大韓民国(Republic of Korea)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 科学技術情報通信部

Ministry of Science and ICT

Tel. (代)局番なしの1335 +82 44 202 4180(夜間)
URL https://msit.go.kr/
所在地 194, Gareum-ro, Sejong-si, 30121, KOREA
幹部 イム・へスク/Lim Hyesook(長官/Minister)

2 放送通信委員会(KCC)

Korea Communications Commission

Tel. +82 2 500 9000
URL https://kcc.go.kr/
所在地 47 Gwanmun-ro, Gwacheon-si, Gyeonggi-do 13809, KOREA
幹部 ハン・サンヒョク/Han Sang-hyuk(委員長/Chairman)
省庁再編

韓国では新政権成立に合わせて省庁再編が実施される。そのため、過去20年間で情報通信分野政策所掌省庁(韓国では「部」が省に相当)は、情報通信部→放送通信委員会(KCC)→未来創造科学部→科学技術情報通信部と再編を重ねてきた。2017年の文在寅政権成立後、ICTと科学技術政策を所掌する未来創造科学部は科学技術情報通信部に名称変更された。科学技術情報通信部のICT分野における所掌事務は以下のとおりである。

KCCの所掌事務は以下のとおりである。

2013年の朴槿恵政権発足時、省庁再編を巡る国会での与野党の駆け引きにより、周波数政策は三つの政府機関、メディア政策は地上波がKCC、有料放送メディアが科学技術情報通信部という具合に複数省庁に分散され、変則的な形となっている。

Ⅱ 法令

科学技術情報通信部が所掌する主な法令は以下のとおり。

分野 法令
融合分野 知能情報化基本法、放送通信発展基本法、インターネット・マルチメディア放送事業法(IPTV法)、情報通信振興及び融合活性化等に関する特別法(ICT特別法)
通信分野 電気通信基本法、電気通信事業法、電波法、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律(情報通信網法)、移動体通信端末装置流通構造改善に関する法律(端末流通法)、情報保護産業の振興に関する法律、クラウド・コンピューティング発展及び利用者保護に関する法律(クラウド法)、知能情報化基本法
放送分野 放送法

 はKCCとの共管

KCCが所掌する主な法令は以下のとおり。

分野 法令
通信分野 電気通信事業法、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律、位置情報の保護及び利用等に関する法律
放送分野 放送法、韓国教育放送公社法、放送広告販売代行等に関する法律、放送文化振興会法

出所:科学技術情報通信部、KCCウェブサイト

1 放送通信発展基本法

通信・放送融合環境に対応するため、「電気通信事業法」と「放送法」の基本部分を一本化した融合法として2010年に施行された。通信・放送分野の振興と、科学技術情報通信部とKCCの独自財源としての放送通信発展基金の根拠等を定めている。

2 電気通信事業法

公衆電気通信事業及び電気通信設備の運営管理、利用者に関する基本法令で、電気通信事業の分類及び許可等に関する要件、競争促進及び利用者保護、電気通信設備の設置及び保全について規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)免許政策の制度枠組

電気通信事業者の分類は2018年末の「電気通信事業法」改正により、従来の3種類から、基幹通信事業者と附加通信事業者の2種類に再編されると同時に、基幹通信事業が許可制から登録制に緩和された。電気通信事業者区分の詳細は次のとおりである。2021年8月現在、基幹通信事業者のうち回線設備保有事業者として75社が登録している。

電気通信事業者の分類
区分 定義 サービス内容
基幹通信事業者(登録制) 電気通信回線設備を設置又は利用して、電話、インターネット接続等の公益性の高い基幹通信サービスを提供する事業者 電話、インターネット接続、電気通信回線設備貸出サービス
附加通信事業者(届出制) 基幹通信事業者から通信回線設備を賃貸し、基幹通信サービス以外の電気通信サービスを提供する事業者
(注:ウェブハード等一部の特殊な類型の附加通信事業は登録制)
PC通信、CRS、DB/DP(Data Base/Data Processing)等

出所:「電気通信事業法」を基に作成

(2)外資規制

「電気通信事業法」第8条により、回線設備を保有する基幹通信事業者に対する外資出資制限は49%までとされている。2013年8月の「電気通信事業法」改正により、米国や欧州連合(EU)等の自由貿易協定(FTA)締結国の外資企業は公益性審査を通過すれば基幹通信事業者の株式49%を超えて取得できるようになった。ただし、主要通信事業者のKTとSKテレコム(SK Telecom)、LG U+(LG Uplus)については、最大49%までの外資規制が維持されている。なお、間接投資拡大は、公益性審査を通じ、国家安全保障等への影響がない場合に許可される。

国内企業に海外投資家が投資を行うためには、現地に持株会社を設立することが求められる。

2 競争促進政策

(1)相互接続料

電気通信設備の相互接続の範囲及び条件、手続、算定方法の基準は科学技術情報通信部が告示「電気通信設備の相互接続基準」で詳細を定める。ボトルネック設備を保有する基幹通信事業者と、市場支配的とみなされた基幹通信事業者は、他の事業者からの要請があった場合は、相互接続の提供を義務付けられている。2004年から長期増分費用(LRIC)による接続料算定方式が導入された。固定電話及び移動電話網の接続料は、2年ごとに改定される。

(2)卸売提供制度とMVNO促進政策

2010年の「電気通信事業法」改正により、MVNOの法的根拠が整備された。移動体通信市場でシェアが最も高いSKテレコムはMVNOへの卸売提供を義務付けられており、更に、卸売料金水準についても科学技術情報通信部の告示で定められている。5Gについても卸売提供を義務付ける。

競争政策の一環として毎年ベースで卸料金引下げ、電波利用料免除、郵便局を活用した販売網拡大等のMVNO促進策が実施されている。2020年9月現在で56社のMVNO登録がある。2021年11月現在、MVNO契約数は1,000万を超え、移動電話加入者に占めるMVNO契約割合は約14%である。大企業系列と中小企業のMVNO間の公正競争上に配慮が加えられ、MNO系列会社のMVNOの市場シェアは合計で50%に制限されている。なお、MVNO市場におけるMNO系列MVNOのシェアは拡大を続け、2021年秋現在で50%にかなり近づいている。

(3)端末流通制度改革

KCCが2011年11月に発表した端末識別番号(International Mobile Equipment Identity:IMEI)制度改善計画により、2012年5月から移動体通信事業者代理店以外の多様な販売チャンネルを通じた端末販売と、海外で購入した端末の利用が可能となった。文在寅政権では通信サービスと端末販売の分離を更に進めようとしている。2019年から移動体通信事業者3社から共通発売される端末は通信サービスと分離して発売されることになった。

端末販売時のインセンティブとしての補助金の不法な水準での支給は顧客差別につながるとして、朴槿恵政権(当時)では規制を大幅強化した。不法な補助金の根絶を目的として2014年10月に施行された「移動体通信端末装置流通構造改善に関する法律(端末流通法)」では、罰則の対象を移動体通信事業者に加え、メーカーと代理店にも拡大した。同法の主な内容は次のとおりである。

同法の補助金上限制度は2017年9月末までの時限措置のため、文在寅政権では更新をせずに廃止された。補助金に代わる通信料金割引率は2017年9月から25%に引き上げられ、補助金よりも通信料金割引を選択する人が増えた。5G商用サービス化以降に補助金競争が再び熾烈化した。KCCは調査の結果、2020年7月に通信事業者3社の不法補助金支給に対して512億KRWの課徴金、販売店125店に対しても過怠料賦課を決定した。

なお、端末流通法施行以降、通信事業者の補助金競争が抑制された結果、端末料金が高止まりする問題点が指摘されてきた。そのため、放送通信委員会は補助金競争誘導による端末価格引下げを図り、次の内容を盛り込んだ端末流通法と告示改正案を2021年10月にまとめた。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

ユニバーサル・サービスの概念は「電気通信事業法」に示されており、「電気通信事業法施行令」で、その内容やユニバーサル・サービス提供事業者の指定、サービス提供による損失補てんについて規定している。ユニバーサル・サービスの内容は、次のとおりである。

ユニバーサル・サービス提供事業者は、科学技術情報通信部が指定する。サービス提供による損失分担については、売上高300億KRW以上の基幹通信事業者が、分担事業者別売上規模に応じて負担することになっている。2019年の「電気通信事業法施行令」改正により、ブロードバンドは2020年からユニバーサル・サービスとなり、提供事業者としてKTが指定された。提供されるブロードバンドのサービス品質や提供対象等については、2019年11月にまとめられた告示で次の基準を設けている。

(2)デジタル・ディバイド解消政策

デジタル・ディバイド解消政策は、「知能情報化基本法」を根拠法とし、科学技術情報通信部が所掌する。同法では、デジタル・ディバイド解消については、国家機関と地方自治体が必要な施策を講じることとしている。

