Ministry of Communications
Tel. | +55 61 2027 6706 |
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URL | https://www.gov.br/mcom/pt-br/ |
所在地 | Esplanada dos Ministerios, Bloco R CEP 70044-902 Brasilia DF, BRAZIL |
幹部 | Juscelino Filho(大臣/Minister) |
ブラジル政府は、2020年7月10日、科学技術革新通信省(Ministry of Science, Technology, Innovation and Communications:MCTIC)から分離する形で通信省(Ministry of Communications:MCOM)を設置・復活させた。MCOMは1967年に創設されたが、2016年5月の当時のテメル政権の省庁再編に伴い、MCTICに統合されていた。MCOMは、通信、放送、郵便に関する行政機関として、国家政策の策定を行う。電気通信事業(電波政策を含む)に関する基本政策を策定し、電気通信庁(National Telecommunication Agency:Anatel)の活動を介して電気通信市場の発展を図る。2023年ルーラ政権による省庁再編後も引き続き通信省が通信行政を所掌する。
National Telecommunication Agency
Tel. | +55 61 2312 2000 |
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URL | https://www.gov.br/anatel/pt-br/ |
所在地 | SAUS, Quadra 6, Bloco C,E,F e H CEP 70070-940 Brasilia DF, BRAZIL |
幹部 | Carlos Manuel Baigorri(長官/President) |
「1997年一般電気通信法」に基づき、1997年11月に独立規制機関として設立された。MCOMが策定する電気通信事業の基本政策に基づき、電気通信に関する以下の管理・監視業務を所掌し、活動状況をMCOM及び国会に報告する義務を有する。
同法により、それまで当時の通信省に与えられていた事業免許・許可等の権限の多くがAnatelに移管された。旧国営通信事業者テレブラス(Telebras)の民営化や、競争的市場を創出するための諸条件を定めており、電気通信に関する基本法令となっている。主な内容は以下のとおりである。
2019年10月、ボルソナロ大統領(当時)が電気通信規則の近代化を目的とした「1997年一般電気通信法」の改正法(法律第13879号)に署名した。概要は以下のとおりである。
テレブラスの民営化に先駆け、1996年、移動体通信事業、衛星事業及び付加価値事業の自由化を定めた法律が制定された。テレブラスから移動体通信事業を分離すること、移動体通信事業を10の営業地域に分割すること、移動体通信事業への外資比率を49%に制限(1999年に外資比率制限は廃止)することが規定された。
2014年4月、ネット中立性や表現の自由、個人情報の保護等を規定した「2014年インターネット憲法」が成立した。同法では、インターネットの中立性に関して、電気通信事業者によるユーザへの料金や接続速度による差別化を禁止するとともに、特定のコンテンツ事業者への有償優遇措置を禁じた。
2020年9月、ブラジルの「個人情報保護法(Lei Geral de Proteção de Dados:LGPD)」が施行された。LGPDは、2018年に施行された「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)」をモデルとしており、共通点も多い。自由及びプライバシーに関する基本的権利(個人情報へのアクセス権、訂正権、アップデート権、削除権、ポータビリティ権、匿名化権、同意の撤回権等)の保護を目的として、個人情報の適切な取扱いを定めたものである(Ⅲ-5の項参照)。
「1997年一般電気通信法」に基づき、電気通信サービスを実施するための免許は、サービスの種類によって交付及び規制される。固定電話サービス等の公的制度の下で提供されるサービスに対しては「コンセッション」「許可(permission)」がAnatelによって付与され、継続性や普遍性確保のための要件が課される。一方、移動体通信、ブロードバンド・サービス、有料放送、付加価値サービス等の民間サービスには「認可(authorization)」が付与され、品質に関する要件が課される。その後、2019年の同法の改正では、市場競争・設備投資を促進するため、「コンセッション」から「認可」への免許種別の変更を条件付きで認める条項が追加された。
1999年、電気通信分野における外資規制は撤廃された。現在、スペイン資本のテレフォニカ(Telefónica)、メキシコ資本のアメリカ・モビル(America Movil)及びテルメックス(Telmex)、イタリア資本のテレコム・イタリア(Telecom Italia)等がブラジルの電気通信市場に進出している。なお、基本的電気通信サービス免許は、国内法に基づき設立されたブラジル法人(議決権付き株式の過半数を所有)にのみ付与される(政令第2617号)。
