ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)

通信

Ⅰ 監督機関等

運輸・通信省(MOTC)

Ministry of Transport and Communications

Tel. +95 67 407225
URL https://www.motc.gov.mm/
所在地 Building No.2, Special Development Zone, Nay Pyi Taw, MYANMAR
幹部 General Mya Tun Oo(大臣/Minister)
所掌事務

2012年11月に旧通信郵便電信省(MCPT)から通信・情報技術省(MCIT)へと名称変更されたが、2016年3月に行われた省庁再編に伴い運輸省、鉄道運輸省と合併し、運輸・通信省(MOTC)として発足。同省は、電気通信分野に関する規制を所管するPost and Telecommunications Department(PTD)を含む18の部門から構成されている。

郵便、電気通信、放送分野(電波管理行政のみで、政策立案は情報省が所管)を所掌している。主な所掌事務は、以下のとおりである。

Ⅱ 法令

2013年電気通信法(Telecommunications Law of 2013

廃止された「電信法(Telegraph Act, 1885)」及び「無線電信法(Wireless Telegraphy Act, 1934)」を代替するもので、2013年10月8日に施行された。規制体制や免許制度、周波数管理、相互接続、消費者保護等の内容が定められている。

Ⅲ 政策動向

1 競争促進政策

外国企業による移動体通信事業への参入により、ノルウェーに本拠を置くTelenorと、カタールに本拠を置くOoredoo(旧カタール・テレコム:Qtel)の2社の参入があったが、このうち、Telenorはクーデターの発生により、2022年3月に当局の承認を得て事業を撤退した。また当局の要望に応じる形で、該当事業はM1グループと地場Shwe Byain Phyuとの合弁会社Investcomに引き継がれることとなった。同年6月に社名はATOMに変更された。2024年2月、Shwe Byain Phyu(同年1月、米国の制裁対象に追加)が既に所持していたInvestcomの株式をMyancom Holding Companyに売却し、取締役を退任したとして、ATOMが同社との関係を解消した旨を発表した。

一方、クーデターを受け事業撤退を検討してきたOoredooは2022年9月にシンガポール企業のNine Communicationsに事業を売却することで合意し、2024年5月末に売却が完了した。

このほか、ベトナムViettelグループの出資するミャンマー・ナショナル・テレコム・ホールディング(Myanmar National Tele & Communications:MNTC。後にTelecom International Myanmarに社名変更)が4件目の通信事業免許を取得し、2018年6月よりMytelのブランド名でLTE商用サービスを正式に提供開始した(Ⅴ-2の項参照)。

2 情報通信基盤整備政策

MOTCは2020年2月、新しいブロードバンド普及目標及び目標の達成に向けた取組みに関するホワイトペーパーを発表した。都市部とそれ以外のエリアにおける2024年までの目標は次のとおりである。

都市部の場合:

非都市部の場合:

目標の達成に向け、インフラの整備を容易にするための規制緩和を行うことが示された。具体的には、普及の障害とされる道路使用権(rights of way)の課題に取り組む一方、インフラ共用の推奨や5Gを含む新しい技術の導入等を進めることとなっている。

2023年10月には、「ミャンマー e-ガバナンス・マスタープラン2030」の案が示され、意見募集が実施された。2024年7月26日の電子政府運営委員会において承認に向けた協議が行われた。

3 SIM登録

2019年4月、ミャンマー政府はSIMカードを購入するすべての人に、国民登録証(National Registration Card:NRC)もしくはパスポート等その他の身分証明を提示して登録するよう要請し、1人当たりのSIMカード購入について、2枚までの制限を設けている。2020年1月にMOTCは、セキュリティを強化する目的で、すべての移動電話利用者に対し、6月30日末までのSIMカードの再登録を新たに求めた。6か月以内に通話・SMS・プリペイド入金がなかった場合はサービスが停止される。

2022年10月に、通信事業者によるSIM登録管理システムの構築にはユニバーサル・サービス基金が適応されると決定した。

2023年4月、MOTCによるSIM登録管理システムの構築業務について、落札者が公表された。また、9月には、SIMカードの登録なしに譲渡・販売された場合の対応に関し、「SIMカードの体系的な登録に関する宣言」がMOTCから発表された。

