カナダ(Canada)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 イノベーション・科学・経済開発省(ISED)

Innovation, Science and Economic Development Canada

Tel. +1 343 291 1777
URL https://ised-isde.canada.ca/site/ised/
所在地 C.D. Howe Building, 235 Queen Street, Ottawa, Ontario K1A 0H5, CANADA
幹部 François-Philippe Champagne(大臣/Minister)
所掌事務

2015年12月にカナダ産業省(Industry Canada)から名称を変更した。

各種の産業振興政策や貿易管理等を所掌するが、情報通信分野に関しては、ICT振興政策の立案、基準認証、電波監理等を所掌している。

2 カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)

Canadian Radio-television and Telecommunications Commission

Tel. +1 819 997 0313
URL https://crtc.gc.ca/
所在地 Les Terrasses de la Chaudière, Central Building, 1 Promenade du Portage, Gatineau, Quebec J8X 4B1, CANADA(Central Office)
幹部 Vicky Eatrides(議長兼最高経営責任者/Chairperson and Chief Executive Officer)
所掌事務

1985年制定の「カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会法(CRTC法)」により、電気通信及び放送に関する独立規制機関として設置された。主に料金審査、通信及び放送の規則制定、免許付与、紛争調停等を所掌する。

Ⅱ 法令

1 1993年電気通信法(Telecommunications Act of 1993

電気通信分野の基本法令で、電気通信関連法規の統合法(Consolidation Act)として成立した。同法のいずれかの規定が他の法律との間で矛盾を生じる場合、同法の規定が優先される旨を明確にしている。

政府は2022年6月、サイバーセキュリティを強化する目的で、電気通信法及び関連法を改正し、「重要サイバーシステム保護法(Critical Cyber Systems Protection Act)」(Ⅲ-4(4)の項参照)を新たに制定する内容の法案を下院に提出した。同法案は、2024年6月に下院にて可決され、2024年10月現在、上院にて審議中である。

2 1985年無線通信法(Radiocommunication Act of 1985

無線通信分野に関し、総合的な規定を設けている。2018年6月に開始した抜本的見直しについては1の項を参照。

3 その他の主な電気通信関連法令

法令 制定
カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会法(CRTC法) Canadian Radio-television and Telecommunications Commission Act 1985年
ベル・カナダ法 Bell Canada Act 1987年

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

電気通信事業者の事業運営資格は、「1993年電気通信法」第24条により、CRTCの課す諸条件の順守が条件とされている。

「1993年電気通信法」第2部第16条により、カナダ国籍の電気通信事業者は経営権の代表者及び取締役の80%がカナダ国籍を有することが義務付けられていたが、2012年6月、同16条に国内通信市場の売上シェアが10%未満の事業者に対しては外資規制を撤廃するとの規定が付加された。これにより、外資規制の対象はベル・カナダ(Bell Canada)、ロジャース・コミュニケーションズ(Rogers Communications)(以下、ロジャースとする)、テラス(TELUS)の3大事業者に限定された。

外国人によるカナダ国籍の電気通信事業者に対する出資比率は、「カナダ電気通信公衆事業者所有管理規制(Canadian Telecommunications Common Carrier Ownership and Control Regulations)」により、直接投資の場合は電気通信事業者の議決権付き株式の20%(間接投資を含めて46.7%)、間接投資の場合は電気通信事業者持株会社の議決権付き株式の33.3%までとなっている。

2 競争促進政策

相互接続要件は、市場の自由化に応じてCRTCが各市場を対象に発行する決定による。接続料金は、市場ごとにCRTCが発行する決定でその原則が提示される。

(1)卸売提供制度

ISEDは2022年5月、インターネット及び移動体通信サービスにおける高すぎる利用料金の是正とサービス向上のため、新たな政策方針案を発表した。CRTCに対しては、インターネット卸売市場への参入と競争の強化、移動体通信における競争拡大、消費者の権利向上、ユニバーサル・アクセスのための新しいインフラの高速化、消費者をよりよく支援するためのよりよい規制の構築を目的とした規則の導入を求め、2023年2月にこれを指令として正式決定した。これを受けて2023年3月、CRTCは、卸売料金を即時10%引き下げる決定を行い、卸売料金の再評価を行うための意見募集を行った。

