ペルー共和国(Republic of Peru)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 運輸通信省(MTC)

Ministry of Transports and Communications

Tel. +51 1 615 7800
URL https://www.gob.pe/mtc
所在地 Jr. Zorritos 1203, Cercado de Lima, PERU
幹部 Paola Pierina Lazarte Castillo(大臣/Minister)
所掌事務

電気通信政策の策定、電気通信事業者に対する免許付与、電気通信基盤の開発、電気通信投資基金(National Telecommunications Program:Pronatel)の管理等を所掌する。

2 電気通信民間投資監督庁(OSIPTEL)

Supervisory Agency for Private Investment in Telecommunications

Tel. +51 1 225 1313
URL https://www.osiptel.gob.pe/
所在地 Calle de la Prosa, 136-San Borja, Lima 41, PERU
幹部 Rafael Muente Schwarz(総裁/Chairman of the Board of Directors)
所掌事務

1991年7月に「法令第702号」に基づいて設立された独立規制機関で、電気通信分野における民間投資活動の規制監督を行う。所掌事務は以下のとおりである。

2014年5月、ペルー議会は、OSIPTELの権限強化法案を承認した。同法によりOSIPTELの市場監視機能が強化され、各事業者に対し免許要件の順守を更に促進することが可能となった。

Ⅱ 法令

1994年電気通信法の一般規則(General Regulation of Telecommunications Act:最高政令第06-94-TCC)

1994年2月に公布された。電気通信分野における基本法令であり、電気通信市場の自由化を目的としている。ペルーの電気通信市場は1998年8月に自由化された。同規則は制定されてから、たびたび改正されており、2007年7月には、「最高政令第020-2007-MTC」が施行された。同改正法は、免許制度や電波利用等に関して包括的に規定している。また、2015年の改正では会計の分離が規定された。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)概要

固定・移動体通信事業及び放送事業に対する免許は、すべて競争原理に基づき付与される。法令が定める要件、事業財務基盤条件及び技術基準を満たしていれば、免許が付与される。一つの免許で、すべての通信サービスの提供が可能である。同一地域で同一周波数に対する複数の申請があった場合は、公開入札方式により決定される。

(2)外資規制

電気通信分野において外資出資比率に関する規制はない。外国企業が投資を目的として、ペルー国内に通信事業会社を所有し、運用することに対して制限はなく、ペルー企業が参加しない外国企業だけの参加も認めている。

2 競争促進政策

(1)接続制度

2008年2月、政府は電気通信市場の発展と競争促進を目的に、主要電気通信事業者の通信基盤に対するアクセスを規定する「最高政令第004-2008-MTC」を制定した。同規則では営業免許保有者は、主要電気通信事業者の通信基盤への妥当かつ非差別的なアクセスを与えられるべきであることが規定されている。通信基盤を共有するための料金は事業者間で交渉できるが、合意に至らなければOSIPTELが妥当な料金を決定することになる。

(2)番号ポータビリティ政策

2007年4月、移動電話の番号ポータビリティ導入に関する法律(法律第28999号)が制定され、2010年1月から移動電話の番号ポータビリティが実施された。また、2012年12月に固定電話の番号ポータビリティに関する法律(法律第29956号)が施行され、2014年9月より開始された。

(3)仮想移動体通信事業者(MVNO)制度

2013年9月、「移動体通信市場における競争力強化法(法律第30083号)」が制定され、MVNO制度の導入が規定された。ただし、実際に施行されたのは2年後の2015年12月になってからであった。同法は、25%以上の市場シェアを持つ移動体通信事業者(MNO)に、MVNOから要求があった場合、自社の無線ネットワークへのアクセスを義務付け。また、MVNOサービスの提供には、MVNO免許の取得、電波利用料の支払い、年間売上高の1%をユニバーサル・サービス基金(FITEL、現Pronatel)に納付することを義務付けている。

(4)移動電話不正利用防止策

ペルー政府は、移動電話の不正利用防止に力を入れている。OSIPTELは2010年9月にプリペイド式移動電話(現在使用中の回線も含めて)の本人確認を義務化した。移動体通信事業者に移動電話の販売時に本人確認を求めており、移動体事業者がこれを適切に履行しなかった場合には、是正命令と罰金を科すことができる。2013年2月には是正命令に従わなかったモビスター・ペルー(Movistar Peru)、クラロ・ペルー(Claro Peru)、ネクステル・ペルー(Nextel del Peru、現エンテル・ペルー(Entel Peru))の3社に対し罰金を科した。