1998年、「一般免許計画(1998 General Concession Plan:PGO、法律第2532号)」が発布され、固定通信市場の自由化に向けての具体的な内容が規定された。これを受けてAnatelは、それまで通信市場を独占していたテレブラスを市内電話3社、移動体通信8社、国際・国内長距離通信1社に分割再編した。
政府は、固定通信市場の民営化に際して、全国を三つの営業地域に分割し、各営業地域で旧テレブラス系の資産を引き継ぐ1社(concessionaire)に事業免許を付与した。1999年には、固定通信市場への新規参入を促す目的で、競争入札が実施された。これにより、各営業地域において、旧テレブラス系事業者と競争事業者(ミラーカンパニー)による2社競争体制が確立されることとなった。
2001年12月、政府は旧テレブラス系事業者に新規参入事業者との相互接続を義務付けた。2002年1月には、ブラジルの固定電話市場(市内電話及び国内・国際長距離電話)が完全自由化された。
一方、移動体通信市場は、全国を10の営業地域に分割し、各地域のテレブラスの資産を引き継ぐAバンド事業者8社と、新規参入事業者であるBバンド事業者8社に免許が付与された。これにより、地域ごとに2社以上が競合する競争体制が確立された。更に2001年からGSM及び3G用周波数オークションを実施した結果、30を超える事業者が移動体通信市場に参入し、各地域で3~4社が競合する体制が整った。
2023年10月、Anatelは国内通信市場の競争促進のための枠組みである2012年「一般競争計画(Plano Geral de Metas de Competição:PGMC)」の改訂案を公表した。PGMCはブラジル通信市場競争促進政策の土台であり、相互接続規則、卸売サービスへのアクセス、インフラの共有、市場支配力の概念等が規定されている。これに対して改定案では、MVNOや産業用ネットワーク開発を焦点とする、現状に沿った内容に更新されている。なお、通信事業者による反競争行為を防止するため、競争当局である、経済擁護行政委員会(Conselho Administrativo de Defesa Economica:CADE)にも裁定権限が与えられており、Anatelの業務を補完している。
Anatelは2010年にMVNO事業を解禁したが、MVNO市場の活性化が不十分であると判断し、2016年、MVNO規則である「仮想通信網による個人向け移動体通信サービスの提供に関する規則(Regulations for the Exploitation of the Personal Mobile Service via the Virtual Network)」の改正を承認した。MVNOが複数のMNOと同時に卸売契約を結ぶことを許可する、テレフォニカ・ブラジル(Telefónica Brazil)、クラロ(Claro)、TIMブラジル(TIM Brasil)3社に対して、MVNOへのIoT・M2M機器賃貸に係る月額料金を5年間据え置くよう命じる等の措置が講じられた。なお、2024年8月の時点で国内では100以上のMVNOが存在する。
基本的電気通信サービスの提供を義務付ける「ユニバーサル・サービス化目標プログラム(General Program for Universalization Goals:PGMU)」が1998年に制定された。PGMUの達成目標は以降、複数回にわたり段階的に改定が行われ、2018年末には、2025年までの「PGMU V」の達成目標が採択された。具体的には、都市部(人口300人以上の自治体)における電話サービス提供義務、学校や図書館、医療機関、警察署等の公共施設への電話サービスのアクセス提供義務、障がい者・低所得者に対する電話サービスの提供義務、農村部における公衆電話の設置等が義務付けられている。その後、通信事業者は、公衆電話の代わりに、4Gや固定無線アクセス(FWA)等の基地局設置で要件を満たすことが可能となり、2019~2023年末までに約1,500の自治体を対象として段階的に4G/FWA基地局を設置することとなった。
2000年に制定された法律第9.998号(FUST Law)によって電気通信サービス普及基金(Fund for Universalization of Telecommunications Services:FUST)が設立された。これにより、通信事業者は電気通信事業収入の1%を同基金へ拠出することが義務付けられた。当初は固定電話サービスへの資金提供に限定されていたが、その後、ブロードバンド・インフラ開発にも対象を拡大し、より効率的な配分方法が導入される等、改定された。
ブラジルでは、上記のユニバーサル・サービス基金のほか、通信業界固有の基金が二つ、合計三つの基金が存在する。
Anatelは2023年9月、電気通信事業者に対するこれらの税制による負担を軽減するための調査を開始している。同国の通信関連税が相対的に高額であるだけでなく、その計算方法と複雑な管理が、Anatelにとっても費用増になるとしている。