情報通信戦略委員会が2020年6月に発表した「デジタル包摂推進計画」では従来のデジタル・ディバイド解消にとどまらず、国民全体のデジタル環境全般の整備計画を盛り込んだ。具体施策として、住民センターや図書館等公共施設でのデジタル基本教育実施、「全国民向けソフトウェア・AI教育拡大方案」制定、Wi-Fi整備、弱者層向けデジタル見守りサービス提供等が実施される。科学技術情報通信部ではデジタル能力強化事業を進め、全国17の広域自治体の施設1,000か所を活用し、高齢者向けスマートフォン教室等を運用している。さらに、デジタル・トランスフォーメーション(DX)加速で生じる新たなデジタル・ディバイドに幅広く政府横断で対応するため、「デジタル包摂法」制定に向けた作業が進められている。

(3)情報社会化政策

政府は、「国家情報化基本法」に基づき1996年以降は5年ごとに国家情報化基本計画を策定し、ブロードバンド化や電子政府化を短期間で進めてきた。2018年12月に科学技術情報通信部がまとめた「第6次国家情報化基本計画(2018~2022年)」では、データ経済活性化や5G商用化等を盛り込んでいる。

AI時代に対応するため2020年に「国家情報化基本法」は「知能情報化基本法」に全面改正された。新法の主な内容は次のとおりである。

(4)ギガビット級ブロードバンド網構築

2009年以降、ギガビット級ブロードバンド構築事業が進められてきた。その結果、2018年末までに全国85市におけるカバレッジは99.06%に達し、ギガビット級ブロードバンド加入世帯は2019年後半に1,000万を超えた。文在寅政権の第4次産業革命対応の政策課題として、2018年以降は10ギガビット級ブロードバンドの商用サービス化が進められている。「第6次国家情報化基本計画」により、10ギガビット級ブロードバンドのカバレッジを2022年までに85市基準で50%まで拡大することを目指す。

(5)国家災難安全通信網構築計画

2014年4月に発生した旅客船セウォル号沈没事故を受け、朴槿恵大統領(当時)が国家災難安全通信網の構築を国民に約束し、3段階で700MHz帯利用のPS-LTE方式の全国ネットワークを構築することになった。本格事業の構築プロセスを見直した結果、構築時期を2018~2020年、運用を2021~2025年の5年間とする計8年間で1兆5,000億KRW規模の事業として仕切り直された。事業の主管庁は行政安全部である。KTとSKテレコムが2018年末からネットワーク構築を手がけ、2020年から第1段階本格サービスとして一部地域の警察で導入され、2021年3月に全国でのネットワーク構築が完了し、5月から本格サービスが開始された。サービス開始時点での対応端末は9,000台だが、2021年末までに15万台以上普及する見通しである。

また、2021年からのネットワーク本格稼動に合わせ、災難安全通信網の効率的構築と運用の根拠となる「災難安全通信網法」が2021年6月に制定され、12月から施行された。

4 ICT政策

(1)第4次産業革命への対応

文在寅政権期の5年間で進める政策の柱として、第4次産業革命への対応が掲げられ、具体的な政策課題は2017年7月に「国政運営5か年計画」に盛り込まれた。

第4次産業革命の総括省庁は科学技術情報通信部である。第1段階として、国の第4次産業革命の方向性をまとめるため、2017年9月に大統領直属組織として、官民合同メンバーで構成された第4次産業革命委員会が新設された。第4次産業革命委員会は2017年11月、政府横断の第4次産業革命総合対策として「革新成長のための人間中心の第4次産業革命対応計画」(以下、第4次産業革命対応計画)をまとめた。2022年までの文在寅政権の成長戦略の具体的青写真となる同計画では、「I-KOREA 4.0」の政策ブランドで戦略課題を進める。12の産業・サービス分野における2022年までの目標が設定され、主な目標は以下のとおりである。

同計画により、2022年までに経済効果最大128兆KRW、雇用創出効果最大37万1,000人を見込む。

(2)規制緩和

文在寅政権で進める規制緩和方針として、2017年9月に開催された国政懸案点検調整会議で「新政府規制改革推進方向」がまとめられた。これにより、新産業・新技術に対して事前許容・事後規制方式の「包括的ネガティブ規制」への転換が図られるとともに、2019年からICT融合とFinTech分野で規制サンドボックス制度が導入された。規制サンドボックスでは臨時許可・実証のための特例の形で期間と地域を限定して弾力的に新サービスを許可する。

ICT分野の規制サンドボックス導入以降、2021年9月までに合計124件の新技術・サービスを承認した(臨時許可48件、実証特例76件)。

また、地方自治体を対象とした規制サンドボックス制度として「規制自由特区及び地域特化発展特区に関する規制特例法(地域特区法)」を2018年末に制定した。市・道の自治体単位で規制に縛られずに革新的サービスをテストできると同時に関連企業を集積できる規制自由特区を政府が指定する制度で、2019年7月以降に申請テーマに基づいた特区が指定されている。規制自由特区は地域均衡発展に結びつく制度として高い関心を集めている。

(3)デジタル・ニューディール

コロナ禍克服の大型景気回復事業として、政府は2020年7月に「韓国版ニューディール総合計画」を発表した。この事業はデジタル・ニューディールとグリーン・ニューディールを両軸に構成される。5G、AI、ビッグデータ等最新ICT技術を活用するデジタル・ニューディールでは、2025年までに国費49兆KRWを投じ、雇用創出とデジタル化を目指す。次の重点4領域で、全産業での5G/AI活用拡大や行政通信網の5G置換え等のプロジェクトを実施する。個別の代表的プロジェクトとしてデータダム構築が進められる。このうち、メタバース分野は2021年7月にまとめられた修正計画「韓国版ニューディール2.0」で新たに追加された。

(4)個別技術・サービス促進戦略
・AI

2016年3月のアルファ碁ショックを契機に政権トップダウンによるAI対応戦略がスピードアップし、同年12月に、AI活用社会に対応するための政府横断の「第4次産業革命に対応する知能情報社会中長期総合対策」がまとめられた。行政サービスのうち、国防・安全・教育分野におけるAI活用が優先的に進められる。第4次産業革命委員会では2018年5月に「AI R&D戦略」をまとめている。

文在寅政権では2019年12月に「AI国家戦略」をまとめ、「IT強国を超えてAI強国へ」のビジョンを掲げた。2030年までにデジタル競争力世界3位、AIによる経済効果最大455兆KRW、生活の質で世界10位圏入りを目指す。目標達成に向けて九つの戦略と100の個別プロジェクトを進める。

他方、AI時代の利用者の権利と保護原則についてはKCCが2019年11月に、政府・企業・利用者が守るべき基本原則をまとめた。「AI国家戦略」に基づき、すべての社会構成員が順守すべき原則をまとめた「AI倫理基準」が2020年12月に制定された。「AI倫理基準」の具体的実践策として、科学技術情報通信部は人間中心のAI実現に向けて「信頼できるAI実現戦略」を2021年5月にまとめた。この戦略にはスタートアップ支援や、AIの信頼性向上技術開発に2022年から2026年までに総額650億KRWを投じる計画が盛り込まれた。

・クラウド促進

クラウド産業関連育成と利用者保護等を骨子とする「クラウド・コンピューティング発展及び利用者保護に関する法律(クラウド法)」が2015年9月に施行された。第4次産業革命委員会が2020年6月にまとめた「クラウド産業発展戦略」では公共分野のクラウド全面移行、中小企業のクラウド利用支援のためのバウチャー事業拡大、クラウド・フラッグシップ事業等を通じ、2023年までにクラウドによる売上げ500億KRW以上の企業10社以上、従業員数10人以上の中小企業のクラウド導入率40%以上の達成を目指す。2021年7月に行政安全部が発表した「行政・公共機関情報支援クラウド移行・統合推進計画」により、行政・公共機関の情報システムの2025年までのクラウド全面移行が進められることになった。

・ビッグデータ活用の促進

文在寅政権下ではビッグデータ活用促進の根本政策として、第4次産業革命委員会が「データ産業活性化戦略」を2018年6月にまとめた。同年3月に大統領主宰の第1回政府革新戦略会議でまとめられた「政府革新総合推進計画」ではデータ活用行政推進と公共データ全面開放方針を盛り込んだ。同年8月に、革新成長関係長官会合で、データ・AI・水素経済が戦略投資3分野に指定され、これを受けて2023年までの実行計画として「データ・AI経済活性化計画」が2019年1月にまとめられた。この計画により、科学技術情報通信部が産業別(金融・交通・通信等)ビッグデータ・プラットフォーム10か所と、連携する機関別センター100か所の構築を2021年までの3年間のプロジェクトとして進めている。

データ経済活性化と産業基盤整備を目的とした「データ産業振興及び利用促進に関する法律」(以下、データ基本法)が2021年に制定され、2022年4月に本格施行される見通しである。データ基本法は、データ産業分野における生産・分析・連携・活用促進、人材育成、国際協力といった産業育成全体に係る基本法として世界に先駆け法制化された。政府横断のデータ分野司令塔として国家データ政策委員会が国務総理所属下に新設される。