CRTCは2023年11月、意見募集の結果を踏まえ、大手事業者に対し、6か月以内にCRTCが設定した暫定卸売料金でオンタリオ及びケベック州にて卸売FTTP(Fiber To The Premises)アクセスの提供開始を指示する決定を下した。2024年8月には、大手事業者3社(ベル・カナダ、テラス及びサスクテル(SaskTel))に対して、上述の決定を2025年2月から恒久化し、全国に拡大する決定を下した。なお、新たに敷設した光ファイバは2029年8月13日までは卸売アクセスに利用できないとして、インフラ投資における回収機会を与えている。CRTCは2024年11月、大手事業者3社に対する新たな暫定卸売料金を決定している。

(2)MVNOへのネットワーク開放

CRTCは2022年10月、移動体通信市場の競争促進に向けたMVNOに関する新規則を発表した。国内のどこかの地域で自社ネットワークを所有したうえで、他社ネットワークを利用してMVNO事業を行おうとする地域無線事業者に対し、大手移動体通信事業者のネットワーク開放を求めるもの。義務付けられる期間は7年間とされており、この間に地域無線事業者が自身のネットワークを整備・拡大することができるとしている。

2023年5月のCRTCの決定により、最終的なMVNOアクセスルールが設定され、移動体通信事業者(MNO)に対して2023年8月7日までに地域ネットワーク事業者とのMVNO契約を締結することを命じている。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

ユニバーサル・サービスの補助金の徴収・配分を実施する基金は、「1993年電気通信法」第46.5条でその基本的枠組が決定された。基金の運営者、運営方法及び拠出金額は同条(2)及び(3)に従いCRTCが定める。同法第46.5条により、全国拠出基金(National Contribution Fund:NCF)が設立された。

ユニバーサル・サービスの提供範囲について、CRTCは2016年12月、音声サービスとダイヤル・アップ・インターネットに加え、ブロードバンド・インターネット接続も基本通信サービスに含めることを宣言し、2018年9月にユニバーサル・ブロードバンド基金(Universal Broadband Fund:UBF)を設立した。同基金は、50Mbps/10Mbpsの固定ブロードバンド・インターネットに接続できない地域向けのもので、大規模プロジェクトに対しては5年間で総額7億5,000万CADまで投資する。

(2)デジタル・ディバイド対策

政府は2014年7月、国家デジタル戦略「デジタル・カナダ150(Digital Canada 150)」の一環として、デジタル・ディバイド是正のためのプログラムである「コネクティング・カナディアンズ(Connecting Canadians)」を始動させた。当初は2018年までに総世帯の98%が5Mbps相当のブロードバンドに接続可能という目標を掲げていたが、目標の引上げが度々行われ、2020年10月には、すべての国民が50Mbps/10Mbpsのブロードバンド・サービスに接続可能になるという目標の下、同ブロードバンド・サービスへの接続率を2026年までに98%、2030年までに100%とする目標設定がなされており、2019年以降に10年間で50億~60億CADをルーラル・ブロードバンドに投資する実行計画も公表されている。

2018年6月の「コネクティング・ファミリーズ・イニシアチブ(Connecting Families Initiative)」に続くものとして、政府は2022年4月、「コネクティング・ファミリーズ2.0(Connecting Families 2.0)」を開始し、月額20CADで200GBの通信量と50Mbps/10Mbpsのブロードバンド・サービスが利用できる新しいオプションが提供された。

(3)緊急通信

CRTCは各事業者に対して緊急通信に関する義務付けも実施している。2014年8月には、ケーブル及び衛星放送事業者、ラジオ放送事業者、地上テレビ放送事業者、ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス事業者に対して、2015年3月31日以降は市民に向けて警告メッセージを中継することを義務付けたほか、2017年4月には、2018年4月までに国内すべての移動体通信事業者が自社LTE網に無線公共緊急警報システムを導入することを義務付けた。通信事業者各社は、2020年6月末までに次世代型緊急通信911「NG 911」音声サービスの提供を開始し、同テキスト・メッセージング・サービスの提供を2020年末までに開始しなければならないとされていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けた通信事業者各社のネットワーク整備の遅れを受け、提供開始期限を延長。2022年3月、通信事業者各社に「NG 911」音声サービスを提供可能とするためのネットワーク設備の更新を開始するよう指示し、「NG 911」音声サービスは2025年3月までに、国内のほぼ全域において提供開始されると公表した。