政府は2021年、北部アマゾン地域の通信インフラ整備を目的とした、「政令第10800号」を公布した。この「持続可能なアマゾン統合プログラム(Programa Amazonia Integrada Sustentavel:PAIS)」により、ブラジル北部の59都市が、環境負荷を考慮し、川底に敷設された全長約1万2,000kmの光ファイバ回線で接続され、約1,000万人の住民が恩恵を受けることとなった。その第1弾となる「Norte Conectado」プログラムによる光ファイバ網の敷設が2022年1月末に完了し、パラー州とアマパ州の住民100万人にブロードバンド接続を提供した。
2023年10月、MCOMは、モバイルブロードバンドの品質及びカバレッジ改善を目的とした「ConectaBR プログラム」を開始した。ルーラル地域や低所得者層地域等の地域格差是正への取組みを強化した内容で、2G及び3Gを停止し、4G及び5Gへ置き換えることも含まれている。4Gでは下り通信速度10Mbps、5Gでは下り100Mbpsを最小要件としており、通信カバレッジ拡大には、衛星及び固定無線アクセス(FWA)も導入するとしている。
2021年「政令第10610号」により、光ファイバ・バックホール整備に関する具体的達成目標が公表された。同政令では、2024年末までにすべての地方自治体に10Gbps以上の速度での伝送が可能な光ファイバ・バックホールを整備することが示された。Oi、テレフォニカ・ブラジル、クラロ、アルガー・テレコム(Algar Telecom)の4社は、2024年末までに段階的にカバレッジ100%を自費負担により達成することが義務付けられた。また、国家ブロードバンド政策において、政府のデジタル関連イニシアチブを統一した枠組内で調整することを目的とした「国家デジタル・トランスフォーメーション戦略(Brazilian Digital Transformation Strategy:E-Digital)2022~2026」が発表された。南米・カリブ海諸国の発展を支援する米州開発銀行(IDB)は2021年4月、E-Digitalアジェンダ推進のため、「ブラジル・プラス・デジタル」投資プログラムの下、デジタル・インフラ、デジタル経済、デジタル政府及びその関連分野に対して最大10億USD規模となる融資を承認した。2024年7月には、その第6番目の取組みとして、IDBは政府に対して固定ブロードバンド・カバレッジ拡大のために1億USDを融資し、MCOM主導の下、人口3万人未満の自治体の固定ブロードバンド・インフラに投資する小規模ISPに対して、光ファイバ回線の敷設、省エネ通信機器の設置、資金調達等の支援を行い、250万人が恩恵を受ける見込みである。
ボルソナロ大統領(当時)は2019年6月、「国家IoT計画(National IoT Plan)」を制定するための「政令第9864号」に署名した。同計画は、MCTIC(当時)や経済省、ブラジル国立経済社会開発銀行(National Bank for Economic and Social Development:BNDES)、民間企業、学界等が共同策定したもので、E-Digitalの柱の一つとして位置付けられた。また、諮問機関として「M2M及びIoTの発展のための管理・監視評議会」が創設され、IoTソリューションの開発と利活用を促進するために、官民パートナーシップの促進や政策の提案、公共団体との連携等が実施された。IoT政策に関するガイドラインでは、IoTを新たな通信サービスとは見なさず、通信サービスにバンドルされた付加価値サービスに分類した。これにより、同サービス及び関連デバイスは一部の要件だけでなく、特定の税金からも免除されることとなった。
2020年末、Anatelは「電気通信セクターに適用されるサイバセキュリティ規制(R-Cyber)」を決議第740号で承認。同規制は、通信インフラの保護、インシデント対応、データの安全性確保等、通信分野に特化したセキュリティ促進のためのガイドライン及び手続を規定している。2024年、R-Cyber は改正され、海底ケーブル事業者や特定の移動体通信事業者等を規制対象として拡大したほか、すべての通信事業者に対してAnatelへのセキュリティ・インシデント報告を義務付ける等、内容が強化された。
2023年12月、「政令第11856号」公布によって、国家サイバーセキュリティ政策(PNCiber)が改定され、国家サイバーセキュリティ委員会(CNCiber)が設立された。同政令は、国家サイバーセキュリティ政策の原則、目的、手段、及びCNCiberの役割と構成を規定している。CNCiber は、政府によって任命された多数の機関や団体の代表者で構成されており、Anatelも参加している。毎年10月には市民の意識向上のために「CyberSafe October」キャンペーンが実施されている。
科学技術イノベーション省(Ministério da Ciência, Tecnologia e Inovações:MCTI)は2021年4月、条例第4617号によって、「ブラジルAI戦略(Estratégia Brasileira de Inteligência Artificial:EBIA)」を策定。同戦略はOECD等の国際基準に沿った倫理的かつ責任あるAI導入を強調し、AI人材の確保、研究センターの設立、民間セクターにおけるAI導入の奨励、スタートアップ支援等を焦点としている。
