サウジアラビア王国(Kingdom of Saudi Arabia)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 通信情報技術省(MCIT)

Ministry of Communications and Information Technology

Tel. +966 11 8144444
URL https://www.mcit.gov.sa/
所在地 An Nakheel, Riyadh 12382, SAUDI ARABIA
幹部 Abdullah Alswaha(大臣/Minister)
所掌事務

電気通信・情報技術行政にかかわる法整備、政策策定、開発計画の立案等を所掌する。

2 通信・宇宙・技術委員会(CSTC)

Communications, Space and Technology Commission

Tel. +966 11 4618000
URL https://www.cst.gov.sa/en/Pages/default.aspx
所在地 P.O. Box 75606, Alnakheel Quarter - At the corner of Prince Turki Bin Abdulaziz Road and Imam Saud Bin Abdulaziz Bin Mohammed Road, Riyadh 11588, SAUDI ARABIA
幹部 Mohammed bin Saud Al-Tamimi(委員長/Governor)
所掌事務

2001年に独立規制機関のサウジ通信委員会(Saudi Communications Commission:SCC)として設立され、2003年に通信情報技術委員会(Communications and Information Technology Commission:CITC)に名称変更した後、2022年11月に現在の名称となった。主な所掌事務は、情報通信関連の事業免許付与、相互接続管理、サービス料金管理、周波数や番号等の希少資源の管理、消費者保護、機器の型式認証等である。

Ⅱ 法令

1 2001年電気通信法(Telecommunications Act 2001

市場競争の促進とCSTCの設立条件を規定している。

2 2007年電子取引法(Electronic Transactions Law 2007

電子商取引及び電子署名の管理、規制及び法的枠組を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

電気通信網を運用する事業者(Facility Based Provider:FBP)は「個別免許」、電気通信サービス提供を主業務とする事業者(Service Based Provider:SBP)は「クラス免許」の取得が義務付けられている。ただし、FBPのうちサウジ電気通信会社(Saudi Telecom Company:STC)、Etihad Etisalat、Zainサウジアラビア(Zain Saudi Arabia:Zain)の3社には、固定電話、移動電話、固定ブロードバンド、IoT、人工知能(AI)、デジタル・アプリケーション等のサービスを提供できる包括的免許として「統一免許」が付与されている。周波数を利用するサービスを提供する際は、別途周波数利用許可の取得が必要となる。

電気通信事業者の資本に対する外資の上限は60%である。

2 競争促進政策

(1)相互接続

「2001年電気通信法」において、CSTCが顕著な市場支配力(Significant Market Power:SMP)を有していると判断した事業者は、ほかの事業者の要請に応じ、適正な料金で技術的に可能なすべてのポイントで相互接続を提供すると定めている。固定通信市場すべてでSTCが、移動電話着信市場で大手3社が、それぞれSMP事業者に指定されている。IP網接続や国際ケーブルの接続ポイント及びダークファイバの利用についても、電気通信事業者はSTC等に商業ベースでの貸与を要求する権利を有する。

CSTCは「物理的施設へのアクセスのためのガイドライン(Guidelines for Access to Physical Facilities)」で物理的施設へのアクセスを管理するための規則を定めているほか、「相互接続ガイドライン(Interconnection Guidelines)」ですべてのサービス・プロバイダが公正かつ非差別的な扱いを受けるための規定を設けている。両ガイドラインは2021 年 3 月に「決定第462/1442号」の下で更新され、光ファイバへの投資促進や既存インフラの有効活用に関する条項が追加されたほか、SMP事業者の義務等が更新された。

着信接続料は年々引き下げられている。直近では2020年6月に、移動体着信接続料(Mobile Termination Rate:MTR)を0.022SAR、固定着信接続料(Fixed Termination Rate:FTR)を0.011SARとすることが決定された。前回の2017年の決定と比較すると、MTRは60%、FTRは48%の引下げとなっている。

(2)卸売提供制度とMVNO促進政策

CITC(現CSTC)は2013年、3件のMVNO免許を発行する計画を明らかにし、UAE政府所有の移動電話小売会社Axiom Telecom(Zainと提携)、ヴァージン・モバイルMEA(Virgin Mobile MEA:VMMEA、STCと提携)、Jawraa Group(Lebara、Etihad Etisalatと提携)の3社に暫定的な免許を交付した。しかし、Axiom Telecomは提出書類不備とされ、VMMEAとLebaraの2社にのみ本免許が付与された。両社は2014年9月と12月にそれぞれサービス提供を開始している。その後、2021年1月には外国資本をMVNO免許の付与対象とする方針が発表され、3件目と4件目のMVNO免許入札も開始されたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響で入札期限が複数回延期された。最終的に2021年7月にIntegrated Telecom Mobile Company(現Salam、Zainと提携)とFuture Networks Communicationsが免許を取得した。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