(4)通信障害対策等

政府は2022年9月、国内移動体通信事業各社が、大規模通信障害発生時に緊急ローミングやその他の相互支援を確保・保証する正式な合意に達したと発表した。同合意は、同年7月に発生したロジャースの大規模通信障害を受けて結ばれたもので、移動体通信サービス、インターネット・サービスを提供する多くの通信事業者は、サービスの信頼性を保証するために多くの義務を負うことを約束し、事業者のうち1社で大規模な障害が起これば、他の事業者が通信を提供する。更に政府は、カナダ・セキュリティ通信諮問委員会(Canadian Security Telecommunications Advisory Committee:CSTAC)に対し、全国で信頼性の高い通信ネットワークを確保するための更なる対策を6か月以内に策定するよう指示し、ISEDにも適切な規制措置の見直しを指示している。CRTCは2023年2月、ISED及びCSTACによる見直しの下、規制当局への重大な電気通信サービス障害の通知と報告の義務化にかかる意見募集を開始している。

4 ICT政策

(1)デジタル国家戦略

2019年5月、政府は新しい「デジタル憲章」を発表した。同憲章は、10の原則で構成され、デジタル及びデータ駆動型経済においてカナダが引き続きリーダーシップを発揮するための枠組みを提供するものとなっている。政府は2022年6月、「2022年デジタル憲章実施法案」を議会に提出した。同法案は、AIの責任ある開発と利用のための新規則を策定し、民間部門向けのプライバシー法を大幅に強化することを目的としている。同法案には、①「消費者プライバシー保護法案(Consumer Privacy Protection Act)」、②「個人情報・データ保護裁判所法案(Personal Information and Data Protection Tribunal Act)」、③「AI・データ法案(Artificial Intelligence and Data Act)」の三つが含まれている。

(2)AI関連政策

政府は2017年3月、モントリオール、トロント、エドモントンの大学と連携して人工知能(AI)を開発する「汎カナダAI戦略(Pan-Canadian AI Strategy)」に1億2,500万CADを投入することを発表した。同戦略は、AI関連の研究開発に対する税制優遇や企業メンターシップ・プログラムとともに、カナダのAI産業を成長させる柱の一つとなる。2022年6月、同戦略の第2フェーズを開始しており、4億4,300万CAD以上を投資するとしている。

2023年9月に、政府は「高度な生成AIシステムの責任ある開発・管理に関する自主的な行動規範」を公表した。これは、生成AIシステム・サービスを開発・提供する事業者に対して、強制力のある法規制が定立されるまでの間、生成AIシステムにまつわる各種のリスクの特定・軽減に自主的に取り組み、その旨を公表することを促すためのガイドラインとして位置付けられている。

(3)デジタル・サービス税

政府は2020年秋の経済声明にてデジタル・サービス税を課す方針を示し、2022年1月からの導入を予定していたが、2022年10月のOECD合意(OECD加盟国を含む136か国・地域が2023年のデジタル課税導入を目指すことで合意)を受けて、国際協調的アプローチは尊重しつつも、同時並行で立法は進め、条約が発効しなかった場合には2022年1月以降に得られた収益に対して2024年1月以降に遡及適用するとした。政府は2024年6月、国外の大手テクノロジー企業に対するデジタル・サービス税の導入を承認した。2024暦年から適用され、2022年1月1日以降の収益が初年度の課税対象となる。同税は、企業がカナダのユーザから暦年に2,000万CAD以上のデジタル・サービス収入を得た場合に、3%の課税が行われるが、全世界での年間売上が7億5,000万EUR以上の企業にのみ適用されるため、米国大手企業がその主な対象になる。

(4)ICTサプライチェーン安全化

政府は2022年5月、国家安全保障のために華為技術(HUAWEI)、中興通訊(ZTE)の5G機器の使用を禁止すると発表した。既に両社の機器を使用している事業者は、4G機器は2027年末まで、5G機器は2024年6月末までの撤去が義務付けられる。5G機器撤去費用の償還はされない。UKUSA協定(United Kingdom-United States of America Agreement)に基づく機密情報共有枠組であるファイブ・アイズ(Five Eyes)を構成する5か国のうち、米、英、豪、ニュージーランドは既に華為技術、ZTE製機器の使用を禁止していたが、カナダは中国との外交的緊張の中で延期していた。

