ガーナ共和国(Republic of Ghana)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 通信省(MOC)

Ministry of Communications

Tel. +233 302 666465
URL http://www.moc.gov.gh/
所在地 5th & 6th Floors, MOC Office Complex, Abdul Diof Road, Ridge, Accra, GHANA
幹部 Ursula Owusu-Ekuful(大臣/Minister)
所掌事務

ICTインフラ及びサービスの発展による知識社会の確立を目的に、ルーラル地域への情報通信サービスの普及、公共機関の電子サービスへのアクセス機会の拡大、消費者保護、ICT産業の競争促進等にかかわる政策策定を所掌する。

2 国家通信機関(NCA)

National Communications Authority

Tel. +233 0 372 776621
URL https://nca.org.gh/
所在地 P.O. Box CT 1568, Cantonments, Accra, GHANA
幹部 Joe Anokye(長官/Director General)
所掌事務

1996年に設立され、「2008年国家通信機関法」により所掌が明確化された。通信事業者規制機関として、通信事業免許付与、事業者間競争管理、サービスの質の監督、気象資源管理、消費者保護、機器の型式認定等を所掌する。

Ⅱ 法令

1 2008年国家通信機関法(National Communications Authority Act, 2008

NCAの設立条件と規制対象を規定している。

2 2008年電子通信法(Electronic Communications Act, 2008

通信事業者への免許付与条件、相互接続、ルーラル地域へのサービス、消費者保護等の規制の詳細を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「2008年電子通信法」第5条により、通信網の運用事業者には個別免許、付加価値サービス、再販その他NCAがクラス免許の取得が必要と判断する通信サービス事業者にはクラス免許の取得が要される。同9条により、周波数を利用するサービスの提供に際しては、別途周波数利用許可の取得が必要である。

外資規制については、国内資本の割合が70%以上であることが求められる。

2020年9月現在、NCAサイトで公表された各種免許取得事業者数は、固定・移動電話:4、ISP:52、BWA:5等である。

2 競争促進政策

(1)相互接続

「2008年電子通信法」第20条は、通信網運用免許を有する事業者は、NCAの指定する条件に従い、他の通信網運用事業者からの相互接続の要求に応じることを義務付けている。契約条件につき、双方が合意に至らなかった場合は、規制機関が介入し、料金その他の条件を調整することとなる。

(2)卸売提供制度とMVNO促進政策

「2008年電子通信法」第21条は、通信網運用事業者は他の通信事業者あるいは公的機関から、自社の設備へのアクセスを求められた場合、容量の不足以外の理由でこれを拒否することはできないとしている。アクセスの期間、料金、利用条件については、規制機関が基準を定める。

MVNOについては、2013年から導入が図られ、NCAが2015年に参入に関する公募を行ったものの、2020年半ばまで事業者の参入はない。

(3)支配的事業者規制

「2008年電子通信法」第20条は、規制機関が相互接続条件の監査等において、市場支配的事業者を指定することができるとしている。市場支配的事業者には、当該の市場における相互接続要求への非差別的条件での受入れ、コストベースの料金設定、接続条件の公開等の義務が課せられる。

3 情報通信基盤政策

ユニバーサル・サービス

「2008年電子通信法」第23条により、規制機関の指定する市場の支配的事業者にはユニバーサル・サービス義務が課せられる。

ユニバーサル・サービスの内容は、①公衆電気通信サービス、②無料の電話番号案内、③緊急通信、④障がいを持つ人々のための受信サービスとされ、①の内容については、規制機関が時宜に応じて定めるとされている。ユニバーサル・サービス事業者の指定及びサービス期間については、NCAの決定による。ユニバーサル・サービスの財源は、同法第32条~第33条により、通信事業免許を有する事業者からの拠出金等による基金とされている。

同法第24条はユニバーサル・アクセスについて規定しており、ルーラル地域を中心にブロードバンド接続、移動体通信及び放送の人口カバー、公共・医療・教育機関でのインターネット接続をその内容としている。規制機関は特定の地域のサービス利用者に対し、アクセス・サービス提供のための基金への出資を求めることができる。

4 ICT政策

ガーナ政府及びMOCは世界銀行の協力を得て電子政府サービスの充実を中心に「e-Trasnformプロジェクト」を進めており、①電子政府サービスを可能にする環境の整備、②電子政府サービスを一般の人々が利用できるインフラ整備、③電子サービス及びアプリケーションの拡充、④中央・地方政府のプロジェクトの支援、を主目標として、地域のICTセンターの設立やICT教育計画を進めている。

5 消費者保護政策

「2008年電子通信法」第26条~第28条は、通信規制機関の消費者保護義務について規定している。規制機関は、定期的に通信サービスの質について消費者アンケートを実施、公開する。また、消費者からの通信サービスに対する意見や苦情を受け付け、事業者との交渉の仲介を務めるとともに、事業者の代表と協議のうえ消費者コードを定め、サイト上で公開する。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「2008年電子通信法」により、NCAが機器の型式認定を所掌する。認定を受ける際には、NCAの指定する形式で適合宣言を行う必要がある。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

