中華人民共和国(People’s Republic of China)

通信

Ⅰ 監督機関等

工業・情報化部(工業和信息化部)(MIIT)

Ministry of Industry and Information Technology

Tel. +86 10 6601 4249
URL https://www.miit.gov.cn/
所在地 北京市西長安街13号、100804、中国
幹部 Jin Zhuanglong(金壮龍)(部長:日本の大臣級/Minister)
所掌事務

2008年3月に開催された第11期全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)において、中国における第6回目の行政機構改革が行われた。その一環として、工業・情報化部(MIIT)が、工業化と情報化の融合を加速させることを目的に設立された。同部は、電気通信分野における政策立案と規制監督のほか、工業部門全体の発展計画や産業政策の策定、及びその実施・監督管理を所掌する。

Ⅱ 法令

1 電信条例(2000年国務院令。同年9月25日施行。2014年8月、2016年6月改正)

電気通信事業に関する包括的な法令である。同条例においては、電気通信事業の許可、外資規制、相互接続、電気通信料金規制、電気通信資源(周波数、電話番号)、電気通信サービスに関する事業者の順守事項、電気通信基盤の敷設に関する各種規制、及び国家安全保障に関する事業者の順守事項等が規定されている。

また、同条例の総則は、MIITが全国の電気通信事業者に対する監督・管理を所掌し、省・直轄市・自治区の電気通信管理部門は、MIITの指導及び同条例の規定に従って、当該区域における電気通信事業者の監督を行うと規定している。

なお、電信条例は我が国の政令に相当するものであり、法律に相当する「電信法」については、全人代常務委員会の公表した「2022年度立法計画」に盛り込まれていたが、制定には至っていない。

2 無線電管理条例(1993年国務院・中央軍事委員会令。2016年11月改正、同年12月1日施行)

同条例は、全9章(85条)によって構成されている。同条例の後に制定された「電信条例」にある特別の定めを規定するものと位置付けられ、条例の目的(空中電波秩序の維持、周波数資源の有効利用、無線業務の正常な進行)、国の周波数使用管理に当たっての原則(統一的計画、合理的開発、有償使用)、国及び省・直轄市・自治区の周波数の主管部門の主な職責内容(軍事系統の無線管理業務については人民解放軍無線管理機構が行うこととされている)、基地局の設置及び使用(免許手続含む)、周波数の管理、無線設備の研究開発・生産・販売・輸入、同条例の規定に反した場合の具体的な処罰について規定している。なお、周波数資源が国家所有物であることは、同条例第4条及び「民法典」第252条において規定されている。

3 サイバーセキュリティ法(2016年中華人民共和国主席令第53号。2017年6月1日施行)

同法は7章(79条)から構成されており、サイバー空間主権の原則、ネットワーク製品及びサービス・プロバイダの安全義務、ネットワーク運営者の安全義務、個人情報保護規則、重要情報インフラの安全保護制度、重要情報インフラによる重要データの国際伝送の規則、サイバーセキュリティの監視・事前警告・緊急処置制度等について規定している。

なお、2021年に施行された「中華人民共和国データセキュリティ法」「中華人民共和国個人情報保護法」等の法律との整合性を図る目的で、同法改正の意見募集稿が進められている。

4 データセキュリティ法(2021年中華人民共和国主席令第84号。2021年9月1日施行)

2021年6月に全人代常務委員会により可決された本法は、国が、集中的・統一的かつ効果的で権威あるデータセキュリティのリスク評価、報告、情報共有、監視・早期警戒体制を構築することを明確にした。また、同法はデータ処理活動及びそのセキュリティの管理監督を実施する組織と個人の義務と責任を明確にし、データセキュリティの保護と発展を支援する措置及び行政が保有するデータのセキュリティを保障し、それらの開放を促進する制度措置を規定している。

5 個人情報保護法(2021年中華人民共和国主席令第91号。2021年11月1日施行)

2021年8月に全人代常務委員会により可決された本法は、8章74条からなっており、個人情報とは、電子的又は他の方法で記録された対象者を特定又は特定可能なあらゆる情報であり、匿名化された情報は含まれないとし、個人情報の処理には、収集、保存、使用、加工、転送、(第三者への)提供、公開、削除が含まれる。

企業による個人情報の取得・処理に際して、個人からの同意取得が原則で、国外へのデータの持出しに関する情報保護のガイドラインも規定しており、違反すれば最高5,000万元、又は前年の売上高の最大5%の罰金を科すとしている。

6 電気通信ネットワーク詐欺禁止法(2022年中華人民共和国主席令第119号。2022年12月1日施行)

7章50条から成る同法律には、総則、電気通信ガバナンス、金融ガバナンス、インターネット・ガバナンス、総合対策、法的責任、付則等が含まれている。電気通信事業者によるユーザの実名登録制度の徹底を求め、電話カードの購入枚数は国の関連規定の制限を超えてはならないと規定し、異常なカード発行状況が認識された場合、電気通信事業者は照合を強化したり、カードの発行を拒否したりする権利があると明示した。

法的責任について、電気通信事業者やインターネット・サービス事業者らの違法行為による行政責任のほか、被害者の損失に対して相応の民事責任を負わなければならないとも規定されている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)免許経営許可の制度枠組

「電信条例」(Ⅱ-1の項参照)第2章では、電気通信サービスを基礎電信業務(基本電気通信サービス)及び付加価値電信業務(付加価値電気通信サービス)に分類し、電気通信サービスの提供条件を定めている。基礎電信業務とは、公共通信基盤を建設して公共データ通信、基本音声通信サービスを提供する業務を指し、付加価値電信業務とは、公共通信基盤を利用して提供する電気通信・情報サービスの業務を指す。

電気通信サービスの提供には、MIITの許可によって発行される「基礎電信業務経営許可証」「多地域における付加価値電信業務経営許可証」が必要である。また、営業地域が一つの省・直轄市・自治区内だけの場合、各省・直轄市・自治区レベルの電気通信管理部門によって発行される「付加価値電信業務経営許可証」が必要である。

(2)外資規制

電気通信分野での外資に関連する規定は「電信条例」(Ⅱ-1の項参照)のほか、複数の公文書が存在する。以下、参入条件、投資先等に関する主なものを列挙する。

①「電信条例」(国務院令)(2000年9月25日施行)

第79条(雑則)で、外国の組織又は個人が国内において投資して電気通信業務を経営し、及び香港特別区、マカオ特別区又は台湾地区の組織又は個人が内地において投資して電気通信業務を経営する具体的方法は、国務院が別にこれを制定すると定められている。

②「外商投資電信企業管理規定」(国務院令)(2002年1月1日施行/2008年9月、2016年6月、2022年3月改正)

「外商投資電信企業管理規定」は「電信条例」第79条の規定に基づき制定されており、全17条で構成されている。加えて、2017年9月1日より施行開始となった「電信業務経営許可証管理弁法」(旧弁法が同時廃止)により、参入形態を合弁会社設立とし、最低資本金の制限、最長180日という審査期間が定められた。

外資出資比率の上限とサービス提供地域についての制限が、WTO加盟後、段階的に撤廃されることが決定されており、外資出資比率については(国による別段の規定がある場合を除く)、付加価値電信業務(電子商取引を除く)の場合は50%以下、基礎電信業務とされる移動体通信業務と市内・長距離・国際通信・再販業務の場合は中国側の持分支配とすると定められている。また、営業地域が全国又は複数の省・直轄市・自治区にまたがる基礎電信業務を提供する電気通信事業者の最低資本金額は10億元、付加価値電信業務を提供する電気通信事業者の最低資本金額は1,000万元とされる。

一方、営業地域が一つの省・直轄市・自治区内だけの場合の各事業者の最低資本金額は、基礎電信業務を提供する電気通信事業者が1億元、付加価値電信業務を提供する電気通信事業者が100万元とされる。

また、投資者要件として、以下のような規定も定めている。基礎電信業務を提供する電気通信事業者に出資する国外の主要株主は、自国で基礎電信業務分野の良好な実績と経験がある企業であり、経営活動の従事に適当な資金・人員を有する等の条件を満たさなければならない。また付加価値電信業務を提供する電気通信事業者の国外の主要株主は、自国の付加価値電信業務分野での実績と経験が必要である。

③「インターネット情報サービス管理弁法」(国務院令。2000年9月25日施行)

第17条で、営利目的のインターネット情報サービス提供者は、国内外で株式を上場するか、又は外国投資者と合弁、提携を行う場合、事前に情報産業主管部門より審査を受け、承認を得なければならないと定められている。また、外国投資者の投資比率は関係する法律、行政法規の規定に合致しなければならないとしている。

④「外商投資奨励産業目録(2022年版)」(国家発展・改革委員会、商務部令。2023年1月1日施行)

同目録は、「全国奨励外商投資産業目録」と「中西部地区外商投資優勢産業目録」(中西部目録)の二つから構成されており、2020年版を改正したものとなっている。全国範囲における情報通信サービス関連では、238項目を増加し、114項目を修正し、38条を削除した。そのうち、ネットワークやデータに関連する項目として、重要なソフトウェア・設備間の接続及びデータ交換技術等の開発・研究、スマート健康養老製品の研究・製造、スマートスポーツ製品・サービスの開発・普及、自動運転に関するAIカメラ、スマート農業、農村電子商取引等が追記されている。

2 競争促進政策

(1)接続規制
①「電信条例」の関連規定

「電信条例」(Ⅱ-1の項参照)第17条から第22条は、「技術的に実現可能、経済的に合理的、公平公正、相互協力」を原則として相互接続を実現することとし、相互接続協議、情報通信主管部門による調整等について規定している。

第17条において、「主導的電信事業者」はその他の電信事業者と専用線事業者による相互接続要求を拒絶してはならないとされている。「主導的電信事業者」とは、必要な基礎電信施設を占有し、かつ通信市場で比較的大きなシェアを占め、その他の電信事業者の通信市場への参入に対して実質的な影響のある事業者を指しており、これに該当する事業者の相互接続は義務化されている。

また、第18条では、主導的電信事業者が相互接続を実施するに当たっては、非差別と透明化の原則に基づいて、ネットワーク間の相互接続の手順や期限、アンバンドル・ネットワーク要素リスト等の内容を含めた相互接続約款を制定し、この相互接続約款は主導的電信事業者の相互接続活動に拘束力を持つものとされている。

②公共通信網の「相互接続管理規定」(2001年旧情報産業部令。同年5月施行。2014年9月改正)

「電信条例」に基づき、国益と電気通信利用者の合法的権益を守ると同時に、電気通信事業者間の公正で効果的な競争を推進し、公共通信網間の合理的な相互接続を保証することを目的として具体的な手続が定められている。同規定は全9章49条で構成され、電気通信事業者間の相互接続義務、設備導入と費用の分担・算定、相互接続関連規約、相互接続の期限と監督・管理等を規定している。主な規定は以下のとおりである。

③「公衆電話網の網間精算基準見直しに関する通知」

2014年1月にMIITが公表したもので、具体的には、異なる通信事業者間のSMSについて、発信側の通信事業者が着信側の通信事業者に支払う精算料金を1通当たり0.03元から0.01元に、MMSの場合は、0.1元から0.05元に引き下げるとしている。

また、中国聯通・中国電信のモバイル・ユーザが中国移動のモバイル・ユーザ(TD-SCDMA専用の頭番号157及び188を除く)へ発信する場合に支払う精算料金を1分当たり0.06元から0.04元に引き下げることとしているが、中国移動のモバイル・ユーザが中国聯通・中国電信のモバイル・ユーザへ発信する場合及び中国聯通・中国電信間の場合は、0.06元を維持するとしている。

加えて、TD-SCDMA専用頭番号157・188の中国移動ユーザについては、MIITが2009年に発出した「TD-SCDMAネットワーク間料金精算に関する通知」の執行を継続し、中国聯通・中国電信のモバイル・ユーザが当該ユーザに発信する場合は1分当たり0.06元を中国移動に支払うとし、その逆に発信する場合は1分当たり0.012元を支払うとしている。

(2)電気通信分野への民間投資規制を緩和へ

MIITは2014年12月に、「ブロードバンド・アクセス網市場の民間資本への開放に関する通告」を公表し、民営企業によるブロードバンド・アクセス・サービスの提供を許可した。2020年9月現在、全国の28省・直轄市・自治区にある228の都市において試行サービスが提供されており、計280の企業によるサービスの利用者数は800万を超えている。

2020年9月、MIITは公安部、住宅・都市農村建設部、国務院国有資産監督管理委員会、国家市場監督管理総局と連名で、2020年10月から2021年6月にかけて、商業ビルのブロードバンド接続市場の取締りを実施する通達を公表した。取り締まる対象となるのは、商業ビル内のブロードバンド接続業務における排他的な行為や価格違法行為、新築物件における国家標準に従わない行為を対象とした10項目に及ぶ。

一方のMVNOについて、2018年4月、MIITは「MVNO正式商用化に関する通告」を発表し、これまで実施してきたMVNO業務の試行を正式に商用化へと切り替えた。試行企業の退出、ユーザ約款、通信情報詐欺の防止と取締り、実名登録、スパムSMSの管理、電話番号資源、卸価格等の政策保障、ユーザの合法的な権益、ネットワークと情報セキュリティ等の管理監督の要求について規定し、また新たに外資企業による申請も可能とした。これにより、同年5月1日よりMVNOが正式に商用開始した(Ⅴ-2(3)の項参照)。

更に2022年11月、国家発展改革委員会(National Development and Reform Commission:NDRC)は「政策環境の更なる整備と民間投資の発展支援の強化に関する意見」を発表し、民間投資の発展を大いに支援するとした。意見では、5G応用や、データセンター、工業インターネット、工業ソフトウェア等の新型インフラと関連分野への投資、建設、運用への民間資本の参加を奨励すると明記した。

(3)混合所有制改革の取組み

国有企業改革の一環として、国有資本だけでなく非国有資本(民間や外資、従業員による出資等)も受け入れる「混合所有制企業」(mixed-ownership enterprise)が行われている。

