イスラエル国(State of Israel)

通信

Ⅰ 監督機関等

通信省(MoC)

Ministry of Communications

Tel. +972 2 670 6301
URL https://www.gov.il/he/Departments/ministry_of_communications/
所在地 23 Jaffa St.9199907, Jerusalem, ISRAEL
幹部 Shlomo Karhi (大臣/Minister)
所掌事務

1971年に設立され、電気通信政策及び規則の策定、電気通信基盤の開発、旧国営通信事業者Israel Telecommunication Corporation(Bezeq)を含む電気通信事業者への免許付与及び規制監督、周波数管理、衛星・ケーブルテレビサービスの規制監督、電気通信機器の認証等を所掌する。

Ⅱ 法令

1982年通信法(Communications Law 1982(Telecommunications and Broadcasting)

通信サービスや通信機器(仕様や型認証等)にかかわるあらゆる規制を制定する基本法令。2001年の改正では、ケーブルテレビ事業者の事業基準、アンバンドリング、電気通信基盤事業とコンテンツ事業の分離等を規定している。2003年の改正では、競争的地域通信事業者に対してユニバーサルサービス義務(Universal Service Obligation:USO)を課すことなく、事業免許を付与するとした。2012年の改正では、移動体通信事業者やISPに、加入者に有害なウェブサイトやコンテンツに関する情報を提供する義務が課された。また、有害コンテンツへのアクセスをブロックするための情報やフィルタリングツールを無料で提供する義務も課された。2018年の改正では、固定通信網事業者の他事業者へのアクセス提供に関する義務が追加された。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

通信事業者に対する免許付与条件は「1982年通信法」第B章が規定している。自社の通信網で電話、データ通信、インターネットアクセスの小売及び卸売を認可される「単一一般免許(Unique General License)」は、ユニバーサルサービス提供義務と一体化しており、固定電話部門の支配的事業者に付与される。

2022年10月施行の通信法改正で、電話サービス、インターネットアクセスサービス、データ伝送サービスを行う電気通信事業者は登録制になった。一方、移動体通信、大規模なMVNO等、衛星通信サービス、地方自治体が提供する電気通信サービス、海底ケーブル等は免許制が継続される。

2 競争促進政策

(1)相互接続

「1982年通信法」第B章5により、公衆通信網を運用する事業者はすべて他事業者からの相互接続の申し出を受け入れる態勢を整備し、料金その他の条件については、MoCの指示に従うとされた。相互接続料金改訂は1年ごとにMoCが物価指数に基づいて規定すると定められた。

2022年6月には、MoCが料金規制の段階的廃止計画を発表した。その後、2023年6月より、廃止計画に基づきすべての通信事業者の相互接続料金は、0.04NISに引き下げられた。

(2)卸売提供制度とMVNO促進政策

2014年1月、MoCはBezeqのブロードバンド網基盤につき、他事業者からのアクセスをMoCの指定する料金で受け入れることを義務付ける提案を実施、2015年にはこれが発効した。2019年1月には更に、インターネットサービス事業者に自社の光ファイバ関連機器をBezeqの基盤上に設置する権利を認めている。また、2018年の通信法改正で、固定通信網事業者すべてに同様のアクセス義務を課すことになったが、Bezeq以外の事業者については、料金は事業者間の交渉によるとされた。2018年には、Bezeqに固定電話部門での卸売サービス開始を義務付けた。

移動体通信分野では、2014年5月、MoCはLTE周波数入札条件に、落札者は移動体通信事業者すべてにサイトとアンテナを開放することを含めた。

MVNOについては、ネットワーク事業者との通信網利用条件契約は個別の交渉によるとされているが、契約条件については事前にMoCが監査し、適切な料金を指示するとされている。

また、2025年9月、MoCは免許更新と同時に移動体通信分野の規制緩和を行い、他社の設備容量の最大40%まで利用して通信機器を用いたサービスを提供できるよう改正した。

