エジプト・アラブ共和国(Arab Republic of Egypt)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 通信・情報技術省(MCIT)

Ministry of Communications and Information Technology

Tel. +20 2 3534 1300
URL https://mcit.gov.eg/
所在地 New Administrative Capital、Government District  Building No.: 10B-L2M、EGYPT
幹部 Amr Talaat(大臣/Minister)
所掌事務

情報社会化を目的に、電気通信産業振興、ICTリテラシーの向上等を中心とした政策立案を所掌する。

2 国家電気通信規制庁(NTRA)

National Telecommunication Regulatory Authority

Tel. +20 2 3534 4000
URL https://www.tra.gov.eg/
所在地 Smart Village, Building No.4, Cairo, Alex Road, KM28, EGYPT
幹部 Mohamed Shamroukh (長官/Executive President)
所掌事務

「電気通信規制法2003年法第10号(Telecommunications Regulation Act, Law No.10 of 2003)」により、事業者の規制監督全般を所掌する独立規制機関として設立され、通信事業者への免許付与、規制政策の立案、消費者保護、統計・市場調査、ユニバーサル・サービス基金の運営、相互接続管理、番号、周波数等希少資源の管理、機器の型式認定、技術基準管理、を所掌する。

Ⅱ 法令

電気通信規制法2003年法第10号(Telecommunications Regulation Act, Law No.10 of 2003

NTRAの所掌を規定するほか、市場の自由化、規制緩和への方向性を示し、支配的事業者指定やその支配力の濫用に対する罰則等を規定している。そのほか、周波数管理に関連するNTRAの主管事項を規定している。通称、2003年電気通信法。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

2020年に発行された通信事業者向けの免許付与規定では、以下のカテゴリーの下で、20余りの業種が免許を要するサービスとされている。①固定通信(固定電話、データ通信、クラウドセンター等)、②無線通信(移動電話、衛星通信、航空通信等)、③国際通信ゲートウェイ、④インフラ運用(通信タワーその他)。免許取得に際しては、NTRAへの申請及び書類審査を経ることとされている。各サービスの件数や外資規制について当該の資料には記述されていない。免許期間は、海底ケーブルが20年、データセンターや音声通話にかかわるものが15年、インターネット・サービスにかかわるものが5年等、サービスの種別により異なる。

2023年現在の主なサービスの免許付与数は、固定電話:1、移動電話:4 、VSAT:8、衛星移動体通信:7、海底ケーブル運用:1等である。

2 競争促進政策

(1)相互接続

「電気通信規制法2003年法第10号」第28条により、免許取得事業者間の相互接続は自由であるが、合意事項に関しては必ずNTRAの承認を得ること、独占を助長する行為を行わないこと等が義務付けられている。

(2)卸売提供制度とMVNO促進政策

「電気通信規制法2003年法第10号」第28条に従い、NTRAは電気通信基盤を有する事業者にコストベースの料金での非差別的な卸売サービスの提供を義務付けている。ただし、現行の基本法等では、MVNOの市場参入に関する規定はなく、2023年半ばまで参入の事実はない。

(3)市場支配的事業者規制

NTRAは加入者シェアや所有施設の量等の基準により市場支配的事業者を指定する権限を有し、指定事業者に卸売事業での会計分離や支配力維持を目的とした抱き合わせ商品販売の禁止、基本通信施設の他事業者への開放等を義務付けることが可能である。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

NTRAは、ユニバーサル・サービスの範囲を、通話、インターネット接続、緊急通信、消費者センターへの苦情受付サービスへの接続の提供と定義し、①平均所得の低いルーラル地域の住民、②通信サービスの購入ができない低所得者、③障がいを持つ人々、④学校や病院等の公共施設を主な受益者としている。サービス費用については、NTRAが管理するユニバーサル・サービス基金が財源となり、国内の免許取得事業者は、前年の売上高の1%の拠出を義務付けられている。

同基金の出資した近年のプロジェクトでは、ルーラル地方での移動体通信基地局増設と道路での接続環境改善が主目標とされている。移動体通信基地局設置は、同基金と電気通信事業者が費用を折半し、2023年末までに目標値1,672の約89%までを達成した。