中国聯通の場合、2017年11月に9社に対して合計90億3,735万株の割当増資が行われた。具体的には、中国人寿保険(China Life)が10.55%、騰訊(Tencent)が5.33%、百度(Baidu)が3.39%、京東(JD.com)が2.42%、阿里巴巴(Alibaba)が2.09%、蘇寧が1.94%、淮海方舟が1.94%、光啓互聯が1.94%、興全基金が0.34%をそれぞれ保有する。また、同時期に持株会社の中国聯通集団は結構調整基金(中国国有企業結構調整基金股份有限公司)に18億9,976万株の株式を引き渡した。2018年末現在、中国聯通集団が保有する中国聯通の株式の割合は62.74%から37.70%に下落するが、依然として筆頭株主である。

一方、中国電信の場合、傘下の中国通信サービス(通信ネットワークの構築及び保守作業の下請会社)が民営企業の伝化集団と合弁会社を設立し、物流情報化プラットフォームを構築したほか、翼支付(電子決済サービス業)が海母基金、中信建投、東興証券及び中広核資本の4社から投資資金を受け入れ、混合所有制改革を進めている。

(4)自由貿易試験区における付加価値電信業務の規制緩和

国務院は2013年9月、「中国(上海)自由貿易試験区全体方案」を発出し、試験区における付加価値電信業務の経営やゲーム機器の製造・販売関連の措置導入を発表した。続いて、MIIT及び上海市人民政府は2014年1月、「中国(上海)自由貿易試験区での付加価値電信業務の対外開放を更に進める意見」を共同で公表した。主な内容は下記のとおりである。

また、2015年5月に、MIITは、①コールセンター業務の範囲を試験区から上海市全域に拡大する、②国内インターネットVPN業務は、エッジルータの設置範囲を試験区から上海市全域に拡大する、③ウェブサイトの加速サーバは、中国全土で設置することを可能とする等、一層の緩和を図った。

2020年9月現在、上海市のほか、天津市、広東省、福建省、遼寧省、浙江省、河南省、湖北省、重慶市、四川省、陝西省、海南省、黒竜江省、江蘇省等に計21の該当区域を設けた。

(5)移動電話番号ポータビリティ(MNP)

MIITは2019年11月、同年12月1日より施行開始する「MNPサービス管理規定」を公布した。サービス提供に当たっての基本原則、適用地域と局番の範囲、九つの禁止行為等を明確にした。現段階において当該サービスにはモノのインターネット(IoT)のユーザ番号、衛星通信のユーザ番号及び移動体通信転売業者から取得したユーザ番号は含まれない。

上記の管理規定の交付を受けた主要通信事業者3社は、同年11月14日に、「MNPサービス実施細則」を公表した。サービスを利用する際の申請条件や手続の流れ等に関する細部の規定を明記した。

2019年9月19日以降、主要通信事業者3社がこれまで5地域(天津市、海南省、江西省、湖北省及び雲南省)で実施してきたMNPの試験運用を正式なサービスに切り替えた。同11月27日より、他の26省(直轄市・自治区)を含む全国でのサービスが開始され、2022年3月現在、3社によるサービスの利用者数は5,700万を超えた。

(6)料金規制

小売料金については、2014年1月28日に、「行政審査の廃止及び下部委譲に関する国務院の決定(国発[2014]5号)」が公表され、各種サービスの価格設定は市場原理に委ねられることになった。

また、MIITは2016年1月に「MVNOの卸価格調整に関する指導意見」を公表した。この中では、MVNO事業者に対する主要3通信事業者からの卸価格について、主要3通信事業者のエンドユーザへの平均サービス価格(又はパッケージ価格)より低く設定し、かつ、連動するべきであること、また、電気通信市場の発展に合わせ、原則として年に1回卸価格を調整すること等が明記された。他方、2018年4月にMIITの発表した「MVNO正式商用化に関する通告」においては、主要3通信事業者がMVNO事業者へ提供する卸価格は、主要3通信事業者の同種類業務の平均業務単価(又は料金プラン価格)より低く設定すべきとするとともに、双方が、市場状況及び契約の約定に基づき、随時、卸価格を見直すことを奨励する旨明確に規定している。

(7)電気通信基盤の共同構築・共同利用の推進

主要3通信事業者による基盤の共有化率を高める目的で、2014年7月に基地局の建設・運営主体となる新会社「中国通信施設サービス」(2014年9月に「中国鉄塔」に社名変更)が設立された。同社は2016年1月に、3通信事業者から計2,034億8,000万元の既存基地局関連の財産及び新たな株主として中国国新ホールディングス(以下、中国国新)からの出資を受け入れた。その後、中国鉄塔は2018年8月8日、香港証券取引所に上場した(Ⅵ-1(5)の項参照)。

2019年には、5G網の構築を加速させる目的で、MIITと国有資産監督管理委員会は「2019年通信インフラ共同構築・共同利用の推進に関する実施意見」を共同で発表し、通信インフラの共同構築・利用の加速化を関係者に求めた(電波/Ⅱ-3(2)の項参照)。サービスの早期展開につながる5G網の整備を加速させるためである。その一役を担うのは中国鉄塔である。

このほか、5G網の建設コストを低減させる目的で、中国聯通と中国電信は「5G網の共同建設・共同利用に関する基本協業合意書」を締結し、全国に敷設する3.5GHzの200MHz幅の5G周波数帯域(3400-3600MHz)を共同で構築・運用するとした。

2020年5月に中国移動と中国広電は700MHz帯5G網の建設・運用で協力協定を締結した。双方は折半出資により700MHz帯の5G網を共同で建設・運用する。700MHz帯の整備が進むまでは、中国移動が2.6GHz帯を中国広電に開放すると同時に、中国広電が中国移動の既存ネットワークを有償で使用かつユーザに向けサービス提供も可能となる。また、中国移動が700MHz帯の保守作業を有償で担当する。

これに続いて2021年9月、両社は5G共同建設に関する補充契約を締結した。中国移動が700MHz帯5G網の建設費用を全額負担するが、使用権は双方にあるとし、中国広電が中国移動に使用料を支払う契約となっている。また、条件が整った時点で、中国広電は中国移動から同ネットワークの設備資産の50%を購入することができる。

3 情報通信基盤整備政策

(1)デジタル・ディバイド解消

第12次5か年規画より、「村村通電話」プロジェクトにおける行政村のブロードバンド整備に関する目標が加えられた。実行に当たって、MIITは2015年12月に「電気通信ユニバーサル・サービス試行作業に関する通知」を公表し、主な原則として市場原理を導入し、公開入札を通じてユニバーサル・サービスの請負企業を確定するとともに、民間資本へのブロードバンド開放や三網融合等の政策を合わせて民間資本と放送企業が公平に競争へ参画することを奨励し、各種企業が電気通信ユニバーサル・サービスに関与する積極性を引き出すとした。

また2018年12月に、財政部とMIITは連名で改正「電気通信ユニバーサル・サービス補助金管理試行弁法」を発表、補助金の支援範囲、管理、申請、使用、管理監督等について明確に規定した。それによると、電気通信ユニバーサル・サービス補助金(以下、補助金)は、国の予算から拠出、電気通信ユニバーサル・サービス作業支援に用いる(農村、辺境地域における光ファイバ、4G等のブロードバンド網の構築・運行・保守に係る補助金を含む)。

2021年11月MIITによって公表された2022年度ユニバーサル・サービス対象地域及び基地局の設置数では、吉林省は4地域、江西省は7地域、湖北省は3地域、湖南省は17地域、広西省は14地域、重慶市は11地域、四川省は9地域、貴州省は6地域、雲南省は2地域、青海省は5地域、寧夏自治区は5地域、新疆ウイグル自治区は3地域が含まれており、計1,029の5G基地局の構築が対象となっている。また、4G基地局について、全国17省・直轄市・自治区にある152地域の計6,981か所が対象となっている。

他方、インフラの整備が進むのにつれ、利活用の促進も注力されるようになった。2021年7月に、MIITや科学技術部等七つの政府部門が共同で発表した「デジタル農村建設ガイドライン1.0」では、デジタル農村建設の全体的な枠組みが示された。インフラ構築関連では、電気通信網のほか、テレビ放送網の構築も含まれている。そのため、基礎通信事業者及び放送系事業者が主体となり、国の関連規定に従い、都市部と同程度のユニバーサル・サービス及びラジオ・テレビの基本サービスを提供しなければならないと明記された。また、農村部におけるスマート応急管理や、オンライン教育、「インターネット+医療健康」といった関連の取組みのあり方も示された。

続く2022年8月、MIITは「情報消費による農村振興」活動を開始した。デジタル経済と農村振興の深い融合を加速させる目的で、情報消費+農村振興のモデル・プロジェクトを選出し、農村地域におけるデジタル人材の育成を強化し、農村振興建設への通信事業者やネット事業者による積極的な取組みを推進する。

(2)国家ブロードバンド政策

2013年以降進められてきた「ブロードバンド中国」戦略による各地でのブロードバンド網の整備が進んできたことを受け、MIITは2021年3月に「ダブル・ギガビット網の共同発展行動計画(2021~2023年)」を公表した。ダブル・ギガビット網とは光ファイバ網と5G網の二つを意味する。主な目標では、2021年末までに、ギガビット級光ファイバ及び10G-PON以上のシステムによるカバー世帯数をそれぞれ、2億及び500万以上に増やし、ギガビット級光ファイバ網への加入世帯数の1,000万突破を目指す。5Gでは、県レベル以上の行政エリアをすべてカバーし、基地局の新設数を60万か所以上とする。2023年末までには、ギガビット級光ファイバ及び10G-PON以上のシステムによるカバー世帯数をそれぞれ、4億及び1,000万以上に増やし、ギガビット級光ファイバ網への加入世帯数の3,000万突破を目指す。5Gは郷・鎮レベルの行政単位を基本的にすべてカバーする。

また2021年7月に教育部、MIIT等六つの政府機関が共同で公文書(教科信[2021]第2号)を公表し、5G、人工知能(AI)、ビッグデータ、クラウド・コンピューティング、ブロックチェーンといった技術を通じての教育分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進する方針を示した。目標では、2025年までに、5G、ギガバイト級の無線LAN等による学校キャンパスのフルカバーを実現するとしている。また、衛星放送や、固定ブロードバンド、衛星ブロードバンドによる遠隔地にある農村の教育資源を強化する。

2022年1月には、MIITとNDRCは共同で「中小都市におけるクラウドとネットワークの融合促進と情報インフラ構築の加速に関する通知」を発表した。主に都市部の常住人口が100万人以下の中小都市(地方都市、県、大規模鎮を含む)を対象に、クラウド・インフラの強化を実施し、中小都市のインフラ整備に伴うサービス能力の向上及びアプリケーションの最適化を推進する。2025年までに、東部地域と中西部及び東北の大部分の地域で、中小都市をカバーするクラウドとネットワーク構築を概ね完成し、「1,000都市1,000メガビット」と「1,000都市1,000収容」の実現、すなわち1,000を超える中小都市について、ギガビットのアクセス容量とクラウド・リソース収容でカバーする目標が掲げられている。

2022年5月、中国共産党中央弁公室と国務院は共同で「県地域を中心とした都市化建設の推進に関する意見」を公布した。新型インフラ((6)の項参照)を建設し、スマート県の発展を推進する方針を改めて強調した。そのために、5G網の整備を推進し、高速光ファイバ・ブロードバンド網を建設する。またIoTの利活用、スマート・メーター等端末の導入等による管理のインテリジェント化を図り、学校、病院、図書館等公共資源のデジタル化の促進にもつなげる。文化スポーツ施設の最適化関連では、スマート放送プラットフォーム及び融合型メディアセンターを発展させ、緊急放送システムを完備させるとした。

(3)次世代インターネットの発展促進

IPv6に対応したネットワークの構築促進に向け、これまで国務院、MIIT等政府機関によって複数回にわたり関連した促進政策が打ち出されてきた。MIITは2021年7月、IPv6トラヒック比率の引上げに関する3年(2021~2023年)計画を公表した。目標では、2023年末までに、モバイル・インターネットのIPv6トラヒックの比率を50%以上、固定網の同値を2020年末の3倍以上に引き上げ、国内ランキングトップ100のアプリケーションによるトラヒックのうち、IPv6対応の平均水準を70%以上に、IPv6アドレス取得済みの固定端末の比率を80%超に引き上げるとしている。

また、2021年7月にMIIT及びNDRC等共同で「IPv6の大規模展開及び応用作業の推進加速に関する通知」を公布し、2025年末までに、トップレベルのIPv6技術、産業、設備、応用及びセキュリティ・システムを全面的に構築し、IPv6のアクティブ・ユーザ数を8億まで、IoTでのIPv6接続数を4億まで上昇させるとした。続く2022年4月には、中央ネットワーク情報弁公室、国家発展改革委員会及びMIITは共同で「IPv6規模の配置と応用を深く推進する2022年業務手配」を公表した。2022年末までに、IPv6アクティブ・ユーザ数は7億に達し、ユビキタス・ネットワークIPv6接続数は1億8,000万に達し、固定ネットワークIPv6トラヒックの割合は13%に達し、モバイル・ネットワークIPv6トラヒックの割合は45%に達した。県レベル以上の政府ポータルサイトのIPv6支持率は85%に達し、国内の主要ビジネスサイトやモバイル・インターネット・アプリケーションのIPv6支持率は85%に達した。IPv6ネットワークのセキュリティ保護能力が大幅に向上した。

2022年7月末現在、IPv6アクティブ・ユーザ数は6億9,700万に達し、固定通信のIPv6トラヒックの割合は10%に達し、モバイル通信の同値は40%に達した。

(4)5G

5Gの促進政策として、MIITが2020年3月にSA型5G網の構築加速に関する通達の公表等、複数回にわたり5Gインフラの構築加速を求めた政策を発表したほか、2021年末現在、地方政府によって発表された各種関連政策は583件に達した。内訳では、省レベルでは70件、市レベルでは264件、区・県レベルでは249件に及ぶ。発表された政策のうち、多くは基地局の構築、消費電力に対する補助金の拠出、ユースケースの利用促進に関するものであった。

2021年7月、MIIT等10の政府部門が「5G利用『揚帆(出航)』行動計画(2021~2023年)」を発表し、5G利用発展の目標が示された。2023年までに、5G利用発展レベルを大幅に向上させ、総合力を持続的に強化し、重点分野の5G利用について、深掘りと拡大の両面で推進する。このうち、5G利用の主要指標の目標値が大幅に引き上げられ、5Gユーザ普及率は40%超、ユーザ数は5億6,000万超、5G網のトラヒックの割合は50%超とし、5G網の使用効率を大幅に高めるとした。

