ラオス人民民主共和国(Lao People’s Democratic Republic)

通信

Ⅰ 監督機関等

技術通信省(MTC)

Ministry of Technology and Communications

Tel. +856 21 21 58 77
URL https://www.mpt.gov.la/
所在地 Lane Xang Avenue, Vientiane 010000, LAO P.D.R.
幹部 Boviengkham Vongdara(大臣/Minister)
所掌事務

2021年に、技術通信省組織・運営令により、前身の郵政電気通信省(MPT)から技術通信省に組織改正された。電気通信分野における政策立案、免許付与、料金規制、技術標準、市場の監督管理、周波数割当・管理、通信設備の輸出入管理、ユニバーサル・サービス基金管理等を所掌している。なお、MPTは、郵便、電気通信及び情報通信技術を所管する組織として、2007年10月に新設された国家郵便電気通信庁(NAPT)から、2011年9月に設立された。

Ⅱ 法令

1 電気通信法(Law on Telecommunication

2001年に施行。同法では、規制機関の役割や組織、電気通信サービス、電話番号や周波数等の資源管理の原則等が規定されている。また、2021年11月に、免許カテゴリーを4種類から2種類に変更する改正が行われた。

2 情報通信技術法(Law on Information and Communications Technology

2016年公布。同法は、ICT分野の管理・改善を目的としている。

3 周波数法(Law on Radio Frequency

2017年に成立した同法は、通信事業の運営、通信資源、技術標準、通信サービスの提供、通信サービスの利用における品質確保、すべての人へのアクセス提供、利便性、公平性、開発の継続性と現代化に関して、国家公共安全と収入源とする観点から国家財政に寄与することを目的に、組織、活動、管理、監視についての原則、規則、措置を定めている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「電気通信法」第V部第22条において、電気通信サービスは4タイプに分類されていたが、2021年11月に同法第V部の改正が行われ、電気通信ビジネスを以下の2タイプに分類し、MTCによる免許を取得する枠組みに免許制度が改正された。

免許手続として、通信事業者は法人登録後計画投資省から投資免許の取得し、MTCに電気通信サービス分類に従い免許申請を行い、同省からの認可を受けることとされる。免許期間は1年で、毎年更新する。

2 競争促進政策

1993年までラオス郵便電気通信公社(Enterprise of Post and Telecommunications Lao:EPTL)が電気通信事業を独占していたが、1994年に民間資本の導入により市場が開放された。ラオ・シナワトラ・テレコム(Lao Shinawatra Telecom Company Limited:LST)が、タイの大手電気通信事業者であるシナワトラ・グループ(Shinawatra Group)とラオス政府との合弁会社として設立された。

1995年、EPTLの郵便部門と電気通信部門が分離され、ラオス電気通信公社(Enterprise of Telecommunications Lao:ETL)が設立された。翌1996年に、LSTとETLは合併し、ラオ・テレコム(Lao Telecommunications Company Limited:LTC)が設立された。

しかし、LTC設立後に予定されていた電気通信開発が実現されず、2000年8月、統合された旧ETLがLTCから分離され、新公社ETLとして再設立された。公社化によりETLは、ネットワークや国際ゲートウェイ設備をLTCから引き継ぎ、2002年より、固定電話及び移動体通信サービスを開始したが、2017年8月、株式の51%が香港の投資目的会社を通じて中国企業に売却された。

2002年には軍所有のラオ・アジア・テレコム公社(Lao Asia Telecom:LAT)が移動体通信サービスと固定通信サービスを開始したが、固定通信市場での業績が振るわず、同社は固定通信分野から撤退した。また、LATは、2008年10月に、ベトナムの移動体通信事業者Viettelと共同で、移動体通信専業事業者としてStar Telecom(その後Unitelに名称変更)を設立した。

このほかに、民間資本による新規参入事業者として、2003年にミリコム・ラオ(Millicom Lao Company Limited:MLL)が移動体通信サービスを開始したが、2009年9月には、同社の株式の78%がロシア事業者のVimpelComに売却された。その後、ラオス政府の承認等を経て、売却手続は2011年3月になって完了し、同年9月にBeeline Laoに名称変更された。その後、2017年に国が買収したが、2019年にはLTCにより買収され、TPLUSと名称変更した。

