ドイツ連邦共和国(Federal Republic of Germany)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 連邦経済・気候保護省(BMWK)

Federal Ministry of Economic Affairs and Climate Action

Tel. Berlin:+49 30 18 615 0
Bonn:+49 228 615 0
URL https://www.bmwk.de/
所在地 BMWK Berlin:Scharnhorststr. 34-37 10115 Berlin, GERMANY
BMWK Bonn:Villemombler Str. 76 53123 Bonn, GERMANY
幹部 Robert Habeck(大臣/Federal Minister)
所掌事務

2002年10月に、連邦経済技術省と連邦社会労働省が統合され、連邦経済労働省(Federal Ministry of Economics and Labour:BMWA)が新設された。その後、省庁再編によりBMWAから労働省が分離し、再び連邦経済技術省(Federal Ministry of Economics and Technology:BMWi)となった。更に2013年12月に、BMWiはエネルギー分野を所掌することになり、正式名称も連邦経済エネルギー省(Federal Ministry of Economic Affairs and Energy:BMWi)に変更された。BMWiが所管する分野は、経済、産業、エネルギー、貿易、デジタル及びイノベーション、中小企業、観光等多岐にわたる。情報通信政策については、第Ⅵ局「デジタル・イノベーション政策局」が担当している。BMWiの外局は6組織あり、ここに連邦ネットワーク庁や連邦カルテル庁等が置かれている。そのほか、第Ⅵ局に人工知能担当室(Stabsstelle Künstliche Intelligenz)が設置されている。

2021年12月には政権交代に伴い、現名称への変更が行われた。

2 連邦ネットワーク庁(BNetzA)

Federal Network Agency for Electricity, Gas, Telecommunication, Post and Railway

Tel. Bonn:+49 228 14 0
Mainz:+49 6131 18 0
Berlin:+49 30 22480 0
Saarbrücken:+49 681 9330 0
URL https://www.bundesnetzagentur.de/
所在地 Bonn(本部):Tulpenfeld 4, 53113 Bonn, GERMANY
Mainz:Canisiusstr. 21, 55122 Mainz, GERMANY
Berlin:Seidelstr. 49, 13405 Berlin, GERMANY
Saarbrücken:An der Trift 40, 66123 Saarbrücken, GERMANY
幹部 Jochen Homann(長官/President)
所掌事務

1998年1月に、電気通信分野の自由化の推進、政策立案と規制監督の分離を目的に発足した独立規制機関である連邦電気通信郵便規制庁(Regulatory Authority for Telecommunications and Posts:RegTP)を引き継ぎ、2005年7月、新たに連邦ネットワーク庁(Federal Network Agency for Electricity, Gas, Telecommunication, Post and Railway:BNetzA)が発足した。電力、ガス、電気通信、郵便のほか、2006年1月からは鉄道を含む社会インフラ全般を所掌している。なお、電気通信分野に関する中心的な所掌事務は以下のとおりである。

3 連邦デジタル・交通省(BMDV)

Federal Ministry for Digital and Transport

Tel. Berlin:+49 30 18 300 0
Bonn:+49 228 99 300 0
URL https://www.bmvi.de/
所在地 Berlin:Invalidenstraße 44, 10115 Berlin, GERMANY
Bonn:Robert-Schuman-Platz 1, 53175 Bonn, GERMANY
幹部 Volker Wissing(大臣/Federal Minister)
所掌事務

第3次メルケル政権下において、2013年12月に連邦交通デジタルインフラ省(BMVI、2014年1月に連邦交通建設住宅省(BMVBS)より改名)が発足した。同省は、道路・鉄道・水路・航空等の運輸インフラのほか、デジタル・インフラ(ブロードバンド網、5G等)を所管する。九つの総局(Directorate General)から構成されており、デジタル社会総局(Digital Society Directorate-General)がブロードバンド網整備や電波政策等を含む情報通信分野に関する政策立案を一手に担っていた。2021年12月には政権交代に伴い、デジタル関係課題を集約して改編された。

Ⅱ 法令

1 2004年電気通信法(Telecommunications Act:TKG)

(1)概要

電気通信分野の競争促進を主たる目的として「1996年電気通信法」が制定・施行され、1998年1月1日より電気通信市場の完全自由化が達成された。その後、EU指令の国内法制化に対応するため「1996年電気通信法」の改正が行われ、2004年6月に「2004年電気通信法」が施行された。電気通信市場参入のための免許制度の廃止や周波数取引の導入等、規制緩和が盛り込まれた。

同法の構成は以下のとおりである。

  1. 第1章
    一般的規定
  2. 第2章
    市場規制
  3. 第3章
    消費者保護
  4. 第4章
    放送の送信
  5. 第5章
    周波数、番号、線路敷設権の付与
  6. 第6章
    ユニバーサル・サービス
  7. 第7章
    通信の秘密、データ保護、公共安全
  8. 第8章
    規制監督機関
  9. 第9章
    公課
  10. 第10章
    罰則及び罰金規定
  11. 第11章
    移行及び最終規定
(2)TKGの改正

2012年5月、TKGの一部改正が行われた。EUの「電子通信枠組規制(2009/136/EC、2009/140/EC)」の見直しを受け、その国内法制化を図ったものであり、次世代ネットワーク構築の促進のために投資インセンティブの刺激策や、市場支配力(Significant Market Power:SMP)を有する事業者に対して、サービス・アプリケーションへのアクセス・利用を制限するすべての要件を公表するよう義務付ける権限をBNetzAに付与する等の市場競争促進策、事業者変更に際し1営業日以内で変更手続可能な権利の保障等の消費者保護策が盛り込まれた。

また、2013年7月の改正では、個人データ保護に関する規定(第113条)について、危険防止や刑事訴追のために、検察、警察、諜報機関等からの要求に応じて、通信事業者が顧客の個人データやパスワード、IPアドレスを提供することが可能になった。更に、2016年7月の改正では、2017年1月よりテロ対策のため、プリペイドSIMカードの購入時に本人確認と住所登録を義務付けた。

(3)2020年電気通信法改正(電気通信近代化法)

2018年末に施行された欧州電子通信指令((EU) 2018/1972)の内容を国内法制化し、電気通信近代化法(Telecommunications Modernisation Act:TKG 2020)として2021年5月7日、ドイツ連邦議会により採択され、6月23日、官報により公布、12月1日に施行された。

新法は、これまでのTKGを改正し、ドイツの電気通信市場と最終顧客向けにカスタマイズされた未来志向の法的枠組を提供することとなる。ペーターアルトマイヤー経済大臣によると、新法は、投資とイノベーションへのインセンティブを提供し、ギガビット・ネットワークの迅速かつ包括的な拡大を促進することを目的とし消費者の権利も強化している。

2 テレメディア法(Telemedia Act:TMA)

2007年3月に、インターネット上のサービスを規定した「マルチメディア法(IuKDG)」の改正法である「テレメディア法(Telemedia Act:TMA)」が施行された。同法は、ISPや情報提供事業者による情報やデータの送受信をまとめてテレサービスとし、これらテレサービスに関する規制を定めたもの。なお、テレサービスとは、文字、画像又は音声のような結合可能なデータの個別的な利用のために行われ、かつその基礎に電気通信を利用した伝送があるすべての電子的情報サービス及び通信サービスを意味する。したがって、既存の電気通信、放送、出版プレスは除かれている。

2016年7月には、公衆無線LANの普及促進を目的に、改正が実施された。ドイツでは、公衆無線LANの利用客が違法ダウンロード等著作権侵害の違法行為を行った場合、当該利用客に代わって、公衆無線LANの提供者が権利者から警告や差止請求を受けるおそれがあった。そのため、テレメディア法第8条を改正することにより、公衆無線LANの提供者は、利用者の違法行為について民事上及び刑事上の責任を負わないことが定められた。

3 新連邦データ保護法(New Federal Data Protection Act:新BDSG)

2017年7月5日、「新連邦データ保護法(新BDSG)」が官報に公示された。新BDSGは、「2003年連邦データ保護法(BDSG)」を含む個人情報保護について規定する幾つかの連邦法を包括的に改正し、欧州連合(EU)の「一般データ保護規制(General Data Protection Regulation:GDPR)」に適合することを意図したもの。新BDSGは2018年5月25日、GDPRと同日に発効された。

Ⅲ 事業政策

1 免許制度

2003年7月に、「EU認可指令(2002/20/EC)」第3条2項に基づき、電気通信分野において事業免許を取得する義務が廃止され、TKG第6条に基づく届出制度が導入された。ただし、移動体通信業務については、個別の周波数使用権を取得する必要がある。

2 競争促進政策

(1)相互接続

TKG第16条に基づき電気通信事業者には、相互接続に応じる義務を課し、同第21条の七つの類型に当たる電気通信事業者には接続義務を規定した。また、同条による接続義務を課された電気通信事業者は、接続契約(第22条)を申し出より3か月以内に回答、及び標準約款(第23条)を申し出より3か月以内に公表する義務を負う。

BNetzAは、2018年12月にドイツテレコム(Deutsche Telekom)が競争事業者に請求可能な固定通信網の相互接続料金を暫定的に承認し、固定ネットワークの着信料金(Fix Termination Rate:FTR)は20%引き下げ0.08EUR/分、発信料金は43%引き下げ0.13EUR/分とした。なお、FTRについては、2019年6月、欧州委員会が国内規制に代わるFTR 上限規制を制定するまでの間の限定付きで継続的な引下げを承認した。具体的には、2020年に0.06EUR/分、2021年に0.05EUR/分、2022年に0.03EUR/分。

(2)移動体通信着信料

2014年9月、BNetzAは、モバイル着信料金(Mobile Termination Rate:MTR)について約4%の引下げを決定した。これにより、2014年12月1日から2015年11月30日までのMTRは0.0172EUR/分に引き下げ、2015年12月1日から2016年11月30日までのMTRは0.0166EUR/分に引き下げられた。

2015年3月、欧州委員会はBNetzAにMTRの修正を要請し、欧州ルールに従いPure LRIC方式に基づいてMTRを算定するよう命じた。BNetzAは、一度はPure LRIC方式には従わない決定を下したものの、2016年12月には、欧州委員会勧告のPure LRIC方式に従うことを決定した。これによりドイツのMTRは2016年12月に0.0110EUR/分、2017年12月に0.0107EUR/分、2018年12月に0.0095EUR/分、2019年12月からは0.0078EUR/分に引き下げられた。

(3)ローカル・ループ・アクセス

ドイツは1998年に欧州で最初にローカル・ループ・アンバンドリング(Local Loop Unbundling:LLU)を導入した国である。2002年3月には、2001年1月に施行された「LLUに関するEU規則」に準拠し、完全なアンバンドリングが実施された。2022年6月末までのLLU料金は、顧客からケーブル配信ボックスまでの回線リース料金が月額7.05EUR、それよりも長い顧客から主要配信フレームまでの区間料金が月額11.19EURである。

(4)独占禁止法

2018年2月、連邦カルテル庁(Federal Cartel Office)はドイツのオンライン広告市場における競争環境について調査を開始した。同庁は、特定の企業名は挙げていないが、現地の広告主及びパブリッシャーがグーグル(Google)とフェイスブック(Facebook、現メタ(Meta))が同市場において支配的地位を濫用していると訴えていた。