2024年7月には政府が、「ブラジルAI計画(Plano Brasileira de Inteligência Artificial:PBIA)2024~2028」を発表。再生エネルギーを利用したスーパーコンピュータを装備したインフラの導入、国内データを活用したポルトガル語の高度な言語モデルの開発、公共サービスの効率化及びビジネス・イノベーションへのAI活用等が挙げられた。
2020年9月、「個人情報保護法(LGPD)」が施行された。LGPDは、企業や公的機関が国民の個人情報を収集するに当たり明示的に本人の同意を得ることや、収集した個人情報に関して当人がアクセスする権利、修正や削除を要請する権利を規定している。また、より高い保護水準を定めた「機微(センシティブ)データ」というカテゴリーを設け、人種、民族、思想信条、宗教観、健康状態等に関する情報については、本人の明示的な同意がない限り、商用に用いることを禁じている。個人情報の国外転送に関しては、転送先の国がブラジルと同等レベルの個人情報保護法制を有しているか、事業者が同等レベルの保護を保障する場合にのみ認められる。罰則に関しては、法令を順守しない企業に対して年間売上額の2%、又は5,000万BRLのいずれか低い方の課徴金が課される。
Anatelは2014年3月、通信分野における透明性向上と消費者権利保護を目的とした「電気通信サービス消費者権利一般規則(RGC)」(決議第632号)を承認。2023年10月にはその内容を改正し、料金滞納によるサービス停止の場合、プロバイダが30日間の猶予期間を設けることや、Anatelが開発した、通信サービスの比較電子ツールの導入及び契約内容の簡素化により、消費者の理解を促進すること等が規定されている。またテレマーケティングにおける迷惑通話対策等も盛り込まれている。
無線機器の基準認証は、「電気通信機器の基準認証及び適合証明にかかわる規則(附則、決定第242/2000号)」に基づき、Anatelが所掌している。Anatelは、基準認証証明機関(Designated Certification Organization:OCD)を指定し、検査及び証明書の発行等の業務を委託している。輸入される機器も、OCDの証明を受ける必要がある。認証の申請はブラジル籍の代理人又は代表者に限られる。また、OCDは認証を受けた製品の市場での適合性の監視も担当し、サンプリング調査等を実施している。Anatelは認証機器を以下の3種類に分類し、認証された機器にはAnatelマークが付される。カテゴリーⅠ:電気通信端末機器、カテゴリーⅡ:無線通信機器、カテゴリーⅢ:その他通信装置である。また、Anatelは2002年に規則を変更して、認証のための試験は、ブラジルでの試験が不可能な機器を除いて、ブラジル国内の認定試験機関が実施する必要があるとの条件を付している。承認を受けた機器の情報はAnatelのウェブサイト上で公開される。
ブラジルでは従来の固定電話網(PSTN)に加え、VoIPやFWAによる音声通話サービスが提供されているが、移動体通信サービスの急成長により、固定電話の契約数は減少傾向にある。ブラジルの固定電話市場では、大型買収・合併が繰り返され、現在ではOi、テレフォニカ・ブラジル、クラロの既存電気通信事業者3社で8割以上のシェアを占めている。これら以外では、ミナスジェライス州を本拠地とする地域通信事業者のアルガー・テレコムが小規模ながらPSTNを提供し、またFTTxネットワークを介してVoIPを提供しているTIMブラジル等がいる。Anatelによると、2023年9月現在、固定電話市場シェアは、クラロが29.1%、Oiが26.9%、テレフォニカ・ブラジルが25.5%、アルガー・テレコムが4.8%、TIMブラジルが2.7%を占めている。
2016年6月、地場企業のOiがリオデジャネイロ州の裁判所に、同社及び子会社6社の会社更生手続の適用を申請。負債総額は654億BRLとなり、国内史上最大規模の破たんとなった。翌年、Anatelを含む債権者側は、Oiがリオデジャネイロ州の裁判所に提出した経営再建計画案を承認。2023年には裁判所監督下で、経営再建計画におけるすべての要件を満たしたことが確認されている。それでもなお同社は約443億BRLの負債を抱えており、引き続き財政の健全化と事業の長期的再建のための取組みが求められている。
Anatelは2024年7月、2022年末までに一部のユニバーサル・サービス及びバックホール義務を順守しなかったOiに対して、これまでの固定電話サービス事業免許である「コンセッション」を没収し、「認可(authorization)」モデルへ移行することで合意している。合意の一環としてOiは光ファイバ回線やデータセンターへの投資等が義務付けられるが、Anatelに対する負債も軽減され、規制上の義務から解放され柔軟な事業展開が可能になるという。
