パキスタン・イスラム共和国(Islamic Republic of Pakistan)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 情報技術・通信省(MoITT)

Ministry of Information Technology and Telecomunications

Tel. +92 51 920 9090
URL https://moitt.gov.pk/
所在地 Kohsar Complex, Red Zone 44020, Islamabad, PAKISTAN
幹部 Shaza Fatima Khawaja(大臣/Minister)
所掌事務

2002年11月に設立され、国家の情報通信分野の政策立案を所掌する。

2 パキスタン電気通信庁(PTA)

Pakistan Telecommunication Authority

Tel. +92 51 287 8125
URL https://www.pta.gov.pk/
所在地 PTA Headquarters, Sector F- 5/1, Islamabad, PAKISTAN
幹部 Hafeez Ur Rehman(長官/Chairman)
所掌事務

「1996年電気通信再編法(Pakistan Telecommunication(Re-Organization)Act 1996)」に基づき設立された独立規制機関であり、以下を所掌する。

Ⅱ 法令

1 1996年電気通信再編法(Pakistan Telecommunication(Re-Organization)Act 1996

規制機関のPTAと周波数管理委員会(Frequency Allocation Board:FAB)、事業体であるパキスタン電気通信株式会社(Pakistan Telecommunication Company Limited:PTCL)等の設立根拠法である。電気通信事業における免許要件等を規定している。

2 2025年デジタル国家パキスタン法(Digital Nation Pakistan Act 2025

パキスタン議会は2025年1月、「2025年デジタル国家パキスタン法(Digital Nation Pakistan Act 2025)」を承認した。同法は、経済、行政、社会の各分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することを目的としている。

この法律により、「パキスタン・スタック」(市民のデジタルIDを活用し、行政手続等をオンラインで円滑に行えるようにするための技術)や「データ交換基盤」といったインフラ整備が進められる。これにより、国民はスマートフォンを通じて政府サービスや公的な効力を有する書類にアクセスできるようになり、行政の効率化と透明性の向上、更にはビジネス環境の改善が期待される。

また、同法の規定に基づき、首相を議長とする国家デジタル委員会(National Digital Commission:NDC)が設置される。同委員会は、国家のデジタル戦略に関するビジョンを提示し、各州の首相や関係省庁の代表が参加することで、国家レベルでの整合性と実行を担保する役割を担う。

更に、パキスタンデジタル庁(Pakistan Digital Authority)も新設され、「デジタル国家基本計画(Digital Nation Masterplan)」の策定や、各分野における変革計画の推進を担当する。

Ⅲ 政策動向

1 競争促進政策

固定電話(市内・長距離・国際)市場でのPTCLの法定独占は2002年末で終了し、市場は自由化されている。同時に、PTCLの民営化も推進され、株式の市場開放が1994年に開始された。2024年末現在、PTCL株式は政府が62.0%、アラブ首長国連邦(UAE)資本のe& UAE(旧Etisalat)が23.4%所有している。

他方、移動体通信市場には外国資本を中心に計5社が参入しており、競争環境は十分に促進されている。これに加え、PTAは「2012年MVNO規則(Mobile Virtual Network Operation(MVNO)Regulations 2012)」により、MVNOの参入手続や設備提供事業者の義務等を規定している。しかし、国内に事業を行うMVNO事業者は存在していない。PTAは、MVNO免許料の引下げや免許期間の延長(15年間)等を含む同規則の改正案をMoITTに対して、2025年5月に提出し、MVNO市場の拡大を目指している。

2 情報通信基盤整備政策

ブロードバンド政策

MoITTは2025年4月、今後5年間で光ファイバ回線の接続世帯を750万世帯に拡大し、基地局までの光ファイバ接続(fiber-to-the-site:FTTS)の比率を全体の80%まで高める計画を発表した。

この計画は、MoITTが世界銀行の支援を受けて推進する「デジタル経済強化プロジェクト(Digital Economy Enhancement Project:DEEP)」の一環として策定中の「国家ファイバリゼーション政策(National Fiberization Policy)」の中核となる。

本計画では、固定ブロードバンドインフラの強化に加え、全国平均のダウンロード速度を60Mbpsへと向上させることを目標としている。この取組みは、5GやIoTといった次世代技術への備えを強化すると同時に、国全体のデジタル接続環境の整備を加速させることを目的としている。

また、同政策では民間投資の促進が重視されており、光ファイバ敷設に伴う既存の障壁を取り除くことが掲げられている。具体的には、敷設に必要な許認可手続の簡素化、線路敷設権料金の見直し、インフラ共有の促進等が重点的に取り組まれる予定である。

