マレーシア(Malaysia)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 通信省(KK)

Ministry of Communications

Tel. +60 3 8000 8000
URL https://www.komunikasi.gov.my/en/
所在地 Lot 4G9, Persiaran Perdana, Precint 4, Pusat Pentadbiran Kerajaan Persekutuan, 62100, Putajaya, MALAYSIA
幹部 Fahmi Fadzil(大臣/Minister)
所掌事務

2013年5月、情報・通信・文化省の文化部門が移管され、通信マルチメディア省(Ministry of Communications and Multimedia)となり、2022年12月通信デジタル省(Ministry of Communications and Digital)に改組された。

2023年12月には、通信省とデジタル省に分割され、通信省が電気通信の政策及び規制を所掌している。規制の施行及び一部政策の実施は、通信マルチメディア委員会(Malaysian Communications and Multimedia Commission:MCMC)が、執行機関となっている。

2 デジタル省(KD)

Ministry of Digital

URL https://www.digital.gov.my/
所在地 Aras 13 & 15, Blok Menara, Menara Usahawan No.18, Persiaran Perdana, Presint 2 Pusat Pentadbiran Kerajaan Persekutuan 62000 PUTRAJAYA, MALAYSIA
幹部 Gobind Singh Deo(大臣/Minister)
所掌事務

2023年12月、内閣改造に伴う省庁再編の一環として、アンワル政権の注力領域であるデジタル分野における機能強化を目的とし、旧通信デジタル省を分割して設置された。

3 通信マルチメディア委員会(MCMC)

Malaysian Communications and Multimedia Commission

Tel. +60 3 8688 8000
URL https://www.mcmc.gov.my/en/home
所在地 MCMC Tower 1, Jalan Impact, Cyber 6, 63000 Cyberjaya, Selangor, Darul Ehsan, MALAYSIA
幹部 Mohamad Salim Bin Fateh Din(委員長/Chairman)
所掌事務

「通信マルチメディア委員会法(Malaysian Communications and Multimedia Commission Act 1998:MCMCA 1998)」に基づいて設立された、電気通信、放送、オンライン・サービス、郵便等の分野の規制を行っている独立規制機関である。主な所掌内容は以下のとおりである。

Ⅱ 法令

1 1998年通信・マルチメディア法(Communications and Multimedia Act 1998 :CMA 1998)

第1部:法の目的及び用語の定義、第2部:大臣の権限と執行に関する手続、第3部:申立ての審判、第4部:免許、第5部:委員会の権限と手続、第6部:経済的規制、第7部:技術的規制、第8部:消費者保護、第9部:社会的規制、第10部:一般、第11部:「1950年電気通信法」及び「1988年放送法」からの移行に関する手続等で構成されている。

2 通信マルチメディア委員会法(Malaysia Communications and Multimedia Commission Act 1998:MCMCA 1998)

通信及びマルチメディア産業に対する管理、監督、規制等の執行をMCMCに委ねる旨の法律であり、第1部:序文、第2部:委員会、第3部:委員会の機能と権限、第4部:委員会の雇用者、第5部:財政、第6部:一般規定で構成される。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)免許制度

通信・放送の融合を考慮した免許制度が導入され、個別免許(Individual License)とクラス免許(Class License)の区分がある。個別免許は、基本サービス等、より厳格な規制が必要となる事業に適用される。クラス免許は毎年更新され、MCMCに登録することにより、当該事業が運営可能である。

2005年4月より、「Direction No.3 of 2001」に従ってASP免許に関して規制緩和が実施され、公衆交換、公衆移動体通信、IP電話、公衆電話等のサービスについては、クラス免許で提供できるようになった。

2024年8月に、社会問題化したインターネットの不適切な利用を防止するために、マレーシアでの加入者数が800万人を超えるメッセージ・サービス事業者とSNSサービス事業者は、ASP免許の取得が義務付けられた。発表時にMCMCは、フェイスブック(Facebook、現メタ(Meta))、TikTok、YouTubeといった事業者名を対象例として示した。

(2)外資規制

一定の条件を満たすことにより与えられるマレーシア・デジタル(Malaysia Digital:MD)・ステイタス(旧マルチメディア・スーパー・コリドー(Multimedia Super Corridor:MSC)・ステイタス)を持つ情報通信関連企業には、100%の外国人保有が認められる。2009年4月の規制緩和でコンピュータ関連サービスについても、100%の外国人保有が認められた。また、2012年1月より、ASPについて100%の外国人保有が認められ、2012年11月より、NFP及びNSPについて100%の外国人保有が認められている。

2 競争促進政策

(1)相互接続

「CMA 1998」第149条に規定され、アクセス・リストに掲載されている設備とサービスについては、他事業者からの求めに応じて、相互接続を提供しなければならない。MCMCは、競争を活性化させるため、アクセス・リストの改訂を、パブリック・コンサルテーションを経たうえで実施している。2008年以降、順次、デジタル化を目指した方向でリスト改正がなされており、2021年12月にもパブリック・コンサルテーションを経て改正を行った。また、アクセス料金に関しては、3年ごとに改定される。

(2)番号政策

2005年より事業者事前選択制度が実施され、2008年移動電話番号ポータビリティ・サービスが実施され、手数料の上限は25MYRに設定されている。2022年の移動体での利用数は、約128万番号である。

