大韓民国(Republic of Korea)

通信

Ⅰ 監督機関等

科学技術情報通信部

Ministry of Science and ICT

Tel. (代)局番なしの1335 +82 44 202 4180(夜間)
URL https://msit.go.kr/
所在地 477, Galmae-ro, Sejong-si, 30109, KOREA
幹部 ペ・ギョンフン/Bae Kyunghoon(副総理兼長官/Minister)
所掌事務

韓国では新政権成立に合わせて省庁再編が実施される。そのため、過去20年間で情報通信分野政策所掌省庁(韓国では「部」が省に相当)は、情報通信部→放送通信委員会→未来創造科学部→科学技術情報通信部と再編を重ねてきた。李在明政権発足による2025年10月の省庁再編時には、科学技術情報通信部の放送メディア関連政策機能を新設の放送メディア通信委員会に移管し、科学技術情報通信部長官が科学技術副総理を兼任することになった。科学技術情報通信部のICT分野における所掌事務は以下のとおりである。

放送通信利用者保護やインターネット倫理等通信分野の利用者保護政策は放送メディア通信委員会が所掌する。

Ⅱ 法令

科学技術情報通信部が所掌する主な法令は以下のとおり。

分野 法令
融合分野 知能情報化基本法、放送通信発展基本法、情報通信振興及び融合活性化等に関する特別法(ICT特別法)
通信分野 電気通信基本法、電気通信事業法、電波法、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律(情報通信網法)、情報保護産業の振興に関する法律、クラウドコンピューティング発展及び利用者保護に関する法律(クラウド法)、仮想融合産業振興法、人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法(AI基本法)、デジタル包摂法

放送メディア通信委員会との共管

出所:科学技術情報通信部

1 放送通信発展基本法

通信・放送融合環境に対応するため、「電気通信事業法」と「放送法」の基本部分を一本化した融合法として2010年に施行された。通信・放送分野の振興と、科学技術情報通信部と放送メディア通信委員会の独自財源としての放送通信発展基金の根拠等を定めている。

2 電気通信事業法

公衆電気通信事業及び電気通信設備の運営管理、利用者に関する基本法令で、電気通信事業の分類及び許可等に関する要件、競争促進及び利用者保護、電気通信設備の設置及び保全について規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)免許政策の制度枠組

電気通信事業者の分類は2018年末の「電気通信事業法」改正により、従来の3種類から、基幹通信事業者と附加通信事業者の2種類に再編されると同時に、基幹通信事業が許可制から登録制に緩和された。電気通信事業者区分の詳細は次のとおりである。2025年7月現在で基幹通信事業者のうち回線設備保有事業者が99社、同年9月現在で回線設備未保有事業者が582社登録している。これまで地方自治体は基幹通信事業の運営を認められていなかったが、2024年の「電気通信事業法」改正で規制が緩和され、自治体による非営利公共目的の公共Wi-Fiと自治体事務処理目的のIoT事業に限り基幹通信事業者登録が可能となった。これにより、ソウル市が2025年8月に初の自治体基幹通信事業者として登録された。

電気通信事業者の分類
区分 定義 サービス内容
基幹通信
事業者
(登録制)
電気通信回線設備を設置または利用して、電話、インターネット接続等の公益性の高い基幹通信サービスを提供する事業者(通信事業者以外の企業が、付随的に基幹通信サービスが含まれる商品を販売する場合は届出制を適用) 電話、インターネット接続、電気通信回線設備貸出サービス
附加通信
事業者
(届出制)

基幹通信事業者から通信回線設備を賃貸し、基幹通信サービス以外の電気通信サービスを提供する事業者

(注:ウェブハード等一部の特殊な類型の附加通信事業は登録制)

PC通信、CRS、DB/DP(Data Base/Data Processing)等

出所:「電気通信事業法」を基に作成

(2)外資規制

「電気通信事業法」第8条により、回線設備を保有する基幹通信事業者に対する外資出資制限は49%までとされている。2013年8月の「電気通信事業法」改正により、米国や欧州連合(EU)等の自由貿易協定(FTA)締結国の外資企業は公益性審査を通過すれば基幹通信事業者の株式49%を超えて取得できるようになった。ただし、主要通信事業者のKTとSKテレコム(SK Telecom)、LG U+(LG Uplus)については、最大49%までの外資規制が維持されている。なお、間接投資拡大は、公益性審査を通じ、国家安全保障等への影響がない場合に許可される。

国内企業に海外投資家が投資を行うためには、現地に持株会社を設立することが求められる。

2 競争促進政策

(1)相互接続料

電気通信設備の相互接続の範囲及び条件、手続、算定方法の基準は科学技術情報通信部が告示「電気通信設備の相互接続基準」で詳細を定める。ボトルネック設備を保有する基幹通信事業者と、市場支配的とみなされた基幹通信事業者は、他の事業者からの要請があった場合は、相互接続の提供を義務付けられている。2004年から長期増分費用(LRIC)による接続料算定方式が導入された。固定電話及び移動電話網の接続料は、2年ごとに改定される。

(2)卸売提供制度とMVNO促進政策

2010年の「電気通信事業法」改正により、MVNOの法的根拠が整備された。移動体通信市場でシェアが最も高いSKテレコムはMVNOへの卸売提供を義務付けられており、更に、卸売料金水準についても科学技術情報通信部の告示で定められている。

競争政策の一環として毎年ベースで卸料金引下げ、電波利用料免除、郵便局を活用した販売網拡大等のMVNO促進策が実施されている。2024年現在、MVNO市場には約70社が参入している。2025年7月現在の移動電話契約ベースのMVNO契約数は1,020万で、移動電話加入者に占めるMVNO契約割合は約17.8%である。MNO系列MVNOの加入者シェアは既に50%近い状態が続いていることが問題視されている。2024年に大企業系列MVNOのシェアを60%以内に制限する「電気通信事業法」改正案が国会で審議されたが、2025年11月現在、法は改正されていない。

(3)端末流通制度改革

2014年に施行された「移動体通信端末装置流通構造改善に関する法律(以下、端末流通法)」により、端末補助金に相応する通信料金割引導入や、端末補助金水準の公示による透明化といった一定の成果があった反面、通信事業者間の競争停滞等で端末価格が高止まりする弊害が指摘されてきた。そのため、2024年初めに尹錫悦政権(当時)は同法の廃止方針を決定し、同年末に端末流通法廃止案が国会で可決され、2025年7月22日の同法廃止に伴い端末補助金規制が廃止され端末販売は自由競争化された。補助金に相応する通信料金割引制度や不当な差別禁止等の措置は「電気通信事業法」に移管された。

また、端末価格引下策の一環として、科学技術情報通信部は中古端末取引促進のため、2025年5月から中古端末安心取引事業者認証制度を導入した。同時に、中古端末販売事業者と購入者間の所有権紛争防止を目的として、取引事実確認サービス制度も導入している。

(4)規制改善

李在明政権期の2025年から、これまで複雑に利害が絡むために解決が難しかった規制解消を目的として、官民合同会議プラットフォームの中核規制合理化戦略会議が立ち上げられた。まず、AI世界トップ3国入りを目指すためのデータ活用、自律走行モビリティ、ロボット分野の規制合理化を進める計画である。データ活用では、AI学習のための著作権データを企業が使いやすくするため、2025年中にガイドライン制定でデータ活用ルールを明確化するとともに、著作物の合理的な取引・補償システムを整える。ロボット分野では、AIロボット規制を見直して生活や産業現場での活用を加速化する方針である。新産業規制の合理化を更にスピードアップするため、省庁別に運用してきた規制サンドボックスの統合や、地域活性化に向けたメガ特区創設等も進められる。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサルサービス

ユニバーサルサービスの概念は「電気通信事業法」に示されており、「電気通信事業法施行令」で、その内容やユニバーサルサービス提供事業者の指定、サービス提供による損失補てんについて規定している。ユニバーサルサービスの内容は、次のとおりである。

