エチオピア連邦民主共和国(Federal Democratic Republic of Ethiopia)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 イノベーション・技術省(MINT)

Ministry of Innovation and Technology

Tel. +251 111 265737
URL https://mint.gov.et/
所在地 Lisie G/Mariam, Arada Sub-City, Addis Ababa, ETHIOPIA
幹部 Belete Molla(大臣/Minister)
所掌事務

2019年に「布告第1097/2019号」により設立され、情報通信技術、デジタル社会化、イノベーション推進に関する政策策定を所掌する。

2 エチオピア通信局(ECA)

Ethiopian Communications Authority

Tel. +251 11 11 692 8043
URL https://eca.et/
所在地

Bole Subcity, Woreda 03, House Number 2483,

Robel Plaza Building, P.O. Box 9991, Addis Ababa, ETHIOPIA

幹部 Balcha Reba(局長/Director General)
所掌事務

2019年に「通信サービス布告第1148/2019号」により独立規制機関として設立され、料金規制、技術基準の設定及び機器の型式認定、消費者保護、データ・プライバシー及びセキュリティの強化、通信事業免許の付与、通信事業者の規制監督、通信サービスの質の保証、周波数管理を所掌する。

Ⅱ 法令

通信サービス布告第1148/2019号(Communications- Service Proclamation No.1148/2019

ECAの設立条件と自由化された市場における通信事業者規制の原則を規定している。これに基づき、2021年に通信事業免許、消費者保護、相互接続等、個々の政策項目に関し、事業者規制の基本方針を示す12の指令が発行された。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

2021年7月に発行された「電気通信事業免許指令」により、電気通信サービスの提供においては、以下の免許の取得が必要とされる。周波数使用に関しては、別途周波数利用免許の取得が要される。

なお、通信サービス事業における外資の上限は規定されていない。

2 競争促進政策

(1)相互接続

2021年4月の「相互接続指令」は、ECAを通信事業者間の相互接続契約の管理機関と定めている。通信事業者は他の通信事業者に技術中立で相互接続を求める権利を有する。契約においては、透明性、非差別性、コストベースの料金という基準が順守されるものとし、契約の締結、変更、解消の際には、ECAへの届出が義務付けられ、特に料金基準においては、ECAの監査のうえで許可を得るものとされている。

ECAは2024年4月、5年間の固定・移動通話及びSMSの着信卸売料金基準を発表、2029年4月末までにそれぞれの料金を段階的に現行の8割程度まで引き下げるとした。

(2)卸売提供制度とMVNO促進政策

2021年7月の「電気通信基盤共有・コロケーション指令」は、通信基盤を有する事業者は、他の事業者からのアクセス要求に対し、それが合法的なものであり、自社に技術的な問題がない限り、誠意に基づく交渉を行うこととしている。同指令はまた、ECAの指定する顕著な市場支配的(Significant Market Power:SMP)事業者が他事業者からコロケーションの要求を受けた場合も、技術的に可能な限りで受け入れることとしている。ともに契約に際しては、相互接続と同様の基準の順守が義務とされている。

MVNOについては、2024年10月まで、参入を許可する旨の規定は発行されていない。

(3)SMP事業者規制

2021年7月の「電気通信市場競争指令」は、ECAは3年周期で通信分野での規制対象市場を定め、国内で40%以上の市場シェアを有する事業者をSMP事業者に指定できるとしている。SMP事業者は、自社の施設へのアクセスや相互接続要求を非差別的条件で受け入れ、不当な抱き合わせ販売や相手方の損失を意図した価格設定等の支配的地位の濫用行為は禁じられる。また同年の「適正価格指令」は、卸売市場での各市場での会計分離と市場価格基準の適正性・非差別性に関する規制機関の監査受入れを義務付けている。2024年4月、ECAは固定・移動の双方のインフラアクセス・通信中継及び移動部門のリテール・サービスで国営事業者Ethio Telecom、移動部門での通信着信で同社とサファリコム・エチオピア(Safaricom Ethiopia)をSMP事業者に指定した。

3 情報通信基盤整備政策

ユニバーサル・サービス

ECAは2022年4月、2020年から進められてきたユニバーサル・アクセス&サービス計画の最終草稿を発表した。計画の財源は、通信インフラ運用・通信サービスあるいは放送サービス免許所持者からの拠出金を財源としてECAが運用するユニバーサル・アクセス基金で、各事業者の年間拠出金額は、前年の売上高の1.5%とされている。計画の第1の目的は、移動通信網の人口カバーが100%に満たない地域のインフラ整備であるが、これと並行して、公共機関へのICT利用設備提供、デジタル・リテラシー及びICT利用技術の向上、ICTコンテンツ・アプリケーション開発等にかかわる各種プロジェクトの支援も実施するとされている。