5G融合応用の更なる推進を目的で、MIITは2022年9月、5Gフルカバー工場建設のガイドラインを公表した。第14次5か年計画期間(2021~2025年)中において、主に原材料、装備製造、消費財、電子機器製造等の製造業及び鉱山、港湾、電力等の重点分野における5Gフルカバー工場建設の展開を推進する。目標では、5Gフルカバー工場1万か所を建設し、このうち、特色のある工場1,000か所、ベンチマーク工場100か所を実現する。企業自らによるネットワークの構築又はサービス及び管理システムのリースを通じた、ローカライズされたネットワークの運営と管理を奨励する。対応可能な企業は必要に応じてデータストレージ・ノード及び工業インターネット標識解析企業ノードを建設し、データストレージ、加工、検索、呼出し等の実施、工業インターネット・プラットフォームの構築による生産運営管理の実現を奨励する。

(5)6G

6Gを推進する目的で発足されたIMT-2030(6G)推進グループは2021年9月に会合を開き、6Gビジョンとイノベーションに焦点を合わせた議論が行われた。2030年の商業化に向けての主な取組みとして、一つ目は、5Gを成功させ6Gの発展ベースを固めること、二つ目は、6Gの潜在的なコア技術の研究を推進すること、三つ目は、オープン型のwin-win関係を構築することを挙げている。更に、世界各国の6G推進組織、関連企業、研究機関との交流関係を強化し、世界共通の6G標準の形成を推進する。

また、同推進グループは2022年7月、「6Gの典型利用シーンと重要能力白書」を公表した。6Gビジョンの需要に焦点を当て、6G市場の趨勢を予測し、5大典型的利用シーンや、重要能力指標等を示した。典型的な利用シーンでは、6Gは5Gの三つの典型的なシーンをより広く深く発展させ、人中心の没入型相互作用体験と高効率で信頼性の高いIoT利用を全面的にサポートし、通信、計算、知覚等の能力を効果的に融合させ、各種知能化サービスをサポートし、「ウルトラ・モバイル・ブロードバンド、極めて信頼性の高い通信、超大規模接続、普遍的な知能サービス、通信知覚融合」という五つのシーンを革新的に構築する。

(6)新型インフラ

NDRCは2020年4月、「新型インフラ」の範囲を明確にした。それによると、新型インフラとは新たな発展理念がけん引し、技術イノベーションが駆動し、情報ネットワークが基礎となり、高品質の発展ニーズに向かい、デジタル化モデルの転換・高度化、融合イノベーション等の新サービスを提供するインフラ・システムを指す。新型インフラは主に5G、IoT、工業インターネット(industrial internet)といった情報インフラ、インターネットや、ビッグデータ、AI等の技術を深いレベルで応用し、従来のインフラのモデル転換とアップグレードを支え、そこから更に進んで形成された融合型インフラ、更には科学研究、技術開発といったイノベーション型インフラが含まれている。

MIITが公表した「情報通信産業発展の第14次5か年計画」では、2025年までに安全で信頼のできる新型デジタル・インフラを構築する目標が示されており、これに呼応して、各地政府が公表した2022年の政府活動報告書には「新型インフラ」の構築に注力する方針が盛込まれている。例えば、北京はコンピューティング・アルゴリズム・プラットフォーム等の新型インフラ建設を強化し、デジタル経済の新しい活力を開放すると明記し、貴州省は新型インフラ構築を適度に先行させ、全国一体化のコンピューティング・ネットワーク国家(貴州)ハブノードの建設を加速させることを示し、安徽省はインフラ投資を適度に先行させ、「新型インフラ+」行動を実施する発展目標を明確にしている。

4 ICT政策

(1)情報通信産業の第14次5か年(2021~2025年)規画

2021年11月に発表された。産業規模等の視点ごとに見た目標値を示したものが次表である。

2025年情報産業発展の主な目標
目標項目 2020年 2025年
全体規模 情報通信業所得 2.64兆元 4.3兆元
情報通信インフラ累計投資額 2.5兆元 3.7兆元
通信サービス業務規模 1.5兆元 3.7兆元
インフラ 1万人当たり5G基地局数 5 26
10G-PON以上ポート数 320万 1,200万

データセンター計算力

(毎秒100億回の浮動小数点演算)

90 300
工業インターネット識別子公共サービス・ノード数 96 150
モバイル・インターネットのIPv6トラヒック割合 17.2% 70%
国際インターネット出入口帯域幅(Tbps) 7.1 48
グリーン省エネ 大型クラウド・コンピューティング、データセンターのエネルギー消費の効率

1.4

(PUE)

1.3

(PUE)

サービス水準 通信網端末接続数 32億 45億
5Gユーザ普及率 15% 56%
ギガ・ブロードバンド加入世帯数 640万 6,000万
工業インターネット識別子登録数 94億 500億
5Gバーチャル専用網数 800 5,000
イノベーション 基礎通信事業者の研究開発費用の売上高に占める比率 3.6% 4.5%
ユニバーサル 行政村の5G整備率 0 80%
通信サービスのユーザ満足度指数 81.5 82
インターネット情報サービス・クレーム処理即反応率 80% 90%

上記目標の実現に向け、今後は新型デジタル・インフラ施設の建設や新しい業界管理体系の構築、ネットワーク・データの安全保障体系の強化、国内地域の協調発展等に取り組むとしている。

(2)互聯網+(インターネットプラス)

NDRCは2015年5月、各地方政府に対して「互聯網+(インターネットプラス)行動計画の策定作業に関する通知」を発出し、四つの方針を示した。具体的には、①インターネットを利用して産業のレベルアップを促進し、実経済の革新力や生産力を向上させること、②スマート自動車やスマート・ホーム、ウェアラブル端末分野等を育成し、経済発展の新しい原動力とすること、③インターネットを通じて公共サービスを充実させ、社会管理や民生保障の水準を向上させること、④TD-LTE網やデータセンター等の基盤を改善し、アプリケーションの利用環境を改善していくこと、となっている。

続く7月には、国務院は「『互聯網+』行動の積極的な推進に関する指導意見」(以下、指導意見)を発表した。2025年までの取組みとして、①2018年までに、インターネットと経済社会の融合発展を更に深め、インターネットに基づく新業態が新しい経済のけん引役となり、インターネットが起業・市民革新を支える役割を更に強化し、インターネットが公共サービスを提供する重要な手段となり、ネットワーク経済と実体経済が互いに促進する発展局面がほぼできあがること、②2025年までに、ネットワーク化・スマート化・サービス化・協同化された「互聯網+」の産業体系が基本的に整備され、「互聯網+」といった新経済形態は基本的にできあがり、「互聯網+」は経済社会革新発展の重要なけん引役となることが挙げられている。具体的な取組分野として、「互聯網+起業革新」や「互聯網+現代農業」「互聯網+スマート・エネルギー」「互聯網+ユニバーサル金融」「互聯網+人工知能」等11の項目が示されている。

同指導意見に基づき、MIITは2015年12月に実施行動計画(2015~2018年)を発表した。主な目標と取組みは以下のとおりである。

(3)AI

国務院は2017年7月に「新世代AIの発展規画」を発表した。2030年を見据えたAI発展促進にかかわる戦略目標、重点的な取組み、支援措置等が明記された。戦略目標は3段階に分かれている。まず、2020年までに、AIの技術と利用は世界先進水準に達し、AI産業が経済成長の新しい原動力になり、AIの利用が民生改善の新しい手段になること、次に、2025年までに、AIの基礎理論が大きなブレークスルーを遂げ、AIは中国の産業アップグレードと経済構造転換のけん引力になること、更に、2030年までに、AIの理論、技術、利用のいずれも世界先端水準に達し、中国が世界の主なAIイノベーション・センターになること、としている。

上記国務院の政策に基づき、MIITは2017年12月に「新世代AI産業発展促進3か年アクションプラン(2018~2020年)」を発表し、2022年7月には、MIITのほか、教育部、科学技術部等6政府機関が連名で「AIの高水準の応用による質の高い経済発展を促進するための指導意見」を公表し、各地方及び各主体によるAI利用シーンの応用を加速し、質の高い経済発展の実現を目指す方針を示した。

その実現に向け、同8月に科学技術部は「次世代人工知能モデル応用シーンの建設支援に関する通知」を公表した。AIの経済社会発展にエンパワメントする役割を十分に発揮し、業界応用のエコシステム構築を推進する目的で、基礎となる複数の良好なAI応用シーンを支援し、研究開発の上流・下流の協力及び新技術の集積を強化し、横展開可能なベンチマークとなるモデル応用シーンを構築する。第1弾として選定された10のモデル応用シーンには、スマート農場、スマート港湾、スマート鉱山、スマート工場、スマート・ホーム、スマート教育、自動運転、スマート診療、スマート裁判所、スマート・サプライチェーンが含まれる。

MIITの発表によれば、2021年における中国のAIコア産業の規模は4,000億元を超え、企業数は3,000社を超えた。スマート・チップ、オープン・ソース・フレームワーク等のコア技術がブレークスルーを達成し、スマート・チップ、端末、ロボットといった製品のイノベーション能力が持続的に向上している。

MIITはAI産業の革新・発展を重視し、AIと実体経済の深い融合を促進することを主眼とし、重点的に三つの取組みを展開してきた。

第一に、技術革新のボトルネック攻略を推進し、AIイノベーションを主とし、優秀な企業を発掘・育成し、競争環境下で優秀な製品を量産し、研究開発、産業、応用の構造を構築する。スマート・センサ、スマート・カー等の国家製造業イノベーション・センターを設立し、大学や企業が連合体を構成して協同イノベーションを展開することを奨励する。

第二に、産業育成のインキュベーションを促進し、8か所のAI革新応用先導区の建設を承認し、省と省が協力してAIイノベーションの成果を作り出す。産業技術基盤の公共サービス・プラットフォームの建設を強化し、産業サービス能力を絶えず向上させる。

第三に、産業サプライチェーンを構築し、5G基地局、工業インターネット・プラットフォーム、コンピューティング・センター等の情報インフラを多数建設し、業界データセットの建設と開放を支援し、産業発展の基盤を固めていく。国内開発の枠組みをオープンソースにするよう奨励し、産業生態系の確立を推進する。

2022年9月、MIITは南京、武漢及び長沙における国家AI革新応用先導区の新設を許可した。これによって、既存の八つの先導区(上海(浦東新区)、深圳、済南-青島、北京、天津(浜海新区)、杭州、広州、成都)を含め、全国には計11の先導区が設置された。

(4)電子政府

2017年1月に国務院から「インターネット・プラス行政サービス・システム」が公表されている。政務サービスの標準化、政務サービスの簡略化、政務サービスのスマート化、政務サービス・プラットフォームの建設、及び共同政務サービスの建設という五つの目標が示されている。

これらの目標を達成するための主な任務として、ビジネス支援システムの建設、基礎システムの建設、技術的サポート・システムの建設及び評価システムの建設が提示されている。

インターネットプラス行政サービスの推進に当たって、2018年6月に国務院が、「『インターネットプラス行政サービス』の一層の深化・行政サービス『ワンネット、ワンドア、ワンス』改革推進の実施方案」を公表した。ワンネットは「一つのネットで手続完了」、ワンドアは「一つのドアだけを開けばよい」、ワンスは「足を運ぶのは最大1回」をそれぞれ意味し、行政手続を「ネットショッピング」のように簡便に実現することを目指す。

2022年6月に国務院によって公表された、デジタル政府建設の強化に関する指導意見では、2025年までに、政府による職責履行のデジタル化、インテリジェント化レベルが著しく向上し、公共サービスの効率化は重要な進展を遂げ、2035年までには、効率的、正確、透明かつ公平なデジタル政府が概ね建設される、との目標が示された。実現に向けての重点任務として、効率の高い政府のデジタル化構築、デジタル政府の安全保障システムの構築、科学的に規範化されたデジタル政府建設の制度・規則体系の構築、オープン共有のデータ資源システムの構築、プラットフォーム・システムの構築、デジタル政府の建設によるデジタル化の発展等7項目が挙げられている。

(5)通信・放送の融合

国務院は2015年9月に、「三網融合の拡大方案」を発表し、三網融合の推進範囲を全国に拡大することを決定した。方案で示された取組みの目標、内容、及び保障措置の概要は以下のとおりである。

目標として、①放送と通信サービスの双方向進出を全国に拡大すること、②ネットワーク高度化や技術革新の能力を更に向上させること、③融合サービスやネットワーク産業の発展を加速させること、④科学的な監督・管理体制を作り上げること、⑤セキュリティ能力を著しく向上させること、⑥コンテンツやハード製品、サービスといった情報消費を迅速に成長させることが挙げられている。

また、2019年6月に中国広電が5G免許を受けたことで、5Gを用いたスマート放送が進み、三網融合の加速も期待されている。その実現に向け、2020年2月に共産党中央宣伝部によって「全国ケーブルテレビ統合発展方案」が公布された。これに従い、2020年6月には中国広電の子会社に当たる中国広電株式会社が設立された。「統一建設、統一管理、統一規格、統一ブランド」の理念の下、「全国一網」と5Gの融合発展を実現し、テレビとスマートフォン画面間のシームレスな切替え、固定とモバイルの融合、衛星と地上網の連携を推進し、新しいサービスを開拓していくとしている。

(6)モノのインターネット(物聯網:IoT)

2017年6月にMIITによって公表されたNB-IoTの推進政策(NB-IoT建設発展の全面的推進に関する通知)において、NB-IoT網の構築及びIoTの接続数に関する目標が示された。2017年末までに40万の基地局を構築し、直轄市、省都等の主要都市をカバーすること。2020年までに同150万とし、屋内、交通施設の沿線等を含む全国をカバーすること。また、2017年にはNB-IoTに基づくIoTの接続数を2,000万とし、2020年の接続数を6億とするとしている。

2020年4月には、MIITはセルラーIoTの発展促進に関する公文書(工信庁通信[2020]25号)を公表した。NB-IoT、LTE-Cat1(LTEカテゴリー1を使ったIoT)及び5Gに基づくセルラーIoTの発展を促進するとの方針を示した。必要とされる通信速度や音声通信のニーズの有無といった用途に応じ、各種規格別のIoTを使い分けすることを提起し、既存の2G/3G網に基づくIoTのNB-IoT/4G/5G網への移行を求めた。

