ケニア共和国(Republic of Kenya)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 情報通信・デジタル経済省

Ministry of Information, Communications and The Digital Economy

Tel. +254 20 4920000
URL https://ict.go.ke/
所在地 Teleposta Towers, Kenyatta Avenue, Koinange Street, P.O. Box 30025-00100, Nairobi, KENYA
幹部 Eliud Owalo(長官/Cabinet Secretary)
所掌事務

ICT政策策定及び電子政府サービス管理を所掌する。

2 ケニア通信庁(CA)

Communications Authority of Kenya

Tel. +254 20 4242000
URL https://www.ca.go.ke/
所在地 Waiyaki Way, P.O. Box 14448, 00800 Westlands, Nairobi, KENYA
幹部 Gilbert M. Kibe(議長/Chairman)
所掌事務

「1998年ケニア情報通信法」により「ケニア通信委員会(Communications Commission of Kenya)」として設立された通信・放送事業者規制機関である。2014年6月、名称を「ケニア通信庁」に変更した。電気通信に関する所掌事務は以下のとおり。

3 情報通信技術庁(ICTA)

Information and Communication Technology Authority

Tel. +254 20 6676999
URL https://www.icta.go.ke/
所在地 Telposta Towers, 12th Floor, Kenyatta Avenue, Nairobi
P.O. Box 27150-00100 Nairobi, KENYA
幹部 Frederick Owino(議長/Chairman)
所掌事務

2013年8月に三つの政府系情報通信関連の委員会を統合して設立された。政府内のICT関連のかじ取りを行うほか、ICT関連の標準化やICTリテラシー・能力の向上、イノベーションの方向を定めるといった役割を担う。

Ⅱ 法令

2020年ケニア(改正)情報通信法(Kenya Information And Communications (Amendment)Act, 2020)

CAの設立条件、電気通信分野の規制枠組、免許申請手続等を規定している。無線通信分野ではCAによる無線局免許の付与条件を規定している。1998年に制定され、2009年に改正され、2013年の改正では、規制機関の組織改編や、消費者保護及び競争関連、放送関連の改正を行った。また、2020年には、モバイルマネーを含めて、通信サービスと直接関係しないサービスを提供する通信事業者に対して規定を制定する。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

2021年にCAは、技術とサービスが中立である新しい統一ライセンス・フレームワーク(Unified Licensing Framework:UFL)を導入した。通信サービスに関する免許区分は、国内通信網施設、国際通信網施設(海底ケーブル陸揚げ、国際ゲートウェイとサービス)、コミュニティ網とサービス、非インフラ系サービス(MVNOを含めたアプリケーション・サービス、コンテンツ・サービス等)、端末機器、VSAT等を含む。期間は15年、又は10年である。周波数利用については、別途周波数免許の取得が必要である。

2019年6月現在、全区分の免許の取得事業者数は2,987である(そのうち、通信網施設は64、アプリケーション・サービスは290、コンテンツ・サービスは424)。

上記の免許の申請要件として、申請者はケニアに本拠を持ち、外資の場合は免許取得後3年経過するまでに、株式の30%以上をケニア人へ発行することが必要である。

2 競争促進政策

(1)民営化

2007年12月、固定通信分野で独占を維持してきた国営事業者テルコム・ケニア(Telkom Kenya)の株式の51%をフランス・テレコム(France Telecom、現オレンジ(Orange))とドバイのAlcazar Capitalのコンソーシアムが買収した。

(2)相互接続

国内の固定及び移動体通信網運用事業者には、コストベースの料金で相互接続サービスを提供することが義務付けられている。卸売各市場で50%以上のシェアを有する事業者を支配的事業者とし、相互接続における会計分離等の義務を課している。また、支配的地位を利用した他の事業者や特定の商品への差別的取扱、カルテル行為等は処罰の対象とされる。

2022年8月、CAは協議プロセスを経て、通信事業者と固定着信接続料(Fixed Termination Rate:FTR)及び移動体着信接続料(Mobile Termination Rate:MTR)について暫定的に合意したことを発表した。これにより、2022年8月から1年間、FTRとMTRのいずれもが1分当たり0.58KESとなった。CAはネットワークコスト調査の結果に基づき今後のFTR及びMTRの新料金水準を発表する。FTR及びMTRは0.99KESから0.58KESに引き下げられた。

