:NBN)により提供されるサービスは規制の対象とならない。
規制対象とされるのはテルストラ(Telstra)、TPGテレコム(TPG Telecom)、Vocus、LBN、Opticomm及びOPENNetworks等、NBNによるサービスが不在である新興住宅街や中心市街地の共同住宅等において提供されているサービスである。
ACCCは2021年7月に、NBNが全国展開している現状においても、SBASに対する規制を継続することを暫定で決定、2022年10月に最終決定の草稿を発表した。2023年7月には、今後規制されるNBNによるサービスの価格について調査する必要があるとして、新たにSBASに対する規制を行う期間を2024年1月19日まで6か月間延長することを決定した。将来的に規制対象となるNBNによるサービスの価格に関しての見通しが立った段階で、SBSに対する規制の最終決定を下す予定としている。
2009年4月、当時の労働党政権(2007~2013年)は「全国ブロードバンド網(NBN)計画」を発表した。NBN計画は当初、8年間で430億AUDを投資し、国内の90%の建造物にFTTP(Fiber To The Premises)及びFTTB(Fiber To The Buildings)による通信速度100Mbps~1Gbpsのブロードバンド接続サービスを、その他10%に属する郊外地域の建造物には、固定無線や衛星通信による通信速度12Mbpsのサービスを提供するという計画であった。
また、NBNの敷設/運用は、政府の100%出資で設立された卸売専業事業者NBN Coが担い、テルストラやオプタス(Optus)等の通信事業者はNBN Coによる卸売回線を使用し、自社加入者に対して小売ブロードバンド・サービスを提供するという上下分離方式が採用された。
2013年9月の総選挙の結果、新たに政権与党となった保守連合はNBN計画を継承することとなったが、同時点でのNBN接続建造物数は約5万1,000と国内全建造物の3%にとどまり、支出総額も60億AUDに達していた。加えて、2013年度のNBN Coによる試算では、当時の進捗状況では計画完了が2024年にまで遅延する見込みのうえ、支出総額も約726億AUDに達するとされた。
このような状況を踏まえ、当時の保守連合政権はNBN計画の見直しを実施、光ファイバ網の接続方式を当初計画のFTTPからFTTN(Fiber To The Node)やFTTC(Fiber To The Curb)、HFC等の組み合わせに変更し、テルストラ等の通信事業者による既存の通信設備を活用した網構築へと切替えを図った。結果、事業全体の予算を100億AUD以上削減することが可能になったと保守連合は主張している。
2022年5月の総選挙では、現労働党政権は、フルファイバーNBNへのアクセスを150万世帯に拡大し、2025年までに固定回線を利用する国民の90%、すなわち1,000万世帯に通信速度1Gbps級の超高速ブロードバンド接続を提供することを公約に掲げ、同総選挙において政権交代を実現した。2022年10月、連邦政府は2022-23年度の連邦政府予算として4年間で24億AUDの投資を行うことを公表し、通信大臣はこの投資により労働党政権による当該公約を実現すると発表した。
2023年9月時点のNBN加入件数は全国で860万件、加入可能な世帯及び事業所は1,230万件に達し、概ね全国カバレッジを達成している。加えて、ほぼすべての加入者が通信速度25Mbps以上のサービスを利用可能であり、74%が通信速度50Mbps以上のサービスに加入している。
ユニバーサル・サービス制度は「1999年電気通信(消費者保護及びサービス基準)法」が原則を規定しており、主として支配的事業者であるテルストラにユニバーサル・サービス義務(Universal Service Obligation:USO)が課されてきた。
「2020年電気通信法改正(競争及び消費者)法」が2020年5月に成立、上り5Mbps/下り25Mbps以上の伝送速度の超高速ブロードバンド・サービス(有線・無線含む)を全国民に提供することを義務付けられた「法定基盤提供者(SIP)」が新たに規定された。SIPには主としてNBN Coが指定されたが、他の事業者もSIPとなることは可能とされた。
また、政府は2018年12月に新たなユニバーサル・サービス制度である「ユニバーサル・サービス保証(Universal Service Guarantee:USG)」を発表、全国民に対してブロードバンドへのアクセスを、通話サービスと同様に保証するものとし、現状のUSOで保証されている固定電話及び公衆電話サービスはルーラル地域、遠隔地域でのみ保証対象となるとした。また、USGでは、ブロードバンド・サービスの提供にNBNを、ルーラル地域、遠隔地域での通話サービスにテルストラ所有の銅線網を使用するとされた。なお、公衆電話については、現状ではサービスの提供が保証されるものの、今後、移動体通信の普及状況を鑑み、その必要性を検討していくこととされた。