グーグルについては、アドブロッカー(サイト上の広告をブロックするプログラム)提供事業者Eyeoとの契約に関する調査を行った。連邦カルテル庁は、2019年1月に、両社が締結している契約のうち、特定の広告を停止するプロセスから除外するサービス(ホワイト・リスト)に関する追加条項において、アドブロッカーの提供を制限し、Eyeoの事業活動の独立性を著しく制限する規則を設けているとの結論を出した。その後、当事者が契約を修正したことを受けて、同調査は終了した。

また、フェイスブック(現メタ)に対しては、2016年に同社のソーシャル・ネットワーク・サービスについて市場での支配的地位を濫用し、個人情報を収集していた疑いがあるとして調査を開始した。連邦カルテル庁は、広告収入を主な事業収入源としているフェイスブックが、個々のユーザを対象とするターゲット広告を行うために、同社以外のSNS(WhatsApp、Instagram、第三者サイト)上に存在するユーザ・データを収集し、これらのデータをフェイスブックのユーザ・アカウントに結び付けることに合意することを利用規約(terms and conditions)に盛り込んでいることを問題とした。これについて、連邦カルテル庁は、2019年2月、強力な市場力を有するフェイスブックが、利用規約への「義務的」同意を根拠にして、同社の個人データと他のサイトデータと統合処理することは適切ではないとの結論を出した。これにより、自己の個人データを収集・統合することをフェイスブックの利用条件としてはならず、ユーザの自発的な同意(voluntary consent)を得た場合を除き、フェイスブック以外のサイトから個人データを収集し、フェイスブックのユーザ・データと統合することを禁じる決定を下した。フェイスブックは、この決定に対する申立てを行いデュッセルドルフ高等裁判所(Düsseldorf Higher Regional Court)が決定の執行の中断を命じたが、最高裁に相当する連邦通常裁判所(Federal Court of Justice)は、2020年6月にこの命令を破棄し、連邦カルテル庁の決定を暫定的に認める判決を下した。

一方、2018年11月、連邦カルテル庁は、米国のアマゾン(Amazon)に対して調査を実施した。同庁は多数の苦情が寄せられたことを受けて、アマゾンの同社のマーケットプレイスで商品を販売する小売業者に対する支配的地位の濫用について調査した。連邦カルテル庁は、小売業者に不利な責任条項、小売業者のアカウントの停止と閉鎖のあり方、小売業者の商品情報をアマゾンが利用する権利等について競争上の懸念を示し、これを受けてアマゾンは、小売業者と締結する契約の一部条項を修正し、2019年7月、本件調査は終了した。主な修正条項は以下のとおりである。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

ユニバーサル・サービスについては、TKG第78条から第87条に規定され、その範囲は、同第78条第2項に「固定された場所で公衆通信網に接続し、機能的なインターネット接続に十分な伝送速度で通話、ファックス送信、データ通信ができること及びそのネットワーク接続を介して一般に利用可能な電話サービスへの接続」となっている。ユニバーサル・サービスの確保に必要な費用は、ユニバーサル・サービス提供義務の対象となる事業者のすべてが拠出する。また、支配的事業者によってユニバーサル・サービスが提供されない場合、ユニバーサル・サービスの確保に必要な費用は、当該市場において4%以上の売上高シェアを有する免許事業者に対し、ユニバーサル・サービス負担金を課すことで調達される。BNetzAの基本的な役割は、市場主導型のユニバーサル・サービスの提供が不十分になった場合の措置を講じることである。TKG第81条には、ユニバーサル・サービスが正当かつ適切に提供されない場合、BNetzAが支配的事業者等にサービス提供の義務付けを行うこと、また、提供事業者の入札制度が規定されている。

(2)国家ブロードバンド戦略

連邦政府は、「全国ブロードバンド網整備計画」(2009年発表)により、2018年までに全世帯が50Mbps以上のブロードバンドを利用可能とする目標を設定した。

2016年10月、連邦教育研究省(Federal Ministory of Education and Research:BMBF)は2021年までに国内4万のすべての公立高校にパソコン及びWi-Fi設備を装備する施策「Digital-Pakt」に対して50億EURを支出する計画を発表している。2018年8月には、連邦政府がデジタルインフラ投資の資金調達のための基金「Digital Infrastructure Fund」を設立することを承認。基金の目的は、学校にギガビット級のインターネットを導入することにあり、特にルーラル地域での導入が重要視される。同基金の財源には、基本資金として連邦予算から24億EURが投入され、更に、2019年6月に終了した5Gオークションからの収入が充てられる。

2020年11月、コロナ・パンデミックを踏まえた「Digital-Pakt」の取組拡大に関する協定(連邦政府及び州政府間)が発効した。生徒へのラップトップ貸出の即時プログラム(5億EUR)、学校のIT管理者の訓練支援(5億EUR)が含まれる。

(3)ギガビット社会

BMVI(当時)は2016年11月に「ギガビット社会」計画を発表し、2025年までに1Gbpsの超高速光ファイバ網の全国整備を完了するとしている。

ギガビット網の全国整備は、四つのフェーズで実施される。2018年末までに全世帯で50Mbpsのブロードバンドが利用可能(フェーズ1)、2019年末までに通信環境が不十分な産業エリアに光ファイバ網を整備(フェーズ2)、2020年末までに周波数帯の確保を含めた5Gの全国展開に必要な環境を整備(フェーズ3)、2025年末までに全国にギガビット網を構築する(フェーズ4)。

2017年3月には、BMVI(当時)は、2025年までに全国規模のギガビット網を構築するために1,000億EURを投資する計画を発表している。

これに先立つ同年1月には「DigiNetz法」が成立した。DigiNetz法は、超高速ブロードバンド網の展開にかかるコスト削減を目的とする欧州の「コスト削減指令(Cost Reduction Directive、2014/61/EU)」を国内法へ置き換えたもので、光ファイバや5Gの展開に関して既存の公共基盤(電気通信、道路、鉄道、水道、電力、ガス)の活用・共有化を推進することを意図したものである。

(4)5G

BMVI(当時)は、2025年までにハイレベルの5G展開を完了させる目的で、周波数の開放、光ファイバ・バックホールの展開支援、製造業、交通、農業、電力、医療、エンターテインメント、スマートシティ分野のアプリケーションの開発コンペ等の実施を盛り込んだ「ドイツの5G戦略(5G Strategy for Germany)」を2017年7月に発表した。5G用周波数オークションは、2019年3月から6月にかけて実施された。2GHz帯及び3.6GHz帯を対象としたもので、新規参入を含めた4事業者に周波数が割り当てられた。また、3700-3800MHz帯は、ローカル5Gに割り当てられることとされており、BNetzAは、免許申請の受付けを2019年11月より開始した。2020年11月現在、93件の申請があり、88件の免許人に付与している(電波/Ⅱ-4の項参照)。

研究開発については、BMVI(当時)は、5Gアプリケーションの開発支援プログラム「5Gイノベーションプロブラム(5G-Innovationsprogramm)」を実施している。5Gアプリケーションの実証を行うモデル地域を選定し、資金援助を行うことを主な目的としており、2019年には、以下の6プロジェクトが選定されている(予算6,600万EUR)。

その他、BMVI(当時)は、コンセプト・レベルにある5Gアプリケーションの開発を助成する「5Gイノベーション競争(5G-Innovationswettbewerb)」プロジェクトも実施しており、67プロジェクトを対象に総額620万EURの資金援助を行っている。

5Gセキュリティに関する制度整備も進められており、連邦内務・建設・コミュニティ省(Federal Ministry of the Interior, Building and Community:BMI)が政府に提出していた「ITセキュリティ法2.0(Second Act to Increase the Security of Information Technology Systems)」が、2020年12月、閣僚会議で承認された。5Gを含む重要インフラを対象に、重要インフラで使用される重要部品に関して、製造者が同部品の信頼性保証に関する事前承認をBMIから取得することを義務付けるとともに、当部品の利用が公共の利益に反する場合、重要インフラ事業者に同部品の使用を禁じる権限をBMIに与える内容になっている。経済安全保障を確保することが目的とされているが、華為技術(HUAWEI)等の特定の諸外国の製造業者名を表記し、その製品を排除する内容にはなっていない。

(5)ローカル5G

インダストリー4.0の政策に基づき、3.7GHz帯(3.7-3.8GHz)がローカル5G専用帯域として2019年11月から免許申請受付している。公開されている免許人リストには、製造業や輸送業に加え、ソリューション提供事業者等多様な事業者が挙がっている。

26GHz帯(24.25-27.5GHz)もローカル5Gに限らず、技術中立で2021年1月から免許申請受付している。

4 ICT政策

(1)ハイテク戦略

連邦政府は、分野を横断したハイテク戦略を通じて、ドイツの国際的な大企業や著名な大学・研究機関ばかりでなく、中小企業も巻き込んで国際競争力強化、イノベーション推進に力を入れてきた。ドイツが技術革新の拠点としての優位性を維持・向上するため、2025年までにGDPの3.5%を研究開発費に投資するという目標を設定している。そこで、ドイツ政府は2006年8月の「ハイテク戦略(High-Tech Strategy)」、2010年6月の「ハイテク戦略2020(High-Tech Strategy 2020)」に続き、2014年9月にはBMBFが第3期目となる「新ハイテク戦略(The New High-Tech Strategy)」を立ち上げた。

初期の「ハイテク戦略」は、事業化の可能性が高い特定のテクノロジー分野を優先していたが、2010年以降、将来の経済成長と社会の豊かさを実現する研究テーマにシフトしている。「新ハイテク戦略」では、デジタル経済と社会、持続可能な経済とエネルギー、革新的な労働環境、健康的な生活、インテリジェント・モビリティ、国民生活とセキュリティ等に焦点を当てていた。ドイツ政府は、この「新ハイテク戦略」に2014年だけで110億EUR、更に30億EURの追加予算の支出を決定した。

2018年9月、第4期目となる「ハイテク戦略2025(HTS2025)」を閣議決定した。「ハイテク戦略2025」は未来のためのガイドラインとしてドイツにおける繁栄、持続可能な発展及び生活の質を向上させることを目標に、研究とイノベーションを結集させるものである。連邦政府は2018年だけで150億EUR強を投資する。「ハイテク戦略2025」では、新しい12の研究テーマが示されている。この中には、がん研究、電子カルテ、バイオプラスチック、次世代電池、モビリティ、デジタル化、人工知能(AI)といった分野が含まれる。「ハイテク戦略2025」はまた、オープンなノベーションによる研究開発力の強化、技術移転の推進、イノベーション推進機関の設立、国際的な連携強化といった面にも言及している。