(3)番号ポータビリティ

2016年6月、CAは2011年に開始した移動電話番号ポータビリティ(Mobile Number Portability:MNP)に関する手続とガイドラインを見直した。これにより、消費者は番号移動を希望する場合、ポーティング料金を支払う必要がなくなり(199.80KESからの引下げ)、代わりに受信側のネットワーク事業者が料金を支払うことになった。また、手続を簡素化し、番号移行手続を4時間以内に短縮した。MNPのガイドラインは更なるプロセス簡略化のため2018年6月に再更新された。

3 情報通信基盤整備政策

(1)国家ブロードバンド戦略

2018年、ケニア政府は、「国家ブロードバンド戦略(National Broadband Strategy:NBS)(2013-2017)」に続いて、「NBS(2018-2023)」を発表した。この戦略の主な目標は以下を含む。

2023年までのNBS関連費用は約11億1,000万USDとされている。

(2)ユニバーサル・アクセス

2009年の通信法改正により、CAが管理するユニバーサル・サービス基金の設立が規定され、2010年5月に「ユニバーサル・サービス・アクセス及び規則」が発表された。

この基金は、コマーシャルベースの郵便及びクーリエ事業者をも含む通信事業免許所有者からの拠出金(前年の売上高の1%以内)を中心に運営される。

2013年11月から、ケニア政府は、電子通信事業者と放送局から前年度の売上高の0.5%を基準としてユニバーサル・サービス基金を徴収、2014年8月には約100万USDを得て基金の運用を開始した。基金の対応する全国レベルのパイロット・プロジェクトには、指定16校の地域ICTセンター化、コミュニティ・テレセンターの設置、障がいを持つ人々へのICTソリューションの提供、医療施設へのコンピュータ設置等がある。

4 ICT政策

情報通信・デジタル経済省は2030年までにケニアのGDPを世界平均に引き上げるという「Kenya Vision 2030」に基づき、政府サービスの電子化とICT産業振興を主導している。同省が管理する電子政府ポータルでは、各種行政情報の入手のほか、身分証明書類の有効期間の確認、税金の払戻しの申請等のオンライン・サービスが導入されている。また、テクノロジー・ハブ「Konza Technopolis」建設を進めている。

ICTAは2022年3月、2032年までのICT政策ガイドライン「National Digital Master Plan (2022-2032)」を発表し、デジタル・インフラ、デジタル・サービス及びプロダクトとデータ・マネジメント、デジタル・スキル、デジタル・エンタープライズ及びイノベーションとビジネス、政策・法律・規制の五つの分野で、以下のプロジェクトを展開するとしている。①10万kmの高速光ファイバ・インフラの整備、②インターネット・ホットスポット2万5,000か所の設置、③クラウド・サービス、④1,450のビレッジ・デジタル・ハブの設立、⑤国家フィジカル・アドレシング・システム、⑥国家空間データ基盤、⑦地域海底ケーブル保守基地、⑧地域スマートICTハブ、⑨ケニアeWasteプログラム、⑩すべての政府機関のためのデジタル・ワンストップ・ショップ、⑪国家公開鍵基盤、⑫2,000万人の国民、1万人のICT専門家、30万人の公務員、35万人の教師のためのデジタル・リタラシー能力開発、⑬スマートIDカード、⑭デジタル・リテラシー・プログラム、⑮ケニア・ソフトウェア及び電子産業、⑯年次国際ICTエキスポ、⑰政策・法律・規制の調和と制定、⑱電子政府に関する法律の制定、⑲重要インフラの制定。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

無線通信に使用される機器は、すべてCAによる型式認証を受けなければならない。型式認定は機器の販売事業者として登録された事業者のみが申請することができる。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

2021年の固定電話加入者数は6万1,096であり、前年比8%の減少となる。市場をほぼ独占しているテルコム・ケニアが、固定電話接続で加入者の半数以上を得ていたCDMA方式の固定無線アクセス(FWA)サービスを廃止し、GSM接続に切り替えてから固定電話の市場は停滞している。また、2021年の固定電話加入者数の76%は、VoIPの利用者であった。