3 情報通信基盤整備政策

ユニバーサル・サービス制度については、「電気通信法」によりMTCに電気通信開発基金(Telecommunication Development Fund)を設立する権限が与えられている。これにより、設備を保有するすべての電気通信事業者には、遠隔地域における固定網整備を主な目的とするユニバーサル・サービス基金に拠出することが義務付けられている。

2021年2月に、北部ルアンナムター、ウドムサイの2県においてスマートシティ開発プロジェクトが公表されている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「電気通信」法第17条により、国内製造された電気通信設備、輸入され国内に設置される設備の技術基準・品質の認証は、MTCが実施することが規定されている。基準認証は、標準法、国際技術基準、国際協定に基づき、ユーザの安全、環境への無害、危険のない電気通信網、国内電気通信網間の相互運用性を確保するとしている。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

固定電話サービスは、主にLTCのほか、ETLとUnitel、Sky Telecomが提供している。デジタル・マイクロ波が伝送に利用されており、すべての既存交換機のデジタル化も実現された。また、光ファイバ・バックボーンが国土全体に整備されているほか、隣国の中国、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、タイとの接続も完了している。ローカル網の整備は遅れていたが、改善を見せている。PSTN加入者が減少傾向にあり、VoIP加入者が増加している。LTC、ETL、Unitelが2005年にVoIP免許を取得している。

2 移動体通信

LTC、ETL、Unitel、TPLUSの4社がサービスを提供している。

2021年末現在、移動体通信の加入者総数は約480万に達している。

5Gについては、2019年10月にLTC、Unitelが試験サービスを実施した。その後LTCは2020年8月に商用サービスを開始している。

3 インターネット

インターネット接続サービスは、ADSLが主流であったが、近年、新規に敷設されるブロードバンド・ネットワークの大半が光ファイバによるため、2021年末現在、光ファイバによるサービスの加入者シェアは9割を超えている。

Ⅵ 運営体

1 ラオ・テレコム(LTC)

Lao Telecommunications Company

Tel. +856 21 25 25 27
URL https://www.laotel.com/
所在地 100 Av. Lane Xang, P.O.Box 5607, Vientiane 01000, LAO P.D.R
幹部 Suphon Chanthavixay(社長/Director General)
概要

1996年に、タイのシナワトラ・グループとの合弁会社として設立された通信事業者である。その後、2006年に、シナワトラ・グループのシン・コーポレーション(Shin Corp.)がシンガポールの投資会社Temasekに売却されたため、タイ・テレコム系の投資会社シェニントン・インベストメンツ(Shenington Investments)が49%の資本を保有、51%をラオス政府が保有している。同社には2021年まで25年間にわたる固定電話、国際通信、移動体通信、公衆電話、専用線等に関する事業権が付与されている。

2020年8月、5Gの商用サービスを首都ビエンチャンの一部で開始している。今後、順次サービス・エリアを拡大していく予定であり、2021年12月現在、8基地局を運用している。

2 ラオス電気通信公社(ETL)

Entreprise of Telecommunications Lao

Tel. +856 21 26 00 12
URL https://www.etllao.com/
所在地

Saylom Road, Saylom Village, Chanthabouly District

Vientiane 01000, P.O.Box 7953, LAO P.D.R.

概要

1994年の設立後、2000年8月に再設立(Ⅲ-2の項参照)。ラオス政府が所有していたが、2017年7月以降、同社の株式は、中国広東省の通信設備の製造・販売会社である京信通信(Comba Telecom)が香港の特別目的投資持株会社Jiahu Holdingsを通じて51%を所有している。

放送

Ⅰ 監督機関等

情報文化・観光省(MICT)

Ministry of Information, Culture and Tourism

Tel. +856 21 21 24 12
URL https://mict.gov.la/
所在地 Lane Xang Avenue, Hatsadi Village, Chanthabouly District Vientiane Capital, LAO P.D.R
幹部 Suanesavanh Vignaket(大臣/Minister)
所掌事務

地上放送は政府直轄の事業として運営され、MICTの外局であるラオス国営テレビ(Lao National Television:LNTV)とラオス国営ラジオ(Lao National Radio:LNR)がサービスを提供している。また、マスメディア部が地方放送局を管理し、局間の番組配信、機材配備計画、衛星中継等の調整業務を行っている。

