Ministry for the Economy, Finance and the industrial and digital Sovereignty
Tel. | +33 1 40 04 04 04 |
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URL | https://www.economie.gouv.fr/ |
所在地 | Télédoc151 139, rue de Bercy, 75572 Paris Cedex 12, France |
幹部 | Eric Lombard(経済・財務・産業・デジタル主権大臣/Ministre de l’Economie, des Finances et de la Souveraineté industrielle et numérique) Clara Chappaz(AI・デジタル担当大臣) |
電気通信関連の政策策定は、経済・財務を担当する省の企業総局(DGE)下のデジタル経済部であり、「FrenchTech」(Ⅲ-2(5)の項参照)等ICT産業の活性化や一般企業のデジタル化推進等を所掌する。同局の上部組織については、内閣再編に伴い名称や管理担当職が変化する場合も多い。マクロン政権下では、2017年5月から数回の再編と名称変更があったが、2024年12月の内閣再編では、「経済・財務・産業・デジタル主権省」となっている。また、5名の担当大臣(経済・財務・産業・デジタル主権大臣の委任を受けて職務を実施)のうち1名が、「AI・デジタル」部門を専門に担当することが決定された。
Electronic Communications, Postal and Print Media Distribution Regulatory Authority
Tel. | +33 1 40 47 70 00 |
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URL | https://www.arcep.fr/ |
所在地 | 14 Rue Gerty Archimède, 75012 Paris, FRANCE |
幹部 | Laure de La Raudière(委員長/Presidente) |
1997年1月5日、電気通信分野の独立規制機関として設立。運営予算は国の一般会計から年ごとに割り当てられる。通信分野の規制対象は、通信網運用、通信サービス提供事業者に加え、通信端末メーカー、ネットワーク機器提供者、通信関連システム開発事業者、データ運用事業者、クラウド・サービス事業者である。この分野における主な所掌は、①通信各市場の分析及び対称あるいは非対称規制条件の決定、②周波数・番号等の希少資源の割当て及び管理、③ユニバーサル・サービス管理、④政府、議会その他の機関からの諮問への回答、⑤各事業者への規制条件の決定、⑥市場の現状の認識のための事業者との継続的な対話、⑦通信網の他社への開放条件の監修及び必要な場合の改変、⑧移動体・固定ブロードバンド・カバレッジ・マップの作成・公開、⑨光ファイバ・アクセス料金の策定、である。
機関内で意思決定を行う部門である委員会は、法律、技術、地域経済の各専門家7名からなる。うち委員長を含む3名は大統領により、2名は国民議会議長により、2名は元老院議長により指名される。各委員の任期は6年で、再選は許されない。2023年に政府から供与された活動資金額は約558万EUR、同年12月現在の職員数は184名であった。
1952年、電気通信分野の基本法令として法典化された。「法律の部」「国務院の議を経るデクレ*(政令)の部」及び「デクレ(政令)の部」の3部からなる。「法律の部」第Ⅱ部の第1編が通信事業、第2編が周波数等の資源の割当てと関連施設の設置に関する規制の枠組みを構成し、デクレの部では、「法律の部」に対応する各節でその適用方法を規定している。
*我が国の「政令」に類似し、主に法律を補足する命令としての機能を有する。国務院の議を経て成立するデクレと単純デクレとの2種がある。
2021年5月には、免許制度の改変やブロードバンド・サービスのユニバーサル・サービス化を主眼とする2018年12月のEU「欧州電子通信コード」の国内法制化が完了した。そのほか、近年に実施された主な改正としては、ARCEPの規制対象拡張(2021年12月及び2024年5月)、通信端末販売における未成年者保護(2022年3月)、電気通信事業者の情報システム・セキュリティ保持義務(2023年8月)等がある。
2021年5月の「郵便・電子通信法典」第L33-1条改正により、公衆電子通信網の設置・運用及び電子通信サービスの提供に際して、同条に定める通信の質の維持、相互接続、緊急通報等に関する条件の順守を条件として自由であるとされ、従来のARCEPへの事前の届出の義務は撤廃された。ただし、周波数、番号等の希少資源の利用については、ARCEPの管理下において別途利用許可を取得し、資源の割当てを受けることとされている。
外資規制について、「郵便・電子通信法典」に言及はないが、「企業の成長と変革にかかわる2019年5月22日の法律第2019-486号」では、政府が経済戦略上重要であると考える分野での外国企業からの投資については、事前に政府の許可を得ることが義務付けられ、ここには通信分野が含まれると解されている。
公衆電気通信網事業者は公衆電気通信サービスの向上という観点から、欧州内の他の公衆電気通信網事業者からの相互接続の要求に対し、特に拒否すべき理由が明確でない限り、要求を受諾しなければならない。
特にSMP事業者((3)の項参照)は、他の事業者からの相互接続申請を、公平、非差別的、かつ明確な条件の下で受諾しなければならない。この条件を確保するためSMP事業者は、現行の相互接続情報すべてを公表し、新たに相互接続を提供する際の技術上・料金上の諸条件に関して詳細にわたる提案を公表しなければならない。
ARCEPは、「郵便・電子通信法典」第L34-8条により、当該相互接続協定が順守すべき技術的・財政的条件を規定し、事業者の提案に対し随時修正を要求することができる。また、相互接続の拒否、あるいは相互接続条件に関する当事者間の協定に対する違反等が生じた場合、係争に介入することができる。相互接続の対象には、ブロードバンド市場におけるサブローカル・ループ、移動体通信網におけるインフラ共有及びローミング、建物内の光ファイバ回線が含まれる。
また、超高速ブロードバンド(FTTHを中心とする最大接続速度30Mbps以上のインターネット接続サービス)基盤の運用者は、欧州内の他の事業者からのアクセス要求に対して交渉に応じることが義務付けられている。
ブロードバンド上の電話番号を介さない双方向通信については、基本的に相互接続契約の対象外であるが、「郵便・電子通信法典」第L34-8条により、利用人口が有意に多数であるサービスの提供事業者に対し、ARCEPはエンドユーザ間の通信に必要な場合、他の類似サービスとの互換措置を講じる義務を課すことができる。
また、同法典第L34-8-2-3条は、Wi-Fi接続ポイントの運用者は、他事業者からのアクセス要求に対し、透明かつ非差別的な条件でのアクセスを受け入れる義務があるとしている。
相互接続料金は、「郵便・電子通信法典」第L34-8-2-1条及びARCEPの決定により、当事者間で締結される協定で定められる。双方の事業者は、相互接続協定をARCEPに届け出なければならない。課金の条件は、公平、明確、非差別性の原則を順守しなければならず、かつ相互接続を利用する事業者に過大な負担を与えてはならない。料金額は、他のサービス料金と明確に区分され、相互接続によって提供するサービスに関連する費用に基づいて決定しなければならない。
