エクアドル共和国(Republic of Ecuador)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 電気通信・情報社会省

Ministry of Telecommunications and Information Society

Tel. +593 2220 0200
URL https://www.telecomunicaciones.gob.ec/
所在地 Av. 6 de Diciembre N25-75 y Av. Colon, Quito, ECUADOR
幹部 Vianna Maino(大臣/Ministro)
所掌事務

2009年8月にラファエル・コレア大統領(当時)の行政命令により設立された。電気通信・放送・郵便分野の政策決定権を有する。情報社会の構築と電気通信サービスへの平等なアクセスの普及を使命とする。電気通信及び放送に関する政策の設定や調整、短期・中期的な政策の策定と推進、電気通信分野でのプロジェクトの監督や評価等を所掌する。また、郵便規制管理局の廃止に伴い、2020年7月から郵政事業管理・規制を引き継いだ。

2 電気通信規制庁(ARCOTEL)

Agency for Regulation and Control of Telecommunications

Tel. +593 2294 7800
URL https://www.arcotel.gob.ec/
所在地 Av. Diego de Almagro N31-95 entre Whymper y Alpallana, Quito, ECUADOR
幹部 Andrés Jácome Cobo(長官/Executive Director)
所掌事務

2015年2月に制定された法律4399号、「電気通信基本法」の施行に基づいて設立された。電気通信・情報社会省の下で、以前の規制機関である国家電気通信審議会(CONATEL)及び政策立案を担当する国家電気通信事務局(SENATEL)の役割と、通信監督庁(SUPERTEL)が所掌していた周波数の管理・監督、統計分析等を担当する。また、ソーシャルメディアや音声・動画ネットワーク・チャンネル・周波数の管理も行う。

Ⅱ 法令

電気通信基本法(The Organic Telecommunications Law

「1992年電気通信特別法」を置き換える法律として2015年2月に施行され、電気通信・情報社会省の監督下にARCOTELが設立された。加入者数に応じて、通信・放送事業者に加算税が課せられた。例えば、30%の市場シェアがある移動体通信事業者や有料テレビ事業者は、年間売上高の0.5%を追加で納税しなければならない。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

独占的に電話関連事業を実施してきた電気通信公社IETELが「1992年電気通信特別法」に基づき、規制を担当するCONATEL、監督を担当するSUPERTEL、電話サービスの提供を実施するEMETELの三つの機関に分割された。その後、EMETELは株式会社化され、1999年にアンディナテル(Andinatel)とパシフィックテル(Pacifictel)の2社に地域分割された。なお、2015年2月の「電気通信基本法」の施行に伴い、電気通信に関する事項はARCOTELが所掌することになった。同法第37条により、電気通信事業に対しては、免許、認可、登録の3区分が設けられている。

2 競争促進政策

(1)自由化

2002年1月に固定電話市場が自由化され、それまで国営のアンディナテルとパシフィックテルが分割独占して提供していた固定電話サービスに民間からの新規参入が認められた。

(2)番号ポータビリティ

2008年5月に移動電話の番号ポータビリティ(Mobile Number Portability:MNP)制度の導入が決定し、2009年10月からサービスが開始されている。2014年11月の制度改善により、MNPの手続に要する時間が24時間に短縮されるとともに手続も簡素化された。

(3)MVNO

ARCOTELが2014年7月にMVNO参入のための規制を整備したが、MVNO市場には、MNOのモビスター・エクアドル(Movistar Ecuador)のサブブランドTuentiが参入したのみである。2016年にヴァージン・モバイル(Virgin Mobile Latin America)のMVNO参入が許可されたものの、MNOとのネットワーク利用合意に至らずサービス開始までに時間がかかっていたが、2019年9月、レニン・モレノ大統領(当時)がヴァージン・モバイルの早期参入を後押ししたことで、電気通信・情報社会省は近日中の同社のサービス開始見通しを発表した。しかしながら、以降は2021年10月現在に至るまで、同社の市場参入についての発表はない。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

ルーラル地域や都市周辺部で、基本的な電気通信サービスにアクセスできるようにすることを目指し、2003年7月に「ユニバーサル・サービス計画(Plan de Servicio Universal)」が発表された。

2010年3月に電気通信開発基金(Fondo de Desarrollo de Telecomunicaciones:FODETEL)が設立され、全通信事業者は四半期ごとに収入の1%を同基金に納めることが義務付けられている。同基金はユニバーサル・サービス設備基盤プロジェクトに活用される。電気通信事業法改正により、2021年からインフラ脆弱地域や社会的弱者層の遠隔教育や遠隔医療等、新技術促進や開発プロジェクトで基金を活用できるようになった。