(2)デジタル化推進

2016年3月には、BMWiが「デジタル戦略2025」を策定し、2025年までにドイツがいかにしてデジタル化を具体化していくか取り組むべき10の施策を提示した。具体的には、2015年までに全国にギガビット網を整備するため100億EUR規模の基金を設立、中小企業のデジタル化を支援する目的で2018年までに10億EURを投資、新興企業の資金調達を容易にするために新しい支援基金を設立、OTT(Over The Top)事業者を規制の枠内へ取り込むための措置を実施、EUのGDPRへの適用、インダストリー4.0の標準化戦略の推進、研究拠点としてのデジタル庁の創設、更にデジタル教育戦略等多岐にわたっている。

最近では、連邦政府が2018年8月に科学、研究、産業等国内外の10人の専門家で構成される「デジタル委員会(Digital Council)」を設置した。「デジタル委員会」は、将来のデジタル化について、専門家の経験や知見に基づき助言するほか、年2回、首相や政府のメンバーとも会合を持つことになる。

(3)インダストリー4.0

ドイツ政府が産官学の総力を結集して推進してきた「インダストリー4.0」について、近年外国との連携の強化が図られている。例えばBMWiは2015年7月、中国の工業・情報化部(MIIT)との間でインダストリー4.0の推進に向けた相互の連携に関する協定を締結した。2016年3月には、ドイツのIoT推進団体「プラットフォーム・インダストリー4.0」が、米国企業中心のIoT推進団体「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」と、今後の相互運用性を前提とするロードマップ作成等を含む連携強化に合意した。また2016年8月には、ドイツの隣国であるチェコ共和国とインダストリー4.0に関して2国間協力に合意した。チェコ共和国では2016年から国家戦略の一つの柱としてインダストリー4.0を推進する方針を打ち出している。

2017年3月には、情報通信技術見本市「CeBIT」において、日独両政府がインダストリー4.0・IoTを含む日独デジタル協力の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」を採択し、同宣言の下で、サイバーセキュリティや国際標準化、規制改革、中小企業支援、研究開発、デジタル人材育成、自動車産業、ICT協力等の分野での協力を深化することに合意した。

2017年4月には、独プラットフォーム・インダストリー4.0がオーストラリア政府の「インダストリー4.0作業部会(Industry 4.0 Taskforce)」と2国間協力によるインダストリー4.0の推進で合意した。両国は、標準化、中小企業支援、テストセンター、ITセキュリティ等の分野で協力する。2017年6月には、フランス及びイタリアとの3国間協力について合意した。フランスのIoT推進団体「Alliance Industrie du Futur」、イタリアの団体「Piano Industria 4.0」と連携することに合意し、3か国共通の行動計画を採択した。産官学連携の下、共通の利益となる主要3項目(標準化及び参照アーキテクチャ/中小企業及びテストベッド対策/欧州レベルでの政策支援)に焦点を置き、項目ごとにワーキング・グループを設置する。また、各国の政策及びプログラムのベストプラクティスについて情報交換を行い、欧州委員会及びEU加盟国と成果を共有し、2018年に3国間協力による最初の成果を発表した。

2018年4月には、スイスのIoT推進団体「スイス・インダストリー2025」、オーストラリアの「プラットフォーム・インダストリー4.0」と3国間における協力覚書に署名した。3者は、特に中小企業のニーズに合致した支援体制の構築に焦点を当てる。

2018年11月にはオランダのIoT推進団体「スマート・インダストリー」とインダストリー4.0向け標準化、サイバーセキュリティ、法整備、ビジネスモデル等の分野において協力することで合意した。このように、ドイツが推進するインダストリー4.0に関する国際連携の輪は、世界規模で拡大しており、2019年6月には「2030年のプラットフォーム・インダストリー4.0構想」を発表した。

(4)人工知能(AI)

連邦政府は2018年11月、AI戦略を公表した。連邦政府はこの戦略によりドイツにおけるAIの研究・開発・応用において世界トップレベルへ引き上げたいとしている。

AI戦略では、以下の三つの目標を掲げている。

また、2020年12月、連邦政府はAI戦略の更新について閣議決定しており、AI専門家の教育・訓練と国際的に評価の高い研究成果の創出、AIエコシステムの構築と中小企業等のビジネス現場への開発技術の適用、ドイツ及び欧州レベルでの人間中心型AIの開発・普及に向けた規制枠組の構築・強化、市民社会における共有財としてのAIの活用に焦点を当てた施策が展開される見込みである。

また、連邦政府は、経済・社会のデジタル化の進展とともに利用価値を増すデジタル・データの扱いに関する倫理基準やそれに基づく規制のあり方を検討するデータ倫理委員会(Datenethikkommission)を2018年7月に設置した。同委員会は、2019年10月に、AIを含むアルゴリズムを使った意思決定システム(Algorithmic Decision-Making:ADM)が及ぼす悪影響への対処について、アルゴリズムの利用のリスクを、以下の5段階に分類し、それぞれに応じた措置をとることを勧告した。

  1. レベル1:
    有害性を持たない、又は被害がわずかなアプリケーション
    • 特定の規制を行わない。
  2. レベル2:
    ある程度の被害をもたらすアプリケーション
    • 公的・実質的な要件(例:透明性義務、リスク評価の公表等)を課すか、監視措置(監視機関への情報公開義務、事後規制、監査措置)を実施する。
  3. レベル3:
    周期的被害、大きな被害を生むアプリケーション
    • 事前承認手続等の追加措置を実施する。
  4. レベル4:
    深刻な被害を生むアプリケーション
    • 監視機関による常時(always on)監視等の追加措置を実施する。
  5. レベル5:
    容認できない被害を生むアプリケーション
    • アルゴリズム・システムの全面的使用禁止又は部分禁止。
    • AI標準化に関しては、2020年11月、BMWiがロードマップを公表した。
    • なお、2020年12月にAI戦略が一部改正され、ドイツの競争力の基盤を構築し、連邦政府は再び将来の技術であるAIへのコミットメントを強化すべく、2025年までに30億5万EURの追加支出を決定した。
(5)自動運転

連邦政府は、自動車産業の国際競争力を強化するため、自動運転車とコネクテッドカーに関するイノベーション政策を推進している。

2015年9月、ドイツ連邦政府は「自動運転及びコネクテッドカーに関する戦略」を発表した。自動運転技術は、道路交通の安全性・効率性を向上するとともに、CO2排出量削減や経済効果にも寄与すると指摘。政府が今後進めるべき政策領域として、①インフラ整備、②法整備、③技術革新、④ネット接続性の確保、⑤サイバーセキュリティとデータ保護の5領域を提示した。

2017年6月には、世界に先駆けて、将来、完全自動運転の公道走行を実現するため、「道路交通法(StVG)」の改正を行った。改正の内容は、自動運転機能の定義、自動運転時のドライバーの権利と義務、賠償責任(死傷事故は1,000万EUR、物損事故は200万EUR)、自動運転システムのデータ処理(データ送信、位置情報及び時間情報の保存及び利用)、データ保護(セキュリティ)等である。また、施行から2年後の2019年6月にBMVI(当時)が科学的根拠に基づき、同法の適用状況を評価し、その結果を連邦議会に報告することが規定された。

2017年8月には、BMVI(当時)のドブリント大臣(当時)の呼びかけで発足した自動運転倫理委員会が、自動運転システムの倫理規定を提示する報告書を同大臣に提出した。同報告書は、安全、人間の尊厳、個人的選択の自由、データの自律性に関して特別な要件を課したうえで自動運転システムを承認する内容となっている。同報告書では20項目の提案がなされており、概要は以下のとおりである。

この報告内容を踏まえて、2017年8月に連邦政府は自動運転の倫理規則策定のための行動計画を決定した。

(6)ドローン

BMVI(当時)は2017年4月、無人航空機(ドローン)の運用に関する規則を発表した。同規則によれば、重量が5kg未満のドローンは原則的に許可不要で運用可能となる。ただし、住宅地上空での録音や録画、空港から100m以内の飛行、警察や救急機関の活動を妨げる飛行、群衆上での飛行は制限される。他方、重量5kg以上のドローンは個別の使途に従って、連邦航空局により除外許可を得る必要がある。また、重量2kg以上のドローンに対しては所有者の身分証明の義務付け、操縦免許及びその年齢制限が規定される。

5 消費者保護政策

(1)データ保護

BNetzAは2017年6月、裁判所の判決に従い、犯罪捜査のため国内の電気通信事業者に通話とインターネット通信記録を最長10週間保管することを義務付けた法律「データ保持法(Data Retention Act)」の施行を延期すると発表した。

この法律は、顧客の通話やデータ通信について、時刻と継続時間の記録は10週間、移動通話の位置情報は4週間にわたり保存することを義務付けており、2017年7月1日より施行開始されるはずであった。しかし、行政裁判所がEUのGDPRに違反すると判断したため、BNetzAは、法的問題に決着がつくまでは、新法を施行しないとの決定を明らかにした。2019年に、連邦行政裁判所は、欧州司法裁判所にGDPRとの法的整合性について照会するとの決定を下している。その他、TKG111条においてプロバイダに顧客の個人データの収集を義務付け、112条で裁判所や法執行機関、諜報機関等への提供を義務付けている。また113条では、電気通信事業者に対して警察等捜査機関の要求に応じて顧客の個人情報、パスワード、IPアドレスの提供を義務付けている。

2014年に欧州司法裁判所はEU市民の通信データを最長2年保管することを義務付けた規則を人権侵害として無効化しており、また、ドイツでも2010年に憲法裁判所があらゆるデータを6か月保管するよう義務付けた法律の執行を差し止めた。

(2)透明性規則

2016年12月、連邦議会は、消費者保護を目的とした透明性規則(Transparency Regulation)を採択し、2017年6月1日より施行を開始した。これは、ブロードバンド・サービスの最低/最高/平均速度を消費者に開示することを電気通信事業者に求めるEUのネット中立性規則に従い、国内法制化したもの。これにより、電気通信事業者は顧客にブロードバンド・サービスの実効速度や顧客データの利用状況、契約内容、キャンセルにかかる費用等をわかりやすく開示しなければならない。

(3)ヘイトスピーチ規制

2017年10月、ソーシャル・ネットワーク上の違法なコンテンツを厳しく取り締まる法律「ネットワーク執行法(Netz DG)」が施行された。規制の対象となるコンテンツには憎悪表現(ヘイトスピーチ)、名誉毀損、中傷、児童ポルノ、テロ関係等のコンテンツが含まれる。

Netz DGは、苦情を受け付けてから、違法性が明らかなコンテンツに関しては24時間以内、議論の余地がある場合には7日間以内の削除を、ソーシャルメディア企業に義務付けるもの。また、これを怠った場合、法人に最大5,000万EUR、担当の幹部に最大500万EURの罰金が科せられる。国内で200万人以上の利用者を持つソーシャルメディア企業が対象となる。

また、連邦政府は2020年2月、極右による犯罪が相次ぐ中、ネット上のヘイトスピーチの刑事訴追を容易にし、厳罰化するための法案を閣議決定し、連邦議会へ提出した。2017年に成立したドイツの「SNS対策法」は、フェイスブック(現メタ)やツイッター(Twitter)等大手SNS事業者に対し、脅迫や憎悪をあおる内容の投稿があった場合、直ちに消去することを義務付けていたが、今回の法案はこれに加えて、SNS事業者が自ら連邦刑事庁へ通報し、投稿者のIPアドレスとポート番号を報告するよう義務付ける。法案は更に、刑法を改正し、脅迫、ネット上の侮辱、政治家への誹謗中傷等の犯罪に対する拘禁刑の期間を延長し、厳罰化する。