政府は2015年7月に、ネットいじめ対策法であった「2015年子どものオンライン安全促進法(Enhancing Online Safety for Children Act 2015)」を施行した。同法は、当初、ネットいじめの要因となるテキストや画像等の有害情報を迅速に削除する仕組みを構築することを目的に、ネット上のソーシャルメディアに対して新たな規制を導入するものであった。加えて、通信、教育、司法等、省庁横断的に所在するネットいじめ関連の政策権限を集約するため、「子どものネット安全コミッショナー(Children’s e-safety Commissioner)」が新たに設置され、ソーシャルメディアや違法投稿者に対する規制権限が付与された。2017年、同コミッショナーは「eSafety委員会(eSafety Commissioner)」に改組され、すべての国民のオンライン安全を確保するための政府機関として権限が拡大された。
同法の下では、ソーシャルメディア事業者は「第1種(tier 1)」と「第2種(tier 2)」事業者に二分され、第1種事業者はeSafety委員会に対して事前申請し、同委員会が規定する「基本オンライン安全見込み(basic online safety expectations)」に適合すると認められた事業者が分類される。一方、第2種事業者はeSafety委員会の勧告により通信大臣が指定する事業者で、事前の申請は必要としない。
2022年6月時点で、第1種事業者であるソーシャルメディアはTikTok、Twitter、Yahoo!、WeChat等であり、第2種事業者にはFacebook、Instagram、YouTubeが指定されている。なお、有害情報がアップロードされた場合、第1種事業者はeSafety委員会の要請により当該情報を自ら削除することになるが、第2種事業者は同コミッショナーの告示により、法的強制力の下、当該情報の削除が義務付けられている。
「2015年子どものオンライン安全促進法」の範囲拡大及び強化を図るために、2021年6月に「2021年オンライン安全法(Online Safety Act 2021)」が新規立法(公布)され、2022年1月に施行された。同法は、通信大臣に対して「基本オンライン安全見込み」を決定等する権限を付与するとともに、「青少年のネットいじめ(Cyberbullying)」、「成人のネット虐待(Cyber abuse)」及び「同意無しの性的画像(Intimate images)」に係る有害なオンライン・コンテンツへの対処をオンライン・サービス提供者に対して要請する権限が規定された。
電気通信機器の基準認証制度は、「1997年電気通信法」、電磁環境両立性(Electromagnetic Compatibility:EMC)を定めている「1992年無線通信法」及びそれらに基づく告示が規定し、すべての端末機器及び無線設備(放送設備等除く)に対して自己適合宣言制度が適用されている。ただし、技術基準規定がない場合、端末機器に対しては電気通信事業者や機器製造業者の同意又はACMAの接続許可が、無線設備に対しては無線局の許可が必要となる。
固定電話の加入数、加入率は減少傾向で推移している。固定電話加入数の減少の原因として、利用者が移動電話やVoIP等の他の通信手段に移行していることが原因として挙げられる。主な固定電話事業者はテルストラで2021年6月末時点の市場シェアは76%と大きい。主な競合事業者はTPGテレコムで市場シェアは22%である。
テルストラ、オプタス及びTPGテレコムの3社が設備を有する移動体通信事業を行っている。また、amaysim等のMVNOが約30社存在している。2023年6月末の市場シェアはテルストラが52.4%、オプタスが31.5%、TPGテレコムが16.1%である。
5Gについては、テルストラが2019年5月より商用サービスを開始、2023年11月時点で全国での人口カバレッジを85%にまで拡大している。一方、オプタスは2019年11月より商用サービスを開始、大都市圏を中心に全国で約1,300基の基地局を運用している。また、TPGテレコムは2023年11月に5G商用サービスを開始、2023年11月時点で、大都市圏及び郊外の3,000以上の地域にカバレッジを拡大している。
なお、テルストラとTPGテレコムは2022年5月、マルチオペレータ・コアネットワーク(MOCN)に関して通信サービス、周波数及び無線局を共用する10年契約を交わす計画を示した。計画は、TPGテレコムが現状保有している地方部の周波数の大部分(国内全人口の約17%をカバー)と、同地域における169基の無線局の利用をテルストラに許可するものである。併せて、TPGテレコムは地方部における残りの556基の無線局を閉鎖するが、その代わりにテルストラが所有している移動体通信インフラを共用する形で、移動体通信サービスの提供を継続することが可能になるという。