政府は2022年6月、重要インフラを運営する国内企業に対し、サイバー攻撃被害を連邦政府に報告し、サイバーシステムを強化することを義務付ける「重要サイバーシステム保護法(Critical Cyber Systems Protection Act)」を下院に提出した。同法案は、電気通信法及び関連法の改正と併せて提出されたものであり(Ⅱ-1の項参照)、金融、電気通信、エネルギー、運輸セクターを国家安全保障及び公共の安全に不可欠なセクターに指定している。また、国内通信システムをサイバー脅威から保護するための広範な権限を規制当局に付与し、電気通信事業者がリスクの高いサプライヤの製品・サービスを使用することも禁止している。

5 消費者保護政策

(1)迷惑通信規制

2008年に「迷惑電話お断りリスト(Do Not Call List)」制度が導入された。更に、CRTCは2019年12月、発信者IDの偽装対策として、通信事業者に「STIR/SHAKEN (Secure Telephony Identity Revisited/Signature-based Handling of Asserted information using toKENs)」規格による認証枠組の導入を指示し、その監督機関として電気通信事業者によって構成される「Canadian Secure Token Governance Authority (CST-GA)」の設立を承認した。

(2)個人保護規制

2015年6月に「デジタル・プライバシー法(Digital Privacy Act)」が成立したことで、民間部門を対象とする「個人情報保護及び電子文書法(Personal Information Protection and Electronic Documents Act:PIPEDA)」が改正され、個人情報の収集、利用、公開について明確な規則が制定された。

更に2018年11月、国内で操業する企業に対して、あらゆるデータ流出について発見し次第、顧客とプライバシー監視当局に報告するよう義務付ける新規制が施行された。企業は、どのような個人情報がいつどのように流出し、どのような対策がとられているのかを被害を受けた個人に伝えなければならないほか、データ流出の記録を最低2年間保管しておかなければならない。これらを故意に行わなかった場合、最大10万CADの罰金が科せられる。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信端末機器に関する基準認証は、「1993年電気通信法」に基づき、CRTCが端末接続諮問委員会(Terminal Attachment Program Advisory Committee:TAPAC)の助言を受けて規格を制定する。無線機器については、「1985年無線通信法」によりISEDが技術基準(Radio Standards Specification:RSS)を策定する。無線機器及び通信端末機器の認証は認証・技術室(Certification and Engineering Bureau:CEB)が担当する。

通信機器に関する国際的な流通を促進することを目的として、以下の諸国・国際組織と相互承認の枠組み(Mutual Recognition Arrangements/Agreements:MRA)を結んでいる。欧州共同体(European Union:EU)、欧州経済圏(European Economic Area:EEA)、欧州自由貿易連合(European Free Trade Association:EFTA)、スイス、米州機構(Inter-American Telecommunication Commission:CITEL)、アジア・太平洋経済協力(Asia Pacific Economic Cooperation:APEC)等。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

ベル・カナダを含むベル・カナダ・エンタープライズ(Bell Canada Enterprises:BCE)傘下の地域通信事業者、テラス、ロジャースが全国レベルで固定通話サービスを展開しており、3大事業者とされる。そのほかには、マニトバ州を拠点とするBell MTS(旧MTS)、サスカチュワン州を拠点とするサスクテル、ケーブルテレビ事業者であるショウ・コミュニケーションズ(Shaw Communications)(以下、ショウとする)、ビデオトロン(Videotron)やコゲコ(Cogeco)も固定通話サービスを提供している。

ロジャース等のケーブルテレビ事業者を含む競争的地域通信事業者(Competitive Local Exchange Carrier:CLEC)の数は、都市部でBCEやテラスを含む既存地域通信事業者(Incumbent Local Exchange Carrier:ILEC)から市場シェアを奪う形で2016年以降増加傾向にあったが、2019年以降は減少傾向に転じている。

2 移動体通信

全国規模で事業を行う移動体通信事業者は3大事業者のベル・カナダ、テラス、ロジャースである。そのほかには、ケベコア(Quebecor)傘下のフリーダム・モバイル(Freedom Mobile)及びビデオトロンがサービスを提供している。

商用5Gサービスについては、ロジャースが2020年4月に、ベル・カナダとテラスが2020年6月に、ビデオトロンが2020年12月にそれぞれサービスを開始した。ロジャースはカナダ初の商用5G SAサービスを2022年3月に、同初の3500MHz帯商用5Gサービスを2022年6月に開始している。フリーダム・モバイルは、ケベコア傘下となった後の2023年7月に5Gサービスを開始した。

