フランス共和国(French Republic)
通信
Ⅰ 監督機関等
1 経済・財務及び産業・エネルギー・デジタル主権省(MEFSIEN)
Ministry for the Economy, Finance and Industry, energyand digital Sovereignty
| Tel. | +33 1 40 04 04 04 |
|---|---|
| URL | https://www.economie.gouv.fr/ |
| 所在地 | Télédoc151 139, rue de Bercy, 75572 Paris Cedex 12, FRANCE |
| 幹部 | Roland Lescure(経済・財務及び産業・エネルギー・デジタル主権大臣/Ministre de l’Economie, des Finances et de la Souveraineté industrielle ,énergétique et numérique) Anne Le Henanff(AI・デジタル担当大臣) |
所掌事務
電気通信関連の政策策定は、経済・財務を担当する省の企業総局(DGE)下のデジタル経済部であり、「FrenchTech」(Ⅲ-2(5)の項参照)等ICT産業の活性化や一般企業のデジタル化推進等を所掌する。同局の上部組織については、内閣再編に伴い名称や管理担当職が変化する場合も多い。マクロン政権下では、2017年5月から数回の再編と名称変更があり、2025年10月の内閣再編からは、「経済・財務及び産業・エネルギー・デジタル主権省」となっている。また、3名の担当大臣(経済・財務及び産業・エネルギー・デジタル主権大臣の委任を受けて職務を実施)のうち1名が「AI・デジタル」を専門とすることが決定された。
2 電子通信・郵便・出版流通規制機関(ARCEP)
Electronic Communications, Postal and Print Media Distribution Regulatory Authority
| Tel. | +33 1 40 47 70 00 |
|---|---|
| URL | https://www.arcep.fr/ |
| 所在地 | 14 Rue Gerty Archimède, 75012 Paris, FRANCE |
| 幹部 | Laure de La Raudière(委員長/Presidente) |
所掌事務
1997年1月5日、電気通信分野の独立規制機関として設立。運営予算は国の一般会計から年ごとに割り当てられる。通信分野の規制対象は、通信網運用、通信サービス提供事業者に加え、通信端末メーカー、ネットワーク機器提供者、通信関連システム開発事業者、データ運用事業者、クラウドサービス事業者である。この分野における主な所掌は、①通信各市場の分析及び対称あるいは非対称規制条件の決定、②周波数・番号等の希少資源の割当て及び管理、③ユニバーサルサービス管理、④政府、議会その他の機関からの諮問への回答、⑤各事業者への規制条件の決定、⑥市場の現状の認識のための事業者との継続的な対話、⑦通信網の他社への開放条件の監修及び必要な場合の改変、⑧移動体・固定ブロードバンドカバレッジマップの作成・公開、⑨技術及びサービス開発等を目的とした一時的な周波数や番号の利用許可付与、⑩光ファイバアクセス料金の策定、である。
最高意思決定機関である委員会は、法律、技術、地域経済の各専門家7名からなる。うち委員長を含む3名は大統領により、2名は国民議会議長により、2名は元老院議長により指名される。各委員の任期は6年で、再選は許されない。2024年に政府から供与された活動資金額は約573万EUR、同年12月現在の職員数は187名であった。
Ⅱ 法令
郵便・電子通信法典
1952年、電気通信分野の基本法令として法典化された。「法律の部」「国務院の議を経るデクレ*(政令)の部」及び「デクレ(政令)の部」の3部からなる。「法律の部」第Ⅱ部の第1編が通信事業、第2編が周波数等の資源の割当てと関連施設の設置に関する規制の枠組みを構成し、デクレの部では、「法律の部」に対応する各節でその適用方法を規定している。
*我が国の「政令」に類似し、主に法律を補足する命令としての機能を有する。国務院の議を経て成立するデクレと単純デクレとの2種がある。
2021年5月には、免許制度の改変やブロードバンドサービスのユニバーサルサービス化を主眼とする2018年12月のEU「欧州電子通信コード」の国内法制化が完了した。そのほか、近年に実施された主な改正としては、ARCEPの規制対象拡張(2021年12月及び2024年5月)、通信端末販売における未成年者保護(2022年3月)、電気通信事業者の情報システムセキュリティ保持義務(2023年8月)、未成年に対するコンテンツアクセス制限(2024年7月)、無線機器の充電機器の互換性(2024年12月)等がある。
Ⅲ 政策動向
1 免許・認可制度
2021年5月の「郵便・電子通信法典」第L33-1条改正により、公衆電子通信網の設置・運用及び電子通信サービスの提供に際して、同条に定める通信の質の維持、相互接続、緊急通報等に関する条件の順守を条件として自由であるとされ、従来のARCEPへの事前の届出の義務は撤廃された。ただし、周波数、番号等の希少資源の利用については、ARCEPの管理下において別途利用許可を取得し、資源の割当てを受けることとされている。
外資規制について、「郵便・電子通信法典」に言及はないが、「企業の成長と変革にかかわる2019年5月22日の法律第2019-486号」では、政府が経済戦略上重要であると考える分野での外国企業からの投資については、事前に政府の許可を得ることが義務付けられ、ここには通信分野が含まれると解されている。
2 競争促進政策
(1)相互接続
①相互接続条件
公衆電気通信網事業者は公衆電気通信サービスの向上という観点から、欧州内の他の公衆電気通信網事業者からの相互接続の要求に対し、特に拒否すべき理由が明確でない限り、要求を受諾しなければならない。
特にSMP事業者((3)の項参照)は、他の事業者からの相互接続申請を、公平、非差別的、かつ明確な条件の下で受諾しなければならない。この条件を確保するためSMP事業者は、現行の相互接続情報すべてを公表し、新たに相互接続を提供する際の技術上・料金上の諸条件に関して詳細にわたる提案を公表しなければならない。
ARCEPは、「郵便・電子通信法典」第L34-8条により、当該相互接続協定が順守すべき技術的・財政的条件を規定し、事業者の提案に対し随時修正を要求することができる。また、相互接続の拒否、あるいは相互接続条件に関する当事者間の協定に対する違反等が生じた場合、係争に介入することができる。相互接続の対象には、ブロードバンド市場におけるサブローカルループ、移動体通信網におけるインフラ共有及びローミング、建物内の光ファイバ回線が含まれる。
また、超高速ブロードバンド(FTTHを中心とする最大接続速度30Mbps以上のインターネット接続サービス)基盤の運用者は、欧州内の他の事業者からのアクセス要求に対して交渉に応じることが義務付けられている。
ブロードバンド上の電話番号を介さない双方向通信については、基本的に相互接続契約の対象外であるが、「郵便・電子通信法典」第L34-8条により、利用人口が有意に多数であるサービスの提供事業者に対し、ARCEPはエンドユーザ間の通信に必要な場合、他の類似サービスとの互換措置を講じる義務を課すことができる。
また、同法典第L34-8-2-3条は、Wi-Fi接続ポイントの運用者は、他事業者からのアクセス要求に対し、透明かつ非差別的な条件でのアクセスを受け入れる義務があるとしている。
②相互接続料金
相互接続料金は、「郵便・電子通信法典」第L34-8-2-1条及びARCEPの決定により、当事者間で締結される協定で定められる。双方の事業者は、相互接続協定をARCEPに届け出なければならない。課金の条件は、公平、明確、非差別性の原則を順守しなければならず、かつ相互接続を利用する事業者に過大な負担を与えてはならない。料金額は、他のサービス料金と明確に区分され、相互接続によって提供するサービスに関連する費用に基づいて決定しなければならない。
更に、SMP事業者((3)の項参照)は、料金上の諸条件の明確化、コストベースの課金のほか、相互接続に関する会計の分離に従い、ARCEPに会計報告を提出し、監査を受ける義務を有する。
ARCEPは、上記のコストベースの課金という原則に従い、固定・移動双方の通話着信市場でSMP事業者に指定された事業者の着信卸料金基準を2008年から数段階にわたり引き下げた。移動電話では2021年7月にEUの基準とほぼ同額の0.007EUR/分になり、2025年1月現在は0.002EUR/分である。固定電話では2021年から0.0007EUR/分となっている。
(2)卸売提供制度とMVNO推進
①光ファイバ基盤の共有推進
ARCEPは政府の超高速ブロードバンド普及計画(3(2)の項参照)推進に当たり、国内を①人口密度が高く、各事業者が単独で光ファイバ基盤に投資、事業活動を行う地域、②事業者が基盤構築に関心を示しているが、接続環境の整備には複数の事業者が協力、基盤共有が求められる地域、③人口密度等の理由で採算性が低く、自治体が公的資金により基盤構築を行わざるを得ない地域、に分類している。ARCEPは特に②について、すべての電気通信事業者がネットワーク構築に投資、共有基盤を強化するという姿勢を明確化している。またブロードバンド市場でSMP事業者に指定されたオランジュ(Orange、(3)の項参照)に対し、特に③の地域について、同社が有するネットワーク資源への非差別的なアクセスの受入れを求めている。