最近5年間の加入件数はほぼ横ばいである。英ボーダフォンの子会社ボーダフォン・ガーナ(Vodafone Ghana)及びインドのBharti AirtelとルクセンブルクのMICの合弁会社Airtel Tigoの2社がPSTN方式のサービスを提供しているが、Airtel Tigoの加入件数は1万に満たず、市場はボーダフォン・ガーナの独占に近い。IP電話サービスは実施されていない。

2 移動体通信

2020年12月現在、南アフリカに本拠を持つアフリカ第1の移動体通信事業者MTNの子会社MTN Ghana、ボーダフォン・ガーナ、Airtel Tigo、ナイジェリアの大手通信会社Globacomの子会社GloMobile Ghanaの4社がサービスを提供しており、加入者の合計は約4,046万である。

4社とも3Gサービスを実施しており、2020年3月には各社の人口カバレッジは80%を超えている。LTE向け周波数は、2015年にMTN Ghanaが800MHz帯の10MHz幅×2、2018年にボーダフォン・ガーナが同じく800MHz帯の5MHz幅×2の利用許可を取得している。両社のサービス開始は2019年3月で、2020年3月までに国内の大都市をカバーし、同月現在の加入者合計は288万以上である。

スマートフォンは多機種のものが販売されており、サムスン(Samsung)やアップル(Apple)のほか、華為技術(HUAWEI)や小米(Xiaomi)等、中国製品の人気も高い。

移動体通信事業者(2020年10月現在)
事業者 事業開始年 システム 加入者シェア
MTN Ghana 1996年 GSM900/1800、W-CDMA 57.2%
ボーダフォン・ガーナ 2000年 GSM900/1800、W-CDMA、LTE 20.76%
Airtel Tigo 2002年 GSM900/1800、W-CDMA、LTE 20.11%
Glomobile Ghana 2012年 GSM900/1800、W-CDMA  1.93%

出所: NCA統計

3 インターネット

2020年12月現在、固定インターネット加入数は約10万で、ボーダフォン・ガーナはADSL・FTTH・LANにおいて80.9%の加入者シェアを占め、Surfline社はBWAの96%の加入者シェアを占めている。

モバイル・ブロードバンド・サービス加入者は2020年12月には2,659万に上っている。

Ⅵ 運営体

ボーダフォン・ガーナ

Vodafone Ghana

Tel. +233 100 050 555 5111
URL https://vodafone.com.gh/
幹部 Patricia Obo-Nai(最高経営責任者/CEO)
概要

旧国営の総合通信事業者で、固定部門で国内でのシェアは第1位。2007年に政府が株式の70%を英ボーダフォンに売却した。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 国家通信機関(NCA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

放送部門においては、放送事業免許付与、放送周波数割当を所掌する。

2 国家メディア委員会(NMC)

National Media Commission

Tel. +233 30 273 7514
URL https://www.facebook.com/national.media.commission.ghana/
所在地 Abdul Nasser Ave., Ridge, Accra, GHANA
幹部 Yaw Boadu-Ayeboafo(委員長/Chairman)
所掌事務

放送事業者を含むメディア産業全般のコンテンツ規制を所掌する。

Ⅱ 法令

1 2018年電子通信法

放送部門におけるNCAの所掌を規定している。

2 2000年メディア政策(Media Policy

放送事業を含むメディア産業のコンテンツ規制の枠組みを規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

ラジオ及びテレビサービスの提供については、NCAの規定する書面での申請を行い、審査を経て事業免許を取得する必要がある。NCAはラジオ及びテレビ・サービスを以下のように分類している。

ラジオ:①構内FM無線局、②コミュニティFMラジオ、③実験局、④商用FMラジオ(放送範囲25kmあるいは45km)、⑤商用AMラジオ、⑥衛星ラジオ放送サービス

テレビ:①地上デジタル有料放送(番組配信のみ)、②地上デジタル有料放送(対応周波数を取得し、自社のプラットフォームを用いて番組を放送)、③地上デジタル放送(プラットフォームのみ提供)、④地上デジタル無料放送、⑤地上デジタル音声サービス、⑥DTH有料多チャンネル放送、⑦DTH無料多チャンネル放送、⑧DTH無料単独チャンネル放送、⑨地上デジタル付加価値サービス、⑩地上デジタルモバイル放送、⑪ケーブルテレビ(有料)、⑫IPTV(有料)

2020年6月現在、NCAがサイト上で発表している主な放送局の免許数は以下のとおりである。

FMラジオ局数:公共放送機関ガーナ放送会社(Ghana Broadcasting Corporation:GBC)所有 33、外国の公共放送所有 5、コミュニティラジオ 88、構内ラジオ 21、商用ラジオサービス 437