(2)固定ブロードバンド接続基盤拡張

2019年に経済全体の持続可能な成長戦略として政府が発表した「Egypt Vision 2030」には、ルーラル地域への超高速ブロードバンド接続提供が目標の一つに掲げられている。接続対象となる自治体数は約4,600である。2021年9月、国営総合通信事業者テレコム・エジプト(Telecom Egypt:TE)は、2020年初めからの18か月内に1,400余りの自治体での光ファイバ接続事業に関与していると発表した。2023年12 月までに、TE は390村での光ファイバ接続作業を完了している。

4 ICT政策

(1)デジタル社会化計画

MCITは、「Egypt Vision 2030」の一環として、ポータルサイト上で「ICT 2030 Strategy」を掲げ、ICT産業の発展と各種サービスの利活用の増大による、経済成長への貢献という目標を提示している。これに基づくデジタル社会化計画「Digital Egypt」は、①国民のデジタル利用環境の充実、②デジタル人材育成と雇用創出、③デジタル・イノベーションの推進にかかわる各種プロジェクトを実施している。MCITのウェブサイトで紹介されているプログラムには、デジタル・ベンチャー企業の立ち上げや遠隔教育利用に関するガイドラインやニュースの提供等がある。また、電子政府サービス・プラットフォーム上で利用可能な行政サービス数は、2023年には168、登録者数は800万に達した。

(2)セキュリティ対応

NTRAの下部組織であるエジプト・コンピュータ・緊急対応チーム(Egyptian Computer Emergency Readiness Team:EG-CERT)が、一般からのサイバー犯罪の相談受付、事故内容分析と対抗措置の立案を行う。同所はまた、セキュリティに関する啓発活動や関連省庁との連携に基づく政府情報網の保護等のほか、対応人材の研修プログラムを実施している。

(3)AI戦略

2019年に政府内に創設された「国家AI委員会」が、政府サービスの効率化、スタートアップや中小企業も含む産官学のエコシステム形成、国際社会でのプレゼンスの強化等を目標とした「国家AI戦略」を推進、各種啓発イベント等を主宰している。中心的な適用分野は、①農業・治水、②医療、③自然言語処理、④経済計画、⑤ものづくりインフラ管理とされている。2023年末、委員会は2024年5月からの戦略の第2フェーズでは、関連人材の育成キャンペーンとビッグデータ処理のための大規模データセンターへの投資に注力すると発表した。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

技術基準の設定及び電気通信端末機器及び無線通信機器の型式認証、また輸入される電気通信機器の審査はNTRAが所掌、通信端末・無線機器の利用には、NTRAによる書類審査及びサンプルテストに合格していることの証明が必要である。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

PSTNではTEの独占が続いている。移動体通信の成長に伴い、加入数は一時減少したが、2017年からは再増加に向かい、2024年6月現在の加入回線数は約1,284万に達し、普及率は約11.9%である。回線の約78%が都市に集中している。

2 移動体通信

2024年1月にTE、同10月にオレンジ・エジプト、ボーダフォン・エジプト、e&Egyptに5G免許が付与された。スマートフォンについては、iPhone、サムスンGalaxyシリーズのほか、多数のメーカーの製品購入が可能であり、近年はXiaomiやOPPO等の中国製品の導入が目立っている。

3 インターネット

モバイルブロードバンド利用者は2024年6月現在、携帯サービス加入者の72%強に当たる7,549万となっている。

モバイル・マネー・サービスは、2016年にオレンジ・エジプトが開始、2024年10月現在、ボーダフォン・エジプト及びe&Egyptも実施している。

Ⅵ 運営体

1 テレコム・エジプト(TE)

Telecom Egypt

Tel. + 20 01555000111
URL https://ir.te.eg/
幹部 Mohamed Nasr Eldin(最高経営責任者/CEO)
概要

1854年に設立された。1998年に公共事業体から株式会社(株式は2023年現在で政府が70%所有)に転換した。

2023年度の総売上高は、データ事業の大幅な伸長により、前年比約28%増の約567億EGPであった。

2 ボーダフォン・エジプト

Vodafone Egypt

Tel. +20 25292000
URL https://web.vodafone.com.eg/
幹部 Mohammed Abdallah(最高経営責任者/CEO)
概要