同政策は、PTAや通信産業との連携のもと、MoITTが主導する。政策の最終草稿の公表は、2025年内を予定している。

3 ICT政策

(1)デジタル基本政策

内閣は2018年5月に国家ICT計画である「デジタル・パキスタン政策(Digital Pakistan Policy)」を承認した。同政策は以下の政策目標を設定している。

(2)AI政策

内閣は2025年7月、「2025年国家AI政策(National AI Policy 2025)」を正式に承認した。同政策は、「2025年デジタル国家パキスタン法」「デジタル・パキスタン政策」等の枠組みに基づき、AIの倫理的かつ包括的な導入を通じて、同国を知識基盤型経済へと変革する国家戦略となる。

同政策は以下の六つの柱(pillar)に基づき、責任あるAIの活用によって社会経済の発展と国際競争力の強化を目指す。

①イノベーション・エコシステムの構築

②人材育成・リテラシー増進

③安全なAIエコシステム

④AI利活用の促進

⑤AIインフラの整備

⑥国際連携と協力

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

すべての有線・無線の端末機器にかかわる基準認証は、PTAが「2021年型式認証技術標準規則(Type Approval Technical Standards Regulations 2021)」に基づいて実施する。2018年版の同規則を改正し、従来の移動電話端末に加えて、Wi-Fi機器、スマートウォッチ、UWB(Ultra Wide Band)機器等が規制対象となった。2022年と2025年に一部改正を行っており、IoT/無線モジュール/短距離無線デバイスや、低電力無線機器の扱いが厳格化している。

なお、認証済みの機器の製造元と商品名はPTAのウェブサイトで公開されている。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

固定電話は有線と固定無線アクセス(FWA)で提供されている。PTA統計によれば、2024年6月末現在の有線固定電話加入数は約252万、FWA加入数は約6万1,000である。2024年6月現在、有線の固定市場シェアはPTCLが約85%を占める。PTCL以外の加入者10万以上の事業者は、有線事業者の政府系事業者NTCのみである。

2 移動体通信

2025年8月現在、PMCL(ブランド名:Jazz、市場シェア約37%)、中国移動パキスタン(ブランド名:Zong、市場シェア約26%)、テレノール・パキスタン(Telenor Pakistan、市場シェア約22%)、PTML(PTCL傘下、ブランド名:Ufone、市場シェア約14%)の主要事業者4社による競争体制である。このほかにパキスタン軍とMoITTが、パキスタンが実効支配しているカシミール地域で運営する国営事業者SCO(Special Communication Organisation)が移動体通信を提供している。なお、パキスタンは、中国企業(中国移動パキスタン)に移動体通信事業者としての免許を与えている世界で唯一の国である。また、2024年3月以降、テレノール・パキスタンは不採算のためPTCLへ事業売却手続を進めてきたが、2025年10月に競争委員会が買収を条件付きで承認した。

5Gについては、2025年10月現在、商用サービスは開始されていない。PTAは2020年1月、PMCL及び中国移動パキスタンに対して5G試験免許を交付したが、同免許の運用は非営利活動に限定された。MoITTは、2024年5月に5Gオークションを実施、同年6月から商用サービスを開始する計画を示していたが、テレノール・パキスタンとPTCLの事業統合遅延等の不確実要素を勘案し、オークションの実施を2026年内に延期している。

3 インターネット

PTA統計によれば、2025年8月現在での固定ブロードバンド加入者は約380万である。接続方式別の加入者数はFTTHが約217万(市場シェア約57%)、DSLが約97万(同約26%)、HFCが約2万(同約1%)、W-CDMA及びLTEによる固定無線接続が約58万(同約15%)、CDMA2000 EVDOによる固定無線接続が約6万(同約2%)となっている。

市場シェアについては、2025年6月現在でPTCLが約6割を有している。その他事業者としては国内独立系ISPのCybernet、国内初のFTTH事業者であるNayatel、ケーブルテレビ事業者のWorldCall Telecom等が挙げられる。

Ⅵ 運営体等

1 パキスタン電気通信株式会社(PTCL)

Pakistan Telecommunication Company Limited

Tel. +92 51 228 3005
URL https://www.ptcl.com.pk/
所在地 Block-E, G-8/4, Islamabad, PAKISTAN
幹部 Hatem Bamatraf(社長/President & CEO)
概要