②移動体通信基盤の共有推進
移動体通信網については、各事業者が4G/5Gカバレッジ義務を遂行するため、特にルーラル地域において通信基盤を共有することが推奨されている。2021年5月の「郵便・電子通信法典」改正により、ARCEPはルーラル地域で地勢・経済的状況からエンドユーザが移動体通信サービスを受けにくいと判断される地域については、複数の事業者に共有基盤を通じたサービスを提供することを義務付けることが可能となった。
③MVNO促進
5G向け周波数(3.4-3.8GHz)割当等において、MVNO受入れがサービス周波数帯域取得事業者の義務とされている。2025年9月現在、国内のMVNO事業者数は28である。
(3)SMP事業者の指定
「郵便・電子通信法典」第L37-1条は、ARCEPが、特に相互接続及びアクセスに関して、電子通信市場の分析を実施し、それぞれの市場において顕著な市場支配力(Significant Market Power:SMP)を有する事業者を指定するとしている(指定期間は最大3年)。SMP事業者は、EUの基準に基づき、ARCEPが個別に決定する。
最近の分析結果としては、2023年12月、オランジュがブロードバンド市場で2024~2028年までのSMP事業者に指定された。銅線のアンバンドリング料金については、2025年4月、ARCEPが2028年まで2024年の基準を維持すると発表している。光ファイバ接続については、ARCEPが定期的に監査を実施、指定ルーラル地域では他事業者がアクセス可能な基準料金が定められるが、その他の地域では自由化するとした。
(4)番号ポータビリティ
固定電話では2001年1月1日、移動電話では2003年7月1日から番号ポータビリティが利用可能である。移行手続は固定・移動とも、事業者共通番号「3179」への連絡により、音声ガイド及びSMSの指示に従って所定の情報を通知するだけで処理される。移行作業は元の契約の解約も含め、すべて移行先の事業者が実施するため、消費者からの解約通知等は不要とされる。
2024年のポータビリティサービスの利用件数は、固定で前年比2.3%減の約312万、移動で前年比23.2%増の約847万であった。
ARCEPは、2023年3月、企業が使用する固定電話番号についてポータビリティ申請から新しい電気通信事業者によるサービスのアクティベーションまでの最大所要時間を2027年7月1日までに7営業日から3営業日に短縮することを目指すこととする決定を採択した。また加入者が契約事業者を切り替える際に、ビジネスプランに付与されている番号を消費者向けプランに移行できる条件を明確にした。またインターネットサービスにおいては、2021年5月に創設された「郵便・電子通信法典」第L34-15条が、エンドユーザがISPを変更する場合、移行期間は1営業日以内とすること、契約の乗換えの通知から移行が終わるまで移行元の事業者は従来のサービスを継続すること、移行元・移行先双方の事業者は当該のユーザにネット接続条件にかかわる情報を提供すること等を規定している。
(5)国際競争力強化政策
政府は、デジタル産業振興と国際競争力強化戦略の一環として、2013年末から以下を基本方針とするデジタルベンチャー支援プログラム「FrenchTech」による企業支援を実施している。
- ①全国の都市で地域経済活性化・都市環境デジタル化計画を推進
- ②公共投資銀行(BpiFrance)がベンチャーへの融資を実施
- ③国際ベンチャー間協力を支援
2025年10月現在、主な助成プログラムには、過去3年間に顕著な業績を上げた先端サービス開発企業への各種政府サービスやフォーラムへの参加を支援する「FrenchTech Next40/120」、地方向けスタートアップ支援「FrenchTech Tremplin」、社会的に価値の高いイノベーションを提供する企業に公的金融機関からの助成を行う「FrenchTech2030」等がある。
(6)AI支援
政府は2018年にAI推進プログラム「国家AI戦略」を発表、2022年までの第1フェーズでは、15億EURの資金を投入し、AI人材のエコシステム発展、官民双方のAI及びビッグデータの利用普及、AI技術革新と基本的人権の尊重を両立させる倫理の確立を実現するとした。
2021年11月には、同戦略の第2フェーズとして、官民がおよそ2対1の割合でソフトウェア開発、中小企業へのAIソリューション導入、企業支援等を支援対象に、2025年までに総額20億EURの予算を投じる計画が発表された。
AI産業推進のためのアクションとしては、2024年3月に国が選出した有識者による調査委員会が提出した25項目の提言があり、以下が特に重要視すべきものとされている。
- AI関連企業のエコシステム形成のための基金に100億EURを投資する。
- 国家計画としてスーパーコンピュータを開発する。
- 個人情報・知的財産権にかかわるデータへのアクセス権に関する手続を簡略化する。
- 公的機関での研究テーマに「AI枠」を設ける。
- 国際的なAI振興基金を設立、参加国には「AI予算の1%」を投じるよう呼びかける。
2025年2月には、同戦略の第3フェーズが開始、①広範囲で環境への負荷が少ないインフラ整備、②国外を含めた人材の誘致、③公的サービスへのAI導入、④AIの信頼性の確立を重点目標として、医療、司法、教育分野へのAIツール導入、化石燃料を使わない電力で稼動するAI向けデータセンター35拠点の設立、国外のAI専門家への特別ビザ発行等の計画が発表された。2025年2月、大統領は今後数年間のうちにAIインフラ関連に国外企業からのものも含め、官民合計で1,090億EURの投資を予定していると述べている。
MEFSIEN企業総局では、企業におけるAI利用促進に注力しており、経済全般の発展を目指した「フランス2030計画」に基づくAI利用促進に加え、2025年7月に「AI利用促進(Osez l’IA)国家計画」、9月にAIのパイオニアプロジェクトを公表し、エンドユーザのニーズに応じた開発支援や、AI成功事例集を用いた中小企業等への情報提供等を通じて、更なるAI利用推進に取り組んでいる。
3 情報通信基盤整備政策
(1)ユニバーサルサービス
①概要
「郵便・電子通信法典」第L35-1条は、ユニバーサルサービス対象範囲をブロードバンド及び音声サービスへのアクセスとしている。また、障がいを持つ人々には、通信サービスを享受し得る技術上の措置あるいは代替サービスを提供するとしている。
ユニバーサルサービス事業者の選定は公募によるが、公募により決定されない場合は、電子通信担当相が当該事業者(複数可)を指定する。ユニバーサルサービス事業者の指定を受けた事業者は、通信担当相と協約を結び、ユニバーサルサービスの品質とエンドユーザ向け料金基準を提示する。2020年までユニバーサルサービス事業者の指定を受けていたのはオランジュであり、同社は2023年まで指定はなくともユニバーサルサービス義務を実施する協約を結んでいたが、2024年以降のユニバーサルサービス事業者の指定は2025年10月まで行われていない。
②ユニバーサルサービス費用
年ごとのユニバーサルサービスの純費用の算定は、「郵便・電子通信法典」第L35-5条により、ARCEPが指定する独立団体が実施する。
前年度に小売市場で1億EUR以上の売上高を計上した公衆電子通信網事業者及び公衆電子通信サービス事業者は、ユニバーサルサービス基金への拠出義務を有する。各事業者の負担割合は、電子通信サービス(相互接続等、他の事業者に対するサービスを除く)による売上高に応じてARCEPが年ごとに決定する。
2023年4月のARCEP決定で発表された2021年のユニバーサルサービス費用の算定では、サービス費用は指定事業者が存在しないため発生せず、拠出を行った14事業者は基金の運営費用として合計で約2万EURのみを負担した。
③ユニバーサルサービス基金
事業者からの拠出金は、預金供託金庫(CDC)が特別会計を設定、ユニバーサルサービス基金を運営して、会計上・財務上の管理を行う。
(2)デジタルディバイド解消
オランド大統領(当時)は2013年2月、2009年からの超高速ブロードバンド計画を見直し、新たなブロードバンド基盤整備目標として、「2022年末までに全国の世帯を光ファイバに接続可能にする」ことを掲げた。政府は2022年までの超高速ブロードバンド基盤整備に要する投資総額を約200億EURと見積もり、その約3分の2は電気通信事業者が負担すべきとした。2022年に、この計画の期限は2025年までに延長された。政府は光ファイバ網構築の対象地域を、①人口密度が比較的高く、電気通信事業者が自社の投資資金で個々の通信網を構築することが可能、②複数の事業者が共同投資により構築した通信網を共有、③人口密度が低く事業者が基盤投資に関心を示さないため自治体が資金を提供し通信網構築を主導、の3通りに分類している。助成の対象となるのは主に③であり、政府は地域結束国家庁(ANCT)を通じて2024年までに22億4,000万EURの助成予算を設定していた。②については、2025年予算案では銅線撤廃予定地域で光ファイバ接続に技術的な困難を伴う建物の居住者に対して合計1,610万EURの助成予算が設定されている。