(4)サイバーセキュリティ機関の設立

サイバーセキュリティの最新技術を開発するサイバー機関(Cybersicherheit)の発足が、2020年8月に正式決定された。サイバースペースにおける市民・行政・経済保護とドイツの技術主権の強化のための技術拠点として、サイバーセキュリティ技術の開発計画管理、新技術の政府機関への普及、国内外の関連機関との協力体制の構築が進められる。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

ドイツにおけるすべての通信機器は、基準認証を必要とし、BNetzAが所掌している。ただし、航空機無線と船舶無線に関しては、それぞれ連邦航空局と連邦船舶局が直接監督している。BNetzAによって、EUの「電磁両立性に関する加盟国の法律の整合化のための欧州議会、並びに欧州閣僚理事会指令(2014/30/EU)」及び「無線機器指令(2014/53/EU)」に基づき、「電磁環境適合性法(Electromagnetic Compatibility Act:EMVG)」が改正されて2016年12月22日より発効し、また、「無線設備法(New German Radio Equipment Act:FuAG)」が成立して2017年7月4日より発効し、国内法制化が実施された。これらの法令に基づいて機器の試験が実施され、承認が得られれば、CEマークと承認番号を機器に表示できる。CEマークとは、「メーカー自身がEMC指令に適合していることを証明するマーク」であり、マーキングには該当するすべてのEU指令の必須要求事項に適合している必要がある。

Ⅴ 市場動向

1 市場概要

(1)市場規模

BNetzAの2020/21年次報告書によれば、2020年の国内電気通信事業の売上高は、572億EUR(前年570億EUR)となった。このうちドイツテレコムの国内売上高は全体の43.0%(前年43.0%)を占めた。

2020年のネットワーク別(専用線を除く)の売上高は、固定通信が246億3,000万EUR、ケーブルテレビ網(Hybrid Fiber-Coaxial:HFC)が59億4,000万EUR、移動体通信が256億5,000万EUR、その他が9億7,000万EURである。

電気通信事業者の設備投資額は2010年以降、ほぼコンスタントに増加しており、2019年に98億EUR、2020年に105億EURが投資された。主な投資先は、ブロードバンド(VDSL)及び光ファイバ網の展開、IP網への移行、LTE網の展開等である。2020年におけるドイツテレコムの設備投資額は、それぞれ46億EURで、ドイツテレコムが38.0%を占めた。

電気通信事業の従業員数は、2020年に13万9,200人に及び、このうちの8万9,000人をドイツテレコムが占めた。

(2)買収・合併動向

ベルリンを本拠とするケーブルテレビ大手のテレコロンブス(Tele Columbus)が2014年9月、2015年7月、2015年9月に中堅ケーブルテレビ事業者であるBig Medienversorgung、PrimaCom、pepcomを買収している。また、国内3位のISPであるユナイテッド・インターネット(United Internet)が2014年11月にバーサテル(Versatel)を完全子会社化し、2017年9月にはMVNO大手の移動体通信サービス「ドリリッシュ(Drillisch)」の経営権を取得し、2018年1月に新会社「1&1ドリリッシュ」を設立し、移動体通信サービス市場に新規参入した。2021年6月には「1&1」と改称している。

2 固定電話

BNetzAによると、2018年のブロードバンド回線を含む固定電話回線数は、3,840万回線で前年の3,860万回線より20万回線減少した。PSTN/ISDNは、IP移行の影響を受けて毎年激減しており、2018年の470万回線から2019年には70万回線となった。対照的にIP電話の加入者数は2018の3,380万回線から2019年の3,750万回線に拡大した。

ドイツテレコムの主な競争事業者は、カーベル・ドイチュラント(Kabel Deutschland)を買収したボーダフォン・ドイツ(Vodafone Germany)、企業買収により規模を拡大したユニティメディア(Unity Media)の2社で、両社はIP電話、ブロードバンド、移動体通信、ケーブルテレビ・サービスを併せたバンドル・サービスが好調で新規加入者を伸ばしている。このほかに、テレコロンブス、テレフォニカ・ドイツ(Telefonica Deutschland)、Tele2等がある。

3 移動体通信

(1)概要

市場の飽和状態、業界再編、技術革新等の影響により、顧客の獲得競争は激しさを増している。2014年の業界3位のテレフォニカ・ドイツと4位のEプラス(E-Plus)の合併で、ドイツの移動体通信市場は大きく様変わりした。大手3社へと寡占化が進み、合併後のテレフォニカ・ドイツが加入者数を一気に拡大し、それまで首位だったドイツテレコムが後退した。2019年には1&1ドリリッシュ(当時)が5G周波数の割当てを受け、市場競争が更に激しくなることが見込まれている。

3大事業者の事業戦略を見ると、固定とモバイル通信のバンドル化がトレンドとなっている。中でもドイツテレコムはいち早くバンドル・サービスの提供に力を入れ、「Magenta」という共通のブランド名を冠することで顧客の認知度を高め、顧客の囲い込みに成功しており、2020年3月までに470万の顧客を獲得している。類似サービスとして、ボーダフォン・ドイツは「GigaKombi」を提供し、2020年3月までに150万の顧客を獲得。一方、テレフォニカ・ドイツは「O2 Blue One」を提供している。

なお、ドイツではLTE網の構築に700MHz帯、800MHz帯、1800MHz帯、2100MHz帯、2600MHz帯が使用されている。700MHz帯については、免許条件にルーラル地域を含むカバレッジ義務により、2020年1月までに全国世帯普及率が98%以上となった。

(2)5G

5G免許に関しては、2019年3月から6月にかけて、5G用周波数(2GHz帯、3.6GHz帯)オークションが実施され、既存通信事業者のドイツテレコム、ボーダフォン、テレフォニカ・ドイツに加え、1&1ドリリッシュ(当時)が落札した。このうち、ドイツテレコムは、2019年8月にベルリン、ボン、ケルン、ダルムシュタット、ミュンヘンの5都市でサービスを開始した。2020年7月に、5G網の人口カバレッジが、国内人口の半分に相当する約4,000万人に達したことを発表した。ドイツテレコムの計画では、ドイツテレコムがブロードバンド網の更なる展開の一環として、2025年までに5Gの人口カバレッジを99%とする計画が2018年10月に発表されている。2021年までに200億EURを投資し、全国に50万kmの光ファイバ・バックボーンを敷設する。また、毎年2,000局の基地局を設置し、2021年までに3万6,000局とする。

2015年5月にはITセキュリティ法が改正され、5G機器等重要部品の審査が厳格化し、使用停止命令の基準と対象の明確化がなされた。

そのほか、ドイツテレコムは、2016年7月に、華為技術、アウディ(Audi)、トヨタ自動車と共同で、コネクテッドカー向け次世代通信技術「LTE-Vehicular(LTE-V)」の実証実験をインゴルシュタット市の公道で実施し、LTE-Vの標準化及び、5G技術を活用した自動車向けアプリケーション開発を共同推進していくことで合意したほか、ハンブルクにおける交通管制や信号、環境モニタリング、スマートグリッド等、様々な用途に5G回線を利用する計画を進めている。また、2020年4月に、エリクソン(Ericsson)と共に、アーヘン市の産業キャンパス内に設置されたセンター・コネクテッド・インダストリー(CCI)において、初となる5Gスタンドアロン・プライベート・ネットワークの試験運用を実施した。

一方、ボーダフォン・ドイツは、2019年8月に国内20都市で商用5Gサービスを開始した。同社は、2021年末までにドイツ国内2,000万人への5Gサービス提供する計画である。また、ボーダフォン・ドイツは、ボッシュ(BOSCH)や華為技術と協力して2017年2月よりバイエルン州のA9高速道路で5Gの実証実験を開始している。自動運転・コネクテッドカーの分野で5G対応C-V2X技術の研究開発を積極的に行っている。

テレフォニカ・ドイツは、5Gネットワークを2020年10月にベルリン、ハンブルク、ミュンヘン、フランクフルト、ケルンの主要5都市で運用開始した。2021年末までに人口30%、2022年末までに人口50%、2025年に全国カバレッジを計画している。既にビジネス分野での5Gパイロット・プロジェクトを進めており、ミュンヘンにおける「TechCity」プロジェクト、バイエルンにおける低周波数帯でのモバイル・カバレッジ拡充を目指す「5G Today」プロジェクト、高速道路における「コネクテッド・モビリティ」プロジェクト等、ドイツ国内で複数の5Gプロジェクトに取り組んでいる。また、2020年11月には、首都ベルリンにおいて市内初となる5Gキャンパス・ネットワーク(ローカル5Gの一種)の運用を開始した。

放送分野では、2017年5月に、ドイツ企業のKathreinやローデ・シュワルツ、公共放送協会、大学・研究機関等が5Gを活用した放送メディアについて共同研究開発を推進する「5Gメディア・イニシアチブ」を立ち上げている。

また、2018年1月には、ドイツ放送技術研究所(Institute für Rundfunkechnik:IRT)が5Gによるテレビ放送の実証実験を行うと発表しており、同8月にはベルリンで開催された総合競技大会「ヨーロピアン・チャンピオンシップス」において、「eMBMS(Evolved Multimedia Broadcast Multicast Service)」と呼ばれるマルチキャスト技術を使用したマルチメディア配信サービス等について実証実験を行った。

(3)MVNO

ドイツのMVNO市場は、中国に次ぐ世界で2番目とされている。ドイツには100社を超えるMVNOが参入しており、このうち大手事業者のサブブランドでない独立系MVNO事業者が8割を占めている。代表的なMVNO事業者は、大手のfreenet(1,090万契約、21.2%)や1&1(1,020万契約、19.4%)、その他にAldi Talk、Congstar、Blau等である。

ドイツの移動体通信加入者のうち46.6%(2021年3月現在)がMVNOサービスに加入している。民間調査会社は、MVNO事業者の方が、テレフォニカ・ドイツ、ボーダフォン・ドイツ、ドイツテレコムの3大事業者よりも顧客満足度が高いと指摘。その理由に、MVNOのシンプルで柔軟な料金プランを挙げている。2004年に初めてMVNO事業者が市場に参入して以来、サービス料金水準は大幅に引き下げられている。また、1か月単位で料金プランを変更できたり、複数SIMに対応するデータ共有プランを提供したりする等、3大事業者との差別化を図っている。

4 インターネット

BNetzAの2020年次報告書によれば、2020年の固定ブロードバンド加入者は前年比3%増の3,610万となった。

ブロードバンド回線の主流はDSLで、加入者数は、2019年の2,530万から2020年の2,540万に伸びた(シェアは70%)。DSLの成長には、VDSL/ベクタリング技術が貢献しており、DSL加入者の約60%がVDSLを契約している。DSL回線の内訳を見た場合、2020年末現在のドイツテレコムによる小売回線数は1,370万(前年1,350万)で、DSL市場の46%のシェアを占めている。