2 移動体通信

2022年6月現在の移動電話加入者数は約6,328万、普及率は約117%である。加入者の98%がプリペイド・サービスを利用しているとされる。サファリコム(Safaricom)、Airtel、テルコム・ケニア、ジャミー・テレコミュニケーションズ(Jamii Telecommunications Ltd:JTL)が市場に参入している。4Gサービスについては2014年以降に開始され、2022年6月には加入者数が約1,807万に達している。

5Gサービスについては、サファリコムは、2021年3月にナイロビ、キスム、キシイ、カカメガの15サイトで個人及び企業顧客向けのトライアルを開始し、2022年10月に商用化を開始した。Airtelは2021年4月、ナイロビ、モンバサ、マリンディで約600の基地局を5Gにアップグレードしたことを明らかにした。

3 インターネット

固定ブロードバンドの市場の成長は遅いが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて近年は成長が加速化している。CAによると、2022年6月現在の固定ブローバンド加入者数は約92万で、加入率は6.9%である。固定ブロードバンド・サービスは、サファリコム、インド系のWananchi Group、JTLの3事業者で市場シェアの8割以上を占め、これらの事業者はいずれもFTTx/LAN、WiMAX、VSAT、BFWA(5G)サービス等を提供している。

2022年6月現在のケニア国内のインターネット・サービス加入者は約4,764万で、うち61.3%をブロードバンド加入が占めている。このうち、接続方式別では、モバイル・ブロードバンド(3G・4G)は2,921万、FTTxは55万、固定無線は15万、ケーブルモデムは21万である。

4 成長サービス

モバイルマネーサービス

2022年6月現在、モバイルマネーの契約数は増加傾向を維持し、3,720万を記録、普及率は75.3%となった。

Ⅵ 運営体

テルコム・ケニア

Telkom Kenya

Tel. +254 20 4952000
URL https://telkom.co.ke/
幹部 Mugo Kibati(社長/CEO)
概要

1999年に国営事業者として設立された。市場の自由化後も固定通信で支配的な地位を保ち、2008年には移動体通信市場に参入した。2007年12月に民営化され、2008年9月に親会社オレンジの方針に応じて、ブランド名をオレンジに変更した。オレンジ・グループは株式の約70%を所有していたが、2016年6月にすべての株式をアフリカのプライベート・エクイティ企業、Helios Investment Partnersに売却した。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 情報通信・デジタル経済省

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

放送政策の策定を所掌する。

2 ケニア通信庁(CA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

放送分野では、ラジオ・テレビ局への免許付与、コンテンツ規制、放送周波数管理等を所掌する。

Ⅱ 法令

1 2020年ケニア(改正)情報通信法(Kenya Information And Communications(Amendment)Act, 2020)

2009年及び2013年の改正により、番組制作及び放送信号送信サービスに関する免許付与条件及び免許料規定が追加された。

2 2009年ケニア通信(放送)規則(Kenya Communications(Broadcasting)Regulations, 2009)

CAによる事業者規制の原則を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

放送事業の開始に当たっては、サービス地域ごとにCAが付与する放送周波数利用免許の取得が必要とされる。政党や債務を負ったものは免許が取得できない。また新規に民間放送免許を取得した者には、免許付与の時に定められた期間内のサービス開始が義務付けられている。放送事業免許の取得を希望する事業者は、ケニア人の実質的な所有権が30%以上なければならない。

2020年改定の情報通信法では、放送サービスを公共放送サービス、コミュニティ放送サービス、商業放送サービスの3種に大別、利用技術や有料/無料の区別により、更に分け、それぞれの免許の取得事業者に、免許取得料及び年間免許使用料を課している。商業放送事業者の年間免許使用料は、前年の収入の0.4%あるいは8万KESのどちらか高い方と定められている。周波数利用については、地方ごとに放送局に対して免許が付与される。2022年6月現在、免許を得た放送局数は、ラジオ213、テレビ295である。

2 コンテンツ規制

番組制作また広告放送において、暴力や差別、あるいは露骨な性表現及び事実に誤りのある報道は禁じられる。広告放送については、番組サービスの他の項目と明確に区別され、認識できるものでなければならない。広告は、30分の放送のうち10分を超えてはならない。広告主は、子ども向け番組の休憩時間、又はその周辺や隣接して送信される広告の内容や表示に関して、最大限の注意を払わなければならない。