2025年6月現在、超高速ブロードバンド(最大通信速度30Mbps以上)が接続可能な場所は前年同期比6%増の約4,257万(うちFTTHが4,161万)である。地方自治体のネットワーク構築プロジェクトによるFTTH回線数は前年同期比140万増で約1,610万である。ARCEPは地域のFTTH接続状況につき、サイト上で3か月ごとのマップを公開している。
(3)移動体通信網のカバレッジ拡大
ARCEPは50m四方の単位で4ネットワーク事業者の人口カバレッジ及びサービス評価を図示する「monreseaumobile」ポータルサービスを実施している。2018年1月には、政府と電気通信事業者の間で、LTE網・サービスを中心に全国的なカバレッジ拡大努力を旨とする協約「New Deal Mobile」が結ばれた。これに基づき、ARCEPは年に数回の省令によるカバー対象自治体のリストをサイト上で公表している。
「郵便・電子通信法典」第L42-2条は、周波数割当における競争入札の目的の一つに対応サービスのカバレッジ拡大を挙げ、割当条件で最優先されるものはネットワーク拡張義務であると規定している。2020年の5G向け周波数割当においても、落札事業者には一連のカバレッジ達成義務が課せられた(電波/Ⅱ-3(1)の項参照)。全国周波数庁(ANFR)は、5G周波数割当を受けた各事業者の対応基地局数やカバー地域に関する統計を月ごとにサイト上に掲載している。
(4)IPv6
2018年以降、仏国内で販売される通信機器はすべてIPv6対応とするべきと定められている。ARCEPは2016年から年ごとに通信事業者のIPv6対応の現状報告を実施している。
2024年12月現在、固定網における4ネットワーク事業者のIPv6導入率はフリー(Free)で99%、オランジュで94%、ブイグテレコム(Bouygues Telecom)は95%、SFRは54%となっている。移動体網でのIPv6利用可能性は、ブイグテレコムが96%、オランジュは90%、SFRは78%、フリーモバイル(Free Mobile)は1%であった。
(5)5Gセキュリティ対応
「国家デジタルセキュリティ戦略」(5(2)の項参照)により、移動体通信事業者は、5G網の構築及び運用に際し、国家情報システムセキュリティ庁(ANSSI)の指示に従い、システム防御のための一連の措置をとり、トラブルの際にはANSSIへの通知を行うことが義務付けられている。
「郵便・電子通信法典」第Ⅱ部第1編第2章第7節は、国防・国家安全保障の観点から、5G以降の無線通信網関連のハード及びソフトウェアの利用に際して、電気通信事業者は首相府の定める様式に従い事前に審査を受け、許可を得ることと規定している。許可の期限は最大8年である。
4 ICT政策
(1)国家デジタル化ロードマップ
経済・財務・産業及びデジタル主権省(当時。現MEFSIEN)は、2024年3月、2024~2030年の国家デジタル化ロードマップを発表した。対象分野は、インフラ整備、デジタル教育、企業のデジタル化、電子政府である。
各分野の主要目標は以下のとおりである。
- インフラ整備
- -2025年までに100%の建物を光ファイバに接続可能とする。
- -2030年までに国土全域で下り最大速度240Mbpsのモバイルサービスを利用可能とする。
- -欧州と世界を結ぶハブとしてのフランスの役割に関する戦略を立てる。
- デジタル教育
- -小学校からデジタル技術及び数学に関するカリキュラムを必須とする。
- -高等教育機関での情報科学課程の充実を図る。
- -情報科学分野の学生の男女均等化を図る。
- 企業のデジタル化
- -中小企業でのクラウド、ビッグデータの業務活用を助成する。
- -各種経済分野に特化した生成AIの開発・利用による業務効率化を推進する。
- -DeepTechにかかわるスタートアップ企業への支援により、イノベーションエコシステムの強化を図る。
- 電子政府
- -地方自治体間のデータの共有・公開を推進する。
- -2025年までに基本行政サービスの100%をオンラインで利用できるようにする。
- -身分証明書や運転免許証等、各種証明の電子化を実施する。
(2)環境問題対応
ARCEPは2020年から、「持続可能なデジタル社会」を目指し、環境保護関連機関と連携して、端末リサイクル等を推進、新規の周波数割当に際しても、環境問題への取組みを審査項目の一つとすることを検討している。また2022年から電気通信事業者のサービスの温室効果ガス発生量等に関する年次報告を実施、一般のユーザに対しても、ADSLよりエネルギー効率のよいFTTHへのプラン乗換え、ファイルのダウンロード量の調整、機器の長期利用等、温室効果ガス減少に効果があるとされている行動を推奨している。
(3)オープンデータ
2025年10月現在、首相府の司るオープンプラットフォーム「https://www.data.gouv.fr」上で、16の行政分野に関する7万余りのデータセットあるいはアプリケーションインターフェースが整備され、37万超のファイルが閲覧可能である。
5 消費者保護関連政策
(1)個人情報保護
個人情報保護を目的とした「情報処理、情報ファイルと自由に関する1978年1月6日付法律第78-17号」により、インターネットコンテンツプロバイダ等には、オンラインでの個人情報の利用について、その利用目的の明確化と関係者の同意を得ることが義務付けられている。「2012年3月30日のデクレ第2012-436号」は、電気通信事業者に対し、自社の通話やネット接続等のサービスにかかわる事項で個人情報侵害の事実があった場合、直ちにその詳細と講じた対策について、個人情報保護機関(CNIL)に通知することを義務付けている。
2020年9月の「情報処理、情報ファイルと自由に関する1978年1月6日付法律第78-17号」改正及びそれに基づく勧告により、CNILはウェブサイトの運営者に、個々のユーザに対し、ポップアップウィンドウ等でCookie利用の是非について問い合わせ、了解を得なければ情報収集を行わないこと、ユーザがCookie利用を拒否する際の手続を簡略化することという規則を提示した。
2022年3月には、通信端末の製造、流通、輸入等にかかわる事業者に対し、当該の端末に未成年に有害なサービスやコンテンツへのアクセスをブロックする機能を付けることを義務付ける条項が「郵便・電子通信法典」に追加された。
(2)デジタルセキュリティ
セキュリティ関連政策の監督・執行機関は、首相府防衛・国家安全総局(SGDSN)及び同局下のANSSIである。電気通信事業者はANSSIに対し、その有する情報システムのリストを提出、年ごとに更新報告を行う義務が課せられている。また、セキュリティシステムに何らかのトラブルが生じた際は、その都度ANSSIに報告することとされている。「郵便・電子通信法典」第L34-14条は、電気通信事業者はシステム防御のためANSSIの指示する技術的措置をとること、関連データを6か月までの期間で保存すること、ANSSIの要求に従い加入者にセキュリティ危機についての通知を行うこと等を規定している。同法典第L34-1条は更に、国防や治安維持の観点から、電気通信事業者は個々の加入者について、契約期間終了後もその身元については5年、契約条件、支払記録及び利用端末については1年間記録を保存することを定めている。また「2025年10月15日のデクレ第2025-980号」は通信事業者及びコンテンツ配信プラットフォーマーに自社が取り扱ったインターネット接続の場所とトラヒック記録を1年間保存することを義務付けている。
一方、マクロン大統領は2021年2月にサイバーセキュリティ関連企業育成策として、「サイバーセキュリティ強化戦略」を発表、2025年までの予算額を官民合同で10億EUR(うち4分の3を政府が負担)とした。主目標には、関連企業の年間売上高合計を5年間で250億EURまで引き上げること、2025年時の関連企業の従業員を2020年現在の倍以上の7万5,000人まで増やすこと等が挙げられた。
2024年10月、政府はEU「NIS2指令」等を国内法制化する「重要インフラのレジリエンス及びサイバーセキュリティ強化法案」を議会に提出、2025年10月現在審議中である。この法案ではANSSIのセキュリティ対応監督対象産業分野を6分野から18分野に、規制対象機関を500から1万5,000に拡大する等の規定の導入が図られている。また、ANSSIは2025年4月、セキュリティ強化プラットフォーム「MesServiceCyber」を官民双方の諸機関に公開した。ここにはANSSIが推奨するサイバーセキュリティリソース及び関連サービスが示されており、各機関は専用アカウントを通じての照会や個別Q&Aで、そのどれが利用可能かを知ることができるとされている。
Ⅳ 関連技術の動向
基準認証制度
電子通信端末機器の型式認定は、EU「無線機器指令(Radio Equipment Directive :RE Directive(2014/53/EU))」を国内法制化した「無線設備の市場投入に関する2016年4月21日の命令第2016-493号」に従いARCEPが所掌する。電子通信端末機器の適合性検査手続を実施し、適合検査証を発行する組織はARCEPが指名する。当該の組織の指定条件、検査対象となる機器の技術的条件、検査証発行の条件等は、国務院の議を経るデクレで定める。
Ⅴ 事業の現状