ユニバーサルサービス提供事業者は、科学技術情報通信部が指定する。サービス提供による損失分担については、売上高300億KRW以上の基幹通信事業者が、分担事業者別売上規模に応じて負担する。ユニバーサルサービスのブロードバンド提供事業者としてKTが指定されている。提供されるブロードバンドのサービス品質や提供対象等については、告示で次の基準を設けている。なお、農漁村地域へのサービス拡大に向けて、2023年11月の告示改正によりブロードバンドの損失補てん率引上げ等制度改善が図られた。

(2)デジタルディバイド解消政策

AIとデジタル技術の発展に伴い発生するデジタルディバイド解消政策を進めるため、2025年1月に「デジタル包摂法」が制定され、2026年1月から施行された。同法には、地域住民のためのデジタル能力センターの指定、デジタル包摂影響評価、使いやすいキオスク端末普及に向けたメーカーの義務等が盛り込まれた。

科学技術情報通信部では2020年からデジタルディバイド解消事業として、全国17の広域自治体の施設1,000か所を活用する形の「デジタル学び場」を設け、無人端末やスマートフォン、生成AI活用等の様々な教育を提供している。李在明政権の国政課題「世界で最もAIを活用する国実現」では、「みんなのAI」基盤構築に向けた施策として「AIデジタル学び場(仮称)」の整備を盛り込んでいる。

(3)国家災難安全通信網構築計画

2014年4月に発生した旅客船セウォル号沈没事故を受け、朴槿恵大統領(当時)が国家災難安全通信網の構築を国民に約束し、3段階で700MHz帯利用のPS-LTE方式の全国ネットワーク構築が進められ、2021年5月に本格サービスが開始された。事業の主管庁は行政安全部である。ネットワーク本格稼動に合わせ、災難安全通信網の効率的構築と運用の根拠となる「災難安全通信網法」が2021年12月から施行された。この法律により政府は5年ごとに災害安全通信基本計画を策定することとなり、2022年7月に「第1次災難安全通信網基本計画(2022~2026)」がまとめられた。

4 ICT政策

(1)李在明政権のICT政策方向

李在明政権が任期中の5年間で達成する123の分野別政策目標を国政課題として2025年9月に決定した。このうち科学技術情報通信部のICT分野に関する国政課題は以下のとおりでAIに焦点が置かれている。

なお、通信料金引下政策については企画財政部の国民生活費負担軽減分野として、データ安心オプションを全面導入する方針が盛り込まれている。

(2)AIガバナンス

2024年から李在明政権期の2025年にかけて国のAIガバナンスが整備された。国のAI分野政策最高決定機関として2024年に立ち上げられた国家AI委員会は、権限を大幅に拡大してAIコントロールタワーとするために2025年9月に国家AI戦略委員会に再編された。国家AI戦略委員会には大統領が委員長として就任し、大統領が直接AI政策に関与する。国家AI戦略委員会では李在明政権の国家AI戦略「大韓民国AI行動計画(案)」を2025年12月に発表した。行動計画にはAI 3強国入りを目指すための三つの政策軸と12の戦略分野に98の個別施策が盛り込まれた。

また、2025年1月にAI関連産業育成支援とAIの安全性確保の根拠を盛り込んだ「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法(以下、AI基本法)」が公布され、2026年1月に施行された。これにより、韓国がEUに次いでAI基本法を制定した2番目の国となった。

(3)経済安全保障

政府は2022年から国家・経済安全保障の側面からAI・半導体・次世代移動体通信等の国家戦略技術12種と50の細部重点技術を指定し集中支援をしてきた。2023年に施行された「国家戦略技術育成に関する特別法(以下、国家戦略技術育成特別法)」に基づき科学技術情報通信部は「大韓民国科学技術主権青写真―第1次国家戦略技術育成基本計画(2024~2028)」をまとめ、戦略12技術に今後5年間で30兆KRW以上を投入する。特に、可視的効果が高い10プロジェクトとして6Gや都心航空交通(Urban Air Mobility:K-UAM)、AI半導体活用クラウド等の開発を本格的に進める。2025年は戦略技術開発に6兆8,000億KRWの国家予算を投じ、AI半導体Kクラウド、量子技術、6Gネットワーク産業技術開発等10件のフラッグシッププロジェクトを進める。

(4)個別技術・サービス促進戦略
①AI

科学技術情報通信部が2023年9月に発表した「大韓民国人工知能(AI)跳躍方案」により、AI国際協力拡大、国民のAI日常化推進、「デジタル権利章典」策定、AI倫理・信頼性確保が進められた。

ディープシークショックを契機に政府総合対策として2025年2月に「AIコンピューティング基盤(インフラ)拡充を通じた国家AI競争力強化方案」がまとめられた。主なプロジェクトは以下のとおりで、これらの施策は李在明政権の国政課題にも引き継がれている。

科学技術情報通信部は2025年10月にNVIDIAからGPU 26万枚以上を確保する方針を発表し、続けて国内AI主要企業とGPUワーキンググループを立ち上げている。

②衛星通信

2022年以降の国産ロケット打上げ成功を受け、韓国は宇宙・衛星分野の強化に本格的に乗り出した。科学技術情報通信部が2023年9月に発表した「衛星通信活性化戦略」を通じ、2030年までに衛星通信分野で30億USD以上の輸出達成を目指す。この戦略の中核事業に位置付けられている低軌道衛星通信技術開発事業では2025年から6年間で総事業費3,199億KRWを投じ、2030年初めまでに6G標準基盤の低軌道通信衛星2基を打ち上げる計画である。

低軌道衛星通信サービス提供に向けた制度整備は2025年4月までに完了している。国内初の低軌道衛星通信サービスとして、SK TelinkがEutelsat OneWebの衛星を利用する形のサービス利用約款を同年9月に公開した。スターリンク活用の低軌道衛星通信サービスは2025年12月から開始され、SK TelinkとKT SATが国内公式リセラーとして法人向けサービスを提供している。

③データ活用の促進

データ経済活性化と産業基盤整備を目的とした「データ産業振興及び利用促進に関する基本法」(以下、データ基本法)が2022年4月から施行された。データ基本法は、データ産業分野における生産・分析・連携・活用促進、人材育成、国際協力といった産業育成全体に係る基本法として世界に先駆け法制化された。データ基本法施行を受け、政府横断のデータ分野政策司令塔として国務総理を委員長とする国家データ政策委員会が2022年9月に立ち上げられた。

④6G技術開発及び次世代ネットワーク戦略

世界初の6G商用化に向けた技術開発戦略として、科学技術情報通信部は2020年8月、「6G移動通信時代を先導するための未来移動通信R&D推進戦略」(以下、6G R&D推進戦略)をまとめ、2021年から5年間で2,000億KRWの予算を投じる6G研究開発に着手した。6G研究開発は2021年から2028年まで、中核技術開発と商用化支援の2段階に分けて行われる計画で、2026年にサービス試行、2028~2030年での商用化を目指す。6G R&D推進戦略を通じ、6G中核標準特許で世界一、スマートフォン市場シェア世界一、機器市場で世界第2位の達成を目標に掲げる。

前政権期の2022年9月に発表された国家IT戦略「大韓民国デジタル戦略」では5G/6Gを戦略育成分野の一つに指定した。同戦略に基づき、2026年からは6G標準特許で先行、2026年に世界初の6Gプレサービスのデモンストレーション推進を目指す。

李在明政権の次世代総合ネットワーク戦略として科学技術情報通信部は2025年12月に「Hyper AIネットワーク戦略」を発表した。同戦略の主な内容は次のとおり。

⑤OpenRAN

科学技術情報通信部が2023年8月に「OpenRAN活性化政策推進方案」を発表すると同時に、業界団体のOpenRAN Industry Alliance(ORIA)を設立した。これにより、商用化支援インフラ構築、技術・標準競争力確保、官民協力基盤エコシステム構築等を進める。業界支援策の一環としてOpenRAN機器の国際公認認証・試験拠点のKorea OTIC(K-OTIC)が開設された。また、国内外企業が装備の相互運用性を検証する国際イベントを年2回開催し、国際共同研究も積極支援する。ORIAは政府と連携してOpenRAN技術開発を進める。