・オープンデータ促進

政府と公共機関が保有する公共データの開放と、これらを活用した民間ビジネスを促進する目的で、2013年10月に「公共データの提供及び利用活性化に関する法律」が施行された。大部分の公共機関は保有する公共データの開放を義務付けられ、公共データ活用のアプリ開発等、民間でのビジネス創出が法的に保証される。同法に基づいて運営する公共データ戦略委員会が公共データ関連の主要政策を審議し決定する。公共データ戦略委員会が2018年2月に決定した「公共データ革新戦略」を受け、行政安全部は700に及ぶ公共機関が保有するデータの所在状況をわかりやすく把握できる「国家データマップ」サービスを2019年4月に開始した。

公共データ戦略委員会は2021年4月、量を追求してきた公共データ開放を、ニーズ中心の質重視に転換するため、「公共データ開放2.0推進戦略」を発表した。2021年9月末現在で6万件の公共データが全面開放され、3,000万件のデータ活用につながっている。2019年末現在で、公共データを活用した民間サービスが2,448種登場している。韓国政府のオープンデータの取組みは世界的にも評価され、2019年OECD公共データ開放指数第1位とされている。

・IoT普及促進

政府のIoT促進基本戦略として、朴槿恵政権期には未来創造科学部(当時)が「IoT基本計画」(2014年5月)、その修正版戦略として「IoT拡散戦略」(2015年12月)をまとめ、2017年まで医療、エネルギー、都市等6分野におけるIoT事業が重点的に進められた。また、戦略育成産業に指定されているIoTは規制改革大臣会議で規制の最小限化方針を決定。これに基づき、民間によるIoT全国ネットワーク早期構築を促進するため、2016年までに専用周波数分配や周波数出力規制緩和を実施した。これにより、通信事業者が早期にLPWA(Low Power Wide Area)全国ネットワークを整備した。

文在寅政権期は2017年12月に科学技術情報通信部がまとめた「第4次産業革命に対応する超連結知能型ネットワーク構築戦略」で、IoT参入規制廃止、IoT周波数の供給幅拡大が盛り込まれた。

・5G促進及び6G開発に向けた政策取組

2019年4月の一般向け5G本格商用化を受け、政府横断の5G活用促進戦略として「5G+(プラス)戦略」が発表された。「5G+戦略」では重点育成を図る5G関連10産業と、スマート工場やスマートシティ等五つの戦略サービスを指定した。5Gは2022年までに全国ネットワークを整備する計画である。戦略関連で官民合わせて30兆KRW以上を投資する。行政・公共分野から先行的に5Gを導入し、戦略分野を中心に5Gの社会実装を国策として進める。「5G+戦略」の最高意思決定機関として、関連省庁大臣・次官級と民間有識者で構成する5G+戦略委員会が2019年6月に立ち上げられ、戦略の進捗は科学技術情報通信部が管理する。

5G産業活性化に向けた支援強化のため、2020年1月、科学技術情報通信部は政府横断で進める「5G投資促進3大パッケージ」を発表した。これにより、5Gネットワーク構築の税控除範囲拡大等が進められる。5G+戦略委員会は2021年の5G重点戦略として、同年1月、①2021年度5G+戦略推進計画、②5G特化網(ローカル5Gに相当)政策方案、③MEC(Mobile Edge Computing)基盤5G融合サービス活性化方案を発表した。これを受けて、2021年からローカル5G制度が新たに導入された。

更に、世界初の6G商用化に向けた取組みとして、科学技術情報通信部は2020年8月、「6G移動通信時代を先導するための未来移動通信R&D推進戦略(6G R&D戦略)」をまとめた。2021年から5年間で2,000億KRWの予算を投じる。6G研究開発は2021年から2028年まで、中核技術開発と商用化支援の2段階に分けて行われる。6G R&D戦略を通じ、6G中核標準特許で世界一、スマートフォン市場シェア世界一、機器市場で世界第2位の達成を目標に掲げる。2021年6月の官民合同6G戦略会議でまとめられた「6G R&D実行計画」では、2025年までに重点分野の技術10種への投資計画が盛り込まれた。

・ブロックチェーン

多様な分野でのブロックチェーン技術導入を進めるため、科学技術情報通信部は2018年6月、「ブロックチェーン技術発展戦略」(以下、発展戦略)をまとめ、実証事業、ブロックチェーン技術新センター構築等の施策を進める。これにより、2022年までにブロックチェーン技術レベルを最先進国の90%に引き上げる、専門人材1万人を育成し、国際競争力を持つ専門企業100社以上の輩出をねらう。2020年に発表された「デジタル・ニューディール総合計画」と「ブロックチェーン技術拡散戦略」を受け、2021年度の政府ブロックチェーン普及事業では1,000万人規模の電子投票システム構築等が進められる。

・メタバース

2021年7月に政府がまとめた「韓国版ニューディール2.0」でオープン型メタバース・プラットフォーム構築等のメタバース産業支援が初めて盛り込まれた。2020年12月に発表された「仮想融合経済発展戦略」の一環として、2021年5月に政府の後押しで民間主導のメタバース・アライアンスが立ち上げられる等、2021年から官民が有望分野としてメタバースに力を入れている。2021年8月に5G+戦略委員会がまとめた「5G+融合サービス拡散戦略」では5G連携を見据え、メタバース専門企業育成や、メタバース・マーケットでの5G活用等を盛り込んでいる。さらに、政府横断総合戦略として「メタバース新産業先導戦略」が2022年1月に発表された。

(5)電子政府

電子政府は1990年代後半から国家戦略として構築され、2002年11月から運用を開始した。2001年には「電子政府法」が制定されており、電子政府は行政安全部の所掌である。国連の電子政府ランキングで韓国は過去3回連続で世界第1位と評価されており(2020年は第2位)、電子政府輸出を伸ばした。現在は電子政府のビッグデータとAI活用が進められている。

2019年10月に政府がAI・クラウド中心のDX対応戦略として「デジタル政府革新推進計画」をまとめた。これにより、各種証明書のペーパーレス化やモバイル身分証導入等が進められ、電子政府の使い勝手が継続的に改善される。2021年は公務員証と運転免許証のスマートフォン搭載が進められた。

2021年6月に行政安全部がまとめた中長期計画としての「第2次電子政府基本計画」では、2025年までに主要公共サービスのDX率80%、行政・公共クラウド移行率100%達成を目指す。

(6)インターネット中立性問題

ネットワーク中立性問題による紛争回避のため、KCCは2011年12月、「ネットワーク中立性及びインターネット・トラヒック管理に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)を発表した。ガイドラインの後続政策として、未来創造科学部(当時)は2013年12月、ネットワーク事業者の恣意的なトラヒック管理を防止し、利用者にトラヒック管理情報を公開することを主な目的とした「通信網の合理的管理・利用とトラヒック管理の透明性に関する基準」を発表した。この基準により、ネットワーク事業者はトラヒック管理情報をインターネット・ホームページ等に公開しなければならず、同基準によりトラヒック管理を施行しようとする場合には、利用約款にこれを反映した後に施行しなければならない。5G時代対応のため、2020年12月にガイドラインが改正された(施行は2021年1月)。改正ガイドラインではネット中立性の例外要件を明確化し、欧米のように特殊サービス概念等を導入した。2021年12月には科学技術情報通信部が同ガイドラインの解説書である「インターネット中立性政策の理解」を発刊した。

(7)ICT分野規制の域外適用

ICT分野において国内で適用される規制を海外事業者が免れ、国内事業者のみ負担が重くなる状況を韓国では国内外逆差別として捉え、国会、科学技術情報通信部、KCCはこの数年間、問題の解消に向けて取り組んできた。その結果として、2018年中に「電気通信事業法」と情報通信網法を改正し、規制の域外適用の根拠を整備し2019年から施行した。情報通信網法改正により、2019年3月から一定規模以上のグローバル情報通信サービス提供事業者は国内代理人の指定を義務付けられた。同時に利用者情報の第三国への再移転についても利用者同意原則を導入し、個人情報の自己決定権の担保も図られた。更に、2020年の「電気通信事業法」改正により、グローバル附加通信事業者に対しても国内代理人指定が義務付けられた。

根拠法が整備されたことで、個別ケースに焦点を当てた規制域外適用の動きが加速化している。2021年9月からの改正「電気通信事業法」施行により、アップル(Apple)やグーグル(Google)等のアプリ・マーケット事業者による特定の決済方式強制禁止を法制化し、世界から注目を集めた。

5 消費者保護政策

(1)政府横断的サイバーテロ対策

文在寅政権期に入ってからは、2019年4月に国家安保室が「国家サイバーセキュリティ戦略」をまとめた。これを履行するための政府横断実行計画として、同年9月に「国家サイバーセキュリティ基本計画」が決定された。基本計画はあらゆるものとつながる5G時代への対応を念頭に置き、政府は2022年までに18の重点プロジェクトと100の個別プロジェクトを進める。