4 MVNO

MVNOサービスの提供に関する許可等を含んだ免許(2030年3月まで有効)を保有するミャンマー経済公社(Myanmar Economic Corporation:MEC)通信部門のMECTelは、唯一のMVNO事業者として、ミャンマー国営郵便・電気通信事業体(Myanmar Posts and Telecommunications:MPT)のCDMA方式ネットワークを利用しサービスを提供している。2024年9月時点の加入者数は移動体通信ユーザ数全体の1%未満で、減少傾向が続いている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「2013年電気通信法」により、製造・販売されるネットワーク設備又は電気通信施設(Network Facilities or Telecommunications Equipment)について、MOTCの型式認証を受けなければならない。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

ATOM、Ooredoo及びMytelも固定電話サービスの提供できる免許を保有しているが、現状では、MPTのみの提供となっている。山間部が多いため、固定通信インフラの整備が進まず、2023年末時点の固定電話加入者数は58万8,000にとどまっている。

2 移動体通信

2022年3月以降、Telenorの撤退に伴い、移動体通信サービスはMPT、Ooredoo、Mytel及びATOMの4社によって提供されている(Ⅲ-1の項参照)。

Ooredooは2016年3月にミャンマーで初となるLTEサービスを開始した。2023年6月時点で、同社が構築した基地局の99.23%がLTEに対応しており、人口カバレッジが約90.3%に達している。

Telenor(現ATOM)は2017年6月にLTEサービスを開始し、2019年6月には全国向けに商用VoLTEサービスの提供も開始し、2020年6月末時点で、7,395基のLTE基地局を構築し、307に及ぶタウンシップにおける人口カバレッジは92%を超えた。

他方、MPTはCDMA、GSM、W-CDMA等、多方式によるサービスを提供しており、2024年8月には、それまでヤンゴンとマンダレー地域で提供されたLTEサービスをネピドーカウンシル地域、エーヤワディ地域、タニンダーリ地域、シャン州(東部)、シャン州(南部)を含む五つの州・地域の76のタウンシップに拡張した。

新たな事業者の参入により、加入者数は一時大幅に伸びたが、2020年に実施されたSIMカードの再登録(Ⅲ-3の項参照)により、無効になったアカウントに伴う加入者数が減少した。

5Gについて、Mytel及びOoredooはこれまで、実体験デモを実施したのに対して、ATOMは2022年6月、今後3年間で3億3,000万USDを投資し、数年内に5Gサービスを開始すると公表した。

3 インターネット

MPT、ATOM、Ooredoo及Mytelといった移動体通信事業者や、Yatanarpon Teleport(YT)、Global Technology(5BB Broadbandのブランド名で知られる)といったFTTHサービス提供事業者によって提供される。事業者のうち、Mytelは3万kmに及ぶ光網を構築し、下り通信速度が50Mbpsに達するプリペイドFTTHサービスのほか、30MbpsのポストペイドFTTHサービスも提供している。サービス方式はFTTHを含むFTTxや、無線ブロードバンド、ADSL、ダイヤルアップ、WiMAX等となっている。

Ⅵ 運営体

ミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)

Myanmar Posts and Telecommunications

Tel. +95 1 515034
URL https://www.mpt.com.mm/mm/
所在地 No.361 Pyay Road Sanchaung Township, Yangon, MYANMAR
幹部 U Myo Than(総裁/Managing Director)
概要

国有通信事業者として、固定電話、移動体通信、国際通信等、11の部署を設けており、電気通信サービスの提供をはじめ、電気通信分野における研究開発、通信設備の製造、輸出も行っている。

同社は資金不足により、基盤整備が遅れており、そのうえで新規参入した外資2社に対抗するためもあって、2014年7月にKDDIと提携すると発表。KDDIは住友商事とそれぞれ50.1%と49.9%の割合で合弁企業を設立し、10年間で2,000億円を投じ、MPTと共同で移動電話事業を進めることにした。2022年末時点のネットワークは国土の96%をカバーしている。

Move Myanmar Forward」プロモーション・プログラムの一環として、2024年6月より、同社の五つのショップにて5G NSAサービスを体験できるようにしている。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 情報省

Ministry of Information

Tel. +95 67 412323
URL https://www.moi.gov.mm/
所在地 Building No.7, Nay Pyi Taw, MYANMAR
幹部 Maung Maung Ohn(大臣/Minister)
所掌事務