更に2021年9月に、MIIT等8政府機関が共同で、IoT基盤構築の3年間(2021~2023年)アクションプランを公表した。関連技術のイノベーション能力を高め、ハイエンド・センサやIoT用チップ、IoT用システムといった分野の技術力と市場競争力を大きく引き上げる。5G+IoT、AI+IoT、ブロックチェーン+IoT、ビッグデータ+IoT等の融合製品やサービスの産業化も進める。目標では、2023年までに売上規模が100億元以上のIoT企業を10社育成し、IoTユーザ総数を20億以上に引き上げ、農村部のデジタル化、スマート交通、スマート・エネルギー、スマート農業、スマート製造、スマート建設、スマート環境保全、スマート・ホーム等12の分野での応用拡大を推進する。

(7)クラウド・コンピューティング

MIITは2017年4月に「クラウド・コンピューティング発展3か年行動計画(2017~2019年)」を発表し、発展目標を以下のように定めた。①2019年に中国のクラウド・コンピューティング産業規模を4,300億元とするとともに、複数の重要技術においてブレークスルーを遂げ、クラウド・コンピューティングのサービス能力を国際先端水準に到達させ、新世代情報産業発展へのけん引効果を高める、②製造、行政等の分野におけるクラウド・コンピューティングの利用水準が顕著に向上する、③クラウド・コンピューティングのデータセンターの配置を改善し、使用率及び集約化水準が向上する、④クラウド・コンピューティング企業の国際影響力が顕著に拡大、世界市場シェアの大きいリーディング企業を2~3社育成する。

2022年2月、NDRC及び中国共産党中央ネットワーク安全・情報化委員会弁公室、MIIT、国家エネルギー局等の政府部門が共同で、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、広東港澳大湾区(広東・香港・マカオ)、成渝(成都・重慶)、内モンゴル、貴州、甘粛、寧夏等8か所での国家コンピューティング・ハブノード構築開始に同意し、10の国家データセンター・クラスター建設計画を策定した旨の通知を行った。これにより、全国一体化ビッグデータセンターの全体的な配置設計が完了し、「東数西算」プロジェクトが本格スタートする。

「東数西算」とは、データセンター、クラウド・コンピューティング、ビッグデータを一体化させた新しいコンピューティング・ネットワーク・システムを構築することにより、東部のコンピュータ演算需要を西部に整然と誘導し、データセンターの設置を最適化して、東西の協力・連携を促進するものである。

(8)ビッグデータ

2020年5月、MIITは「工業ビッグデータの発展に関する指導意見」を発表した。指導意見では、工業にかかわるビッグデータの全面的な採取を進める方針を示した。工業企業の設備のデジタル化を支援し、研究開発から生産、経営、運用・保守までの全工程でデータを収集できるようにする。「国家工業ビッグデータ・プラットフォーム」を設置し、データを集約する。そのうえで、収集したデータを企業等が共有できる仕組みを整備する。データの価値を客観的に判断する体制を構築し、企業間で共有や交換、売買できるようにしていく。データ管理の安全性確保にも力を入れるとしている。

MIITは2021年11月、ビッグデータ産業の第14次5か年規画を公表し、四つの発展目標を掲げた。一つ目は、急成長を維持すること。2025年までに、産業規模を3兆元に引き上げ、年平均成長率を25%前後とする。イノベーション能力や付加価値の高い自前技術を主体とする産業体系を概ね形成させる。二つ目は、価値体系を概ね形成させること。データ要素の価値評価システムを概ね確立させ、企業によるビッグデータの取引プラットフォームの設置を奨励し、様々な取引モデルの構築を模索する。コア技術の突破、標準策定の強化を通じて、ストレージ、アルゴリズム、伝送等のインフラを国際先進水準に高める。三つ目は、産業チェーンを安定させること。データ収集・表示・ストレージ・伝送・管理・応用・安全保障からなる産業体系を構築し、イノベーション・チェーンとバリュー・チェーンの融合を図り、新しいモデルを模索し、広範囲に利用できるビッグデータ製品・サービスを育成する。四つ目は、産業エコシステムの健全な発展を遂げること。社会のビッグデータに対する認知レベルを向上させ、企業のデータ管理能力強化や、発展環境の最適化を通じ、国際影響力のあるデジタル産業クラスターを形成し、国際交流・協力を進めていく。

(9)サイバーセキュリティ

2016年11月に開催された全人代常務委員会が「サイバーセキュリティ法」(Ⅱ-3の項参照)を可決したのに続いて、2016年12月には、国家インターネット情報弁公室が「国家サイバー空間セキュリティ戦略」を公表し、サイバーセキュリティに関する取組みの方針を示した。

具体的には、①サイバー空間主権の維持、②国家ネット・セキュリティの擁護、③重要情報インフラの保護、④ネット・コンテンツ構築の強化、⑤サイバーテロ及び違法犯罪の取締り、⑥ネットワーク・ガバナンス体系の整備、⑦サイバーセキュリティ基盤の強化、⑧サイバー空間の防護能力の向上、⑨サイバー空間における国際協力の強化、の九つの側面からの取組みが明示されている。

2022年9月1日より施行された「データ越境セキュリティ評価申請ガイドライン(初版)」では、評価の申請方法、申請手順、申請書類等に関する具体的な要求事項が定められている。申請に該当する事例には、①データ取扱者が重要なデータを中国国外に提供する場合、②重要情報インフラ事業者及び100万人以上の個人情報を取り扱うデータ取扱者が、中国国外に個人情報を提供する場合、③前の年の1月1日以降、累計で10万人分の個人情報又は1万人分の機微な個人情報を国外に提供しているデータ取扱者が、国外に個人情報を提供する場合等が含まれている。

(10)自動運転

自動運転について、国務院が2015年に発表した「中国製造2025」において、自動運転車の製造を推進する方針を明らかにしたのに続いて、2017年7月に発表した「新世代AIの発展規画」の中では、自動運転をAIのもたらす新興分野の一つと位置付けた。車載センシング、自動運転、車のインターネット(IoV)、IoT等の関連技術の強化を通じた自動運転システムの発展促進を実現し、交通知能センシング・システムの開発も行い、中国の自律運転プラットフォーム技術スキーム及び製品製造能力全般の確立を目指すとの目標が示された。

2020年11月に国務院によって公表された「新エネルギー自動車産業発展規画(2021~2035年)」では、2025年までに一定の条件下で自動運転の商用化を実現するとの目標が示され、高速道路等限られた条件下で運転を自動化する「レベル3」と、ハンドル操作やスピード調整等を支援する「レベル2」相当の技術を搭載した自動車の割合を2030年に70%まで高める。

また、2021年10月1日より、国家インターネット情報弁公室、NDRC、MIIT、公安部、交通運輸部が共同で作成した「自動車データセキュリティ管理に関する若干の規定(試行)」が施行開始された。自動車データ処理者の責任と義務を明確にし、自動車データ処理活動を標準化することは、国家安全保障上の利益を保護し、個人の正当な権利と利益を保護するために求められていることであるとしている。

2022年8月1日より、深圳市では、国内初となるICV(Intelligent Connected Vehicle)に関する管理条例が施行開始された。同管理条例は、全部で9章64条からなっており、自動運転車を「条件付き自動運転」「高度自動運転」「完全自動運転」の三つに分類したうえで、認可と登記、使用管理、路車間通信インフラ、ネットワーク・セキュリティとデータ保護、交通違反と事故処理等について規定した。

2022年10月に、中国が主導する自動運転分野で初となる「国際標準ISO 34501: 2022 Road vehicles-Test scenarios for automated driving systems- Vocabulary」が公表された。これは中国やドイツ、日本等20か国の専門家らが自動運転の測定シーンに関連した標準項目を体系的な整理したもので、中にはシーンごとの専門用語、測定項目、安全測定、運行範囲等の具体的な項目が含まれている。

(11)ブロックチェーン

2016年12月に国務院が「第13次5か年国家情報化規画」の中で初めてブロックチェーンについて言及し、以降、2018年4月まで、国務院が五つの政策において、ブロックチェーンの発展・利活用促進について言及した。またこの間、ブロックチェーンを主管とするMIITが、計四つの政策(ソフトウェア・情報技術サービスの発展促進、クラウドの発展アクションプラン等)の中で、ブロックチェーンの研究開発やブロックチェーンの物流分野での応用を促す方針を明記した。その他中央政府部門(財務部、教育部等)も相次いで関連政策を発表した。これまで、北京、上海、重慶、深圳、内モンゴル等各地方政府によって公表された政策の中で言及された政策数は既に100件以上に及ぶ。

(12)工業インターネット

MIITは工業インターネットの発展促進に向け、複数回にわたり促進政策を打ち出してきた。2020年3月に公表された「工業インターネットの発展加速の推進に関する通知」では、以下のとおり、6大分野における20措置が打ち出された。

更に2021年5月、MIITは「5G+工業インターネット」の重点産業・応用シーン第1弾を発表した。重点産業には電子設備製造、装備製造、鉄鋼、鉱業、電力の5産業が含まれ、重点応用シーンには協同研究・開発・設計、遠隔設備操作、フレキシブル生産製造等の10シーンが含まれる。11月に発表された第2弾には、生産効率管理、生産過程の追跡、設備の保守予見、工場エリアの在庫・棚卸の自動化等の応用シーン及び石油化学、建築材料、港湾、紡績、家電の五つの重点産業が挙げられている。

2022年4月にMIITによって公表された2022年における工業インターネット関連の取組み方針では、工業インターネット企業のIPOを支援するほか、10か所の5Gフル接続を実現する工場ベンチマークを作り上げる等を通じた「5G+工業インターネット」のアップグレードを求めた。ほかには、5Gプライベート網の敷設パターンの改善や、「5G+工業インターネット」の典型的な応用シーンの育成・普及を図るとした(3(4)の項参照)。

5 消費者保護関連政策

迷惑通信対策

中国共産党中央委員会弁公庁及び国務院は2022年4月、「電気通信ネットワーク詐欺・違法犯罪の取締り・管理を強化することに関する意見」を公表した。法に基づく特殊詐欺及び関連違法犯罪の取締り、厳密な防犯システムの構築、業界による監督・管理の強化等を求めた。

2021年以降、通信事業者各社は詐欺電話20億件、詐欺SMS 21億件を遮断し、注意喚起メールを1億7,000万件送信し、詐欺サイト104万件に対処した。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「電信条例」及び「電信設備入網管理弁法」を根拠法令に、公衆電気通信網に接続する電気通信端末設備・無線通信設備及びネットワーク間の相互接続用設備は、国の規定標準を順守し、これを証明する公衆網接続許可証を取得することとされている。公衆網接続許可証の取得に際しては、国務院の製品品質監督部門が認可した電気通信設備検査機関による検査報告、又は認証機関による製品品質認証証明書を提出し、国務院の情報産業部門に申請することとされている。具体的な主管機関は国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation:SAMR)であり、SAMRの下で監督業務を行う機関として、国家認証認可監督管理委員会(Certification and Accreditation Administration:CNCA)がある。CNCAが指定する認証機関のうち、通信端末設備の認証を所管業務とする機関として、中国質量認証センター(China Quality Certification Centre:CQC)、中国電磁兼容認証センターがある。

また、2002年に強制製品認証業務の規範化、認証業務の効率向上及び国家・社会・公共利益の擁護を目的に、「強制製品認証(China Compulsory Certification:CCC)」制度が導入され、強制製品認証の「製品目録」に掲載された製品を対象にしている。

SAMR主管の下でCNCAが強制的製品認証業務の実施、監督管理及び総合調整業務を担当し、「製品目録」に記載される対象製品を出荷、販売、輸入、又は商業上の目的で使用する業者は、CNCAが指定する認証機関が行う認証検査(型式検査、生産現場への立入検査、製品のサンプリング検査等)に合格して認証証明書を取得し(有効期限5年)、強制認証マークである「CCCマーク」を製品個体ごとに貼付することとされている。

また、周波数に関する属性を確認するための無線管理部門による認証制度として、型番認証(無線発射設備型号核准証)をMIITから取得しなければならない。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

固定電話加入総数は2006年末の3億6,781万をピークに減少の一途を辿っていたが、2022年6月末現在、1億8,154万となっている。これは前年末比で84万の減少である。

2 移動体通信

(1)主要事業者概要

移動電話加入数は、2003年10月に固定電話の加入数を超え、2022年6月現在、総数は前年末比で3.4%増の16億6,835万である。このうち、5Gサービスの加入数は同比で1億55万増の4億5,540万となっている。

2022年1~7月期の移動電話の出荷台数は前年同期比23%減の1億5,600万で、そのうち5G対応端末の出荷台数は同17.7%減の1億2,400万であった。

移動体通信インフラ事業者である中国鉄塔によるネットワークの構築が進み、2021年6月末現在、移動体通信基地局数が948万に達した。このうち、4G基地局数は584万に達し、全体の61.6%を占める。

(2)5G

MIITは2019年6月に中国移動、中国電信、中国聯通、中国広電の4社に対して5Gの経営許可を与えた。2019年11月1日より、既存通信事業者3社は一斉に正式商用サービスを提供開始した。一方、中国広電は中国移動と共同で、県・郷、農村地域に700MHz帯を利用した20万の基地局建設を完了し、2022年6月末に5G商用サービスを開始した。2022年末現在、中国移動からの協力を受け、48万基地局の建設を完了し、郷鎮以上の地域を連続してカバーし、かつ行政村まで広範囲な拡張を実現した。

2022年6月末現在、移動体通信基地局数は1,035万に達し、このうちの5G基地局は17.9%を占める。2022年第2四半期の全国における5G網の平均通信速度は下りで341.20Mbps、上りで71.98Mbpsとなる。「5G+工業インターネット」プロジェクト数が1,800を超え、5G+自動運転、5G+スマート・グリッド、5G+遠隔教育等の利活用も広がりつつある。

(3)MVNO

2018年5月1日よりMVNOサービスの商用化が正式にスタートした。2020年6月末現在、計39社が正式商用免許を取得している(Ⅲ-2(2)の項参照)。免許を取得した企業の業種には、小米(Xiaomi)やZTEといった携帯端末メーカー、京東(JD.com)や阿里巴巴(Alibaba)といった電子商取引(EC)事業者のほか、モバイルゲーム事業者や金融事業者等も含まれている。2020年6月末現在、MVNOユーザ総数が1億5,000万に達し、前年同期比で4,000万の増加となる。

