エルサルバドル共和国(Republic of El Salvador)

通信

Ⅰ 監督機関等

電力・電気通信総合監督機関(SIGET)

General Superintendency of Electricity and Telecommunications

Tel. +503 2257 4438
URL http://www.siget.gob.sv/
所在地 Sexta Décima Calle Poniente, y 37Av. Sur #2001, Col. Flor Blanca, San Salvador, EL SALVADOR
幹部 Blanca Coto(長官/Superintendent)
所掌事務

1996年に設立された電気通信分野の独立規制機関で、主に以下を所掌する。

Ⅱ 法令

1 1996年9月12日付政令法律第808号(Legislative Decree No. 808 of September 12, 1996

通称「1996年電気通信法」。SIGETの設立条件を規定している。

2 2016年電気通信法(Telecommunications Law, May, 2016

競争市場下での通信事業免許付与、相互接続、周波数割当方法等を規定した「改正電気通信法(Telecommunications Act, Updated November, 2010)」を更に改正、電気通信分野の新たな基本法として位置付けられた。改正部分は主に周波数管理分野で、周波数管理機関としてのSIGETの権限を強化、利用免許取得に関する情報提示や技術要件を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「2016年電気通信法」第7条により、通話サービスは公的性格を持つものと位置付けられ、固定・移動通話サービス提供に際しては、SIGETの付与する期間30年間の事業免許を必要とする。サービス地域は任意であり、1事業者が複数の免許を取得することも可能であるが、免許取得後2年以内にサービスが開始されなかった場合は、取得した免許は無効となる。また、SIGETが指定する免許不要帯域以外の周波数の利用に際しては、同法第13条により、別途周波数利用免許の取得が要される。

2 競争促進政策

(1)相互接続

「2016年電気通信法」第19~20条により、電気通信事業者は、他の事業者に対して、自社の通信網及び受動基盤への接続を非差別的条件かつコストベースの料金で提供すると定められている。また、固定通信網を所有する事業者は他事業者への回線再販に際して、料金と接続条件を自社のエンドユーザに対するものと同一にすることとされている。

(2)卸売提供制度とMVNO推進政策

「2016年電気通信法」第20-A条は、固定通信事業者によるサービスの再販は、SIGETへの事前の登録により可能であるとしている。再販を行う事業者は、契約書をSIGETに提出、登録許可を得ることとされ、契約先から受け取る料金は消費者向けサービスの基準を上回るものであってはならない。

MVNOについては、2018年9月現在、特に市場への参入を推進する政策はない。

(3)事業者事前選択制度

「2016年電気通信法」第23条により、1万以上の電話回線を有する通信事業者は、エンドユーザに対して、非差別的条件で通話中継事業者を自由に選択、登録する機会を与えることとされている。

(4)料金規制

「2016年電気通信法」第8条により、SIGETは事業者間の相互接続料金に上限を設けることが可能である。これに従い、SIGETは2012年から固定・移動双方の卸売接続料金基準を段階的に引き下げるとともに、2016年11月までにエンドユーザ向け接続料金の上限を移動-固定で0.087USD/分、移動-移動で0.124USD/分、固定-固定で0.0339USD/分、固定-移動で0.104USD/分まで引き下げた。

(5)SIMロック解除

「2016年電気通信法」第29条のエンドユーザによる事業者選択の自由の規定により、通信事業者は、プリペイド契約の加入者に提供する端末のSIMロックを解除する義務を負う。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

「2016年電気通信法」にはユニバーサル・サービスに関する条項はなく、2018年半ば現在まで関連基金の創設等もなされていない。

(2)デジタル・ディバイド解消

2018年9月現在、SIGETは通信サービス普及に関する地域間ディバイド等につき、統一的な解決策を提示していないが、通話・データサービスの質の事業者間の均質化に関しては、統一的な技術基準の策定を目的とした市民向けのコンサルテーションを進めている。

4 ICT政策

SIGETは2018年半ば現在まで統一的なICT普及プラン等を発表していないが、事業者との協力により、学校へのタブレット端末配布等、地域社会でのICTサービス普及プロジェクトを推進している。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

免許不要局に関する無線機器の基準認証は、「1996年電気通信法」第13条により、SIGETの任務とされている。また、「1996年電気通信法」第5条に基づき、電気通信機器はすべて、ITU又はエルサルバドル標準として認定した国際機関により推奨された標準に合致しなければならない。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

1998年に市場が自由化され、複数の事業者が参入しているが、PSTN方式の加入者数については、メキシコに本拠を持つアメリカ・モビル(America Movil)子会社のCTE Telecom(ブランド名:Claro)が9割近いシェアを有している。移動電話サービスの伸長等に伴い、加入者の減少傾向が続き、2017年には大幅な減少を見た。2017年12月現在の世帯普及率は約58%である。IP電話の提供は自由で、2017年末の加入者数は約2万1,320である。