ACCCは同計画について、競争上の観点から2022年から調査を開始しており、12月に計画を承認しない意向を示した。また2023年6月にはオーストラリア競争審査所(ACT)は同計画を却下する判断を示している。
固定ブロードバンドの市場シェアは2023年6月時点で、テルストラが37.6%と最大であり、TPGテレコムが20.0%、オプタスが13.6%と続いている。
接続方式別の加入者数は、2023年6月時点で、光ファイバ接続であるNBNに対する接続が約850万、DSLが約92万と光ファイバの優位が確実なものとなっている。
Telstra
Tel. | +61 3 8647 4838 |
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URL | https://www.telstra.com.au/ |
所在地 | Level 41, 242 Exhibition Street, Melbourne, Victoria 3000, AUSTRALIA |
幹部 | Vicki Brady(最高経営責任者/CEO) |
市内通信、長距離通信、国際通信、移動体通信、データ通信サービスを提供する国内最大手の総合通信事業者である。「2005年テルストラ(完全民営化)法(Telstra (Transition to Full Private Ownership) Act 2005)」により、政府保有株式の完全放出が可能となり、純民営企業へと移行した。
2018年6月には「テルストラ2022」と称する事業戦略に基づき、事業効率化を目的に自社の固定インフラ部門を機能分離した事業部門「Telstra InfraCo」を設立することを発表している。
同社は2022年7月にオセアニア島嶼各国で事業を展開するディジセル・パシフィック(Digicel Pacific)を買収している。この買収に際しては、政府がテルストラに対してオーストラリア輸出信用機関(Export Finance Australia:EFA)を通じて、13億3,000万USDの公的融資を実施し、支援を行った。この政府支援はオセアニア島嶼地域に対する影響力拡大を模索する中国への対応策であると考えられている。
Optus
Tel. | +61 2 342 7800 |
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URL | https://www.optus.com.au/ |
所在地 | Optus Centre Sydney, 1 Lyonpark Road, Macquarie Park, Sydney NSW 2113, AUSTRALIA |
幹部 | Michael Venter(最高経営責任者/CEO)※2023年11月に前CEOが辞任 し、同氏が暫定的にCEO就任(2023年12月初時点) |
市内通信、長距離通信、国際通信、移動体通信、データ通信サービス(ケーブルテレビ含む)を提供し、固定電話及び移動体通信の双方で国内第2位の事業シェアを有する総合通信事業者である。また、通信衛星OPTUSシリーズを運用し、国内の衛星通信及び放送の独占的プラットフォーム事業者である。
2001年9月にシンガポールのシンガポール・テレコム(シングテル、SingTel)への売却手続を完了し、シングテルの完全子会社となった。
なお、2022年9月に同社のネットワークが大規模なサイバー攻撃を受け、国家サイバーセキュリティセンター(ACSC)、連邦警察、国家情報コミッショナー(OAIC)等の政府関係機関との協力により、調査等の対応を行った。サイバー攻撃により、同社が保有する加入者名、誕生日、電話番号、メールアドレスのほか、自動車免許・パスポート番号等の個人情報が大量に流出したが、支払情報やアカウント・パスワードの流失はないとしている。
2023年6月末に終了した年度総売上高は232億5,000万AUSであり、前年比5.4%の伸びを示した。製品別の収益の内訳では、モバイルサービスが全体の最大部分を占めている。決算発表の中では、物理インフラ部門である InfraCo の株式を売却しないことを決定したと発表している。
TPG Telecom
Tel. | +61 2 9850 0800 |
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URL | https://www.tpgtelecom.com.au/ |
所在地 | 65 Waterloo Road, North Ryde, NSW 2113, AUSTRALIA |