3 インターネット

MIITのデータによれば、2022年6月末現在、主要通信事業者3社による固定ブロードバンド加入者数は合計で5億6,300万に達し、前年末より2,705万増加した。そのうち、100Mbps以上のプラン加入者は全体の93.7%を占める5億2,700万、1Gbps以上は6,111万となる。

なお、中国インターネット情報センター(China Internet Network Information Center:CNNIC)が発表した利用者数のデータによれば、2022年6月現在、インターネット利用者数は前年12月より1,919万増の10億5,100万に達し、IPv6アドレス数は6万3,079、同比0.04%増加した。ギガビット級光網は4億世帯以上をカバーする能力を備えている。

4 ICT利活用サービス

(1)シェアリング・サービス

2014年以降、アプリを通じて様々な形でのスキルやモノを共有するシェアリング・サービスが急成長してきた。2019年3月に国家情報センターによって発表された「中国シェアリング・エコノミー発展の年度報告(2020)」によれば、2019年の同市場規模は前年の2兆9,420億元から3兆2,828億元に拡大した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、宿泊、交通、及び家事代行の3分野におけるシェアリングの規模が縮小した一方、医療、教育、デリバリーの利用が大きく伸び全体の発展をけん引している。

(2)クラウド・コンピューティング・サービス

NDRCは2022年9月、同年2月以降全面的に始動した「東数西算」プロジェクト(Ⅲ-4(7)の項参照)の総投資額は4,000億元を超えたと明らかにした。現在、八つの国家計算力ハブノードの建設はいずれも順調に進行しており、着工したデータセンター・プロジェクト数は60余りに達し、新たに建設されたデータセンターの規模は110万ラックを超え、計算力集積効果は概ね現れた。特に、西部地区のデータセンターの占める割合は着実に向上し、全国の計算力構造は徐々に最適化されている。

中国電信は国内最大のIDC(インターネット・データセンター)サービス・プロバイダとして、データセンター794か所、ラック数50万を保有し、内モンゴルと貴州の2拠点、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、広東港澳大湾区、成渝の4地域、31省にある300以上の地方都市及び県地域に配置している。

中国移動の場合は2021年末現在、ラック数は40万7,000で、サーバ数は48万に及ぶ。13のノードを介して、4大地域(京津冀、長江デルタ、広東港澳大湾区、成渝)におけるIDCに加え、3大省(内モンゴル、黒竜江、貴州)を跨ぐIDC及び複数の省域内にあるIDCを各地に配置している。また、中国聯通は、五つの主要ハブノード(京津冀、長江デルタ、広東港澳大湾区、成渝、魯豫陝(山東・河南・陝西)通信クラウド大区)、四つのハブノード(内モンゴル・貴州・甘粛・寧夏)、31の省レベルのコアIDC、複数の地方都市エッジデータセンターからなる配置を整備している。

5 IoT

主要通信事業者各社は2017年以降、NB-IoTへの切替方針を相次いで表明した。

中国移動は2017年8月に、395億元に達するNB-IoTの集中調達を開始した。具体的には、2017~2018年におけるNB-IoTアンテナの調達量が111万のキャリア・セクター(CS)に相当、900MHz及び900/1800MHz双方に対応するアンテナを調達するとともに、IoTプロジェクト無線ネットワーク設備やコアネットワーク設備の設計業務等を集中調達するほか、ネットワークのサーベイ業務についても調達するとした。

一方、中国電信は2017年7月現在、NB-IoT用の2,400基地局を稼動させ、800MHz周波数帯を利用して江蘇省にある蘇州市全体をNB-IoTでカバーした。また、同省にある無錫市で1億5,000万元を投資して、華為技術(HUAWEI)、ノキア(Nokia)等のネットワーク通信設備及びシステム構成を導入し、市全体3,661km2のエリアをカバーした。エレベーター、地下駐車場等の管理に用いられている。2022年6月末現在、同社によるNB-IoTは1億6,000万に達し、初のNB-IoT数が1億を超える通信事業者となった。5Gサービス商用化後、5G接続管理プラットフォームを開発し、スライシング技術や、データ分析を応用した付加価値サービス機能を提供し、5Gに対応したIoT網の構築を加速させていくとしている。これまで、北京、広東、江蘇等の地域において120以上のプロジェクトを手がけており、医療や製造、鉄鋼、化学工業、鉱業といった分野での応用を実現した。

中国聯通もこれまで、上海市にNB-IoT実験室を設置し、同市で設置したNB-IoT網の規模は、都市単位で世界最大規模となる。また同社はクアルコム(Qualcomm)、華為といったベンダに呼びかけて、IoT端末産業聯盟を構築する等、NB-IoTへの取組みを強化している。

2022年8月末現在、全国におけるNB-IoT基地局数は75万5,000で、接続数は合計で16億9,800万に達し、初めて移動電話利用者数を上回った。

6 IPTV

IPTV事業を運営するには、「インターネット等情報ネットワークによる放送管理弁法」と「インターネット視聴番組サービス管理規定」により、免許を取得する必要がある。2022年6月末現在のIPTV加入総数は、3億6,637万である。

国務院三網融合ワーキング・グループは2011年末、放送事業者が保有する配信プラットフォームと通信事業者が有する伝送基盤との接続を早めるよう指示した。また、2014年12月までに、国家新聞出版広電総局(SAPPRFT(当時))は中国電信と中国聯通に対して、42の試行都市での伝送サービス、MIITは23の省・市にあるケーブルテレビ事業者に対して、インターネット、データ通信及びIP電話のサービス提供許可を行った。

2017年2月には、SAPPRFT(当時)が湖南省放送局に対してIPTV省級放送免許を付与した。同局のIPTV業務は、同時再放送とVODの二つの基幹業務があり、中国で初めて30Mbps以上の4K同時再放送サービスを提供するとともに、116の同時再放送チャンネルと10万時間以上のVOD番組を有する。

2019年6月現在、主要通信事業者3社すべてがIPTV免許を保有している。

Ⅵ 運営体等

1 運営体

(1)中国電信集団有限公司(中国電信)

China Telecommunications Group Co., Ltd(China Telecom)

Tel. +86 10 5850 1800
URL http://www.chinatelecom.com.cn/
所在地 北京市西城区金融大街31号、100032、中国
幹部 Ke Ruiwen(柯瑞文)(董事長/Chairman)
概要

固定、移動体通信のほか、インターネット及び衛星通信も提供する国有企業である。2022年上半期の業績では、売上高は前年同期比10.4%増の2,402億元で、純利益は同比3.1%増の183億元であった。同年6月末現在の移動電話加入総数は同1,179万増の3億8,422万に達し、このうち5G加入数は2億3,165万である。また、固定ブロードバンドの加入数は同1,123万増の1億7,544万であった。一方、固定電話加入数は同111万減の1億603万となっている。

同社は中国初の海外市場でMVNOサービスを提供する通信事業者として、2012年5月に英国でMVNOサービス(ブランド名:CTExcelbiz)を提供開始した。2018年11月にフィリピンの現地パートナー(Mindanao Islamic Telephone Corporation、Udenna Corporation、Chelsea Logistics Holdings)と構成したコンソーシアム(Mislatel)が同国第3の通信事業者として市場参入した。

(2)中国聯合網絡通信集団有限公司(中国聯通)

China United Network Communications Group Co., Ltd(China Unicom)

Tel. +86 10 6616 9571
URL http://www.chinaunicom.com.cn/
所在地 北京市西城区金融大街21号、100140、中国
幹部 Liu Liehong(劉烈宏)(董事長/Chairman)
概要

2022年上半期の業績では、売上高は前年同期比8.3%増の1,610億元で、純利益が同18.7%増の48億元であった。同年6月末現在の移動電話加入総数は3億2,000万、このうち5G加入数は1億8,492万に達した。また、固定ブロードバンドの加入数は同1,356万増の9,944万に達した。

2016年7月、スペインのテレフォニカ(Telefonica)が保有していた同社株式の一部(3億6,180万株)を売却し、保有比率を1%程度に引き下げた。一方、中国聯通はテレフォニカ株式の0.9%を保有している。また、両社は2016年1月にビッグデータ・サービスを提供する合弁会社、2018年にはIoTサービスを提供する合弁会社を設立した。

中国聯通は2016年12月に英国においてO2 UKのネットワークを利用してMVNOサービス(ブランド名:CUniq)を提供開始した。

(3)中国移動通信集団有限公司(中国移動)

China Mobile Communications Group Co., Ltd(China Mobile)

Tel. +86 10 5268 6688
URL http://www.10086.cn/aboutus/gd/
所在地 北京市西城区金融大街29号、100032、中国
幹部 Yang Jie(楊傑)(董事長/Chairman)
概要

2022年上半期の業績では、売上高は前年同期比12%増の4,969億元で、純利益は同18.9%増の703億元であった。移動電話加入総数は、同年6月末現在で、前年末比1,296万増の9億7,000万となっており、このうち、5G加入数は5億1,100万である。固定ブロードバンドの加入数は、同1,241万増の2億3,000万である。

2021年末現在の同社の基地局数は550万を超え、そのうち5G基地局は73万を超え、全国すべての市及び県域におけるギガビット級インターネットの構築を完了している。

中国移動は2007年2月にパキスタンに進出し、現地子会社China Mobile Pakistan(CMPak)がZONGのブランド名でサービスを展開している。2021年9月末現在の市場シェアは同国3位の22.1%に達し、3G(W-CDMA)及び4G(TD-LTE)サービスを提供している。2018年6月末時点におけるTD-LTE網は全国300以上の市区をカバーしており、今後3年間で5,000基以上のTD-LTE基地局を稼動させていくとしている。

(4)中国広播電視網絡集団有限公司(中国広電)

China Broadcasting Network Co., Ltd.(CBN)

所在地 北京市復興門外大街2号、100866、中国
URL http://www.cbn.cn/
幹部 Song Qizhu(宋起柱)(董事長/Chairman)
概要

2016年1月にMIITは同社に対して①IDC業務、②インターネット・アクセス・サービス業務、③ネットワーク・ホスティング業務、④国内多者間通信サービス業務、⑤国内インターネットVPN業務、⑥コールセンター業務、⑦情報サービス業務の七つの業務を複数の省・自治区・直轄市で行う電気通信業務経営許可を付与した。

2019年6月6日に同社はMIITより5G経営許可書を取得した。2020年9月に5G事業を専門とする子会社を設立し(Ⅲ-4(5)の項参照)、出資先から229億元を集めることに成功した。2022年6月27日に20の省・直轄市・自治区、7月27日に9の省、9月27日にチベット自治区と青海省での5Gサービス開始により、同社は5Gサービスの全国展開を実現した。今後、「移動電話+テレビ+ブロードバンド+音声+衛星+X」というマルチサービスを提供していくとしている。なお、2021年7月より現社名に変更。

(5)中国鉄塔股份有限公司(中国鉄塔)

China Tower

URL https://www.china-tower.com/index
所在地 北京市海淀区阜成路73号19楼、100042、中国
幹部 Zhang Zhiyong(張志勇)(董事長/Chairman)
概要

2014年に設立された移動体通信インフラ事業者である(Ⅲ-2(7)の項参照)。2018年に香港証券取引所に上場した。主な業務は、鉄塔の建設・運営・メンテナンスに加え、基地局用局舎、電源、空調設備、及び屋内システムの建設・運営・メンテナンス、他業界(環境保全、ラジオ、デジタルテレビ、衛星測位、エネルギー等)との間の敷地利用・情報業務となっている。2022年上半期の売上高が対前年比6.6%増の454億7,900万元で、うち、鉄塔関連業務が同3.7%増の377億2,200万元、屋内通信関連業務が同32.0%増の27億5,300万元である。純利益は同22.2%増の42億2,400万元である。同期間中に、5G基地局31万8,000か所の建設を請け負い、6月30日現在の構築済みの5G基地局は154万4,000に達し、そのうち97%以上が既存資源を利用して構築したものとなる。屋内事業では、オフィスビル・カテゴリーの屋内カバー面積は累計59億7,000万m2で前年同期比35.4%増、高速鉄道のトンネルと地下鉄のカバー総距離は1万8,276kmに達し、同比26.6%増となった。「通信タワー」から「デジタルタワー」へ転換戦略が功を奏して、上半期における通信業界以外分野の関連収入は40億1,000万元に達し、前年同期比46.5%増加した。

同社初の海外投資プロジェクトとして、2018年8月、ラオス政府及びクリックラオス市場諮問有限公司と共同で東南アジア鉄塔有限責任会社(東南アジア鉄塔)を設立することについて署名、12月より正式に営業を開始した。通信鉄塔や基地局局舎、電源等付帯施設、室内システム、伝送システムの構築・保守・運営を主業務としている。

2 主要メーカー

(1)華為技術有限公司(華為技術)

Huawei Technologies Co., Ltd.(HUAWEI)

Tel. +86 755 2878 0808
URL https://www.huawei.com/
所在地 広東省深圳市龍崗区坂田華為基地、518129、中国
幹部 Ren Zhengfei(任正非)(総裁/CEO)
概要

1988年に設立された通信設備企業である。中国国内の北京、上海、南京等をはじめ、インド、カナダ、ドイツ、スウェーデン、ロシア等で計14の研究所を設置し、他の企業や通信事業者と共同構築したジョイント・イノベーション・センター数は36に及ぶ。R&Dに従事する従業員数は約9万6,000人で、全体の49%を占める。

2022年上半期の売上高は前年同期比5.9%減の3,016億元で、純利益は150億8,000万元に達し、利益率は5.0%であった。事業別の売上高では、端末事業は25.4%減の1,013億元で、ネットワーク事業が4.2%増の1,427億元、ICTソリューション事業は27.5%増の547億元であった。2021年には、研究開発に売上高の22.4%に相当する1,427億元を投入した。

2019年8月に自主開発OSである鴻蒙(Harmony)を発表した。2022年7月現在、HarmonyOS 2を搭載した機器が3億台を突破した。エコシステムも急速に発展しており、HarmonyOS Connectは既に2,000社を超えるパートナーと連携し、製品種類は冷蔵庫や、マッサージチェア等スマート・ホーム生活のあらゆる分野に及び、出荷台数は合計で1億7,000万に達している。

米国政府は2020年9月15日から同国技術を使用しているチップの華為への供給を禁止した。これにより、同社はスマートフォン用チップの調達が困難となり、同11月に中・低価格帯のスマートフォン事業「栄耀(Honor)」を売却した。

(2)中興通訊株式有限公司(中興通訊)

ZTE Corporation(ZTE)

Tel. +86 755 2677 0000
URL https://www.zte.com.cn/cn/
所在地 広東省深圳市南山区高新技術産業園科技南路中興通訊大厦、518057、中国
幹部 Li Zixue(李自学)(董事長/Chairman)
概要

深圳に拠点を置く通信設備大手である。1985年に設立され、深圳及び香港証券取引所に上場している。製品は、移動体通信設備、ネットワーク・システム、クラウド・コンピューティング、移動電話端末等広範囲に及ぶ。同社は、13の地域統括拠点を設置し、140以上の国・地域にある500を超える事業者と業務提携を結んでいる。また、中国国内のほか、米国、インド、スイス、フランス、日本等各国に計20の研究開発センターを設けている。研究に従事する職員数は約3万である。

2022年上半期の売上高は対前年同期比12.7%増の598億2,000万元で、純利益は同12%増の45億7,000万元であった。研究開発費は101億5,000万元であった。同社は5G関連の事業に力を入れており、ヨーロッパ、アジア太平洋、中東といった地域における110以上の通信事業者に対して5G製品を提供している。

3 主要ITサービス企業

(1)百度(バイドゥー)

Baidu.com, Inc.