一方、ケーブルテレビ事業者が提供するインターネット接続サービスは、近年のHFC及びDOCSIS 3.1の積極的な導入により、サービスの多様化・高速化が一層進み、新規加入者を伸ばしている。2020年のケーブル・ブロードバンドの加入者数は870万(前年830万)で、うち520万(61%)が100Mbps以上の速度の固定ブロードバンドである。

FTTH/FTTB契約数は2020年に190万(前年140万)に達した。衛星通信及び固定はブロードバンド・ゼロ地域解消に重要な役割を果たしており、2020年現在2万3,000人が加入している。EutelsatやSkyDSL等がサービスを提供している。

2008年以降、ドイツテレコムは加入者流出が止まらず、2020年には同社のシェアは38.9%まで減少した。ドイツテレコムの主な競争事業者は、ボーダフォン・ドイツ、1&1(ユナイテッド・インターネット傘下、元1&1ドリリッシュ)、テレフォニカ・ドイツである。これ以外に地域の小規模事業者にテレコロンバス(PYUR)、ネットコロン(NetCologne)、1&1 Versatel、Tele2等がある。

2021年6月現在、事業者別の加入者シェアは、ドイツテレコムが38.9%、ボーダフォン・ドイツが29.8%、1&1が11.6%、テレフォニカ・ドイツが6.1%となっている。

ドイツテレコムは、VDSLからベクタリング技術と光ファイバへの移行を進めている。2022年には最大3,000か所のビジネス・パークにFTTHを供給し、ビジネス・パークの企業の80%に光ファイバを提供することを計画している。また、オールIP化が進展しており、2019年に同社の固定ネットワーク回線は完全IP化された。

ボーダフォン・ドイツは総延長40万kmを超えるHFC網を所有しており、国内13州の1,530万世帯に接続している。ボーダフォン・ドイツは2017年9月、所有するケーブルテレビ網の高速化・高度化に2021年までの4年間で約20億EURを投資すると発表。2021年末までに1,270万の一般世帯、100万のルーラル地域の世帯、そして国内2,000か所のビジネス・パーク内の企業10万社にギガビット・サービスを提供する。

Ⅵ 運営体等

1 運営体

(1)ドイツテレコム

Deutsche Telekom

Tel. +49 228 181 88880
URL https://www.telekom.de/
所在地 Friedrich-Ebert-Allee 140, 53113 Bonn, GERMANY
幹部 Timotheus Höttges(最高経営責任者/CEO)
概要

1995年1月に政府が完全所有する株式会社となり、1996年11月に株式市場へ上場し、政府保有株式の26%を放出した。その後、更に政府保有株式を放出し、2021年9月末現在、同社の株主構成比率は連邦政府が13.8%、ドイツ復興金融公庫(KfW)が16.6%、機関投資家が48.1%、個人投資家が17.0%、ソフトバンクが4.5%である。

ドイツテレコム・グループは、四つの事業部門(ドイツ、米国、欧州、システムズ・ソリューションズ)に分かれている。

ドイツ事業部門は、ドイツにおけるすべての固定と移動体通信事業を包括している。米国事業部門は、米国の移動体通信事業T-モバイルUS(T-Mobile US)を包括している。2018年4月、米国の移動体通信事業で第3位のT-モバイルUSによる第4位のスプリント(Sprint)の買収について、米国の司法省が2019年7月に承認し、連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)が、同年10月に採決し、11月に承認を発表した。この合併効果により、2020年12月の連結決算では、売上げの6割以上が米国事業となった。

欧州事業部門は、ギリシャ、ルーマニア、ハンガリー、チェコ共和国、クロアチア、スロバキア、オーストリア、ブルガリア、アルバニア、マケドニア共和国、モンテネグロの現地子会社の移動体通信事業を包括している。システムズ・ソリューションズ事業部門は、「Tシステムズ(T-Systems)」ブランドの下で多国籍企業及び政府機関向けにICTソリューションを提供している。

2014年からグループ戦略として「リーディング・ヨーロピアン・テルコ(Leading European Telco)」をスローガンに掲げ、ヨーロッパにおける主導的な電気通信プロバイダになることを目指しており、「カスタマー・エクスペリエンス」「テクノロジー」「ビジネス生産性」でリーダとなることを柱に、「一つの接続によるすべてのサービス」「ギガビット統合ネットワーク」「セキュアなICTと大規模なIoT」の実現を目標に掲げている。

ドイツテレコム・グループは2020年に主に固定及び無線通信網のアップグレードに総額170億EUR、ドイツ国内では55億EUR、米国では60億USDを投資した。また、グループの研究開発費は2020年に3,310万EURに達した。

2020年度のグループ全体(国外事業のすべてを含む)の売上高は、1,010億EUR(前年度757億EUR)であった。各サービスの国内加入者数は、2019年12月末現在、固定電話が1,782万、ブロードバンドが1,370万、移動体通信が4,619万、有料テレビが362万であった。

(2)ボーダフォン・ドイツ

Vodafone Germany

Tel. +49 800 1721212
URL https://www.vodafone.de/
所在地 Ferdinand-Braun-Platz 1 40549 Düsseldorf , GERMANY
幹部 Dr. Hannes Ametsreiter(最高経営責任者/CEO)
概要

移動体通信分野及びブロードバンド分野における大手事業者。前身のArcorは、マンネスマン(MANNESMANN)とドイツ銀行(Deutsche Bank)のジョイント・ベンチャーCNIがドイツ鉄道の電気通信子会社と合併して誕生したマンネスマンArcorを起源とする。2013年7月に、ケーブルテレビ最大手カーベル・ドイチュラントを買収し、2015年9月に事業統合を完了し有料テレビ市場に進出した。

2020年3月末現在のドイツ国内のサービス売上高は、前年比17%増の106億9,600万EURで、このうち移動体通信が47.5%(50億8,400万EUR)を占めた。各サービスの加入者数は、2020年3月末現在、移動体通信が3,005万、固定インターネットが1,078万、有料テレビが1,358万である。

(3)テレフォニカ・ドイツ

Telefonica Deutschland Holding

Tel. / Fax +49 89 24420
URL https://www.telefonica.de/company.html
所在地 Georg-Brauchle-Ring 50, 80992 München, GERMANY
幹部 Markus Haas(最高経営責任者/CEO)
概要

2006年にO2ドイツ、2013年にはオランダKPNグループのEプラスを買収して事業規模を拡大した。

2020年度のドイツ国内の売上高は前年比1.8%増の75億3,200万EURで、このうち移動体通信が70.0%(52億7,240万EUR、同0.1%増)を占めた。サービスの加入者総数は、2021年6月末現在、移動体通信が4,344万、固定インターネットが225万、固定電話が218万であった。

2021年6月末現在、テレフォニカ・ドイツ持株会社が69.2%を保有している。

2 主要メーカー

シーメンス

Siemens AG

Tel. +49 89636 00
URL https://www.siemens.com/
所在地 Werner-von-Siemens-Straße 1, 80333 Munich, Germany
幹部 Roland Busch(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

1847年創立のドイツを代表する多国籍企業である。2020年9月末現在、世界各地で従業員を約29万3,000人擁し、200か国以上に主要生産・製造工場を有するほか、世界各国に事務棟、倉庫、調査・研究施設、販売拠点等を有する。2020年度の売上高は533億EURであった。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 連邦ネットワーク庁(BNetzA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

電波監理、放送分野の技術面の規制監督を所掌する。コンテンツ規制は所掌外。担当部局は第2局である。

2 州の首相官房

放送行政は、ドイツ基本法上の規定により連邦(Bund)ではなく、16の州(Land)の首相官房(Staatskanzlei)が所管している。州間の放送政策を協議する場合は、ラインラント=プファルツ州の首相官房が幹事を務める。

3 州のメディア監督機関(Landesmedienanstalt

所掌事務

州政府から独立した商業放送の規制監督機関で、全国に14の機関がある。ベルリン州とブランデンブルク州、ハンブルク州とシュレースビヒ・ホルシュタイン州はそれぞれ共同の規制監督機関を設立しており、名称は各州によって異なる。商業放送の許認可、放送技術の研究と普及に関する支援、放送番組コンテツの監督等を任務とする。財源として放送負担金(Rundunkbeitrag)の1.9%が各州のメディア監督機関に分配される。

全国又は州を越えた問題に関しては、14の州メディア監督機関が共同で組織する州メディア監督機関連盟(Die Medienanstalten:ALM)の所管となり、規制監督等に関して全国共通の方針を規定している。

ALMは、「評議会代表者会議(Conference of Chairpersons of the Decision-Taking Councils:GVK)」「総会(General Conference:GK)」「執行役会議(Conference of Directors of the Media Authorities:DLM)」「認可監督委員会(Commission on Licensing and Supervision:ZAK)」「青少年メディア保護委員会(Commission for the Protection of Minors in the Media:KJM)」「メディア分野集中審査委員会(Commission on Concentration in the Media:KEK)」の六つの委員会で構成されている。

4 メディア分野集中審査委員会(KEK)

Tel. +49 30 2064690 61
URL https://www.kek-online.de/
所在地 Gemeinsame Geschäftsstelle, Friedrichstraße 60, 10117 Berlin, GERMANY
幹部 Prof. Dr. Georgios Gounalakis(議長/Chairman)
所掌事務

1997年1月発効の「放送に関する州間協定」の第3次改正により、マスメディア集中排除規定が設けられ、商業放送における集中度を審査するための全国組織の審査機関として同年5月に設立された。各州のメディア監督機関からは独立しており、放送法と経済法の専門家6名及び州メディア監督機関からの代表者6名で構成されている。「放送とテレメディアに関する州間協定」第26条に基づき、放送事業者の合併買収に伴って資本関係が変化し、番組配信状況が変化し、年間視聴率で30%を超える事業者、若しくは国内視聴世帯のカバレッジで25%を超え、メディア関連市場において支配的な事業者が出現する際には、社会的影響度を総合的に勘案・判断し、所掌するメディア監督機関に対して報告、助言を行う。

各州が集中排除規定の審査をする場合は、KEKの判断を仰ぎ、従う義務がある。不服があれば第2審としてDLMの審査を仰ぐことが可能で、KEKの判断を4分の3の多数採決で覆すことができる。州はDLMの判断を順守する義務がある。

5 公共放送の財源需要審査委員会(KEF)

Tel. +49 6131 16 4709
URL https://kef-online.de/
所在地 KEF, Geschäftsstelle Peter-Altmeier-Allee 1 55116 Mainz, GERMANY
幹部 Dr. Heinz Fischer-Heidlberger(議長/Chairman)
所掌事務

放送負担金額の決定プロセスから政治的な影響を排除するために設立された独立委員会。16人の委員で構成され、公共放送の4年間の事業計画を審査し、放送負担金の値上げの必要性、金額、時期について、2年ごとに州政府に答申を提出する。州政府は政治不介入の観点から、十分な理由がない限り、答申の金額を変更することは認められない。

