ブルネイ・ダルサラーム国(Brunei Darussalam)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 運輸情報通信省

Ministry of Transport and Infocommunications

Tel. +673 238 3838
URL https://www.mtic.gov.bn/
所在地 Jalan Menteri Besar, Bandar Seri Begawan BB3910, BRUNEI DARUSSALAM
幹部 Yang Berhormat Dato Seri Setia Awang Abdul Mutalib(大臣/Minister)
所掌事務

1984年に設立された。2006年4月に電気通信部がテレコム・ブルネイ・ベルハド(Telekom Brunei Berhad:TelBru)として民営化し、併せて、その規制監督業務を情報通信技術産業庁(Authority for Info-communications Technology Industry:AiTi)に移譲している。情報通信分野の政策立案及び実施、ITU等の国際機関との協調、AiTiによるICT振興政策への諮問等を所掌している。2018年12月に通信省から運輸情報通信省に改称した。

2 情報通信技術産業庁(AiTi)

Authority for Info-communications Technology Industry

Tel. +673 232 3232
URL https://www.aiti.gov.bn/
所在地 Block B14, Simpang 32-5, Kampung Anggerek Desa, Jalan Berakas BB3713, BRUNEI DARUSSALAM
幹部 Haji Jailani bin Haji Buntar(長官/Chief Executive)
所掌事務

運輸情報通信省の管轄下にあり、2003年1月に設立された。電気通信や無線通信の規制、周波数の計画や管理、ICT振興政策を所掌とする。

Ⅱ 法令

2001年電気通信政令(Telecommunications Order 2001

2001年5月に発令され、電気通信分野における免許制度、機器の認可、ケーブルの設置等に関する規定が定められている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「2001年電気通信政令」第5条に基づき、電気通信基盤を提供する企業に対して免許が付与され、この中に周波数の割当てに関する詳細も含まれている。また免許の種類や条件、料金等に関する詳細は、2006年発表の「AiTiの運用枠組(Operational Framework for AiTi)」に定められている。その中では「3.免許」として、電気通信分野に関して通信インフラ事業者(InTi)と通信サービス事業者(SeTi)の2種類の免許を定めており、免許の申請は法人格に限定され、また外国人が申請企業における過半数の議決権や経営権を有してはならないと定めている。

2 競争促進政策

上下分離によるインフラ統合

2018年12月、政府は国家計画「Wawasan Brunei 2035」に基づき、既存の通信事業者(Ⅴの項参照)の通信インフラを統合し、新たな国有卸売ネットワーク事業者「Unified National Networks(UNN)」を設立、2019年9月より正式に既存事業者のインフラを継承し事業を開始した。既存事業者は2020年1月より、改めてUNNの卸売サービスを同一条件で使用するSeTiとして免許を付与され、市場競争の促進を促されている。

3 ICT政策

2025年デジタル経済基本計画

2020年6月に政府が設置するデジタル経済評議会は、今後5年間でブルネイをスマート国家に変貌させることを目的とした「2025年デジタル経済基本計画」を始動した。

同計画には、公共交通情報システム、全国ビジネス・サービス・プラットフォーム、学校ネットワーク・インフラストラクチャ、ハラール認証システム等、今後5年間に実施が見込まれる17件のプロジェクトが提示されている。運輸情報通信省は、これらのプロジェクトはデジタル・トランスフォーメーション(DX)の主軸であり、経済成長に大きな影響を与えるものと位置付けている。

加えて、デジタル経済評議会は、特に以下の九つのクラスターの下でのプロジェクトに焦点を合わせることも表明している。①ロジスティクスと輸送、②エネルギー、③ビジネス・サービス、④観光、⑤金融、⑥健康、⑦農業・食品、⑧教育、⑨ハラール。

また、同評議会は同計画の四つの戦略的推進領域として、①産業のデジタル化、②政府のデジタル化、③デジタル産業の成長、④デジタル人材の育成、を掲げており、特に、零細及び中小企業に対する施策を重要視していると述べている。