3 インターネット

世帯利用におけるインターネット接続方式はケーブルモデム接続が主流である。2023年現在、ケーブルモデム接続が約5割を占め、DSLは約1割で大きく減少傾向の一方、FTTxは約3割と比率が高まってきている。

2024年6月現在の事業者別市場シェアは、ベル・カナダがトップとなり、以下、ロジャース、テラス、ビデオトロンと続く。

Ⅵ 運営体等

1 ベル・カナダ・エンタープライズ(BCE)

Bell Canada Enterprises

Tel. +1 888 932 6666
URL https://www.bce.ca/
所在地

1 Carrefour Alexander Graham Bell Building A, 4th Floor

Verdun, Quebec H3E 3B3, CANADA

幹部 Milco Bibic(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

国内最大手の情報通信総合グループBCEは持株会社であり、通信事業部門のベル・カナダ(オンタリオ及びケベック州を中心に全国展開)、ベル・アライアント(Bell Aliant、大西洋沿岸部)、ベルMTS(Bell MTS、マニトバ州)、テレベック(Télébec、ケベック州)及びノーザンテル(NorthernTel、オンタリオ州)等を通じて、固定通信、移動体通信、衛星通信、インターネット等の事業を総合的に展開している。

BCEは2024年6月、同社が所有し、北部地域にてサービスを展開するノースウェステル(Northwestel)を、ユーコン準州、ノースウェスト準州及びヌナブト準州の先住民コミュニティのコンソーシアムであるシックスティ・ノース・ユニティ(Sixty North Unity)に10億CADで売却することで合意した。

2010年10月に国内最大の商業放送事業者CTV(現ベル・メディア(Bell Media))を買収し、自社衛星放送サービス「Bell Satellite TV」及びIPTVサービス「Bell Fibe TV」と併せてメディア部門の事業拡大を本格化させた結果、2023年現在、商業放送事業者ではBCEが最大手となっている。

2 テラス

TELUS

Tel. +1 604 432 2151
URL https://www.telus.com/
所在地 555 Robson Street, Vancouver, British Columbia, V6B 3K9, CANADA
幹部 Darren Entwistle(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

国内第2位の通信事業者であり、固定通信部門のテラス・コミュニケーションズ(TELUS Communications)や移動体通信部門のテラス・モビリティ(TELUS Mobility)等を通じて固定通信、移動体通信、インターネット、衛星及びIPTV等の事業をブリティッシュ・コロンビア州中心に全国で展開する。自社有料放送サービス「Telus Optik TV」等により、メディア部門の事業拡大を図っている。

3 ロジャース・コミュニケーションズ

Rogers Communications

Tel. +1 416 935 3532
URL https://www.rogers.com/
所在地 333 Bloor Street East, Toronto, Ontario M4W 1G9, CANADA
幹部 Tony Staffieri(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

移動体通信部門のロジャース・ワイヤレス(Rogers Wireless)、ケーブルテレビ・固定通信部門のロジャース・ケーブル(Rogers Cable)、メディア部門のロジャース・メディア(Rogers Media)を通じて、固定通信、移動体通信、ケーブルテレビ、インターネット等の事業を総合的に展開する競争的通信事業者であり、新規分野への参入も積極的に行っている。

ロジャースは2021年3月、ショウを約200億CADで買収すると発表した。電気通信市場第4位のショウを買収すれば、テラスを抜き、市場リーダーであるベル・カナダを急追することになるが、カナダ競争局は2022年5月、国内電気通信市場の競争減退につながるとして同買収の阻止を示唆。ロジャースは同年6月、第4の全国規模移動体通信事業者の維持を目的として、ショウが子会社として所有するフリーダム・モバイルを約29億CADで、競合相手のビデオトロンの親会社であるケベコアに売却するとしたが、当局との和解に至らなかった。競争審判所での公聴会が実施された結果、2023年4月、ロジャースはショウが提供するサブブランド・サービスの顧客に対して、5年間、従前のサービス料金と同等の料金で自社のサービスへ乗り換え可能にすることを条件として、当局から承認を受け、この条件の下でフリーダム・モバイルをケベコアに売却した。