(3)政府特別目的事業体による5G網整備・運用と第2事業者の参入

2021年2月、政府は、投資の二重化を避けながらデジタル化を加速化するために、5G網の構築と運用は、財務省が保有する政府特別目的事業体(Special Purpose Vehicle)デジタル国家会社(Digital Nasional Berhad:DNB)を通じて行うことを発表した。5Gに利用される周波数(700MHz、2.8GHz、3.5GHz)はこの会社に割り当てられ、DNBが構築したインフラを通じたサービスは各事業者に非オークション方式で卸売りされる。DNBは、2024年6月末時点で、人口密集地域の人口の約81.8%をカバーしている。

政権交代を受けて単独事業者による整備方針が転換され、2023年5月に5G網の構築と運用を行う第2事業者を参入させることが発表された。第2事業者の参入時期をDNB網が80%の人口密集地域をカバーした時点とし、第2事業者選定手続を進めた。大手事業者4社が応募書類を提出し、比較審査の結果、2024年11月にUモバイル(U Mobile)を選定した。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス基金制度

ユニバーサル・サービスの提供は、「CMA 1998」の第202条から第204条に規定されている。所管大臣は、サービス供給が不十分な地域やコミュニティ内のサービスの行き届いていないグループへのサービス提供の格差是正を図るよう命令することができ、ユニバーサル・サービス基金(Universal Service Provision Fund:USP基金)を通じてサービスが提供される。

MCMCはブロードバンドの需要拡大、移動体通信の急速な普及といった現状を受けて「2008年ユニバーサル・サービス供給(改正)規則」を定めた。それにより、基金の対象地域は、公衆交換網の普及率が全国平均より20%以下の地域、ブロードバンド普及率が全国平均以下の地域、移動電話が十分に普及していない人口密度が80人/km2以下の地域となった。MCMCは、条件を満たすすべての免許事業者から一定額(徴収の対象となるサービスの売上高の6%)を徴収して、ユニバーサル・サービス基金を運営している。提供事業者は入札によって決定される。

USP基金を使ったプロジェクトとして、コミュニティのアクセス改善のために回線整備とテレセンターの設置、コミュニティ開発の補助、教育関連コンテンツ供給、ネットワーク施設(移動電話基地局と基盤)の構築、インターネット接続が可能な公共施設であるコミュニティ・ブロードバンド・センター(Community Broadband Centre:CBC)の設置等がある。2010年12月には、インターネットへの接続が可能で、世帯収入が3,000MYR以下の生徒を対象に、「1マレーシア・ネットブック」と呼ばれるPCが支給開始され、2020年末までにその他のスキームでの端末配布も含め、約418万台を配布している。

また、ネットブックが支給されているエリアで無線インターネット接続を提供する「無線の村(Kampung Tanpa Wayar:KTW)」プログラムが始動し、有線接続、マイクロ波通信又は衛星通信によるバックホール・ネットワークやWi-Fi、3G、WiMAXによる無線ブロードバンド接続の構築を目指している。

2022年に徴収されたUSP基金は、約15億1,200万MYRで、ユニバーサル・サービス関連のプロジェクト支出は総額約23億7,000万MYRとなっている。

(2)ゾーン開発

2020年までに先進国入りを目指す「Vision 2020」計画に沿って、政府は1995年以来、首都中心部、プトラジャヤ新行政府及び新国際空港を含む地域においてICT産業を中心とする知識集約型産業の育成を図り、同国を関連産業の国際拠点とすることを目的としたMSC計画を展開した。政府は、MSCに先進企業を誘致するために、税制優遇措置等の様々な施策を実施した。

2017年に首都圏地域に電子商取引のハブ確立のためのデジタル自由貿易ゾーン(Digital Free Trade Zone:DFTZ)を設置した。

(3)高速ブロードバンド整備計画

ネットワークの高速化は、2004年10月の「国家ブロードバンド計画」に始まる。2008年5月の高速ブロードバンド網整備計画(High-Speed BroadBand Network Project:HSBB)や2015年からの第2次高速ブロードバンド網整備計画(HSBB2)と郊外ブロードバンド網整備計画(Sub-Urban BroadBand Project:SUBB)は、テレコム・マレーシア(Telekom Malaysia:TM)との官民パートナーシップ(Public Private Partnership:PPP)方式で、地域の特性に合った通信基盤の整備を進め、国内のブロードバンド普及率を向上させた。

2019年から「国家光ファイバ接続計画(The National Fiberisation and Connectivity Plan:NFCP)」が実施された。同計画では、①2023年までに30Mbps以上のブロードバンド・サービスの世帯カバレッジを少なくとも98%に引き上げる、②1Gbps以上のブロードバンド・サービスについて、2020年までに戦略的な産業地域において、2023年までにすべての州都において利用できるようにする、③2020年にエントリー・レベルの固定ブロードバンド・パックの料金を1人当たり国民総所得の1%以下にする、④2022年に70%の学校、病院、図書館、警察署、郵便局を光ファイバで接続する、⑤2023年に居住地域の98%を平均30Mbpsで接続する等の目標が掲げられた。