(3)番号政策

2016年8月、MoCは固定・移動番号体系の統一化計画のためのパブリックコンサルテーションを開始した。2020年8月現在、結果は未公表であるが、この計画の一環として2018年10月にMoCは番号ポータビリティ(MNP)にかかわる事業者義務の変更を発表、2019年9月から移転手続時間を移動では30分、固定では1時間以内と規定した。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサルサービス

通信法25条により固定音声、移動音声、公衆電話及びブロードバンド接続がUSOの対象サービスであり、提供事業者は固定通信市場の既存事業者及び支配的事業者、移動体通信事業者とされている。これらのサービスに対するユニバーサルサービス基金は設けられていない。

(2)高速ブロードバンド計画

2019年2月、政府は国内の光ファイバ網拡張に関する省庁間会議を結成し、2020年7月、以下の計画案を発表、同9月に政府の承認を得た。①Bezeqは今後5年以内に光ファイバ網構築を行う地域を申告、期間内に自社の費用で構築を実現する義務を負う。②Bezeqの申告にない地域については、他事業者が光ファイバあるいはその代替インフラによる下り1Gbps/上り200Mbps以上の通信速度を有するネットワークを構築することを推進する。この計画については、通信事業免許を有する事業者の拠出金からなる基金を設立してその費用を負担する。各事業者の拠出金は、前年度の売上高の0.5%とするとした。2022年5月に実施された助成対象プロジェクトの審査では、10事業者の合計330自治体に対する光ファイバ網構築計画が選出された。

また、MoCは、光ファイバの更なる展開のために、セキュリティ規制の順守を条件にすべての事業者に対して既存のインフラに対して光ファイバを配備できるようにした。これによりBezeqの申告にない地域(国全体の約15%)に限定されていた小規模事業者もすべての地域に光ファイバを導入できるようになった。

4 ICT政策

電子政府

政府はポータルサイト「https://www.gov.il/」を通じて市民向けの各種オンラインサービスを実施している。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信機器及び無線機器に関する基準認証はMoCが行う。端末機器の型式認定については、「1982年通信法」第B章第4a部により、MoCが認可した試験場での証明書を得ることとされている。

有線端末の型式認定は、MoC免許部、無線機器については、MoC技術行政・管理部が所掌する。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

Bezeqの固定通信サービスにおける独占体制は1999年6月に終了し、数社が市内通信サービスを実施しているが、PSTN方式の固定電話市場での同社の独占は現在も事実上続いている。一般免許(Ⅲ-1の項参照)を有する事業者はVoIPサービスを提供することができ、2024年末現在、加入者回線のうち、約6割がVoIPである。

2 移動体通信

ネットワーク事業者はCellcom、Partner、Bezeq子会社Pelephone、HOT子会社HOT Mobile、WeCom Mobile(旧018Xfone)、の5社である。この5社はいずれも2015年の1800MHz帯の入札で取得した帯域でLTEサービスを実施している。LTE網については、WeCom Mobile、Cellcom、Golan Telecom(のちにCellcomに買収されMVNO専業に転換)の3社、またPartenerとHOT Mobileの2社がそれぞれネットワーク共有契約を結んでおり、ほぼ全国でサービス利用が可能になっている。5Gサービスは2020年8月にPelephoneが最初に立ち上げ、2021年までに5社とも5Gを開始している。

2025年6月現在、移動電話加入者数では、約20万が3G、約640万がLTE、約350万が5Gサービス加入である。MVNOについては、サービスを提供している主な事業者はシェア順にGolan Telecom(Cellcom子会社)、Rami Levy Communications、Telzar 019、CellactCommunicationである。2025年6月時点のMVNO加入者数の合計は約140万、市場シェアは1割強である。

3 インターネット

2025年6月現在、ブロードバンドサービスの技術別の加入者数については、FTTxが約200万、DSLが約60万、ケーブルが約40万であり、その9割以上をBezeq、Cellcom、Partner、HOTの大手4社で占めている。ユニバーサルサービス事業者であるBezeqとHOTは光ファイバ網の拡張に努めており、Bezeqのネットワークでは、2025年3月時点で、267万戸が光ファイバに接続可能である。同社のサービスの最大接続速度は2.5Gbpsに達し、屋内Wi-Fi接続でも1Gbpsが可能であるとしている。