更に、SMP事業者((3)の項参照)は、料金上の諸条件の明確化、コストベースの課金のほか、相互接続に関する会計の分離に従い、ARCEPに会計報告を提出し、監査を受ける義務を有する。
ARCEPは、上記のコストベースの課金という原則に従い、固定・移動双方の通話着信市場でSMP事業者に指定された事業者の着信卸料金基準を2008年から数段階にわたり引き下げた。移動電話では2021年7月にEUの基準とほぼ同額の0.007EUR/分になり、2024年10月現在は0.002EUR/分である。固定電話では2021年から0.00077EUR/分となっている。
ARCEPは政府の超高速ブロードバンド普及計画(3(2)の項参照)推進に当たり、国内を①人口密度が高く、各事業者が単独で光ファイバ基盤に投資、事業活動を行う地域、②事業者が基盤構築に関心を示しているが、接続環境の整備には複数の事業者が協力、基盤共有が求められる地域、③人口密度等の理由で採算性が低く、自治体が公的資金により基盤構築を行わざるを得ない地域、に分類している。ARCEPは特に②について、すべての電気通信事業者がネットワーク構築に投資、共有基盤を強化するという姿勢を明確化している。またブロードバンド市場でSMP事業者に指定されたオランジュ(Orange、(3)の項参照)に対し、特に③の地域について、同社が有するネットワーク資源への非差別的なアクセスの受入れを求めている。
移動体通信網については、各事業者が4G/5Gカバレッジ義務を遂行するため、特にルーラル地域において通信基盤を共有することが推奨されている。2021年5月の「郵便・電子通信法典」改正により、ARCEPはルーラル地域で地勢・経済的状況からエンドユーザが移動体通信サービスを受けにくいと判断される地域については、複数の事業者に共有基盤を通じたサービスを提供することを義務付けることが可能となった。
5G向け周波数(3.4-3.8GHz)割当等において、MVNO受入れがサービス周波数帯域取得事業者の義務とされている。2024年9月現在、国内のMVNO事業者数は29である。
「郵便・電子通信法典」第L37-1条は、ARCEPが、特に相互接続及びアクセスに関して、電子通信市場の分析を実施し、それぞれの市場において顕著な市場支配力(Significant Market Power:SMP)を有する事業者を指定するとしている(指定期間は最大3年)。SMP事業者は、EUの基準に基づき、ARCEPが個別に決定する。
最近の分析結果としては、2023年12月、オランジュがブロードバンド市場で2024~2028年までのSMP事業者に指定された。この決定で、ARCEPは銅線については、同社が2030年までに銅線を撤廃する計画を進めていることから、段階的に規制を緩和するとしている。
この決定に先立つ2023年11月、ARCEPは2024~2028年の光ファイバ卸売料金規制について、競争市場の成立している222の自治体については特に規制を設けないが、その他の自治体については、競争市場の発展状況に応じて、オランジュの設定した卸売料金が過剰でないことを確認、オランジュに当該の地域で他社がオランジュと同等のコストでFTTHサービスを提供し得るかの調査を行い、その結果をARCEPに通知することを義務付けるとした。
固定電話では2001年1月1日、移動電話では2003年7月1日から番号ポータビリティが利用可能である。移行手続は固定・移動とも、事業者共通番号「3179」への連絡により、音声ガイド及びSMSの指示に従って所定の情報を通知するだけで処理される。移行作業は元の契約の解約も含め、すべて移行先の事業者が実施するため、消費者からの解約通知等は不要とされる。
2023年のポータビリティ・サービスの利用件数は、固定で前年比1.4%増の約320万、移動で前年比5.7%増の約688万であった。
ARCEPは、2023年3月、企業が使用する固定電話番号についてポータビリティ申請から新しい電気通信事業者によるサービスのアクティベーションまでの最大所要時間を2027年7月1日までに7営業日から3営業日に短縮することを目指すこととする決定を採択した。また加入者が契約事業者を切り替える際に、ビジネスプランに付与されている番号を消費者向けプランに移行できる条件を明確にした。またインターネット・サービスにおいては、2021年5月に創設された「郵便・電子通信法典」第L34-15条が、エンドユーザがISPを変更する場合、移行期間は1営業日以内とすること、契約の乗換えの通知から移行が終わるまで移行元の事業者は従来のサービスを継続すること、移行元・移行先双方の事業者は当該のユーザにネット接続条件にかかわる情報を提供すること等を規定している。
政府は、デジタル産業振興と国際競争力強化戦略の一環として、2013年末から以下を基本方針とするデジタル・ベンチャー支援プログラム「FrenchTech」による企業支援を実施している。
2024年10月現在、主な助成プログラムには、過去3年間に顕著な業績を上げた先端サービス開発企業への各種政府サービスやフォーラムへの参加を支援する「FrenchTech Next40/120」、地方向けスタートアップ支援「FrenchTech Tremplin」、社会的に価値の高いイノベーションを提供する企業に公的金融機関からの助成を行う「FrenchTech2030」等がある。
政府は2018年にAI推進プログラム「国家AI戦略」を発表、2022年までの第1フェーズでは、15億EURの資金を投入し、以下を実現するとした。
2021年11月には、同戦略の第2フェーズとして、官民がおよそ2対1の割合で総額20億EURの予算を投じる計画が発表された。2025年までの支援対象は以下のとおりである。
2024年5月、政府は教育機関向けの予算のうち3億6,000万EURを経済活性化プログラム「フランス2030」の枠組みで国内主要9大学に供与すると発表した。
このほかのAI産業推進のためのアクションとしては、2024年3月に国が選出した有識者による調査委員会が提出した25項目の提言があり、以下が特に重要視すべきものとされている。
「郵便・電子通信法典」第L35-1条は、ユニバーサル・サービス対象範囲をブロードバンド及び音声サービスへのアクセスとしている。また、障がいを持つ人々には、通信サービスを享受し得る技術上の措置あるいは代替サービスを提供するとしている。
ユニバーサル・サービス事業者の選定は公募によるが、公募により決定されない場合は、電子通信担当相が当該事業者(複数可)を指定する。ユニバーサル・サービス事業者の指定を受けた事業者は、通信担当相と協約を結び、ユニバーサル・サービスの品質とエンドユーザ向け料金基準を提示する。2020年までユニバーサル・サービス事業者の指定を受けていたのはオランジュであり、同社は2023年まで指定はなくともユニバーサル・サービス義務を実施する協約を結んでいたが、2024年以降のユニバーサル・サービス事業者の指定は同年12月まで行われていない。
年ごとのユニバーサル・サービスの純費用の算定は、「郵便・電子通信法典」第L35-5条により、ARCEPが指定する独立団体が実施する。
前年度に小売市場で1億EUR以上の売上高を計上した公衆電子通信網事業者及び公衆電子通信サービス事業者は、ユニバーサル・サービス基金への拠出義務を有する。各事業者の負担割合は、電子通信サービス(相互接続等、他の事業者に対するサービスを除く)による売上高に応じてARCEPが年ごとに決定する。