(2)デジタル・ディバイド解消

2021年5月現在で農村や都市部の人口過疎地域にICTサービスを利用できるインフォセンターが886か所設置され、当該地域に住む人々のICT関連知識を高めデジタル・ディバイド解消を目指す取組みが進められている。インフォセンターでは、起業家向けトレーニングを含めたICTトレーニングを実施している。

4 ICT政策

(1)情報通信技術国家計画2016~2021

ICT分野が2016~2021年の間に取り組むべきプログラムとプロジェクトを盛り込んだ国家計画である。同計画は2章で構成されており、情報通信技術分野の進歩、国家計画の目的、方針、プログラム、プロジェクトが盛り込まれている。

(2)「デジタル・エクアドル」アクションプラン

アンドレス・ミチェレナ電気通信・情報社会大臣(当時)は2019年5月にコネクテッド、サイバーセキュリティ、デジタル革新の三つの柱で構成する「デジタル・エクアドル」アクションプランを発表した。プランには次の内容が盛り込まれ、5G導入に向けた取組みも開始されることになった。

2021年5月までにLTEカバレッジは60.7%に拡大、Wi-Fi拠点900か所整備、行政手続オンライン化及び簡素化等が進められた。

Ⅳ 関連技術の動向

基準・認証制度

ARCOTELが電気通信機器の基準認証を担当している。電気通信分野の端末機器、その他の機器について、電気通信網の相互接続を確保し、電気通信事業の調和ある発展を目指し、基準を策定し、機器の認証を行う。2021年4月から機器認証の手数料を無料化するとともに手続をオンライン化した。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

国営のアンディナテルとパシフィックテルが2008年10月に再統合し、国家電気通信会社(Corporacion Nacional de Telecomunicaciones:CNT)として、サービスを提供している。CNTが2021年8月末現在、83%のシェアを占める。

2002年1月に市場が自由化され、民間事業者5社が参入している。2021年8月末現在、エタパ(Etapa)、コネセル(Conecel、ブランド名:Claro)、Setel(TVCableの一部)、CeturyLink、Linkotelがサービスを提供している。

2 移動体通信

メキシコ資本アメリカ・モビル(America Movil)傘下のコネセル(ブランド名:Claro)と、テレフォニカ傘下のモビスター・エクアドル(ブランド名:OTECEL)、国営CNTの3社の競争体制である。モビスター・エクアドルは2015年5月末に、「Tuenti」というサブブランド名でサービスを開始している。ARCOTELが公表する2021年8月末現在の加入者数による市場シェアは、コネセル51.78%、モビスター・エクアドル30.93%、CNT 17.29%の順である。また、移動電話のアクティブ・ユーザのうち約8割がプリペイド契約である。

LTEは2014年から導入されている。2021年8月末現在の移動電話加入者数は約1,634万であり、このうちLTE加入者数は約924万で約57%を占める。他社に先駆けてLTEを開始したCNTは、LTE加入者の割合が9割以上という特徴がある。移動通信網の人口カバレッジは、2G/3Gが96%、4Gが60%である。2019年から5G導入に向けた動きが見られ、コネセルは同年9月にグアヤキル市で5Gの技術テストを開始している。CNTは2021年2月に5Gインフラ・ベンダとしてノキア(Nokia)を選定し、国内初の5G導入ケースとして、4月にグアヤキル市とマンタ市内の計3か所に5G実証ゾーンを設置した。

主な移動体通信事業者(2021年8月末現在)
事業者 事業開始年 システム 加入者数
コネセル 1994年 GSM、W-CDMA、LTE 846万
モビスター・エクアドル 1994年 GSM、W-CDMA、LTE 505万
CNT 2003年 GSM、W-CDMA、LTE 283万

出所:ARCOTEL統計

3 インターネット

2020年12月現在のISP登録事業者数は683社で、このうち558社が固定ブロードバンド市場で実際に事業展開をしている。登録ISPの大部分が小規模事業者であり、大手4社が加入者基準市場シェアの約8割を占める。ARCOTEL統計によると、2021年6月現在の加入者基準市場シェアは、CNT(31.3%)、Megadatos(22.5%)、SETEL(11.2%)、コネセル(12.0%)の順であり、固定ブロードバンド普及率は約12.9%である。業界推計による固定ブロードバンドの技術標準別加入割合は、2020年末現在、DSLが24.0%、ケーブルが21.7%、光ファイバ(LAN)が48.1%であり、この数年で光ファイバへの加入移行が進んでいる。