Ⅵ 運営体

Bezeq

Israel Telecommunication Corporation

Tel. +972 3 626 2600
URL https://www.bezeq.co.il/
幹部 Nir David(最高経営責任者/CEO)
概要

1984年設立の旧国営事業者である。電気通信サービスすべてを提供している。国際通信、ISP、移動体通信(Pelephone)、コールセンター、衛星デジタル放送(Yes)等の完全子会社がある。なお、株式の27.19%はイスラエル企業BCOMが所有している。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 通信省(MoC)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

放送部門では、放送周波数管理及び衛星・ケーブルテレビ事業者の監督を所掌する。省内のケーブルテレビ・衛星放送審議会は、衛星及びケーブルを通じて提供される番組の質的規準の設定、番組制作の推進を所掌する。

2 第2テレビ・ラジオ放送協会

Second Authority for Television and Radio

Tel. +972 2 655 6222
URL https://www.rashut2.org.il/
所在地 20 Beit Hadfus St., Jerusalem, ISRAEL
幹部 Nir Shveky(最高経営責任者代理/Acting CEO)
所掌事務

地上放送は、15名の民間人が構成する評議会により、商業放送事業者への免許付与、行動規範の決定、放送技術管理や、第2放送分野(商業放送分野)に参入する事業者の放送スケジュール、番組管理、放送倫理基準の制定と違反事業者への制裁措置決定等を行っている。また同協会内のケーブル・衛星放送委員会がケーブルテレビ及び衛星放送事業者に対し同様の規制を実施する。

Ⅱ 法令

1 1990年第2テレビ・ラジオ放送協会法(The Second Television and Radio Authority Law 1990

民間商業放送の免許、管理規定等を定めている。

2 1982年通信法(Communications Law 1982(Telecommunications and Broad­casting)

ケーブルテレビ(第B1章),衛星放送(第B2章)、ケーブル・衛星放送審議会の役割のほか、メディア所有規制等について規定している。

3 2014年公共放送法(Public Broadcasting Law 2014

公共放送イスラエル放送協会(Israel Broadcasting Authority:IBA)を廃止し、イスラエル放送会社(Israel Broadcasting Corporation:KAN)を設立し、IBAに代わる公共放送運営体とすることを定めている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

クロスメディア所有規制

「1982年通信法」により、地上放送事業者、衛星の放送事業者、新聞社は、ケーブルテレビ事業またはオンデマンド放送事業の免許を取得できず、他のメディアに対する持株割合は原則として、上限を24%と規定されている。ただし、競争促進や多様性確保等の理由によりケーブル・衛星審議会の同意があり大臣が許可した場合はその限りではない。

2 公共放送関連政策

KANの番組内容は、内部に設置された倫理委員会が監査を実施している。協会の財源は政府資金と広告収入で、受信料の徴収は行われていない。

3 番組規制

「1982年通信法」により、ケーブルテレビ事業者は広告放送を行ってはならないとされている。

4 地上デジタル放送

2008年2月に「地上デジタル放送法」が施行、2009年8月からDVB-T方式で放送が開始された。アナログ放送は2011年3月末に終了、同4月に政府主導のデジタル放送プラットフォーム「Idan Plus」に完全移行した。2024年10月現在、同プラットフォーム上で視聴可能な無料放送は9系統である。KANはDVB-T2方式での放送も実施している。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

KANがヘブライ語放送のほか、アラビア語放送を含めた9チャンネルを提供している。商業ラジオ放送は、地方都市での地域放送が中心である。また、イスラエル陸軍は「Galei Tzahal」でニュース、音楽、時事問題等の番組を放送している。