4 ICT政策

デジタル・エチオピア2025戦略

2020年にMINTが発表した「デジタル・エチオピア2025戦略」は、政府の産業活性化10年計画の一環として、デジタル社会化に関する2025年までの通信・ICT発展政策方針を明示している。この戦略の主目標は、デジタル産業の育成とデジタル・インクルージョンの推進による雇用創出、外貨獲得及び人々の可処分所得の増大である。短~中期プロジェクト(~3年)としては、以下が挙げられている。

①通信インフラ強化、②デジタル経済発展の基盤固め、③政府、産業界、一般の人々のデジタル環境での情報交換や物流への参加促進、④デジタル・エコシステムの強化。

中~長期プロジェクト(3~5年)の中心は、以上を持続的に発展させる投資環境の整備にかかわるもので、特に通信・ICT産業への民間投資の活発化を図る政策の策定が重要とされている。

5 消費者保護政策

2021年8月の「通信サービス消費者の権利と保護指令」は消費者の契約条件に関する情報取得、プライバシー保護、苦情申立て等の権利について定めており、ECAはこれに基づきサイト上に指令の解説ページを開いている。Ethio Telecomは2024年6月、この方針に従って自社における消費者保護原則に関する草稿をECAに提出、関連者協議が続けられている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「通信サービス布告第1148/2019号」第6条により、通信サービスの技術基準の策定及び通信網に接続する機器の型式認定はECAが所掌する。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

固定電話市場はEthio Telecomが独占している。ほぼ全土で電話接続は可能であるが、加入者は漸減傾向にある。

電話回線接続はPSTNのほか、CDMAでも可能で、プリペイド型の契約プランも提供されている。

2 移動体通信

Ethio Telecomが移動体通信市場を独占していたが、「通信サービス布告第1148/2019号」による市場の自由化により、2021年にケニア資本で日本の住友商事も出資するサファリコム・エチオピアが3G及びLTEサービス向けに五つの帯域で周波数利用免許を取得し、2022年10月にサービスを開始した。Ethio Telecomは3G、LTEのほか、2023年9月には首都アディスアベバで商用5Gサービスを正式に開始、2024年5月までにLTEサービス地域は417自治体、5Gは首都以外にも主要数都市に拡大した。

Ethio Telecomは「telebirr」、サファリコム・エチオピアは「M-PESA」の名称でモバイル・マネー・サービスを実施している。

3 インターネット

Ethio Telecomが国内唯一のISPであり、固定とモバイルの双方でブロードバンド・サービスを提供している。

Ethio Telecomは最大接続速度4Mbpsから50Mbpsの七つのDSL接続プランを提供している。また首都を中心に光ファイバの設置も進めており、最大速度100Mbps及び200Mbpsのプランも導入している。

モバイルブロードバンド加入件数は2023年までに3,320万に達している。

Ⅵ 運営体

1 Ethio Telecom

Tel. +251 001 551 0500
URL https://www.ethiotelecom.et/
幹部 Frehiwot Tamiru(最高経営責任者/CEO)
概要

国営総合通信事業者として、固定分野でほぼ独占を維持している。資本は100%国が所有している。2023/24会計年度の売上高総額は、前年度比21.7%増の937億ETBであった。2024/25会計年度の事業計画では、15都市での5Gサービス実施、光ファイバ網の2万2,000kmまでの拡張、1,000の村落へのモバイル・カバレッジ拡張、低所得者層に25万台のスマートフォン提供等が予定されている。

2 サファリコム・エチオピア

Safaricom Ethiopia

URL https://www.safaricom.et/
幹部 Peter Ndegwa(最高経営責任者/CEO)
概要

2021年に移動体通信市場に参入。主要株主は南アフリカのボーダコム傘下のサファリコム・ケニア、日本の住友商事、国際金融公社(IFC)等である。

放送

Ⅰ 監督機関等

エチオピア・メディア庁(EMA)

Ethiopian Media Authority

Tel. +251 11 553 8759
URL https://www.ema.gov.et/web
所在地 Flamingo、African Ave、Bole Road、Addis Ababa、ETHIOPIA
幹部 Mohammed Idris(総裁/Director General)
所掌事務

2021年、放送を含む各種メディア及び広告事業に関する独立規制機関として設立された。放送事業者規制及び放送内容一般の規制を所掌する。運営主体は議会で選出された9名の委員(総裁含む)である。