ただし、放送局が政治的に利用されていることも多く、番組規制と放送内容の実態がかけ離れているという批判がある。

3 地上デジタル放送

2007年10月、地上デジタルテレビの方式をDVB-T、地上デジタルラジオの方式をT-DABとし、2010年1月に首都を含む5都市で地上テレビ放送のデジタル移行を開始、2012年にはテレビの方式をDVB-T2に変更した。2015年3月30日に、全国でアナログ停波を完了した。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

公共放送であるケニア放送協会(Kenya Broadcasting Corporation:KBC)が英語とスワヒリ語でFMによる24時間の全国放送のほか、全国を3地域に分けてのローカル言語放送、10系統の商業放送を実施している。そのほかローカル放送を含めて500を超すFM放送局が周波数利用免許を取得している。

2 テレビ

2022年現在、テレビ受像機の世帯普及率は約53%である。KBCが全国放送「Channel 1」で1日24時間の英語及びスワヒリ語による総合放送を実施している。商業放送では大手7社が2015年9月までに地上デジタル放送の事業免許を付与されている。地上デジタル放送の有料放送は2社が実施している。マルチチョイスが「GOtv」の名称で20~70チャンネルの5パッケージを提供、中国系の有料放送事業者StarTimesも29~62チャンネルの3パッケージを提供している。

3 衛星放送

マルチチョイスとKBCの合弁によるマルチチョイス・ケニア(MultiChoice Kenya)が、ユーテルサットW4のKuバンドを利用して、七つの番組パッケージを配信している。

またWananchiが2011年半ばにケニア、ウガンダ、タンザニアで開始した有料衛星放送サービス「Zuku TV」が42~97チャンネルの四つのパッケージを配信している。

Ⅴ 運営体

ケニア放送協会(KBC)

Kenya Broadcasting Corporation

Tel. +254 20 2223757
URL https://www.kbc.co.ke/
幹部 Samuel Maina(会長/Managing Director)
概要

1962年設立の国営放送事業者。財源は受信料が主であるが、収入確保のため有料放送も実施している。広告放送、スポンサーシップは禁じられている。ほぼ全国で番組の受信が可能である。

電波

Ⅰ 監督機関等

ケニア通信庁(CA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

通信・放送分野の周波数計画、割当、免許業務、監視等の周波数監理業務はCAが所掌している。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

「2010年情報通信(無線通信・周波数スペクトル)規則(Information and Communications(Radio Communications and Frequency Spectrum)Regulation, 2010)」が、CAによる以下の周波数管理の原則を規律している。

2 電波監視体制

CAは、無線局の設置条件が国内・国際規則に準拠しているかどうか定期的な審査を行い、また機器がCAの採用する標準に合致しているかについての検証を実施する。また、CAは周波数干渉等の苦情や許可された帯域以外の周波数の利用等の情報に基づいて、不定期の視察を実施する権限を持つ。

3 電波利用料制度

CAは、一般的な電波利用料として、各種無線局で使用される周波数帯(MF/HF帯及びVHF/UHF帯)ごとに年間固定額を定めている。ただし、セルラー、FWA等の商業性の高い業務に関しては、「排他的割当幅(exclusive spectrum assignment bandwidth)」の料金として使用周波数幅に単価と係数を乗じた料金と、「周波数利用料(spectrum usage fees)」として無線局数に応じた料金とを合算した金額が各年適用される。

4 ダイナミック周波数利用

CAは2021年にTVホワイトスペース(TVWS)の使用を許可するためのダイナミック周波数アクセスフのレームワークを設置した。CAは、現在放送サービスに割り当てられている 470-694MHz UHF周波数帯のTVWSによる1次利用を許可している。これにより、同周波数帯は地上デジタル放送事業者に割り当てられているが、ホワイトスペース機器は、地上デジタル放送のために特定のチャンネルが使用されていない領域での二次利用を許可される。

5 電波の安全性に関する基準

電磁界へのばく露に関する人体への制限値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の「時間変化する電界、磁界及び電磁界によるばく露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)」(1998年)に準拠している。

Ⅲ 周波数分配状況