Ⅱ 法令

メディア法(Media Law

2008年に制定された同法では、公衆による情報アクセスの促進(第2条、第16条)、外資によるメディア企業設立(第40条)が認められている。また、メディア関係者がラオス人民革命党の指示に従うこと(第12条)が規定されている。同法は、2016年11月に改正され、報道規制が強化(第50条~第52条)された。

Ⅲ 政策動向

1 コンテンツ規制

番組規制は厳しく、放送内容は政府の方針に従うこととされている。検閲についてもラオス人民革命党のプロパガンダ委員会が行う。

2 地上デジタル放送

デジタル放送への移行は2018年から2020年の予定であったが、2025年頃になる見込みである。地上デジタル放送の方式は、2010年に中国の支援でDTMB方式とすることが決定された。首都圏から地方都市部を中心に段階的に実施される予定。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

LNRが、首都圏向けにAM・FM放送、海外向けに短波放送、タイ事業者との合弁会社Lao Star Channelが衛星を利用して衛星経由で全国放送をしている。首都圏ではラオス国軍、公安省、ビエンチャン行政当局、人民革命党青年部等も開局している。

2 テレビ

LNTVが衛星経由で全国放送を行っており、ラオス語の総合番組をチャンネル3で、ラオス語のニュースのほか英語、フランス語、ベトナム語の外国語ニュースとモン語やカム語のニュースをチャンネル9で提供している。また、首都圏での放送は3系統で、ベトナムVTVによるベトナム語放送のチャンネル11が提供されているほか、中国中央テレビ局が衛星受信による首都圏向けの英語と中国語による2系統の放送を提供している。

国際放送は、LNTVがThaicom 5衛星で、チャンネル3のラオス語番組を24時間放送で世界22の国と地域に配信している。

3 衛星放送

衛星放送の直接受信は許可されており、LNTV(チャンネル3とチャンネル9)がDTHで国内外に配信されている。その他、タイ事業者との合弁会社Lao Star Channelによって、娯楽番組のほか、朝夕にLNTVのニュース放送が実施されている。

4 ケーブルテレビ

首都圏でケーブル事業者が増加している。主な事業者は、2005年にサービスを開始したLao Cable TV。

Ⅴ 運営体

1 ラオス国営ラジオ(LNR)

Lao National Radio

Tel. +856 21 24 32 50
URL https://lnr.org.la/
所在地 Phaynam Rd, P.O BOX 310, Vientiane 01000, LAO P.D.R.
概要

1960年に開局された。AM放送1系統、短波放送2系統、及びFM放送2系統を実施しているほか、インターネット放送も行っている。全国63か所の地域局に定時ニュース等を衛星経由で伝送している。

2 ラオス国営テレビ(LNTV)

Lao National Television

Tel. +856 21 71 13 67
URL https://www.lntv.gov.la/
所在地 Ban Sivilay Village, Xaythany District, Vientiane Capital, Lao PDR
概要

1983年、旧ソ連の援助を受け小規模放送局としてテレビ放送を開始した。1993年に、日本とベトナムからの無償援助を受け、新局舎及び放送設備が建設され、LNRと分離した。政府交付金、広告収入等の財源で運営されている。ニュース中心のVT1(チャンネル9)と娯楽番組中心のTV2(チャンネル3)の2系統の放送を実施している。また、ストリーミング配信により、ラオス語、フランス語、モン語、カム語のニュースを提供している。

電波

Ⅰ 監督機関等

技術通信省(MTC)

(通信/Ⅰの項参照)

Ⅱ 電波監理政策の動向

「電気通信法」第9条において、すべての周波数の行政、分配、割当て、取消しの管理は、国の責務の下にあり、周波数の利用を所望する個人、法人、団体は政府からの認可を得なければならないことが規定されている。

電波監理業務は、MTCの周波数局(Radio Frequency Department)が周波数割当、周波数分配、電波監理実施状況の監視、規則の実施、無線局免許付与、電波障害の発生時における免許取消、ITU-Rへの報告と連携を行っている。

MTCの周波数政策の基本方針は次のとおりである。

5Gについては、2019年10月にLTCとUnitelが試験サービスを開始し、2020年8月にLTCが商用サービスを開始した。なお、LTEについては、2012年にTPLUSへ、2014年にLTC、Unitel、ETLへ免許が付与されており、1800MHz帯を使ったサービスが行われている。そのほか、LTCがGSMに割り当てられてた900MHz帯を使ってLTEを提供している。