1998年にエジプトで2番目の移動体通信事業者として市場に参入、2022年12月から、株式の約55%を南アフリカのボーダコム(Vodacom)、45%をTEが保有している。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 メディア規制最高評議会(SMRC)

Supreme Council for Media Regulation

所掌事務

国内のメディア事業全般の規制を所掌し、放送規制機関を指導する。

2 国民メディア機構(NMA)

National Media Authority

URL https://www.maspero.eg/
所在地 Radio & TV Bldg., Sharia Maspero Corniche eo-Nil, Cairo, EGYPT
幹部 Hussein Zain(総裁/President)
所掌事務

国内の放送監督機関として2018年に設立。放送・インターネットコンテンツ規制等を行っている。また、従来エジプト・ラジオテレビ放送連合(Egyptian Radio and Television Union:ERTU)が行ってきた国営ラジオ・テレビ事業を引き継いだ。

Ⅱ 法令

1 2018年法第178号(Law No. 178 of 2018

NMAの設立条件を規定している。

2 2018年法律第180号(Law No 180/2018

SMRCの設立条件を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

2000年に地上放送、2002年には衛星放送サービスの実施に際しての免許取得が義務付けられた。免許の付与、更新等の手続はSMRCが所掌している。また、国内での商業活動には、大統領府下での国外投資監視機関である投資フリーゾーン庁(General Authority for Investment and Free Zone:GAFI)への届出と許可証の取得が必須とされている。

2 コンテンツ規制

SMRCが放送番組内容の監視を行っており、反社会的・反国家的内容を含む番組については、放送禁止を命じることが可能である。

3 地上デジタル放送

放送の開始は2015年で、DVB-T2方式を使用している。完全移行期限は2020年6月とされていたが、2023年のアフリカ電気通信協会資料では、同年5月現在でデジタル放送は人口の約90%をカバーしているものの、完全移行には至っていないと報告されている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

NMAが、総合放送1、専門放送12の全国放送のほか、4地域でローカル放送、2系統の国際放送を実施している。2003年に商業放送事業者の参入が始まり、Nile Radio等がサービスを提供している。

2 テレビ

NMAが、全国放送3系統、地域放送6系統を実施している。なお、商業放送局による地上放送は許可されていない。

全国放送のうち、Channel 1はアラビア語の総合番組、Channel 2は輸入番組も含めて娯楽中心の放送を行っている。地域放送は6地域の地方局が実施している。

3 衛星放送

NMAが、Nilesat衛星を通じて地上放送の再送信、スポーツ放送及び国際放送を実施している。

商業放送の多くは無料放送で、Dream TV、ON TV等が放送を行っている。有料放送サービスには、Al Jazeera Sports、OSN等がある。

4 ケーブルテレビ

NMAと複数の民間事業者が合弁で運営しているCable Network Egypt(CNE)がサービスを実施している。

Ⅴ 運営体

国民メディア機構(NMA)

(Ⅰ-2の項参照)

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

国家電気通信規制庁(NTRA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

「電気通信規制法2003年法第10号」により、事業者への免許付与を中心に周波数管理全般に関する権限がNTRAに与えられている。

2 標準化機関

エジプト標準化・品質管理機構(EOS)

Egyptian Organization for Standardization and Quality

Tel. +20 2 2284 5524
URL https://www.eos.org.eg/
所在地 16 training of trainers u – princely,Cairo, EGYPT
幹部 Khaled Soufi(会長/Chairman)
所掌事務

1957年に設立。産業技術省の関連団体で国庫を財源とし、国内標準の策定、国際標準化会議での国の代表、工業製品の品質検査及び品質証明の発行、等を所掌する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

電波監理政策の概要

NTRAの内局である周波数規制委員会(Frequency Regulation Committee)が、周波数利用計画の立案、事業者への周波数免許の付与、周波数割当及び利用料の設定、を所掌している。NTRAが付与する免許を取得することなしに周波数及び無線設備を利用することはできない。2024年10月の3事業者への5G周波数割当に伴い、当該の事業者の移動体通信サービス向け周波数利用免許もすべて更新された。免許期間は15年である。周波数利用料は、地上、移動体等のサービス区分により定められる。放送サービスに排他的に利用されている周波数については、対象外とされている。

Ⅲ 周波数分配状況