同時に、政府のデジタル化は、デジタルIDエコシステムや政府のクラウド使用等により、デジタル経済の成長を主導する役割を与えられるものとしている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「2001年電気通信政令」第9条に、電気通信システムの接続に使用される機器や電気通信免許保有者が所有する機器については、利用前にAiTiの承認が必要と定められており、再販をするか否かにより、承認タイプは個人と取扱業者の2種類に分類される。また機器に関しては干渉のリスクに応じて3段階に分かれている。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

固定通信を提供してきた通信省(現・運輸情報通信省)電気通信部が2006年4月に民営化され、テレコム・ブルネイ・ベルハド(TelBru、現社名:イマジン(Imagine))が設立された。以降、同社による市場独占が継続してきたが、2018年12月のUNN設立により、国内の通信サービス事業者が総じて固定電話の小売サービスを提供することが可能となったため、今後、市場の競争化が期待されている。

2 移動体通信

ブルネイの移動体通信市場ではデータストリーム・デジタル(Datastream Digital:DST)とプログレシフ(Progresif)がサービスを提供してきたが、2018年12月のUNN設立により、各社のインフラが統合された結果、従来固定電話サービスの提供事業者であったイマジンが2020年1月より移動体市場にも参入することとなった。

UNNは3G、4Gの卸売サービスを提供しているが、各々のネットワーク・カバレッジは2020年度末時点で人口所在地のほぼすべてをカバーしている。

5Gについては、2021年4月に運輸情報通信省がAiTiと共に5Gパイロットプロジェクトを開始、UNNが試験用5G基地局を設置している。この後、2022年9月にAiTiがUNN及びDST、プログレシフ、イマジンの4社と共に8週間に及ぶ共同トライアルを実施することを発表している。

3 インターネット

2018年12月のUNN設立まではイマジンが固定ブロードバンド市場を独占していたが、UNNのインフラ統合によりDST、プログレシフが小売サービス事業者として市場に参入している。接続方式のシェアは、UNNが提供するFTTxがほぼ100%を占めている。

Ⅵ 運営体

1 イマジン

Imagine

Tel. +673 2321 321
URL https://imagine.com.bn/
所在地 Level 6, RBA Plaza, Jalan Sultan, BS 8811 Bandar Seri Begawan, BRUNEI DARUSSALAM
幹部 Suzanna Suharju(最高経営責任者/CEO)
概要

2006年4月に通信省(現・運輸情報通信省)電気通信部が民営化され、テレコム・ブルネイ・ベルハド(TelBru)として設立。2019年12月にイマジンに改称した。一般向けにはブロードバンドと音声サービスを、ビジネス向けにはデータ、音声サービスやソリューション・サービスを提供している。ブロードバンド・サービスはDSL及びFTTHサービスの有線接続により提供している。なお、2020年1月より、UNNの卸売サービスを同一条件で使用するSeTiとして免許を付与され、小売サービス提供事業者となった。

2 Unified National Networks(UNN)

URL https://unn.com.bn/
所在地 Level 5, Design & Technology Building, Kg Anggerek Desa, Jalan Berakas, BB3713.Bandar Seri Begawan, Negara BRUNEI DARUSSALAM
幹部 Steffen Oehler(最高経営責任者/CEO)
概要

2018年12月、政府により既存の通信事業者の通信インフラを統合し、新たな国有卸売ネットワーク事業者として設立された。2019年9月より正式に既存事業者のインフラを継承し、InTiとして事業を開始した。一方、既存事業者は2020年1月より、改めてUNNの卸売サービスを同一条件で使用するSeTiとして免許を付与され、市場競争の促進を促されている。

3 データストリーム・デジタル(DST)

Datastream Digital

Tel. +673 241 0888
URL https://dst.com.bn/
所在地 Level 6, RBA Plaza, Jalan Sultan, BS 8811 Bandar Seri Begawan, BRUNEI DARUSSALAM
幹部 Radin Sufri Radin Basiuni(最高経営責任者/CEO)
概要

2014年1月から国内初の商用LTEサービスを開始した国内最大の移動体通信事業者で、主に移動電話やモバイル・ブロードバンドを提供しているが、イマジンと同様にUNNの卸売サービスを同一条件で使用するSeTiとして免許を付与され、固定サービス市場にも参入している。