1 市場の概要
ARCEPの2024年の電気通信事業市場動向では、同年の電気通信事業者の総売上高(小売)は前年比1.5%増の約381億EURで、うち固定サービスが前年比3.3%増の約176億EUR、移動サービスが前年比0.4%増の151億EURであった。
電気通信事業者の投資総額は約124億EURで、前年比3.1%減。投資額の52%が固定あるいは移動の超高速ブロードバンド網整備に用いられている。
電気通信事業者全体の従業員数(直接雇用)は前年比3.4%減の約9万1,510名で、減少傾向が続いている。
2 固定電話
2025年6月末現在、固定電話全体の加入数は約3,636万、うちPSTN回線によるものは前年同期比20%減の約294万であった。IP電話は0.4%増の約3,342万で、電話全体の9割を超えている。固定電話サービスが提供可能な回線数は約3,602万、うち銅線は前年同期比25.5%減の約900万で、光ファイバ回線の約3分の1になった。
3 移動体通信
2025年6月現在、移動電話サービスの加入者総数は前年同期比0.7%増の約8,401万(M2M対応SIMカードを除く)で、加入率は122.4%となった。うちポストペイド契約は約7,502万である。全体の31%に当たる2,623万件は固定サービスとのバンドル契約への加入である。M2M対応SIMカード数は前年同期比3,9%減で約2,434万となった。海外県・領土を除く事業者の種別では、ネットワーク事業者4社(オランジュ、SFR、ブイグテレコム及びフリーモバイル)の個人契約合計加入数は前年同期比3.7%増の7,729万、MVNO加入者の合計数は約415万、市場シェアは5.1%である。ネットワーク事業者は4社とも4G/5Gサービスを提供、4G/5Gネットワークに対応するアクティブSIMカードが全体に占める割合は、4Gが90%、5Gが34%である。
4G/5Gサービスの人口カバレッジは4Gで約99%、5Gでは事業者により60~90%とされている。
端末ではスマートフォン利用が定着し、2025年12月現在のスマートフォン普及率は93.1%であった。
4 インターネット
(1)概要
2025年6月末現在、国内の固定ブロードバンドサービス加入数は前年同期比0.9%増の約3,272万である。うち約421万がADSL利用であるが、超高速ブロードバンドの伸長に伴い、接続別シェアは減少を続け、15%を下回った。超高速ブロードバンド加入数は約2,788万(FTTHが約2,574万、残りは同軸ケーブルまたはvDSL)、(幹線が光化されていない)ケーブル、衛星等のサービス加入数は約64万である。
固定ブロードバンド市場では、総合通信事業者4社でシェアの90%以上を占めており、各事業者のシェアにも数年間大きな変化はない。
モバイルブロードバンドについては、2024年12月現在の加入件数は約7,470万である。
(2)FTTH
主要4事業者はいずれもの商用サービスを提供しており、インターネット接続の最高速度は8Gbpsに達している。
2025年6月現在、主要都市及びその近県、その他の人口密度の比較的低い地域でも、電気通信事業者主体のネットワーク構築が行われている地域ではほぼ94%が光ファイバ接続可能地域になっているが、地方自治体がネットワーク構築を主導している地域では91%である。FTTH回線数は全事業者合計で約4,161万、うちオランジュが1,960万、SFRグループが529万等である。光ファイバ接続可能な場所の住民は62%がFTTHサービスに加入している。
(3)IPTV
主要4事業者はいずれもトリプルプレイサービスパッケージにIPTVサービスを組み込んで提供している。2025年6月現在、IPTV視聴可能な契約の加入者は、約2,515万で、ブロードバンド加入者の約77%である。接続種別では、ADSLが前年同期比29.2%減の約354万、FTTH、衛星及びケーブルが9.5%増の約2,162万で、FTTHの割合が増加し続けている。
2024年12月現在、IPTVのみでテレビを視聴している世帯はテレビ視聴世帯全体の51.5%、地上デジタルや衛星と併用している世帯は24.1%であった。また、86%の世帯がネット接続可能なテレビ受像機を使用している。うちスマートテレビ機能を用いている割合は約45%である。
どの事業者も地上デジタルテレビ放送の無料チャンネルを含む140チャンネル以上の番組パッケージを提供、VODの利用も可能である。各事業者の有料オプションにはネットフリックス(Netflix)等の動画配信サービスも含まれている。
Ⅵ 運営体
1 オランジュ
Orange S.A.
| Tel. | +33 1 44 44 22 22 |
|---|---|
| URL | https://www.orange.com/ |
| 所在地 | 78-80 rue Olivier de Serres, 75015, France |
| 幹部 | Christel Heydemann(社長/General Director) |
概要
2013年にフランステレコム(France Telecom:FT)より名称変更。1991年に当時の郵便・電気通信省から分離され国営企業として発足、1996年に株式会社となり、2004年9月に民営化した。2024年12月の主な株主は、機関投資家が約59.6%、政府及び政府系金融機関が約23%、従業員が約8.3%で、残りが個人投資家であった。
2022年4月、新社長Heydemann氏の下で、グループの重点活動領域を、①ネットワーク拡充、②法人向けサービス、③サイバーセキュリティ、④モバイル金融サービス、⑤ベンチャー支援、⑥イノベーション推進であるとした。また、持続可能な社会参加として、世界規模でのデジタル利用環境の平等化を目指し、中近東・アフリカでデジタルセンター開設等を行うとともに、2040年までに温室効果ガス排出をゼロにするという目標を掲げ、端末リサイクルや太陽光基地局設置等を進めている。
2025年10月現在、同社は26か国で移動体通信を中心に事業を展開している。
| 地域 | 国 |
|---|---|
| 欧州 | フランス、スペイン(固定サービス含む)、ポーランド(固定サービス含む)、スロバキア、ルーマニア、モルドバ、ベルギー、ルクセンブルク |
| 中近東 | ヨルダン(固定サービス含む) |
| アフリカ | ボツワナ、カメルーン、コートジボワール、セネガル(固定サービス含む)、マダガスカル、マリ、ギニアビサウ、ギニア共和国、中央アフリカ共和国、チュニジア、エジプト、コンゴ民主共和国、モロッコ、モーリシャス、ブルキナファソ、シエラレオネ、リベリア(固定サービス含む) |
出所:https://www.orange.com/fr/groupe/nous-connaitre/qui-sommes-nous
仏国内では、2025年6月現在、通信すべての分野で第1位の地位を保ち、各種サービスの加入者は、移動電話が約2,215万(うち約1,039万が固定サービスとのバンドル利用)、固定ブロードバンド接続が約1,231万(うちFTTHが約984万)である。
同じく2025年6月、進出国全体での移動電話加入数は約2億6,160万、ブロードバンド加入数は約2,236万(うち約1,548万がFTTHあるいはケーブル)となった。
2024年末の売上高総額(全世界)は前年比1.2%増の約403億EUR、国内売上高は前年比0.4%増の約178億EURであった。
2 SFR
| Tel. | +33 1 85 06 00 00 |
|---|---|
| URL | https://www.sfr.fr/ |
| 幹部 | Mathieu Cocq(社長/General Director) |
概要
オランダの多国籍ケーブル事業者Alticeグループの完全子会社を経て、2025年10月現在、主要株主は国内投資家Drahi氏である。BFM/RMCメディアグループと「Altice France」グループを構成していたが、2024年7月にメディア部門を売却し、グループに属するのは通信事業者SFRのみとなった。
2025年6月現在、主要サービスの加入件数は、移動電話が約1,931万、固定ブロードバンド接続が約611万(うちFTTHが約527万)である。
2024年の売上高は、前年比5.7%減の約102億EURであった。
3 イリヤッド・グループ
| Tel. | +33 1 73 50 20 00 |
|---|---|
| URL | https://www.iliad.fr/ |
| 幹部 | Thomas Reynaud(社長/Director General) |
概要
1991年に設立された複数の通信関連事業者グループで、ブランド名「フリー」を掲げ、単純な商品構成と徹底した低価格を集客戦略としている。主要株主は創設者のNiel氏が運営するAtlas Investissement社で、全株式の90%強を所有している。2025年6月現在の国内固定ブロードバンド加入件数は約760万(うちFTTHは約640万)、移動電話加入者総数は約1,550万である。2024年の売上高は、進出国全体では前年比8.5%増の約100億EUR、国内では同8.2%増の約65億EURであった。
2018年にはイタリア、2020年にポーランドに進出、2024年にはスウェーデンTele2の最大株主となり、ウクライナでは固定通信事業者Datagroupと移動体通信事業者Lifecellを買収した。