CITC(現CSTC)が2006年に策定した「国家ユニバーサル・アクセス及びユニバーサル・サービス政策(National Universal Access and Universal Service Policy)」を基に、2007年に「ユニバーサル・サービス基金(Universal Service Fund:USF)」が設立され、2010年に手続の詳細等が決定された。USFの財源は指定事業者からの拠出金で、各事業者の拠出額は年ごとの純益の1%である。ユニバーサル・アクセス及びユニバーサル・サービスの提供は2011年に開始された。

なお、CSTCの定義によれば、ユニバーサル・アクセスは人口100人未満の地域を対象に、ユニバーサル・サービスは人口100~5,000人の地域とすべての行政機関を対象に、それぞれ屋内信号強度の大きな移動体音声サービスと最低512kbpsのインターネット・サービスを提供するものである。

(2)デジタル・ディバイド解消

経済改革計画「ビジョン2030(Saudi Vision 2030)」の下、「国家転換プログラム2020(National Transformation Program 2020)」において、2020年末までに人口密集地域の90%、その他の地域の66%にブロードバンド・アクセスを提供することが目指された。具体的には、総世帯の60%を光ファイバで、農村部世帯の70%を無線ブロードバンド(下り回線速度10Mbps以上)でカバーすることが目標として掲げられた。MCITが2021年6月に公表した年次報告書によれば、2020年末時点で総世帯の60%(530万世帯)が光ファイバで、農村部世帯の72.8%(57万6,000世帯)が無線ブロードバンドでカバーされ、目標は達成された。

(3)5G

5G展開に関する国家計画は2019年2月にMCITによって発表され、合計1000MHz以上の帯域幅と約1,000基の5G基地局を活用して、中東・北アフリカ(Middle East and North Africa:MENA)地域最大の5G商用網を提供していく方針が明らかにされた。MCITは5Gが2030年までに同国に与える影響として以下を予測している。

4 ICT政策

(1)電子政府

電子政府プログラム「Yesser」を2005年に開始し、第1次行動計画(2006~2010年)と第2次行動計画(2012~2016年)を完了した。現行の第3次行動計画(2020~2024年)では「スマート政府戦略」と銘打ち、パーソナライズ化された行政サービスの提供や官民協力を促進するスマート政府エコシステムの構築、行政サービスの自動化と合理化等を目指している。

2021年にはデジタル政府庁(Digital Government Authority:DGA)が創設された。DGAは電子政府戦略の策定を支援するほか、各種ガイドライン等の発行を通じて電子政府サービス及び製品の標準化を推進する。

電子政府化は順調に進展しており、国際通貨基金(International Monetary Fund)の「2022年4条協議報告書」によれば、行政サービスの97%が電子化している。

(2)サイバーセキュリティ

国家サイバーセキュリティ庁(National Cybersecurity Authority:NCA)が2018年に政府機関向けの基本ガイドラインを公表し、2022年5月に国家機関向け「サイバーセキュリティ・サービスのための国家ポータル(HASEEN)」を開設した。また、同年8月にはセキュリティ分野における国内エコシステムの活性化を目指す「CyberIC」計画が発表され、同分野における国家能力の強化や、技術及びトレーニング・コンテンツのローカル化を推進する方針が示された。計画の第1フェーズでは、約1万人のサイバーセキュリティ人材に研修を実施するほか、スタートアップ企業60社を支援し、サイバーセキュリティ製品やサービス、ソリューションの開発を奨励する。第2フェーズではサイバーセキュリティ分野で国際的な権威のある大学と協力し、情報セキュリティ責任者向けのプログラムを提供する予定である。

(3)AI政策

「ビジョン2030」の下、経済多角化の一環として、2020年10月に「データAI国家戦略(National Strategy for Data and Artificial Intelligence:NSDAI)」が発表された。NSDAIでは、データAI庁(Saudi Data and AI Authority:SDAIA)が主導して、技術、規制政策、投資、研究開発、エコシステム等について段階的・多角的な計画を実施し、2030年までに国内外から200億USD規模の投資誘致を目指す。