2023年4月のARCEP決定で発表された2021年のユニバーサル・サービス費用の算定では、サービス費用は指定事業者が存在しないため発生せず、拠出を行った14事業者は基金の運営費用として合計で約2万EURのみを負担した。
事業者からの拠出金は、預金供託金庫(Caisse des Dépôts:CDC)が特別会計を設定、ユニバーサル・サービス基金を運営して、会計上・財務上の管理を行う。
オランド大統領(当時)は2013年2月、2009年からの超高速ブロードバンド計画を見直し、新たなブロードバンド基盤整備目標として、「2022年末までに全国の世帯を光ファイバに接続可能にする」ことを掲げた。政府は2022年までの超高速ブロードバンド基盤整備に要する投資総額を約200億EURと見積もり、その約3分の2は電気通信事業者が負担すべきとした。2022年に、この計画の期限は2025年までに延長された。政府は光ファイバ網構築の対象地域を、①人口密度が比較的高く、電気通信事業者が自社の投資資金で個々の通信網を構築することが可能、②複数の事業者が共同投資により構築した通信網を共有、③人口密度が低く事業者が基盤投資に関心を示さないため自治体が資金を提供し通信網構築を主導、の3通りに分類している。助成の対象となるのは主に③であり、2023年の予算案では、約1,200万世帯への接続を目的として、ルーラル自治体向けに約4億7,300万EURの助成予算が設定された。
2024年6月現在、超高速ブロードバンド(最大通信速度30Mbps以上)が接続可能な場所は前年同期比6.5%増の約4,078万(うちFTTHが3,931万)である。地方自治体のネットワーク構築プロジェクトによるFTTH回線数は前年同期比200万増で約1,470万である。ARCEPは地域のFTTH接続状況につき、サイト上で3か月ごとのマップを公開している。
2016年8月の「郵便・電子通信法典」改正により、地方自治体には任意の移動体通信網運用事業者に、適正な料金でモバイル・インフラ構築を委託する権利が保証された。委託を受けた事業者は、当該地域で3G以上のサービス・カバレッジを達成する義務を負う。2017年からは、50m四方の単位で4ネットワーク事業者の人口カバレッジ及びサービス評価を図示する「monreseaumobile」ポータル・サービスが実施されている。また、2018年1月には、政府と電気通信事業者の間で、LTE網・サービスを中心に全国的なカバレッジ拡大努力を旨とする協約「New Deal Mobile」が結ばれた。この協約に従い、2018年の900MHz/1800MHz/2.1GHz帯の再割当においては、各事業者がLTEカバレッジ義務を遂行することを条件として、免許取得料を徴収せず、「自動更新」の形式で新たに10年間の周波数使用許可が付与された。これに基づき、ARCEPは年に数回の省令によるカバー対象自治体のリストをサイト上で公表している。
「郵便・電子通信法典」第L42-2条は、周波数割当における競争入札の目的の一つに対応サービスのカバレッジ拡大を挙げ、割当条件で最優先されるものはネットワーク拡張義務であると規定している。2020年の5G向け周波数割当においても、落札事業者には一連のカバレッジ達成義務が課せられた(電波/Ⅱ-3(1)の項参照)。全国周波数庁(ANFR)は、5G周波数割当を受けた各事業者の対応基地局数やカバー地域に関する統計を月ごとにサイト上に掲載している。
2018年以降、仏国内で販売される通信機器はすべてIPv6対応とするべきと定められている。ARCEPは2016年から年ごとに通信事業者のIPv6対応の現状報告を実施している。
2023年半ばで、固定網における4ネットワーク事業者のIPv6導入率はフリー(Free)で99%、オランジュで92%、ブイグ・テレコム(Bouygues Telecom)は85%、SFRは35%となっている。移動体網でのIPv6利用可能性は、ブイグ・テレコムが91%、オランジュは79%、SFRは62%、フリー・モバイル(Free Mobile)は1%であった。
「国家デジタル・セキュリティ戦略」(5(2)の項参照)により、移動体通信事業者は、5G網の構築・運用に際し、国家情報システム・セキュリティ庁(Agence Nationale de la Sécurité des Systèmes d’Information:ANSSI)の指示に従い、システム防御のための一連の措置をとり、トラブルの際にはANSSIへの通知を行うことが義務付けられている。
「郵便・電子通信法典」第Ⅱ部第1編第2章第7節は、国防・国家安全保障の観点から、5G以降の無線通信網関連ハード・ソフトウェアの利用に際して、電気通信事業者は首相府の定める様式に従い事前に審査を受け、許可を得ることと規定している。許可の期限は最大8年である。
MEFSは、2024年3月、2024~2030年の国家デジタル化ロードマップを発表した。対象分野は、インフラ整備、デジタル教育、企業のデジタル化、電子政府である。
各分野の主要目標は以下のとおりである。
ARCEPは2020年から、「持続可能なデジタル社会」を目指し、環境保護関連機関と連携して、端末リサイクル等を推進、新規の周波数割当に際しても、環境問題への取組みを審査項目の一つとすることを検討している。また2022年から電気通信事業者のサービスの温室効果ガス発生量等に関する年次報告を実施、一般のユーザに対しても、ADSLよりエネルギー効率のよいFTTHへのプラン乗換え、ファイルのダウンロード量の調整、機器の長期利用等、温室効果ガス減少に効果があるとされている行動を推奨している。
首相府の司るオープン・プラットフォーム「https://www.data.gouv.fr」上で、15の行政分野に関する20万以上のファイルの閲覧が可能になっている。2024年12月現在、トップページ上で重点分野に挙げられているのは、農業、エネルギー、教育である。
個人情報保護を目的とした「情報処理、情報ファイルと自由に関する1978年1月6日付法律第78-17号」により、インターネット・コンテンツ・プロバイダ等には、オンラインでの個人情報の利用について、その利用目的の明確化と関係者の同意を得ることが義務付けられている。「2012年3月30日のデクレ第2012-436号」に基づき、電気通信事業者に対し、自社の通話やネット接続等のサービスにかかわる事項で個人情報侵害の事実があった場合、直ちにその詳細と講じた対策について、個人情報保護機関(Commission Nationale de l’Informatique et des Libertés:CNIL)に通知することを義務付けている。
2020年9月の「情報処理、情報ファイルと自由に関する1978年1月6日付法律第78-17号」改正及びそれに基づく勧告により、CNILはウェブサイトの運営者に、個々のユーザに対し、ポップアップ・ウィンドウ等でCookie利用の是非について問い合わせ、了解を得なければ情報収集を行わないこと、ユーザがCookie利用を拒否する際の手続を簡略化することという規則を提示した。
2022年3月には、通信端末の製造、流通、輸入等にかかわる事業者に対し、当該の端末に未成年に有害なサービスやコンテンツへのアクセスをブロックする機能を付けることを義務付ける条項が「郵便・電子通信法典」に追加された。