4 その他の主な事業者
| 事業分野 | 事業者 | URL |
|---|---|---|
| 移動体通信 | ブイグテレコム | https://www.bouyguestelecom.fr/ |
放送
Ⅰ 監督機関等
1 文化省
Ministry of Culture
| Tel. | +33 1 40 15 80 00 |
|---|---|
| URL | https://www.culture.gouv.fr/ |
| 所在地 | 182, rue Saint-Honore, 75001 Paris, France |
| 幹部 | Rachida Dati(大臣/Minister) |
所掌事務
省内のメディア・文化産業総局が放送を含むメディア全般の政策立案と実施、規則・基準の制定を司る。公共放送については、事業者に対する運営規則の制定、一部の経営委員の任命、年次予算の策定等を行っている。
2 視聴覚及びデジタルコミュニケーション規制機関(Arcom)
| Tel. | +33 1 40 50 38 00 |
|---|---|
| URL | https://www.arcom.fr/ |
| 所在地 | Tour Mirabeau, 39-43, quai Andre-Citroen 75739 Paris cedex 15, France |
| 幹部 | Martin Ajdari(議長/President) |
所掌事務
2022年1月、「デジタル時代における文化作品へのアクセスの保護と規制に関する2021年10月25日の法律第2021-1382号」に基づき、インターネットにおける著作物の頒布及び権利の保護のための高等機関(Hadopi、2012年~)と放送分野の独立規制機関であった視聴覚高等評議会(CSA、1989年~)の統合により設立された。
運営主体となる委員会は、大統領が任命する議長のほか、国民議会議長、元老院議長による任命が各3名、国務院長、破棄院(国内の司法訴訟に関する最高裁判所)長による任命が各1名の合計9名の委員から構成される。議長を除く委員の年齢は就任時に65歳以下、任期は6年で、他の公職との兼任は不可とされている。また、両院の議長による任命の手続については、野党の意向も反映した選任を企図し、それぞれの文化委員会の委員の5分の3以上の賛成による意見に基づいて行われると規定されている。
具体的な所掌内容は以下のとおりである。
- 映像作品の制作振興
- 放送事業者(衛星放送、ケーブルテレビ、IPTV等を含む)に対する許可の付与及び番組規制
- 公共放送の長及び一部の経営幹部の任命
- 放送事業者への周波数割当
- 政府の放送関連法案に対する諮問
- 番組受信に関する問題への対処
- 政見放送における多様性の維持
- 放送事業者の法・規則の順守に関する監督(違反者への処罰を含む)
- 未成年等社会的弱者の保護
- 放送サービス・映像・デジタルコンテンツの利用状況の調査
- VOD、オンラインプラットフォームにおける表現の自由及び知的財産権の保証
- オンライン上の情報操作、オンライン上のヘイトスピーチの取締り等、市民の権利の擁護と違反者の処罰
Ⅱ 法令
コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日の法律第86-1067号(1986年視聴覚法)
放送分野の基本法令で、数年ごとに大規模な改正を受けている。2020年以降の主な改正事項は以下のとおりである。
- 2020年12月:EUの放送規制分野の基本指令である「オーディオビジュアルメディアサービス(Audio Visual Media Service:AVMS)指令」の改正版である「指令2018/1808号」の国内法制化として、従来の放送コンテンツ規制内容のオンラインビデオサービスへの拡張等を規定した。
- 2021年8月:環境保護、特にCO2削減に関する一般への情報提供を実施することや、ネット上で流通する映像作品における個人情報保護がCSA(当時)の所掌に追加された。
- 2021年10月:CSAが従来の所掌を保持しつつHadopiとの統合によりArcomとなった。
- 2024年5月:EU「デジタル市場法」及び「デジタルサービス法」の国内法制化の一環として、映像送信を行うオンラインプラットフォームや映像ファイル検索システムがArcomの規制対象となった。
Ⅲ 政策動向
1 免許制度
(1)概要
放送事業の開始に当たっては、国務院の議を経るデクレが定める条件に従い、各事業者にArcomとの協約によりサービス許可が付与される。
電波資源の利用許可を必要とする放送事業に関する許可の付与は、Arcomが公表する利用可能な周波数のリストに基づき、公募により実施される。地上テレビ及び地上デジタルラジオのサービスについては、許可の期間はデジタル放送で10年、アナログラジオ放送で5年を超えないものとされる。この許可は、公募を経ずに5年ごとにテレビは1回、ラジオは2回まで更新可能である。
ケーブル、IPTV等、周波数を利用しない通信網を用いて配信される番組の編集事業者については、100世帯以上を対象とするサービス配信者は、Arcomに事前の届出を実施し、サービス条件に関する協約を結ぶこととする。これらの事業者は、公共放送の番組を無料で配信する義務を有する。
上記のテレビサービスの付属でないVODサービスを提供する事業者も同様に、サービス開始前にサービス内容に関する届出を実施、Arcomと協約を結ぶこととする。
(2)1事業者による許可件数の上限
放送分野ごとのサービス許可件数の上限は以下のとおり。
- 全国放送の地上テレビについては、複数の許可の取得は不可。ただし、地上デジタルテレビについては、番組編集がそれぞれ別個の会社によって行われることを条件として7件までの許可の取得ができる。
- 地域放送の地上デジタルテレビについては、現行のサービス地域を対象とした新たな許可の取得はできない。
- 1,900万以上の人口を持つ地域放送の地上デジタルテレビについては、新たな地域放送の許可を取得することはできない。
- ラジオについては、1事業者の視聴者シェアが20%を超えてはならない。
- 衛星アナログ放送については、ラジオ・テレビとも複数の許可の取得はできない。
(3)メディア所有規制
次の条件のうち二つ以上を備えた者は地上デジタルテレビの全国放送の許可の取得はできない。
- 400万以上の住民の存在する地域で地上デジタル放送の許可を取得している。
- 3,000万以上の住民の存在する地域でラジオ放送の許可を取得している。
- 全国で20%以上のシェアを有する日刊新聞を編集あるいは運営している。
また、次の条件のうち二つ以上を備えた者は地上デジタルテレビの地域放送の許可の取得はできない。
- 当該の地域において既に地上デジタルテレビ放送の許可を取得している。
- 潜在的な聴取者シェア10%以上のラジオ放送の許可を取得している。
- 当該の地域で日刊新聞を編集あるいは運営している。
(4)資本所有規制
地上または衛星テレビ放送の資本所有規制の概要は以下のとおりである。
- 地上テレビ放送において、全体の視聴率の8%を超える事業者に対する資本または議決権所有の上限は49%である。また、全体の視聴率の8%を超える地上テレビ事業者は、同じ許可を有する事業者の資本または議決権の33%以上を所有することはできない。
- 地上デジタルテレビ放送事業者の資本または議決権の15%以上を所有する者は、同じ許可を有する事業者の資本または議決権の15%以上を所有することはできない。
- 衛星アナログ放送において、1事業者に対する資本または議決権所有の上限は50%である。
- 二つのアナログ方式の衛星テレビ放送事業者の資本または議決権の5%以上を所有する者は、同じ許可を有する事業者の資本または議決権の5%以上を所有することはできない。
(5)外資規制
「コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日の法律第86-1067号」第40条により、政府が署名した国際公約を除き、外国籍の個人または法人が、国内の地上放送事業者の資本あるいは議決権の20%以上を直接にも間接にも所有することはできない。
2 コンテンツ規制
(1)番組規制
①音楽番組
商業放送事業者の番組内容については、個々の事業者とArcomとの協約に基づき個別に規制を定める。ラジオにおいては、聴取率の高い時間帯に放送する音楽番組中の少なくとも40%がフランス語の歌曲であり、更にその半数は新人の作品あるいは新作でなければならない。事業者の性質により、以下が義務付けられる。
- 音楽放送を専門とする事業者:題名がフランス語の曲の割合を60%とし、新作の割合を平均1時間に1曲、全体の10%までとする。
- 若手の作品の放送を目的とする事業者:題名がフランス語の曲の割合を35%とし、うち25%を新人の作品とする。
②映画・テレビ番組
テレビ放送のプライムタイムの番組編成において映画あるいはテレビ番組が占める割合は、少なくともその60%が欧州域内で制作されたもの、40%はオリジナル版がフランス語で制作されたものでなければならない。
③地方向け番組
全国無料放送許可を得たテレビ事業者が番組編集上の都合で行う特定の地方向けの番組放送は、特にArcomが例外を認めない限り、1日3時間を限度とする。
④社会的弱者保護