ブラジルの移動体通信市場は、5年連続で加入数が減少していたが、2020年には再び増加に転じた。移動体通信市場は、テレフォニカ・ブラジル、クラロ、TIMブラジルの大手3社で市場シェアをほぼ独占している。これ以外では、市場シェアが1%前後の小規模事業者が多数(アルガー・テレコム、Brisanet Telecomunicacoes、Sercomtel、サーフ・テレコム(Surf Telecom)、Unifique、Winity Telecom等)存在する。2024年6月現在、大手3社の加入者シェアはテレフォニカ・ブラジルが39%、クラロが34%、TIMブラジルが26%となっている。2020年12月、財政難に陥ったOiが、債務返済の一環として移動体通信部門を競売にかけ、テレフォニカ・ブラジル、TIMブラジル、クラロからなるコンソーシアムが165億BRLで落札し、2022年4月に売却手続を完了している。
2021年11月、Anatel史上最大規模となる5G周波数オークションが行われ、12月には、アルガー・テレコムとクラロが、最初の商用5Gサービスを開始(電波/Ⅱ-2(2)の項参照)。2022年3月と7月にTIMブラジルとテレフォニカ・ブラジルがそれぞれ5Gサービスを開始している。Anatelによると、2023年、全国約5,600の自治体で約9万のモバイル基地局が運用されている。翌年2月には、26の州都すべてと首都ブラジリアで5G SA接続が承認され、合計3,300か所で3.5GHz帯 5G SAが導入された。これは同国人口の82.6%に相当する1億7,620万人をカバーすることになるという。また、同年9月、全国5Gカバレッジ94.5%達成を報告している。
Anatelによると2023年末現在、ブロードバンド技術で最も普及しているのはFTTxで、74%の市場シェアを誇る。2位は18%のケーブルモデムで、それ以降は3.2%のxDSL、FWA及び衛星ブロードバンド等、その他4.4%と続く。
ISPは、ケーブルテレビ最大手NETセルビソス(NET Servicos)と固定通信エンブラテル(Embratel)を傘下に持つクラロを筆頭に、フランスのメディア大手ビベンディ(Vivendi)からGlobal Village Telecom(GVT)を買収したテレフォニカ・ブラジル、地場企業Oiの大手3社が、ブラジルのインターネット市場を支配。最大手ISPはクラロである。同国の特徴として合計1万社以上の様々な規模のISPが存在しており、その大部分が市場シェア5%未満の小規模プロバイダであり、大手によるサービスが不十分である遠隔地等の自治体でサービスを提供している。
Tel. | +55 21 3131 2918 |
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URL | https://www.oi.com.br/ |
所在地 | Rua Humberto de Campos 425, Leblon, Rio de Janeiro RJ 22430-190, BRAZIL |
幹部 | Mateus Affonso Bandeira (最高経営責任者/CEO) |
リオデジャネイロに本社を置く総合通信事業者である。
総合通信事業者としての地位を強化すべく、2007年2月より全サービスについて「Oi」のブランド名を冠することとした。2008年9月に衛星放送免許を取得している。ポルトガル、南米、アフリカにおいて海外展開をしている。財政破綻による会社更生手続を申請した同社の司法復興手続は2024年現在も進行中である。
Telefónica Brazil
Tel. | +55 11 3549 7200 |
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URL | https://www.telefonica.com.br/ |
所在地 | Rua Martiniano de Carvalho 851-17 andar Sao Paulo 01321-000 BRAZIL |
幹部 | Christian Gebara(最高経営責任者/CEO) |
1998年にサンパウロで固定通信事業者として出発したTelespが、スペインのテレフォニカを主として編成されたコンソーシアムにより買収され、テレフォニカ・ブラジルとして市内・長距離電話及び国際長距離電話を提供していた。2006年1月の固定通信免許の更新により、有効期間が2025年12月31日まで20年間延長された。2011年3月、合弁企業のパートナーであるポルトガル・テレコム(Portugal Telecom)からブラジルの移動体通信事業Vivo Participacoesの50%の株式を買収。2012年4月、ブランド再構築戦略の一環として、グループ企業を「Vivo」に統一した。2015年5月にブラジルで加入者数第4位の固定通信事業者であるGVTを買収したことで、市場シェアを飛躍的に伸ばした。スペインの親会社テレフォニカがテレフォニカ・ブラジルの株式の73.7%を保有。ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア及び中米、欧州に海外展開をしている。
事業者 | URL | 出資組織 |
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クラロ | https://www.claro.com.br/ | アメリカ・モビル:99.6% |