また、OSIPTELは2015年6月から指紋登録認証システムの段階的導入を義務付けている。移動体事業者は移動電話を販売する際、全国身分登録機関(National Registry of Identification and Civil Status:RENIEC)に登録済みの個人指紋データとの照合が求められるようになった。2017年2月までにRENIECの登録データと所有者が一致しないプリペイド移動電話は、登録が抹消され、使用できなくなった。2016年には、OSIPTELは盗難デバイスの使用をブロックするため、「国際移動体装置識別番号(International Mobile Equipment Identifier:IMEI)」データベースを構築した。更に2022年6月には、紛失や盗難時の安全性のために移動体通信事業者に対し、すべての移動電話ユーザに固有のパスワードを提供することを義務付ける新たな措置を導入した。この固有パスワードは、生体指紋認証に追加するセキュリティ強化策として、新規契約、名義変更、SIMカード交換等の手続の際に使用される。

(5)消費者保護政策

ペルー政府は2021年6月、消費者保護を目的とした法律(法律31207号)を制定した。この法律では、ISPが消費者に提供するインターネット接続サービスの実効速度が、広告表示上の速度又は契約書に記載されている速度の70%(従来は40%)以上であることを保証することが義務付けられている。また、インターネット速度の測定・監視を担当する新しい規制機関としてRENAMV(National Registry of Internet Service Monitoring and Surveillance)を設立する。更に、消費者が自分の接続速度を正確に測定するためのツールの提供も義務付けられている。2021年8月には、OSIPTELがこの新法を実施するための規則を発表した。新規則は2段階で適用され、2022年3月3日からは52%とし、2022年12月3日までに70%に引き上げる計画である。

また、2021年7月には、OSIPTELは、契約数が50万人を超える電気通信事業者に対し、契約解約やプラン移行に関する情報の報告義務を定めた決議を発表した。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

1993年4月、「最高政令第013-93-TCC」に基づきユニバーサル・サービス基金(FITEL)が創設された。FITELは、MTCの管理の下、農村部でのブロードバンド網構築等の電気通信基盤整備に利用された。財源は、電気通信事業者の年間売上高の1%徴収による拠出金である。

MTCは2018年12月、「最高政令第018-2018-MTC」により、FITELに代わる新たな投資基金の設立を承認した。2019年3月には、FITELと合併する形でPronatelが創設された。Pronatelが提供する資金は、電気通信基盤整備に制限されず、デジタルスキル習得プログラム等、広範な目的に活用される。

(2)国家光ファイバ・バックボーン構築計画(RDNFO)

ペルー政府は2011年5月、国家ブロードバンド開発計画(National Plan for Development of Broadband:PNBA)を発表した。2016年までに国内すべての市町村を2Mbps以上のブロードバンド回線で接続することが目指された。

同計画を実施するための法整備も進められ、2012年7月、「ブロードバンド振興及び国家光ファイバ・バックボーン構築法(法律第29904号)」が制定された。同法により、コンセッション方式に基づき国家光ファイバ・バックボーンを構築・運営すること、光ファイバ・バックボーンのうち一定の容量を電子政府、教育、医療等の公的分野におけるICT利活用のために留保すること等が定められた。

2013年6月には国家光ファイバ・バックボーン構築計画(National Fiber Optic Backbone:RDNFO)が発表された。同計画は、22州及び180郡を全長1万3,500kmの光ファイバ・バックボーンで結ぶもので、FITEL(当時)を通じて総額3億3,300万USDが投資された。2014年6月、MTCは、メキシコ系のAzteca Communicationsと20年間のコンセッション契約を締結した。同社は、2014年12月から基盤構築に着手し、2016年7月にプロジェクトはほぼ完成した。Azteca CommunicationsはRDNFOの光ファイバ網を使い、卸売レベルの伝送サービスをローカルのISPや市町村等に提供している。