政策立案のほか、情報、教育行政を所掌している。

2 運輸・通信省(MOTC)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

放送分野に関しては、主に電波管理行政を所掌。

Ⅱ 法令

1 1996年SPDCテレビ・ビデオ法(The State Law and Order Restration Council The Television and Video Law, 1996

1996年に施行された法律で、放送全体を包括するものではないが、テレビ受信機やビデオ・テープレコーダの所有に関する許可申請や、ビデオ事業の運営等に関する規制等を規定している。

2 放送法

2015年8月制定。ラジオとテレビ放送の免許について、前者は7年、後者は10年と15年の2種類と規定。現在の国営放送は公共放送へと変更され、免許は、テレビ放送評議会が発給する等の内容が盛り込まれている。

2018年3月に下院議会は、同法の改正案を可決した。改正により、民間の放送会社と新聞社の同一の放送区域における株式の持合いについて、単独出資だけでなく、単一の出資者が50%以上の放送会社や新聞社が、同一の放送区域内にあるもう一方に出資する場合の上限が30%に規制される。

2021年11月に行われた改正では、規制の対象にラジオとテレビのほか、番組を視聴するためのその他の技術も含まれることとした。

2023年11月に、「テレビ・放送評議会の編成」等についての改正がなされた。

3 メディア法

同法は2014年3月に成立し、主に放送、新聞、出版、印刷に関するもので、独立したニュース委員会、放送委員会の設置、ニューメディアに関する枠組作りも含まれている。

Ⅲ 政策動向

地上デジタル放送

ミャンマー・ラジオ・テレビ局(Myanmar Radio and Television:MRTV)によるDVB-T2方式のデジタル放送が2013年10月より、ネーピードー、ヤンゴン、マンダレーの3都市で開始された。2020年までに100%のカバレッジを実現する計画であったが終了していない。2020年9月現在、デジタル化が完了した放送局数は153にとどまり、人口カバレッジは88.7%である。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

政府機関のヤンゴン市開発委員会(Yangon City Development Committee:YCDC)が「City FM」の呼称で国内初の娯楽FMラジオ放送を行っている。国営FMラジオ局として、Nay Pyi Taw Radioが2007年10月に、Padaukmyae Radioが2008年3月に放送を開始した。

このほかに、Padamya FM等、六つの民間のFM放送局が存在し、主にヤンゴン等、都市部向けに放送を行っている。2018年2月にミャンマー国内初のコミュニティー・ラジオ局として、「カヤエFMタンタビン」がヤンゴン管区タンタビン郡区で放送開始した。放送は104.8MHzを利用し、毎日午後2時から4時までで、また、翌日午前8時から同10時までは再放送が行われる。放送内容は、主に地域ニュースのほか、農業や畜産、医療、教育等に関するものとなっている。

2022年現在、放送局が84局あり、ラジオの人口カバレッジは78.8%である。一部インターネットによる再送信も実施されているほか、複数のFM放送局がインターネット配信を行うためのサイトを運用している。

2 テレビ

MRTVと国軍出資のミャワディ・テレビ(Myawaddy TV)、フォーエバー・グループ(Forever Group)の運営するMRTV-4、及びシュエ・タン・ルイン・メディア社(Shwe Than Lwin Media)(3の項参照)の運営するMNTVによる地上放送が行われている。また、日本からの支援を受け、2018年3月に設立されたDream Vision Co., Ltd.は日本コンテンツや日本の番組フォーマットを利用した番組制作等を行い、MNTVで放送していた。

MRTVについては、2022年7月現在、国内258の中継局があり、人口カバレッジは約92.7%に達している。VHF帯30-300MHzとUHF帯470-585MHzで、14のチャンネルを運用している。一方のミャワディ・テレビはVHF帯(198-204MHz帯)を運用し、人口の約6割をカバーしている。

2017年3月に情報省は五つの事業者(Mizzima Media、Young Investment Group、Kaung Myanmar Aung、Fortune、DVB Multi Media Group)に対してデジタル放送権を与えた。このうち、Mizzima Mediaは2018年3月、DVB Multi Media Groupは同年4月、またFortune、Young Investment Group及びKaung Myanmar Aungは2019年2月よりそれぞれ放送を開始した。2021年2月のクーデター後、Mizzima Media及びDVB Multi Media Groupは免許が取り消された。