2020年8月に「国家デジタル・ネットワーク計画(JENDELA)」が公表され、同計画に示された目標は以下のとおり。

4 ICT政策

2021年2月に発表された「マレーシア・デジタル経済ブループリント」は、六つの戦略的推進、22の戦略、48の国家主導イニシアチブと28の産業イニシアチブを2030年までを三つの時期に区分して実施するとした。戦略的推進は、公共セクターにおけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進、デジタル化を通じた経済的競争力の強化、デジタル・インフラの構築、敏捷で有能な人材の育成、包摂的なデジタル社会の創出、信頼できる安全で倫理的なデジタル環境の構築とした。目標は50万の雇用を創出して、2030年にデジタル経済がGDPの22.6%を占めるようになることや、電子商取引を通じて87万5,000の極小及び中小企業を補助すること、2030年までに生産性を30%向上させること等である。

2021年10月に発表された「第12次マレーシア計画(経済開発5か年計画2021~2025)」では、「政策イネーブラー2:技術採用とイノベーションの加速」項目下で、包括的な開発のためにデジタル・コネクティビティの高度化を図るとしている。戦略の具体的な目標数値として、都市部農村部で100%の世帯をインターネットで接続する、4Gの人口カバレッジを100%とし5Gのカバレッジを向上させるといったものや、デジタル経済のGDPへの寄与率を25.5%、電子商取引のGDPへの寄与率を10.5%にするといったものが掲げられた。

2022年7月、政府は、「マレーシア・デジタル」政策を開始すると発表した。この政策では、デジタル経済においてマレーシアが主導的な役割を果たせるよう、企業や人材、投資を呼び込み、デジタル経済を促進することを主眼としている。そのための三つの柱を、意欲的な若い起業家、企業、国民のデジタル包摂を進めること、国内テック企業のサポート、高付加価値なデジタル投資を誘引することとしている。開始当初、マレーシアをデジタル・ノマドのハブとするために観光や専門家の可動性を進める「DE Rantau」と、標準化と規制を調和させて国内外の交易を盛んにするためのデジタル貿易に取り組むとされた。その後、コンテント産業振興のための「IP360メタバース」や「国家eインボイス」といった施策が追加されている。この政策はMSC政策を後継している。

5 消費者保護関連政策

MCMCは、消費者苦情取扱ガイドラインを定め、接続や線路敷設権等に関する紛争の調停を行う。カスタマー・サービス、無線ブロードバンド、固定ブロードバンド、公衆セルラーについては、サービス品質義務基準が定められ、事業者はその基準を満たす必要がある。

事業者と消費者の代表からなる「通信マルチメディア消費者フォーラム(Communications and Multimedia Consumer Forum of Malaysia:CFM)」が組織され、自主規制のためのコードやガイドラインを作成している。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

通信機器の強制規格に関する基準認証は、「CMA 1998」186条及び「2000年技術基準規則(Communications and Multimedia(Technical Standards)Regulations 2000)」において、MCMCの認証業務を代行する登録認定機関が行う旨規定されており、これに基づき認証機関SIRIM QAS Internationalが、すべての通信機器に関する基準認証を行っている。認証には、特定の通信機器に対する型式認証に相当する基準認可(Compliance Approval)のほか、個人・企業内での限定利用、テスト・デモでの利用、研究開発、訓練等の特定目的のための利用に関する特別認可(Special Approval)がある。特別認可は、基準認可に必要とされる機器の室内テスト及び野外テストが免除され、書類のみの審査手続をとる。

なお、MCMCが、通信機器の強制規格として、安全性、周波数帯、相互運用性、電磁環境適合性、電波干渉の防止等の技術要件(Technical Specification)を交付している。技術要件がない場合は、特定の国内・国際標準、技術チェックリスト、技術適合宣言(technical declaration)に基づき技術認可を得る。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

(1)固定電話

1994年5月に市内通信が自由化された。主な事業者は、TM、マキシス(Maxis Communications)、タイム・ドットコム(Time dotCom)、セルコムディジ(CelcomDigi)の4社で、旧国営事業者のTMが支配的地位にある。移動電話への加入者移行の影響を受け、固定電話の加入者数は減少した。

インターネット電話については、PC間の音声通信提供は「インターネット・テレフォニー」に分類され、免許は不要。公衆交換網を経由した通話については、「VoIPサービス」に分類されるため、クラスASP免許が必要となる。

(2)衛星通信基盤

衛星通信は、マレー半島とボルネオを結ぶための重要な通信基盤で、1996年1月に東経91.5度にMEASAT-1、同年11月に東経148度にMEASAT-2が打ち上げられ、2006年12月にMEASAT-3が東経91.5度に打ち上げられた。MEASAT衛星を保有・運営しているのは、マキシス・グループのMEASAT Satellite Systems(旧ビナリアン(Binariang Satellite Systems))社である。MEASATは高出力のKuバンドとCバンドの中継器(MEASAT-3bではKuバンドのみ)を搭載し、デジタル衛星放送、VSAT、高速インターネット接続等のサービスに利用されている。

MEASAT-3aが2009年6月にMEASAT-1の後継機として打ち上げられ、その後、2014年9月にMEASAT-3b、2022年6月にMEASAT-3dが東経91.5度に打ち上げられた。

2 移動体通信

移動体通信市場では事業者の競争と再編が行われており、TM系列事業者は、一時的に規模の拡大を規制されたが、2001年にモビコム(Mobikom)、2002年5月にTRIの合併を行い、2008年、TMの事業再編により固定通信部門と移動体通信部門の分離が実施され、TM Internationalから名称を変更したアシアタ・グループの移動体通信事業部門はセルコム・アシアタ(Celcom Axiata)となっていた。