2 移動体通信

5社が市場に参入しており、ルクセンブルクに本拠を持つMillicom International Cellularの子会社Telemovil(ブランド名:Tigo)、CTE Telecomの移動体通信部門CTE Telecom Personal(ブランド名:Claro)、スペインのテレフォニカの子会社Telefonica Moviles El Salvador(ブランド名:モビスター(Movistar))の3社で市場シェアの約87%を占めている。2018年9月現在、MVNOの参入はない。

4社が3Gサービスを提供しており、2018年6月現在の加入者数は合計で約238万である。LTEについては2016年末にモビスターが1900MHz帯、Tigoが850MHz帯、2017年末にはClaroも1900MHzの再利用によるサービスを開始しており、2018年11月現在で3社が提供している。2018年3月にはサンサルバドル、サンタアナ、サンミゲル等の国内の主要数都市をカバーし、同年6月末現在の加入者数合計は約89万7,000である。スマートフォンについては、iPhone、ソニー、サムスン等、多機種の製品が販売されており、低価格商品を中心に、フィーチャーフォンからの乗換えが進みつつある。

3 インターネット

(1)概況

2018年3月現在、固定ブロードバンド加入者は約44万7,000で、技術別の割合は、CTE Telecom等が提供する最大速度5MbpsのADSLが61.2%、CTE TelecomとMillicom International Cellularの子会社Cable El Salvador(ブランド名:Tigo Star)が提供する最大速度6~50Mbpsのケーブル接続がこれに次ぎ35.1%であった。その他、数事業者が企業向けのWiMAXサービスやLAN/FTTHサービスを実施している。モバイル・ブロードバンドについては、2017年末に普及率が56.1%に達している。

(2)通信・放送融合

CTE TelecomとTigo Starが衛星とケーブルでテレビ番組配信サービスを実施しており、ブロードバンド接続、固定あるいは移動電話とのバンドル契約プランも提供されている。

(3)ソーシャル・ネットワーク・サービス

モバイル・ブロードバンド利用の伸長に伴い、FacebookやTwitter等の利用者が増加しつつあり、2017年6月にはFacebookの利用者が310万となっている。

(4)モバイル・マネー

Tigoが2011年から全国の代理店を通じてエアタイムの売買による少額決済サービス「Tigo Money」を実施しており、Western Union銀行との提携による国際送金も可能になっている。

Ⅵ 運営体

CTE Telecom

Tel. +503 22 50 55 00
URL https://www.claro.com.sv/
幹部 Eric Behner(最高経営責任者/CEO)

概要

国営総合通信事業者であったが、2003~2005年にメキシコのアメリカ・モビルが段階的に株式を買収、2018年6月現在、95.8%の株式を所有している。国内の固定電話回線をほぼ独占的に所有するほか、移動体通信でもTigoと1位争いを繰り広げている。

放送

Ⅰ 監督機関等

電力・電気通信総合監督機関(SIGET)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

放送分野においては、放送事業者への周波数割当、送信局の技術基準の設定・管理等を所掌する。

Ⅱ 法令

2016年電気通信法(Telecommunications Law, May, 2016

(通信/Ⅱ-2の項参照)

2010年に発効した電気通信基本法の周波数管理条項を大幅に改正、放送向け周波数についても、免許付与条件等を再規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「2016年電気通信法」第2章により、ラジオ及び地上放送事業の開始に当たっては、SIGETの指定する帯域での周波数利用免許の取得が必要とされる。免許の申請においては、SIGETにその有する無線局の登録を行い、技術適合審査を受ける必要がある。また、有料放送については、有線・無線の別を問わず、別途SIGETの付与する有料放送免許の取得が要される。

2 コンテンツ規制

SIGETの公開情報には放送番組全般のコンテンツに関する法規則はないが、2008年6月の「無線あるいは無線メディアを通じた有料テレビ放送に関する規則」では、第13条で、有料放送事業者が自社制作の番組を放送する際には、著作権や知的財産権等に関する国内及び国際規約を順守することを義務付けている。

3 地上デジタル放送

2017年1月にISDB-T方式の採用が決定され、同5月に日本政府との間で地上デジタル放送推進に関する合意が結ばれた。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

国営のRadio Nacional de El Salvadorが、1系統の全国放送及び国際放送を実施している。商業FM放送は多数の事業者が実施しており、大手にはRadio Cadena Central等がある。

2 テレビ

国営のTelevision El Salvador(TVES)が1系統の全国放送を実施している。全国放送を行っている商業放送事業者は5社で、TCS、Canal Cuatro、Canal Seis、Agape TV及びCanal 12である。

3 衛星放送

CTE Telecomの運営するClaro TV、Tigo Starの運営するTigo TV、Sky Mexico傘下のSkyが有料放送を実施している。2016年現在のDTH契約数は約18万5,000である。