5 新型コロナウイルス感染症対策

サウジアラビアでは、2020年2月から4月の間に移動体回線でのデータ通信量が24%、固定回線でのデータ通信量が45%増加した。これに対し、CITC(現CSTC)は、700MHz帯及び800MHz帯の周波数を電気通信事業者に追加的に割り当てたほか、保健省の医療相談アプリ「Sehha」やCOVID-19接触確認アプリ「Tawakkalna」、教育省(Ministry of Education)が提供するオンライン学習プラットフォーム等にアクセスする際のデータ通信料を無料化することで対応した。また、電子商取引や配達アプリへの需要が急増したことを背景に、10月には配達アプリ用の規制サンドボックスを設立した。規制サンドボックスは、配達アプリの市場投入までの時間短縮とコスト削減を目的としたもので、サービス品質やビジネスモデル、合法性等で一定の基準を満たしたものには資金調達の機会が与えられる。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

無線機器を含む電気通信機器の認証は、CSTCが所管している。CSTCは認証手続及び技術基準を定め、認証審査を実施する。また、輸入される無線機器の輸入手続に関してもCSTCが規定する。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

STC(ブランド名:Al Hatif)とEtihad Atheeb Telecom(ブランド名:GO Telecom)が一般向け固定電話サービスを提供しており、STCが国内及び国際サービス全般にわたり独占的地位を維持している。国際サービスには海底ケーブル及び衛星が利用されている。

2 移動体通信

STC(ブランド名:Al Jawal)、Etihad Etisalat(ブランド名:Mobily)、Zainが2G、3G、LTE及び5Gサービスを提供しているが、STCは2022年内に3Gサービスの提供を終了する計画である。5Gについては、3社とも固定無線サービスとスマートフォン向けサービスを提供しており、2022年2月にはZainが同国初となるスタンドアロン(Stand Alone:SA)方式の5G運用を開始した。2022年6月現在の加入者数シェアはSTCが約55%を占める。

MVNO事業者には、2014年にサービスを開始したVMMEA及びLebaraと2021年7月に免許を取得したSalam及びFuture Networks Communicationsの4社がある(Ⅲ-2(2)の項参照)。VMMEAはSTC、LebaraはEtihad Etisalat、SalamはZainのネットワークを利用している。

3 インターネット

2022年6月現在、STC、Etihad Etisalat、Salam、Etihad Atheeb Telecom(ブランド名:GO Telecom)等がサービスを提供しており、STCが加入数シェアの約65%を占める。2021年時点での技術別シェアは、光ファイバ/LANが6割と最も高く、DSLが次点に付く。

2020年2月には、市場競争の促進、投資誘致、サービス向上による加入数増加を目的に、CITC(現CSTC)と国内電気通信事業者6社(STC、Etihad Etisalat、Zain、Etihad Atheeb Telecom、Integrated Telecom Company(現Salam)、Integrated Dawiyat)がFTTH網のオープン・アクセス協定を締結した。これにより、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)の選択肢が増え、ISP変更手続も容易になる等、消費者の利便性向上が期待される。

4 IPTV

STCが2010年8月から「InVision」の名称でIPTVサービスを実施しているほか、Etihad EtisalatやZainも同サービスを提供している。利用者は、月額料金もしくはペイ・パー・ビューにより視聴に応じた料金を支払っている。

Ⅵ 運営体

サウジ電気通信会社(STC)

Saudi Telecommunications Company

Tel. +966 11 4555555
URL https://www.stc.com.sa/content/stc/sa/ar/personal/home.html
幹部 Olayan M. Alwetaid(最高経営責任者/CEO)
概要

1998年に設立された国営総合電気通信事業者で、2003年初頭に部分的に民営化された。2022年1月現在、同社株式の64%を政府系ファンドである公的投資基金(Public Investment Fund:PIF)が保有しており、残る36%は公開株式となっている。2021年の連結売上高は、前年比7.57%増の634億1,697万SARであった。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 メディア省

Ministry of Media

Tel. +966 11 4068888
URL https://media.gov.sa/
所在地 Amr bin al-Aas street, Riyadh 12735, SAUDI ARABIA
幹部 Majid bin Abdullah Al-Qasabi(大臣/Minister)
所掌事務

2018年6月の内閣改造に伴い、文化情報省(Ministry of Culture and Information)がメディア省(Ministry of Media)と文化省(Ministry of Culture)とに分離された。メディア省は、テレビやラジオを含むメディア事業全般の規制監督や著作権規制を所掌する。

2 視聴覚メディア一般委員会(GCAM)