マキシス・モバイル(Maxis Mobile)は、旧タイムセル(Timecell)を合併し、その後もアグレッシブなプロモーションで加入者を増加させてきた。ディジ・テレコム(Digi Telecom)は1999 年10 月にノルウェーのテレノール(Telenor)がスイスコム(Swisscom)から同社株式を取得した際に改称し、2007年にタイム・ドットコムとの戦略的提携を開始した。

2021年6月に、両グループが33.1%ずつ保有する形でアシアタのマレーシア事業会社セルコム・アシアタとテレノールのディジ・テレコムを統合することに合意し、MCMCが2022年6月に承認し、11月末に両者の合併が完了し、セルコムディジとなった。

4Gに使用する周波数は、8事業者に対し割り当てられ、2013年1月にマキシス・モバイルが首都圏から提供を開始した。MCMCは2021年末をもって3Gの提供を終える方針を発表していたが、条件不利地域等で4Gが未提供で、4Gカバレッジは2023年9月時点で97.4%のため完全停止には至っていない。年々ポストペイドの比率が上昇しており、2024年6月時点では30.4%に達している。

5G網については、2017年5月にセルコム・アシアタが、2019年3月にマキシス・モバイルが実験を開始していた。2021年2月、5G網の構築と運用は、政府が保有する事業体のDNBが行い、各事業者はDNBから卸売りを受けることになった。2022年11月1日にセルコム・アシアタが5Gサービスを提供開始した。

2024年11月、競争が普及を促進するとしてそれまでの方針を転換したMCMCが、第2事業者としてUモバイルを選定したことを発表した。同社は、第2位と加入数で差がある第3位の事業者であり、株式の半数弱をシンガポール・テクノロジーズ・テレメディア(STT)が保有していたため、様々な意見が表明され、対応の一環としてSTTはUモバイル株式をマレーシア企業に売却して出資比率を20%に下げることを表明している。

MVNOについては、「CMA 1998」で事業者への免許付与の枠組みが設けられた後、2005年2月に「3G仮想移動体通信事業者に対する規制枠組ガイドライン」の中でMVNO事業者について参入障壁を低く設定した。そのうえでMVNO事業者をフルMVNO、強化サービス・プロバイダ、強化再販事業者、再販事業者の4種類に分類し、免許認定に関する取決めも示した。

3 インターネット

最大通信速度256kbps以上がブロードバンドに分類されるブロードバンド・インターネットについては、2001年からDSLサービスの提供が開始され、2007年中にHSDPAサービスが本格化し、2010年3月より、TMが首都圏においてFTTHサービスの提供を開始している。2024年3月現在、固定ブロードバンド加入数は約468万で、モバイル・インターネットが約4,513万である。

MCMCは、2007年3月に比較審査のうえ、2.3GHz帯におけるWiMAX免許を中小の4事業者(Packet 1(P1(現Webe))、Asiaspace、Redtone(サラワク州とサバ州がサービス地域)、Bizsurf)に交付した。2008年から2010年に商用サービスが開始され、2014年以降、4Gの普及に伴い、WiMAXの加入は減少したが、サービスの多様化と相対的に低い料金設定によって歯止めがかかっている。

Allo Technologyが親会社の政府系電力会社テナガ・ナショナル(Tenaga Natioanl Berhad:TNB)の電力供給網を使用し、卸売りを含めて固定ブロードバンド・サービスを提供している。

Ⅵ 運営体

1 テレコム・マレーシア(TM)

Telekom Malaysia

Tel. +60 3 2240 1221
URL https://www.tm.com.my/
所在地 Level 51, North Wing Menara TM Jalan Pantai Baharu, 50672 Kuala Lumpur, MALAYSIA
幹部 Amar Huzaimi Md Deris(グループ最高経営責任者/CEO)
概要

旧国営電気通信事業者であり、固定系のサービスを中心に提供している。

1984年10月に株式会社化され、1990年7月に上場を行った。2024年9月末現在、20.1%を政府系投資会社Khazanah Nasional Berhadが保有している。2002年に移動体通信事業者のセルコムを吸収合併、完全子会社としたが、2007年9月に固定系と移動体系に分割する方向で企業再編を発表し、2008年4月の移動系と海外事業を中心とした旧TM International(現アシアタ)の上場後、固定系のサービスを中心にTMのブランドで提供されている。

2 アシアタ

Axiata Group Berhad

Tel. +60 3 2263 8888
URL https://www.axiata.com/
所在地 9 Jalan Stesen Sentral 5, Kuala Lumpur Sentral, 50470 Kuala Lumpur, MALAYSIA
幹部 Vivek Sood (最高経営責任者/ Group Chief Executive Officer and Managing Director )
概要

TMの移動系事業を中心とした旧TM Internationalが2008年4月に上場し、2009年3月にアシアタに企業名を変更した。それまでTMが展開してきた国内外での移動体通信事業をコントロールする持株会社である。2024年9月末現在、政府系投資会社Khazanah Nasional Berhadが株式の36.72%を所有している。2018年にシンガポールのモバイルワン、2023年にネパールのNセルを売却し、海外事業を整理している。2021年にセルコム・アシアタとディジ・テレコムを合併させ、新会社セルコムディジの株式を、テレノールと33.1%ずつ保有している。