4 その他の主な事業者

事業者名 概要 URL
プログレシフ 2005年9月にTelBruとQAF Comserveの合弁企業として設立。ブルネイで最初に3Gサービスを提供した移動体通信事業者 https://progresif.com/

放送

Ⅰ 監督機関等

情報通信技術産業庁(AiTi)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

Ⅱ 法令

放送法(Broadcasting Act

1997年3月に制定後、2000年に改正され、放送サービス一般や設備の運用・所有に関する規定を定めている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

放送事業の免許は「放送法」第11条に基づき付与される。また、無線局免許はアマチュア無線、海上無線、航空無線、ラジオ局、テレビ局、地上局等23種類に分類され、局の運営にはAiTiに申請書を提出し、許可を得る必要がある。また分類ごとに支払う免許料金も定められており、免許の有効期限は1年間で、有効期限が切れる2か月以内に更新の手続を行う必要がある。

2 地上デジタル放送

ブルネイでは、2008年から欧州方式のDVB-T規格により地上デジタル放送の本放送が開始されている。2014年3月にマレーシア領内の飛び地となっているテンブロン地区に送信局が設置されたため、同時点で地上デジタル放送は全国カバレッジを達成した。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

国営のラジオ・テレビジョン・ブルネイ(Radio Televisyen Brunei:RTB)がマレー語、英語、中国語(普通話、広東語)の放送を中波とFMで計5系統放送しているほか、民間事業者クリスタルFMもマレー語と英語の2か国語で放送しており、衛星放送事業者のクリスタル・アストロ(Kristal-Astro)もラジオ放送を提供している。

2 テレビ

国営全国ネットワークのRTBが3チャンネルでマレー語と英語のテレビ番組を放映している。また隣国マレーシアのテレビ放送も受信可能である。

3 衛星放送

国内資本クリスタルとアストロ・マレーシア(Astro Malaysia)の合弁企業であるクリスタル・アストロはブルネイで唯一の有料放送事業者で、DTH衛星テレビサービスを通じて、100チャンネル以上のデジタル・テレビ、ラジオや双方向サービスを提供している。

Ⅴ 運営体

ラジオ・テレビジョン・ブルネイ(RTB)

Radio Televisyen Brunei

Tel. +673 224 2296
URL https://www.rtb.gov.bn/
所在地 Secretariat Building, Jalan Elizabeth II, Bandar Seri Begawan, BA8610, BRUNEI DARUSSALAM
概要

国営放送局。1975年に開始したテレビ放送は3系統あり、英語とマレー語で放送されている。ラジオは1957年に開始し、5系統を放送している。

電波

Ⅰ 監督機関等

情報通信技術産業庁(AiTi)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

AiTiが電波の監理業務を所管しており、周波数計画の策定、規制・管理の実施、国際電気通信連合(ITU)の周波数分配と調和した国内周波数割当に責務を有する。

主な所掌業務は以下のとおりである。

ASEAN地域内の干渉問題の調整として、AiTiは「シンガポール、マレーシア、ブルネイから成る周波数の分配と調整(FACSMAB)」に加盟し、シンガポール、マレーシアと周波数の分配と調和を図っている。

2 周波数割当制度・電波再分配制度

AiTiが周波数の割当業務を所管している。割当手続の主な流れは、AiTiが、設備技術仕様、通信網設計、アンテナ放射パターン等を添えた申請を受理し、承認した後、FACSMABにおいて干渉の有無の確認を経て、申請者から割当事業者を選定する。

移動体通信向けに分配された900MHz帯(GSM)、1800MHz帯(4G)、2100MHz帯(3G)は、2019年9月のUNN事業開始より、既存事業者からUNNへと割当てが移行している。

3 電波利用料制度

2012年1月より、周波数利用料(Frequency Spectrum Fees)を徴収している。目的は以下のとおりである。

料金カテゴリーは、周波数の利用期間を基準に以下の四つのカテゴリーを設け、それぞれ料額を設定している。

Ⅲ 周波数分配状況

周波数帯域ごとに、固定無線、移動電話、放送、航空、海洋、衛星通信サービス等の様々な無線通信サービスに割り当てられており、AiTiが周波数分配計画を策定し、公開している。