フィンランド共和国 (Republic of Finland)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 運輸通信省

Ministry of Transport and Communications

Tel. +358 295 16001
Fax +358 9 160 28596
URL https://www.lvm.fi/
所在地 Eteläesplanadi 16, Helsinki, FINLAND
幹部 Anne Berner(運輸・通信大臣/Minister of Transport and Communications)
所掌事務

通信網、プライバシー保護、情報社会関連の政策や法律の策定を担う。通信の関連業務は「サービス局」(Services Department)、「データ局」(Data Department)、「ネットワーク局」(Networks Department)の各局が遂行する。局の下には各2ユニットが設けられ、それぞれが所掌する業務に当たる。

2 フィンランド運輸通信庁(Traficom)

Finnish Transport and Communications Agency

Tel. +358 29 534 5000
Fax +358 29 534 5095
URL https://www.traficom.fi/
所在地 Kumpulantie 9, 00520 Helsinki, FINLAND
幹部 Kirsi Karlamaa(長官/Director-General)
所掌事務

Traficomは、フィンランド通信規制庁(Finnish Communications Regulatory Authority:FICORA)とフィンランド運輸安全局(Finnish Transport Safety Agency:Trafi)、これにフィンランド交通庁(Finnish Transport Agency:FTA)の一部機能が統合再編され、新規制当局として2019年1月1日に発足した。通信分野では、主に周波数の割当て・管理、ドメインの割当て、番号計画の策定・実施、市場競争促進にかかわる規制、消費者保護、情報セキュリティ、基準認証・標準化などを所掌している。

Ⅱ 法令

電気通信サービス法(Act on Electronic Communications Services 917/2014

電気通信サービス法(Act on Electronic Communications Services)は、通信市場法(Communications Market Act)、電気通信におけるプライバシー保護法、無線周波数・通信機器法(Act on Radio Frequencies and Telecommunications Equipment)、テレビ・ラジオ運営法(Act on Television and Radio Operations)などの既存法を整理・統合し、2015年1月1日に発効した情報社会法典(Information Society Code 917/2014)の一部改正に合わせ、2018年6月1日に同法から名称が変更された。メディア・通信分野の活動条件の改善が改正の目的となっている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「電気通信サービス法」の第4条により、公衆電気通信サービスを提供する事業者は、事業開始前にFICORA(現Traficom)に届出を行い、承認を受ける必要がある。また同法第8条により、不特定多数に向けた通信サービスや移動体通信網による公衆電気通信に際して無線周波数を用いる場合には政府による免許の交付を受ける必要がある。MVNO事業者は免許を必要としないが規制機関に届出をしなければならない。

2 競争促進政策

(1)ローカル・ループ・アンバンドリング

1997年、「通信市場法」の下、ローカル・ループ・アンバンドリング(Local Loop Unbundling:LLU)が開始された。各地方の市場で顕著な支配力を有する(Significant Market Power:SMP)事業者はローカル・ループを提供する義務を負い、共有設備や利用料金等を定めたReference Unbundling Offers(RUOs)を公表する必要がある。しかし、フィンランドのLLUサービスの料金は他国よりも圧倒的に高い水準にあり、FICORA(当時)は事業者に対して料金の再計算と、引下げを再三にわたり求めてきた。

2018年3月、FICORA(当時)は、向こう3年間、光ファイバの卸売料金に上限を設定し、エリサ(Elisa)、テリア(Telia)、DNAフィンランド(DNA Finland)の3社に対して、卸売料金を28~80%に引き下げることを決定した。また、メタル回線においては、同3社を含む21社のSMP事業者に対して、規制を縮小し、合理化する決定を下した。SMP事業者によって、ローカル・ループが非差別的かつ明確な基準で提供されることが、健全な競争と価格の安定に必要であるとしている。