3 マキシス

Maxis Communications

Tel. +60 3 2330 7000
URL https://www.maxis.com.my/
所在地 Menara Maxis, Kuala Lumpur City Centre, 50088 Kuala Lumpur, MALAYSIA
幹部 Goh Seow Eng(最高経営責任者/CEO)
概要

1993年に設立され、移動体通信を事業の中核に置いているが、光ケーブルを利用して、固定電話、インターネット接続等のサービスも提供している。また、衛星通信のMEASATシステムを保有するビナリアン(Binariang Satellite Systems)は同系列のUsaha Tegusグループの一員である。

2007年5月にUsaha TegusグループのBinariang GSM Sdn Bhdがマキシス株をすべて取得し上場廃止になったが、2009年11月に再上場した。2007年7月には、Binariang GSM Sdn Bhd株式の25%がサウジ・テレコムに売却されている。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 通信省(KK)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

同省の放送局(Department of Broadcasting)が国営放送Redio Televisien Malaysia(RTM)を運営し、情報局(Department of Information)が、主として、政府広報、マスメディアの管理、国営放送局の監督等を所掌する。

2 通信マルチメディア委員会(MCMC)

(通信/Ⅰ-3の項参照)

所掌事務

1999年4月より、放送関連分野についても規制・監督を所掌している。

Ⅱ 法令

1998年通信・マルチメディア法(CMA 1998)

コンテンツ規制については第9部に、「1988年放送法」からの移行に関する手続については第11部に規定されている(法全体の構成は、通信/Ⅱ-1の項参照)。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「CMA 1998」の施行により、コンテンツ・サービス提供には、CASP、ASP免許が必要である。従来の放送サービスはCASP免許に区分される(通信/Ⅲ-1の項参照)。放送事業者・番組制作事業者の場合には、伝送設備を保有していてもNFP免許取得は義務付けられていない。放送事業者への外国からの投資は30%を上限とする。

2 コンテンツ規制

「CMA 1998」第212条では、コンテンツ規制は自主的に実施されることが望ましいとされているため、2001年に設立された広告主、コンテンツ作成・流通業者、放送事業者、ISPと消費者の代表等からなるマレーシア通信マルチメディア・コンテンツ・フォーラム(Communications and Multimedia Content Forum of Malaysia)が、自主的にコンテンツ・コードを策定している。コンテンツ・コードは、情報の受け手を保護しながら、産業が発展していくために必要なものと位置付けられている。

コンテンツ・コードは、順次改定されており、以下のURLで入手可能である。

非合法組織の勢力拡大やSMSを通じた情報流通の加速化等を受けて、コンテンツの規制を強化するために2018年4月に「反フェイク・ニュース法(Anti-Fake News Act 2018)」が成立したが、言論の自由との関係で様々な議論があり、政権交代後8月に同法の廃止法案が下院で可決された。9月に上院で否決されたが、2019年10月に再度下院で廃止法案が可決され撤廃された。

国内番組比率80%を目標としているが、実際には達成できていない。午後8時30分から9時30分の時間帯は、外国番組の放送が禁止されている。

2022年2月には「1987年著作権法」が改正され、同年3月に施行された「2022年改正著作権法」ではデジタル・コンテンツの著作権侵害についての取締りを強化する内容が盛り込まれている。

3 地上デジタル放送

2006年にRTM等が中心となって、首都を中心に試験放送を実施し、2016年に地上デジタルテレビ放送サービスに関する技術基準にDVB-T方式を採用した。

2012年4月、MCMCは、放送事業者各社が独自で放送基盤(送信所等)を整備するのではなく、放送事業者共通の基盤を構築することが計画され、当該基盤を整備する事業者1社を選定して周波数を割り当てることを明らかにした。

MCMCは、選考を経て応札があった8事業者の中から、2014年1月にPuncak Semangat Sdn Bhd(PSSB)社をDVB-T2方式の地上デジタル放送の基盤を構築し運営する事業者に指名した。PSSBは、最大45波のSD又は15波のHDチャンネルを準備して、地上デジタル放送関連のデジタル・マルチメディア・ハブやネットワークの構築を行い、その時点で免許を受けているすべてのテレビ局とラジオ局がデジタル・プラットフォームに移行した。

2017年よりPSSB子会社のMYTV Broadcasting Sdn BhdがMYTV Broadcastingのプラットフォーム名で、2022年末現在、16TVチャンネルと11ラジオ・チャンネルの地上デジタル放送サービスを提供している。2018年6月までに停波予定だった地上アナログ放送は、2019年9月末に首都圏と南部で、10月14日に北部と東部で、10月30日にボルネオ2州で停波し、デジタル放送に完全移行した。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

RTMが全国放送6チャンネルと地方向けに放送を行っており、その他、10程度の商業放送事業者が全国放送を行っている。大規模なのは、アストロ(Astro All Asia Netwoks)の完全子会社であるAstro Radio (旧AMP Radio Networks)である。また、地方には、多くの地域商業放送事業者が存在している。

多民族国家であることを反映し、マレー語、英語、中国語、タミール語等、国内放送における使用言語は多様である。

2 テレビ

1963年に開局したRTMが全国放送を5チャンネル配信しているほか、商業放送事業者ではTV3が1984年に、ntv7が1998年に、TV9が2003年(いったん放送中止後、2006年に再開)に、8TV(旧Metrovison)が2004年に放送を開始している。