4 フリーダム・モバイル

Freedom Mobile

Tel. +1 877 445 8606
URL https://www.freedommobile.ca/
所在地 1 Adelaide Street East Suite 1400 Toronto, Ontario M5C 2V9, CANADA
概要

2008年のAWS帯オークションを経て、翌年12月に移動体通信市場に参入したウィンド・モバイル(Wind Mobile)が前身である。ショウが2016年3月に同社を買収し、同年11月に名称をフリーダム・モバイルに変更すると同時に、トロントとバンクーバーで LTE 及び LTE-Advanced(LTE-A)サービスの提供を開始した。2023年4月にケベコアへ売却された。

5 その他の主な事業者

事業分野 事業者 URL
固定・移動体通信 Bell MTS https://www.bellmts.ca/
サスクテル https://www.sasktel.com/
ケーブル等 ビデオトロン https://www.videotron.com/
コゲコ・コミュニケーションズ https://www.cogeco.ca/
ショウ・コミュニケーションズ https://www.shaw.ca/

放送

Ⅰ 監督機関等

1 イノベーション・科学・経済開発省(ISED)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

放送用周波数管理等を所掌する。

2 カナダ民族遺産省

Canadian Heritage

Tel. +1 819 997 0055
URL https://www.canada.ca/en/canadian-heritage.html
所在地 15 Eddy Street, Gatineau, Quebec J8X 4B3, CANADA
幹部 Pascale St-Onge(大臣/Minister)
所掌事務

文化的アイデンティティ、多文化主義、言語、スポーツの普及等に関する政策官庁である。放送分野においては、関連政策の立案や国内コンテンツ産業の支援等を所掌している。

3 カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

放送分野においては主に以下の事項を所掌している。

Ⅱ 法令

1991年放送法(Broadcasting Act of 1991

第1章「総則」、第2章「放送に関するCRTCの目的及び権限」、第3章「カナダ放送協会」等から構成される。同法は、放送に関する基本原則、カナダ放送協会(CBC/Radio-Canada:CBC)の組織、役割、商業放送事業者等について規定していた「1968年放送法(Broadcasting Act of 1968)」を改正したもので、「1968年放送法」と比較すると、内閣のCRTCに対する監督権限が強化されている。

2023年4月、放送法を改正する「C-11法案(通称オンライン・ストリーミング法)」が成立した。同改正は「1991年放送法」を近代化するもので、動画配信事業者に対して、既存放送事業者と同様の規制を負わせ、CRTCの規制監督下に置くことを明記、国内外のどちらに拠点を置いているかにかかわらず、動画配信事業者はカナディアン・コンテンツの制作・配信・表示に貢献し、あらゆる動画配信制御システムにおいてカナディアン・コンテンツを発見可能とする結果が表示されるよう保障しなければならない。CRTCは2024年3月、放送法改正を受けて新たな「放送料金規則」を決定し、同年4月に発効した。これにより「1997年放送ライセンス料規則」が廃止され、単一の放送事業者は200万CADまで、複数の放送事業者を所有する持株会社は2,500万CADまでの収益に対して、免税基準額が設けられた。また、CRTCは2024年6月、オンライン・ストリーミング法に基づき、国内で操業する主要ストリーミング・サービスに対して、国内地上放送支援を目的に、カナダにおける収益のうち5%を拠出することを義務付けると決定した。同決定は、2024年9月に発効し、カナダの地上放送事業者と提携していないサービスに適用される。

CRTCは、1985年に制定されたCRTC法(最終改正は2023年12月)、1991年に制定された放送法(最終改正は2023年6月)、2010年に制定されたCRTC規則(最終改正は2021年4月)、及び電気通信法によってその権限を与えられている。CRTCの管轄区域には以下が含まれる。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「1991年放送法」において放送免許取得事業者に課される義務が規定されている。CRTCが、ラジオ、テレビ、放送配信サービス(ケーブルテレビ及び衛星放送が該当)、ニューメディア放送(VODサービス等が該当)の各サービスに対し個別規定を設け、免許条件やコンテンツ制作基準等を規定する。

「1991年放送法」は「カナダの放送システムの所有者及び管理者はカナダ国籍でなければならない」とも規定しており、これが外資規制の根拠となっている。直接投資は20%(間接投資を含めて46.7%)まで、間接投資は33.33%までとされている。所有規制についてはCRTCが決定しており、1企業が同時に所有できるメディア事業者の数はテレビ放送事業者、ラジオ放送事業者、新聞社のうち最大二つまでで、1社で英語圏あるいはフランス語圏の視聴者占有率の45%を超えてはならない。