(2)移動電話着信接続料金規制

2008年にFICORA(当時)は移動電話着信接続料金の引下げに関する原則を提示し、2010年12月1日、2011年12月1日、2012年12月1日のそれぞれの段階で料金を引き下げるよう事業者に要求した。2015年1月にFICORA(当時)は移動電話着信接続料金の新規則の提案を行ったが、欧州委員会がFICORA(当時)の提案はEUの規制枠組の水準に合致しないと勧告した。欧州委員会の勧告を受けFICORA(当時)は2015年12月に移動電話着信接続料金の引下げを実施した。

(3)固定電話市場における規制の動向

2013年6月、FICORA(当時)は移動電話加入者の増加を受け、固定回線の公衆電話網の発信にかかわる事前規制を撤廃すると発表した。この措置は2014年1月1日から適用されている。固定回線の電話網の発信にかかわる事前規制の撤廃を実施したのは、EU加盟国ではフィンランドが最初の国である。一方、2013年12月に欧州委員会は、FICORA(当時)が提案していた卸売固定着信市場における事前規制の撤廃に関し、FICORA(当時)が市場において十分な競争が確立されており、規制の必要がないということを十分に証明することができなかったとし、FICORA(当時)の提案した事前規制撤廃案を却下した。卸売固定着信市場では現在、テリア、エリサ、フィンネット(Finnet)等、約50社がSMP事業者に指定されている。

3 情報通信基盤政策

(1)ユニバーサル・サービス

2007年、「通信市場法」に規定が設けられ(現・電気通信サービス法第12章)、ユニバーサル・サービス事業者は適正価格で、あまねく電話サービスを提供することが義務付けられている。なお近年の固定電話契約の減少により、ユニバーサル・サービスの対象が移動電話やインターネットへと移行しつつある。2010年7月には、最低1Mbpsのブロードバンド接続の提供がユニバーサル・サービスに含まれることになった。FICORA(当時)はユニバーサル・サービス事業者としてエリサ、テリア、DNAフィンランドの3社を指定している。FICORA(当時)は2015年10月に2Mbpsへの最低接続速度の引上げを行った。将来的には10Mbpsまで速度を引き上げる計画も検討されている。

(2)国家ブロードバンド戦略

運輸通信省は2004年に国家ブロードバンド戦略を立ち上げ、翌年に競争環境、新技術、地域発展などに関するアクションプランを示した。2008年、政府は基本的なインターネット・サービス、並びに高速インターネット接続の発展に関する基本方針を決定した。同方針では2015年までに全国で100Mbpsのブロードバンド接続を実現するという目標が示された。定住地から2km以内で100Mbpsのブロードバンドに接続できることが目標達成の目安となる。方針は数回の見直しが図られ、近年では遠隔地域におけるブロードバンド接続の確保が重視され、国家補助が実施されている。2008年に決定された基本方針は、実行期間と補助金などについて2014年に見直しが図られ、欧州農業農村振興基金(EAFRD)の助成によるプロジェクトが2019年まで実行される。FICORA(当時)によると、2017年3月までに合計で4,920万EURの国家補助が行われ、136のプロジェクトが完遂している。

(3)デジタル・インフラストラクチャ戦略

運輸通信省は2018年10月、2025年までの開発目標を設定するデジタル・インフラストラクチャ戦略を発表した。同戦略は民間部門及び公共部門の双方においてデータ経済とAIの使用を可能にすることによって、国家の競争力と社会的厚生を促進することを目的としつつ、有線(光ファイバ網)及び無線(5G)インフラの整備、データ通信端末の発展を推進する。政府は、同戦略によってフィンランドが通信ネットワーク分野で世界を主導する国家となることを目標としている。具体的には、2025年までにすべての世帯で最低100 Mbpsのブロードバンド接続を実現する必要があり、通信速度を1GB/s(=8Gbps)まで引き上げることが可能であるとしている。

(4)5G

2018年5月、FICORA(当時)は5G Momentumプロジェクトを実施することを発表した。その中で構築される5G Momentumエコシステムの目標は、5G技術の開発、将来的な機会の見極め、多様な関係者との協力を通して、フィンランドを5G技術の世界的リーダーにすることである。2018年11月には、5G Momentumプロジェクトの一環である5G推進プロジェクト「5GKIRI」を公表した。同プロジェクトは、複数の大都市が参加し、都市における5G網の整備を迅速かつ全国規模で進展させる支援をするためのものとなっている。