日刊紙の「New Straits Times」等を傘下に持つメディア・プリマ(Media Prima)が、放送事業者の買収を進め、2003年9月にTV3の完全買収を行い、同年11月には現8TVの80%の株式(2007年に完全取得)、2005年6月に現TV9、同年12月にntv7を取得し、すべての全国商業地上放送事業者が傘下に入った。そのため、メディア集中排除の規制策定の意見が提出されている。

2010年12月、政府系のAl-Hijrah Mediaがイスラム専門のTV Al-Hijrahを開局した。

3 衛星放送

Measat Broadcast Network Systems(MBNS)社が、MEASAT衛星を使用し、1996年10月よりASTROのブランド名で有料デジタル衛星放送を行っている。視聴者が限定されるため、衛星放送についてはコンテンツ規制が緩やかで、ASTROの自主制作番組や地上波の再送信のほか、欧米や香港のテレビ番組等が提供されている。ASTROは、200余りのチャンネルの有料放送サービスとNJOIという無料チャンネルを提供している。

2020年2月にASTROの独占免許が失効し、旧通信マルチメディア省は2018年11月にケーブル事業者Ansa Broadcast等4社に衛星放送免許を付与し、2021年にシリウスTV(Sirius Malaysia)が放送を開始した。

衛星放送の加入者数は、2024年6月末時点で約514万、有料放送全体では不況等の影響を受けて減少傾向にあり、世帯数の66.9%の607万である。

4 ケーブルテレビ

衛星放送の人気が高く、多チャンネルのケーブルテレビはそれほど成長していない。1995年11月からサービスを提供してきた事業者は、2001年に休止した。

2012年6月、アジア放送ネットワーク(Asian Broadcasting Network:ANB)が放送を開始し、ブロードバンド・インターネット接続サービス等で展開を図っているものの、2016年には放送が中断される等、ケーブルテレビの苦戦が伝えられている。

一方、IPTVは、テレビ放送とブロードバンド接続、VoIPを合わせたトリプルプレイ・サービスとして2010年からTMが提供を始めた。2011年には、放送事業者のASTROがブロードバンド接続とも組み合わせてIPTVの提供を開始した。地上テレビ局各局がストリーミング・サービスを行い、動画のネット視聴が拡大し、有料の視聴者も約93万世帯ある。

Ⅴ 運営体

1 マレーシア国営放送(RTM)

Radio Televisyen Malaysia

Tel. +60 3 2282 5333
URL https://www.rtm.gov.my/
所在地 Jabatan Penyiaran Malaysia, Angkasapuri, 50614 Kuala Lumpur, MALAYSIA
幹部 Suhaimi Sulaiman (総局長/Director General)
概要

1963年設立の国営放送事業者で、政府交付金と広告収入を財源にKKによって運営され、ラジオ6チャンネル、テレビでは5チャンネルの全国放送を行っているほか、2チャンネルの国際放送、17チャンネルの州別放送を行っている。TV1では主にマレー語の番組を放送し、TV2では映画、娯楽、スポーツ等の番組をマレー語、英語、北京語、タミール語で放送している。デジタル化に伴い、チャンネル数を19チャンネルにする意向を持っている。

2 Media Prima Television Networks

Tel. +60 3 7621 3333
URL https://www.mediaprima.com.my/
所在地 Sri Pentas, Bandar Utama, Petaling Jaya, Selangor, MALAYSIA
幹部 Nini Yusof (最高経営責任者/CEO)
概要

新聞社、出版、ラジオ局も持つ国内最大のメディア・グループであるメディア・プリマの子会社で、傘下に全国放送を行う四つの放送事業者を持つ。2003年に初の商業放送事業者だったTV3、中国語放送を中心とする8TV、2005年にNTV7、TV9を買収した。

3 アストロ

Astro All Asia Networks

Tel. +60 3 9543 6688(IR)
URL https://www.astro.com.my/
幹部 Euan Smith(最高経営責任者/CEO)
概要

1996年にASTROのブランド名で衛星放送サービスを開始したメディア事業者である。ASTRO All Asia Networksについては、2010年にAstro Holdings Sdn Bhdの完全子会社となり上場廃止されたが、2012年9月に再上場した。

ネット経由の視聴による需要に対応するために、プラットフォームの拡充、パッケージ商品の強化、無料サービスの開始等を行い、マレーシアを含む東南アジア4か国に展開している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

通信マルチメディア委員会(MCMC)

(通信/Ⅰ-3の項参照)

2 標準化機関

(1)国際貿易産業省・標準化局(DSM)

Department of Standards Malaysia

Tel. +60 3 8008 2900
URL https://www.jsm.gov.my/
所在地 Tower 2, Menara Cyber Axis, Jalan Impact, Cyber 6, 63000 Cyberjaya, Selangor Darul Ehsan, MALAYSIA
幹部 Hussalmizzar Hussain(標準化局長/ Senior Director of Standardisation )
所掌事務

国際貿易産業省(Ministry of International Trade and Industry:MITI)の内局として、1996年マレーシア基準法(Act 549)に基づき、一般的な国内標準の制定・公布を管轄する。

(2)マレーシア技術標準協会(MTSFB)