セキュリティ関連政策の監督・執行機関は、首相府防衛・国家安全総局(Secrétariat Général de la Défense et de la Sécurité Nationale:SGDSN)及び同局下のANSSIである。電気通信事業者はANSSIに対し、その有する情報システムのリストを提出、年ごとに更新報告を行う義務が課せられている。また、セキュリティ・システムに何らかのトラブルが生じた際は、その都度ANSSIに報告することとされている。「郵便・電子通信法典」第L34-14条は、電気通信事業者はシステム防御のためANSSIの指示する技術的措置をとること、関連データを6か月までの期間で保存すること、ANSSIの要求に従い加入者にセキュリティ危機についての通知を行うこと等を規定している。同法典第L34-1条は更に、国防や治安維持の観点から、電気通信事業者は個々の加入者について、契約期間終了後もその身元については5年、契約条件、支払記録及び利用端末については1年間記録を保存すること、また首相令によりある種の通信データを1年までの期間で保存する場合が生じ得ることを定めている。
一方、マクロン大統領は2021年2月にサイバーセキュリティ関連企業育成策として、「サイバーセキュリティ強化戦略」を発表、2025年までの予算額を官民合同で10億EUR(うち4分の3を政府が負担)とした。主目標には、関連企業の年間売上高合計を5年間で250億EURまで引き上げること、2025年時の関連企業の従業員を2020年現在の倍以上の7万5,000人まで増やすこと等が挙げられた。
2023年には、地方自治体や中小企業へのサイバー攻撃事例の増加がANSSI等の調査で指摘され、政府は2023年12月6日、「フランス2030」の一環として、中小企業のサイバーセキュリティ強化のための助成プログラムを発表した。プログラムの総予算は1,250万EUR、応募企業は自社のセキュリティ体制に関する診断とセキュリティ強化のための指導及び財政支援を受けることができる。
電子通信端末機器の型式認定は、EU「無線機器指令(Radio Equipment Directive :RE Directive(2014/53/EU))」を国内法制化した「無線設備の市場投入に関する2016年4月21日の命令第2016-493号(Ordonnance n° 2016-493 du 21 avril 2016 relative à la mise sur le marché d’équipements radioélectriques)」に従いARCEPが所掌する。電子通信端末機器の適合性検査手続を実施し、適合検査証を発行する組織はARCEPが指名する。当該の組織の指定条件、検査対象となる機器の技術的条件、検査証発行の条件等は、国務院の議を経るデクレで定める。
ARCEPの2023年の電気通信事業市場動向では、同年の電気通信事業者の総売上高(小売)は前年比2.5%増の約376億EURで、うち固定サービスが前年比2.2%増の約170億EUR、移動サービスが前年比2.9%増の151億EURであった。
電気通信事業者の投資総額は約138億EURで、前年比5.2%減、周波数利用許可取得料を除いた額も前年比5.2%減である。
電気通信事業者全体の従業員数(直接雇用)は前年比2.6%減の約9万4,300名で、減少傾向が続いている。
2024年6月末現在、固定電話全体の加入数は約3,696万、うちPSTN回線によるものは前年同期比18.5%減の約368万であった。IP電話は0.7%増の約3,328万で、電話全体の約90%に達している。固定電話サービスが提供可能な回線数は約3,642万、うち銅線は前年同期比22.2%減の約1,198万で、光ファイバ回線の約半分になった。音声電話の通話時間は、2024年4~6月期は前年同期比19.4%減、1か月当たりの通話時間の平均は、PSTN回線では55分、IP電話では50分であった。
2024年6月現在、移動電話サービスの加入者総数は前年同期比0.6%増の約8,342万(M2M対応SIMカードを除く)で、加入率は122.5%となった。うちポストペイド契約は約7,656万である。全体の33%に当たる2,547万件は固定サービスとのバンドル契約への加入である。M2M対応SIMカード数は前年同期比6.1%増で約2,527万となった。海外県・領土を除く事業者の種別では、ネットワーク事業者4社(オランジュ、SFR、ブイグ・テレコム及びフリー・モバイル)の個人契約合計加入数は前年同期比0.1%増の7,451万、MVNO加入者の合計数は前年同期比8.3%増の約630万、市場シェアは7.8%である。ネットワーク事業者は4社とも4G/5Gサービスを提供、人口カバレッジは4Gで約99%、5Gでは事業者によりばらつきはあるが70%を超えているとされている。4G/5Gネットワークに対応するアクティブSIMカードが全体に占める割合は、4Gが88%、5Gが22%である。4G/5Gサービスの普及に伴いデータ使用量は増加し続けており、2024年4~6月は前年同期比14.3%増であった。音声通話については、2024年4~6月の通話時間合計は前年同期とほぼ同量である。
端末ではスマートフォン利用が定着し、2024年6月現在のスマートフォン普及率は92.0%であった。
2024年6月末現在、国内の固定ブロードバンド・サービス加入数は前年同期比0.8%増の約3,241万である。うち約625万がADSL利用であるが、超高速ブロードバンドの伸長に伴い、接続別シェアは減少を続け、20%を下回った。超高速ブロードバンド加入数は約2,552万(FTTHが約2,298万、残りは同軸ケーブル又はvDSL)、(幹線が光化されていない)ケーブル、衛星等のサービス加入数は65万である。
モバイルブロードバンドについては、2023年12月現在、加入率は99.6%で、欧州では17位、OECD諸国中では25位である。
主要4事業者はいずれもの商用サービスを提供しており、インターネット接続の最高速度は8Gbpsに達している。
2024年6月現在、主要都市及びその近県、その他の人口密度の比較的低い地域でも、電気通信事業者主体のネットワーク構築が行われている地域ではほぼ93%が光ファイバ接続可能地域になっているが、地方自治体がネットワーク構築を主導している地域では84%である。FTTH回線数は全事業者合計で約3,948万、うちオランジュが1,868万、SFRグループが516万程度である。光ファイバ接続可能な場所の住民は58.5%がFTTHサービスに加入している。
主要4事業者はいずれもトリプルプレイ・サービス・パッケージにIPTVサービスを組み込んで提供している。2024年6月現在、IPTV視聴可能な契約の加入者は、約2,496万で、ブロードバンド加入者の約77%である。接続種別では、ADSLが前年同期比25.3%減の約500万、FTTH、衛星及びケーブルが14.4%増の約1,996万で、FTTHの割合が増加し続けている。
2024年6月現在、IPTVのみでテレビを視聴している世帯はテレビ視聴世帯全体の49.7%、地上デジタルや衛星と併用している世帯は21.5%であった。また、87.2%の世帯がネット接続可能なテレビ受像機を所有している。うちスマートテレビ機能を用いている割合は54.0%である。
どの事業者も地上デジタルテレビ放送の無料チャンネルを含む140チャンネル以上の番組パッケージを提供、ビデオ・オン・デマンド(VOD)の利用も可能である。各事業者の有料オプションにはネットフリックス(Netflix)等の動画配信サービスも含まれている。
Orange S.A.