2 テレビ

KANが3系統(総合放送、アラビア語放送及び教育放送)を実施している。商業放送にはKeshet media groupが運営する「Keshet12」、Reshet社が運営する「Reshet13」がある。Keshet12は、2022年2月に、スポーツチャンネル等を制作するRGEと共同で、動画配信サービス「FreeTV」を立ち上げた。なお、イスラエルでは、地上波で放送された番組は、ケーブルテレビ及び衛星放送で放送(再放送)することが義務付けられている。

3 衛星放送

Bezeqの子会社であるYesが、150チャンネル以上の配信及びVODサービスを実施している。同社は2026年までに、段階的に動画配信サービス「Yes+」へ移行する計画を発表している。

4 ケーブルテレビ

2001年7月にケーブルテレビ事業者に対する地域的な規制が撤廃され、自由競争となった。

2003年にZahav、Matav、Tevelの主要3社が合併して設立されたHOTが市場を主導し、約200チャンネルが視聴可能である。

Ⅴ 運営体

イスラエル放送会社(KAN)

Israel Broadcasting Corporation

Tel. +972 2 076 8098000
URL https://www.kan.org.il/
所在地 Beit Hadfus 32, Jerusalem, ISRAEL
幹部 Golan Yochpaz(最高経営責任者/CEO)
概要

2014年の「公共放送法」成立と2015年の同法改正に伴い、2016年3月31日にIBAに代わる公共放送機関として設立された。通信相の指名を受けた12名の代表が放送倫理、デジタル化、広告放送等の委員会を主導する。ラジオ8系統のほか、地上デジタルで総合放送、アラビア語放送、教育放送を実施している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

通信省(MoC)

(通信/Ⅰの項参照)

同省の技術行政・周波数計画・管理部が周波数の管理及び無線局の免許付与を行う。

2 標準化機関

イスラエル標準化機構(SII)

Standard Institute of Israel

Tel. +972 3 646 5154
URL https://www.sii.org.il/
所在地 Haim Levanon 42, Tel Aviv 6997701, ISRAEL
幹部 Gilad Golub(最高経営責任者/CEO)
所掌事務

電気通信機器を含む産業機器全般において製品の品質や安全に関する標準化を行う政府機関である。国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)に加盟している。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

イスラエルの電波政策は、国家安全保障の観点から、周波数の分配計画、及び軍事利用周波数帯の民間利用への開放等はMoCとイスラエル防衛軍、財務省等の関係組織との連携により、策定・実施される。

2 無線局免許制度

5Gについては、2019年7月にMoCが700MHz帯、800MHz帯、2.6GHz帯の一部を既存事業者、3.5-3.8GHz帯の100MHz幅を既存であるか否かを問わずオークションの落札者に割り当てる入札計画を発表した。対象周波数帯は、700MHz帯の30MHz幅×2(FDD方式)で5MHz幅×2を6ブロック、2600MHz帯の60MHz幅×2(FDD方式)で10MHz幅×2を6ブロック、3.5-3.8GHz帯の300MHz(TDD方式)で15MHz幅を20ブロックである。落札事業者には、2020年内のサービス開始が求められる。2020年8月にはオークションの落札結果が発表され、9月には3社への免許付与が決定された。

周波数取得料については、Pelephoneが8,823万NIS、Cellcomが1億1,502万8,000NIS、Partnerが6,238万NISであった。

2022年8月、MoCは5Gサービス向けに26GHzの2500MHz幅を移動体通信事業者に割り当てるための入札を年内に実施すると発表し、同年12月にオークションを開始し、2023年2月1日に入札が行われた。7月にBezeqの子会社であるPelephoneが獲得した。周波数取得料については、416万NISであった。

3 電波の安全性に関する基準

環境省(Ministry of Environment Protection)により、2006年1月に「非電離放射法(Non-Ionizing Radiation Law)」施行された。同法に基づくイスラエルの電波の安全性基準は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインに準拠したものである。許容される照射については、「健康に対する照射閾値」と「環境に対する照射閾値」の二つに区分している。健康に対する照射閾値は、ICNIRPのガイドラインに定められている基準値を採用しており、環境に対する照射閾値は、健康に対する照射閾値の10%以下と規定している。