テレビ局数:アナログテレビ 2、無料地上デジタル(全国) 36、無料地上デジタル(地方) 6、 有料地上デジタル 5、DTH(有料多チャンネル) 4、DTH(無料多チャンネル) 9、DTH(無料単独チャンネル) 72、ケーブルテレビ 1、IPTV 1

2 コンテンツ規制

「2000年放送メディア政策」は、7.2.3節で、テレビ放送事業者は放送時間の一定の割合を報道、放送地域でのローカル言語放送に割り当てることや、未成年者保護及び女性の権利擁護に留意すること等を明記している。

国営放送については、7.2.4節で、全国放送を維持すること、放送時間全体に占める自国制作番組の割合をラジオで80%以上、テレビで60%以上とすることとされている。特にプライムタイムの放送では、自国制作番組の割合を50%以上とすることが義務付けられている。

無料商業放送については、7.2.5節で、自国制作番組の割合は、ラジオで50%、テレビで30%とされており、その少なくとも50%を教育・教養番組とすることが義務付けられている。プライムタイムの放送における自国制作番組の割合は50%以上とされる。同節はまた、有料放送事業者は、少なくとも1チャンネルにつき、自国制作番組の割合を無料放送と同様として放送することを義務付けられるとしている。

コミュニティ・ラジオについては、非営利かつ特定の宗教や政治団体とのかかわりを持たないこと、放送番組の70%以上を放送地域のローカル言語で放送すること、また番組の80%は放送地域で独自に制作すべきことが義務付けられている。

3 地上デジタル放送

政府は2016年に地上テレビ放送のデジタル移行計画を発表、2017年7月に移行を完了させるとしていたが、800MHz帯の開放が2018年末まで実施されなかったこともあり、移行が本格的に開始したのは2018年10月からであった。

その後新たな完了予定期日が2020年7月に設定されたが、MOCは同月20日にコロナ禍等の影響により、完全移行は延期されると発表した。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

2017年にラジオ受像機の世帯普及率は90%を超えている。国営のガーナ放送公社(Ghana Broadcasting Corporation:GBC)が全国放送、ローカル放送及び専門放送の合計12系統で放送を実施している。そのほか聴取者シェアの大きなグループにMultimedia Broadcasting (6系統)、Despite Group(4系統)等がある。

2 テレビ

2017年にテレビ受像機の世帯普及率は92%とされている。同年にMultimedia Broadcasting(3系統)、Despite Group(1系統)、TV3 Network Limited(1系統)の3社が視聴シェアの65%以上を得ており、GBC(6系統)のシェアは9%程度である。

3 衛星放送

Multimedia Broadcastingが番組の衛星での配信を行っている。国外事業者では、南アフリカの有料放送事業者マルチチョイスの衛星放送部門DStvが5パッケージのサービスを実施している。

4 ケーブルテレビ

Cable Gold TVが首都でサービスを実施しており、24チャンネルが視聴できる。

Ⅴ 運営体

ガーナ放送公社(GBC)

Ghana Broadcasting Corporation

Tel. +250 30 222 7779
URL https://www.gbcghanaonline.com/
所在地 Kanda Ave., Accra 00233, GHANA
概要

1957年に設立された国有の公共放送事業者で、ラジオ12系統(Radio Savanna、 Radio Central、 Volta Star Radio、Radio BAR、 Radio Upper West、 Obonu FM、 Sunrise FM、 URA Radio、 Apam FM、 Dormaa Ahenkro Community Station、 Twin-City Radio、 Uniiq FM)、テレビ6系統(Ghana Televison (GTV)、 GBC24、 GBC Govern、GBC Life、 GTV Sports、 Obonu TV)でサービスを実施している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

国家通信機関(NCA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

周波数割当・管理を所掌する。

2 標準化機関

ガーナ標準化機関(GSA)

Ghana Standards Authority

Tel. +233 302 506991-5
URL https://www.gsa.gov.gh/
所在地 P O Box MB 245, Accra, GHANA
幹部 Alex Dodoo(長官/Director General)
所掌事務

1967年設立。国内標準の策定及び適合性評価を所掌する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

「2008年電子通信法」第58条(1)により、NCAは通信部門における周波数管理、利用計画の策定、周波数利用許可の付与を所掌する。周波数管理の原則については、同条(2)により、ITU「無線規則」に準拠するとされている。

2 無線局免許制度

周波数免許の付与は「2008年電子通信法」第59条により、NCA内に設けられた周波数管理委員会が実施する。免許付与の方法については、同法第58条(8)により、オークションと比較審査の双方が可能である。また周波数利用許可取得料についても、固定料金方式と事業者の申請による金額の審査の双方が可能とされている。

3 電波利用料制度

「2008年電子通信法」第82条(1)(a)により、NCAは周波数利用許可を取得した事業者から取得料、また許可の更新の際には更新料を徴収する。また同条(2)(b)により、周波数管理料を徴収する。

4 電波の安全性に関する基準

NCAの周波数管理の原則は、ITUの各種勧告及び国際的な周波数利用のベストプラクティスの事例に従うとされている。

Ⅲ 周波数分配状況