また、RDNFOを補完するプロジェクトとして、ペルー北部・中部・南部の21地域で、光伝送網及びアクセス網整備計画が実施されている。2015年4月には、ペルー政府は電気通信基盤構築を促進するための枠組みを制定する法律(法律第29022号)を公布した。同法はアンテナや支柱、通信ケーブルを整備するための行政手続の簡素化を目的としたものである。

しかし、MTCは、敷設した光ファイバ網が十分に活用されていないと指摘し、更に、インターネット接続性の向上、接続料の低廉化、デジタル・ディバイドの解消という本来の目的を達成していないと分析した。MTCは低迷する利用率の向上を図るため、2018年10月に現行法(法律第29904号)の見直しを開始し、2020年1月に改正法案が可決成立した。新規定では、エンドユーザへのサービス提供が可能となり、また、市場状況に対応したより柔軟な料金設定が認められた。

しかし、Azteca Communicationsは2020年1月に改正された規則の下でも事業の継続は難しいとして、2034年に期限切れとなるコンセッション契約の解除を要求した。2021年3月、MTCはAzteca Communicationsとの契約に関するパブリック・コンサルテーションを開始し、5月に公聴会を実施した後、7月にはAzteca Communicationsのコンセッション契約解除の最終決定が下された。

2022年1月には、PronatelがRDNFOの運用・保守を一時的に引き継ぐことが発表された。同年3月、RDNFOを運営・保守する民間事業者を選定するための入札が開始されたが、いずれの事業者も入札要件を満たすことができず、入札は破棄され、代わりにPronatelが引き続き向こう3年間にわたりRDNFOを運営・保守することが決定された。

(3)Wi-Fiプロジェクト

ペルーの閣僚理事会は2021年2月、デジタル・ディバイド解消のため農村部へのインターネット接続を提供する特別措置を実施する緊急政令を承認した。このプロジェクトにより、320万人の市民がインターネットにアクセスできるようになる。プロジェクトは三つの地域に分けて実施され、第1段階では、ロレト、ウカイヤリ、マドレデディオス、アマゾナスの遠隔自治体の公共施設を衛星通信で接続し、各公共施設に無料Wi-Fiを整備する。第1段階は2021年に完了し、2022年6月時点で同地域の住民の98.5%がインターネットに接続できる環境にある。第2段階では、ワンカベリカ、アヤクチョ、アプリマク、ランバイェケ、クスコ、リマの遠隔自治体が対象となり、無料Wi-Fiが整備される。第3段階では、政府は約1,000か所にデジタル・アクセス・センター(Centros de Acceso Digital)を設立し、IT機器へのアクセスとICTリテラシーの向上を促進する。政府はこのプロジェクトに初年度に計約1億8,000万PEN(MTC予算:約5,000万PEN、Pronatel:約1億3,000万PEN)を投資する計画である。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信機器の基準認証は、MTCが所掌している。MTCは、装置あるいは器具の標準化及び認証の基準を定め、基準認証を実施するとともに、第三者機関を指名することができる。電気通信網に接続する装置あるいは器具は、MTCの認可承認を必要とするが、軍隊が使用する装置及び器具は、国防省が管理している。無線通信を含む電気通信装置あるいは器具の輸入、製造及び販売についても、MTCの認可を必要としている。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

固定電話の普及率は、地形的要因(国土の50%を占める密林地域や山岳地域)に加えて、VoIPや移動体通信サービスの普及拡大もあり、2017年以降減少傾向が続いている。MTCは低迷する普及率を引き上げるため、テレフォニカ・デル・ペルー(Telefonica del Peru:TdP)との間で合意されたコンセッション契約(5年単位で最長20年まで延長可能)に基づき、貧困対策としての低廉な固定電話サービスの提供義務のほか、農村地域の固定電話整備対策として450MHz帯や900MHz帯等を使用した固定無線アクセス(FWA)方式による音声サービスの導入を進めている。

1998年8月の市内電話・長距離電話市場の自由化後も旧国営通信事業者であるTdPがシェアの7割超を占め、独占状態が続いている。小規模な競合事業者が残りのパイを競っており、その中で最大手はクラロ・ペルー(メキシコのアメリカ・モビル(America Movil)の完全子会社)であり、その後に、エンテル・チリ(Entel Chile)傘下のAmericatel、Gilat To Home、モビスター・ペルー等が続く。