(5)事業者間の基盤の敷設・利用における共有

2015年11月、政府は高速ブロードバンドの敷設コストを抑制し、普及促進を図ることを目的に、通信、電力、水道、運輸等の事業者間で基盤の敷設・利用に際して共有を推奨する法案を提示した。電気通信事業者と電力等の事業者が基盤敷設に当たる際、個別事業のコストが共同事業のコストを上回るようなときには、双方が共同で基盤敷設に当たる義務が課されることとなる。同法案は情報社会法典(現・電気通信サービス法)の修正という形で2016年7月1日に法律として発効した。

4 ICT政策

(1)情報社会政策

1995年1月に最初の国家情報社会戦略が議会で採択されて以来、政府による数々の情報社会戦略の策定と発表が行われてきた。2010年に「フィンランド・デジタル・アジェンダ2011~2020」が公表されている。同政策は、デジタル化による社会の成長や生産性の促進を掲げ、具体的な取組みとして「生産性」「高齢化」「持続可能な発展」「グローバルな競争」「情報」「ユーザ主導サービス」「能力・アクセス」「マネジメント」の8項目が挙げられている。

(2)AI

2017年5月、経済雇用省(The Ministry of Economic Affairs and Employment)は、フィンランドをAIの応用分野における世界のリーダーとするという目標を示し、達成に向けたAI国家戦略を検討するステアリング・グループを設置した。2017年10月には、同目標を達成するために必要な八つのアクションを示す中間報告書を発表している。最終報告書は2019年4月に公表される予定である。

(3)IoT

2016年6月、運輸通信省はIoT促進のためのブロードバンド計画を公表した。計画の目標は、IoTが要求する大容量ネットワーク構築のためのバランスの取れた固定・無線接続の開発促進であり、ブロードバンドの許可プロセスを容易にすることで市場ベースでの供給を加速することである。

(4)サイバーセキュリティ

2018年5月、社会にとって不可欠なサービスの情報セキュリティ向上のための法改正が行われた。この改正で、フィンランドにおけるネットワーク・情報システムのセキュリティに関するEU指令を実施する。

5 消費者保護政策

インターネット詐欺対策

FICORA(当時)は、2018年3月、「インターネット詐欺の監視」キャンペーンを開始した。消費者への警告と対処能力向上のため、詐欺に関する情報の提供、当局への詐欺被害報告の推奨を広く行っている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

欧州の市場で流通する無線機器は、欧州の「無線機器指令(Radio Equipment Directive: RED 2014/53/EU)」の規定に従い、CEマークを取得しなければならない。フィンランドでは以下の三つの法令によって同指令の国内法制化を実施した。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

移動電話の普及に伴い、固定電話の加入者数は年々減少している。主な事業者としては、主要都市を中心にサービスを提供するエリサ(2017年末の加入者数は13万6,000)、旧国営通信事業者のテリア(同8万8,000)、地域通信事業者23社の連合体であるフィンネット・グループ(同6万)、2007年にフィンネット・グループから離脱したDNAフィンランド(同5万3,000)が挙げられる。

なお、衛星システムについては、インテルサット、インマルサット及びユーテルサットを利用したサービスが提供されている。

2 移動体通信

普及率は2005年に100%を超えた。ネットワーク事業者として、エリサ、テリア、DNAフィンランド等が事業を展開している。このほか、オーランド諸島で事業を展開するAlands Telecommunications(ブランド名:Alcom)や、主に企業を顧客とするUkkoモバイルがサービスを提供している。MVNOは、Globetel、Setera、Moi Mobiiliなどがある。ただし、市場シェアは約1%にとどまっている。

フィンランドは1999年に欧州で初めて3Gオークションを行った。3Gサービスの免許保有事業者はエリサ、テリア、DNAフィンランド、Alands Telecommunicationsとなっている。