幹部 | Iñaki Berroeta(最高経営責任者/CEO) |
固定ブロードバンド市場第2位のシェアを有するTPGテレコムと移動体通信市場第3位のシェアを有するボーダフォン・ハチソン・オーストラリア(Vodafone Hutchison Australia:VHA)が2020年7月に合併し、誕生した総合通信事業者である。
事業者名は「TPGテレコム」となるが、新会社に対する持分比率はVHAが50.1%、TPGテレコムが49.9%となる。なお、新生TPGテレコムは、VHAや、旧TPGテレコム、iiNet、AAPT、Internode等の過去の合併により統合した事業者のブランドを引き続き使用することになる。
Tel. | +61 2 9926 1900 |
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URL | https://www.nbnco.com.au/ |
所在地 | Level 13, 100 Mount Street, North Sydney NSW 2060, AUSTRALIA(経営部門) |
幹部 | Stephen Rue(最高経営責任者/Chief Executive Officer) |
NBNを建設・運営するために設立された、政府出資によるブロードバンド運営事業者で、通信事業者に向けた卸売サービスのみを提供する。
NBN計画は2023年までに国内の大都市圏及び地域における固定回線接続施設の最大75%に最大1Gbpsでの超高速ブロードバンド接続を提供するという計画であり、NBN Coは全国で光ファイバによるバックホール回線とアクセス回線を構築することになる。
また、NBN Coはルーラル地域や遠隔地域では、衛星ブロードバンドやLTE技術を応用した固定無線ブロードバンドも提供しており、地方に住む約40万人の国民に高速ブロードバンド・アクセスを提供することで、デジタル・ディバイドの解消に貢献するとしている。2022年10月にはルーラル地域にて、ミリ波を使った5G FWAネットワークを展開することを発表している。
(通信/Ⅰ-1の項参照)
テレビ・ラジオ分野に関する政策策定及び関連機関への助言提供を所掌する。
(通信/Ⅰ-2の項参照)
テレビ・ラジオ分野に関する視聴者環境の整備、周波数管理、国際的利益の検討を所掌する。
1983年7月に施行され、公共放送であるオーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation:ABC)の組織、業務、運営等について規定している。
テレビ放送の多チャンネル化への傾向を踏まえ、放送制度を改革することを目的としたもので、「1942年オーストラリア・ラジオ放送法(Australian Broadcasting Act 1942)」に代わって1992年10月に施行された。同法はデジタルテレビ用免許の交付等の規定を有するほか、2017年10月の改正によりクロス・オーナーシップ規制の撤廃や、商業テレビ放送事業者に対する地域コンテンツの提供義務強化等を規定している。
「1992年放送サービス法」により、放送サービス免許の種類は以下の六つに区分されている。
ABCが提供する放送サービス、議会議事放送サービスである。ただし、ABCが行う有料放送サービス、有料・無料専門放送サービスは含まれない。
営利事業者が、広告収入に基づき一般に利用できる機器により受信できる番組を、視聴者に対し無料で提供するサービスである。商業放送の7ネットワーク(Seven Network)、9ネットワーク(Nine Network)、ネットワーク10(Network Ten)等が実施している。
非営利団体が、コミュニティの目的のために、一般に利用できる機器により受信できる番組を、一般公衆に対し無料で提供するサービスである。
視聴者が、契約料金の支払いによってのみ利用できる有料サービス。衛星による有料放送等である。
サービス対象、サービス地域、サービス期間、番組内容のいずれかを限定し、契約料金の支払いによってのみ利用できる有料サービスで、ケーブルテレビや衛星放送等が行っている飲食店やクラブ向けの放送等がある。
教育放送等のサービス対象、サービス地域、サービス期間、番組内容のいずれかが限定されたサービスである。なお、国際放送サービスは本区分に含まれている。
オーストラリアでは2001年1月にDVB-T方式で地上デジタルテレビ放送が開始、2004年1月には全国域での受信が可能となった。アナログ停波は2010年6月より開始され、2013年12月10日に地上デジタル放送への移行が完了した。