1996年、電気通信公社PTCを株式会社に転換し発足した。固定電話事業には、「1996年電気通信再編法」に基づき25年間の事業免許が独占的に付与されたが、2002年末の市場自由化により、法定独占が終了した。移動体通信市場には子会社PTMLを通じて、1998年から参入している。

2 移動体通信事業者一覧

事業者 URL
PMCL https://www.jazz.com.pk/
テレノール・パキスタン https://www.telenor.com.pk/
中国移動パキスタン https://www.zong.com.pk/

放送

Ⅰ 監督機関等

1 情報・放送省

Ministry of Information and Broadcasting

Tel. +92 51 910 3557
URL https://www.moib.gov.pk/
所在地 Cabinet Block, Pak. Secretariat, Red Zone, Islamabad, PAKISTAN
幹部 Attaullah Tarar(大臣/Minister)
所掌事務

放送行政を所掌する。また、情報・放送担当大臣は「1973年パキスタン放送協会法」に基づき、国営ラジオ放送のパキスタン放送協会(Pakistan Broadcasting Corporation:PBC)の理事となることが義務付けられる。同時に、四つの州からPBCの理事を4名任命する権限も有する。

2 パキスタン電子メディア規制委員会(PEMRA)

Pakistan Electronic Media Regulation Authority

Tel. +92 51 910 7151
URL https://www.pemra.gov.pk/
所在地 PEMRA Headquarters, Mauve Area G-8/1, Islamabad, PAKISTAN
幹部 Muhammad Saleem(長官/Chairman)
所掌事務

2002年3月に設立され、商業テレビ及びラジオ放送事業者に対する免許付与、規制監督、ケーブルテレビ事業の監督等を所掌する。「パキスタン電子メディア規制委員会令」により、委員会の構成メンバーは、大統領に指名された委員長と12名の委員とされている。

Ⅱ 法令

1 パキスタン電子メディア規制委員会令(Pakistan Electronic Media Regulatory Authority Ordinance 2002:PEMRA Ordinance

規制監督機関PEMRAの設立、運営、所掌に関する規定として2002年3月に布告され、2023年に一部改正された。

2 パキスタン電子メディア規制委員会規則(Pakistan Electronic Media Regulatory Authority Rules 2009:PEMRA Rules

放送事業免許の申請・付与・取消し等、免許の諸要件について定めている。

3 2012年テレビ放送局運営規制(Television Broadcast Station Operations Regulations, 2012

テレビ放送局の免許、番組の基準等を定めている。

4 2012年ラジオ放送局運営規制(Radio Broadcast Station Operations Regulations, 2012

ラジオ放送局の免許、番組の基準等を定めている。

5 2011年配信サービス運営規制(Distribution Service Operations Regulations, 2011

ケーブルテレビ、DTH、モバイルテレビ、IPTV等の番組配信サービスの免許基準、消費者保護、サービス品質基準等を定めている。

6 1973年パキスタン放送協会法(Pakistan Broadcasting Corporation Act‚ 1973

国営放送事業者PBCの設立、運営に関する規定として1973年2月に施行され、2002年に修正された。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

2002年1月、商業テレビ及びラジオ放送を認可する閣議決定が行われ、同年3月には新規参入放送事業者への免許付与や放送の規制監督、ケーブルテレビ事業者の監督を所掌するPEMRAが設置された。「2002年パキスタン電子メディア規制委員会令」の2023年改正により、放送事業者の免許期間が20年に延長された。

2 地上デジタル放送

パキスタンの地上アナログテレビ放送網は1960年代に日本の支援にて整備された経緯があり、地上デジタル放送規格は日本方式のISDB-T規格または中国の推進するDTMB規格となることが予測される。

2017年12月に発表された「2017~2030年中国・パキスタン経済回廊長期計画(Long Term Plan For China-Pakistan Economic Corridor(2017-2030))」では、情報ネットワーク分野の重要協力領域として、「パキスタンにおける地上デジタル放送へのDTMB規格の採用促進」が言明されている。

パキスタンでは2015年4月の習近平中国国家主席のパキスタン往訪の際に合意されたDTMB規格の実証プロジェクトが実施済みであり、また、2017年5月には中国通信ベンダ中興通訊(ZTE)と国営放送パキスタン・テレビ放送会社(Pakistan Television Corporation:PTV)との間でDTMB規格に関する技術開発、人材育成、コンテンツ制作等についての提携合意が発表されている。

他方で、情報・放送省からも日本に対して、ISBD-T導入に向けた支援要請がなされている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