Tel. +86 10 5992 8888
URL https://home.baidu.com/
所在地 北京市海淀区上地十街10号、100085、中国
幹部 Robin Li(李彦宏)(董事長兼最高経営責任者/CEO)
概要

2000年に設立。2020年における売上高は前年比0.3%減の1,071億元で、純利益は同992%増の224億7,200万元であった。主な事業領域は、これまでの検索に加え、電子商取引、金融、医療、教育といった分野におけるアプリケーション・サービス、地図やローカル生活情報の提供も行っている。同社は近年、売上高の約15%を技術の研究開発に投入しており、ビッグデータ、AI、AR、VRといった分野にも注力している。

百度は自動運転事業を推進する目的で、100億元規模の「Apolloファンド」を設立し、3年間で100以上の関連プロジェクトに投資するとしている。その一環で、2018年7月に同社がアモイのバス会社である金竜客車と共同で研究開発した無人運転の微循環バス(公共バスがカバーしきれない地域において、利便性確保のために運行する小型バス)を小規模で量産開始した。2019年7月、同社は北京市より、複雑な都市道路でも自動運転できるレベル4のT4試験免許を取得し、2020年9月より、同市にて客を乗せたロボタクシー「Apollo Go」を開始した。2022年7月20に同サービスの累計乗客数は100万人突破した。サービスは北京、上海、広州、深圳、重慶、武漢、合肥、成都等10余りの都市で提供されており、このうち、重慶及び武漢において、運転手が乗車しない完全無人運転タクシーの商用化が開始されている。

(2)阿里巴巴集団(アリババ)

Alibaba Group

Tel. +86 571 8502 2088
URL https://www.alibaba.com/
所在地 浙江省杭州市濱江区網商路699号濱江新園区、310052、中国
幹部 Zhang Yong (張勇)(董事長/Chairman)
概要

1999年に浙江省で設立された、EC、物流、金融、エンターテインメント、クラウド・サービス等多分野を手がけるネット事業者である。同社は中国国内の個人消費者間のECサイトである「淘宝網(Taobao Marketplace)」、ブランド及び小売業者等の企業と個人消費者間のECサイトである「天猫(Tmall)」、並びに共同購入サイトである「聚画算(Juhuasuan)」という三つの国内向け事業に加えて、世界的B2B向け卸売サイト「Alibaba.com」、中国の卸売サイト「1688.com」、世界的個人消費者向けサイト「AliExpress」の運営、並びにクラウド・コンピューティング・サービスの提供に従事している。

アリババ・クラウドは世界21か国・地域に100以上のデータセンターを運営しており、サーバの設置数は100万台規模に上る。2020年4月には、今後3年間で2,000億元を投資する計画を発表した。オペレーティング・システム(OS)やサーバ、プロセッサ、ネットワーク等中核技術の研究開発のほか、データセンターとサーバの規模を3倍に拡大させる。

2021年3月31日までの年間業績では、売上高が前年同期比41%増の7,172億8,900万元、純利益が1,432億8,400万元であった。

(3)騰訊(テンセント)

Tencent Holdings Limited

Tel. +86 755 8601 3388
URL https://www.qq.com/
所在地 広東省深圳市南山区科技園科技中一路、518057、中国
幹部 Ma Huateng(馬化騰)(董事長/Chairman)
概要

1998年11月に設立した。インスタント・メッセージのQQやWeChat(微信)等コミュニケーション・ツールのほか、ポータルサイト、ゲーム・プラットフォーム、EC、モバイル決済等のインターネット・サービス、クラウド・サービスも提供している。

同社の2021年の売上高は前年比16%増の5,601億1,800万元であった。売上高のうち、付加価値サービス収入(ネットゲーム及びSNSサービス収入)は売上高全体の52%を占める2,915億7,200万元であった。FinTech及び法人サービスによる収入は同31%を占める1,721億9,500万元で、インターネット広告収入は同16%の886億6,600万元、その他業務の収入は同1%の76億8,500万元であった。また、WeChatの月間アクティブ・ユーザ数は、前年比3.5%増の12億6,820万であり、QQの月間アクティブ・ユーザ数は、同7.2%減の5億5,210万であった。

傘下のテンセント・クラウド、テンセント研究院と共同で2022年7月にテンセント5Gイノベーション・センターを設置した。業界をリードする5G応用の検証、イノベーションの実施、展示総合プラットフォームの構築を通じて、優位性のある5G革新融合応用を定着させることが目的となっている。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 国家ラジオ・テレビ総局(国家広播電視総局)(NRTA)

National Radio and Television Administration

Tel. +86 10 8609 3114
URL http://www.nrta.gov.cn/
所在地 北京市復興門外大街2号、100866、中国
所掌事務

国務院に直属し、放送を含む視聴系メディアの監督・管理、関連政策、規制等を司る機関。2018年9月の改組を経て発足され、内設機構が13となる。

主な所掌事務は、以下のとおりである。

2 工業・情報化部(MIIT)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

MIITの「情報化推進司」(信息化推進司)が、通信と放送の融合の推進業務を担当している。

Ⅱ 法令

1 ラジオ・テレビ管理条例(1997年国務院令。同年9月施行。2013年12月、2017年3月、2020年11月改正)

1997年、国務院は、放送事業全般にわたる規範となる初の法規として同条例を施行した。同条例は6章55条からなり、番組制作、報道取材、伝送、受信等、放送事業の主要部分を規定するとともに、罰則も明記している。内容は、党と政府の指示を伝送するチャンネルの確保、放送行政部門への大幅な権限の付与等で、全般的に行政部門の管理権限を強化している。

なお、2021年3月に、NRTAは、10章80条からなる「ラジオ・テレビ法」の意見募集稿を公表し、1か月間の意見募集を行った。これまでは、法律の下位法令である行政法規(ラジオ・テレビ管理条例)、部門規章(外国テレビ番組導入、放映管理規定等)、通知等が存在したところ、放送分野における法律の制定は初となる。2022年3月に、NRTAは2022年において、「ラジオ・テレビ法」の制定を重点的に推し進めると公表した。

2 中華人民共和国広告法(1995年法律。同年2月施行。2015年4月改正)

放送広告を含む広告全般を対象とする法律。広告基準、広告活動、広告の事前審査や罰則等の内容が盛り込まれている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)メディアの所有規制

放送事業は、1997年に国務院が発布した「ラジオ・テレビ管理条例」によって規制されている。ニュースの放送やテレビ受像機向けに放送を行う事業者は、NRTAの許可を受けたラジオ局及びテレビ局等に限られ、番組規制についても、放送と同等となっている。

「ラジオ・テレビ管理条例」によると、ラジオ局及びテレビ局は、県及び区を設けない市以上の人民政府のラジオ・テレビ行政部門が設立する。教育テレビ局については、区を設ける市及び自治州以上の人民政府の教育行政部門であれば設立することができる。その他のいかなる機関及び個人も、ラジオ局及びテレビ局を設立してはならない。

(2)外資規制

外国企業による中国でのテレビドラマ制作への参入を規制する基本法令には「中外合作によるテレビドラマ制作の管理規定」(2004年10月施行)が該当する。管理規定によれば、外国側当事者と中国側当事者が共同でテレビドラマを制作する場合、以下のいずれかの方法により行うことが求められている。

聯合制作

中国側当事者と外国側当事者が共同で出資し、主要メンバーを派遣、損益を分担してテレビドラマを制作する。テレビドラマの著作権についても共同所有と規定される。

協力制作

外国側当事者が出資し、主要メンバーを派遣、中国国内で撮影の全部又は一部を行い、中国側当事者は労務、設備、機材、場所を提供し協力する。

委託制作

外国当事者が出資、中国側当事者に中国国内での制作を委託する。

2022年9月に、NRTAは「ラジオ・テレビ番組伝送業務管理方法」を公表した。その中で外資が投資した機関によるラジオ・テレビ番組の伝送業務に従事することを禁止すると明確に規定している。

2 コンテンツ規制

放送は、共産党と政府主導の重要事業であり、共産党や政府の方針等を国民に伝え、指導する役目が付与されている。番組には放送前に審査があり、国外の番組を中継する場合は国務院の承認を得なければならない。また、以下の内容の番組の放送は禁止されている。

その他、2010年7月より実施された「テレビドラマ内容の管理規定」(2016年5月改正)では、邪教や迷信を宣揚し、又は宗教信仰を差別若しくは侮辱するもの、猥褻、賭博、テロ若しくは麻薬使用を宣揚し、又は犯罪を教唆するもの、他人を侮辱し、若しくは誹謗するもの、法律、行政法規及び国の規定が禁止するその他の内容のあるものといった内容をテレビドラマに含んではならないと規定した。

ラジオ局及びテレビ局で放送する外国映画、テレビドラマ、アニメ及びその他の外国番組(香港、台湾、マカオの番組も含めて「域外番組」とも称される)については、NRTAは「時事、ニュース番組を輸入しない」「輸入する外国映画、ドラマ(アニメを含む)の総量、題材と制作地等に対して調整コントロールや計画を行う」等、輸入管理や放送時間制限等の方法で規制している。

国外制作の番組について、娯楽番組の放送は年間2本まで、新規放送は年間1本までとし、映画・ドラマは1日の全放送時間の25%以内、その他の番組は15%以内に制限されている。また、NRTAの許可のない午後7時~10時までの国外制作ドラマの放送は禁止されている。特にアニメ番組の放送時間は、同番組放送時間全体の30%以下でなければならない。このほかに、毎日午後5~9時の間は、全国各テレビ局のすべてのチャンネルにおいて、国外制作のアニメの放送、紹介、案内等が禁止されており、同時間帯での中外合作アニメの放送については、NRTAの許可が必要とされている。

唯一の例外として、2008年1月より、中国本土と台湾が共同制作したテレビドラマが、本土の主管部門の確認や許可を得たうえで、本土の作品として放送が可能になった。また、各省・直轄市・自治区に所属する制作機関が制作したテレビドラマで、台湾のスタッフや俳優が加わったものに関する許可・承認作業については、NRTAは省レベルの放送行政部門に委ねている。

また、SARFT(当時)は2011年10月、「衛星チャンネルの番組への管理を強化する意見」を発表した。それによれば、2012年1月より国内34の衛星テレビ局の総合チャンネルは、午前6時~午後12時の間に2時間以上のニュース番組の放送が義務付けられているほか、午後6時~11時半の間に2番組以上の独自ニュース番組を放送することや、各ニュース番組の時間は30分以上とすることが定められている。また、各衛星チャンネルは、中国の伝統道徳と社会主義の価値観の高揚に関する番組を1番組以上放送する必要があるとされている。お見合い、オーディション、人生相談、ゲーム・競技、娯楽といった番組については、午後7時半~10時の時間帯では、すべての衛星チャンネルを通じて計9番組以下に制限される。また、各衛星チャンネルがこれらの番組放送に割り当てる時間数は1日合計で90分以内とされている。

これらに加え、SAPPRFT(現NRTA)の規定では、各動画サイトが年間で輸入・放送する海外映画・ドラマは前年度に購入し放送した国産映画・テレビドラマ総数の30%を超えてはならないこと、また海外映画・ドラマはシリーズごとに中国語の字幕を付けたものを広電機関が審査してから放送する必要があること等の項目を規定しているとされる。他方、NRTAは2018年9月、「海外視聴番組輸入・伝播管理規定(案)」の意見募集を開始。同案では、①国務院広電主管部門の批准を経ないと、放送機関は午後7時~10時の時間帯で海外の視聴番組を放映してはならない、②放送機関の各チャンネルが毎日放送する海外の映画・テレビドラマ・アニメ・ドキュメンタリー・その他の海外テレビ番組は、当該日、当該区分の番組の全放送時間の30%を超えてはならない、③中国の国家の尊厳、栄誉、利益を損ない、社会安定を脅かし、民族感情等を傷つける活動に従事する海外組織が制作に関与又は上述の行為を行う個人が参加する番組を輸入・伝播してはならないこと等について規定している。

3 衛星放送の直接受信規制

域外(外国及び香港、台湾、マカオ)の衛星放送は、SAPPRFT(現NRTA)が認可したチャンネル(CNN、CNBC Asia、BBC World News、NHKワールド・プレミアム、TVB8(香港)等)に限って、外国人が利用する三つ星以上のホテルや外国人住宅区、外資系企業等での受信が許可されている。これらの域外衛星放送の電波は、規制機関の域外衛星放送用送受プラットフォーム(CBTV)でいったん受信、スクランブルをかけた後、衛星Apstar 6(東経134°)を通じて再送信することになっている。このシステムを経由しない域外衛星放送の直接受信は禁止されている。