科学技術情報通信部は次世代ネットワーク早期対応を見据えて2025年のOpenRAN実証事業の範囲を拡大し、5G特化網とAI-RANも対象に含めた。

⑥メタバース

2021年7月に政府がまとめた「韓国版ニューディール2.0」でオープン型メタバースプラットフォーム構築等のメタバース産業支援が初めて盛り込まれて以降、政府のメタバース分野支援が開始された。2022年1月には政府横断総合戦略として「メタバース新産業先導戦略」が発表された。2023年2月にはメタバースの規制方針として、新産業の特性を考慮して民間中心の自主規制、最小規制、先制的規制革新の三つの原則のもとに「メタバースエコシステムの活性化のための先制的規制革新方案」を発表している。これらの原則を盛り込んだ世界初のメタバース産業振興法の「仮想融合産業振興法」が制定され、2024年8月から施行された。

⑦半導体

2023年前半の日韓・日米首脳会談での半導体を含む先端技術協力強化に関する合意や政府の重点技術研究開発戦略を受け、科学技術情報通信部は同年5月、「半導体未来技術ロードマップ」を発表した。本ロードマップは、新メモリ素子開発やAI/6G/電力/車両用半導体設計技術開発等に向けた10年計画を設定し、韓国の半導体技術分野における優位性確保をねらう。

(5)電子政府

1990年代後半から国家戦略として電子政府の構築と高度化を進めてきた韓国は国連の電子政府ランキングでも高く評価されており、関連のソリューション輸出を増やした。電子政府は行政安全部の所掌である。

2019年10月に政府がAI・クラウド中心のデジタルトランスフォーメーション(DX)対応戦略として発表した「デジタル政府革新推進計画」に基づき、各種証明書のペーパーレス化やモバイル身分証導入等が進められている。2021年から公務員証、運転免許証、在外国民証等の身分証スマートフォン搭載サービスが順次開始され、2025年3月からは17歳以上の全国民が持つ住民登録証のスマートフォン搭載全国サービスが提供されている。2021年6月に行政安全部がまとめた中長期計画としての「第2次電子政府基本計画」では、2025年までに主要公共サービスのDX率80%、行政・公共クラウド移行率100%達成を目指す。

李在明政権の国政課題では「世界最高のAI民主政府実現」を掲げ、30プロジェクトの実施を通じた国民向けサービスの革新と行政業務効率化、公共AI基盤構築等を盛り込んだ。AI活用による公共サービス革新で行政サービスのアクセスと利便性を大幅に改善する方針である。

(6)インターネット中立性問題

ネットワーク中立性問題による紛争回避のため、放送通信委員会(当時)は2011年12月、「ネットワーク中立性及びインターネットトラヒック管理に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)を発表した。ガイドラインの後続政策として、未来創造科学部(当時)は2013年12月、ネットワーク事業者の恣意的なトラヒック管理を防止し、利用者にトラヒック管理情報を公開することを主な目的とした「通信網の合理的管理・利用とトラヒック管理の透明性に関する基準」を発表した。5G時代対応のため、2020年12月にガイドラインが改正された(施行は2021年1月)。改正ガイドラインではネット中立性の例外要件を明確化し、欧米のように特殊サービス概念等を導入した。

5 消費者保護政策

(1)政府横断的サイバーテロ対策

国家安保室をサイバーセキュリティの司令塔とし、国家情報院がサイバー危機管理中心機関として機能する。国家情報院の所属機関である国家サイバー安保センター(National Cyber Security Center:NCSC)がサイバーセキュリティ関連の情報収集等の業務を担う。国家安保室の下に官民合同組織の国家サイバー危機管理グループを設置し、国レベルで一元化された対応システムを運用している。国家安保室がサイバーセキュリティ政策の最上位指針となる「国家サイバーセキュリティ政策」をまとめる。最新版政策は2024年2月に発表された。これを履行するための政府横断実行計画が「国家サイバーセキュリティ基本計画」である。各省庁は分野ごとの個別法に基づきサイバーセキュリティ活動を実施する。

2025年に通信・金融分野でハッキングによる個人情報流出事故が相次いだことから、「汎省庁情報保護総合対策」が10月に発表された。事案の緊急性を考慮して総合対策には主要ITシステム緊急点検等の短期課題が中心に盛り込まれ、中長期的課題を網羅する「国家サイバーセキュリティ戦略」を2025年中にまとめる計画である。

(2)個人情報保護対策

韓国では公共と民間の全体をカバーする「個人情報保護法」があるが、もともとICT、金融等の産業分野ごとで個人情報保護を規定する個別法があり、個別法の規定を優先する場合もあるため個人情報保護体系が分散していた。個人情報保護の強化を図る一方でデータ活用の活性化を目的とし、「個人情報保護法」等データ関連3法改正が2020年に進められたことで、行政安全部、放送通信委員会(当時)、金融委員会の個人情報保護機能を個人情報保護委員会に一元化し、個人情報保護委員会を中央行政機関に格上げして個人情報監督機関の独立性を確保した。

李在明政権の国政課題では「国民が安心できる個人情報保護システム確立」を掲げる。具体的施策として、情報流出事故発生時の迅速対応強化、「デジタル忘れられる権利」の適用範囲拡大、AI学習用の原本情報活用特例導入に向けた「個人情報保護法」改正等を進める方針である。

(3)家計に占める通信料金引下げ及び選択肢拡大政策

李明博政権以降の歴代政権において、家計に占める通信料金引下げが重要政策課題の一つに位置付けられてきた。これまでの施策で移動体通信料金が下がってきたことから、尹錫悦政権では通信料金引下公約は盛り込まなかったが、5G利用者の平均的利用量を考慮した料金プランの選択肢拡大を図る方針を国政課題に盛り込んだため、2022年以降に通信事業者3社の5Gプラン多様化が進んだ。李在明政権の通信料金負担軽減策では、①加入する移動電話プランの1か月分のデータ通信量を使い切った後でも帯域制御で基本的な通信サービスを利用できる「データ安心オプション(QoS)」全面導入、②最適料金告知制度施行、③中古端末取引活性化を進める計画が国政課題に盛り込まれている。科学技術情報通信部は2024年3月に発表した「家計通信費負担緩和政策推進の現状及び今後の計画」で、今後は5Gプランのオプションで提供される動画配信サービス(OTT)の割引も強化していく意向を表明している。

(4)デジタルサービスの安全性強化

2022年10月にデータセンター火災により発生したインターネットサービス大手カカオ(kakao)のサービス全面障害は社会的に大きな影響を与えた。政府は事故を契機に、データセンターの保護措置強化と附加通信サービスの安定確保の二局面から制度改善を進めている。科学技術情報通信部は2023年3月にまとめた「デジタルサービス安全性強化方案」に具体的改善策を盛り込んだ。今後は、複数の法律に分散しているデジタルサービス安定性関連制度を統合し「デジタルサービス安全法」を制定する計画である。

(5)詐欺電話対策

近年詐欺電話(ボイスフィッシング)被害が急増していることから、政府横断の「詐欺電話根絶総合対策」が2025年8月に発表された。総合対策では、ガバナンス再編、予防中心・先制対応、賠償責任・処罰強化の三つの戦略を軸として、関係機関間の統合対応システム構築や、悪質アプリ遮断、ボイスフィッシングAIプラットフォーム構築等の施策を盛り込んだ。この方針に沿って、「電気通信事業法」改正を通じて移動体通信事業者とショップの犯罪防止義務と制裁も強化する。今後ショップでの移動電話開通状況で異常徴候とされる基準を設け、通信事業者は異常徴候を把握した際に科学技術情報通信部に即時申告する義務が生じる。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信設備及び無線設備(放送受信のみを目的とするものを除く)を製造または輸入する場合、技術基準認証を受ける必要があるが、試験・研究や輸出用等の設備の場合は免除される。また、外国で製造され、輸入される通信設備については、「電波法」の規定による、国際条約や国家間の通信機器の認証に関する相互承認協定の内容に応じて、認証が免除される。