LTEについては、2009年のオークションでLTE向けの周波数が、エリサ、テリア、DNAフィンランドに割り当てられた。2010年11月にはテリアがトゥルクとヘルシンキで商用サービスを開始した。エリサは2010年12月に商用サービスを開始した。DNAフィンランドは2011年12月からヘルシンキなどの主要都市で商用サービスの提供を開始した。LTE-AdvancedはテリアとDNAフィンランドが2014年12月に、エリサが2015年3月にサービスを開始している。5Gは主要3社がサービス開始に向けて競っており、各社ともトライアルを実施している。2018年10月には5Gの周波数オークションが行われ、エリサ、テリア、DNAフィンランドに割り当てられた。

3 インターネット

固定ブロードバンドの伸びは鈍化してはいるものの人口普及率は高く、高速化も進展している。2017年末現在、接続方法の内訳はLAN/FTTxが45.8%を占め、DSLは29.5%、ケーブルモデムが24%、その他0.7%となっている。主な事業者として、他分野と同様に、エリサ、テリア、DNAフィンランド、フィンネット・グループで市場シェアのほぼ全体を占めている。

WiMAXは2005年にフィンネット・グループの子会社Kajaanin Puhelinがサービスを開始、現在は10超の地域で同グループのローカル事業者がサービスを提供している。ほかにはDNAフィンランドが主にルーラル地域でサービスを提供している。

4 新成長サービス

(1)IPTV

IPTVが主な通信事業者によって提供されている。テリアは光ファイバを通じたサービスの提供を行っており、エリサは衛星放送事業を展開するCanal Digitalと共同でViihdekaistaブランドのサービスを提供している。その他、フィンネット・グループやケーブルテレビ事業者のDNAフィンランドもサービスを提供している。

(2)VoIP

FICORA(当時)はフィンランド国内でのVoIPサービスの展開のため、2005年からVoIPサービスの分類や規制、事業者の条件などを検討してきたが、まだ立法化には至っていない。そのため固定電話市場におけるVoIPの加入数は極めて少ない状況にある。

Ⅵ 運営体等

1 運営体

(1)テリア・カンパニー

Telia Company

Tel. +358 20401
URL https://www.telia.fi/
所在地 Teollisuuskatu 15, Helsinki, FINLAND
幹部 Johan Dennelind(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

固定電話、移動体通信、データ通信等の電気通信サービスを提供している旧国営事業者である。「テリア」のブランド名でサービスを提供する。1994年までは長距離及び国際サービスを独占していたが、同年に有限責任会社Post and Telecommunication of Finlandとなり、同社の事業はFinland PostとTelecom Finlandに分割された。1997年12月にソネラに名称を変更、同時に部分的民営化が徐々に行われた。2002年12月にスウェーデンの旧国営事業者テリアと合併しテリアソネラとなった。2016年1月に会社名をテリア・カンパニーへと変更した。2018年2月、フィンランド政府は国家ファンドSolidiumを通じて保有していた株式(3.2%)を同社に売却した。2018年10月現在、主要株主としてスウェーデン政府が同社株式の37.3%を保有している。

(2)エリサ

Elisa

Tel. +358 102 6000
Fax +358 102 6060
URL https://elisa.fi/
所在地 Ratavartijankatu 5, Helsinki, FINLAND
幹部 Veli-Matti Mattila(最高経営責任者/CEO)
概要

1882年に設立されたヘルシンキ電話協会を前身とする。1994年の市場自由化前は首都ヘルシンキの固定電話サービスを独占していた。2001年にフィンネット・グループから離脱した。2018年10月現在の主要株主として、政府系投資会社のSolidium Oy(保有率10.04%)や保険会社のVarma(同3.1%)が挙げられる。なお、同社は1991年に世界初の商用GSMサービスを開始した事業者である。

(3)その他の主な事業者
事業者 URL
フィンネット・グループ https://www.finnet.fi/
DNAフィンランド https://www.dna.fi/