(2)個人情報保護対策

韓国では公共と民間の全体をカバーする「個人情報保護法」があるが、もともとICT、金融等の産業分野ごとで個人情報保護を規定する個別法があり、個別法の規定を優先する場合もあるため個人情報保護体系が分散していた。個人情報保護の強化を図る一方でデータ活用活性化を目的としたデータ3法改正案が2020年1月に成立し8月に施行された。データ3法とは「個人情報保護法」「信用情報法」「情報通信網法」を指す。これらの法改正により、非識別個人情報の活用を制限的に許容する。オンラインの個人情報保護については情報通信網法で規定しKCCが所掌してきたが、個人情報保護体系を一元化するために関連規定が「個人情報保護法」に移管された。これに伴い、行政安全部、KCC、金融委員会の個人情報保護機能を個人情報保護委員会に一元化し、個人情報保護委員会を中央行政機関に格上げして個人情報監督機関の独立性を確保した。

(3)家計に占める通信料金引下政策

李明博政権以降3代にわたる政権において、家計に占める通信料金引下げが政権公約とされ、重要政策課題の一つに位置付けられている。通信料金引下政策は近年になるほど厳しい内容が盛り込まれている。朴槿恵政権(当時)下では、MVNO促進、移動電話加入費の段階的引下げ、端末補助金の透明化を目的とした端末流通法制定、移動体通信料金プラン拡大等が実施された。文在寅政権が国政課題として、任期中に実行する通信料金引下政策は次のとおりである。

政権方針に基づき、2017年後半に端末補助金上限廃止、補助金に相応する通信料金割引幅拡大、低所得層への料金追加減免、2018年は7月から高齢者(基礎年金受給者)への料金減免が進められた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の一環として、2020年9月に、16歳から34歳及び65歳以上の国民を対象に、移動電話1回線につき2万KRWの支援を行った。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信設備及び無線設備(放送受信のみを目的とするものを除く)を製造又は輸入する場合、技術認証を受ける必要があるが、試験・研究や輸出用等の設備の場合は免除される。また、外国で製造され、輸入される通信設備については、「電波法」の規定による、国際条約や国家間の通信機器の認証に関する相互承認協定の内容に応じて、認証が免除される。

認証機関は科学技術情報通信部の傘下機関である国立電波研究院(Radio Research Agency:RRA)で、型式検定はRRAが実施し、型式登録はRRAが認定する認証機関が、適合性評価試験を実施し、試験報告書をRRAに提出する。

Ⅴ 事業の現状

1 市場概要

通信市場では、KT、 SKテレコム、LG U+の主要3社のグループによる競争が展開されている。2010年までにKTとLG U+は系列内での合併を通じて総合通信事業者となった。移動体通信最大手SKテレコムは、系列子会社として固定通信事業者SKブロードバンド(SK Broadband)、プラットフォーム事業者SKプラネット(SK Planet)等を抱える。2019年から通信事業者がケーブル放送を買収する形で通信事業者主導の有料放送市場再編が進行中である。2020年上半期までに、LG U+によるケーブル放送最大手のCJハロー(現LGハロービジョン(LG HelloVision))買収、SKテレコムによるケーブル放送大手Tbroad買収が完了した。2021年8月にはKT系列のKTスカイライフ(KT Skylife)によるケーブル放送大手現代HCN買収が政府承認を得ている。

2 固定電話

国際通信が1991年、長距離通信が1996年、市内通信が1999年に自由化されているが、依然として旧国営事業者KTのシェアが大きい。市内通信市場には、KT、SKブロードバンド、LG U+の3社が存在する。各社の加入者規模は以下の表のとおりで、2021年9月末現在の市内電話(PSTN)加入総数は約1,237万人である。2003年以降に番号ポータビリティが導入されてからは、KTが徐々にではあるが、加入数シェアを落としている。VoIP市場には9社が参入しており、2021年8月末現在の加入数は1,099万人。加入数による事業者の規模は、LG U+、KT、SKブロードバンド、KCTの順である。

国際電話市場では、KT、SKブロードバンド、LG U+、世宗テレコム(Sejong Telecom)、SK Telinkをはじめとする多数の事業者が価格競争を展開している。

主な市内電話事業者(2021年9月末現在)
事業者 免許付与年 事業分野 通信サービス加入者数
KT 1982年 市内・長距離・国際 998万
SKブロードバンド 1997年 市内・長距離・国際 190万
LG U+ 1982年 市内・長距離・国際 49万

出所:科学技術情報通信部

3 移動体通信

(1)主要事業者の概要

移動体通信市場には、SKテレコム、KT、LG U+の3事業者が存在する。中長期的に最大手のSKテレコムのシェアが下がってきている。

主な移動体通信事業者(2021年9月末現在)
事業者 方式 加入者数
SKテレコム W-CDMA、CDMA2000(終了決定)、LTE、5G 2,960万
KT W-CDMA、LTE、5G 1,753万
LG U+ CDMA2000(終了決定)、LTE、5G 1,495万
MVNO 992万
合計 7,200万

出所:科学技術情報通信部

(2)移動体通信サービス動向

韓国は移動体通信新サービスの普及速度が大変速く、スマートフォンもLTE、5Gも世界最速スピードで普及した。移動電話加入数に占めるスマートフォン加入率は9割以上である。2019年4月に世界に先駆けて移動体通信3社が同時に開始した5Gの加入数は2021年11月に人口の4割に相当する2,000万人を超えた。

3社は多様な業界との提携を通じ、スマート工場、スマートシティ、スマート病院等の5G導入BtoBビジネスモデル拡大に力を入れる。2020年以降は特に、5Gモバイルエッジ・コンピューティング基盤のサービス導入分野拡大を図っている。2018年に割り当てられた5G周波数3.5GHz/28GHz帯のうち、3.5GHz帯利用の5Gサービスがまず開始され、28GHz帯活用サービスは2020年12月から実証事業等の形で導入された。

2021年末から新たに導入される、ローカル5Gに相当する5G特化網制度では、メーカー、インターネット・サービス事業者、中堅通信事業者等が参入に関心を示している。2021年12月に、初めて5G特化網周波数の割当て等が行われた。また同月、科学技術情報通信部は、今後、5G特化網の名称を公募により選定した「イウム(e-Um)5G」に変更すると発表した。

4 インターネット

(1)ブロードバンド

1995年以降、韓国では政府主導で他国に先駆けてxDSLとケーブルモデムによるブロードバンド基盤が拡充された。現在はギガビット級高速ブロードバンドのサービス競争が進展している。KTとSKブロードバンドは2018年末から10Gbps級ブロードバンドの商用サービスを提供している。2021年9月末現在の固定網ブロードバンド加入総数は約2,283万で、加入数による市場シェアはKT、SKブロードバンド(SKテレコムの再販売含む)、LG U+の順であり、早くから市場競争が進展している。

(2)Wi-Fi

通信料金引下政策の観点から、朴槿恵政権(当時)に引き続き、文在寅政権でも無料の公共Wi-Fi拡大方針が政権公約に盛り込まれた。政府の公共Wi-Fi構築事業により、2020年度までに公共スペース2万8,132か所と市内バス2万9,100台(自治体構築分5,900台を除く)の全国合計5万7,232か所に無料Wi-Fi拠点が整備された。2020年以降は「デジタル・ニューディール」の一環として、2022年までに合計4万1,000か所の拠点を新規で整備する。今後は特に、バス停や小規模公園、体育施設等の屋外でのWi-Fi整備と老朽化インフラのアップグレードを進める。2020年12月には世界に先駆け、全国すべての市内バス(3万5,006台)に構築が完了した。

2021年10月に科学技術情報通信部がまとめた「公共Wi-Fi高度化方案」では、市内バスWi-Fiバックホールの2023年までの段階的5G置換計画、公共スペースの新規構築拠点での次世代規格Wi-Fi 6E段階的導入、人口密集公共スペースでの28GHz帯5GによるWi-Fiバックホール導入が盛り込まれた。

5 ICT利活用サービス

(1)通信・放送融合サービス

2007年末に制定されたIPTV法を根拠として、KT、SKブロードバンド、LG U+の通信事業者3社は2008年11月以降、リアルタイム放送IPTVを提供している。KTは衛星放送とIPTVの融合サービスも提供する。通信・放送融合サービスとして政府が導入に力を入れたIPTVは成長し、2018年には加入者数でケーブルテレビを上回り有料放送市場の主役となった。2020年下半期(6か月間平均)のIPTV加入者数は1,825万である。

移動体向けのマルチメディア放送として、衛星と地上波の2種類のデジタル・マルチメディア放送(DMB)が国産技術で開発された。有料サービスであった衛星DMBは2012年8月末にサービスを終了したが、VHF帯を利用する無料サービスの地上DMB(移動体向け地上デジタル放送)は、地上放送事業者等がサービスを提供している。

(2)IoT

2016年から2018年にかけて移動体通信3社が複数方式によるLPWA全国ネットワークを構築し、LPWAネットワーク活用の本格サービス競争が展開されている。SKテレコムは2016年6月にLoRa方式、2018年4月にLTE Cat.M1方式のIoT全国ネットワークを構築し、既に構築したLTE-M方式ネットワークと用途に応じて使い分けながらサービス・ラインナップを拡大している。KTとLG U+はLTE-Mに加え、2017年7月にNB-IoT方式の全国ネットワークを共同で構築し、LG U+は更に、2019年4月にLTE Cat.M1全国ネットワーク・サービスも開始している。