TIMブラジル | https://www.tim.com.br/ | テレコム・イタリア:67% |
アルガー・テレコム | https://www.algartelecom.com.br/ | アルガーS.A.:68% |
(通信/Ⅰ-1の項参照)
放送行政は通信省(MCOM)の所管。MCOM内の放送事業局(Secretariat of Broadcasting:SERAD)が政策を策定している。ただし、公共放送機関EBC(Empresa Brasil de Comunicação)の監督については、社会コミュニケーション局(Special Secretariat for Social Communications:Secom)が行っている。Secomは、2023年1月のルーラ新政権の発足に伴い、MCOMから分離し、大統領府傘下へ移管されている。
(通信/Ⅰ-2の項参照)
通信、インターネット、ケーブルテレビの規制監督を行う、連邦政府から独立した機関である。放送分野に関しては主に周波数割当及び事業免許の発行等を所掌している。
Agência Nacional do Cinema
国家映画庁(Ancine)は、観光省に属する連邦政府の規制機関で2001年に設立された。映画及び視聴覚産業の振興、規制、監督を担当する。国内視聴覚産業プロジェクトの開発、制作、配給、展示等の活動支援を目的とした連邦基金であるオーディオビジュアル・セクター・ファンド(Fundo Setorial do Audiovisual : FSA)の管理及び運営も行っている。
同法が放送に関する一般規則を定めている。
公共放送機関EBCの設立に関して規定している。2017年3月、同法の一部改正(法律第13417号)が行われ、EBC会長の罷免権が大統領に移管された。これによりEBCに対する大統領の影響力が増すことになった。
2011年9月、「1995年ケーブルテレビ法(法律第8977号)」に代わり「2011年有料テレビ法(法律第12485号)」が成立した。主な内容は以下のとおり。
2017年、ブラジル連邦最高裁判所が同法の一部を無効とする判決を下し、衛星放送やケーブルテレビで外国制作の広告放送が認められることになった。
地上テレビ・ラジオ放送への外資の参入は2002年まで禁止されていたが、同年5月、政府は、国内に現地法人を持つ事業者が放送事業者の株式を30%まで保有することを認める決定を下した。ただし、「1962年ブラジル電気通信法」に基づき放送事業の代表者、編成責任者はブラジル国籍を有する者に限定される。なお、ケーブルテレビ事業への外資の出資比率はこれまで上限が49%に制限されていたが、「2011年有料テレビ法」で上限が撤廃された。またAnatelは2022年、外国企業は、電気通信サービスと有料TVサービス間のクロスオーナーシップ規制の対象外であるとの決定を下した。
「2011年有料テレビ法」は、国内における独立した視聴覚コンテンツ制作の奨励を目的としており、地上波無料放送と有料放送の両方で、午後6時から午前0時までのプライムタイムにおいて、週最低3時間半は国内制作番組を放送することを義務付けている。更にそのうち半数をテレビ局以外の独立した制作会社によるものと規定している。有料テレビによるパッケージ枠では、2 チャンネル以上、1 日に12 時間以上の国産視聴覚コンテンツの提供が義務付けられている。
ブラジル政府は、2007年12月に地上デジタルテレビへの切替えを開始した。2013年には、デジタルテレビへの移行を加速するため、700MHz帯開放を目的とした省令を発令し、移動体通信サービス用への転用を進めるほか、低所得者向けにデジタルテレビ用セットトップボックスを配布する等の措置を実施した。実際にデジタル移行が完了したのは2019年1月であった。
政府は2024年4月、新たな地上デジタル放送規格「TV3.0」を発表した。ブラジルではこれまで、日本のISDB-T国際規格をベースとした独自の方式であるSBTVD(Sistema Brasileiro de Televisão Digital)を使用してきた。これに対して、同国の標準化団体である、ブラジル地上デジタルテレビ・システム・フォーラムが、それに代わる次世代地上デジタルテレビ規格として「TV3.0」を提唱し、主に米国や韓国で導入されているATSC3.0技術の採用を推奨した。政府は同提言を受け、2025年以降、主要都市から段階的に導入する方針を発表した。
2022年9月現在、約1万9,000件を超えるラジオ局の放送免許が認可されている。FM局が3.257局、AM局が546局あり、これ以外にコミュニティ・ラジオ局が多数存在する。地域コミュニティ向けの市民ラジオは、約7万件が認可されている。よく視聴されているラジオ局は、公共放送機関EBCが運営するRádio Nacionalのほか、商業ラジオ局のRádio Globo、Jovem Pan等である。
デジタル放送への移行に伴い、地上放送に使用されていた76-88MHz帯がFM局に割り当てられた。FM局の帯域は76-107.9MHzに拡大。これにより、AM放送からFM放送へ転換するラジオ局が増えている。