2 主要メーカー

ノキア

Nokia Corporation

Tel. / Fax +358 10 44 88 000 +358 10 44 81 002
URL https://www.nokia.com/
幹部 Rajeev Suri(社長兼最高経営責任者/President and Chief Executive Officer)
概要

国内最大の電気通信機器・電子機器メーカーであり、160か国以上で事業を展開している。進出先の売上げの割合では欧州市場が最も大きく、売上全体の約3割を占めている。移動電話事業は2014年に米マイクロソフトに買収された。2015年にはフランスに本拠を置く通信機器メーカーのアルカテル・ルーセント(Arcatel-Lucent)を買収した。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 運輸通信省

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

放送分野の政策立案、事業者の規制監督を行う。

2 フィンランド運輸通信庁(Traficom)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

放送分野では、「電子通信サービス法」(通信/Ⅱの項参照)に基づき、テレビ・ラジオ放送の広告に関する法規制順守の監督(番組視聴者からの苦情の処理を含む)や、ケーブルテレビ事業者の登録などを行っている。また、情報社会法典(現・電子通信サービス法)の施行に伴い、放送免許の付与権限が内閣からFICORA(現 Traficom)に移管された。その他、テレビ・ラジオ放送事業者が国家テレビ・ラジオ基金(State Television and Radio Fund)に支払う免許料に関する管理を行っている。なお、国家テレビ・ラジオ基金は、公共放送事業者であるフィンランド放送会社(Finnish Broadcasting Company:YLE)の運用資金等に充てられている。

Ⅱ 法令

1 電気通信サービス法(Act on Electronic Communications Services 917/2014

(通信/Ⅱの項参照)

2015年に電気通信分野と放送分野の既存法を統合する形で施行された情報社会法典の一部改正と合わせて、現在の名称に変更された。免許内容や放送事業者に課せられる義務、テレビ・ラジオ放送の定義・権利、番組制作、広告・テレビ通販・スポンサーシップなどを規定している。

2 国家テレビ・ラジオ基金法(Act on the State Television and Radio Fund

1998年に制定、2007年に改正された放送のための公的資金に関する法令である。同基金は、フィンランドの公共放送事業者であるYLEの運用資金等に割り当てられる。

3 フィンランド放送会社法(Act on the Finnish Broadcasting Company Ltd.

国営のFinnish Broadcasting Company(YLE)に関して定めた規定。1993年に制定。同社がTraficomに年次報告書を提出する義務などを定めている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

地上波の大量送信網を使用する放送の免許は、以前は運輸通信省が付与していたが、情報社会法典(現・電子通信サービス法)の施行に伴い、免許付与の権限はFICORA(現Traficom)に移管された。2018年6月の電子通信サービス法への改正で、ラジオ及びテレビ事業者へのライセンスの付与及び取消しの条件が明記された。

2 公共放送関連政策

公共放送税

テレビ受信料制度から公共放送税(YLE税)への法律の改正が2012年春に行われ、新制度には2013年1月から移行した。従来の受信料制度では、テレビ受信機を所有する世帯から一律にテレビ受信料を徴収してきたが、新制度は累進課税方式を採用している点で大きく異なっている。2018年1月より税制が変更され、新制度では年間所得から1万4,000EURを引いた値に2.5%を掛けた額が公共放送税として徴収される。最大徴収額は163EUR、所得が1万4,000EUR以下の低所得者は全額免除となる。徴収された税金は、従来どおり「国家テレビ・ラジオ基金」に収納される。

3 地上デジタル放送

2018年11月現在、テレビは60チャンネルが放送されている。地上デジタル放送用に五つのマルチプレックスが割り当てられており、A、C、Eが主に無料放送、BとF が主に有料放送となっている。BとFは、DVB-T2方式で運用され、2020年3月末に、すべてのマルチプレックスをDVB-T2方式へ切り替える。なお、フィンランドのテレビ放送は、2007年9月1日にデジタル放送へと完全に移行した。