Ⅵ 運営体

1 国家電気通信会社(CNT)

Corporacion Nacional de Telecomunicaciones

Tel. +593 2 256 1900
URL https://www.cnt.gob.ec/
所在地 Avenida Veintimilla y Juan L. Mera, Edificio Studio Z, Quito, ECUADOR
概要

国営の固定通信事業者のアンディナテルとパシフィックテルが2008年10月に統合され、CNTとして電気通信・情報社会省の管轄下にある。固定通話、インターネット、移動体通信サービスを提供する総合通信事業者である。固定通信市場では、通話で約8割、ブロードバンドで3割強の市場シェアを有する支配的事業者であるが、移動体通信市場では後発のため市場シェア第3位である。国内他社に先駆けてLTE商用サービスを開始している。

2 コネセル

Conecel

Tel. +593 4 500 4040
URL https://www.claro.com.ec/
所在地 Av. Francisco de Orellana y Alberto Borges – Edificio Centrum, Guayaquil, ECUADOR
概要

1994年にアナログ方式で市場に参入してから、2000年にメキシコ資本のアメリカ・モビル傘下となった国内最大手の移動体通信事業者である。国内最大雇用企業の一つでもある。

3 モビスター・エクアドル

Movistar Ecuador

Tel. +593 2 222 7700
URL https://www.movistar.com.ec/
所在地 Avenida Republica y La Pradera, Quito, ECUADOR
概要

スペイン資本テレフォニカ傘下の移動体通信事業者で、1994年にコネセルに数か月遅れて市場に参入した。2005年9月にGSMの全国展開を達成するのに先立ち、2003年1月にCDMA規格で3Gサービスを開始したが、2009年以降、W-CDMA規格に変更し、2011年末にCDMA規格でのサービスを終了した。2015年5月にLTEサービス提供を開始している。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 電気通信・情報社会省

(通信/Ⅰ-1の項参照)

2 電気通信規制庁(ARCOTEL)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2015年2月に施行された電気通信基本法に基づき、放送事業者を監督する。

Ⅱ 法令

1 ラジオ放送とテレビ法(Ley de radiodifusión y televisión

ラジオやテレビのチャンネルや周波数の付与、プログラムの質や放送局の従業員に関する規定等が定められている。

2 コミュニケーション法(Communication Law

2013年6月、国民議会により可決された。放送に配分された周波数の集中所有を禁止するとともに、この周波数を民間事業者に33%、公共事業者に33%、コミュニティ事業者に34%の比率で割り当てることを規定している。現状では民間事業者は全体の80%の放送向け周波数を割り当てられている。

3 電気通信基本法(The Organic Telecommunications Law

2015年2月に施行され、電気通信・情報社会省の監督下にARCOTELを設立した。加入者数に応じて、通信・放送事業者に加算税を課している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

外資規制

「ラジオ放送とテレビ法」第3条で、放送事業者の外資比率は25%を超えてはならないと規定されている。

2 コンテンツ規制

「ラジオ放送とテレビ法」第44条により、ラジオやテレビのプログラムの内容はエクアドル・ラジオ・テレビ協会(Asociación Ecuatoriana de Radio y Televisión:AER)やエクアドル・テレビチャンネル協会(Asociación de Canales de Televisión del Ecuador:ACTVE)の倫理規定を順守しなければならないと規定されている。また同法第48条では、公式言語はカスティーリャ語(スペイン語)とケチュア語とされている。

3 地上デジタル放送

エクアドルは、2010年3月にブラジル、ペルー、アルゼンチン、チリ、ベネズエラに続いて南米で6番目に地上デジタル放送方式として日本方式(ISDB-T方式)の採用を決定した。

2012年、国営放送のエクアドルTVが首都キトで地上デジタルの試験放送を、民間放送事業者TC. Canal Unoが専用端末による地上デジタル契約放送の提供を開始した。更に、2013年5月、民間放送事業者Tc Mi Canalが国内初の地上デジタル放送での無料商業放送を開始している。電気通信・情報社会省が2018年9月に発表した地デジ移行マスタープランでは、アナログ停波を次の4段階に分けて2023年までに実施する計画である。

  1. 2020年5月:首都キト及び周辺地域
  2. 2020年7月:グアヤキル市及び周辺都市
  3. 2022年6月:人口20万~100万人の都市
  4. 2023年12月:人口20万人未満の都市

また、低所得者層に対し、セットトップボックス4万台を無償提供する計画も検討されている。2013年10月には、受信機の高性能を国民に知らしめ、購入を促すためのキャンペーンを政府が開始している。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