認証機関は科学技術情報通信部の傘下機関である国立電波研究院(Radio Research Agency:RRA)で、型式検定はRRAが実施し、型式登録はRRAが認定する認証機関が、適合性評価試験を実施し、試験報告書をRRAに提出する。

Ⅴ 事業の現状

1 市場概要

通信市場では、KT、 SKテレコム、LG U+の主要3社のグループによる競争が展開されている。2010年までにKTとLG U+は系列内での合併を通じて総合通信事業者となった。移動体通信最大手SKテレコムは、系列子会社として固定通信事業者SKブロードバンド(SK Broadband)等を抱える。2019年以降は通信事業者がケーブル放送を買収する形で通信事業者主導の有料放送市場再編が進んだ。

2 固定電話

国際通信が1991年、長距離通信が1996年、市内通信が1999年に自由化されているが、依然として旧国営事業者KTのシェアが大きい。市内電話(PSTN)市場には、KT、SKブロードバンド、LG U+の3社が存在する。2025年7月末現在の市内電話加入総数は約995万人である。2003年以降に番号ポータビリティが導入されてからは、KTが徐々にではあるが、加入数シェアを落としている。VoIP市場には8社が参入しており、2025年7月末現在の加入総数は1,124万人。加入数による事業者の規模は、KT、LG U+、SKブロードバンド、KCTの順である。

国際電話市場では、KT、SKブロードバンド、LG U+、世宗テレコム(Sejong Telecom)、SK Telinkをはじめとする多数の事業者が価格競争を展開している。

主な市内電話(PSTN)事業者(2025年7月末時点)
事業者 免許付与年 事業分野 通信サービス加入数
KT 1982年 市内・長距離・国際 790万
SKブロードバンド 1997年 市内・長距離・国際 162万
LG U+ 1982年 市内・長距離・国際 44万

出所:科学技術情報通信部

3 移動体通信

(1)主要事業者の概要

移動体通信市場には、SKテレコム、KT、LG U+の3事業者が存在し、加入者シェアではSKテレコムが最大手、KT、LG U+の順である。中長期的に最大手のSKテレコムのシェアが下がってきている。2025年中は特に、上期のSKテレコムのハッキング被害による個人情報流出事故の影響で同社のシェアが一時的に下がっている。

主な移動体通信事業者(2025年7月末現在)
事業者 方式 加入数
SKテレコム W-CDMA、LTE、5G 2,231万
KT W-CDMA、LTE、5G 1,370万
LG U+ LTE、5G 1,120万
MVNO 1,020万
合計 5,743万

IoT、ウェアラブル端末等を除く移動電話契約数

出所:科学技術情報通信部

(2)移動体通信サービス動向

韓国は移動体通信新サービスの普及速度が大変速く、スマートフォンもLTE、5Gも世界最速スピードで普及した。2019年4月に世界に先駆けて移動体通信3社が同時に開始した5Gの2025年7月末現在の移動電話加入数は3,750万人で、移動電話加入総数の6割を超える。

移動体通信3社は3.5GHz帯利用の5Gのネットワーク拡大に力を入れた一方、28GHz帯のインフラ整備が進まなかった。その結果、3社とも5G周波数割当条件不履行と判断され28GHz帯割当てを取り消された。その後科学技術情報通信部は、回収された28GHz帯の1枠を利用して2024年初めにオークションを通じて第4の新規事業者参入を進めようとしたが、落札事業者の財務能力等が問題視され、新規参入には至らなかった。一方、5Gの全国ネットワーク整備は、「農漁村5G共同利用計画」により2021年から3社が農漁村地域でのネットワーク共用で計画的に構築を進めたことで、当初計画よりも前倒しで2024年4月に整備が完了した。5G SAは2025年11月現在、KTのみが提供している。

4 インターネット

(1)ブロードバンド

1995年以降、韓国では政府主導で他国に先駆けてxDSLとケーブルモデムによるブロードバンド基盤が拡充された。現在はギガビット級高速ブロードバンドのサービス競争が進展している。2025年7月末現在の固定網ブロードバンド加入総数は約2,504万で、加入数による市場シェアはKT、SKブロードバンド(SKテレコムの再販売含む)、LG U+の順であり、早くから市場競争が進展している。

(2)公共Wi-Fi

通信料金引下政策の観点から、2012年以降、国策として無料の公共Wi-Fi拡大が進められている。政府の公共Wi-Fi構築事業により、2023年末までに市内バス2万9,100台の公共Wi-FiのLTEから5Gへの置換えが完了した。公共Wi-Fiは、2023年新規構築した公共スペース4,400か所分を含めて合計5万8,000か所での整備が進んだ。今後のインフラ整備は、耐用年数の7年を経過した老朽インフラは2025年中にWi-Fi 7に置き換え、不具合のあるWi-Fiは試験的に2024年からWi-Fi 7に置き換える方針である。

5 ICT利活用サービス

(1)AIエージェント、生成AI

通信事業者をはじめ大手IT企業は独自LLM、生成AI技術開発に力を入れている。主要通信事業者3社は2023年以降、テレコムカンパニーからAIカンパニーへの転換を図るスローガンを掲げ、ビジネス全体のAIシフトを図っており、2025年はAIエージェントサービス競争が本格化している。通信事業者の一般向けAIエージェントは移動電話の詐欺電話探知機能搭載で詐欺電話対策に役立っている。一般向けAIエージェントサービスで先行するSKテレコムは法人向けAIエージェントを開発し、2025年中にSK系列社に段階的にサービスを拡大している。LG U+はAI通話エージェントサービス「ixi-O」に力を入れる。

NAVERは生成AI「HyperCLOVA X」を2025年4月から無料オープンソースとして公開している。NAVERはまた、主要サービスを中心にAIエージェントを全面導入し、半導体・自動車・造船等主要製造業のAIトランスフォーメーション(AX)競争力を高める等、サービスからBtoBまで一体化した2軸のAI戦略を進める方針を2025年11月に発表している。

(2)インターネット関連サービス

インターネットサービス最大手NAVERの主な事業分野はポータル、コマース、FinTech、コンテンツ、クラウドで、国内のトップAI企業としても成長を続けている。早くからブロードバンドが発達した韓国のポータル市場では、NAVER、Daum(カカオ)といった国内ポータルサイトの利用率が高いことが特徴的である。NAVERの日本法人(旧NHN Japan)は2012年1月にライブドアを吸収合併し、2013年4月にウェブサービス事業のLINEとゲーム事業に会社分割した。2021年3月に、Yahoo! JAPANを展開する日本のZホールディングスとLINEが経営統合を完了した。「カカオトーク」で急成長を遂げた独立系ベンチャーのカカオがNAVERに次ぐインターネットサービス大手である。カカオは金融・モビリティ等のサービス領域を拡大しながら成長し、国内で最も利用される総合プラットフォームアプリでもある。

Ⅵ 運営体等

1 運営体

(1)KT Corporation(KT)
Tel. +82 1588 0010
URL https://www.kt.com/
所在地 90 Buljeong-ro(206 Jungja-dong), Bundang-gu, Seongnam-city, Kyeonggi-do, 13606, KOREA
幹部 パク・ユニョン/Park Yoon-young(最高経営責任者/CEO)
概要

1981年に逓信部(Ministry of Communications)から電気通信事業部門を分離し、韓国電気通信公社として発足した後、2002年5月に政府保有株式をすべて売却して完全民営化を果たした固定通信最大手事業者で、2009年6月に移動体通信市場第2位の子会社KTFと合併し総合通信最大手事業者となった。2024年度の売上高は26兆4,310億KRW、営業利益は8,090億KRWである。

KTは2024年2月にAIとICT中心の経営ビジョンと事業戦略を発表し、「AICT Company」への転換を掲げた。AI分野ではマイクロソフト(Microsoft)と提携し関係を強化している。AI事業ポートフォリオ多角化に向けて、AIオペレーション、AIアシスタントによる生産性向上、AIエージェントを3大AI革新エンジンに設定した。これらの事業を通じてBtoB/BtoG/BtoC市場を攻略する。

出資者の構成(2024年末)
株主 出資比率
国外投資家 49.00%
国内株主 37.58%
自社株 2.46%
国民年金 7.77%
社員持株組合 3.20%

出所:KT

(2)SKテレコム

SK Telecom Co., Ltd.