Tel. | +33 1 44 44 22 22 |
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URL | https://www.orange.com/ |
所在地 | 78-80 rue Olivier de Serres, 75015, France |
幹部 | Christel Heydemann(社長/General Director) |
2013年にフランス・テレコム(France Telecom:FT)より名称変更。1991年に当時の郵便・電気通信省から分離され国営企業として発足、1996年に株式会社となり、2004年9月に民営化した。2023年12月の主な株主は、機関投資家が約62.2%、政府及び政府系金融機関が約23%、従業員が約8%で、残りが個人投資家であった。
2022年4月、新社長Heydemann氏の下で、グループの重点活動領域を、①ネットワーク拡充、②法人向けサービス、③サイバーセキュリティ、④モバイル金融サービス、⑤ベンチャー支援、⑥イノベーション推進であるとした。また、持続可能な社会参加として、世界規模でのデジタル利用環境の平等化を目指し、中近東・アフリカでデジタル・センター開設等を行うとともに、2040年までに温室効果ガス排出をゼロにするという目標を掲げ、端末リサイクルや太陽光基地局設置等を進めている。
2024年10月現在、同社は26か国で移動体通信を中心に事業を展開している。
仏国内では、2024年6月現在、通信すべての分野で第1位の地位を保ち、各種サービスの加入者は、移動電話が約2,181万(うち約1,024万が固定サービスとのバンドル利用)、固定ブロードバンド接続が約1,226万(うちFTTHが約874万)である。
同じく2024年6月、進出国全体での移動電話加入数は約2億4,590万、固定ブロードバンド加入数は約2,143万(うち約907万が欧州での移動サービスとのバンドル利用)となった。
2023年末の売上高総額(全世界)は前年比1.9%増の約397億EUR、国内売上高は前年比1.4%減の約177億EURであった。
Tel. | +33 1 85 06 00 00 |
---|---|
URL | https://www.sfr.fr/ |
幹部 | Mathieu Cocq(社長/General Director) |
オランダの多国籍ケーブル事業者Alticeグループの完全子会社を経て、2024年12月現在、主要株主は国内投資家Drahi氏である。BFM/RMCメディアグループと「Altice France」グループを構成していたが、2024年7月にメディア部門を売却し、グループに属するのは1社のみとなった。
2024年6月現在、主要サービスの加入件数は、移動電話が約1,962万、固定ブロードバンド接続が約623万(うちFTTHが約494万)である。
2023年の売上高は、前年比1.3%減の約112億EURであった。
Tel. | +33 1 73 50 20 00 |
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URL | https://www.iliad.fr/ |
幹部 | Thomas Reynaud(社長/Director General) |
1991年に設立された複数の通信関連事業者グループで、ブランド名「フリー」を掲げ、単純な商品構成と徹底した低価格を集客戦略としている。主要株主は創設者のNiel氏で、全株式の70%強を所有している。2024年6月現在の固定ブロードバンド加入件数は約754万(うちFTTHは約594万)、移動電話加入者総数は約1,534万である。2023年の国内売上高は、前年比8.7%増の約60億EURであった。
2018年にはイタリア、2020年にポーランドに進出、2024年にはスウェーデンTele2の最大株主となり、ウクライナでは固定通信事業者Datagroupと移動体通信事業者Lifecellを買収した。
事業分野 | 事業者 | URL |
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移動体通信 | ブイグ・テレコム | https://www.bouyguestelecom.fr/ |
Ministry of Culture
Tel. | +33 1 40 15 80 00 |
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URL | https://www.culture.gouv.fr/ |
所在地 | 182, rue Saint-Honore, 75001 Paris, France |
幹部 | Rachida Dati(大臣/Minister) |
省内のメディア・文化産業総局が放送を含むメディア全般の政策立案と実施、規則・基準の制定を司る。公共放送については、事業者に対する運営規則の制定、一部の経営委員の任命、年次予算の策定等を行っている。
Autorité de régulation de la communication audiovisuelle et numérique
Tel. | +33 1 40 50 38 17 |
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URL | https://www.arcom.fr/ |
所在地 | Tour Mirabeau, 39-43, quai Andre-Citroen 75739 Paris cedex 15, France |
幹部 | Roch-Olivier Maistre(議長/President) |
2022年1月、「デジタル時代における文化作品へのアクセスの保護と規制に関する2021年10月25日の法律第2021-1382号」に基づき、インターネットにおける著作物の頒布及び権利の保護のための高等機関(Haute autorité pour la diffusion des œuvres et la protection des droits sur Internet:Hadopi、2012年~)と放送分野の独立規制機関であった視聴覚高等評議会(Conseil supérieur de l’audiovisuel:CSA、1989年~)の統合により設立された。
運営主体となる委員会は、大統領が任命する議長のほか、国民議会議長、元老院議長による任命が各3名、国務院長、破棄院(国内の司法訴訟に関する最高裁判所)長による任命が各1名の合計9名の委員から構成される。議長を除く委員の年齢は就任時に65歳以下、任期は6年で、他の公職との兼任は不可とされている。また、両院の議長による任命の手続については、野党の意向も反映した選任を企図し、それぞれの文化委員会の委員の5分の3以上の賛成による意見に基づいて行われると規定されている。
具体的な所掌内容は以下のとおりである。
コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日の法律第86-1067号(1986年視聴覚法)
放送分野の基本法令で、数年ごとに大規模な改正を受けている。2020年以降の主な改正事項は以下のとおりである。
放送事業の開始に当たっては、国務院の議を経るデクレが定める条件に従い、各事業者にArcomとの協約によりサービス許可が付与される。
電波資源の利用許可を必要とする放送事業に関する許可の付与は、Arcomが公表する利用可能な周波数のリストに基づき、公募により実施される。地上テレビ及び地上デジタルラジオのサービスについては、許可の期間はデジタル放送で10年、アナログラジオ放送で5年を超えないものとされる。この許可は、公募を経ずに5年ごとにテレビは1回、ラジオは2回まで更新可能である。
ケーブル、IPTV等、周波数を利用しない通信網を用いて配信される番組の編集事業者については、100世帯以上を対象とするサービス配信者は、Arcomに事前の届出を実施し、サービス条件に関する協約を結ぶこととする。これらの事業者は、公共放送の番組を無料で配信する義務を有する。
上記のテレビ・サービスの付属でないオンデマンド配信サービスを提供する事業者も同様に、サービス開始前にサービス内容に関する届出を実施、Arcomと協約を結ぶこととする。
放送分野ごとのサービス許可件数の上限は以下のとおり。