3 衛星放送

MRTVがAPSTAR7及びThaicom 3衛星を使用し、2010年3月に民営化されたMyanmar International(MITV、運営はシュエ・タン・ルイン・メディア社)として国内及び日本、オーストラリアを含む120を超える国に向けて24時間の英語による放送を実施し、インターネットでも配信を行っている。

また、MRTVは、PSA10衛星を利用し、毎日のラジオのニュース番組を、午前と午後1時間ずつ放送している。ミャワディ・テレビの国内各地の送信施設への伝送には、Palapa C2衛星が使用されている。

全国をカバーする衛星有料多チャンネル放送がSKY NETのサービス名で、シュエ・タン・ルイン・メディア社によって提供されている。チャンネル数は、中国CCTV-4(中国語国際チャンネル)やCCTV-news(英語ニュース・チャンネル)、CCTV-9(ドキュメンタリー・チャンネル)のほか、日本のNHKワールドTV、NHKワールド・プレミアム等も含め、120以上に達する。

2018年3月より、フランス有料民間テレビ局CANAL+子会社のCANAL+ Overseas Myanmarは、大手衛星放送事業者のThaicom 6衛星の四つのトランスポンダとKuバンドの放送プラットフォームをリースして、80チャンネルを配信している。

Ⅴ 運営体

ミャンマー・ラジオ・テレビ局(MRTV)

Myanmar Radio and Television

Tel. +95 1 535553
URL https://mrtv.gov.mm/en/
幹部 U Ye Naing(総裁/Director General)
概要

1946年に設立された。情報省が管理・運営してきた国営放送局であるミャンマー・テレビ・ラジオ局(Myanmar Television and Radio Department:MTRD)が、情報省の一部局として、2001年にMRTVに名称を変更した。ラジオ、テレビ、技術、管理、財務、国際部、及び音楽部門の7部門構成で、AM、FM、短波、Thaicom 3等の手段を通じてサービスを提供している。また、番組の制作比率では、自主制作が7割で、残りは輸入番組となる。

2019年10月に、MRTVは日本からの無償援助を受けた放送設備の設置が完了し、新たに1週間に110時間に及ぶ110の番組の制作・放送ができるようになった。テレビ放送はミャンマー語で1日17時間、National Races Channelは、11の民族言語で1日合計17時間の放送を行っている。他方、Myanma Radioは、ミャンマーと英語の番組を毎日17時間半、17か国の民族グループ向けの毎日14時間半の番組を放送している。

これらのほか、2020年2月より全チャンネルのデジタルHD対応が開始し、Androidのアプリでの視聴も可能となっている。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

運輸・通信省(MOTC)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

電波監理に関連する政策立案、周波数分配・割当、及び免許付与と免許料の徴収を主に所掌する。

2 標準化機関

MOTCが通信機器と通信システムに関する標準化を所掌している。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

電波政策として、以下を実施している。

2 周波数免許制度

周波数免許は、公衆陸上移動周波数免許、海上無線局免許、航空無線局免許、衛星周波数免許、私設網周波数免許、固定周波数免許、放送周波数免許、アマチュア周波数免許、政府周波数利用免許、特定臨時免許、その他の無線通信サービス免許に分類されている。

周波数免許は、オークション、入札、固定価格のいずれかの手続により交付される。

3 周波数割当

2020年2月にMOTCによって公表されたホワイトペーパーによれば、5Gの導入に向け、2020年中に2.3GHz、2.6GHz、3.5GHz帯がオークションにかけられ、その後2021年には700MHz帯、2022年には850MHzと900MHz帯の利用が可能になると計画されていたが、実行が遅れている。

2022年から2026年を対象期間とした「周波数ロードマップ(副題:産業の持続的成長の促進)」が新たに発行され、2024年までに700MHz帯や2.6GHz帯を開放することや、3.5GHz帯の200MHzの開放について示したほか、2026年に5Gに向け、4.8GHz帯の開放を行うことを表明したが、2024年9月現在、進展が確認されていない。

4 電波利用料制度

免許人は、免許料のほかに、周波数管理料を毎年支払う。料額は、周波数免許の種類ごとに定められる。

5 電波の安全性に関する基準

電磁界へのばく露に関する人体への制限値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の「時間変化する電界、磁界及び電磁界によるばく露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)」(1998年)に準拠している。

Ⅲ 周波数分配状況