Anatelによると2024年11月時点で、全国で合計約2万2,000のTVチャンネルが存在し、そのうち900チャンネルがTV放送局、約2万1,000が再送信チャンネルとなっている。商業放送は、Rede Globo、Rede Record、SBT(Sistema Brasileiro de Televisão)、TV Band、RedeTV!の5大ネットワークが直営局と系列局を通じて全国放送を実施している。公共放送は、公共放送機関EBC傘下のTVブラジル(TV Brasil)により実施されており、ブラジル国土の約90%をカバーしている。このほかの代表的な公共放送には、サンパウロ州営のTV Culturaや教育省が運営するTV Escola等がある。公共放送の番組は商用地上テレビ、ケーブルテレビ、衛星放送等でも再送信されている。
Anatelによると、2024年11月時点の有料テレビ契約数は、約830万であった。有料テレビ市場シェアは、クラロが50.6%、2010年にディレクTV(DirecTV)に買収され、AT&Tの一部となったスカイ・ブラジル(Sky Brazil)が28.6%で、2グループで合計79.2%のシェアを占めた。その他、Oi、Vivoは、両社合わせて16.4%であった。衛星放送は、クラロ、スカイ・ブラジル、Oi、テレフォニカ・ブラジル、GVT、Nossa TV等数十社が放送免許を受けてDTHサービスを提供している。一方、ケーブルテレビは、光ファイバ需要に押され、加入数は減少傾向にある。ケーブルテレビ最大手はアメリカ・モビルで、同社はケーブルテレビ子会社のNETセルビソスと衛星放送子会社のクラロTV(Claro TV)を運営している。有料テレビ業界もOTT(Over The Top)サービスとの競争にさらされており、小規模事業者の中には、2022年2月のアルガー・テレコムのように、ケーブルテレビや衛星放送事業から撤退し、成長著しいストリーミング・サービスへと移行する傾向が見られる。
2015年以降、ブラジルではOTTによる動画配信サービスが飛躍的に増加しており、視聴覚産業に大きな影響を及ぼしている。2022年の時点で、最大の市場シェアを占めているネットフリックス(Netflix)をはじめ、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、ディズニーグループ等の国際大手のほか、国内の放送事業者、通信事業者、機器メーカー等が運用するGloboPlayやClarovideo等も参入しており、市場競争は激化している。OTTプロバイダはブラジルの規制によると、OTTアプリケーションは通信、放送のどちらでもなく、付加価値サービスとして分類される。また、OTTプロバイダは制作、プログラミング、パッケージングにも関与しており、有料テレビ法で規定されているクロスオーナーシップの再検討が必要になる等、従来の規制上の制限における課題が浮き彫りとなった。ブラジルの電気通信及び放送部門の規制枠組は複雑であり、複数の当局が直接あるいは間接的に異なる権限を保有しているため、現在包括的な法改正が検討されている。
Empresa Brasil de Comunicação
URL | https://www.ebc.com.br/ |
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幹部 | Jean Lima(Chief Executive Officer) |
公共放送機関EBCは2007年に設立され、九つのラジオ局、TVブラジルのほか、国際放送のTV Brasil International、通信社のAgência Brasil、音声ニュースや音声番組を無料でオンライン配信するRadioagênciaNacionalも運営している。2019年1月のボルソナロ政権発足に伴い、TVブラジルは同年4月に連邦政府の広報チャンネルNBRと統合され、新生のTVブラジルとしてスタートした。EBCの財源は、政府交付金、広告料、寄付金、通信事業者の負担金で賄われ、受信料制度はない。国際放送のTV Brasil Internationalは、2010年に開始。ポルトガル語による放送で、対象はアフリカのポルトガル語圏諸国や海外在住のブラジル人。
Rede Globo
URL | https://grupoglobo.globo.com/ |
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幹部 | João Roberto Marinho(会長/President of the Board) |
ブラジルのメディア複合企業グローボ・グループ(Grupo Globo)が所有する地上テレビ放送事業者で、ラテンアメリカ最大の放送事業者である。本拠地はリオデジャネイロで、1965年創業。地上テレビ放送は、五つの直営局及び122の系列局で、国土の98%以上をカバーしている。番組制作はテレノベラ(メロドラマに類似した連続ドラマ)が中心で、メキシコのテレビサ(Televisa)に次ぐ制作本数を誇っている。中南米をはじめ、世界各国の放送事業者に番組販売を行っている。また、海外のブラジル人及びポルトガル語話者向けに1999年からポルトガル語によるテレビ国際放送を行っている。
Rede TV!