未成年者の身体的、精神的及び道徳的成長を阻害する可能性のある番組について、Arcomは個々の事業者との協約に基づき、放送時間の制限や視覚的表示による警告がなされているかについて監督し、催告を与えることができる。オンラインプラットフォーマーに対しては、16歳以下の未成年者の映像の流出制御に関する憲章の順守状況を定期的に監督する。
放送事業者は、番組が人種、性別、宗教等についての差別的内容を含まないよう留意するものとし、催告等の措置は番組放送後に実施するものとされる。事業者が催告に従わなかった場合、放送停止や協約期間の短縮等の措置が可能である。この規定はオンデマンド方式の番組再送信サービスにも適用される。
また、全国で年間平均2.5%以上の人口が視聴する地上デジタルテレビのチャンネルについては、視聴者の多い時間の番組放送に当たっては、視覚障がい者向けの対応が義務付けられている。
(2)広告規制
Arcomは、VODを含む映像放送事業者の広告放送への規制を所掌する。規制の主目的は、人間、特に女性の尊厳の維持と若年層に健全な社会への関心を喚起、危険行動を回避させることである。規制内容には、政治団体の広告の禁止、未成年の健康に悪影響を与える材料が多量に含まれる飲食物や地球環境に悪影響を与える物品・サービスの広告の減少を図ることも含まれる。サブリミナル広告は禁じられる。スポンサー付番組については、その旨を番組の最初や最後に明示、番組中でスポンサーの商標や商品の宣伝を行ってはならない。
テレビ放送における広告は、原則として使用言語をフランス語に限り、放送時間60分当たりの広告放送時間は、公共放送で8分以内、商業放送で12分以内である。また公共放送では、夜間(20時から翌6時)の広告放送は禁止されている。
3 公共放送関連政策
(1)公共放送事業者のガバナンス
「コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日の法律第86-1067号」第47条により、国が公共放送事業者フランステレビジョン及びラジオフランスの全資本を所有する。同法第47-1条により、フランステレビジョンの経営委員会は、会長のほか、任期を5年間とする14名の委員で構成され、そのうち2名は国民議会及び元老院において文化事項を所管する委員会によって指名される議員、5名は国の代表、5名はArcomによって任命される独立人、2名は職員代表を充てることとされている。同法第47-2条により、ラジオフランスの経営委員会は、任期を5年とする12名の委員で構成され、そのうち2名は国民議会及び元老院において文化事項を所管する委員会によって指名される議員、4名は国の代表、4名はArcomによって任命される独立人、2名は職員代表を充てることとされている。それぞれの会長は、同法第47-4条により、Arcomの多数決により任命される。
国際放送については、国が全資本を所有するフランスメディアモンド(France Media Monde)が国際ラジオ放送RFI、アラビア語ラジオ放送MCD及び国際テレビニュース放送France24を運営している。
このほか、ARTEフランスが、ARTEドイツ及びARTE GEIEと共に、ARTEグループを構成し、文化・教養専門のテレビチャンネルARTEを運営している。
公共放送機関には、3~5年間の事業計画である「目標手段契約(COM)」を政府に提出し、年ごとに実現報告を行う義務が課せられている。2020~2022年のフランステレビジョンのCOMの目標には、2023年までのデジタルプラットフォームの拡張やニュースの信頼性確保等が挙げられた。2024~2028年の計画にも、ニュースや若年層番組の内容の充実、デジタル事業者との協力体制の強化等の目標が掲げられている。
なお、2024年から議会で審議中の「公共放送改革と視聴覚主権」法案では、①ラジオフランス、フランステレビジョン、国立視聴覚センター(INA)、国際放送France Media Mondeを政府が全株式を所有する一つの持株会社「France Media」下に置くことと②広告収入にはデジタル媒体での配信によるものも含め年ごとに放送時間と予想収入に上限を設けることが提案されている。
(2)公共放送予算
「2022年8月の補正予算法律」第6条は、公共放送の受信料制度の廃止を決定し、公共放送の財源は付加価値税の一部からまかなわれることとなった。当該措置は2024年12月31日までの時限措置とされてきたが、これを「国税からの固定年額給付」の位置付けで恒久化する法案が2024年11月に議会で可決された。2026年の予算案では、公共放送への交付金は、前年比約4%減の約38億7,831万EURである。
4 地上デジタル放送
国内の地上デジタルテレビ放送(DTT)は、2005年3月にDVB-T方式で開始、2011年11月末には全土で完全停波が実現した。2015年10月には、地上デジタルの全国放送事業者に、人口カバレッジ90%以上の維持が義務付けられている。難視聴地域では、国際的な周波数調整の関連でカバーが難しいとされる東部の国境地域を中心に、カナルプリュス(Canal Plus)がTNTSatの名称でアストラ(Astra)衛星による無料放送の配信を実施している。
DTTにおけるマルチプレックスの運用については、ナンバーを指定された事業者が共同でマルチプレックス事業者を指定、当該の事業者に対して利用施設ごとに周波数が割り当てられることとされている。放送送信については、マルチプレックス事業者と送信事業者との契約に基づいて実施される。
2023年10月、政府はフランステレビジョンの2チャンネルへのDVB-T2方式の放送許可付与(うち1チャンネルは2024年7~9月のみ)を決定した。放送開始は2024年1月で、7月までに国内人口の約4分の3をカバーした。また、15の既存チャンネルが2025年内に免許期間終了を迎え、13の既存チャンネルと新規参入の2チャンネルが付与対象になったが、カナルプリュスは12月に有料4チャンネルへの新規免許付与を辞退した。2025年6月には26チャンネルを対象にマルチプレックスの再編と新たなチャンネル番号割当が実施された(Ⅳ-2の項参照)。
地上デジタルラジオについては、2024年12月現在、人口カバレッジは60%を超え、同年末までに周波数割当を受けた局数は1,565に達した。2022年から、Arcomはサイト上で県ごとのカバレッジマップを公開している。
Ⅳ 事業の現状
1 ラジオ
2024年、国内のラジオ受像機販売数は約210万で、その18%がDAB+対応である。
公共放送には3事業者が存在し、ラジオフランスは、総合編成のFrance Inter、ニュース専門のFrance Info、文化専門のFrance Culture、クラシック及びジャズ音楽のFrance Musique、軽音楽中心のFip、20~35歳を対象としたMouv’の6系統の全国放送のほか、44の地方局を結ぶICIネットワークを全国で展開している。国際放送はフランスメディアモンドの子会社RFIがフランス語及び放送地域に合わせた21の言語で放送を実施している。また、フランステレビジョンの海外県・領土部門Outre-mer 1èreが9地域向けのサービスを行っている。
商業FM放送は87.5-108MHzの帯域での周波数利用許可の取得が必要とされ、サービスを実施している局は2024年12月現在1,000を超えている。商業ラジオ放送は、①同好者の協会によるサービス、②独立系ローカルサービス、➂全国向けプログラムを放送するローカルサービス、④全国ネットでの専門サービス、⑤全国ネットでの総合サービス、に分類される。
大手民間ラジオ事業者はほとんど⑤の分類で周波数割当を受けており、聴取者が多い局には、NRJ、RTL等がある。また、主要ラジオ局はほとんどがポッドキャストサービスを提供している。
2 テレビ
2024年12月現在、仏世帯の約90%が、テレビ受像機を所有している。地上デジタル放送を視聴している世帯は、このうちの約37.1%、地上デジタル放送のみがテレビ視聴手段である世帯は15.6%である。
2025年10月現在、全国をカバーする無料放送チャンネル数は25(民間18、公共7)、有料放送チャンネル数は1である。ローカル放送については、2007年9月から開始され、2025年5月までに仏本土では40チャンネルが放送を実施している。これらのチャンネルにはR1、R2、R4、R6、R7のマルチプレックスが割り当てられており、R1は主に公共放送、その他は無料の商業放送中心に用いられている。なお、DVB-T2方式のチャンネルについては、2023年12月にR9のマルチプレックスが割り当てられたが、2025年10月現在、本土内で放送を実施しているのはFrance2の対応チャンネルのみである。
| R1 | France2*、France3*、France4*、Franceinfo*、ローカル放送 |
|---|---|
| R2 | BFM TV、CStar、CNews、Gulli、Novo19、T18 |
| R4 | M6、W9、France5*、6ter、ARTE*、Paris Première** |
| R6 | TF1、LCP Public Senat*、TMC、TFX、LCI |
| R7 | TF1 Séries Films、Chérie25、L’Equipe、RMC Story、RMC Decouverte |
| R9 | France2 UHD |
*公共放送 **有料放送