2 移動体通信

移動体通信市場は、モビスター・ペルーとクラロ・ペルーの2強体制にあり、これに2013年8月に米NII Holdingsからネクステル・ペルーを買収したエンテル・ペルー(チリ資本)と、2014年7月に新規参入したベトナム国防省傘下のViettelが出資するBitelが対抗する形となっている。

移動体通信各社は、LTEサービス提供に注力しており、2016年7月にはモビスター・ペルーが国内初の商用LTEサービスを首都リマで提供開始した。

5G用周波数オークションが再三延期される中、5Gの試験導入が既に進んでおり、2019年3月にエンテル・ペルーが3.5GHz帯を使用した国内初の5Gトライアルを実施した。同年5月には、クラロ・ペルーが3.6GHz帯を使用した5Gトライアルを実施し、同年9月にはモビスター・ペルーが、遅れて10月にはBitelが5Gトライアルを行っている。

ペルーのMVNO市場は未成熟な状況で、実際のプロバイダは2社、ライセンス保有事業者は9社にとどまっている。2016年7月にペルーで最初にMVNOサービスを開始したヴァージン・モバイル(Virgin Mobile)であったが、2017年9月と2019年12月に2度にわたり売却され、現在はFlash Mobile Peruとして事業を継続している。2019年10月にはモビスター・ペルーの若者向けサブブランドであるTuentiが撤退した。

Flash Mobile PeruはMVNOとしては最大手で、同社のライバルは、2019年10月に商用サービスを開始したCuy Movilである。

一方、仮想移動体サービス提供者(Mobile Virtual Network Enabler:MVNE)であるSUMA Movilが2021年8月よりMVNOの支援事業を開始しており、MVNO市場の成長の足掛かりとなるかもしれない。SUMA Movilはコロンビアとチリに進出しており、この二つの市場で8社のMVNOと提携している。ペルーでは2022年3月にISPであるWAOOと提携し、2022年3月に商用サービスが開始されている。

3 インターネット

ペルーのブロードバンド回線数及び普及率は、2019年に一時的に低下したもののその後増加傾向にあるが、ブラジルやアルゼンチン、チリ等の近隣諸国と比べると及ばない状況にある。ペルーでは人口の3分の1が首都リマに集中しており、ブロードバンド回線を国中に展開するうえで経済的な課題となっていたが、この10年ほどの間に、モバイル・ブロードバンドの普及促進策や、政府が推進する光ファイバ網整備プロジェクト、通信事業者が高速大容量通信への需要に応えるためにインフラ整備に投資したことにより、格差は改善されてきている。

2016年に700MHz帯の 4G周波数オークションが行われ、その年にクラロ・ペルーとエンテル・ペルーがTD-LTEネットワークを開始したこと等が後押しとなり、固定ブロードバンド市場はワイヤレスへと移行し始めた。

一方、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、遠隔学習やリモートワークの導入が加速され、高速大容量サービスへの需要の高まりにより、DSL加入者は大幅に減少し、ケーブルテレビや光ファイバの加入者が急増している。政府主導のRDNFOプロジェクトの完成と高速通信技術への需要の高まりが相まって、光ファイバ加入者数は爆発的に増加している。主要プロバイダはTdPとリマを本拠地とするWi-Net Telecomである。このほかにクラロ・ペルー、エンテル・ペルーと姉妹会社のAmericatel、Bitelが参入している。

Ⅵ 運営体

1 テレフォニカ・デル・ペルー(TdP)

Telefónica del Peru

Tel. +51 1 470 1616
URL https://www.telefonica.com.pe/
所在地 Avenida Arequipa 1155, Piso 9, Lima 1, PERU
幹部 Alfonso Gómez Palacio(中南米事業最高経営責任者/CEO Hispam)
概要

国内最大手の総合通信事業者である。1994年にリマで市内・長距離電話を提供していたCPTと、リマ以外で市内と長距離・国際電話を提供していたエンテル・ペルーという二つの旧国営事業者の合併により設立された。2008年12月に固定通信、移動体通信、有料放送等すべての事業部門をモビスター・ペルーというブランドの下に統合した。スペインのテレフォニカ(Telefónica)が同社株式の約98%を所有している。