4 顕著な支配力を有する事業者に対する規制

2015年4月、放送サービス事業者のDigitaがアンテナ配置、アクセス容量、テレビ及びラジオ放送サービスで顕著な支配力を有する(SMP)として、「テレビ・ラジオ伝送サービスの卸売市場」でSMP事業者に指定された。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

公共放送のYLEが全国放送のほか、地域放送を実施している。商業放送はRadio Nova、The VoiceやClassicなどの主要放送事業者が全国放送を、その他の約100事業者が地域放送を行っている。国際放送は、YLEが衛星波とインターネットにより欧州向けの放送を実施していたが2013年にサービスを終了した。

2 テレビ

2007年9月1日にデジタル移行が完了している。全国放送の事業者は公共放送のYLE、商業放送のMTV3及びNelonenである。YLEはアナログ放送時代から行っている「YLE1」(ニュース、時事)、「YLE2」(若者向け、エンターテインメント)、デジタル新サービスであるスウェーデン語の総合編成「YLE Fem」、文化・教養の「YLE Teema」を全国向けに放送している。1993年にYLEから独立した商業放送事業者のMTV3は、2005年にスウェーデンのメディア企業Bonnierに買収され、現在は同社が所有するMTV MEDIAの傘下にある。Nelonenは1997年に放送を開始し、フィンランドの総合メディア企業Sanomaグループに属している。

3 衛星放送

スウェーデンやノルウェーと同様、スウェーデンのメディア企業MTG傘下のViasat及びノルウェーの通信事業者テレノール(Telenor)傘下のCanal Digitalの2事業者によってサービスが提供されている。いずれもHDチャンネルを提供している。Viasatはフィンランド語のチャンネル、スポーツ専門チャンネル、外国の衛星チャンネル等を放送している。Canal Digitalは公共放送YLEのチャンネルを含む70チャンネル以上を放送している。

4 ケーブルテレビ

2008年2月にアナログ・サービスは終了し、デジタルに移行している。2018年現在、ケーブルテレビ加入件数は約170万件となっている。最大手のWelhoはメディアグループSanoma Group傘下のSwelcomが運営していたが、DNAフィンランドが買収し、2010年7月1日から同社の傘下に入った。2018年現在、DNAフィンランドはケーブルテレビ市場で4割近いシェアを占めている。同社はHDチャンネルを含む約150のケーブルテレビチャンネルを提供している。その他、エリサやテリアといった主な通信事業者(通信/Ⅴの項参照)もサービスを提供している。

なお、ケーブルテレビ・サービスの提供に関し、事業免許は不要で、Traficomへの事業開始前の届出のみが要件となっている。

Ⅴ 運営体

1 フィンランド放送会社(YLE)

Finnish Broadcasting Company Ltd.

Tel. +358 9 14801
URL https://yle.fi/
所在地 Yle Center, Uutiskatu 5, Helsinki, FINLAND
幹部 Merja Ylä-Anttila(最高経営責任者/CEO)
概要

1926年設立の国有・公共放送事業者。1993年の「フィンランド放送会社法(通称、YLE法)」によって、政府が株式の99.9%を所有する株式会社となった。運営は、国会によって選出される21名の委員で構成される運営委員会(Administrative Council)並びに、運営委員会によって選出される5~8名のメンバーで構成される理事会(Board of Directors)と会長(Director General)による業務執行機関によって担われている。広告放送及びスポンサーシップは禁止されており、2013年1月からYLE税により運営されている。YLEの送信部門は2000年にYLEが100%所有するDigitaとして分離され、2005年にフランスのTDFに売却された。その後、2012年8月にオーストラリアのFirst State Investmentに売却されたが、更に2018年6月、米国のDigital Colonyへと売却された。

2 MTV3

Tel. +358 10 300 300
URL https://www.mtv.fi/
所在地 Ilmalankatu 2, Helsinki, FINLAND
幹部 Jarkko Nordlund(最高経営責任者/CEO)
概要