次の条件のうち二つ以上を備えた者は地上デジタルテレビの全国放送の許可の取得はできない。
また、次の条件のうち二つ以上を備えた者は地上デジタルテレビの地域放送の許可の取得はできない。
地上又は衛星テレビ放送の資本所有規制の概要は以下のとおりである。
「コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日の法律第86-1067号」第40条により、政府が署名した国際公約を除き、外国籍の個人又は法人が、国内の地上放送事業者の資本あるいは議決権の20%以上を直接にも間接にも所有することはできない。
商業放送事業者の番組内容については、個々の事業者とArcomとの協約に基づき個別に規制を定める。ラジオにおいては、聴取率の高い時間帯に放送する音楽番組中の少なくとも40%がフランス語の歌曲であり、更にその半数は新人の作品あるいは新作でなければならない。事業者の性質により、以下が義務付けられる。
テレビ放送のプライムタイムの番組編成において映画あるいはテレビ番組が占める割合は、少なくともその60%が欧州域内で制作されたもの、40%はオリジナル版がフランス語で制作されたものでなければならない。
全国無料放送許可を得たテレビ事業者が番組編集上の都合で行う特定の地方向けの番組放送は、特にArcomが例外を認めない限り、1日3時間を限度とする。
未成年者の身体的、精神的及び道徳的成長を阻害する可能性のある番組について、Arcomは個々の事業者との協約に基づき、放送時間の制限や視覚的表示による警告がなされているかについて監督し、催告を与えることができる。オンライン・プラットフォーマーに対しては、16歳以下の未成年者の映像の流出制御に関する憲章の順守状況を定期的に監督する。
放送事業者は、番組が人種、性別、宗教等についての差別的内容を含まないよう留意するものとし、催告等の措置は番組放送後に実施するものとされる。事業者が催告に従わなかった場合、放送停止や協約期間の短縮等の措置が可能である。この規定はオンデマンド方式の番組再送信サービスにも適用される。
また、全国で年間平均2.5%以上の人口が視聴する地上デジタルテレビのチャンネルについては、視聴者の多い時間の番組放送に当たっては、視覚障がい者向けの対応が義務付けられている。
Arcomは、VODを含む映像放送事業者の広告放送への規制を所掌する。規制の主目的は、人間、特に女性の尊厳の維持と若年層に健全な社会への関心を喚起、危険行動を回避させることである。規制内容には、政治団体の広告の禁止、未成年の健康に悪影響を与える材料が多量に含まれる飲食物や地球環境に悪影響を与える物品・サービスの広告の減少を図ることも含まれる。サブリミナル広告は禁じられる。スポンサー付番組については、その旨を番組の最初や最後に明示、番組中でスポンサーの商標や商品の宣伝を行ってはならない。
テレビ放送における広告は、原則として使用言語をフランス語に限り、放送時間60分当たりの広告放送時間は、公共放送で8分以内、商業放送で12分以内である。また公共放送では、夜間(20時から翌6時)の広告放送は禁止されている。
「コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日の法律第86-1067号」第47条により、国が公共放送事業者フランス・テレビジョン及びラジオ・フランスの全資本を所有する。同法第47-1条により、フランス・テレビジョンの経営委員会は、会長のほか、任期を5年間とする14名の委員で構成され、そのうち2名は国民議会及び元老院において文化事項を所管する委員会によって指名される議員、5名は国の代表、5名はArcomによって任命される独立人、2名は職員代表を充てることとされている。同法第47-2条により、ラジオ・フランスの経営委員会は、任期を5年とする12名の委員で構成され、そのうち2名は国民議会及び元老院において文化事項を所管する委員会によって指名される議員、4名は国の代表、4名はArcomによって任命される独立人、2名は職員代表を充てることとされている。それぞれの会長は、同法第47-4条により、Arcomの多数決により任命される。
国際放送については、国が全資本を所有するフランス・メディア・モンド(France Médias Monde)が国際ラジオ放送RFI及び国際テレビニュース放送France24を運営している。
このほか、ARTEフランスが、ARTEドイツ及びARTE GEIEと共に、ARTEグループを構成し、文化・教養専門のテレビ・チャンネルARTEを運営している。
公共放送機関には、3~5年間の事業計画である「目標手段契約(COM)」を政府に提出し、年ごとに実現報告を行う義務が課せられている。2020~2022年のフランス・テレビジョンのCOMの目標には、2023年までのデジタル・プラットフォームの拡張やニュースの信頼性確保等が挙げられた。2024~2028年の計画にも、ニュースや若年層番組の内容の充実やデジタル事業者との協力体制の強化等の目標が掲げられている。
「2022年8月の補正予算法律」第6条は、公共放送の受信料制度の廃止を決定し、公共放送の財源は付加価値税の一部からまかなわれることとなった。当該措置は2024年12月31日までの時限措置とされてきたが、これを「国税からの固定年額給付」の位置付けで恒久化する法案が2024年11月に議会で可決された。2025年の予算案では、公共放送への交付金は、前年とほぼ同額の約40億3,000万EURである。
国内の地上デジタルテレビ放送(DTT)は、2005年3月にDVB-T方式で開始、2011年11月末には全土で完全停波が実現した。2015年10月には、地上デジタルの全国放送事業者に、人口カバレッジ90%以上の維持が義務付けられている。難視聴地域では、国際的な周波数調整の関連でカバーが難しいとされる東部の国境地域を中心に、カナル・プリュス(Canal Plus)がTNTSatの名称でアストラ(Astra)衛星による無料放送の配信を実施している。
DTTにおけるマルチプレックスの運用については、ナンバーを指定された事業者が共同でマルチプレックス事業者を指定、当該の事業者に対して利用施設ごとに周波数が割り当てられることとされている。放送送信については、マルチプレックス事業者と送信事業者との契約に基づいて実施される。
CSA(当時)は2016年4月にDTTチャンネルの画像圧縮方式をMPEG4に移行、マルチプレックス枠を8から6に再編、R5及びR8を電話サービスに開放した。これに伴い、大半の全国放送事業がHDTVに移行した。
2023年10月、政府はフランス・テレビジョンの2チャンネルへのDVB-T2方式の放送許可付与(うち1チャンネルは2024年7~9月のみ)を決定した。放送開始は2024年1月で、7月までに国内人口の約4分の3をカバーした。また、2024年7月には15の既存チャンネルが2025年内に免許期間終了を迎えるため、新たな免許付与対象の選定を実施、13の既存チャンネルと新規参入の2チャンネルが暫定付与対象になったが、カナル・プリュスは同年12月に有料4チャンネルへの新規免許付与を辞退した。
地上デジタルラジオについては、2023年9月に人口カバレッジが50%を超え、同年末までに周波数割当を受けた局数は1,337に達した。2022年から、Arcomはサイト上で県ごとのカバレッジ・マップを公開している。
2023年、国内のラジオ受像機販売数は約240万で、その18%がDAB+対応である。
公共放送には3事業者が存在し、ラジオ・フランスは、総合編成のFrance Inter、ニュース専門のFrance Info、文化専門のFrance Culture、クラシック及びジャズ音楽のFrance Musique、軽音楽中心のFip、20~35歳を対象としたMouv’の6系統の全国放送のほか、44の地方局を結ぶFrance Bleuネットワークを全国で展開している。国際放送はフランス・メディア・モンドの子会社RFIがフランス語及び放送地域に合わせた21の言語で放送を実施している。また、フランス・テレビジョンの海外県・領土部門Outre-mer 1èreが9地域向けのサービスを行っている。
商業FM放送は87.5-108MHzの帯域での周波数利用許可の取得が必要とされ、サービスを実施している局は2023年12月現在1,000を超えている。商業ラジオ放送は、同好者の協会によるサービス、②独立系ローカル・サービス、➂全国向けプログラムを放送するローカル・サービス、④全国ネットでの専門サービス、⑤全国ネットでの総合サービス、に分類される。