2 コンテンツ規制

文化保護政策の一環である「カナディアン・コンテンツ規制(Canadian Content Requirements for Radio and Television)」により、番組編成における国内制作番組の比率が定められている。カナディアン・コンテンツには、プロデューサーがカナダ人であること、制作コストの75%以上がカナダ人に支払われていること等の条件を満たした番組が該当する。商業放送事業者は1日の放送時間を通して平均60%以上(午後6時から12時までは50%でも可能)、CBCは時間帯を問わず60%以上を国内制作番組で編成することが義務付けられている。ラジオ放送では、一部の例外を除いて番組内容の35%以上をカナディアン・コンテンツにすることが定められている。

3 オンライン・プラットフォーム規制

2023年6月、「C-18法案(オンライン・ニュース法)」が成立した。同法は、オンライン・プラットフォームの運営企業に対し、報道機関のコンテンツ使用にかかる利用料の交渉等を義務付けるものである。政府は2023年12月、「オンライン・ニュース法の適用及び免除規則」を発効し、①暦年における全世界売上高が10億CAD以上、②検索エンジンまたはソーシャル・メディア市場での事業展開、カナダにおける平均月間ユニーク・ビジター数または平均月間アクティブ・ユーザ数が2,000万人以上という三つの基準をすべて満たす場合に同法を適用するとした。

4 地上デジタル放送

2011年8月31日に商業テレビ放送の大半が地上デジタル放送に移行した。公共放送のCBCは財政的な理由により一部地域での移行が期日内に困難であったため、2012年7月31日まで期限が延長された後、移行した。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

CRTCによると、2023年時点で、総計1,117系統でラジオ放送が実施されており、そのうち857系統が英語放送、218系統がフランス語放送、39系統がその他の言語での放送である。また、公共放送CBCは91系統、商業局はAMが120系統、FMが615系統、宗教局が36系統、コミュニティ局が129系統、キャンパス局が49系統、先住民向けの放送が54系統ある。

2 テレビ

2023年時点で、地上テレビ放送はCBCの27系統と商業放送の94系統のほか、宗教6系統と教育6系統で実施されており、そのうち全国放送は公共放送のCBCと商業放送のCTVが実施している。CBCは英語とフランス語の全国ネットワークを運用しているが、各ネットワークにはCBC直営局のほか、一部の商業放送事業者も加盟している。

このほか、フランス語圏のケベック州をサービス地域とするフランス語放送のTVA等に代表される地域放送事業者があるほか、どのネットワークにも属さない独立系商業放送事業者や州交付金で運営される州営放送事業者がある。

3 衛星放送

衛星放送は、ロジャースによるShaw DirectとBCEによるBell Satellite TVが、カナダのケーブルテレビ番組を中心に米国の番組を加えた内容でサービスを提供している。

4 ケーブルテレビ

2023年時点で、国内のケーブルテレビ加入者数は約216万、IPTVの加入者数は約606万、衛星放送の加入者数は約118万である。

Ⅴ 運営体

1 カナダ放送協会(CBC)

CBC/Radio-Canada

Tel. +1 613 288 6000
URL https://www.cbc.radio-canada.ca/
所在地 181 Queen Street. Ottawa, Ontario, K1P 1K9, CANADA
幹部 Marie-Philippe Bouchard(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

1936年に設立された公共放送事業者である。「1991年放送法」の規定に基づいて運営され、二つの全国テレビ・ネットワークと四つの全国ラジオ・ネットワークを運用している。言語は英語とフランス語のほかに、先住民向けに地域言語が用いられる。ラジオはAMとFMで英語放送及びフランス語放送を行っているほか、国際放送の「ラジオ・カナダ・インターナショナル(Radio Canada International:RCI)」、インターネット・ラジオ、移動端末向けの文字放送も行っている。2018年12月にストリーミング・サービス「CBC Gem」の提供を開始、無料の会員登録を行えば視聴可能だが、月額5.99CADを支払うとオンデマンド番組を広告なしで視聴できる。

2 CTV Television Network(CTV)

Tel. +1 416 384 5000
URL https://www.ctv.ca/
所在地 299 Queen St. West, Toronto, Ontario M5V 2Z5, CANADA
幹部 Sean Cohan (社長/President)
概要