2 クラロ・ペルー

Claro Peru

Tel. +51 1 613 1000
URL https://www.claro.com.pe/
所在地 Av. Nicolás Arriola 480 La Victoria, Lima, PERU
概要

メキシコの移動体通信事業者アメリカ・モビルの完全子会社である。2005年3月の周波数入札により免許を取得した。更に同年8月にイタリアのテレコム・イタリア・モビレ(Telecom Italia Mobile:TIM)からペルーでの移動体通信事業を買収し、国内第2位の事業者となった。2010年10月に固定通信及び有料放送事業を手がけるテルメックス・ペルー(Telmex Peru)を統合しており、クラロ・ブランドの下で一元的にサービス提供を行っている。2016年8月には、無線ブロードバンド・プロバイダのOLO及びTVS Wirelessを買収して傘下に収めている。

3 エンテル・ペルー(旧ネクステル・ペルー)

Entel Peru

Tel. +51 1 611 1111
URL http://www.entel.pe/
所在地

791 Avenida Republica de Colombia, Piso 14

San Isidro, Lima 27, PERU

概要

以前は米国NII Holdingsの完全子会社として、1998年よりiDEN方式による移動体通信サービスを提供していた。2013年8月、親会社であったNII Holdingsがネクステル・ペルーを約4億USDでチリ資本のエンテルに売却した。

放送

Ⅰ 監督機関等

運輸通信省(MTC)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

Ⅱ 法令

1 2004年ラジオ・テレビ法(Ley de Radio y Televisión、法律第28278号)

2004年7月に公布された。同法を受けて、2005年2月に認可基本方針等の細則を定めた「ラジオ・テレビ法の一般規則」が制定され、これらが放送事業の基本法体系として位置付けられている。

2 ラジオ・テレビ法の一般規則(Aprueban el Reglamento de la Ley de Radio y Televisión、最高政令第005-2005-MTC)

「2004年ラジオ・テレビ法」に基づき、放送にかかわる詳細事項を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)放送免許

免許に関する諸規定は、「ラジオ・テレビ法の一般規則」にある。免許種別は、中波、短波、FM、VHF、UHF及び衛星放送である。免許期間は10年で、10年ごとの自動更新が可能とされ、同規則の定める要件、事業財務基盤条件及び別途定める技術基準を満たしていれば交付される。

(2)所有規制

「2004年ラジオ・テレビ法」第40条において、外資は40%以下と制限され、免許申請法人が本国において放送事業を行っていることを条件に認可の対象とすると規定されている。

2 地上デジタル放送

2009年4月、「最高決議第019-2009-MTC」に基づき、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送方式に、ブラジルでミドルウェアに一部変更が加えられたISDB-Tbを採用することを発表した。

ペルーの地上デジタル放送導入は、MTCより2010年3月に公表された「最高政令第017-2010-MTC(マスタープラン)」及び「同第020-2014-MTC(マスタープランの改正)」に基づき、全国を五つの地域に分けて、段階的に実施されている。

MTCが2010年に当初設定したマスタープランは、ISDB-Tb対応受信機の普及の遅れやCOVID-19の感染拡大防止措置の累次の延長による放送事業者の経営悪化等を理由に地上デジタル放送への移行時期の変更が繰り返された。2022年12月には「最高政令第020-2022-MTC」が公布され、当初2022年末に予定されていた第1地域(リマ市及びカヤオ憲法特別区)におけるアナログ放送停波の最終期限の2024年第4四半期への延期、及び第2地域から第5地域までの同期限については同最高政令の公布から2年経過後に別途定めることとされた。

地域別地上デジタル放送開始及びアナログ放送停波時期
地域 対象地区 デジタル放送開始の最終期限

アナログ放送

終了の最終期限

アナログ・

デジタル同時放送方式

ダイレクト

方式**

1 リマ、カヤオ

2015年

第4四半期

2021年

第4四半期

2024年

第4四半期

2 アレキパ、クスコ、トルヒーヨ、チクラヨ、ピウラ、ワンカヨ

2018年

第2四半期

最高政令第020-2022-MTCの公布から2年経過後に、少なくとも国民の地デジに関する認知度や地デジ化に対応した放送局の数等を考慮しつつ別途定める。 最高政令第020-2022-MTCの公布から2年経過後に、少なくとも国民の地デジに関する認知度や地デジ化に対応した放送局の数等を考慮しつつ別途定める(第5地域におけるコミュニティ用放送局、国境や特別な社会的関心を有する地域を除く)。
3 アヤクチョ、チンボテ、イカ、イキトス、フリアカ、プカルパ、プノ、タクナ