大手民間ラジオ事業者はほとんど⑤の分類で周波数割当を受けており、聴取者が多い局には、NRJ、RTL等がある。また、主要ラジオ局はほとんどがポッドキャスト・サービスを提供している。
2024年6月現在、仏世帯の約90%が、テレビ受像機を所有している。地上デジタル放送を視聴している世帯は、このうちの約38.5%、地上デジタル放送のみがテレビ視聴手段である世帯は16.6%である。2024年12月現在、全国をカバーする無料放送チャンネル数は25(民間18、公共7)、有料放送チャンネル数は5である。ローカル放送については、2007年9月から開始され、2023年12月までに仏本土では42チャンネルが放送を実施している。
これらのチャンネルにはR1~R4、R6、R7のマルチプレックスが割り当てられており、R1は主に公共放送、R3は主に有料放送、その他は無料の商業放送中心に用いられている。なお、DVB-T2方式のチャンネルについては、2023年12月にR9のマルチプレックスが割り当てられたが、2024年12月現在、本土内で放送を実施しているのは公共放送の1チャンネルのみである。
商業放送では、多事業のコングロマリットであるブイグ・グループに属するTF1、カナル・プリュス、M6(Metropole Television)の勢力が強く、上記の表中で、TF1は五つ、カナル・プリュスは七つ(無料3、有料4)、M6は五つ(無料4、有料1)の系列チャンネルを有している。また、2024年7月、2025年からの地上放送事業免許対象15件の選出では、C8(無料)及びNRJ12(無料)の免許更新はなく、共に地方新聞社が運営するOF TVとREELS TVの2チャンネルが新たな免許付与対象となった。
2000年代後半からフランス・テレビジョンを中心に大手事業者がキャッチアップ・サービスを開始、ネット上でのストリーミングによる見逃し視聴やオリジナル番組を提供しているほか、TF1とM6は他社のコンテンツ提供も受けてFAST+広告付きVODサービスも実施している。
衛星放送のみを視聴している世帯は、2024年6月現在、テレビ視聴世帯全体の約3.8%、地上波やIPTVと併用している世帯は約7.9%である。
主要事業者はカナル・プリュスのみで、同社はアストラ衛星を用いて基本パッケージ+専門チャンネル・シリーズで4種類のプランを提供している。
国外向けには、フランス・メディア・モンド傘下のFrance24が五大陸の5億3,300万世帯を対象に、英語、フランス語、アラビア語、スペイン語の24時間放送を実施している。
また、フランス語圏を中心にTV5 モンド(フランス・テレビジョンやフランス・メディア・モンドのほか、スイスのSSRやベルギーのRTBF等が出資)が10チャンネルの送信を実施しており、12か国語で198か国、4億3,700万世帯が視聴可能である。
電気通信事業者のケーブルによるテレビ・サービス・プランは、技術中立で高速ブロードバンドのトリプルプレイとして提供されているため、Arcomの分類上ではIPTVに含まれている。ただし、全国で約4.2%の世帯が地上波の難視聴対策としてケーブルでの無料再送信サービスを受けている。
France Télévisions
Tel | +33 1 56 22 60 00 |
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URL | https://www.francetelevisions.fr/ |
所在地 | 7, esplanade Henri de France, 75105 Paris Cedex 15, FRANCE |
幹部 | Delphine Ernotte Cunci(会長/President Director-General) |
2000年の放送法改正で同年9月に設立し、持株会社が運営してきたが、2009年1月に全国番組会社に改組し、個別に運営されていた傘下の番組制作会社を統合した。2024年12月現在、DVB-T方式で本土では5チャンネル、海外県・領土では1チャンネルの放送を実施しており、フランス2はDVB-T2方式での視聴も可能である。
ネット配信プラットフォーム・サービス「france.tv」は、上記の各チャンネルの過去数か月分の見逃し視聴のほか、教育、ニュース、スポーツ等のオリジナル・ビデオ映像を各種デジタル・メディア上で、随時無料で視聴できる10代後半~20代向けチャンネル「France.tv/slash」、その他のオリジナル特集番組を提供している。
フランス・テレビジョンの2023年のチャンネル合計の視聴シェアは27.8%で国内第1位であった。同年の総収入額は約28億3,500万EURで、うち86%が政府の交付金、13%が広告収入であった。
Canal Plus
Tel. | +33 1 71 35 35 35 |
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URL | https://www.canalplus.com/ |
所在地 | 1, place du Spectacle 92863, Issy-les-Moulineaux Cedex 9, France |
幹部 | Maxime Saada(最高経営責任者/CEO) |
国内で唯一の大手有料放送事業者で、地上デジタル放送(2025年半ばの免許期限切れとともに停止予定)、衛星、ケーブル、IPTV等に番組を提供するほか、近年は4K映像視聴可能な衛星/IPTVデコーダやマルチスクリーン・アプリケーション「Mycanal」等、サービスのデジタル化に注力している。メディア・コングロマリットのビベンディ(Vivendi)が株式の100%を所有していたが、2024年12月にグループから分離、株式が公開された。2024年12月現在、国内では有料放送のほか地上デジタルの無料放送3チャンネルを運用し、映画・テレビ番組の制作・販売子会社「Studiocanal」を所有している。
2023年12月現在、仏国内の加入者は約1,000万である。国外市場においては、アフリカ大陸で中西部を中心に25か国で衛星放送を実施、2023年12月現在の加入数は約820万である。また、南アフリカに本拠を持つアフリカ最大の有料放送事業者マルチチョイス(MultiChoice)の株式の45.2%を所有している。欧州では、ポーランドの衛星放送事業者Cifra+の株式の51%を所有し、「Canal+ Polska」の名称でプラットフォームを提供している。2019年5月には、欧州7か国で衛星/OTT(Over The Top)テレビ・サービス・プラットフォームを提供するM7を買収した。更に中欧の国際番組配信事業者SPI Internationalを完全子会社化、スウェーデンの有料放送事業者Viaplayの約30%の株式買収等により、2023年12月現在の欧州(仏以外)の加入者合計は約740万である。また、ベトナムの「K+」(株式所有は49%)、ミャンマーの「Canal+ y」(Forever社との合弁)、香港のViúの株式の約37%取得等、アジア地域への進出を進め、アジアでの加入者合計は2023年12月現在で約130万である。
2023年のグループの売上高合計は前年比3.2%増の60億5,800万EURであった。
事業分野 | 事業者 | URL |
---|---|---|
地上放送 | TF1 | https://www.tf1.fr/ |
M6 | https://www.groupem6.fr/ | |
放送送信 | TDF | https://www.tdf.fr/ |
(通信/Ⅰ-2の項参照)
電子通信事業者の周波数利用条件の決定及び周波数利用の許可等を所掌する。
National Frequency Agency
Tel. | +33 1 45 18 72 72 |
---|---|
URL | https://www.anfr.fr/ |
所在地 | 78, Avenue du Général de Gaulle, 94704 Maisons-Alfort, France |
幹部 | Gilles Brégant(長官/General Director) |
周波数管理機関として、1997年1月に経済・財政省(現MEFS)の下に設置された。主な所掌事務は「郵便・電子通信法典」第R.20-44-11条により以下のとおりである。