(3)インターネット関連サービス

インターネット・サービス最大手NAVERの主な事業分野はポータル、コマース、FinTech、コンテンツ、クラウドである。早くからブロードバンドが発達した韓国のポータル市場では、NAVER、Daum(カカオ(kakao))といった国内ポータルサイトの利用率がグーグルよりも高いことが特徴的である。NAVERの日本法人(旧NHN Japan)は2012年1月にライブドアを吸収合併し、2013年4月にウェブ・サービス事業のLINEとゲーム事業に会社分割した。2021年3月に、Yahoo! JAPANを展開する日本のZホールディングスとLINEが経営統合を完了した。

「カカオトーク」で急成長を遂げた独立系ベンチャーのカカオは、2014年10月にポータル市場第2位のDaumと合併し、NAVERに次ぐインターネット・サービス大手となった。カカオは2017年7月のインターネット専業銀行「カカオバンク」開設以降、金融サービス領域を拡大しながら金融総合プラットフォーム化を目指している。

Ⅵ 運営体等

1 運営体

(1)KT Corporation(KT)
Tel. +82 1588 8448
URL https://www.kt.com/
所在地 90 Buljeong-ro(206 Jungja-dong), Bundang-gu, Seongnam-city, Kyeonggi-do, 13606, KOREA
幹部 ク・ヒョンモ/Hyeon-Mo Ku(最高経営責任者/CEO)
概要

1981年に逓信部(Ministry of Communications)から電気通信事業部門を分離し、韓国電気通信公社として発足した後、2002年5月に政府保有株式をすべて売却して完全民営化を果たした固定通信最大手事業者で、2009年6月に移動体通信市場第2位の子会社KTFと合併し総合通信最大手事業者となった。2020年度の売上高は前年比1.7%減の23兆9,167億KRW、営業利益は前年比2.1%増の1兆1,841億KRWである。

ピョンチャン冬季オリンピックでの5G試験サービスをはじめ、グローバル市場での5G主導権確保を目指し、早くから5G技術開発に取り組んできた。ク・ヒョンモ社長は今後の方向性としてBtoBビジネス重視戦略を2020年10月に発表し、通信ビジネスを超えたデジタル・プラットフォーム企業への転換を宣言している。AI・ビッグデータ・クラウドを中心としたプラットフォームの差別化によりBtoB分野のDX市場で国内首位を目指す。KTの固定・移動体通信事業売上の比率は2016年の66%から2020年の50%に下がった一方で、IT・未来事業といった成長事業領域売上が50%になった。また、BtoB事業受注規模も年平均37%ずつ成長している。

出資者の構成(2020年末)
株主 出資比率
国外投資家 43.6%
国内株主 36.9%
自社株 7.4%
国民年金 11.7%
社員持株組合 0.5%

出所:KT

(2)SKテレコム

SK Telecom Co., Ltd.

Tel. +82 2 6100 2114
URL https://www.sktelecom.com/
所在地 Euljiro 65, Jung-gu, Seoul 04539, KOREA
幹部 ユ・ヨンサン/Young Sang Ryu(SKテレコム代表理事社長/President and CEO)
パク・チョンホ/Park Jung-Ho(SKスクエア代表理事社長/President and CEO)
概要

KTの移動体通信部門である旧韓国移動体通信が前身の国内最大の移動体通信事業者である。2020年度の業績は、年間売上高が18兆6,247億KRWで前年比5%増、営業利益は5Gやメディア・サービス加入者の増加等により前年比21.8%増の1兆3,493億KRWであった。主な系列企業には、半導体大手のSKハイニックス(SK hynix)、固定通信のSKブロードバンドとSK Telink、プラットフォーム・サービスのSKプラネット、インターネット・サービスのSKコミュニケーションズ(SK Communications)等がある。2020年4月にケーブル放送大手Tbroadを買収してSKブロードバンドと合併を完了した。

SKテレコムは企業価値を高めるため、2021年11月にテレコム会社のSKテレコムと半導体・ICT投資会社のSKスクエア(SK square)への会社分割を実施した。会社分割後のSKテレコムは中核3事業の固定・移動体通信、AI基盤サービス、デジタル・インフラ・サービスに専念する。通信事業では5Gでの主導権を固め、メディア・サービスの継続的成長を目指す。

SKスクエアは傘下にSKハイニックスをはじめ、総合セキュリティのAD CAPS、コマースの11番街、Tmapモビリティ等16社を抱える。半導体やICTプラットフォームへの投資を通じて純資産価値を2021年現在の26兆KRWから2025年には75兆KRWに成長させるビジョンを掲げる。

(3)SKブロードバンド

SK Broadband Co., Ltd.

Tel. +82 2 6266 6114
URL https://www.skbroadband.com/
所在地 SK Nam-San Green Building, 24, Toegye-ro, Jung-gu, Seoul 04637, KOREA
幹部 チェ・ジンファン/Choi Jin-Hwan(社長/CEO)
概要

1997年に設立された市場シェア第2位の固定通信事業者ハナロ・テレコムを前身とする、SKテレコムの100%子会社。音声電話及びブロードバンド、IPTV等を提供する固定通信事業者。2008年3月末にSKテレコムがハナロ・テレコムを買収・子会社化し、同年9月、SKブロードバンドに社名変更した。固定・移動メディア・プラットフォームNo.1企業を目指す。2020年度の売上高は3兆7,135億KRW、営業利益は2,309億KRW。2020年4月にケーブル放送Tbroadとの合併を完了した。

(4)LG U+

LG Uplus Corp.

Tel. +82 2 2005 7114
URL https://www.uplus.co.kr/
所在地 32, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, KOREA
幹部 ファン・ヒョンシク/Hwang Hyeon Sik(代表理事/CEO)
概要

LGグループ内の移動体通信事業者LGテレコムと、固定通信事業者でVoIPとIPTVを提供するLG Dacomとブロードバンドを提供するLGパワーコム(LG Powercomm)の3社が2010年1月に合併し、同年7月に現社名に変更された。2020年度年間売上高は13兆4,176億KRW、営業利益は8,862億KRW。合併以降、既存の通信分野の枠を超えて新市場を作り出す「脱通信」戦略を進めている。2021年からのファン社長体制では、2025年までに非通信事業分野売上を全体の30%に引き上げるためにAI、ビッグデータ、クラウド、セキュリティ、BtoBソリューション、コンテンツを主要6分野と位置付けて強化する方針である。早くから5Gコンテンツの海外展開に力を入れ、成果もあげている。BtoB分野ではスマート工場、ドローン、モビリティ等の新事業発掘に力を入れる。2019年末にケーブル放送首位のCJハロー(CJ Hello)買収を完了しLGハロービジョンとして系列に組み込むと同時に、今後5年間に通信放送コンテンツ市場に2兆6,000億KRWを投じる中長期投資計画を発表した。

2 主要メーカー

(1)サムスン電子株式会社

Samsung Electronics Co., Ltd.

Tel. +82 2 2255 0114
URL https://www.samsung.com/sec/
所在地 129, Samsung-ro, Yeongtong-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do, KOREA
幹部 イ・ジェヨン/Lee Jae-yong(副会長)
キム・ギナム/Kim, Ki Nam(代表理事副会長/CEO)
概要

事業部門は、IT & Mobile Communications(IM)、デバイス・ソリューションズ(DS)、Consumer Electronics(CE)、電装部品のHarmanと分けており、デジタル・マルチメディア、情報通信、半導体、LCD等の電気・電子製品の製造、販売、サービス提供に及ぶ、1969年創立の国内最大手メーカーである。CE部門とIM部門の研究開発組織がSamsung Researchである。Samsung Researchは、海外R&Dセンター及びグローバルAIセンターで抱える1万人以上の研究スタッフと連携して次世代移動体通信等の未来技術開発を主導する。2019年末現在で74か国に進出し、世界で230か所の生産拠点・販売拠点・研究所を保有し、約29万人の社員を抱える。2020年の世界市場での移動電話端末販売台数シェアは第1位である。2020年度の売上高は約237兆KRW、営業利益は約36兆KRWである。

(2)LG電子
Tel. +82 2 3777 1114
URL https://www.lge.co.kr/
所在地 LG Twin Towers 128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, Seoul, KOREA 150-721
幹部 チョ・ジュワン/William Cho(社長/CEO)
概要

1958年に創立され、現在の主な事業領域は、ホーム・エンターテインメント(HE)、生活家電のホーム・アプライアンス&エア・ソリューション(H&A)、ビークル・コンポネント・ソリューション(VS)、ビジネス・ソリューション(BS)の4分野である。2021年7月末付で携帯電話端末事業から撤退した。2020年度の売上高は約63兆KRW、営業利益は3兆1,950億KRWである。世界の約130か所に事業所を展開する。