Tel. +82 2 6100 2114
URL https://www.sktelecom.com/
所在地 Euljiro 65, Jung-gu, Seoul 04539, KOREA
幹部 チョン・ジェホン/Jung Jai-hun(SKテレコム代表理事社長/President and CEO)
概要

KTの移動体通信部門である旧韓国移動体通信が前身の国内最大の移動体通信事業者である。2024年度の業績は、連結年間売上高が17兆9,406億KRW、営業利益は1兆8,234億KRWであった。主な系列企業には、固定通信のSKブロードバンドとSK Telink、等がある。

2022年11月には、NTTドコモと、メタバース、モバイルネットワークインフラ、メディア事業における協力を進めるための覚書を締結した。

SKテレコムは2023年9月に事業戦略として「AIピラミッド戦略」を発表し、グローバルAIカンパニーを目指すことを宣言した。同戦略では、AIインフラ/AIX/AIサービスの3領域を中心に産業と生活全領域を革新する。AI関連投資割合は過去5年間の12%から今後5年(2024~2028年)で3倍の33%に拡大し、2028年には売上高25兆KRW以上達成を目指す。また、系列社を含めてAI事業の機動力を高めるために、2025年10月にAI事業組織を統合しAI社内カンパニー制を導入した。

(3)SKブロードバンド

SK Broadband Co., Ltd.

Tel. +82 2 6266 6114
URL https://www.skbroadband.com/
所在地 SK Nam-San Green Building, 24, Toegye-ro, Jung-gu, Seoul 04637, KOREA
幹部 キム・ソンス/Kim Sungsoo(社長/CEO)
概要

1997年に設立された市場シェア第2位の固定通信事業者ハナロテレコムを前身とする、SKテレコムの100%子会社。音声電話及びブロードバンド、IPTV、ケーブル放送、法人向けソリューション等を提供する固定通信事業者。固定・移動メディアプラットフォームNo.1企業を目指す。2024年度の売上高は4兆4,110億KRW、営業利益は3,520億KRW。2020年4月にケーブル放送Tbroadとの合併を完了した。

(4)LG U+

LG Uplus Corp.

Tel. +82 2 2005 7114
URL https://www.lguplus.com/about/ko
所在地 32, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, KOREA
幹部 ホン・ボムシク/Hong Beom-Sik(代表理事/CEO)
概要

LGグループ内の移動体通信事業者LGテレコムと、固定通信事業者でVoIPとIPTVを提供するLG Dacomとブロードバンドを提供するLGパワーコム(LG Powercomm)の3社が2010年に合併し、現社名となった。2024年度年間売上高は14兆6,252億KRW、営業利益は8,631億KRW。LG U+は2024年5月に新たなブランドスローガン「Growth Leading AX Company」を掲げ、AI部門の重点課題と超巨大AI戦略を発表した。同年7月にはAI中心のBtoB中長期成長戦略「All in AI」を発表し、AIデータセンター、オンデバイスAI等「AIインフラ」事業及び「AI新事業」と合わせて、AIコールセンター、法人コミュニケーション、SOHO、モビリティの4大AI応用サービスを通じてBtoB AI事業売上拡大をねらう。

2 主要メーカー

(1)サムスン電子株式会社

Samsung Electronics Co., Ltd.

Tel. +82 2 2255 0114
URL https://www.samsung.com/sec/
所在地 129, Samsung-ro, Yeongtong-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do, KOREA
幹部

イ・ジェヨン/Lee Jae-yong(会長/Executive Chairman)

チョン・ヨンヒョン/Jun Young-Hyun(代表理事副会長/Vice Chairman and CEO)

概要

1969年創立の国内最大手メーカーである。事業部門はDX(Device eXperience)、DS(Device Solutions)、SDC(ディスプレイ)、Harmanで構成される。移動電話や通信システム等の旧IT & Mobile Communications(IM)部門はDX部門に統合された。研究開発組織のSamsung Researchは、海外R&Dセンター及びグローバルAIセンターで抱える1万人以上の研究スタッフと連携して次世代移動体通信等の未来技術開発を主導する。2024年末現在で76か国に進出し、世界で240か所の生産拠点・販売拠点・研究所を保有し、約26万人の社員を抱える。2024年の売上高は300兆8,709億KRW、営業利益は32兆7,260億KRWである。

(2)LG電子
Tel. +82 2 3777 1114
URL https://www.lge.co.kr/
所在地 LG Twin Towers 128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, Seoul, KOREA
幹部 リュ・ジェチョル/Jae-cheol Lyu(社長/CEO)
概要

1958年に創立され、現在の主な事業領域は、ホームアプライアンスソリューション(HS)、メディアエンターテインメントソリューション(MS)、エコソリューション(ES)である。2021年7月末付で携帯電話端末事業から撤退した。2024年の売上高は約87兆7,282億KRW、営業利益は3兆4,197億KRWである。世界の約130か所に事業所を展開する。

3 インターネットサービス企業

主なインターネットサービス企業
事業者 URL
NAVER https://www.navercorp.com/
カカオ https://www.kakaocorp.com/

放送

Ⅰ 監督機関等

1 放送メディア通信委員会(KMCC)

Korea Media and Communications Commission

Tel. +82 2 500 9000
URL https://www.kmcc.go.kr/
所在地 47 Gwanmun-ro, Gwacheon-si, Gyeonggi-do 13809, KOREA
幹部 キム・ジョンチョル/Kim Jong Cheol(委員長/Chairperson)
所掌事務

李在明政権成立に伴う省庁再編で、分散した放送行政機能一元化を目的として、2025年10月に放送通信委員会が廃止され、大統領所属の放送メディア通信委員会に再編された。委員会は委員長・副委員長・常任委員と非常任委員4人の計7人で構成される。委員会会合は4人以上の委員出席で開催し出席委員の過半数の賛成で議決する。所掌分野は以下のとおりである。

放送メディア通信委員会が所掌する主な法令は以下のとおり。

分野 法令
通信分野 電気通信事業法、情報通信網法、位置情報の保護及び利用等に関する法律、電波法
放送分野 放送法、インターネット・マルチメディア放送事業法(IPTV法)、放送通信発展基本法、韓国教育放送公社法、放送広告販売代行等に関する法律、放送文化振興会法

科学技術情報通信部との共管含む

2 文化体育観光部(MCST)

Ministry of Culture, Sports and Tourism

Tel. +82 4 4203 2000
URL https://www.mcst.go.kr/
所在地 Government Complex-Sejong, 388, Galmae-ro, Sejong-si 30119, KOREA
幹部 チェ・フィヨン/CHAE Hwi-young(長官/Minister)
所掌事務

文化、芸術、宗教、観光、スポーツ、青少年育成等の分野を所掌しており、映像放送産業を含めた全般的コンテンツ産業の振興及び著作権政策を所掌する。

Ⅱ 法令

放送法(Broadcasting Act

従来、個別に規定されていた放送関連の法律を一本化し、地上放送、衛星放送、ケーブルテレビを包括的に網羅する「放送法」が、2000年3月から施行された。同法によって番組の事前審議(検閲)の廃止、視聴者の権利保護の強化等が定められた。ケーブルテレビ、衛星、IPTVを同一の有料放送サービスとして同一の規制を適用するため、「インターネット・マルチメディア放送事業法(以下、IPTV法)」を「放送法」に統合する、通称統合放送法制定を目指す動きもあるが、2025年末月現在、法は統合されていない。現在は主に、放送規制の緩和を目的とした法改正が進められている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)放送事業免許の制度枠組