国営放送PBCが「Radio Pakistan」の名称で、全国で放送局を32局運用し、計72チャンネルのAM、FM放送を実施している。Radio Pakistanはヒンディ語、タミル語、ベンガル語等の22言語で国内放送を、世界6地域において国際放送を実施している。なお、民間ラジオ放送はFM放送のみであり、2024年10月現在で商業事業者175局、非営利事業者60局に免許が付与されている。

2 テレビ

地上放送には国営放送のパキスタン・テレビ放送会社(PTV)と商業放送のATVがある。PTVは「PTV Home」及び「PTV News」等の9系統で実施している。他方、商業放送最大手ATVは、2005年6月の完全民営化に合わせてSTNから名称変更し、主要都市を中心に1系統の放送を実施している。

3 衛星放送

PEMRAは2025年10月現在で141の商業衛星放送チャンネルに免許を付与している。パキスタンではDTH放送は実施されていないが、PEMRAは2025年3月にDTH事業者の市場参入に関連して「2016年DTH配信サービス免許の適格性基準及び入札手続に関する規制(2025年改正)」を発効し、今後の市場立ち上げを企図している。

4 ケーブルテレビ

パキスタンには多くのケーブルテレビ事業者が存在し、2023年6月現在で3,939社にケーブルテレビ事業者免許が付与されている。2017年6月にケーブル網を提供する事業者に「回線設備所有者免許(Loop Holder Licence)」を付与し、ケーブルテレビ配信事業者(Cable TV Operator)と免許を分離した。なお、PERMAは将来的にケーブルテレビ配信事業者に対しては入札で免許付与するとしている。

Ⅴ 運営体

パキスタン・テレビ放送会社(PTV)

Pakistan Television Corporation

Tel. +92 51 920 8651
URL https://www.ptv.com.pk/
所在地 Constitution Avenue, Islamabad, PAKISTAN
幹部 Ambreen Jan(社長/Managing Director)
概要

1964年に設立された国営公共放送事業者で、政府が発行済株式のすべてを保有している。政府が指名したメンバーで構成される理事会が運営に当たる。財源は広告収入、受信料収入(電気料金に合わせて「TV Fee」として0.5USD相当程度が請求される)等である。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 情報技術・通信省(MoITT)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

2 パキスタン電気通信庁(PTA)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

3 周波数管理委員会(FAB)

Frequency Allocation Board

Tel. +92 51 925 7706
URL https://www.fab.gov.pk/
所在地 Plot No.112, Sector H10/4, Islamabad, PAKISTAN
幹部 Kashif Saleem(事務局長/Executive Director)
所掌事務

「1996年電気通信再編法」第6章の第42条及び第43条により設立。周波数帯域の割当て、無線通信利用者間の紛争処理、国内における無線局の調整、国際会議等への参加、周波数管理等を所掌する。

FABは、PTA長官、PERMA長官並びに防衛省、内務省、MoITT及び情報・放送省の代表者で構成され、委員長・副委員長は連邦政府が任命する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

FABは、政府、電気通信サービス・システム提供事業者、ラジオ・テレビ放送事業者、公共・民間の無線運用者等に対する周波数分配・割当に関する独占的な権限を有するが、免許付与はPTAが実施する。ITUの規則や勧告に対する国内対応はFABが取り扱う。

周波数割当については、PTAが事業者による周波数使用権の申請を受け付ける。申請が適切である場合には、PTAは申請を受理してから30日以内に、FABに対して当該申請について照会する。そしてFABが3か月以内に、当該申請の電気通信サービスを区分し、周波数を割り当てた後、PTAが免許付与を行う。また、PTAは、FABが割り当てた周波数使用権を免許付与する場合に、必要に応じてオークションや比較審査等の手続を検討することができる。

2 5Gに対する周波数割当

MoITTは2017年10月にPTAに対して5Gサービスの導入準備を開始するよう指令し、PTAは2019年6月に試験免許付与の枠組みを発表、2020年までにPMCL、テレノール・パキスタン、中国移動パキスタンが試験サービスを実施した。この後、MoITTは2020年8月に「5Gオークション委員会(Committee for the Auction of 5G Spectrum)」の設置を発表、5Gの商用サービス開始に向けた準備を開始した。同委員会は700MHz、1800MHz、2300MHz、2600MHz、3.5GHz、ミリ波(26GHz)帯の電波を含む利用可能な周波数帯のレビューを実施した後、2023年1月までにオークションを完了させることを目指していたが、計画の遅延が相次ぎ、現状では、オークションの実施を2026年にまで延期している(通信/Ⅴ-2の項参照)。

Ⅲ 周波数分配状況