2022年

第4四半期

4 アバンカイ、カハマルカ、チャチャポヤス、ワンカベリカ、ワヌコ、プエルト・マルドナド、モケグア、セロデパスコ、モヨバンバ、トゥンベス

2023年

第4四半期

5 1、2、3、4で指定された以外の対象場所

2024年

第4四半期

 * アナログ・デジタル同時放送方式(transicion simultanea):アナログ放送を継続して行いながら別チャンネルでデジタル放送を行う方式。

 ** ダイレクト方式(transicion directa):同じチャンネルでアナログからデジタルへ直接切り替える方式。

出所:MTC

地上デジタル放送の緊急警報放送システム(Emergency Warning Broadcast System:EWBS)が、日本政府とペルー政府の協力の下、日本国外で初めてペルーで2016年より実運用されている。具体的には、津波警報発報時に活用されており、ペルー海軍水利航行局(Directorate of Hydrography and Navigation of the Peruvian Navy:DHN)から津波警報が発出された場合に、ペルー国家防災庁(National Institute of Civil Defense:INDECI)から災害情報を入力しペルー国営放送協会(National Institute of Radio and Television of Peru:IRTP)の電波を使用してEWBSを伝送する体制が整えられている。その他定期的な避難訓練でも活用され運用が定着している。今後は、津波警報の他、洪水、地滑り、火災等、様々な種類の災害に係る警告にも活用されることが期待されている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

商業放送を含む500以上のラジオ放送事業者が存在する。主な事業者は、ラジオ・ナショナル(Radio National)、民間放送のRPP、CPN、Radio Panamericana等である。

2 テレビ

地上テレビは、国営放送のTV Peruと、商業放送のLatina Televisión、America TV、Panamericana TV、Andina de Televisión(ATV)がネットワーク局として全国放送を実施している。商業放送の番組構成は、米国やメキシコ等、海外からの輸入も多いが、バラエティ番組やオーディション番組等自国制作の番組も増えており、それらも好評を博している。

3 衛星放送

OSIPTELによると、2021年末現在、有料放送加入世帯数は約221万で、そのうちの半数がリマ首都圏に集中している。また、2021年の世帯普及率は5.99%となり、ピークであった2018年末時点の7.17%から低下した。衛星放送の加入世帯数は約47万で、有料放送全体のシェアの23.7%を占めている。衛星放送のシェアは2017年の34.1%を頂点に、その後減少傾向にある。主な衛星放送事業者は、TdPとクラロ・ペルー、ディレクTV(DirecTV)である。

4 ケーブルテレビ

OSIPTELによると、2021年末現在、ケーブルテレビの加入世帯数は約151万で、市場シェアは76.3%となり、順調な発展成長を遂げている。ケーブルテレビ・サービスは、TdPとクラロ・ペルーが2大勢力で、このほかにBest Calbe Peruや小規模のケーブルテレビ事業者がサービスを提供している。

Ⅴ 運営体

TV Peru

Tel. +51 1 619 0707
URL https://www.tvperu.gob.pe/
幹部 Joseph Elías Dager Alva(IRTP総裁/Executive President)
概要

国営テレビ事業者。1958年の放送開始時はRadio and Television of Peru(RTP)の名称で呼ばれていた。現在は国営ラジオ・テレビ局を総括するペルー国営放送協会(IRTP)の傘下にある。財源は政府交付金及び広告収入である。

電波

Ⅰ 監督機関等

運輸通信省(MTC)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

周波数割当、周波数管理、電気通信機器の標準化等、電波監理全般を所掌する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

「1994年電気通信法」に規定された電波の公平性及び効率性使用の原則と周波数分配計画(National Frequency Attribution Plan:PNAF)に基づき、MTCが特定のサービス対象となる周波数帯を割り当てる。