放送事業者は「放送法」により、地上放送事業者、総合有線放送事業者、衛星放送事業者、放送チャンネル使用事業者、共同体ラジオ放送事業者の5種類に分類され、それぞれ許可・承認・登録のいずれかを受けてからサービス開始が可能となる。放送チャンネル使用事業者とは、番組を編集制作し、放送を行うソフト事業者に相当する。放送事業者及び関連事業者の事業開始に当たっての手続は以下の表のとおりである。

放送事業の許可・承認・登録制度
事業者の種類 手続の手順
地上放送事業者
共同体ラジオ放送事業者
科学技術情報通信部による無線局開設審査結果を反映し、放送メディア通信委員会が放送局に許可を付与する。
衛星放送事業者
総合有線放送事業者
中継有線放送事業者
放送メディア通信委員会の許可を受ける。
電光板放送事業者
音楽有線放送事業者
伝送網事業者
放送メディア通信委員会で登録する。
放送チャンネル使用事業者 総合編成や報道 放送メディア通信委員会の承認を受ける。
ショッピングチャンネル 放送メディア通信委員会の承認を受ける。
ラジオ放送、データ放送、VOD 放送メディア通信委員会で届出をする。

出所:「放送法」を基に作成

(2)メディア所有規制

2009年7月の「放送法」をはじめとするメディア関連法改正により、新聞社と大企業の放送業界進出が解禁された。法改正により、個人または一事業者による、地上放送事業者及び総合編成または報道に関する専門放送チャンネル使用事業者への出資制限が30%から40%に緩和された。新聞社と大企業の出資率については、地上放送は10%、総合編成・報道専門チャンネルは30%までとされた。この「放送法」改正を受けて、2011年末以降、総合編成チャンネル4社(中央日報、朝鮮日報、東亜日報、毎日経済新聞)と報道専門チャンネル1社(聯合ニュース)が開局した。

2022年には放送事業の所有・兼営規制を緩和し業界のM&Aを促進するため「放送法施行令」及びIPTV法施行令が改正された。これにより、地上放送事業者の放送チャンネル使用事業所有規制緩和、総合有線放送事業者と衛星放送事業者の放送チャンネル使用事業に対する兼営制限廃止等が進められた。

(3)外資規制

放送事業者に対する外資規制は「放送法」第14条で以下の表のとおりに定められており、地上放送事業者とラジオ放送事業者は外資を全面的に禁じられている。2007年4月の韓米FTA合意の結果、放送チャンネル使用事業者への間接投資は100%まで拡大されることになった。

事業ごとの外資規制
事業区分 外資所有制限
地上放送 禁止
総合有線放送 49%
中継有線放送 20%
衛星放送 49%
放送チャンネル使用事業 総合編成チャンネル 20%
報道専門チャンネル 10%
上記以外 49%
伝送網事業 49%

出所:「放送法」を基に作成

(4)地上放送再送信・有料放送チャンネル送出手数料を巡る課題

再送信義務のある地上テレビ放送チャンネルは公共放送KBS 1と教育放送EBSの二つである。通信事業者のIPTVサービス開始以降、地上放送事業者が有料放送メディアに対して再送信を有料化している。契約更新時期のたびに現在に至るまで有料放送メディアと地上放送事業者間の再送信料金水準をめぐる紛争が多発している。

また、近年はホームショッピングチャンネル事業者が有料放送事業者に支払う送出手数料水準に関する事業者間紛争が相次いでいる。

2 公共放送関連政策

(1)公共放送のガバナンス

韓国放送公社(KBS)の設置根拠や運営等のガバナンスは「放送法」により定められている。2025年8月の「放送法」改正でKBSの理事会構成や社長選任プロセスに変更が加えられている。資本金の3,000億KRWはすべて政府が出資する。最高意思決定機関である理事会の定数は11人であったが、今回の法改正で15人に拡大された。同時に理事の推薦主体も拡大され、従来の放送メディア通信委員会だけでなく、国会、放送事業者役職員、視聴者委員会、放送メディア学会、弁護士団体等に拡大された。推薦された理事を大統領が任命し、任期は3年である。理事会では、KBSの放送の基本運営計画、予算・決算等の財務関連事項、KBSの経営評価とその公表、定款の変更等を決定する。

執行機関は、社長1名、2名以内の副社長、8名以内の本部長及び監事1名とされており、任期は3年である。社長選任にあたり、社長候補国民推薦委員会が理事会に設置される。社長は理事会の要請により大統領が任命する。副社長と本部長は社長が任命するが、副社長の任命には理事会の同意が必要である。

(2)受信料制度

KBSは「放送法」を根拠に受信料制度を設けており、料額はKBS理事会の審議後、放送メディア通信委員会を経て国会の承認を得て決定される。2024年度基準では受信料収入は収入全体の約49%を占める。受信料額は1981年から1か月2,500KRWで据え置かれているため、これまでに受信料値上案が数度にわたり国会に提出されているが、各方面からの反発で挫折を繰り返している。2023年になると尹錫悦政権(当時)は、1994年以降電気代と一緒に徴収してきた受信料の分離徴収を進める方針を発表し、同年7月施行の改正「放送法施行令」で分離徴収が決定した。急速に進められた受信料分離徴収決定プロセスにKBSは異議を唱えて憲法裁判所の判断を仰いだが、2024年5月に合憲の判断が下された。憲法裁判所判断等を踏まえ、受信料分離徴収は2024年夏から実施された。しかしながら、政権交代後の2025年4月に国会本会議で受信料統合徴収を復活する内容の「放送法」改正案が可決され、同年11月から受信料と電気代の統合徴収が復活した。

3 コンテンツ関連政策等

(1)コンテンツ規制及び促進政策
クォーター制度

「放送法」で国内番組編成クォーターの根拠を定め、「放送法施行令」で国内制作番組比率の範囲を定め、告示により媒体及びジャンルごとの具体的な比率を定めている。クォーターには国内制作番組クォーターと輸入番組クォーターの2種類がある。クォーターが適用される番組ジャンルは、映画、アニメ、大衆音楽の3分野である。

(2)メディアプラットフォーム、コンテンツ産業の海外展開支援等

2020年以降に国内OTTの支援策が政策に盛り込まれ、科学技術情報通信部と文化体育観光部がそれぞれOTT振興策を打ち出してきた。科学技術情報通信部は2024年12月に「韓国型オンライン動画サービス(K-OTT)産業国際競争力強化戦略」(以下、強化戦略)をまとめ、ファンド設定やAI活用技術支援等を盛り込み、国内OTT産業支援を拡大する方針をまとめている。

強化戦略に国内メーカー製TVの広告入り無料テレビ配信サービス(Free Ad-supported Streaming Television:FAST)を通じた国内コンテンツ海外展開促進が盛り込まれたことから、2025年から新たにFAST関連支援策が政策の範疇に含まれるようになった。科学技術情報通信部はFAST市場の成長を見越して同年4月に官民一体のグローバルK-FASTアライアンスを立ち上げている。2025年度FAST支援事業として、上期に「AIダビング(吹替)特化K-FASTチャンネル普及事業」を開始し、下期にはFAST学術会議開催を通じた国際交流支援や新規K-チャンネル販促のため海外ショーケースを進めている。

また、世界的な放送コンテンツIP(Intellectual Property、知的財産)保有企業育成を目指す戦略の一環として、2024年から科学技術情報通信部と文化体育観光部が「K-コンテンツ・メディア戦略ファンド」の設定で協力する。国内企業の資金調達とIP確保のためにファンドを活用して放送・メディア企業及び事業に投資する計画である。