Ⅱ 法令

メディア布告第1238/2021号(Media Proclamation No.1238/2021

EMAの設立根拠法であり、放送分野においては、放送事業免許付与条件と免許取得事業者の義務を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「メディア布告第1238/2021号」により、放送事業免許は、①公共放送(総合)、②公共放送(専門)、③商業放送、④コミュニティ放送、に分かれ、同一の事業者が複数の免許を取得することはできない。また、外資比率が25%以上の法人が免許を申請することはできない。免許期間は10年で更新可能である。メディア関連事業者の他のメディア関連事業者に対する資本所有割合の上限は25%である。

2 コンテンツ規制

「メディア布告第1238/2021号」は、犯罪の教唆、治安のかく乱、個人への誹謗中傷やプライバシーの侵害、特定の民族や宗教への差別、その他公序良俗に反する目的を有する番組の放送を禁じている。成人向けの番組の放送時間は22時から翌5時に限られる。また、同布告は放送事業免許を有する事業者すべてに、政府の緊急発表を放送する義務及び選挙期間中は各政党・候補者に対し平等に政見放送時間を割く義務を課している。商業放送及び公共放送(専門)による政見放送の時間の長さは、公共放送(総合)のものを超えないとされている。放送時間に占める国内制作番組の割合は、どの放送局でも80%以上、地方あるいはコミュニティ放送の場合は番組全体の70%以上、商業放送の地方局の場合60%を所属地域にかかわる内容のものとする。更に、放送事業者は年間番組制作予算の10%以上、放送時間の10%以上を独立系番組制作事業者に割り当てなければならない。

上記とともに、公共放送、コミュニティ放送、及び商業放送の規制につき、それぞれに対する指令が発行されており、それぞれの法的位置付けと免許付与方法が規定されている。

3 地上デジタル放送

欧州方式のDVB規格を採用。2014/15年度からデジタル放送を開始、サイマル放送期間を経て、2016/17年に完全移行する予定であったが、2024年10月現在、移行の状況は明らかにされていない。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

国営事業者エチオピア放送会社(Ethiopian Broadcasting Corporation:EBC)が1系統の全国放送、首都向けの地域放送、英語・フランス語・アラビア語の国際放送を行っている。そのほか、地方政府が運営するラジオ局やコミュニティ放送局が複数存在する。商業放送はRadio Fana等が実施している。

2 テレビ

EBCが総合、娯楽、スポーツ、教育の4系統を24時間放送で実施しているほか、英語、フランス語、アラビア語等、多言語対応の国際放送を行っている。また、複数の地方政府がローカル番組放送を実施している。商業放送は、Fana TV、Walta TV等が実施している。

3 衛星放送

南アフリカのテレビ事業者マルチチョイス(MultiChoice)の子会社マルチチョイス・エチオピア(MultiChoice Ethiopia)が、ユーテルサットW7衛星経由で5パッケージを配信している。

Ⅴ 運営体

エチオピア放送会社(EBC)

Ethiopia Broadcasting Corporation

Tel. +251 11 517 2539
URL https://www.ebc.et/
幹部 Getnet Tadesse (最高経営責任者/CEO)
概要

現行の体制での事業は2014年に開始。財源の90%を政府の交付金が占める国営事業者であるが広告放送も受け付けている。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

エチオピア通信局(ECA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

電気通信・放送分野での周波数割当・管理、無線関連機器の技術基準の設定及び型式認証等を所掌する。

2 標準化機関

エチオピア規格協会(IES)

Institute of Ethiopian Standards

Tel. +251 116 460111
URL https://www.ethiostandards.org/
所在地 Megenagna, Addis Ababa, ETHIOPIA
幹部 Meseret Bekele(事務局長/Director General)
所掌事務

産業関連省庁の長で構成される国家標準化会議の決定に基づく各種産業の国内標準の策定及び関連国際機関との交渉、関連人材育成を所掌する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

電波監理政策の概要

商用無線局の運用に関して、ECAの付与する周波数利用免許の取得が義務付けられている。免許期間は、通信事業者に対しては15年、LMRについては1年で、更新可能である。割当てに際して、ECAは先着順、オークション、比較審査及びこれらの混合による対象事業者の選出を行う。割当てを受けた事業者に対し、ECAは周波数管理に対する手数料として周波数利用料の基準を決定、徴収する。

Ⅲ 周波数分配状況

「通信サービス布告第1148/2019号」第24条は、ECAが周波数分配表を作成、更新すると定めているが、ECAサイト上では当該の表は公開されていない。