Ⅱ 法令

1 ドイツ連邦共和国基本法(Basic Law for the Federal Republic of Germany

1990年の東西ドイツの統一に伴い、それまで東西異なる体制で行われてきたドイツの放送監督制度は、1992年1月に、旧西ドイツの放送制度を基礎に統合され、放送事業は基本法(憲法)により州の所掌と規定された。第5条で、表現の自由、知る権利、放送及びフィルムによる報道の自由等、国民の基本権に関して規定している。

2 州公共放送法

ドイツ公共放送連盟(Association of Public Broadcasting Corporations of Germany:ARD)、ARDに加盟する九つの州放送協会(Landesrundfunkanstalt)、第2ドイツ・テレビジョン協会(Second German Television:ZDF)については、各州が制定した「州公共放送法」(名称は州によって異なる)、又は「ARD/ZDFに関する州間協定」が適用される。ただし、放送事業者の事業地域が複数の州にまたがっている場合は、「州公共放送法」ではなく、州間協定の形をとる。内容はいずれも各放送事業者の設立、業務、放送番組、組織、職員の権限、財務、監査等についての規定である。

3 州商業放送法

商業放送の許認可や番組コンテンツ等について規制するほか、州メディア監督機関の任務、組織、財源等についても規定している。名称は州により異なる。

4 放送とテレメディアに関する州間協定(Interstate Treaty on Broadcasting and Telemedia:RStV)

通称「放送州間協定」。東西ドイツ統合後、1991年8月31日に、「放送に関する州間協定(RStV)」が締結された。2007年の第9次改正によりテレメディアに関する規則が盛り込まれ、この名称に変更された。RStVは、ドイツにおける放送に関する基本的な法律として位置付けられ、各州の放送法の共通原則を定めている。第1章で一般規則、第2章で公共放送、第3章で商業放送、第5章でプラットフォーム事業者、第6章でテレメディアに関する規定を定めている。RStVは度々改正されているが、第15次改正では、受信料制度が見直され、従来の受信機単位の徴収から世帯単位への変更を図った。また、受信料(Rundfunkgebühr)が「放送負担金」という名称に切り替わるとともに、「放送受信料に関する州間協定」も「放送負担金に関する州間協定(Interstate Agreement on the Financing of Broadcasting:RFinStV)」に名称が変更された。

その他、16州政府は2019年12月、現行の放送法に、検索エンジン、SNS、AI音声アシスタント等、情報・コミュニケーション・サービスに対する規制を組み込んだ新法「メディア州間協定」の法案を決議した。検索エンジン、動画共有プラットフォーム、SNSに対して、コンテンツの収集・選別・提示の基準やアルゴリズムの仕組みについての情報開示を義務付け、特定のコンテンツを正当な理由なく差別的に扱うことを禁じる内容となっている。また、多くのメディア関連のアプリやコンテンツを選択・利用できるスマートテレビやAmazon Alexa等のAI音声アシスタントに対し、公共的価値のあるものを見つけやすく提示するよう義務付ける。法案は、2020年10月末、すべての州議会で承認された。なお、メディア州間協定はRStVに代わることとなる。

5 ドイチェ・ヴェレ法(Deutsche-Welle-Gesetz

国際放送を実施するドイチェ・ヴェレ(DW)に関する設立や役割等について規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

旧西ドイツでは、1984年1月に開始されたケーブルテレビの放送実験に商業放送事業者の参入が認められ、1986年11月には連邦憲法裁判所が商業放送を合憲と裁定した。更に1987年3月には、放送制度の再編成に関する州間協定が成立し、公共放送と商業放送の併存を目指す新放送体制が制度的に確立された。

旧東ドイツでは、1991年4月にザクセン・アンハルト州が最初に「商業放送法」を州議会で可決し、同6月にザクセン州、同7月にメクレンブルク・フォアポンメルン州及びチューリンゲン州がそれぞれ「州商業放送法」を成立させ、旧西ドイツと同じく、公共放送と商業放送の併存体制が確立された。

2 所有規制

放送州間協定の第26条では、25%以上の出資又は議決権を持つ企業は、視聴シェアが年平均30%以上あるテレビ局への資本参加は不可としている。また、出版・新聞等のメディア関連市場で支配的地位を占める企業が、視聴シェアが年平均25%以上あるテレビ局へ資本参加することも不可としている。

3 放送負担金制度

ドイツでは公共放送の財源は、受信料、広告収入、スポンサーシップで構成されてきたが、2013年1月から受信料に代わり放送負担金という形で徴収されることになった。新制度では、世帯の人数や受信機の所有台数に関係なく、すべての世帯から一律の金額が徴収される。

一般世帯については、住居ごとに放送負担金1件分が徴収される。生活保護、失業保険、連邦奨学金等の受給者及び盲ろう者は支払いが免除される。事業所については、従業員数に応じて支払額が異なる。また、営業車には2台目以降から1台につき3分の1の額が課される。学校や福祉施設等の公益施設は、従業員数に関係なく3分の1の額を支払う。

放送負担金の徴収額は、KEFの答申に基づいて16州の首相が決定し、その後全州の議会の同意を得て発効する。改定は通常4年ごとに実施する。放送負担金の金額は、新制度に移行した最初の2年間(2013年と2014年)はこれまでテレビ所有世帯に課せられていた受信料と同額の月額17.98EURが徴収された。2015年から2016年末までは、超過収入が出ると予測されたため0.48EUR値下げして月額17.50EURとし、その後、2016年10月には、同金額を2020年まで据え置くことが決定された。この据え置きにより余剰収入が発生する場合は、公共放送に積立てを義務付け、次回の改定時の値上げ幅を抑えるために使うこととした。

なお、放送負担金の軽減を目的とした改正が、2017年1月1日に発効された。主な改正点は、免除申請手続の簡便化、従業員数に応じた事業所の支払いについて非常勤従業員の常勤換算を認める、支払免除の親と同居する子どもについて支払義務の開始年齢を18歳から25歳に引き上げる、等である。

州政府では、2021年以降の放送負担金を値上げする必要があるとの見解を示しており、公共放送への任務委託の方法と、放送負担金の額の改定手続の見直しのための検討グループを2018年1月に設けている。同検討グループでは、公共放送の任務を情報、文化、教養に制限すること、サービス詳細に関する法令規定をやめ、公共放送事業者に柔軟な経営の余地を与える、放送負担金の料額を物価指数に応じて変動させる等を検討している。

放送負担金の徴収業務は、「ARD・ZDF・ドイチュラントラジオ負担金サービス(Contribution Collection Service for Public Broadcasting ARD, ZDF and Deutschlandradio)」が行う。未登録や不払いが発覚した場合には、行政上の強制執行による徴収、あるいは1,000EUR以下の罰金が課せられる。

2019年度の放送負担金の収入額は80億6,810万EURで、そのうちの70.4%がARDに、24.9%がZDFに、2.9%がドイチュラントラジオに、1.9%が州メディア監督機関に分配された。

4 公共放送の広告放送とスポンサーシップ

ARDの第1テレビ及びZDFにおいて、1日平均20分までの広告放送が認められているが、平日午後8時以降と日曜・祝日は認められていない。プロダクト・プレースメントは禁止されている。番組のスポンサーシップも認められているが、ニュース及び政治的時事番組では禁止されている。また、政治団体あるいは宗教団体がスポンサーとなることは禁止されている。インターネットでの広告・スポンサーシップも禁じられている。スポンサーシップが付いている番組は番組の冒頭と終わりに資金提供を受けている旨が明示される必要がある。広告放送とスポンサーシップがARDとZDFの総収入に占める割合は、2018年でARDが7%(2017年7%)、ZDFが9%(2017年7%)であった。

5 コンテンツ規制

「放送州間協定」「州公共放送法」「州商業放送法」が番組指針、番組基準等に関して規定している。特に人権の尊重と青少年の保護を重視しており、①人種的憎悪、非人間的な暴力行為、人間の尊厳の侵害等を促進、②戦争賛美、③猥褻表現、④青少年へ道徳的に悪影響を及ぼすもの等を禁止している。また、青少年の心身両面に悪影響を与える番組の放送は原則として禁止されているが、放送時間や他の方法の調整により、放送が認められる。「青少年保護法」により、16歳未満禁止の映画は、午後10時~午前6時まで、また18歳未満の青少年に禁止されている映画は、午後11時~午前6時までは放送が認められている。

商業放送については、RTL、サット1(Sat.1)、スカイ(Sky)等が共同で立ち上げた自主規制機関「German Association for Voluntary Self-Regulation of Television(FSF)」がテレビ放送とインターネット上の番組コンテンツについて審査とレーティングを行っている。

また、2020年4月、「放送州間協定」に、検索エンジン、SNS、AI音声アシスタント等に対する規制を組み込んだ「メディア州間協定」が組み込まれた。その中では、大手デジタル・プラットフォーム事業者に対し、コンテンツ収集・選別・提示の基準やアルゴリズムの仕組みについての説明義務、特定コンテンツの差別禁止等を規定している。

6 地上デジタル放送

ドイツでは、2002年11月にベルリン/ポツダム地区で地上デジタル放送の本放送が開始された後、州ごとに地上デジタル放送が導入され、2008年11月のバイエルン州北部を最後に地上デジタル放送への移行が完了し、それに伴い地上アナログ放送が廃止された。

公共放送は、ARDの第1テレビ(Das Erste)や第3チャンネル、ZDFのほか、様々な専門チャンネルを組み合わせて、全国で放送している。一方、商業放送のRTLグループとプロジーベンザット1(ProSiebenSat.1)は、人口の多い都市部で地上デジタル放送を実施している。

2016年5月から地上デジタル放送の次世代規格であるDVB-T2方式への移行が始まった。全国18の都市部でHD試験放送が開始され、2017年3月27日にHD本放送へ移行した。ALMがデジタル放送の進捗状況をまとめた「Digitisation in Germany」によると、2021年9月現在、地上デジタル放送を視聴している世帯は、テレビ視聴世帯数3,850万世帯のうち、6.7%(前年6.3%)であった。なお、商業放送のHD放送は、地上放送の送信義務を請け負う伝送路事業者Media Broadcastが運営する有料プラットフォーム「freenet TV」上で提供されている。Media Broadcastは、かつてドイツテレコムの子会社だったが、2008年1月にフランスの同業TDFに売却された後、2016年3月からドイツの通信事業者freenetの100%子会社となっている。

また、2019年議会でのTKG改正により、2020年12月以降に製造される自動車に搭載されるカーラジオは地上デジタルラジオを受信できなければならない。また、その他のラジオでもインターネット・ラジオを含む何らかのデジタルラジオを受信できなければならない。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

公共放送は、ドイチュラントラジオが全国向けにDeutschlandfunk(FM、ニュース・情報中心)、Deutschlandradio Kultur(FM、文化・教養中心)、インターネット・ラジオ専門局のDeutschlandfunk Nova(青年向け教育中心)の3系統で放送している。また、ARDの州放送協会が各州で4~8系統の放送を行っており、ARD全体でFM放送53系統、DAB+放送68系統の放送を行っている。

商業放送は、全国向け衛星ラジオや州域・地域向けFM局を合わせて全国に300近くある(2017年現在)。全国向け衛星ラジオ局は約20局あり、代表的なラジオ局としてRTLラジオやKlassik Radio等がある。ラジオ放送の多くが衛星、ケーブル、インターネットで同時放送されている。