(3)放送規制の改善

時代に合わなくなった放送分野規制改善が徐々に進められている。尹錫悦政権ではメディア産業全般の規制革新を進めるため、2022年に放送事業の所有・兼営規制大幅緩和等が進められた。2024年に国務総理所属諮問機関のメディア・コンテンツ産業融合発展委員会が放送規制13種を全面的に見直し規制緩和する内容を骨子とする「メディア・コンテンツ産業融合発展方案」をまとめた。具体策として、有料放送の再許可・再承認全面廃止、放送事業参入障壁改善、映像コンテンツ制作費税控除率引上げ、官民共同の1兆KRW規模の「K-コンテンツ・メディア戦略ファンド」新設等が盛り込まれた。

李在明政権の国政課題では、新旧メディアを包括し合理的なメディア法制度整備、ネガティブ広告システム導入等の放送広告・編成等規制緩和が盛り込まれた。新たなメディア法整備に向けて国務総理直属の官民合同委員会(仮称「メディア発展委員会」)を立ち上げる予定である。

4 デジタル放送

地上デジタル放送の伝送方式では米国方式のATSCが採用され、2001年10月、商業放送のSBSを手始めに、アジア初の地上デジタル放送が開始された。アナログ放送終了は当初2010年末であった予定を2012年に延期している。また、2012年12月31日に全国一斉終了の計画は、準備ができた地域からスケジュール前倒しで順次アナログ放送を終了する計画に変更された。その後は、地デジ移行は混乱することなく2012年末で終了している。

5 次世代高画質放送

高画質UHD(4K、8K)放送導入に力を入れてきた韓国で、ケーブルテレビは2014年、IPTVは2014年、衛星放送は2015年から4K本放送を開始した。更に、700MHz帯を割り当てて米国方式(ATSC3.0)の地上4K放送が世界に先駆け、2017年5月から首都圏を皮切りに段階的に開始された。当初計画では、地上4K放送の全国拡大時期は2021年を予定していたが、地域民放の財政難や地上波直接受信世帯が少ないこと等から2年間延期され2023年末とされた。しかしながらこの計画も守られず、放送メディア通信委員会は2025年に計画を見直す方針であるが、地上4K放送の全国拡大は現実的に厳しい状況のままである。

Ⅳ 事業の現状

放送メディア通信委員会が毎年度まとめる放送事業者財産状況によると、2024年度の放送事業収益は前年比0.9%減少の18兆8,042億KRWである。2019年以降は年間売上でIPTVが地上放送を上回っている。

1 ラジオ

KBSが7系統、MBCが3系統、EBSが1系統のサービスを提供している。また、SBSの2系統のほか、地方テレビ放送事業者のTBC、KBC等もサービスを提供している。2023年末時点で、テレビチャンネルを持たずにラジオチャンネルのみ運営するラジオ放送事業者数は30社で、テレビとラジオ両方のチャンネルを運営する事業者数は30社である。

2 テレビ

地上テレビ放送事業者数は、地域民放を含めて30社である。このうち、公共放送についてはKBSが2系統、教育放送のEBSが1系統の全国放送を行っている。また、公営放送としてMBCが1系統の全国放送を行っている。商業放送では、首都でサービスを提供している地域放送事業者のSBSが、地方の商業放送事業者とネットワークを結成して全国放送を行っている。

3 衛星放送

総合通信事業者KTの子会社であるKTスカイライフ(KT Skylife)が2002年から「スカイライフ」のサービス名でデジタル衛星放送を提供している。2025年9月末時点での衛星放送サービス加入世帯数は約325万で、このうち4K放送加入世帯数は193万である。2020年10月にMVNOサービスを開始した。

4 ケーブルテレビ

2023年末時点のケーブルテレビ事業者(SO)数は90社で、加入数150万を超える大手総合有線放送事業者(MSO)は、LGハロービジョン(LG HelloVision)、SKブロードバンド(旧Tbroad)、D’LIVEで、業界最大手はLGハロービジョンである。ケーブルテレビは通信事業者のIPTVに押されて加入数が停滞し、2024年12月末現在の加入数は約1,219万である。

2019年以降に通信事業者によるケーブルテレビ大手の買収を通じた有料放送業界再編が進行中である。2020年上半期までにケーブルテレビ第1位(LGハロービジョン)と第2位(SKブロードバンド)の買収が完了し、2021年には業界第5位の現代HCNのKTスカイライフによる買収が完了した。業界第3位のD’LIVEと第4位のCMBも売却先を探している。

5 IPTV

通信事業者3社(KT、SKブロードバンド、LG U+)がサービスを提供する。2024年12月末現在の加入数は約2,135万である。

6 OTT

グローバルOTTに対抗するため国内OTTの再編が進んでいる。国内OTT市場はネットフリックス(Netflix)の独走状態であるが、国内勢ではメディア・コンテンツ最大手CJ ENM系列の「Tving」が最大手であり、「Coupang Play」「wavve」が後を追う。wavveはSKテレコムと地上放送事業者3社のサービスを統合して2019年に立ち上げられた。Tvingは、2022年にKTのサービスを吸収合併した。更に、Tvingとwavveは合併に向けて調整を進めており、2025年6月に公正取引委員会が両社の合併を条件付きで承認した。Tvingは海外展開も積極的に進めており、2025年11月には日本のDisney+の中にTvingのブランドコーナーを設ける形で日本市場にも進出している。

Ⅴ 運営体

1 韓国放送公社(KBS)

Korean Broadcasting System

Tel. +82 2 781 1000
URL https://www.kbs.co.kr/
所在地 13 Yeouigongwon-ro, Youngdungpo-gu, 07235 Seoul, KOREA
幹部 パク・チャンボム/Park Jang-beom(社長/President and CEO)
概要

政府出資の特殊法人である。主な財源は受信料収入と広告収入である。四つの地上テレビ放送チャンネル(KBS 1、KBS 2、UHD 1、UHD 2)、二つの衛星放送チャンネル(KBS World TV、KBS Korea)、七つのラジオチャンネルを運営している。このほかに、地上DMBで四つのチャンネルを提供している。KBS 1は報道・時事・スポーツ・教養・ドキュメンタリー、KBS 2は家庭・芸能・娯楽を中心に番組を編成する。KBS 1テレビとKBS 1ラジオ放送では1994年10月以降広告を廃止している。

2 文化放送(MBC)

Munhwa Broadcasting Corporation

Tel. +82 2 789 0011
URL https://www.imbc.com/
所在地 267 Seongam-ro, Mapo-gu, Seoul, 03925, KOREA
幹部 アン・ヒョンジュン/Ahn Hyung-joon(代表理事社長/President and CEO)
概要

16の系列局によって全国ネットワークを運営し、政府出資の財団である放送文化振興会が株式の70%を所有する、株式会社形態の公営放送事業者である。現在運用中のチャンネル数は、地上テレビ1、AM及びFMラジオ3、ケーブル5、衛星5、地上DMB 4である。最高意思決定機関は放送文化振興会の理事会で、理事会は理事長を含めて13人の理事で構成する。

3 SBS

Tel. +82 2 2061 0006
URL https://www.sbs.co.kr/
所在地 161 Mokdongseo-Ro, Yangcheon-gu, 07996 Seoul, KOREA
幹部 パン・ムンシン/Bang Moon-Sin(代表理事/President and CEO)
概要

ソウルの商業ローカル放送事業者。1991年にAMラジオ放送・テレビ放送を、1996年にはFMラジオ放送を開始した。地方の放送事業者とネットワークを組むことで、実質的に全国放送を行っている。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)科学技術情報通信部

(通信/Ⅰの項参照)

(2)放送メディア通信委員会(KMCC)

(放送/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

電波政策については、電波政策総括と通信周波数管理は科学技術情報通信部、放送周波数管理は放送メディア通信委員会が所掌する。

2 標準化機関

韓国情報通信技術協会(TTA)

Telecommunications Technology Association

Tel. + 82 31 724 0114
URL https://www.tta.or.kr/
所在地 47 Bundang-ro, Bundang-gu, Seongnam-city, Gyonggi-do, 13591, KOREA
幹部 ソン・スンヒョン(会長/President)
活動概要