また、難視聴地域では2010年より「視聴者アクセス衛星テレビ・サービス(Viewer Access Satellite Television:VAST)」が提供されている。VASTは政府が37億5,400万AUDを出資し、構築した衛星配信プラットフォームであり、公共放送及び民間放送について全国一律に番組を提供し、地域報道については、ABC及び少数民族向け公共放送SBSが各州において個別のチャンネルにより提供することが可能である。
「1992年放送サービス法」は、商業テレビ放送事業者に対して、午前6時から深夜0時までの時間帯に、国内制作番組を55%以上放送することを義務付けている。ACMAは2023年7月、2022年度の国内商業放送における国内制作番組の放送比率に関する調査結果を公表、首都圏でテレビ放送を実施している全13事業者すべてが、この要件を満たしており、全国事業者である7ネットワークは76%、9ネットワークは79%、ネットワーク10は71%の達成状況であったことを明らかにした。
「2017年放送法令改正(放送改革)法案(Broadcasting Legislation Amendment (Broadcasting Reform)Act 2017)」が2017年10月に成立し、「1992年放送サービス法」に依拠した放送規制が大幅に改正された。法改正により、メディア所有に関する「population-reach rule」及び「two-out-of-three rule」と称される規定が撤廃された。改正法の附則1により撤廃された「population-reach rule」とは、1人の個人又は一つの事業者がオーストラリアの人口の75%以上をカバーする商業テレビ放送事業者免許を所持することを規制するもので、同様に、附則2により撤廃された「two-out-of-three rule」は、1人の個人又は一つの事業者が新聞、ラジオ、テレビの3分野をまたいで事業を行うことを規制するものであった。
また、改正法附則4は、政府が市民に対して無料で放送されるべきコンテンツとして定めるリストを作成し、有料放送事業者による独占を防止する制度である「anti-siphoning scheme」について、当該コンテンツの自動的なリスト除外期間を2,016時間から4,368時間に延長し、また、デジタル多チャンネル放送を対象とした当該コンテンツの放映制限規定を撤廃することで制度の強化を図っている。
同時に、改正法では放送事業者の財務環境の悪化に対応し、放送免許料の廃止、周波数利用料の縮減(附則5)、テレビ及びラジオ放送事業者に対する年間9,000万AUDの財務支援措置(附則6)が規定されている。
公共放送ABCが「Radio National」(総合編成)、「News Radio」(ニュース)、「ABC Classic FM」(音楽)、「Triple J」(音楽・トーク)やデジタル専門チャンネルを含めて12系統(ストリーミングを除く)の全国放送を実施している。SBSもメルボルン、シドニー等の主要都市を対象に7系統で放送を行っている。
他方、商業放送事業者は多数存在し、広域に放送を実施している代表的事業者にSouthern Cross AustereoやAustralian Radio Networkがある。
ABC、SBSの公共放送事業者2社、7ネットワーク、9ネットワーク、ネットワーク10の商業放送事業者3社が全国向けに各1系統の放送を行っている。
フォクステル(Foxtel)が、DTHとケーブルテレビによる有料放送を行っている。ケーブルテレビはオプタス及びテルストラ所有の同軸ケーブル網によって視聴者に提供されている。フォクステルは競合事業者であったオースター(Austar)を2012年5月に買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。
なお、2023年6月時点でのフォクステルの有料放送サービス(ストリーミングを除く)加入者数は約172万3,000である。
Australian Broadcasting Corporation
Tel. | +61 2 8333 1500 |
---|---|
URL | https://www.abc.net.au/ |
所在地 | ABC Ultimo Centre, 700 Harris Street, Ultimo NSW 2007, AUSTRALIA |
幹部 | David Anderson(代表取締役/Managing Director) Ita Buttrose(会長/Chairman) |
1932年に設立の公共放送事業者である。「1983年オーストラリア放送協会法」に基づき、組織運営及び放送事業を実施する。受信料制度は1974年に廃止されており、主要財源は政府交付金である。政府交付金の金額は議会で決定され、財務大臣がこれについてABCに対し指示する権限を有する。
Special Broadcasting Service Corporation