3 インターネット・サービス企業

主なポータル企業
事業者 URL
NAVER https://www.navercorp.com/
カカオ https://www.kakaocorp.com/

放送

Ⅰ 監督機関等

1 科学技術情報通信部

(通信/Ⅰ-1の項参照)

2 放送通信委員会(KCC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

地上放送や総合編成チャンネル、報道専門チャンネル等に対する規制権限はKCCの所掌となる。IPTV、衛星放送等、有料放送事業に関する政策は科学技術情報通信部が所掌する。

3 文化体育観光部(MCST)

Ministry of Culture, Sports and Tourism

Tel. +82 4 4203 2000
URL https://www.mcst.go.kr/
所在地 Government Complex-Sejong, 388, Galmae-ro, Sejong-si 30119, KOREA
幹部 ファン・ヒ/Hwang Hee(長官/Minister)
所掌事務

文化、芸術、宗教、観光、スポーツ、青少年育成等の分野を所掌しており、映像放送産業を含めた全般的コンテンツ産業の振興及び著作権政策を所掌する。

Ⅱ 法令

放送法(Broadcasting Act

従来、個別に規定されていた放送関連の法律を一本化し、地上放送、衛星放送、ケーブルテレビを包括的に網羅する「放送法」が、2000年3月から施行された。同法によって番組の事前審議(検閲)の廃止、視聴者の権利保護の強化等が定められた。ケーブルテレビ、衛星、IPTVを同一の有料放送サービスとして同一の規制を適用するため、IPTV法を「放送法」に統合する、通称統合放送法制定を目指す動きもあるが、2021年末現在、法は統合されていない。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)放送事業免許の制度枠組

放送事業者は「放送法」により、地上放送事業者、総合有線放送事業者、衛星放送事業者、放送チャンネル使用事業者、共同体ラジオ放送事業者の5種類に分類され、それぞれ許可・承認・登録のいずれかを受けてからサービス開始が可能となる。放送チャンネル使用事業者とは、番組を編集制作し、放送を行うソフト事業者に相当する。放送事業者及び関連事業者の事業開始に当たっての手続は以下の表のとおりである。

放送事業の許可・承認・登録制度
事業者の種類 手続の手順
地上放送事業者
共同体ラジオ放送事業者
科学技術情報通信部による無線局開設審査結果を反映し、KCCが放送局に許可を付与する。
衛星放送事業者
総合有線放送事業者
中継有線放送事業者
科学技術情報通信部の許可を受ける。KCCの事前同意が必要。
電光板放送事業者
音楽有線放送事業者
伝送網事業者
科学技術情報通信部で登録する。
放送チャンネル使用事業者 総合編成や報道 KCCの承認を受ける。
ショッピング・チャンネル 科学技術情報通信部の承認を受ける。
上記以外 科学技術情報通信部で登録する。

出所:「放送法」を基に作成

(2)メディア所有規制

2009年7月の「放送法」をはじめとするメディア関連法改正により、新聞社と大企業の放送業界進出が解禁された。法改正により、個人又は一事業者による、地上放送事業者及び総合編成又は報道に関する専門放送チャンネル使用事業者への出資制限が30%から40%に緩和された。新聞社と大企業の出資率については、地上放送は10%、総合編成・報道専門チャンネルは30%までとされた。この「放送法」改正を受けて、2011年末以降、総合編成チャンネル4社(中央日報、朝鮮日報、東亜日報、毎日経済新聞)と報道専門チャンネル1社(聯合ニュース)が開局した。

(3)外資規制

放送事業者に対する外資規制は「放送法」第14条で以下の表のとおりに定められており、地上放送事業者とラジオ放送事業者は外資を全面的に禁じられている。

2007年4月の韓米FTA合意の結果、放送チャンネル使用事業者への間接投資は100%まで拡大されることになった。ただし、放送・総合編成・ホームショッピング専門の放送チャンネル使用事業者については現状維持とされた。

事業ごとの外資規制
事業区分 外資所有制限
地上放送 禁止
総合有線放送 49%
中継有線放送 20%
衛星放送 49%
放送チャンネル使用事業 総合編成チャンネル 20%
報道専門チャンネル 10%
上記以外 49%
伝送網事業 49%

出所:「放送法」を基に作成

(4)有料放送の市場シェア制限

ケーブルテレビとIPTVに対しては、1社の加入者基準市場シェアを有料放送市場全体の3分の1までに制限している。2015年の「放送法」改正時に3年間の時限措置として、ケーブルテレビ、衛星放送、IPTVの各サービスの加入者数を合わせたシェアを3分の1までに制限する、通称「合算規制」が設けられた。この措置は、IPTVと衛星放送を系列内で保有するKTを念頭に置いたものであった。この制度の延長措置はとられなかったため、「合算規制」は2018年6月末で失効した。

(5)地上放送再送信を巡る課題

再送信義務のある地上テレビ放送チャンネルは公共放送KBS 1と教育放送EBSの二つである。通信事業者のIPTVサービス開始以降、地上放送事業者が有料放送メディアに対して再送信有料化を求めるようになり、有料放送メディアと地上放送事業者間の紛争が多発している。

事業者紛争による放送中断事態を防ぐため、2015年末の「放送法」改正により、KCCが紛争事業者に対し、放送の維持・再開を命令できることになった。初の運用ケースとして、2016年10月にMBCが衛星放送への地上波再送信を中断する可能性が高くなった際、KCCは30日間の放送維持を命令した。

再送信料水準をめぐり、2019年11月にケーブル放送業界が政府に算定水準の設定等を要請しており、紛争は長期化している。

2 公共放送関連政策

(1)公共放送のガバナンス

韓国放送公社(KBS)の設置根拠や運営等のガバナンスは「放送法」により定められている。資本金の3,000億KRWはすべて政府が出資する。最高意思決定機関は、11名の非常任理事で構成される理事会である。理事はKCCで推薦して大統領が任命し、任期は3年である。理事会では、KBSの放送の基本運営計画、予算・決算等の財務関連事項、KBSの経営評価とその公表、定款の変更等を決定する。

執行機関は、社長1名、2名以内の副社長、8名以内の本部長及び監事1名とされており、任期は3年である。社長は理事会の要請により大統領が任命する。副社長と本部長は社長が任命するが、副社長の任命には理事会の同意が必要である。

(2)受信料制度

KBSは「放送法」を根拠に受信料制度を設けており、料額はKBS理事会の審議後、KCCを経て国会の承認を得て決定される。受信料は韓国電力の電気料金と合わせて徴収している。2020年度基準では受信料収入は収入全体の約47%を占める。受信料額は1981年から1か月2,500KRWで据え置かれているため、これまでに受信料値上案が数度にわたり国会に提出されているが、各方面からの反発で挫折を繰り返している。

3 コンテンツ関連政策等

(1)コンテンツ規制及び促進政策
クォーター制度

「放送法」で国内番組編成クォーターの根拠を定め、「放送法施行令」で国内制作番組比率の範囲を定め、KCC告示により媒体及びジャンルごとの具体的な比率を定めている。クォーターには国内制作番組クォーターと輸入番組クォーターの2種類がある。クォーターが適用される番組ジャンルは、映画、アニメ、大衆音楽の3分野である。

(2)コンテンツ産業支援

文在寅政権のコンテンツ産業総合振興策として、2019年9月に「コンテンツ産業三大革新戦略」がまとめられた。次の戦略を進めることにより、2022年までにコンテンツ産業の売上額150兆KRW、輸出額130億USD達成を見込む。

更に、情報通信戦略委員会は2020年6月、国内デジタルメディア産業の国際競争力強化を目指す「デジタルメディア生態系発展方案」を発表した。2022年まで国内メディア市場規模10兆KRW、コンテンツ輸出額134億2,000万USD、グローバル・プラットフォーム企業最低5社を目標として支援をする。規制緩和やコンテンツ・プラットフォームの海外展開支援等の分野で55の個別施策を進める。今回、初めて国内OTT(Over The Top)の成長支援策が盛り込まれた。これを受け、複数省庁に分散したOTT関連政策調整と協力強化のため、青瓦台科学技術補佐官を中心に国務調整室、科学技術情報通信部、KCC等関連省庁のハイレベルで構成するOTT政策協議会が立ち上げられた。

(3)放送規制の改善

放送通信委員会が2021年1月、時代に合わなくなった放送市場規制改善のため「放送市場活性化政策方案」を発表した。この政策パッケージには、広告や番組編成等の規制緩和に加え、国内OTT活性化、弱者層のメディア・アクセス環境改善、コンテンツ取引慣行改善等が盛り込まれた。これを受けた措置として、2021年4月の「放送法施行令」改正により、地上放送番組への中間広告解禁と番組編成規制緩和が実行された。

(4)コンテンツ使用料を巡る課題

放送コンテンツ使用料水準を巡る、有料放送事業者とコンテンツ・プロバイダであるチャンネル提供事業者間の紛争が近年多発している。科学技術情報通信部は2021年7月から、有料放送業界共存協議体で業界内での問題解決に向けて議論を開始した。コンテンツ使用料算定基準については関連ガイドライン改定、今後政府が「標準チャンネル評価基準及び手続」を提示すること等が提案された。事業者間協議過程で放送中断等の視聴者被害が発生する場合は是正命令等の措置で対処する方針である。