Malaysian Technical Standards Forum Bhd

Tel. +03 8320 0300
URL https://mtsfb.org.my/
所在地

Off Persiaran Multimedia, Jalan Impact,

63000 Cyberjaya, Selangor Darul Ehsan, MALAYSIA

幹部 Normarinee Mohd Nor(最高経営責任者/CEO)
所掌事務

電気通信機器に関して、MCMCの指定に基づき、マレーシアの情報通信産業の技術標準、技術コード、通信網の相互運用性及び運用事項に関する技術文書を策定する。また、情報通信関連の技術コードの策定、勧告、修正、更新を行う。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

周波数管理については、MCMCが所掌しており、ITUの勧告に沿って国内政策を策定している。具体的な業務は規則策定、周波数利用計画、周波数割当、電波干渉の監視と調査、周波数割当に関する技術的側面からの分析等である。

MCMCが挙げている主な周波数監理業務は以下のとおりである。

2 無線局免許制度

(通信/Ⅲ-1(1)の項参照)

3 周波数割当制度・電波再配分制度

(1)周波数割当の種類

周波数割当は、「CMA 1998」の第7部第1章「周波数割当(Spectrum Assignment)」及び「2000年通信マルチメディア(周波数)規則(P.U.(A)128)」に従い、クラス割当、機器割当、周波数割当の三つの方法により実施されている。

①クラス割当(Class Assignment

1)機器・サービスの運用制御、2)機器運用に関する特定条件、3)特定の周波数の利用、4)サービス地域の限定等、特定の機器で特定の目的に利用する周波数帯域の使用権を与えるもので、例えば、市民バンドの通信機器、移動電話端末、VSAT、FWA、コードレス電話器、ブルートゥース等、短距離通信機器での利用が該当する。

②機器割当(Apparatus Assignment

ネットワーク設備事業者等の電気通信に関連する免許を持つ個人や法人に対し、電気通信関連機器が利用する特定の周波数帯域の使用権を与えるもので、固定、無線測位、宇宙、移動体、放送、アマチュアの6種に機器が分類されている。有効期間は通常5年である。

③周波数割当(Spectrum Assignment

オークションや入札等により周波数を割り当てる方式で、MCMCが設定する割当条件に合致する目的で周波数の使用権を与える。IMT-2000システムに対する割当てがこれに当たる。割当有効期間は20年以下(割当時に指定)である。周波数割当の周波数帯域は、第三者への譲渡や取引が可能であるが、IMT-2000システムの免許にはその権利の移転はできないとの例外措置が記載されている。

MCMCは、4Gへの周波数として2.6GHz帯を割り当てる決定(SKMM SRSP-523)を2012年11月に発表し、同年12月に、移動体通信事業者であるディジ・テレコム、セルコム・アシアタ、マキシス・モバイル、Uモバイルのほか、WiMAX事業者のAsiaspace、P1、REDtoneInternational、YTLCommunications(Yesbrand)、Puncak Semangat(Altel)への割当てを決定した。その際の免許は、基地局には機器割当免許を適用し、端末にはクラス免許を適用している。このうちディジ・テレコム、Uモバイル等の移動体通信事業者4社は、2013年に2.6GHz帯を利用したLTE商用サービスを提供しており、セルコム・アシアタ及びマキシス・モバイルは1800MHz帯を利用したLTEサービスも提供している。

2016年2月には、MCMCはセルコム・アシアタ、ディジ・テレコム、マキシス・モバイル、Uモバイルの4社に対して900MHz帯と1800MHz帯の再割当を、900MHz帯はそれぞれ5MHz幅×2のブロックで合計4億9,972万MYR、1800MHz帯は同じく5MHz幅×2のブロックで合計2億1,777万MYRの割当価格で実施した。

2019年7月には逼迫する周波数帯域の確保のため、700MHz、2300MHz、2600MHzの各帯域について再配分を行うための委員会初の周波数関連のパブリック・コンサルテーションを実施した。

5G関連の周波数割当については、国家5Gタスクフォース(National 5G Task Force)等での議論を経て、700MHz、3.5GHz、26/28GHzの各帯域をパイオニア周波数帯域として割り当て、2300MHzと2600MHz帯を継続検討とするという最終報告書を2019年12月にMCMCが発表していた。その時点で、建設コストを下げ、重複投資を避けるために複数の免許事業者からなる単一のコンソーシアムに入札比較審査方式で割り当てるというこれまでにない方法が示されていた。そして2021年12月にMCMCは、850MHz及び2300MHz帯域の周波数の再割当に関する決定を発表した。10MHz幅×2ブロック(824MHz-834MHz/869MHz-879MHz)が5年間の期限付きでTMに再割当されたほか、Asiaspace Broadband(2300-2330MHz、マレー半島のみ)、SEA Telco Engineering Services(2300-2330MHz、サバ州及びサラワク州のみ)、YTL Communications(2330-2360MHz)及びWebe Digital(2360-2390MHz)の合計4社には、2300MHz帯域の30MHz周波数ブロックが5年間の期限付きで再割当されている。