2 無線局免許制度

無線局免許制度に関する主な規則は以下のとおり。

2005年からブロードバンド無線通信(BWA)や移動体通信において周波数オークションが実施されている。最初のオークションは、テレフォニカとベルサウス(BellSouth)の合併により生まれたTEM Peru(現モビスター・ペルー)が、市場独占を防ぐため周波数所有を制限するMTCの決議に従い手放した800MHz帯の25MHz幅に対して行われ、アメリカ・モビルの子会社Sercotelが獲得した。しかし、Sercotelはその後TIM Peru(現クラロ・ペルー)に買収された。

2011年と2012年に行われた1900MHz帯及び900MHz帯のオークションでは、ベトナム資本のBitelが免許を落札している。

2013年7月に、LTE向け1710-1770MHz帯及び2110-2170MHz帯の周波数オークションが実施され、モビスター・ペルーとAmericatelの2社がそれぞれ1億5,220万USDと1億550万USDで落札した。政府は両社と更新オプションの付いた20年間のコンセッション契約を締結した。両社には、その後5年間でLTE網を234都市(人口の50%)に構築することと、MVNO事業者に自社LTE網へのアクセスを認めることが義務付けられた。

2016年5月には、700MHz帯のオークションが行われ、クラロ・ペルー、モビスター・ペルー、エンテル・ペルーが落札した。2017年12月には、2600MHz帯の一部がBitelに割り当てられた。

2018年8月、MTCは4Gや5G等の高度な移動体通信サービスに新たな周波数を割り当てるため、PNAFの変更を承認した。対象となる周波数帯は、452.5-457.5MHz/462.5-467.5MHz、806-821MHz/851-866MHz、821-824MHz/866-869MHz、 2500-2692MHz、2300-2400MHz、3400-3600MHzの周波数帯である。

2019年2月には、MTCは、公正な競争環境を確保するため、1事業者が保有できる周波数に制限を設ける周波数キャップを設けることを決定した。低帯域(450MHz帯、700MHz帯、800MHz帯、850MHz帯、900MHz帯)で最大60MHz幅、中帯域(1-6GHz帯、1900MHz帯、2100MHz帯、2300MHz帯、2600MHz帯、3500MHz帯、3700MHz帯)で最大250MHz幅とした。同年5月には周波数リース規則を採択した。

2019年9月、MTCは5Gの導入を促進するため、3.4-3.8GHz帯を5G用に割り当てることを内容とするPNAFの変更を行った。同年10月、民間投資促進庁(Proinversion)は、1750-1780MHz帯/2150-2180MHz帯及び2300-2330MHz帯の周波数オークションを2020年第2四半期に実施すると発表した。その後、オークションは再三延期が発表され、2022年9月現在、オークション開催は未定のままである。当該周波数帯は4G及び5G導入に使用され、免許は全国免許で有効期間は20年となる。

2021年4月、MTCはPNAFを変更し、農村部等の地理的条件不利地域におけるブロードバンド環境の整備促進の用途として、いわゆる「TVホワイトスペース」と呼ばれる470-698MHz帯を新たに割り当てるとともに、ミリ波帯である26GHz帯の1200MHz幅を将来の5G用に割り当て、更に、5925-7125MHz帯の1200MHz幅を免許不要のWi-Fi 6Eアクセス用に確保した。

3 周波数割当制度

周波数の使用許可は、電気通信法に基づき、MTCが周波数の使用許可を与える。

4 電波利用料制度

周波数の使用により、無線局、テレビ局及び無線受信局の所有者は、電波利用料の支払いを必要とする。料額は、「1994年電気通信法の一般規則」及び「ラジオ・テレビ法の一般規則」に規定されている。

2018年、MTCは移動体通信事業者が支払うべき電波利用料の一定額(「最高政令第004-2021-MTC」により最大40%が上限と規定されている)を通信サービスが行き届いていない地域へのカバレッジ拡張のための投資に充てることができる制度を確立した。

5 電波の安全性に関する基準

MTCは電波放射の技術試験に対する責任を負い、この役割を遂行するために、電気通信法に基づく関連する規定(最高政令第038-2003-MTC)を定めている。

電磁界における人体のばく露に関する制限値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインに基づいて対応している。

Ⅲ 周波数分配状況

MTCは、ITUの周波数分配に基づき、2008年2月21日に周波数分配計画PNAFを策定し、その後、累次の変更が行われてきている。