4 デジタル放送

地上デジタル放送の伝送方式では米国方式のATSCが採用され、2001年10月、商業放送のSBSを手始めに、アジア初の地上デジタル放送が開始された。アナログ放送終了は当初2010年末であった予定を2012年に延期している。また、2012年12月31日に全国一斉終了の計画は、準備ができた地域からスケジュール前倒しで順次アナログ放送を終了する計画に変更された。その後は、地デジ移行は混乱することなく2012年末で終了している。

5 次世代高画質放送

未来創造科学部(当時)は2013年4月、高画質3D放送とUHD(4K、8K)放送等の次世代放送技術の早期導入と世界市場リードを目指し、次世代放送技術評議会を立ち上げた。ケーブルテレビは2014年4月、IPTVは2014年9月、衛星放送は2015年6月から4K本放送を開始した。更に、世界に先駆けた地上4K放送導入のため、2015年に700MHz帯がUHD放送用途に分配され、地上UHD放送標準方式は2016年に米国方式(ATSC3.0)に決定された。

世界初となる地上4K本放送は2017年5月末に首都圏、同年12月に広域市及びピョンチャン冬季五輪開催地域で開始されており、2021年に全国に拡大する計画であった。しかしながら、もともと地上波の直接受信世帯がテレビ保有世帯の5%以下と少ないことに加え、広告収入減に歯止めがかからず財政難の地上放送事業者が、地上4K放送コンテンツやインフラ投資等の免許条件を順守できないことが問題化した。KCC及び科学技術情報通信部ではこれらの環境変化や今後の見通しを踏まえ、2020年12月にまとめた「地上波UHD放送の活性化に向けた政策案」により地上波UHD放送政策を見直した。これにより、首都圏・広域市レベルまで構築された地上波UHD放送網の市・郡地域への全国拡大スケジュールを2023年までと2年延期した。このほかに、UHDコンテンツの編成義務化、視聴者のアクセシビリティ向上、サービスの活性化等の取組みが盛り込まれたが、地上4K放送を取り巻く状況は相変わらず厳しい。

Ⅳ 事業の現状

KCCが毎年度まとめる放送事業者財産状況によると、2020年度の放送事業収益は前年比1.9%増加の18兆106億KRWである。2019年以降は年間売上でIPTVが地上放送を上回っている。

1 ラジオ

KBSが7系統、MBCが3系統、EBSが1系統のサービスを提供している。また、SBSの2系統のほか、地方テレビ放送事業者のTBC、KBC等もサービスを提供している。2019年末現在、テレビ・チャンネルを持たずにラジオ・チャンネルのみ運営するラジオ放送事業者数は21社で、テレビとラジオ両方のチャンネルを運営する事業者数は30社である。

2 テレビ

地上テレビ放送事業者数は、地域民放を含めて30社である。このうち、公共放送についてはKBSが2系統、EBSが1系統の全国放送を行っている。また、公営放送としてMBCが1系統の全国放送を行っている。商業放送では、首都でサービスを提供している地域放送事業者のSBSが、地方の商業放送事業者とネットワークを結成して全国放送を行っている。

3 衛星放送

総合通信事業者KTの子会社であるKTスカイライフが2002年3月から「スカイライフ」のサービス名でデジタル衛星放送を提供している。2021年9月末現在の放送サービス加入世帯数は392万で、このうち4K放送加入世帯数は153万である。2020年10月にMVNOサービスを開始した。また、大手ケーブル放送事業者現代HCNの買収については2021年8月までに公正取引委員会と科学技術情報通信部による政府承認プロセスをすべて終了した。

4 ケーブルテレビ

2019年末現在のケーブルテレビ事業者(SO)数は91社で、加入数200万を超える大手総合有線放送事業者(MSO)は、LGハロービジョン、SKブロードバンド(旧Tbroad)、D’LIVEで、このうち約400万の加入者を抱えるLGハロービジョンが業界最大手である。SKブロードバンドとLGハロービジョンはMSOとして20社以上の系列SOを抱える。ケーブルテレビは通信事業者のIPTVに押されて加入数が停滞している。2020年12月末現在の加入数はケーブルテレビが約1,313万、IPTVが1,854万である。

2019年から2020年にかけて通信事業者によるケーブルテレビ大手の買収を通じた有料放送業界再編が進行中である。2020年上半期までにケーブルテレビ第1位(LGハロービジョン)と第2位(SKブロードバンド)の買収が完了し、2021年8月には業界第5位の現代HCNのKTスカイライフによる買収が政府の承認を得た。業界第3位のD’LIVEと第4位のCMBも売却先を探している。

5 OTT

グローバルOTTに対抗するため国内OTTの再編とリニューアルが進んでいる。国内OTTの2強とされるのが「wavve」と「Tving」である。SKテレコムのサービス「オクスス」と地上放送事業者3社の「POOQ」が統合され、国内最大のOTTサービス「wavve」として2019年9月にサービスを開始した。メディア・コンテンツ最大手CJ ENMは自社のOTTサービス「Tving」を2020年10月に分社した。Tvingには総合編成チャンネルJTBCが資本参加しコンテンツ供給等で協力している。

Ⅴ 運営体

1 韓国放送公社(KBS)

Korean Broadcasting System

Tel. +82 2 781 1000
URL https://www.kbs.co.kr/
所在地 13 Yeouigongwon-ro, Youngdungpo-gu, 07235 Seoul, KOREA
幹部 キム・ウィチョル/Kim Eui-chul(社長/President and CEO)
概要

政府出資の特殊法人である。主な財源は受信料収入と広告収入である。四つの地上テレビ放送チャンネル(KBS 1、KBS 2、UHD 1、UHD 2)、二つの衛星放送チャンネル(KBS World、KBS World24)、七つのラジオ・チャンネルを運営している。このほかに、地上DMBで四つのチャンネルを提供している。KBS 1は報道・時事・スポーツ・教養・ドキュメンタリー、KBS 2は家庭・芸能・娯楽を中心に番組を編成する。KBS 1テレビとKBS 1ラジオ放送では1994年10月以降広告を廃止している。

2 文化放送(MBC)

Munhwa Broadcasting Corporation

Tel. +82 2 789 0011
URL https://www.imbc.com/
所在地 267 Seongam-ro, Mapo-gu, Seoul, 03925, KOREA
幹部 パク・ソンジェ/Park Sung Jae(代表理事社長/President and CEO)
概要

16の系列局によって全国ネットワークを運営し、政府出資の財団である放送文化振興会が株式の70%を所有する、株式会社形態の公営放送事業者である。現在運用中のチャンネル数は、地上テレビ1、AM及びFMラジオ3、ケーブル5、衛星5、地上DMB 4である。最高意思決定機関は放送文化振興会の理事会で、理事会を構成する9人の理事はKCCにより任命される。

3 SBS

Tel. +82 2 2061 0006
URL https://www.sbs.co.kr/
所在地 161 Mokdongseo-Ro, Yangcheon-gu, 07996 Seoul, KOREA
幹部 パク・ジョンフン/Park Jeong Hun(代表理事社長/President and CEO)
概要

ソウルの商業ローカル放送事業者。1991年にAMラジオ放送・テレビ放送を、1996年にはFMラジオ放送を開始した。地方の放送事業者とネットワークを組むことで、実質的に全国放送を行っている。

4 韓国教育放送公社(EBS)

Educational Broadcasting System

Tel. +82 2 526 2300
URL https://www.ebs.co.kr/
所在地 281, Hallyuworld-ro, Ilsandong-gu, Goyang-si, Gyeonggi-do, 10393, KOREA
幹部 キム・ミョンジュン/Kim Myng-Joong(社長/President and CEO)
概要

1951年に開始されたKBSのラジオ学校放送を起源とする。1990年に韓国教育開発院付設教育放送としてKBSから分離し、テレビとラジオのチャンネルを持つ教育専門全国ネットワーク局EBSに改組された。1997年に衛星教育放送を開局し、2000年に公社に改組された。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)科学技術情報通信部

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)放送通信委員会(KCC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

電波政策については、2013年の朴槿恵政権発足に伴う省庁再編により政策機能が3機関に分散された。電波政策総括と通信周波数管理は科学技術情報通信部、放送周波数管理はKCC、新規周波数割当・再編は国務総理傘下の周波数審議委員会で所掌する。

2 標準化機関

韓国情報通信技術協会(TTA)

Telecommunications Technology Association

Tel. + 82 31 724 0114
URL https://www.tta.or.kr/
所在地 47 Bundang-ro, Bundang-gu, Seongnam-city, Gyonggi-do, 13591, KOREA
幹部 チェ・ヨンヘ(会長/President)
活動概要

1988年に設立された韓国情報通信技術協会(TTA)は、「放送通信発展基本法」に基づき、情報通信分野の標準規格の策定を行っている。TTAのメンバーには、通信事業者、サービス・プロバイダ、機器メーカー、学界、研究機関等が含まれる。TTAの活動目的は国内外の最先端技術を標準化することで、韓国経済の発展、情報通信分野の産業振興、技術優位性に寄与することにある。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 周波数割当制度