国際ラジオ放送は、DWが短波、AM・FM、DRM(Digital Radio Mondiale)、衛星、インターネットにより30言語で実施している。

デジタルラジオは、放送技術の規格にDAB+方式を採用しており、2011年8月に放送が始まった。DAB+放送は現在、全国・州域・地域放送合わせて約250系統で放送されている。2019年6月時点で、DAB+放送の視聴世帯数は全世帯の27.0%(前年は17.0%)であった。

アナログのFMラジオ放送は2015年までに終了することとされていたが、2011年10月のTKG改正により、2025年まで延長されることとなった。

2 テレビ

公共放送の全国放送は、九つの州放送協会によって構成されるARDが1系統(第1テレビ)、ZDFが1系統の計2系統で実施している。これに、ドイツとフランスの機関が共同出資しているARTEがぞれぞれの国で放送を行っている。ドイツ側の機関はARDとZDFが50%ずつ出資するARTE Deutschland社で、フランス側はフランス・テレビジョン(45%)、フランス政府(25%)、ラジオ・フランス(15%)、フランス国立視聴覚研究所(15%)が出資するARTE France社。ARTEは1992年に放送を開始し、主にヨーロッパ文化・教養に関する番組をドイツ語、フランス語、英語、スペイン語、ポーランド語、イタリア語の6か国語で放送している。2019年のARTEの事業収入は1億3,765万EURで、ドイツの放送負担金及びフランスの公共放送負担税による収入が96%を占めた。

商業放送は、RTLグループとプロジーベンザット1の2大メディア・グループが全国の都市圏でそれぞれ4~5チャンネルで放送している。これ以外に地域放送局が172局ある。地上テレビ放送の視聴世帯数は極少数であることから、伝送路としての地上波は補完的な役割にとどまっており、衛星放送とケーブルテレビが主な基幹伝送路として使用されている。

テレビ国際放送は、DWが1953年にARDの1サービスとして開局したが、1960年に「ドイチェ・ヴェレ法」が制定され、海外向け放送を任務とする独自の公共放送として位置付けられた。2012年2月には、テレビ・サービスを全面的に刷新し、英語のみの基本チャンネルと、対象地域に合わせて英語、ドイツ語、スペイン語、アラビア語から2言語を時間帯別に使用する地域チャンネルを設けた。基本チャンネルは、24時間英語のみで、南米大陸を除く全世界で放送する。地域チャンネルは、欧州向けが英語18時間とドイツ語6時間、北米向けとアジア向けがドイツ語20時間と英語4時間、中南米向けがスペイン語20時間とドイツ語4時間、中東・北アフリカ向けがアラビア語10時間と英語10時間で放送する。

3 衛星放送

ほとんどの放送事業者は、ルクセンブルクの衛星運用事業者SESアストラ(SES ASTRA)の衛星を使用して衛星放送を行っている。公共放送のARDとZDF、商業放送大手のRTLグループとプロジーベンザット1等が無料放送を行っている。有料プラットフォーム事業者は、英国スカイの子会社スカイ・ドイチュラント(Sky Deutschland)とSESアストラのHDプラス(HD+)がある。なお、衛星アナログ放送は2012年4月に終了している。

4 ケーブルテレビ

ケーブルテレビは、衛星放送と並び、ドイツで最も利用されているプラットフォームの一つである。ケーブルテレビは、2019年3月にドイツ全土でデジタル移行がほぼ完了した。

ケーブルテレビ事業者には地域網から複数の州にまたがる広域網までを一手に運営する大手事業者であるボーダフォン・カーベル・ドイチュラント(Vodafone Kabel Deutschland)とユニティメディアの2社のほかに、大手事業者から受けた信号を加入者に小売りする小規模事業者が多数あり、更に小規模事業者が統合して成長した独立系の中規模事業者(テレコロンブス等)等がある。

ボーダフォン・カーベル・ドイチュラントは、ボーダフォン・ブランドの下、固定・移動体通信、インターネット、ケーブルテレビ・サービスをバンドルして提供している国内1位のケーブルテレビ事業者である。ボーダフォン・ドイツが2013年10月にカーベル・ドイチュラントを買収した後、2015年9月に完全統合し、社名をボーダフォン・カーベル・ドイチュラントに変更した。

2018年5月、ボーダフォン・カーベル・ドイチュラントの親会社である英国のボーダフォン・グループ(Vodafone Group)は、リバティ・グローバル(Liberty Global)からドイツのユニティメディアを含む、チェコ共和国、ハンガリー、ルーマニアの4か国のケーブルテレビ事業を取得することで合意し、買収額は総額184億EUR。同社はこの合併で16州すべてでケーブルテレビ網を運営している。同買収については、ボーダフォン・グループは、2019年7月に欧州委員会の承認を得た。

Ⅴ 運営体

1 ドイツ公共放送連盟(ARD)

Association of Public Broadcasting Corporations of Germany

Tel. +49 30 8904313 11
URL https://www.ard.de/
所在地 Masurenallee 8-14, 14057 Berlin, GERMANY
幹部 Patricia Schlesinger(会長/Chairman)
概要

九つの州放送協会及び国際放送実施機関が加盟する連合体で、各州放送協会の共通の問題を調整・処理することを目的とする。その他、全国向け共通番組の各州放送協会に対する制作割当等を所掌する。1年ごとに輪番制で幹事協会が選出され、幹事担当協会の会長がARD会長となり、総会等の業務を取りしきる。加盟放送局の会長の毎年輪番制であるADR会長は、2021年1月からベルリン・ブランデンブルク放送協会(Rundfunk Berlin-Brandenburg:RBB)会長のPatricia Schlesinger氏が務めている。2018年度のARD全体の総収入は66億920万EURで、放送負担金収入が85.0%(55億9,960万EUR)を占めた。

ARD傘下の各州放送協会の最高機関は放送評議会で、社会各層を代表する委員で構成される。委員の数・任期等は放送機関により異なる。放送評議会は、会長の任免等人事に関する権限のほか、放送番組全般についての州放送協会会長への助言、番組基準の順守についての監督、予算及び決算の承認等、協会の基本的な業務について審議し、決定する。各州放送協会の業務執行の最高責任者は会長で、放送評議会が任命する。

2 第2ドイツ・テレビジョン(ZDF)

Second German Television

Tel. +49 0 6131 700
URL https://www.zdf.de/
所在地 Zweites Deutsches Fernsehen, 55100 Mainz, GERMANY
幹部 Dr. Thomas Bellut(会長/Director)
概要

全国を対象にテレビ放送を行う公共放送機関である。ZDFは、77名の多様な社会層を反映する委員で構成されるテレビ評議会を最高機関としている。テレビ評議会は、ZDFの基本的業務を審議し、決定を行っている。具体的には会長の任免等の人事、放送番組全般に関する会長への助言、番組基準の順守についての監督、予算及び決算の承認等である。なお、ZDF代表であり運営に関する最高責任者は会長で、テレビ評議会が任命する。2018年度のZDFの総収入は22億2,710万EURで、放送負担金収入が85.4%(19億300万EUR)、広告収入が7.9%(1億7,600万EUR)を占めた。なお、ZDFの内部監督機関であるテレビ評議会は、2021年7月、2022年3月に退任する現会長トーマス・べルートの後任として、ノルベルト・ヒムラーを選出した。

3 ベルテルスマン

Bertelsmann

Tel. +49 5241 800
URL https://www.bertelsmann.com/
所在地 Carl-Bertelsmann-Strasse 270, 33311 Gütersloh, GERMANY
幹部 Thomas Rabe(会長兼最高経営責任者/Chairman and CEO)
概要

出版社から発展した総合メディア企業であり、傘下に新聞・雑誌、出版、音楽、放送事業等を抱えている。ベルテルスマン財団(Bertelsmann-Stiftung)が同社の80.9%の株式を所有し、残りの19.1%を同財団の創設者であるモーン家(Mohn family)が所有している。

放送関係では、ベルテルスマンの子会社CLT/Ufaが2000年に英国のピアソンTV(Pearson TV)と合併してRTLグループを発足させ、ベルテルスマンがその筆頭株主(株式の75.1%を所有)となっている。RTLグループは60のテレビ局と30のラジオ局を所有する欧州最大のメディア・グループであり、国内では傘下の全国向けテレビ放送事業者RTL Television、RTL2、VOX、SuperRTL等がサービスを提供している。

4 ボーダフォン・カーベル・ドイチュラント

Vodafone Kabel Deutschland

Tel. +49 800 27 87 000
URL https://kabel.vodafone.de/
所在地 Betastrasse 6-8, 85774 Unterföhring, GERMANY
幹部 Andreas Laukenmann(会長兼CEO/Chairman (CEO))
概要

国内13州でサービスを提供する最大手のケーブルテレビ事業者である。2013年7月に、ボーダフォン・ドイツが約77億EURで国内ケーブルテレビ最大手のカーベル・ドイチュラントを買収することで合意し、公開買付を開始した。2013年9月には欧州委員会がこの買収を承認した。設立以来カーベル・ドイチュラントという名称だったが、2015年9月に完全統合され、社名も変更された。2018年5月、ボーダフォンは、リバティ・グローバルからユニティメディアを買収した。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)連邦デジタル・交通省(BMDV)

(通信/Ⅰ-3の項参照)

所掌事務

電波監理はDG局(デジタル社会)DG12課(周波数政策)が担当する。

(2)連邦ネットワーク庁(BNetzA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

公共安全及び放送用を含む周波数割当、電波干渉のない効率的な周波数利用、通信機器の基準認証、技術標準の調整等を所掌。

2 標準化機関

(1)ドイツ標準化協会(DIN)

German Institute for Standardization

Tel. +49 30 2601 0
URL https://www.din.de/
所在地 Saatwinkler Damm 42/43, 13627 Berlin, GERMANY
幹部 Dr. Albert Dürr(会長/President)
所掌事務

1917年設立。映像機器、スポーツ器具、食品関連器具、電気機器等の標準化を規定したドイツ連邦規格「DIN規格」を制定する。

(2)DIN/VDEドイツ電気・電子・IT委員会(DKE)

German Commission for Electrical, Electronic and Information Technologies of DIN and VDE

Tel. +49 69 6308 0
URL https://www.dke.de/
所在地 Stresemannallee 15, 60596 Frankfurt am Main, GERMANY
幹部 Roland Bent(会長/Chairman)
所掌事務

DINとドイツ電気技術者協会(Association for Electrical, Electronic and Information Technologies:VDE)の合同組織として創設され、IEC(International Electrotechnical Commission)、CENELEC(European Committee for Electrotechnical Standardization)、ETSI(European Telecommunications Standards Institute)等における電気技術及び電気通信にかかわる標準化作業を所掌する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

BNetzAは、電波監理の分野では、効率的で干渉のない周波数利用を放送用を含む周波数帯で実現することを目的に掲げる。また、連邦議会及び連邦参議院からの各16名で構成される同庁の諮問委員会は、周波数オークションの規則、周波数分配計画等に関して提言を行う。