Tel. | +61 1800 500 727 |
---|---|
URL | https://www.sbs.com.au/ |
所在地 | 14 Herbert Street, Artarmon NSW 2064, AUSTRALIA |
幹部 | George Savvides(会長/Chairman) |
少数民族向けの多言語放送を実施する公共事業者である。1980年に設立され、ラジオ及びテレビの全国放送を実施している。財源の85%が政府交付金であるが「1991年特別放送サービス法(Special Broadcasting Service Act 1991)」によって広告収入が認められている。放送時間の半分について、英語以外の言語での放送が義務付けられており、64種以上の言語で放送が実施されている。
Foxtel
Tel. | +61 2 9813 6000 |
---|---|
URL | https://www.foxtel.com.au/ |
所在地 | 5 Thomas Holt Drive, North Ryde NSW 2113, AUSTRALIA |
幹部 | Patrick Delany(最高経営責任者/CEO) |
1995年にテルストラとニューズ・コープ(News Corp)が折半投資で設立した有料放送事業者である。2018年4月にニューズ・コープの100%子会社FOXスポーツ(Fox Sports)を経営統合した結果、両社のフォクステルの持株比率はテルストラが35%、ニューズ・コープが65%となった。2012年5月に唯一の競合事業者であったオースターを買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。
事業者名 | 概要 | URL |
---|---|---|
7ネットワーク | 商業放送では国内最大の放送ネットワークを有し、視聴率でも首位。2011年4月より、メディア総合事業者であるSeven West Media が運営。 | https://www.sevenwestmedia.com.au/ |
9ネットワーク | メディア総合事業者Nine Entertainment傘下の地上テレビ放送事業者。2007年までは視聴率で首位にあったが、現在は7ネットワークに次ぎ第2位。 | https://www.nineforbrands.com.au/ |
ネットワーク10 | 事業規模、視聴率共に国内第3位の商業放送事業者。経営破たんに瀕していたが、2019年12月よりParamount Networks UK & Australiaの完全子会社となった。 | https://10play.com.au/ |
(通信/Ⅰ-1の項参照)
(通信/Ⅰ-2の項参照)
電波監理部門においては、周波数の計画及び管理、無線局免許要件の順守、電波干渉の調査を所掌する。周波数の管理所掌は、ACMA通信基盤局(Communication Infrastructure Division)の傘下の周波数計画エンジニアリング(Spectrum Planning and Engineering)部が主に所掌している。なお、地域事務所は、免許と周波数配分に関する周波数へのアクセス業務、及び電波干渉監視と規制上の各種問題を持ち込む際の窓口となっている。
Standards Australia
Tel. | +61 2 9237 6000 |
---|---|
URL | https://www.standards.org.au/ |
所在地 | Level 10, The Exchange Centre, 20 Bridge Street, Sydney NSW 2001, AUSTRALIA |
幹部 | Tracey Gramlick(会長/Chair) |
1922年に設立されたStandards Association of Australiaが1999年に現在の組織名に変更された。連邦政府の承認を受けて同国の標準化機関という位置付けを得ており、同協会が策定する規格が国家規格となる。国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)及び太平洋地域標準会議(Pacific Area Standards Congress:PASC)において同国を代表する。電気通信規格は、ACMA、オーストラリア通信産業フォーラム(Australian Construction Industry Forum:ACIF)、DITRDCAとの連携の下で制定される。