CTVは、2011年4月に国内最大の通信事業者であるBCE(通信/Ⅵ-1の項参照)による完全買収が完了したことに伴い、BCE傘下のBell Mediaの1部門となった。国内最大の商業テレビ・ネットワーク(英語放送)を展開している。20以上の加盟系列局や衛星放送局等で全国ネットワークを構成しており、英語圏世帯の99%をカバーしている。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)イノベーション・科学・経済開発省(ISED)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

電波監理は戦略政策局(Strategic Policy Sector)の通信政策部及び周波数・情報技術・電気通信局(Spectrum, Information Technologies and Telecommunica­tions Sector:SITT)が所掌する。

電波政策に関する諮問機関としてカナダ無線アドバイサリ・ボード(Radio Advisory Board of Canada:RABC)がある。RABCはカナダの製造、事業、放送等の無線通信関連の業界団体及び警察等の公共団体が加盟する機関である。周波数の利用と規制に関して、公平かつ専門的なアドバイスをISEDに対して行う。

(2)カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2 標準化機関

ICT標準化諮問委員会(ISACC)

Information and Communications Technology Standards Advisory Council of Canada

概要

ISACCは、国内及び国外のICT分野における標準規格の開発、実装及び促進に関して政府に助言を行う。ISACCの会員には、国内のICT分野における標準開発機関、関連業界団体、企業の代表者、消費者団体、政府関係者が含まれる。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

ISEDは、周波数割当方法として、先願方式(First-Come, First Served:FCFS)のほか、電波ニーズの状況に応じて、比較審査あるいはオークション方式を採用している。放送免許はCRTCの管轄であるが、放送用の周波数割当についてはISEDが許可する。

1996年の「無線通信法」改正によって、地域と周波数帯(または複数の周波数)のみを規定する周波数免許(Spectrum License)が導入されている。通常の無線局免許は特定の無線機及びアンテナを持つ局に与えられるのに対して、周波数免許では免許人が免許後に許容された範囲で設備等の変更が可能である。また、オークションで落札された周波数免許の場合には、その全部あるいは一部を第三者に譲渡することができる。FCFSで得た場合にはISED大臣の認可のある場合、譲渡が可能である。なお、通常の無線局免許は毎年更新する必要があるが、周波数免許の場合には10年を基本的な免許期間とする。

2023年8月に2023年から2027年までの計画を示した「周波数アウトルック(Spectrum Outlook 2023 to 2027)」を公表し、2018年の際に公表された計画から、以下の周波数帯が追加されている。

2 周波数再編

(1)3500MHz帯

ISEDはCOVID-19の影響を受けて1年以上遅れていた3500MHz帯オークションを2021年6月に実施した。割当計画では、200MHz(3450-3650MHz)の帯域幅を10MHz TDDブロックとして20分割し、172の免許地域ごとに割り当てた(計3,440免許)。21事業者が計3,431件を落札し、総額は約89億1,200万CADとなっている。

5G向けとなる3800MHz帯(3650-4200MHz)のオークションについては、2023年8月に計画され、最終的に決定された22社のリストが公開された。オークションは同年10月24日から11月24日にかけて実施されている。

ISEDは2023年5月、3900MHz帯(3900-3980MHz)及び26GHz、28GHz、38GHz帯の一部に対する非競争的ローカル免許付与の枠組みを決定した。免許付与については、2024年末までに自動免許付与システムが利用可能になる。

(2)6GHz帯

ISEDは2021年5月、Wi-Fiに利用できる周波数帯の拡大を目的として、固定業務及び固定衛星業務に割り当てられていた6GHz帯(5925-7125MHz)の開放を決定した。この決定により、基準を満たすリモート・ローカルエリア・ネットワークであれば免許不要で6GHz帯の利用が可能となった。

(3)ミリ波帯

ISEDは2017年6月、5Gの整備を支援するため、28GHz帯(27.5-28.35GHz)、37-40GHz、及び64-71GHz(免許不要利用)のミリ波帯の開放に関するコンサルテーションを開始した。ISEDは、2018年6月より追加での協議を行い、2019年6月にその結果を公表した。2022年6月には、26GHz帯、28GHz帯及び38GHz帯域にかかるコンサルテーションを実施している。

Ⅲ 周波数分配状況