韓国では、対価割当方式と審査方式の二つの周波数割当方法が採用されてきたが、2011年からはこれに加えてオークション制度が導入された。事業者から出捐金を徴収する形の対価割当方式はこれまでに、IMT-2000(3G)、位置情報サービス(LBS)、衛星DMB、WiBroといった経済的価値が高く競争的需要があると判断された周波数の割当ての際に採用されてきた。割当対価は、周波数の割当てを受けて経営する事業の予想売上額、割当対象周波数及び帯域幅等の周波数の経済的価値を考慮して科学技術情報通信部が決定する。2011年からは、競争的需要がある場合には周波数オークションを実施し、競争的需要のない場合や特別な事情のある場合は対価割当方式を採用する。

2020年11月には、科学技術情報通信部が2021年に利用期間が終了する3G及び4Gの移動通信用周波数の再割当にかかわる利用期間及び割当対価等を定めた「移動通信周波数再割当の細部政策方案」を発表した。

現在の市場環境が4Gから5Gへの転換途上であり、通信事業者の周波数利用戦略に対する不確実性が増加していることを考慮し、市場の不確実性を解消し、5G転換を促進できるよう、周波数利用期間については、サービス・ライフサイクル分析に基づき弾力的な利用期間を設定するとともに、周波数割当対価は5G導入による市場環境、5G投資等を考慮した適正な対価を設定することにしたとしている。周波数割当対価については、5Gへの転換期であることを考慮した結果、5G無線局の構築水準によって割当対価を設定することが、再割当対象周波数の経済的価値を最もよく反映できると判断し、2022年までの5G基地局の構築数が多いほど割当対価が下がる仕組みとしている。

 2022年までキャリア3社ごとに5G基地局の数が12万局以上(キャリア3社が共同で構築した無線局を含む。以下同じ)の場合は、3兆1,700億KRW(キャリア3社の合計額。以下同じ)、10万局以上~12万局未満の場合は3兆3,700億KRW、8万局以上~10万局未満の場合は3兆5,700億KRW、6万局以上~8万局未満の場合は3兆7,700億KRWを適用。

一方、審査方式は、①電波資源利用の効率性、②申請者の財政能力、③申請者の技術的能力、④当該周波数の特性やその他周波数利用に必要な事項、の観点から審査が行われ、周波数割当が実行される。

対価割当及びオークションによる収入は、「放送通信発展基本法」による放送通信発展基金(科学技術情報通信部・KCC管理)と、「情報通信産業振興法」による情報通信振興基金(科学技術情報通信部管理)に編入される。現在二つに分かれているこれらのICT分野基金を情報通信放送発展基金として再編・一本化し、重複事業も今後見直す方針が2019年10月に発表されたが、2021年11月現在、二つの基金の統合は実現していない。

2 無線局免許制度

無線局を開設する場合は、原則、許可が必要である。ただし、移動電話用無線局等は、許可を受けたものとみなされる。また、発射する電波が弱い無線局、受信専用の無線局、又は、周波数割当を受けた者が電気通信役務を提供するために開設する無線局の場合は、届出で済む。更に、発射する電波が微弱の無線局であって、大統領令が定める無線局の場合は、届出なしに開設できる。軍や駐韓外国公館等が周波数使用承認を得た場合は、許可や届出をせずに無線局を開設できる。

3 電波振興基本計画の策定

「電波法」により5年ごとに中長期的電波政策ビジョンを示す「電波振興基本計画」が策定される。科学技術情報通信部は2019年1月、2023年までの今後5年間の「電波振興基本計画」をまとめ、四つの戦略の下に11課題を設定した。今回の基本計画ではこれまでの通信・放送事業者中心の政策を見直し、交通・製造・物流・医療等の多様な電波利用対策に重点を置いている。5Gについては2510MHz幅の周波数追加方針が示された。「電波振興基本計画」を受けて5G周波数追加供給のためのワーキング・グループも立ち上げられた。

更に「電波振興基本計画」を受け、①周波数免許制度一本化、②無線局開設運用の事前規制緩和、③周波数割当対価と周波数利用料を周波数免許料に一本化、④電磁波安全情報センター設置根拠を盛り込んだ「電波法」改正案を2019年11月に立法予告したが、2021年11月現在、同法は未改正である。

4 新たな周波数分配

(1)中長期周波数総合計画と5Gへの周波数追加供給

2017年1月の第1回経済関係閣僚会合で、第4次産業革命に対応する中長期周波数総合計画として「K-ICTスペクトラム・プラン」がまとめられた。同プランでは今後10年間で合計40GHz幅の周波数を確保・供給する。5G用周波数帯分配計画方針も初めて盛り込まれた。5G用には2018年までに28GHz帯で最少1000MHz幅、3.5GHz帯で300MHz幅の合計1300MHz幅以上の新規周波数を確保する計画が盛り込まれた。

その結果、5G用途周波数として2018年にオークションで計2680MHz幅が割り当てられた。また、2021年12月科学技術情報通信部は、3.5Ghz帯の20MHz幅を5G用に追加で割り当てる方針を決定した。具体的な割当計画は今後検討される。

「5G+戦略」(通信/Ⅲ-4(4)の項参照)を受けて2019年11月に科学技術情報通信部がまとめた「5G+スペクトラム・プラン」では、5G用途周波数として2026年までに最大2640MHz幅を発掘し、現在の倍の5320MHz幅に拡大する計画を盛り込んだ。同時に、次世代Wi-Fi用に6GHz帯の免許不要帯として開放する計画も盛り込まれ、2020年10月の周波数審議委員会で6GHz帯開放が最終的に決定した。

(2)700MHz帯の活用

地デジ移行跡地の700MHz帯の用途決定を巡り、通信業界と放送業界の綱引きが長らく続いたが、2015年に決着がついた。2014年11月に国家災難安全通信網に700MHz帯の20MHz幅分配が決定された。残りの用途決定については2015年に国会が介入する形となり、UHD放送30MHz幅、通信40MHz幅で分配された。

5 電波監視体制

電波監視は科学技術情報通信部傘下機関の中央電波管理所(Central Radio Management Office)が行う。中央電波管理所は電波監視のほか、無線局許可及び電波利用料徴収、周波数利用環境調査、不法機器・設備の取締り、通信事業者の登録・届出・監督等を行う。全国10か所の分所と京畿道利川市の衛星電波監視センターで構成される。

6 電波利用料制度

日本と同様に、無線局施設者に対する電波利用料制度があり、四半期ごとに利用料を徴収する。電波利用料収入は「電波法」により、電波監理に必要な経費の充当と電波関連分野振興のために利用することとされている。電波利用料は一般財源である。

Ⅲ 周波数分配状況

1 国家周波数計画

2 周波数オークション

周波数割当方法として2011年からオークション方式が導入され、2018年までに計4回のオークションが実施された。これまでに実施されたオークションは既存移動体通信事業者3社を対象とし、次の帯域を割り当てた。

2016年のLTE周波数追加を目的としたオークションではこれまでで最多の5ブロック、合計140MHz幅を対象とした。KTが1.8GHz帯、LG U+が2.1GHz帯、SKテレコムが2.6GHz帯の計80MHz幅を確保したが、700MHz帯(40MHz幅)は買い手が付かずに流札となった。2018年6月に実施された5G用周波数オークションでは、3.5GHz(280MHz幅)/28GHz(2400MHz幅)を対象とし、既存3社がそれぞれの帯域を落札した。

3 移動体通信新規参入

3社体制の移動体通信市場への第4の移動体通信事業者新規参入が2016年までに7回にわたり試みられてきたが、頓挫を繰り返してきた。2016年2月以降、移動体通信市場新規参入計画は保留されている。

4 ローカル5Gの導入

28GHz帯有効活用とBtoB分野5G促進をねらいとして2021年から新たにローカル5Gに相当する「5G特化網」制度が導入された。科学技術情報通信部が2021年1月に「5G特化網政策方案」でローカル5G制度導入を発表した。これを受けた同年6月の「5G特化網周波数供給方案」で、当初予定していた28GHz(600MHz幅)に加えて4.7GHz(100MHz幅)の追加供給計画を発表した。5G特化網の申請受付は10月末から開始され、2021年12月に、初めて5G特化網周波数の割当て等が行われた。

5 周波数譲渡及びリース制度

韓国では周波数譲渡及びリースの実績はない。電波資源利用の効率性向上のため、周波数譲渡・リースについての承認取消制度、衛星周波数の譲渡及びリース承認制度等が2015年の「電波法」改正により導入された。

6 周波数共用

5Gやスマートシティ等の融合サービス提供のため周波数需要の急増が見込まれる。このような背景から科学技術情報通信部は周波数共用を進めるため、具体的な手続等を盛り込んだ告示「周波数共同使用範囲と条件、手続、方法等に関する基準」を2019年12月に制定した。