4 ケーブルテレビ

Tigo Starの運営するTigo TVをはじめ、複数の事業者がサービスを提供している。2016年の加入世帯数は約25万2,470である。

Ⅴ 運営体

Television El Salvador(TVES)

Tel. +503 22 44 35 70
URL http://tves.sv/

概要

従来から「Canal 10」の名称で1系統の全国放送を実施しており、近年はオンラインでの番組配信に注力している。「民主主義への貢献と国民意識の向上」を目的としたニュース及び若年層向けの番組を中心に、18時間放送を実施している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

電力・電気通信総合監督機関(SIGET)

(通信/Ⅰの項参照)

2 標準化機関

エルサルバドル規格機構(OSN)

Organismo Salvadoreño de Normalización

Tel. +503 2590 5300
URL http://www.osn.gob.sv/
所在地 1a. Calle Poniente y final 41 av. Norte, #18. Col Flor Blanca, San Salvador, EL SALVADOR
幹部 Ing. Yanira Colindres(技術理事/Directora Técnica)
所掌事務

2011年法律エルサバドル高品質システム設立法「Ley de Creación del Sistema Salvadoreño para la Calidad、2011年7月11日法律」によって、国内の品質基準、標準化、技術規制等の機能を含むシステムを確立するために設置された国家品質閣僚会議(CNC:Consejo Nacional de Calidad。関係省庁、産業界、大学、消費者等の代表から構成)のもとに設立された、エルサルバドルを代表する標準化機関であり、ISO、COPANT(パンアメリカン標準委員会)などの国際標準団体に参加し、エルサルバドル国内の標準化業務を所掌している。OSNの管理は、7人のメンバー(経財省、農業省、保健省、環境天然資源省、消費者オンブズマン、法的に認可された消費者団体代表、産業及び農業生産部門の代表)からなる管理理事会によって行われ、管理理事会の代表(Presidente)が理事会の議長及びOSNを運営する技術理事(Directora Técnica)を務める。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

2016年に改正された「改正電気通信法」(以下、「法」と呼ぶ。)第2章に基づき、SIGETは、電波に関する監理、監督、監視を実施するとされており、周波数分配表の策定、周波数の割当監理、無線局免許の認可、無線周波数に関する国際条約の実行等を任務としている。その概要は以下のとおり。

①周波数割当・利用

周波数の割当ては、周波数分配表(CNAF)に基づき定められた方法により実施される。周波数分配表は法第10条によりSIGETが作成・更新をすることとなっており、ITUのRRに準拠することとされ、少なくとも4年に一度改正される。

周波数の利用は、法第12条に基づき、自由利用、政府利用、規制利用の三つに分類される。自由利用では、SIGETが設定した条件に基づき、CNAFで分配された周波数を免許不要で利用できる。政府利用では、CNAFの分配に従い、政府機関にSIGETが排他的に割り当てた周波数を利用して電波を利用でき、利用機関はSIGETに登録される。規制利用では、自由利用及び政府利用以外の周波数帯を、SIGETの許可により利用できる。

この周波数の区分を変更する場合は、法第96条によりSIGETはパブリックコメントを行い、承認後はCNAFを変更し公表する。

周波数利用権の有効期間は法第16条に基づき、20年とする。衛星の場合は、周波数利用権の有効期間は衛星の残存期間とする。また、SIGETは、有効期間終了後も引き続き周波数利用権を継続することもできる。

②周波数の二次利用

SIGETにより認められた周波数利用権は法第9-A条に基づき、その権利の全部又は一部を譲渡又はリース可能である。周波数利用権を持つ者は、周波数利用違反の責任を持つ。政府利用の周波数は、政府機関内での譲渡が可能である。

③公的機関の使用する周波数の規制

法第97-A条により、公的機関が使用する周波数はSIGETにより使用が検証され、6か月間使用されないと判断された場合は正式な手続により承認が取り消される。

2 電波利用料制度

法第13条に基づき、電波を利用するために許可、免許、認可を受けた者は、帯域幅、出力、周波数需要などに基づき算定された額(月額は、送信装置の帯域幅×公称ワット数に、1MHz・1W単価の8.48SVCをかけたものにサービスファクターをかけた額)を毎年SIGETに納める必要がある。

3 電波の安全性に関する基準

SIGETは、電磁界ばく露にかかわる規制値について、国際非電離放射線防護委員会(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection:ICNIRP)の値等を参考として、検討を行っている。検討結果や、関係各国の検討の概要がSIGETの非電離電磁放射線(Radiaciones Electromagneticas No Ionizantes)ページにまとめられている。

Ⅲ 周波数分配状況

SIGETは、法第10条に基づき周波数分配表(Cuadro Nacional de Atribución de Frecuencias:CNAF)を策定し法第11条に基づき公表している。最新版は2017年版である。