1957年に設立された商業放送事業者。従来YLEとの協定に基づきYLEの2系統で番組と広告を放送していたが、1993年1月より、第3チャンネルMTV3として独立した。独立当初はフィンランドのメディア企業Alma Mediaが所有していたが、現在はスウェーデンのメディア企業Bonnierが所有する。主な財源は広告収入である。

3 その他の主な事業者

事業分野 事業者 URL
ラジオ Radio Nova https://www.radionova.fi/
The Voice https://www.voice.fi/
テレビ Nelonen https://www.nelonen.fi/
衛星放送 Viasat https://www.viasat.fi/
Canal Digital https://www.canaldigital.fi/
ケーブルテレビ DNAフィンランド https://www.dna.fi/
テリア https://www.telia.fi/

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)運輸通信省

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)フィンランド運輸通信庁(Traficom)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2 標準化機関

(1)フィンランド規格協会(SFS)

Finnish Standards Association

Tel. +358 9 149 93 31
Fax +358 9 146 49 25
URL http://www.sfs.fi/
所在地 Malminkatu 34, FI-00101 Helsinki, FINLAND
幹部 Pekka Järvinen(事務局長/Managing Director)
所掌事務

SFSは、フィンランドを代表する欧州の標準化とISO国際標準化及びフィンランド国家規格(SFS Standards)を作成する独立非営利機関である。SFSは、CEN、CENELEC、ETSIのメンバーである。

(2)フィンランド運輸通信庁(Traficom)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

電気通信標準化のため、Traficomが指名する関係企業・組織等で構成される国家標準化部会(National Standardization Group)が通信分野の標準化活動を行っており、有識者により構成される電気通信標準化諮問評議会(Telecommunications Standardisation Advisory Board)がTraficomによる標準化活動を支援している。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

フィンランドは2009年11月17日に2.6GHz帯(2500-2690MHz)の周波数割当を初めてオークションで実施した。フィンランド政府がオークションを導入した理由は、オークション収入を「国家通信基金」(State Communications Found)に繰り入れて、国家ブロードバンド戦略の実現にかかわる費用に充当するためである。

政府はオークションを導入するため、電気通信分野の基本法令である「通信市場法(現・電気通信サービス法)」を競争促進と周波数有効利用の観点から改正したほか、新たな法律である「特定周波数オークション法(Act on Auctioning Certain Radio Spectrum(462/2009))」を制定し、オークションへの参加権や参加費、また免許の期間、費用等に関して規定した。なお、これらの既存法は、2014年11月7日の「情報社会法典(Information Society Code(917/2014))」に統一され、2018年6月1に「電気通信サービス法(Act on Electronic Communications Services(917/2014))」へ改正された。

2 周波数オークション

運輸通信省は2016年11月24日、700MHz帯の周波数オークションを実施した。オークションは4G用途の周波数を割り当てるものであり、703-733MHz及び758-788MHzの5MHz幅×2の6ブロックが入札にかけられた。1ブロックの最低入札価格は1,100万EURに設定された。オークションの結果は即日公表され、DNAフィンランド、エリサ、テリアの3社がそれぞれ2ブロックずつを落札した。落札額はテリアソネラが落札した1ブロック(1,133万EUR)を除き、いずれも1,100万EURで、総額6,633万EURであった。落札した事業者に交付される免許は17年有効で、オーランド諸島を除くフィンランド全域で適用される。

その後、5G用途の3410-3800MHzを対象とした周波数オークションが2018年9月26日から10月1日まで実施された。テリアが3410-3540MHzのバンドAを3,026万EURで、エリサが3540-3670MHzのバンドBを2,635万EURで、DNAフィンランドが3670-3800MHzのバンドCを2,100万EURでそれぞれ落札した。免許の有効期間は2019年1月1日から2033年12月31日までとなる。

Ⅲ 周波数分配状況

Traficomは、無線法に基づき「無線周波数規則(Radio Frequency Regulation No.4)」を策定し、無線周波数の使用について規定している。同規則は2019年1月9日に改正、8.3kHzから400GHz帯までの新たな周波数分配表を附則として公表した。