1988年に設立されたTTAは、「放送通信発展基本法」に基づき、情報通信分野の標準規格の策定を行っている。TTAのメンバーには、通信事業者、サービスプロバイダ、機器メーカー、学界、研究機関等が含まれる。TTAの活動目的は国内外の最先端技術を標準化することで、韓国経済の発展、情報通信分野の産業振興、技術優位性に寄与することにある。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 周波数割当制度

韓国では、対価割当方式と審査方式の二つの周波数割当方法が採用されてきたが、2011年からはこれに加えてオークション制度が導入された。事業者から出捐金を徴収する形の対価割当方式はこれまでに、IMT-2000(3G)、位置情報サービス(LBS)、衛星DMB、WiBroといった経済的価値が高く競争的需要があると判断された周波数の割当ての際に採用されてきた。割当対価は、周波数の割当てを受けて経営する事業の予想売上額、割当対象周波数及び帯域幅等の周波数の経済的価値を考慮して科学技術情報通信部が決定する。2011年からは、競争的需要がある場合には周波数オークションを実施し、競争的需要のない場合や特別な事情のある場合は対価割当方式を採用する。

2024年に第4の移動体通信事業者参入を目的とした28GHz帯オークションが実施されたが、落札事業者の財務能力が後になってから問題視され、周波数割当対象法人選定が取り消された。現行制度ではオークション前に事前審査のプロセスが設けられなかったことがネックとされる。一方、審査方式は、①電波資源利用の効率性、②申請者の財政能力、③申請者の技術的能力、④当該周波数の特性やその他周波数利用に必要な事項、の観点から審査が行われ、周波数割当が実行される。

対価割当及びオークションによる収入は、「放送通信発展基本法」による放送通信発展基金(科学技術情報通信部・放送メディア通信委員会管理)と、「情報通信産業振興法」による情報通信振興基金(科学技術情報通信部管理)に編入される。現在二つに分かれているこれらのICT分野基金を情報通信放送発展基金として再編・一本化し、重複事業も今後見直す方針が2019年に発表されたが、2025年末現在、二つの基金の統合は実現していない。

2 無線局免許制度

無線局を開設する場合は、原則、許可が必要である。ただし、移動電話用無線局等は、許可を受けたものとみなされる。また、発射する電波が弱い無線局、受信専用の無線局、または、周波数割当を受けた者が電気通信役務を提供するために開設する無線局の場合は、届出で済む。更に、発射する電波が微弱の無線局であって、大統領令が定める無線局の場合は、届出なしに開設できる。軍や駐韓外国公館等が周波数使用承認を得た場合は、許可や届出をせずに無線局を開設できる。

3 電波振興基本計画の策定

「電波法」により5年ごとに中長期的電波政策ビジョンを示す「電波振興基本計画」が策定される。科学技術情報通信部は2024年10月、「第4次電波振興基本計画」をまとめ、電波10大重点技術確保、電波産業振興法(仮称)制定、6G周波数確保、2030年までに100の衛星網確保、電波基盤公益サービス提供、周波数利用効率評価システム整備等を進める計画を盛り込んだ。主な内容は以下のとおり。

4 新たな周波数分配

中長期周波数総合計画と5Gへの周波数追加供給

科学技術情報通信部は世界無線通信会議での決定を迅速に反映するため、2024年以降は4年周期でスペクトラム計画を策定する。最新計画は2024年9月に発表された「大韓民国スペクトラム計画(2024~2027)」である。移動体通信周波数の新規確保については、TRS(Trunked Radio System)の800MHz帯や衛星の2.1GHz/4GHz帯等他用途で活用中の帯域から最大378MHz幅を確保する。現在移動体通信サービス用途で利用中の帯域は2026年以降の利用期間終了時点で、利用状況を総合的に考慮して全体を再割当または一部帯域の利用終了を検討する。5G帯域追加割当については、3.5GHz帯隣接帯域と同時に700MHz/800MHz帯や1.8GHz帯についても並行して検討する。5G周波数追加割当時期は当初2025年下期を目処とする予定とされたが、2025年末時点で、今後通信事業者のニーズが確実になった時点で具体的な供給方策を提示する方針に切り替えられ、先送りされている。なお、28GHz帯については政府研究会での議論を踏まえて活用方向を決定する計画である。

周波数需要が移動体通信以外の新産業や安全分野へと幅広く拡大している。都心航空交通等の新産業向けにも適時に周波数を開放する。今後が有望視される衛星通信用途には1000MHz幅供給を検討する。

5 電波監視体制

電波監視は科学技術情報通信部傘下機関の中央電波管理所(Central Radio Management Office)が行う。中央電波管理所は電波監視のほか、無線局許可及び電波利用料徴収、周波数利用環境調査、不法機器・設備の取締り、通信事業者の登録・届出・監督等を行う。全国10か所の分所と京畿道利川市の衛星電波監視センターで構成される。

6 電波利用料制度

日本と同様に、無線局施設者に対する電波利用料制度があり、四半期ごとに利用料を徴収する。電波利用料収入は「電波法」により、電波監理に必要な経費の充当と電波関連分野振興のために利用することとされている。電波利用料は一般財源である。

Ⅲ 周波数分配状況

1 国家周波数計画

2 周波数オークション

周波数割当方法として2011年からオークション方式が導入され、2024年までに計5回のオークションが実施された。

2018年までに実施されたオークションは既存移動体通信事業者3社を対象とし、上記の帯域を割り当てた。しかしながら、2018年に5G用途で割り当てた28GHz帯については3社が2021年までの装置構築に関する免許条件を達成できなかったため、2022年末から2023年にかけて3社の割当取消処分が実施された。回収した28GHz帯を利用して2024年に第4の移動体通信事業者参入を目的としたオークションが実施されたが、事後に落札事業者が割当対象取消処分となった(3の項参照)。

3 移動体通信周波数再割当

科学技術情報通信部は2025年12月に「移動通信周波数再割当細部政策方案」をまとめ、2026年に利用期限を迎える移動体通信周波数370MHz幅の再割当条件を次のとおり決定した。

4 移動体通信新規参入

3社体制の移動体通信市場への第4の移動体通信事業者新規参入が2024年までに8回にわたり試みられてきたが頓挫を繰り返している。いちばん最近の事例では、MNO 3社の28GHz帯割当取消処分に伴い、このうち1枠の28GHz帯で新規参入を進めるための「5G(28GHz)新規事業者参入支援方案」が2023年1月に科学技術情報通信部より発表された。これにより、2024年1月に新規3社が競合する形で28GHz帯800MHz幅のオークションが実施された。MVNOのStage 5が主導するコンソーシアムのStage Xが高値で落札したものの、事後に同社の財務能力が問題視され、その結果、同年7月に周波数割当対象法人選定取消処分が確定した。今後の新規参入政策については2024年の政府研究会での検討を踏まえ、市場参入機会は常に開放しておき、参入希望事業者がいる場合に進める方向で決定された。また、新規参入の周波数オークションでは最低入札価格以上の資本金要件を設ける等、周波数割当制度の補完策も盛り込まれた。

5 ローカル5Gの導入

28GHz帯有効活用とBtoB分野5G促進をねらいとして2021年から新たにローカル5Gに相当する「5G特化網」制度(通称:イウム(e-Um)5G)が導入された。4.7GHz(100MHz幅)/28GHz(600MHz幅)を活用する5G特化網制度ではネットワークの構築主体とサービス提供対象により免許は3タイプに分類される。2025年6月末現在、28機関が周波数割当、14機関が周波数指定を受けて5G特化網制度を活用している。

6 周波数譲渡及びリース制度

韓国では周波数譲渡及びリースの実績はない。電波資源利用の効率性向上のため、周波数譲渡・リースについての承認取消制度、衛星周波数の譲渡及びリース承認制度等が2015年の「電波法」改正により導入された。「第4次電波振興基本計画」に基づき今後は5G特化網免許事業者対象に周波数譲渡・リースの実証事業を実施する計画である。