2021年2月に政府保有の特別目的事業体が5G網の整備運用を実施することが発表され、700MHz、2.8GHz、3.5GHzを割り当てた。その他の事業者が現有している周波数帯域を5Gに使用することは、2024年10月時点で認められていない(通信/Ⅲ-2(3)の項参照)。第2事業者について比較審査形式で免許付与が実施され、2024年11月にUモバイルを選定し、既にDNBに割り当てた周波数のうち700MHz、3.5GHz帯の半分を割り当てる。

(2)割当方法

機器割当及び周波数割当は、「CMA 1998」の第7部第1章「周波数割当」に従い、固定価格(fixed price)、オークション(auction)、入札(tender)の三つの方法により実施されている。このうち入札は、申請者を競合させて割当事業者を選定する手法であり、割当申請者による価格提示を伴わない比較審査(beauty contest)が含まれる。

①固定価格

周波数の割当ての際に、次のとおり事業者間の競合がない場合、固定価格の支払いを条件に割当てが行われる。価格水準の設定は、周波数割当の場合は大臣により、機器割当の場合はMCMCにより行われる。

②オークション

最高入札価格を基準に割当ての付与が行われる。資格要件、免許の定義、免許条件、財務事項(オークション前の預託金、最低価格、支払日、オークション形式等)に関する提案文書「マーケティング計画(Marketing Plan)」が公示され、パブリック・コメントの募集後、MCMCにより、資格基準、割当条件、オークション過程と規則(登録、入札手続、オークション日程、利用可能な周波数ロット数等)の詳細を定めた「申請情報文書(Applicant Information Package:AIP)」が作成され、各ロットの最低価格が決定される。また、申請者に関して、次を基準に審査が行われ、当該審査を通過した者がオークション手続に進むこととなる。

③入札

入札方法による周波数割当は、主に特定の周波数帯域に関して競争が存在する場合に実施される。申請者が提案する周波数割当を受けた際の支払金額や事業計画を、MCMCが審査して割当事業者を選定する方式であり、割当金額の入札を伴わない比較審査も入札カテゴリーに分類されている。

(ア)比較審査

比較審査では、割当申請者は、事業実績、サービス内容、技術に関する提案に基づいて評価される。評価基準と手続はマーケティング計画及びAIPで特定され、申請者の事業実績、財務能力、計画実行能力の評価等が基準として含まれる。選定された事業者は、周波数割当の場合はMCMCが事前に定める固定料金を、また、機器割当の場合は、「2000年通信マルチメディア(周波数)規則」第23条で定められている金額を支払う。

(イ)価格を伴う競争入札(Comparative Tender with Price)

価格を伴う競争入札は、比較審査の基準とされる事業者実績、事業計画のほか、周波数の割当てに対する支払金額を申請者が提示し、MCMCの審査の下、最高得点者を割当事業者に選定する。

MCMCは、デジタル放送への移行に伴う周波数移転に伴い、700MHz帯(703-743MHz/758-798MHz)の割当手続を2017年10月に開始した。同帯域の割当ては、比較審査により40MHz幅×2を5MHz幅×2ごとの8周波数ブロックに分割し、1事業者当たり最大4ブロック(20MHz幅×2)までを上限とし、支払方法により金額が異なる固定価格で1ブロック(5MHz幅×2)当たりの周波数の料金が定められた。2020年5月に割当てを決定したが、入札を経ずに行われた不透明なプロセスを批判され、通信マルチメディア大臣がMCMCに対し、割当てを取り消すとともに、割当方法等の再検討を命じた。

4 免許不要局制度

クラス割当の場合には、免許は不要である。なお、2003年3月に発表された公衆無線LANサービス提供に関するガイドラインにおいて、2.4GHz帯における公衆無線LANへの接続は、免許なしでサービス提供が可能であるとしている。

5 電波監視体制

MCMCの周波数工学・干渉解消課(Spectrum Engineering and Interference Resolution Department)が干渉の調査及び電波監視を行っている。中央監視局を含め22か所の電波監視局と6台の移動監視局が存在する。

6 電波利用料制度

割当ての方式に従い異なる料金が設定されている。クラス割当の場合には、登録や割当てのために料金を支払う必要はなく、電波利用料は発生しない。

機器割当の場合には、機器の種類に応じて割り当てられた機器タイプ料金(固定額)とチャンネル当たりの周波数帯域幅料金(帯域幅に応じた額)で構成される機器料金(Apparatus Fee)が毎年徴収される。

周波数割当の場合には、①周波数の価格を反映させた周波数料金(Spectrum Price Component)と②周波数管理の名目で毎年徴収される年次取扱料金(Annual Maintenance Fee)がある。

7 電波の安全性に関する基準

MCMCは、2010年11月に「無線通信インフラからの電磁波放射の強制基準に関する委員会決定(2010年決定第1号)(Commission Determination on the Mandatory Standard for Electromagnetic Field Emission from Radio-communications Infrastructure)」を採択し、同決定が、現行の電磁波ばく露の制限値を規定している。同決定における制限値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の基準を採用している。2017年10月には、その後に開発された各種技術に対応するために規制内容を詳細化した「無線通信インフラからの電磁波放射の強制基準に関するガイドライン(Guideline on the Mandatory Standard for Electromagnetic Field Emission from Radiocommunications Infrastructure)」が発表された。このガイドラインは、2020年11月に改訂されている。

Ⅲ 周波数分配状況

ITUによる周波数分配に従って、国内における周波数の割当てを行うための基礎文書として周波数計画があり、その中で周波数分配表が公開されている。