出所: https://www.arcom.fr/television-et-video-la-demande/les-chaines-de-la-tnt
商業放送では、多事業のコングロマリットであるブイググループに属するTF1、とM6(Metropole Television)の勢力が強く、上記の表中で、TF1は五つ、M6は五つ(無料4、有料1)の系列チャンネルを有している。また、2025年6月のマルチプレックスとチャンネル再編では、C8(無料)、NRJ12(無料)及びカナルプリュスの4チャンネル(有料)に代わり、共に地方新聞社が運営するOF TVとREELS TVの2チャンネルがチャンネル番号を付与された。
2000年代後半からフランステレビジョンを中心に大手事業者がキャッチアップサービスを開始、ネット上でのストリーミングによる見逃し視聴やオリジナル番組を提供しているほか、TF1とM6は他社のコンテンツ提供も受けてFAST+広告付きVODサービスも実施している。
3 衛星放送
衛星放送のみを視聴している世帯は、2024年12月現在、テレビ視聴世帯全体の約3.6%、地上波やIPTVと併用している世帯は約7.3%である。
主要事業者はカナルプリュスのみで、同社はアストラ衛星を用いて基本パッケージ+専門チャンネルシリーズで4種類のプランを提供している。
国外向けには、フランスメディアモンド傘下のFrance24が五大陸の5億7,400万世帯を対象に、英語、フランス語、アラビア語、スペイン語の24時間放送を実施している。
また、フランス語圏を中心にTV5 モンド(フランステレビジョンやフランスメディアモンドのほか、スイスのSSRやベルギーのRTBF等が出資)が10チャンネルの送信を実施しており、11か国語で200か国、4億3,700万世帯が視聴可能である。
4 ケーブルテレビ
電気通信事業者のケーブルによるテレビサービスプランは、技術中立で高速ブロードバンドのトリプルプレイとして提供されているため、Arcomの分類上ではIPTVに含まれている。ただし、2024年12月現在、全国で約4.9%のテレビ視聴世帯が難視聴対策として地上放送をケーブル経由で視聴している。
Ⅴ 運営体
1 フランステレビジョン
France Television
| Tel | +33 1 56 22 60 00 |
| URL | https://www.francetelevisions.fr/ |
|---|---|
| 所在地 | 7, esplanade Henri de France, 75105 Paris Cedex 15, France |
| 幹部 | Delphine Ernotte Cunci(会長/President Director-General) |
概要
2000年の放送法改正で同年9月に設立し、持株会社が運営してきたが、2009年1月に全国番組会社に改組し、個別に運営されていた傘下の番組制作会社を統合した。2025年10月現在、DVB-T方式で本土では5チャンネル、海外県・領土では1チャンネルの放送を実施しており、フランス2はDVB-T2方式での視聴も可能である。
| 名称 | 主な番組内容 |
|---|---|
| フランス2 | ドラマやドキュメンタリーを中心とする総合番組 |
| フランス3 | ローカルニュース、総合番組 |
| フランス4 | 昼間:教育、夜間:各種スペクタクル中継 |
| フランス5 | 文化・教養 |
| フランス1ère | 総合番組(海外県・領土でそれぞれの制作番組を放送。本土ではニュース及び天気予報のみ視聴可能) |
| Franceinfo | ニュース専門チャンネル |
出所:https://www.france.tv/
ネット配信プラットフォームサービス「france・tv」上には、上記の各チャンネルの過去数か月分の見逃し視聴のほか、教育、ニュース、スポーツ等のオリジナルビデオ映像を各種デジタルメディア上で、随時無料で視聴できる。近年は「フランス4」で子ども向け番組を「Okoo」のブランド名で提供するほか、「France・tv」上の10代後半~20代向けチャンネル「France・tv/slash」、インターネット上の教育用短編動画プラットフォーム「Lumine」等、教育関連のコンテンツの充実も図られている。
フランステレビジョンの2024年のチャンネル合計の視聴シェアは28.2%で国内第1位であった。同年の総収入額は約30億1,100万EURで、うち84%が政府の交付金、15%が広告収入であった。
2 カナルプリュス
Canal Plus
| Tel. | +33 1 71 35 35 35 |
|---|---|
| URL | https://www.canalplus.com/ |
| 所在地 | 1, place du Spectacle 92863, Issy-les-Moulineaux Cedex 9, France |
| 幹部 | Maxime Saada(最高経営責任者/CEO) |
概要
国内で唯一の大手有料放送事業者で、衛星、ケーブル、IPTV等に番組を提供するほか、近年は4K映像視聴可能な衛星/IPTVデコーダやマルチスクリーン・アプリケーション「Mycanal」等、サービスのデジタル化に注力している。メディアコングロマリットのビベンディ(Vivendi)が株式の100%を所有していたが、2024年12月にグループから分離、株式が公開された。2025年12月現在、国内では有料放送のほか映画・テレビ番組の制作・販売子会社「Studiocanal」を所有している。
欧州では、本国のほか、ポーランドの衛星放送事業者Cifra+の株式の51%を所有し、「Canal+ Polska」の名称でプラットフォームを提供している。また、欧州7か国で衛星/OTTテレビサービスプラットフォームを提供するM7、中欧の国際番組配信事業者SPI Internationalを完全子会社化、スウェーデンの有料放送事業者Viaplayの約30%の株式買収等を重ね、2024年12月現在の欧州(仏含む)の加入者合計は約1,720万である。また、ベトナムの「K+」(株式所有は49%)、ミャンマーの「Canal+ y」(Forever社との合弁)、香港のViúの株式の約37%取得等、アジア地域への進出を進めている。アフリカ大陸では中西部を中心に衛星放送を実施、アジアとアフリカの進出国での加入者合計は約970万である。2025年10月には、南アフリカ本拠でアフリカ最大の有料放送事業者マルチチョイス(MultiChoice)の94%の株式を取得した。
2024年のグループの売上高合計は前年比3.6%増の約65億EURであった。
3 その他の主な事業者
| 事業分野 | 事業者 | URL |
|---|---|---|
| 地上放送 | TF1 | https://www.tf1.fr/ |
| M6 | https://www.groupem6.fr/ | |
| 放送送信 | TDF | https://www.tdf.fr/ |
電波
Ⅰ 監督機関等
1 監督機関
(1)電子通信・郵便・出版流通規制機関(ARCEP)
(通信/Ⅰ-2の項参照)
所掌事務
電子通信事業者の周波数利用条件の決定及び周波数利用の許可等を所掌する。
(2)全国周波数庁(ANFR)
National Frequency Agency
| Tel. | +33 1 45 18 72 72 |
|---|---|
| URL | https://www.anfr.fr/ |
| 所在地 | 78, Avenue du Général de Gaulle, 94704 Maisons-Alfort, France |
| 幹部 | Gilles Brégant(長官/General Director) |
所掌事務
周波数管理機関として、1997年1月に経済・財政省(現MEFSIEN)の下に設置された。主な所掌事務は「郵便・電子通信法典」第R.20-44-11条により以下のとおりである。
- 周波数の有効利用を目的とした市場調査、監査及び政策提言
- 周波数利用についての計画策定及び配分表の作成
- 周波数干渉に関する事業者への指導
- 政府機関に対する周波数割当
- 周波数問題に関する国際会議における国の代表
- 国内の周波数利用状況に関する公的資料の作成
- 無線局設置可能な用地の最善利用を目的とした全国レベルでの調整
- 周波数再配分基金について公人あるいは私人が負担する拠出金の徴収
- 無線端末の電磁波基準順守の監査と違反者の処罰
(3)視聴覚及びデジタルコミュニケーション規制機関(Arcom)
(放送/Ⅰ-2の項参照)
所掌事務
放送用周波数の割当て及び管理を所掌する。
2 標準化機関
フランス標準化協会(AFNOR)
French Standardization Association
| Tel. | +33 1 41 62 80 00 |
|---|---|
| URL | https://www.afnor.org/ |
| 所在地 | 11, rue Francis de Pressensé, 93571 La Plaine Saint-Denis Cedex, France |
| 幹部 | Olivier Peyrat(会長/General Director) |
所掌事務
2009年設立の公益事業体であり、通信やエネルギー関連の企業等の代表により構成される。情報通信分野を含めた技術標準の策定、国際標準に関する調査、製品及びサービスに関する証明書の発行等を実施する。