URL | https://www.redetv.uol.com.br/ |
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幹部 | Amilcare Dallevo Jr.(社長/President) |
ブラジルの5大テレビ局で最も新しく1999年に放送を開始した。デジタル化をいち早く進め、無料放送では世界で初めて3D放送を行った。すべての番組をHD画質で制作し、番組を放送と同時にネット配信している。
2020年7月10日、MCTIC(当時)から分離する形で通信省(MCOM)が復活した。
(通信/Ⅰ-1の項参照)
(通信/Ⅰ-2の項参照)
「1997年一般電気通信法」に基づき、MCOMが策定する電気通信事業の基本政策の下に、周波数及び無線局を含む電気通信に関する管理・監視業務を所掌し、活動状況をMCOM及び国会に報告することになっている。なお、周波数オークションの価格設定については、連邦会計裁判所(Tribunal de Contas da União: TCU)による監査が必要となる。
ブラジル規格協会(ABNT)
Brazilian Association of Technical Standards
Tel. | +55 11 3017 3600 |
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URL | http://www.abnt.org.br/ |
所在地 | Rua Conselheiro Nebias, 1.131 - Campos Eliseos - SP -01203-002 São Paulo, SP, BRAZIL |
幹部 | Mario William Esper(会長/President) |
1940年に設立された。ブラジルを代表する標準化機関として国際的に認められた民間非営利団体であり、国際標準化機構(International Organiztion for Standarization:ISO)、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)、アメリカ標準化委員会(Pan American Standard Commission:COPANT)、メルコスール標準化団体(Mercosur Association of Standardization:AMN)、国際試験所認定協力機構(International Laboratory Accreditation Cooperation:ILAC)等の標準化業務を所掌している。
Anatelが独立規制機関として、「1997年一般電気通信法」に則った電波監理を実施。電気通信分野だけでなく、放送及び有料テレビ分野における周波数オークション計画を含む周波数管理の責任を負う。2年ごとに周波数利用計画を見直すことが定められている。放送サービスの周波数割当手続については、MCTI、議会、大統領等からの承認も必要となる。
周波数の使用認可に関する規定は、「1997年一般電気通信法(Lei Geral de Telecomunicações:LGT)」第163~169条及び「周波数使用規則」の決議第671/2016号(2016年11月3日)に定められている。主な無線業務における免許付与は、セルラー及びPCS(Personal Communications Service)は比較審査又はオークション、ブロードバンドはオークション、放送(ラジオ、テレビ)は比較審査、衛星システムは先願方式で実施される。周波数リースについては、2019年10月4日に成立した「1997年一般電気通信法」の改正法(法律第13879号)により可能となった。
2021年9月、Anatelが700MHz帯/2.3GHz帯/3.5GHz帯/26GHz帯における5G用周波数オークション規則を公開した。事業免許は20年間有効。2.3GHz帯については地域ブロック免許のみで、その他の周波数帯はすべて全国免許と地域ブロック免許に分けられた。5Gパイオニア・バンドには3.5GHz及び26GHz帯が指定されている。落札事業者に対する主な要件は以下のとおり。
実際の5Gオークションは計画から大幅に遅れて2021年11月に実施された。オークションでは、既存通信事業者5社(テレフォニカ・ブラジル、クラロ、TIMブラジル、アルガー・テレコム、Sercomtel)と新規参入事業者5社(Winity Telecom、Brisanet、Neko Serviços e Comunicações and Entertainment and Education(2022年9月、事後的に免許取消し)、Consórcio 5G Sul(Unifique と Copel Telecomのコンソーシアム)、Cloud2 U Indústria e Comércio de Equipamentos Eletrônicos)がそれぞれ事業免許を獲得した。
「周波数利用規則」第2章第158条により、Anatelが周波数分配表を策定、公表している。周波数分配表(2024年度版)を掲載しているURLは以下のとおり。