一方、第12次5か年規画期間(2011~2015年)中に、「戸戸通(テレビ)プロジェクト」をはじめとする直接放送衛星公衆サービスの展開が進められている。受信範囲を限定するために、サービス用セットトップボックス(STB)に位置ロック機能が追加されている。即ち、STBが移動体通信の基地局情報を識別することにより、STBの使用地域を限定させている。

4 デジタル放送

(1)地上デジタルテレビ放送

2015年1月、SAPPRFT(当時)は財政部と共同で「中央ラジオ・テレビ番組のデジタル無線信号によるエリア・カバーのプロジェクト実施の推進に関する通知」を発出し、2段階の取組みが示された。①2015年までに、全国の地上放送送信機において、CCTVの12チャンネルの地上デジタル放送を実現し、中央ラジオ番組の3チャンネルの地上デジタル放送の試行を開始する、②2015~2016年には、CCTVの地上デジタル放送のカバー状況を確認しながらエリア・カバレッジを引き上げていくとともに、中央ラジオ番組の地上デジタル放送の試行状況を確認しながらその後の地上デジタル放送の推進案を策定し、年度を分けて実施する。

地上デジタル放送への移行が遅れる中、特に5G網の整備に必要とされる700MHz帯の明渡しが求められていることもあり、2020年1月、NRTAは「全国地上デジタルテレビ放送周波数計画」公表し、各地におけるアナログ放送の終了を促した。

(2)ケーブルテレビのデジタル化

全国の大・中都市で展開されるケーブルテレビのデジタル化計画では、2015年までに、すべての県級市において基本的にケーブルテレビのデジタル化を実現させたうえで、アナログ放送を終了するとした。2012年7月に公表された国務院の「第12次5か年規画期間における国家戦略的新興産業発展規画」において、すべての県レベル以上の都市におけるケーブルテレビのデジタル化という目標が再度示されるとともに、80%の都市での双方向化の実現も追加目標として明記されたが、現状では実行が遅れている。

5 「全国一網」の構築

国務院は2022年8月、「第14次5か年文化発展計画」を公表し、コンテンツ産業のデジタル化を推進する方針を示した。目標の実現に向けた基盤整備関連については、以下のとおりである。①全国ケーブルテレビ網の相互接続プラットフォームの建設を統一的に計画し、バックボーンの光ケーブル伝送網をアップグレードし、広電ブロードバンド、データセンター、スマート広電クラウド、ストリーミングCDN(Content Delivery Network)プラットフォームを建設し、スマート端末のアップグレード、IPv6の応用及び機械室等のインフラ建設を推進する。②700MHz帯5G網の構築を推進し、全国範囲のシームレスカバーを概ね実現する。③すべてのユーザ及びマルチスクリーンに向けての5Gによるハイテク(4K/8K、3D、VR/AR/MR等)動画配信サービス・プラットフォームを構築し、5Gライブ放送番組のコンテンツを中心とする放送制御システム、広電5G革新応用試験検証サービス評価システム及び監督管理技術研究システムを建設する。また、農村部向けサービス提供の取組みとして、5G放送網、業務システムの建設、スマート広電農村プロジェクトの実施、有線、無線、放送通信、マルチスクリーンの協同発展の推進等が挙げられている。

6 4K/8K

MIIT、NRTA及び中央ラジオ・テレビ総局(China Media Group:CMG)は2019年3月、「超高精細動画産業発展行動計画(2019~2022年)」を発表した。同計画では、2022年の中国における超高精細動画産業規模を4兆元以上に引き上げ、4K産業のエコシステムを基本的に整備し、8Kの重要技術製品の研究開発と産業化でブレークスルーを遂げ、国際競争力を持つ企業を創出する等の目標を掲げている。

2022年6月、NRTAはHD(ハイビジョン)及び4Kテレビの更なる加速推進に関する意見を公表した。目標では、2025年末までに、全国の地級市以上のテレビ局及び条件のある県級テレビ局によるHD放送への移行を完成し、HD及び4Kテレビ端末の普及を実現する。主な取組みは次のとおりである。

7 5Gのメディア分野への応用促進

2020年9月、中国共産党中央弁公庁及び国務院弁公庁は、各地方部門に向け、5G、ビッグデータ、クラウド・コンピューティング、IoT、ブロックチェーン、AIといった情報通信技術のメディア分野への応用を推進する通達を発表した。オンライン・オフラインの一体化の構築による伝統メディアとニューメディアの融合体制を推進する。

通達では、ネット時代の考え方に基づいた資源配分の最適化、更なる良質なコンテンツ、先進技術、専門人材及びプロジェクト資金のインターネット分野への集約、モバイル端末領域への傾斜、オフライン・リソースのオンライン分野への移行、オンライン・プラットフォームの強化による新しい宣伝手段の強化を強調した。

また、5Gをはじめとする各種情報通信技術の成果を活かし、ニュース放送分野における研究と応用を強化し、コア技術のイノベーションを推進すると明示した。そのための人材育成に力を入れ、積極的でオープンかつ効果的な人材誘致政策の実行による主流メディアの競争力を高める。

更に2020年12月にNRTAは、2022年までのラジオ・テレビ技術の開発に関する実行計画を発表した。4K/8K超高精細映像や5Gを活用した高精細動画映像の開発・発展を加速させるとした。

Ⅳ 事業の現状

2022年の放送事業収入は1兆4,888億8,000万元で、同比24.68%増加した。このうち、ラジオ・テレビ及びネット配信業務収入は9,673億1,100万元で、前年同期比25.43%増加した。財政補助金は968億7,600万元で、2020年とほぼ横ばい。その他の収入は846億9,400万元で、同比58.45%増加した。

1 ラジオ

2021年末現在、ラジオ放送の人口カバレッジは99.48%で、うち、農村地域の同比率は99.26%である。

中央レベルのラジオ局は、全国放送のCNRと国際放送のCRIである。CNRはAM、FM、短波で総合番組や音楽、少数民族向け、台湾向け、香港・マカオ向けの放送を行っている。CNR第1チャンネルは11億人以上をカバーしている。他方、CRIが44か国語による全世界向けの放送を行っているほか、インターネット・ラジオによる放送も実施している。

2 テレビ

(1)アナログ放送

2021年末現在、テレビ放送の人口カバレッジは99.66%で、うち、農村地域の同比率は99.52%である。

中央レベルのテレビ局にCCTVと教育テレビ局のCETVがある。CCTV-1(総合)とCCTV-7(子ども向け・軍事・農業)はそれぞれ11億人と9億人をカバーしている。

他方、CETVは1986年10月1日より放送を開始し、全国2,000以上の大学、40万以上の小中学校をカバーしている。CETVは総合教育や早期教育、農村向けのeラーニング等五つのチャンネルを有し、衛星テレビ、ケーブルテレビ、デジタルテレビ、移動電話、インターネット等を通じてサービスを展開している。

(2)インターネット・テレビ

ケーブルテレビ事業者によるインターネット・テレビの提供において、OTTセットトップボックスをはじめとする端末には中国独自の知的財産権を有するインターネット・テレビOSの TVOSを搭載することが必須となっている。2020年末現在、AR/VR、クラウド・ゲームをサポートするTVOS4.0がリリースされた。同時点におけるサービス提供事業者数は643で、視聴者数は9億5,500万に達しており、うち、有料コンテンツ視聴者数は6億9,000万に及ぶ。

(3)4K/8K

2021年末現在、全国にある高精細テレビ・チャンネル数は985、4Kチャンネル数は8で、8Kチャンネルは一つである。CMG及び25の省レベルのテレビ局が保有するすべてのチャンネルは高精細チャンネルにグレードアップ済みで、ニュース、ドキュメンタリー、バラエティ番組の高精細比率はそれぞれ62.3%、55.7%、59.4%に達した。

2021年10月25日に、世界初とされる24時間衛星放送4Kスポーツ・チャンネルCCTV-16が開通した。

全国教育テレビは七つの高精細チャンネルを開設しており、それぞれ、中国教育テレビ局総合教育チャンネル、上海、山東、湖南、寧夏の四つの省レベルの教育放送局チャンネル、武漢市、婁底市教育放送局の教育チャンネルである。

3 衛星放送

広大な国土という地理的条件により、「星網一体(衛星とケーブルのリンク)」政策が進められている。CCTV及びCETVの複数チャンネルのコンテンツがすべての省・直轄市・自治区に配信されるほか、省レベルの各テレビ局もそれぞれ衛星チャンネルを保有し、自局の主力番組を編成して全国に向け、計111の衛星テレビ・チャンネル配信を行っている。各家庭ではケーブルテレビ、地上デジタルテレビ、又はIPTVを介して受信する。

中国直播衛星有限公司が提供する衛星放送網は中国全土のほか、アジア地区、欧州地区もカバーしている。

直接放送衛星ChinaSat-9号はラジオ・テレビ直接放送衛星の専用周波数帯域を利用して、南中国海を含む中国全域をカバーすることができるが、現段階では主に「ラジオ・テレビ村村通」プロジェクトに用いられ、ラジオ・テレビ難視聴問題の解決策として活用されている。2021年末現在のサービス利用世帯数は1億4,800万を超えた。

4 ケーブルテレビ

ケーブルテレビの加入世帯数は2021年末現在、前年同期比1.45%減の2億400万であった。高精細及び超高精細チャンネルの視聴世帯数は1億900万で、前年同期比7.92%増加した。スマート端末ユーザ数は3,325万で、同比11.39%増加した。ケーブルテレビの双方向デジタル視聴世帯数は9,701万で、同比1.57%増加した。

Ⅴ 運営体

1 中国広播電視網絡集団有限公司(中国広電)

(通信/Ⅵ-1(4)の項参照)

2 中央ラジオ・テレビ総局(中央広電総台)(CMG)

China Media Group

所在地 北京市復興路11号、100859、中国
URL http://ygzq.cnr.cn/
幹部 Shen Haixiong(慎海雄)(局長/President)
概要

中国共産党中央は2018年3月、「党と国家機構改革深化方案」を発表し、建制上、CCTV、CNR、CRIはCMGの下に所属し、国務院の直属事業機関として、中央宣伝部の指導を受けることとした。対外的には「中国之声」(Voice of China)の統一呼称を使用する。

CMGの公表した2021年度社会責任報告書によると、CMGには29の部署、39の出先機関、二つの事業団体を有する。計51あるテレビ・チャンネルの内訳として、無料チャンネルは31、有料チャンネルは20、このうち国際放送チャンネルは9である。国内外に向けて44の言語による23のラジオ・チャンネルを運営しているほか、央視頻、雲聴等30のニューメディア及び央視網、央広網、国際オンライン等のウェブサイトを運営している。世界初となる24時間衛星放送4Kスポーツ専門チャンネルを開始したほか、国内初の8K超高精細チャンネルであるCCTV-8Kの実験放送に成功した。

なお、CCTV、CNR、CRIはそれぞれの従前の名称で存続し、独自の公式サイトを維持する。

3 中央人民ラジオ放送局(中央人民広播電台)(CNR)

China National Radio

Tel. +86 10 6390 9788
URL http://www.cnr.cn/
所在地 北京市復興門外大街2号、100866、中国
概要

計14系統で1日合わせて約300時間の放送を行い、いずれのチャンネルも衛星経由で全国に放送され、インターネットを通じての聴取もできる。また、4系統のデジタルラジオ番組、3系統の携帯ラジオ番組、2系統のデジタルテレビ番組、及び1系統のモバイルテレビ番組を運営しているほか、複数の雑誌も発行している。

このうちのモバイルテレビ用チャンネルは、基礎通信事業者3社との相互接続によって実現されている。同プラットフォームは、国内外250社以上のコンテンツ業者を取り込み、1日当たり2,100分を超える番組内容を更新し、サービスを提供している。

4 中国国際ラジオ局(中国国際広播電台)(CRI)

China Radio International

Tel. +86 10 6868 6196
URL http://www.cri.cn/
所在地 北京市石景山路甲16号、100040、中国
概要

1941年に設立された国際放送局で、2017年現在、44か国語で全世界に向けて放送を行っている。2016年末現在、毎日3,000時間以上のコンテンツを制作・放送、カバレッジは50か国以上の国の首都と主要都市に及び、カバー人口は5億人に上る。

ほかにも、世界中の101の放送局と提携関係を持ち、46か国に支局(うち地区総局8か所)を開設しているほか、番組制作スタジオ、ラジオ孔子学校等の100近くの関連機関を開設している。外国向け放送のほか、中国国内向けにもFM放送を行っており、全国の主要都市で24時間放送(一部チャンネル)を行っている。

CRI傘下の中国国際放送ネットワーク・テレビ(China International Broadcasting Network:CIBN)は、インターネット視聴番組、モバイルテレビ、IPTV、インターネット・テレビ等の新メディアを通じて、全世界の視聴者に時事、政治、経済、文化、体育、観光、社会、中国語教育等のサービスを提供している。

5 中国中央テレビ局(中国中央電視台)(CCTV)

China Central Television

Tel. +86 10 6850 6510
URL https://www.cctv.cn/
所在地 北京市復興路11号、100859、中国
概要

13のデジタル有料チャンネル(同社サイト)を含む43のテレビ・チャンネルのほか、ニューメディア業務に対応するための子会社として設けられているCNTVは、ニュース、スポーツ、バラエティ・チャンネルのほか、オンライン生放送及びVOD、動画のアップロード・サービスも提供している。受信端末はPCに加え、移動電話、IPTV、車載端末、ネットテレビの5種類で、英語、フランス語、ロシア語、韓国語等の六つの外国語及びウイグル語、チベット語等の五つの少数民族語で、190以上の国・地域に向けてサービスを提供している。

6 中国国際テレビ局(中国国際電視台)(CGTN)

China Global Television Network

URL https://www.cgtn.com/
所在地 北京市朝陽区光華路A-1号、100020、中国
概要

海外向けコンテンツの提供を強化する目的で2016年12月31日に設立された。六つのテレビ・チャンネル(英語、スペイン語、フランス語、アラビア語、ロシア語、ドキュメンタリー)、三つの海外支局(米国・ワシントンDC、英国・ロンドン、ケニア・ナイロビ)、一つの動画通信社から構成され、160以上の国・地域に向けサービスを提供している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