2 周波数分配

周波数管理については、TKG第5章第1節に規定される。その目的は「周波数の効率的かつ干渉のない使用を保証し、全国周波数分配表及び周波数利用計画を作成・管理」することにある。BNetzAは、連邦国防省(Federal Ministry of Defence:BMVg)に責任のある周波数以外の利用を所掌する。このために、「周波数利用計画(National Frequency Usage Plan)」を策定し、周波数分配を行っている。周波数割当では、需要が多い場合にはオークションを採用することができる。また、周波数免許の2次取引も認められている。

具体的な周波数割当の所管は、以下のとおりである。

このほかに、「EU指令(2002/20/EC)」に基づく、一般認可(General Authorization)による周波数割当(IMSバンド、短距離無線機器、WLANを含む免許不要局等)制度がある。

3 周波数オークション

BNetzAは、2015年5月から6月にかけて、700MHz、900MHz、1800MHz及び1500MHz(1452-1492MHz)帯のマルチバンド・オークションを実施した。オークションにかけられたのは、700MHz帯(30MHz幅×2)、900MHz帯(35MHz幅×2)、1500MHz帯(40MHz幅×1)及び1800MHz帯(50MHz幅×2)の合計270MHz幅で、既存の移動体通信事業者3社(テレフォニカ・ドイツ、ドイツテレコム及びボーダフォン・ドイツ)が、総額50億8,100万EUR(57億5,000万USD)で落札した。900MHz帯は落札できる周波数量が1社当たり最大15MHz幅×2(ペアバンド)までの周波数キャップが課された。700MHz帯はカバレッジ義務が課され、最低10Mbpsの下り回線速度のサービスの世帯普及率を、免許付与後3年以内に、全国で98%、各州で95%、都市で99%、自動車高速道路(Bundesautobahn:BAB)・鉄道で100%に引き上げることとされた。落札事業者3社が2020年1月にBNetzAに報告した達成状況は、全国平均でドイツテレコム98.1%、ボーダフォン・ドイツ98.6%、テレフォニカ・ドイツは84.3%であった。その他、州レベル、道路・鉄道でのネットワーク・カバレッジは以下のとおりである。

なお、BNetzAは、3事業者すべてがカバレッジ要件を完全に満たしていなかったため2020年末まで猶予期間を与えるとともに、中間目標を設定した。同年8月、BNetzAはテレフォニカ・ドイツ及びドイツテレコムがこの中間目標をクリアした旨を発表している。

なお、700MHz帯は、既存の地上デジタル放送の放送規格がDVB-T2方式へ移行することによって開放されたもので、ドイツが欧州初の700MHz帯オークション実施国となった。1500MHz帯(1452-1492MHz)は、衛星デジタル音声放送(Satellite Digital Audio Broadcasting:S-DAB)から移動/固定通信ネットワーク(Mobile/Fixed Communications Networks:MFCN)へ用途が変更されたもので、欧州郵便電気通信主管庁会議(European Conference of Postal and Telecommunications Administration:CEPT)の電子通信委員会(Electronic Communication Committee:ECC)決定に従って、追加の下り回線(Supplemental Downlink:SDL)での利用が期待されている。

900MHz帯及び1800MHz帯は、2016年12月31日に免許期限を迎えるGSM免許で、その再割当に当たって、ドイツではオークションが採用された。900MHz帯については、1事業者が落札できる最大周波数量に、15MHz幅×2の上限が課せられたことから、オークション後の3社間の周波数保有量は均衡しており、テレフォニカ・ドイツ/Eプラスは900MHz帯の買戻しには成功した。一方で、1800MHz帯については、保有していた70MHz幅のうち20MHz幅を獲得したのにとどまり、50MHz幅を手放す結果となった。代わって、1800MHz帯を大量に落札したのがボーダフォン・ドイツで、40MHz幅を落札し、それまで10MHz幅しかなかった1800MHz帯の増強に成功した。このボーダフォン・ドイツの買増戦略によって、1800MHz帯が他の帯域に比べて高騰したとされている。700MHz帯、900MHz及び1500MHz帯は、1ロット当たりの平均落札額が最低価格の2倍強であるのに対して、1800MHz帯は6倍以上と高値が付いた。

4 5G周波数

BNetzAは2017年6月、5G用途の周波数に関する枠組文書を公表した。文書では投資の確保やセキュリティ計画と併せて、5Gへの割当てが可能な周波数帯が記載されており、具体的には2GHz帯の60MHz幅×2(1920-1980MHz/2110-2170MHz)と3.4-3.8GHz帯が挙げられている。

また、BNetzAは、5Gインフラストラクチャの展開に適した周波数として、2GHz帯や3.4-3.8GHz帯だけでなく、700MHz帯(センターギャップ)、26GHz帯及び28GHz帯を挙げており、追加的な将来の周波数としては、450MHz帯、1.5GHz帯の拡大、2.3GHz帯を候補として挙げている。

(1)5G周波数オークションの実施

BNetzAは2018年11月、2GHz帯及び3.6GHz帯の5G向け周波数オークション関連規則の最終案が承認されたことを発表し、2019年3月からオークションを実施した。2GHz帯は、2000年及び2010年にオークションによって割り当てられた帯域で、前者は2020年末に、後者は2025年末に免許期限を迎えるもの。BNetzAは、当該帯域の再割当に当たり、免許期限の異なる免許を、1920-1980MHz/2110-2170MHzの連続した帯域として、合計12ブロック(5MHz幅×2×12ブロック)を一斉にオークションにかけた。3.6GHz帯(3400-3420MHz、3420-3700MHz)は合計29ブロック(20MHz幅×1ブロック、10MHz幅×28ブロック)をオークションにかけた。52日間で全497ラウンドに及んだオークションは2019年6月に終了し、4事業者が割当てを受けた。

落札者は以下を達成する義務を負うが、既存の割当済みの周波数を使用することができる。

これらの義務を達成するのに当たり、ローミングやインフラ共用に関して、ネットワーク事業者から要請があった場合には、電気通信関連法及び独占禁止法の制限内で、非差別的にかつ即座に交渉を開始しなければならない。ローミングは、既存のネットワーク事業者と新規事業者間の全国ローミングと、既存ネットワーク事業者間の地域ローミングに区別される。また、インフラ共用とは、ネットワーク要素(ロケーション共有から周波数プールまで)を共同で開発・共有するもので、競争法及び独占禁止法を順守することを条件に、協力協定の締結を通じて他の事業者と共同で経済的にネットワークを拡大できる。インフラ共用によって、将来にわたってネットワークの拡大が見込めない農村地域において、費用対効果のあるネットワークを整備することが可能となる。

(2)ローカル5Gの割当て

5G向け周波数として3.6GHz帯に属する3.7-3.8GHz帯や26GHz帯(24.25-27.5GHz)の一部は、ローカル5Gアプリケーション向けに地域免許として割り当てられる方針である。ローカル・アプリケーション向けの周波数を用いることで、経済及び社会のデジタル化を促進し、革新的なソリューションに注力し、多様なキャンパス・ネットワーク(構内網)の機会を創出し、Industry 4.0等、先端ICT分野でドイツが先駆的な役割を果たすことが期待されている。

上記帯域のうち3.7-3.8GHz帯について、BNetzAは2019年11月、ローカル5G免許の申請手続を開始した。2021年12月現在、181件の申請があり、179件の免許人に付与している。当該帯域は、主としてインダストリー4.0の分野で使用できるほか、農業や林業等でも使用できる。免許申請は、土地や建物の所有者やその賃借人等が行うことができ、電子申請によって実施される。また、周波数の割当てには、周波数の最適かつ効率的な使用を確保するために、割当料が課せられる。料額は以下の計算式に従うため、要求する帯域幅や対象エリアの面積によって異なる。

計算式 = 1,000 + B * t * 5 *(6 a1 + a2

26GHz帯(24.25G~27.5GHz)もローカル5Gに限らず、技術中立で2021年1月から免許申請受付している。2021年12月現在、9件の申請があり9件の免許が交付されている。

5 周波数割当計画「Spectrum Compass 2020

BNetzAは、2020年8月、今後の周波数割当計画をまとめた「Spectrum Compass 2020」を公表した。2025年末及び2033年末に免許期限を迎え、再割当が予定される帯域を示すことで、通信事業者をはじめ、ICT業界のステークホルダーが効果的な投資計画を立てることができるようにすることを目的としている。BNetzAは、同年10月23日までパブリック・コメントを受け付け、それを踏まえ、今後、以下の周波数割当手続を策定する予定である。

また、将来の高性能モバイル・ネットワークに活用するために、800MHz帯、1.8GHz帯、及び2.6GHz帯についての再割当に係るコンサルテーションが実施され、意見公募が2021年8月に締め切られた。特にこれらの帯域の活用は、農村地域では、ブロードバンドのカバレッジを改善することに主眼が置かれている。

6 電波監視体制

TKG第64条で、周波数使用に関する監視及び業務停止命令を規定している。同条に基づき、BNetzAが無線監視・検査業務(Radio Monitoring and Inspection Service:PMD)を実施している。周波数の効率的かつ干渉を受けない利用を確保し、電磁環境の保全を目的として、全国のBNetzA支所にある固定及び移動監視装置によって電波監視が行われている。宇宙通信用周波数帯の監視業務を目的に、BNetzAはライン川に近いリーハイムに12mのパラボラアンテナを含む大規模な施設を所有している。同施設は宇宙通信への干渉源となる人工衛星の位置決定機能も持つ。また、欧州各国への宇宙電波監視データの提供も行っている。

7 電波利用料制度

TKGに基づき徴収される電波利用料には、周波数割当手数料と周波数保護分担金があり、徴収権限はBNetzAにある。徴収の詳細は「周波数割当手数料令(Frequency Fee Ordinance:FGebV)」及び「周波数保護分担金令(Frequency Protection Contribution Ordinance:FSBeitrV)」で規定される。周波数割当手数料は、周波数割当に必要な公的業務の費用及び経費で、周波数保護分担金は、効率的で干渉のない周波数を確保するために必要な対策費に、試験及び電磁適合性の研究を含む周波数利用の計画及び維持に関する費用を加えたものである。それぞれ、毎年賦課される。電波利用料は、BNetzAの運営費の回収を目的として徴収され、国庫に納入される。BNetzAには、連邦財務省から年間予算が与えられる。

8 電波の安全に関する基準

電波の安全性に関する事項は、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(Federal Environment Ministry:BMU)及びBMWiが所掌している。電磁界における人体のばく露に関する制限値について、BMUが電磁界規制の基本法令「連邦環境汚染防止法」と「連邦環境保護規則の第26実施政令」で定めている。これらの規制値はICNIRPの基準に沿ったものとなっている。

BNetzAは免許を付与したすべての送信局の電磁環境に関するデータベースを維持し、公開している。また、EUの「電磁両立性に関する指令(2014/30/EU)」及びその国内法によって、継続的に全国の電磁環境をモニターするとともに、無線端末機器の電磁環境特性を独自に試験している。

Ⅲ 周波数分配状況

周波数分配(周波数利用計画)は、以下のURLから入手できる。