(放送/Ⅰ-2の項参照)
放送用周波数の割当て及び管理を所掌する。
フランス標準化協会(AFNOR)
French Standardization Association
Tel. | +33 1 41 62 80 00 |
---|---|
URL | https://www.afnor.org/ |
所在地 | 11, rue Francis de Pressensé, 93571 La Plaine Saint-Denis Cedex, France |
幹部 | Olivier Peyrat(会長/General Director) |
MEFSの管轄に属する公益事業体であり、情報通信関連企業等の代表により構成される。情報通信分野を含めた技術標準の策定、国際標準に関する調査、製品及びサービスに関する証明書の発行等を実施する。
フランスの電波監理に関する主管庁は、電波監理機関と周波数割当機関の2層で構成されており、国家レベルの周波数分配は、電波監理機関であるANFRが所管する。「郵便・電子通信法典」第L42-1条によりARCEPは、ANFRの周波数分配を受けて、通信分野における周波数の割当業務を所管する。電気通信事業者の周波数利用に関して、同法第L42条により、ARCEPは周波数の利用の技術規則と条件を設定する。
無線局免許制度は、「郵便・電子通信法典」第L41-1条に定められており、第L33-3条に定められた免許不要局を除いて、信号の発信及び受信等で周波数を利用する際、免許取得が必要であると定められている。通信サービスに使用される無線局については、「郵便・電子通信法典」第L42-3条により、周波数の譲渡あるいは無線局の位置変更に関する計画はすべてARCEPに通知・公開することとしている。周波数帯が公共サービスに利用されている場合の無線局の移動等には、別途ARCEPの許可が必要である。
周波数資源の希少性等の理由から、ARCEPは、周波数の有効利用の原則に基づき、免許件数に制限を加え、免許人の選定に比較審査やオークションを実施できることが「郵便・電子通信法典」第L42-2条に定められている。近年では電気通信事業者の5Gサービスで価格面でのオークションが実施され、産業向け5Gについては、実験用周波数割当の公募窓口が開かれ、審査を通過した事業者には3年間の実験用周波数利用許可が付与されている。
政府は3.5GHz帯(3400-3800MHz)のうち、ルーラル固定地域ブロードバンド向けに配分された帯域以外を5Gに分配するとしており、将来的には同帯域上の周波数を途切れのない連続したものにし、2026年までに640MHz幅を5Gシステムで連続して利用できる帯域に再編することを計画している。このためARCEPは、3400-3600MHz帯を割り当てられている既存の事業者を中心に免許内容の改正を行い、割当帯域を再編している。
3490-3800MHzの310MHz幅については、2019年11月に割当計画の概要が発表され、2020年に以下の2段階で入札が行われた。免許期間は15年とされている。
①、②を通じ、1事業者の取得可能帯域は100MHzまでとされている。また、周波数を取得した事業者には以下の義務が課せられる。
上記①で50MHz帯域幅を取得した4事業者には更に、割当時に以下を順守する協約をARCEPと交わすこととされている。
2020年4月には、既存4事業者が対応周波数へのオークションの参加申請を提出、ほかに参加事業者がなかったため、それぞれが固定価格3億5,000万EURで50MHz幅の利用権を取得することが決定した。
2020年9月には、残りの110MHz幅に対するオークションが開始、10月1日、ARCEPは最終結果を発表した。帯域10MHz当たりの落札額は1億2,600万EURであった。
同11月には更に、各事業者への利用帯域の割当てが実施され、フリー・モバイルが希望帯域取得料として310万EURを支払うことになった。このオークションで政府が得る周波数利用許可取得料は約27億8,910万EURで、各事業者には、2034年までの分割払が可能とされている。各事業者は更に、今回の取得帯域を利用したサービスから得る年ごとの売上高の1%を電波使用料として政府に支払うこととされている。
5G対応帯域オークション結果
事業者名 | ブイグ・ テレコム |
フリー・ モバイル |
オランジュ | SFR | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
割当周波数(MHz) | 3570-3640 | 3640-3710 | 3710-3800 | 3490-3570 | |
帯域幅 | 70MHz | 70MHz | 90MHz | 80MHz | 310MHz |
支払予定額 (百万EUR) |
602 | 605.1 | 854 | 728 | 2,789.1 |
出所:ARCEP
ARCEPは、26GHz帯を5G展開のためのパイオニア・バンドとして位置付けており、産業界及び地方自治体や研究機関での先端サービスでの利用を期待している。2019年には、技術中立で実験プロジェクトの公募を開始した。2024年10月現在、窓口は開かれており、付与件数は13件である。
①と同様の主旨で、ARCEPは2022年5月に3.8-4.0GHz帯での実験プロジェクトの公募を開始した。この帯域は航空その他の用途で使用されている地域もあり、利用技術に若干の制限が加えられる場合もあるものの、審査により適合ケースと認められたプロジェクトには、最大100MHz幅の利用が可能になる。この公募窓口は産業界の要請により2025年12月まで開かれることになり、2024年12月現在の付与件数合計は約70件である。
時分割(TDD)用の40MHz幅(2575-2615MHz)を業務用無線(Professional Mobile Radio:PMR)に分配し、2G技術から超高速ネットワークにアップグレードする。2019年5月、割当計画の詳細についての案内文書が発行され、割当てを希望する事業者に対する相談・申請窓口が開かれた。2024年10月現在の付与件数は36件である。
「郵便・電子通信法典」第L43条により、電波監視業務は、ANFRの所掌業務であり、周波数制御局が以下を主に所管している。
フランス本土における電波監視は、1か所の国際監視センター及び本土5か所の地方監視センター、大西洋岸とドイツ国境地域の監視局、英仏海峡沿いのアンテナで実施されている。海外県・領土においては、4地域にアンテナが設置されている。
公衆電子通信網の運用又はサービスを目的として、ARCEPにより周波数資源の利用を許可された事業者は、「ARCEPにより周波数利用許可を付与された事業者の支払う周波数利用料に関する2007年10月24日のデクレ第2007-1532号」により、年ごとに国に対して次の2種類の料金を支払う。
電波の使用に関して徴収される料金。ARCEPが固定サービス、衛星固定サービス、GSM通信網サービス等、サービスの性質に応じてサービス区分ごとに料額を定める。
電波の使用にかかわる管理業務に関して徴収される料金。サービス区分ごとの基本利用料額を定め、事業者が利用する周波数帯域とサービス地域に応じて事業者ごとに料額を決定する。
「郵便・電子通信法」第L34-9-1条は、携帯基地局やWi-Fiアクセス・ポイント等、電磁波を発する無線装置の設置に当たり、電気通信事業者は自治体の要求に応じて情報公開を行うことと定めている。
ANFRは、基地局の設置場所や電磁界強度の測定値に関する情報を、ウェブサイト(https://www.cartoradio.fr/)で公開しているほか、「無線サイトのモデル化と公衆の安全境界に関する技術ガイド(Guide Technique modelisation des sites radioelectriques et des perimetres securite pour le public)」を公表している。
ANFRはまた、4G/5G対応端末機器につき、定期的に電磁波強度に関する調査を実施、EUの基準値を順守しない機器については市場からの引上げを指示している。また、5Gサービス開始とともに、大都市には複数の電磁波強度の測定設備を設置、サイト上でその値を公開している。
周波数の分配表(Le Tableau national de répartition des bandes de fréquences :TNRBF)は以下のとおり(2024年3月発行)である。