Ⅱ 電波監理政策の動向
1 電波監理政策の概要
フランスの電波監理に関する主管庁は、電波監理機関と周波数割当機関の2層で構成されており、国家レベルの周波数分配は、電波監理機関であるANFRが所管する。「郵便・電子通信法典」第L42-1条によりARCEPは、ANFRの周波数分配を受けて、通信分野における周波数の割当業務を所管する。電気通信事業者の周波数利用に関して、同法第L42条により、ARCEPは周波数の利用の技術規則と条件を設定する。
2 無線局免許制度
無線局免許制度は、「郵便・電子通信法典」第L41-1条に定められており、第L33-3条に定められた免許不要局を除いて、信号の発信及び受信等で周波数を利用する際、免許取得が必要であると定められている。通信サービスに使用される無線局については、「郵便・電子通信法典」第L42-3条により、周波数の譲渡あるいは無線局の位置変更に関する計画はすべてARCEPに通知・公開することとしている。周波数帯が公共サービスに利用されている場合の無線局の移動等には、別途ARCEPの許可が必要である。
3 周波数割当制度・電波再配分制度
周波数資源の希少性等の理由から、ARCEPは、周波数の有効利用の原則に基づき、免許件数に制限を加え、免許人の選定に比較審査やオークションを実施できることが「郵便・電子通信法典」第L42-2条に定められている。近年では電気通信事業者の5Gサービスで価格面でのオークションが実施され、産業向け5Gについては、実験用周波数割当の公募窓口が開かれ、審査を通過した事業者には3年間の実験用周波数利用許可が付与されている。
(1)移動体通信事業者への3.5GHz帯割当
政府は3.5GHz帯(3400-3800MHz)のうち、ルーラル固定地域ブロードバンド向けに配分された帯域以外を5Gに分配するとしており、将来的には同帯域上の周波数を途切れのない連続したものにし、2026年までに640MHz幅を5Gシステムで連続して利用できる帯域に再編することを計画している。このためARCEPは、3400-3600MHz帯を割り当てられている既存の事業者を中心に免許内容の改正を行い、割当帯域を再編している。
3490-3800MHzの310MHz幅については、2019年11月に割当計画の概要が発表され、2020年に以下の2段階で入札が行われた。免許期間は15年とされている。
- ①4事業者に対し、それぞれ50MHzずつを固定価格で割り当てる。申請者が5社以上であれば、別途審査が実施される。
- ②残りの帯域については、10MHzを1単位として最低価格を設定、各ブロックにつき希望者が複数の場合はオークションを実施する。
①、②を通じ、1事業者の取得可能帯域は100MHzまでとされている。また、周波数を取得した事業者には以下の義務が課せられる。
- 2020年内に少なくとも2都市でサービスを開始し、2022年までに3,000、2024年までに8,000、2025年までに1万500の基地局を設置
- 2022年に75%、2030年にはすべての基地局で最大通信速度240Mbpsの接続サービスを提供
- 2025年までに高速道路、2030年までに幹線道路すべてで最大通信速度100Mbpsの接続サービスを提供
- 2023年までに各種ICT産業分野での応用(スライシング)を可能にする体制の整備
- IPv6との互換性の保証
上記①で50MHz帯域幅を取得した4事業者には更に、割当時に以下を順守する協約をARCEPと交わすこととされている。
- 行政機関、自治体、企業等からのカバレッジやサービス要求に適切に対応
- 建物内での接続環境の改善
- 固定通信事業者からの接続要請への対応
- カバレッジ拡大、サービス提供体制、事故対応等の計画の明示
- MVNOの受入れとサービス開発への支援
2020年4月には、既存4事業者が対応周波数へのオークションの参加申請を提出、ほかに参加事業者がなかったため、それぞれが固定価格3億5,000万EURで50MHz幅の利用権を取得することが決定した。
2020年9月には、残りの110MHz幅に対するオークションが開始、10月1日、ARCEPは最終結果を発表した。帯域10MHz当たりの落札額は1億2,600万EURであった。
同11月には更に、各事業者への利用帯域の割当てが実施され、フリーモバイルが希望帯域取得料として310万EURを支払うことになった。このオークションで政府が得る周波数利用許可取得料は約27億8,910万EURで、各事業者には、2034年までの分割払が可能とされている。各事業者は更に、今回の取得帯域を利用したサービスから得る年ごとの売上高の1%を電波使用料として政府に支払うこととされている。
| 事業者名 | ブイグ テレコム |
フリー モバイル |
オランジュ | SFR | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 割当周波数(MHz) | 3570-3640 | 3640-3710 | 3710-3800 | 3490-3570 | |
| 帯域幅 | 70MHz | 70MHz | 90MHz | 80MHz | 310MHz |
支払予定額 (百万EUR) |
602 | 605.1 | 854 | 728 | 2,789.1 |
出所:ARCEP
(2)産業向け5Gへの実験用周波数割当
①26GHz帯
ARCEPは、26GHz帯を5G展開のためのパイオニアバンドとして位置付けており、産業界及び地方自治体や研究機関での先端サービスでの利用を期待している。2019年には、技術中立で実験プロジェクトの公募を開始した。2025年10月現在、窓口は開かれており、プロジェクト件数は3件である。
②3.8-4.0GHz帯
①と同様の主旨で、ARCEPは2022年5月に3.8-4.0GHz帯での実験プロジェクトの公募を開始した。この帯域は航空その他の用途で使用されている地域もあり、利用技術に若干の制限が加えられる場合もあるものの、審査により適合ケースと認められたプロジェクトには、最大100MHz幅の利用が可能になる。この公募窓口は産業界の要請により2025年12月まで開かれることになり、2025年10月現在のプロジェクト件数合計は約78件である。
③2.6GHz帯
時分割(TDD)用の40MHz幅(2575-2615MHz)を業務用無線(Professional Mobile Radio:PMR)に分配し、2G技術から超高速ネットワークにアップグレードする。2019年5月、割当計画の詳細についての案内文書が発行され、割当てを希望する事業者に対する相談・申請窓口が開かれた。2025年10月現在のプロジェクト件数は28件である。
4 電波監視体制
「郵便・電子通信法典」第L43条により、電波監視業務は、ANFRの所掌業務であり、周波数制御局が以下を主に所管している。
- ①周波数の適切な利用の監視
- ②混信元の特定及び司法手段の準備
- ③海上無線設備及び無線端末市場の監督
フランス本土における電波監視は、1か所の国際監視センター及び本土5か所の地方監視センター、大西洋岸とドイツ国境地域の監視局、英仏海峡沿いのアンテナで実施されている。海外県・領土においては、4地域にアンテナが設置されている。
5 電波利用料制度
公衆電子通信網の運用またはサービスを目的として、ARCEPにより周波数資源の利用を許可された事業者は、「ARCEPにより周波数利用許可を付与された事業者の支払う周波数利用料に関する2007年10月24日のデクレ第2007-1532号」により、年ごとに国に対して次の2種類の料金を支払う。
- 電波使用料(Redevances de mise à disposition de fréquences)
電波の使用に関して徴収される料金。ARCEPが固定サービス、衛星固定サービス、GSM通信網サービス等、サービスの性質に応じてサービス区分ごとに料額を定める。
- 電波管理料(Redevances de gestion de fréquences)
電波の使用にかかわる管理業務に関して徴収される料金。サービス区分ごとの基本利用料額を定め、事業者が利用する周波数帯域とサービス地域に応じて事業者ごとに料額を決定する。
6 電波の安全性に関する基準
「郵便・電子通信法」第L34-9-1条は、携帯基地局やWi-Fiアクセスポイント等、電磁波を発する無線装置の設置に当たり、電気通信事業者はANFRの合意の下、自治体あるいは近隣の建物の持ち主の要求に応じて情報公開を行うこと、と定めている。
ANFRは、基地局の設置場所や電磁界強度の測定値に関する情報を、ウェブサイト(https://www.cartoradio.fr/)で公開している。また、4G/5G対応端末機器につき、定期的に電磁波強度に関する調査を実施、EUの基準値を順守しない機器については市場からの引上げを指示している。また、5Gサービス開始とともに、大都市には複数の電磁波強度の測定設備を設置、サイト上でその値を公開している。
Ⅲ 周波数分配状況
周波数の分配表(Le Tableau national de répartition des bandes de fréquences :TNRBF)は以下のとおり(2025年4月発行)である。
- https://www.anfr.fr/fileadmin/mediatheque/documents/tnrbf/TNRBF_2025-04-18.pdf