2021年8月現在、免許を取得しているラジオ局はAM局が112件、FM局が1,162件である。主なラジオ局には、PÚBLICA FM、Radio Centro、HCJB、CREサテリタル(CRE Satelital)、ラジオ・スクレ(Radio Sucre)等がある。2020年5月にモレノ大統領(当時)が表現の自由を保障する公共政策の一環としてFMラジオ周波数割当方針を発表したことを受け、ARCOTELは7月から2020年末までのFMラジオ周波数割当プロセスを進めている。民間・コミュニティラジオで合計621件の申請が受け付けられた。

2 テレビ

地上テレビには公共放送エクアドルTV(ECTV)に加え、チャンネル1(Canal 1)、TCテレビジョン(TC Television)等がある。

3 衛星放送

ディレクTVラテンアメリカ(DirecTV Latin America)が1996年からサービスを開始している。ディレクTVラテンアメリカが市場を独占していたが、2012年第4四半期にCNTが独自のプラットフォームで市場に参入し、2018年6月現在、DTH(衛星直接受信)7社が市場に参入している。2021年6月末現在、国内有料放送市場で最も加入者を抱える事業者はディレクTVラテンアメリカで、加入者数は約32万である。ARCOTELが公表する衛星とケーブルを合わせた有料放送の加入者数は申告ベースと推定ベースで乖離があるが、推定ベースでの有料放送普及率は2021年6月現在で17.9%である。

4 ケーブルテレビ

2019年6月末現在、250社が市場参入している。加入者が1万人以上の規模の事業者はSetel等数社にとどまる。

Ⅴ 運営体

Medios Públicos EP(旧国営テレビラジオ通信公社)

Tel. RPE:+593 2 397 0800
URL https://www.ecuadortv.ec/
所在地 Edif. Medios Públicos, San Salvador E6-49, y Eloy Alfaro, Quito, EQUADOR
概要

国営テレビラジオ通信公社(RTVECUADOR E.P.)が公共メディア運営機関Medios Públicos EPとして改組された。エクアドルTV、PÚBLICA FM等を運営している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 電気通信・情報社会省

(通信/Ⅰ-1の項参照)

2 電気通信規制庁(ARCOTEL)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

「電気通信基本法」第1章第1節第4条に電波の管理・規制は政府が所掌すると定められている。

2 無線免許制度

「電気通信基本法」(以下、「法」と呼ぶ)で、周波数の利用について定められている。法第16条により、周波数の割当ては国が策定する国家周波数割当計画に基づいて行うこととされている。また、法第18条により、周波数は公共財であり、その使用には免許が必要とされている。法第37条により、免許には①免許:電気通信事業者や放送サービス等の利用、②認可:公的機関の利用、③サービスの登録:私的利用やアマチュア通信等の3種類がある。

法第5章第2節には、周波数利用について更に細かに規定されている。以下にその概要を示す。

①周波数の割当て・利用

法第50~52条に周波数利用の許可について規定され、申請者が割り当てられる周波数の数を超える場合、技術又は市場の理由から周波数の利用が期待されるサービス数よりも限られている、新しいサービス・プロバイダに付与する周波数の経済的評価が高い、新しい大規模サービスの提供が目的とされている場合は、オークションにより免許を付与することができるとされている。

また、免許の期間は関連するサービスの有効期間とし、サービスに関連しない場合は5年間であり、必要であれは再割当が可能である。

電気通信・情報社会省は700MHz帯/2.5GHz帯をオークションで割当新規参入に道を開く方針を2021年1月に明らかにしている。5G用途3.5GHz帯オークションについても過去に言及があったが、計画は遅れており、2021年10月現在、具体的スケジュールは未発表である。2020年にはFMラジオ周波数割当が実施され、ARCOTELは同年末以降に新たにテレビ放送周波数割当を進める方針を示している。

②電波利用料

法第39条により、周波数利用には手数料及び利用料の支払いを必要とする。更に、法第54条において、利用料の金額は周波数の評価、免許付与者の推定収益又は投資額、カバレッジ、契約上の規定、ユニバーサル義務への準拠等を考慮してARCOTELが決定するとされている。

3 電波監視体制

ARCOTELが無線局をはじめとした電波の監視を行っている。

4 電波の安全に関する基準

電波の安全に関する基準は、ARCOTELが2005年に「決議01/2005」にて規定している。基準は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の制限値に基づき策定されたITU-T勧告K52に基づいている。

Ⅲ 周波数分配状況

法第95条により、ARCOTELが「周波数国家計画」(Plan National de Frecuencias)を策定・更新し公表している。