工業・情報化部(MIIT)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

電波利用及び周波数管理は、MIITの「無線管理局」(中国語:無線電管理局)が所掌している。その主な所掌事務は以下のとおりである。

また、無線管理分野の業界標準の制定や無線管理分野の科学研究業務の統括等も行う。

2 標準化機関

中国の技術基準は、「中華人民共和国標準化法」(1988年)により次の四つの標準により構成される。

国家標準の制定は、国家標準化管理委員会(Standardization Administration of the People’s Republic of China:SAC)が行う。業界標準は通信業界を主管する行政機関としてMIITが技術標準を制定するが、具体的な標準化作業については、中国通信標準化協会(China Communications Standards Association:CCSA)が行っている。

(1)国家標準化管理委員会

Standardization Administration of the People’s Republic of China(SAC)

Tel. +86 10 8226 2921
URL http://www.sac.gov.cn/
所在地 北京市海淀区馬甸東路9号、100088、中国
幹部 Tian Shihong(田世宏)(主任/Administrator)
所掌事務

別名、国家標準化管理局。2001年に設立された国家の標準化管理部門である。国務院に直属する国家市場監督管理総局(SAMR)に所属する。国家標準の制定と発布を担当すると同時に、業界並びに地方の標準策定作業の調整・指導を行う。

(2)中国通信標準化協会(CCSA)

China Communications Standards Association

Tel. +86 10 6230 2645(国際協力部)
URL https://www.ccsa.org.cn/
所在地 北京海淀区花園北路52号、100191、中国
幹部 Wenku(聞庫)(理事長/Chairman)
所掌事務

通信関連部門において標準化を図る非営利団体として、2002年12月に設立された。活動の範囲は、標準化に関する法律・規則・方針の公布、通信標準の提案・検討・コンサルティング、国内・海外の団体との協力及び交流、関連当局・メンバー・他の組織より委託された標準化関連業務の請負等である。事務局、顧問委員会のほか、以下の標準化分野を統括する11の技術委員会及び五つの特別タスクグループによって構成されている。

(技術委員会)

(特別タスクグループ)

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

MIITは、全国の無線管理に責任を負う国家の無線管理機構として、次の電波監理業務を行う。

無線局の免許業務及び電波の割当業務は、提供サービスが複数の行政区域(省、直轄市、自治区)を対象とする場合はMIITが担当し、各行政区域内でサービスが提供される場合は、当該行政区域に置かれているMIITの地方電波管理局が担当する。なお、無線局免許は、無線局、船舶及び航空機器免許の3種類に分かれている。いずれの有効期限も一般的に3年で、満期後の更新は制度的に可能となっている。

2016年8月、電波管理に関する「国家無線管理規画(2016~2020年)」が発表され、2016年から2020年にかけてのMIITの目標、任務及び重点プロジェクトが以下のように示された。

目標
主な任務
重点8プロジェクト

2021年11月に「第14次5か年国家無線管理・発展規画」を実施する会議が開催された。会議で発言したチーフエンジニアの田玉龍氏は、周波数資源を統一的に計画し、効率的に利用しなければならない方針を強調し、無線管理技術施設の整備推進や国際協力の強化の必要性等を述べた。

2 無線局免許制度

「無線電管理条例」(通信/Ⅱ-2の項参照)の第28条は、無線局を設置、使用する者は、無線局免許を取得しなければならない旨規定している。無線局の設置や使用の条件は、使用する周波数の利用可能性、無線局の用途の明示、合理的な無線ネットワーク設計・建設計画、電磁環境規定の順守、周波数の区分・計画との合致、電波の有効利用と安全性の確保、無線従事者・専門技術者の資格・適性、国家技術基準の順守、有害な干渉の回避、利用周波数の国内外の調整等の順守等である。

また、MIITは、周波数の使用許可の管理強化、周波数の使用行為の規制、周波数資源の有効利用のため、2017年7月に「無線電周波数使用許可管理弁法」を発表し、同年9月1日から施行している。主な規定は以下のとおりである。

3 周波数割当制度・電波再分配制度

「無線電管理条例」の第13条は、国家無線管理機関が、周波数の区分と分配を統一的に実施する旨規定している。割当ては、MIIT及び地方の電波管理局が、無線局の設置・使用の認可に基づき、対象となる無線局の周波数及びコールサインを割り当てる。また、国務院内の行政機関に分配された周波数帯域と周波数は各機関が無線システムへの割当てを行い、その記録を国家無線管理機関又は地方無線管理機関へ送付する。

周波数を割り当てた後の有効利用を促進するため、MIITは、2017年12月に周波数利用率の検査に関する規定(「無線周波数使用率の要求及び検査管理に関する暫定規定」)を発表し、2018年1月1日より施行している。主な内容は以下のとおりである。

LTE、5G、IoT等の高度無線システムへの割当動向は以下のとおりである。

(1)LTE

TD-LTEに関し、中国移動は2014年1月、中国電信は同年2月、中国聯通は同年3月に、それぞれ商用サービスを開始している。またFDD-LTEについては、2014年6月、中国電信と中国聯通に対しTD-LTE/FDD-LTE混合網構築の試験免許が交付され、2015年2月には両社に対し正式のFDD-LTE免許が交付された。また、中国移動も、FDD-LTE免許を申請し、2018年4月に、MIITが、中国移動に対しFDD-LTE サービスを行うことを許可する免許を付与した。

LTE用周波数の割当てに関しては、TD-LTEへ、2.6GHz帯、2.3GHz帯が3社に割り当てられているほか、中国移動に対しては、1.9GHz帯(1880-1900MHz)も割り当てられている。

FDD-LTE試験網へは、中国聯通と中国電信に1800MHz帯が割り当てられた。中国電信に対しては、2014年12月にFDD-LTE用に2100MHz帯が割り当てられた。他の業務に割り当てられた帯域をLTEで使用することが認められており、2016年に、中国電信に対し、CDMAに割り当てられていた800MHz帯をLTEに利用することが認められた。中国聯通に対しても、同様に、他の業務に割り当てられていた900MHz帯、2100MHz帯をLTEへ使用することが認められ、両社が保有する周波数をLTEで使用することが可能になっている。その他、中国聯通は、450MHz帯を使ったFDD-LTEの試行サービスを、内モンゴル自治区の数都市で実施している。中国移動はGSMに割り当てられている900MHz帯と1800MHz帯をLTEに利用する。

(2)5G

MIITは2020年12月に、主要通信事業者3社に対して、使用期限10年間となる中低周波数の使用許可書を交付した。①中国電信が3400-3500MHz帯(100MHz)、②中国移動が2515-2675MHz帯(160MHz)と4800-4900MHz帯(100MHz)、③中国聯通が3500-3600MHz(100MHz)で、このうち2575-2635MHzは4Gへ割り当てていた帯域を再割当したものである。

5G商用免許について、MIITは2019年6月に中国電信、中国移動、中国聯通の既存3事業者のほか、中国広電(通信/Ⅵ-1(4)の項参照)にも交付した。中国広電の使用する5G試験用周波数として、MIITは2020年1月、4900-4960MHzの使用を許可し、北京等16都市おいて同帯域が使用されることを公表した。将来的には、中国広電の5G通信網の敷設状況に合わせ、これらの地域において、商用サービスに同帯域の正式使用を認めることとしている。更に2020年5月に同社に対してMIITは700MHz帯の60MHz幅(703-733/758-788MHz)を割り当てた。

また、これらと別に、2020年2月、MIITは中国電信、中国聯通、中国広電に対して、全国規模における屋内カバーとして、3300-3400MHz帯の共同使用を許可した。他の無線システムとの電波干渉に関する対策も進められており、MIITは2018年12月に5G基地局と衛星地上局等無線局の干渉問題を協調・解決すること等を目的とした「3000-5000MHz周波数帯5G基地局と衛星地上局等無線局の干渉協調管理弁法」を発表し、5G基地局と衛星地上局、固定業務の無線局、電波天文観測局の3種類の無線局間の干渉保護標準、協調プロセス、干渉軽減措置等を規定している。更に2021年1月には、「5Gシステム・リピーター装置の周波数技術要求(試行)」を公表し、2515-2675MHz、3300-3400MHz、3400-3600MHz及び4800-4960MHz帯に関する技術要件を規定した。また、同3月に5Gサービスを用途とする2.1GHz帯の技術要件を公表した。今回の決定を受け、中国電信及び中国聯通は4G用周波数であった1920-1965MHz、2110-2155MHzにおいても共同による5G網の構築が可能となった。更にMIITは2022年11月、中国聯通に対して、同社のこれまで2G、3G、4Gで利用していた900MHz帯(904-915/949-960MHz)の5Gへの転用を承認した。

ミリ波帯について、MIITは2019年7月に、中国情報通信研究院の試験室や北京市内の5G技術屋外試験場での試験用周波数として、24.75-27.5GHz、37-42.5GHzを使用することを許可している。また、MIITは2023年1月、「マイクロ波通信周波数の使用計画調整及び無線管理に関する通知」(工信部無[2022]176号)を発表し、2023年2月1日から施行することになった。その中には、4500-4800MHz、7125-7725MHz、7725-8500MHz、10.7-11.7GHz、12.75-13.25GHz、14.5-15.35GHz、21.2-23.6GHzと71-76GHz/81-86GHzの使用追加が明記された。

(3)モノのインターネット(IoT)

MIITはNB-IoTの周波数について、2017年6月に800MHz、900MHz、1800MHz、2100MHzの各帯域の使用に関する技術要件が公示されている(MIIT 2017年第27号)。800MHz、900MHz帯を使用するNB-IoT基地局の設置については、800MHz帯CDMA基地局や900MHz帯GSMの無線局設置に関する技術要求([2002]65号)に準拠し、また、1800MHz、2100MHz帯を使うNB-IoT基地局の設置については、IMT基地局の設置に関する技術要件(MIIT 2015年第80号)に準拠することが規定された。

2021年6月にMIITは、産業用アプリケーションの適応性及び周波数の利用効率を高める目的で、「工業インターネットとIoT無線周波数使用のガイドライン(2021年版)」を公布した。公共移動通信システム、専用移動通信システム、2400MHz、5100MHz、5800MHz帯無線接続システム(無線LAN)及び微弱電波短距離無線送信機器について、周波数計画や干渉調整等の多方面にわたり、関連規定を分類・解説した。

(4)無人航空機システム

MIITは、2015年4月に「無人航空機システム専用の周波数に関する通知」を公表し、無人航空機サービス向けに専用の周波数帯域840.5-845MHz、1430-1444MHz、2408-2440MHzを割り当てることを発表した。同通知では、①840.5-845MHzは無人航空機システムのリモコン操縦の上り通信に利用するとされ、このうち841-845MHzは時分割で上りと下りのリモコン操縦に利用することも可能とする、②1430-1444MHzはリモコン操縦の下り通信に利用するとされ、このうち1430-1438MHzは警察用無人航空機やヘリコプターの動画伝送に利用し、他の無人航空機は1438-1444MHzを利用する、③2408-2440MHzは無人航空機の上り通信や下り通信、情報伝送の予備用周波数帯として利用すること等が規定されている。

(5)スマート・インターネット自動車

2018年11月に、MIITは同年12月1日より施行する「車のインターネット(スマート・インターネット自動車)(車聯網(知能網聯汽車))の直接通信に使用する5905-5925MHz周波数帯管理規定(暫定)」を発表した。

また、2021年11月には「車載レーダの無線管理暫定規定」を発表し、76-79GHz周波数帯を車載レーダ用に割り当て、主な応用シーン、技術要求、管理方式及び設置使用、干渉要求等について規定した。

4 電波監視体制

MIITの国家無線監理センターが電波監視を行っている。同センターは1988年に設立され、国内で使用あるいは開発中のすべての周波数帯域における無線機器の利用を対象としている。なお、2016年11月に「無線電管理条例」が改正され(施行は同年12月1日)、「偽りの基地局」を利用して通信詐欺を行う等の違法活動への処罰を強化し、違法な電波放射に対し、無線管理機関は無線局等を差し押さえることができるほか、必要な場合、技術的遮断措置をとることができることを規定した(第67条)。

5 電波利用料制度

(1)制度概要

「無線周波数占用費管理弁法」(2009年8月公布)により、電波資源の占用者は、国庫に電波利用料を支払うこととされている。同管理弁法の主な規定は以下のとおりである。

なお、「民法典」及び「無線電管理条例」における電波資源の国家所有規定を根拠に、同制度による収入は国家資源による収入に位置付けられ、このため、同制度の主管は財務部とされている。料金の徴収業務はMIITが行っている。また、政府調達原則に従い、中国が自ら開発生産した設備及びソフトを優先的に調達することとされている。

(2)料金

セルラー用周波数の利用料は、使用する周波数帯ごとに料金が設定され、1MHz当たりの年間料額は以下のとおりである。

(全国規模)
(省規模)
(市、地、州規模)

5G用周波数を含む一部の公衆移動体通信システムの周波数利用料は、以下のとおり値下げされている。

①3000MHz以上の周波数帯

全国の地域で使用する周波数帯のうち、3000-4000MHzについては1MHz当たり年間800万元を500万元に、4000-6000MHzについて同800万元を300万元に、6000MHz以上については800万元を50万元にそれぞれ引き下げる。

②5G公衆移動体通信システム

5G公衆移動体通信システムの周波数利用料基準について、5G公衆通信システム周波数の利用許可証が付与された日から1~3年目(財務年度。以下、同じ)は周波数利用料を免除、4~6年目については、それぞれ国が規定する料金基準の25%、50%、75%を徴収、7年目以降は料金基準の100%を徴収する。

③利用範囲が制限された(例えば、屋内に限定)公衆移動体通信システム

国が定める料金基準の30%を徴収する。

6 電波の安全性に関する基準

電波防護の基準値は2014年9月に公布された国家標準「電磁環境規制制限値」(GB 8702-2014)により規定されている。「中華人民共和国環境保護法」に基づき、電磁環境の管理の強化と公衆の健康の保障を目的にしている。同標準の前文では、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の「電界及び磁界へのばく露制限に関するガイドライン(300GHzまで)(2008年)」及びIEEEの「0Hz~3kHzの電磁界への人体ばく露に関する安全レベル」を参考に作成された標準であることが明言されている。GB 8702-2014の制定に伴い、それまでの規定であった「電磁輻射防護規定」(GB 8702-88)及び「環境電磁波衛生標準」(GB 9175-88)は廃止された。

Ⅲ 周波数分配状況

現行の周波数分配表は2018年7月1日から施行されている(2018年MIIT令第46号)。