「1992年無線通信法」の施行により、新たな電波監理機関の導入、技術中立的な周波数免許及びクラス免許の導入、オークション制の導入、新たな技術標準への順応のための柔軟な枠組みを含む市場主導の電波監理制度が導入された。また、1997年の法改正により、周波数再配分の手続の導入、オークションに関する競争原則の設定、健康と安全に関する電磁波基準にかかわる規定等が定められた。周波数の2次取引は、1998年6月1日に施行された「1998年無線通信(周波数免許取引規則)決定(Radiocommunications(Trading Rules for Spectrum Licences)Determination 1998)」により制度化された。
政府は2020年8月、「1992年無線通信法」の改正法案である「無線通信法改正(改革及び近代化)法案」を議会に提出、同法案は2021年7月に施行された。この改正により、周波数に関する計画、免許、設備に関する規則を簡略化し、特に周波数帯の割当てに関する規制・手続をより円滑にし、政府、ACMA、及び周波数帯使用者の役割を明確にし、安定性の維持に留意しつつ放送用周波数帯を一般の周波数帯と同じ枠組みに移行させ、違反に対する罰則を整備することが可能となった。
ACMAは2017年10月、首都圏や地方での5G利用に資することを目的とした3.6GHz帯(3575-3700MHz)のオークションは2018年12月に完了。落札総額は8億5,285万AUDで、テルストラが143ロットを3億8,601万AUDで、オプタスが47ロットを1億8,507万AUDで、TPGテレコムとVHAのジョイントベンチャーが131ロットを2億6,328万AUDで、Dense Air Australiaが29ロットを1,849万2,000AUDで落札した。
ACMAは2021年4月、5G使途のミリ波帯域となる26GHz帯のオークションを完了。落札総額は6億4,764万AUDで、テルストラが150ロットを2億7,658万AUDで、オプタスが116ロットを2億2,620万AUDで、TPGテレコム(当時は両社合弁のMobile JV)が86ロットを1億819万AUDで、Dense Air Australiaが2ロットを2,868万9,900AUDで、Pentanetが4ロットを798万6,200 AUDで落札した。
ACMAは、同帯域におけるミリ波によって、輸送、医療、教育、製造、鉱業、更には無線ブロードバンド、衛星、IoT等の広範囲にわたる分野において、プライベートかつローカライズされた5G活用が可能となるとしている。
また、ACMAは同帯域の割当てについて、免許事業者のニーズに対応可能な柔軟性の高い、エリア限定設備免許(Area-Wide apparatus Licences:AWL)、高密度ネットワークが必要な人口の多い地域の免許、そしてユビキタスな低出力デバイス免許等、複数の種類を組み合わせた事業免許を導入している。
ACMAは2021年12月、主として5G使途である850/900MHz帯のオークションを完了。落札総額は20億9,162万AUDで、テルストラが4ロットを6億1,566万AUDで、オプタスが12ロットを14億7,596万AUDで落札した。
オークションの結果、オプタスは獲得可能な900MHz帯の全事業免許を落札。同事業免許は2024年7月1日から発効し、20年間有効となる。この状況は、迅速な5Gサービス展開を望む他の事業者にとって、競争上の不利を招いており、ACMAはオプタスに対して、特定の地域においてのみ早期のサービス開始を認めるとし、他の事業者とサービスエリアが重複した場合には、先に登録した事業者を優先することを決定した。
一方、テルストラは、2016年以降使用していない、かつて2G使途であった同社が保有する900MHz帯を再利用することを計画。既に登録していた109か所の無線局に、206か所を追加し、合計315か所の登録を申請した。これに対してACCCが、この申請が競合事業者であるオプタスの5G全国展開の妨げになるとして懸念を示した結果、テルストラは153か所の登録申請を取り消している。
ACMAは3.4GHz(3400~3575 MHz)と3.7 GHzの一部の再割り当て宣言である「無線通信 (スペクトル再割り当て―3.4 GHz及び3.7 GHz 帯域) 宣言 2022」を作成した上で、2023 年10月より3.4及び3.7 GHz 帯域のスペクトルライセンスの割り当て手続きを進めると公表している。
国内の周波数分配は、「オーストラリア周波数計画(Australian Radiofrequency Spectrum Plan)」に示されている。現行の計画は2021年版である。同計画は、周波数の管理の基礎をなし、それぞれの周波数帯で運用可能なサービス及びそれに付随する諸条件を無線通信の利用者に情報提供するものである。同計画は、4年を基準に開催されるITUの世界無線通信会議(World Radiocommunication Conference:WRC)のファイナル・アクト(Final Acts)に対応して、定期的に見直される。