General Commission for Audiovisual Media

Tel. +966 92 0004242
URL https://www.gcam.gov.sa/
幹部 Esra Assery​(最高経営責任者/Acting)
所掌事務

2013年に設立された。放送事業者への免許付与権限を有するほか、コンテンツ規制を所掌する。

3 通信・宇宙・技術委員会(CSTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

放送事業の許認可や放送内容に関する政策立案を所掌する。

Ⅱ 政策動向

1 免許制度

GCAMが放送事業の実施及び放送施設の設置にかかわる免許を付与している。

2 コンテンツ規制

政府及び個人を批判、中傷するような番組のほか、イスラム教の教義に反する内容は禁止されている。

3 地上デジタル放送

DVB-T方式の地上デジタル放送は2006年に開始され、2013年末には国内全域をカバーした。アナログ放送は2012年に終了している。

Ⅲ 事業の現状

1 ラジオ

国営サウジ放送機構(Saudi Broadcasting Authority:SBA)のラジオ部門であるサウジ・ラジオ放送ネットワーク(Saudi Radio Broadcasting Network)が国内向け総合放送やコーラン放送、英語放送等を行っている。国際放送はイスラム諸国向けに11言語での放送が実施されている。そのほか、国営石油会社サウジ・アラムコ(Saudi Arabia Oil Company)のStudio1やStudio2といった認可を受けた商業放送もある。

2 テレビ

「ビジョン2030」の一環として、2018年に地上放送の改編が実施された。これを受け、国営SBAのテレビ部門であるサウジ・テレビジョン(Al Saudia Television)は七つのチャンネルを提供することになった。すなわち、総合編成の「サウジ・チャンネル」、スポーツ番組に特化した「KSAスポーツ」、コーラン朗読とその注釈に関する番組を放送する「聖クルアーン・チャンネル」「子ども向けチャンネル」、預言者ムハンマドの言行や慣行に関する番組が中心の「スンナ・チャンネル」、ドラマや娯楽番組が中心の「SBCチャンネル」、過去の人気番組を再放送する「メモリー・チャンネル」である。一部のチャンネルや番組については同時配信や見逃し配信も行われている。

3 衛星放送

衛星放送の視聴シェアは全テレビ視聴世帯のうち95%を超えており、無料放送視聴が主流であるが、有料放送への加入も増えている。国営のサウジ・テレビジョンは七つの地上放送チャンネルを衛星放送でも放送している。商業衛星放送局には、アラブ・ラジオ・テレビジョン(Arab Radio Television:ART)、MBC(Middle East Broadcasting Center)、OSN(Orbit Showtime Network)等がある。

4 ケーブルテレビ

ケーブルテレビはほとんど普及していない。

5 オンライン動画配信

国営のサウジ・テレビジョンが全チャンネルを同時配信している。また、大手商業衛星放送局の大部分が番組をウェブサイト上で同時配信している。電気通信事業者であるSTC、Etihad Etisalat、Zainは移動体通信端末向け動画配信サービスを提供している。

Ⅳ 運営体

サウジ放送機構(SBA)

Saudi Broadcasting Authority

Tel. +966 11 4425999
URL https://sba.sa/ar
所在地 P.O. Box 7971, Riyadh 11472, SAUDI ARABIA
幹部 Majid bin Abdullah Al-Qasabi(会長/Chairman)
概要

メディア省の前々身である旧情報省の1部門として1949年にラジオ放送、1965年にテレビ放送、1993年に衛星放送を開始した国営放送事業者である。2018年7月にSBC(Saudi Broadcasting Corporation)からSBA(Saudi Broadcasting Authority)へと改称した。ラジオ部門のサウジ・ラジオ放送ネットワークとテレビ部門のサウジ・テレビジョンがあり、財源はほぼすべて政府からの補助金である。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)通信情報技術省(MCIT)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)通信・宇宙・技術委員会(CSTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

電波監理分野では、周波数利用許可の付与、周波数管理、電気通信機器認証等を所掌する。

2 標準化機関

サウジ規格・計量・品質機構(SASO)

Saudi Standards, Metrology and Quality Organization

Tel. +966 80 0116000
URL https://www.saso.gov.sa/ar/pages/default.aspx
所在地 P.O. Box 3437, Riyadh 11471, SAUDI ARABIA
所掌事務

1992年に「王令M/10」で設立された独立機関で、関連政府機関と民間から参加する理事会によって運営されている。サウジアラビア国家標準規格を制定する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

電波干渉の防止と周波数の効率的な利用を目的に、CSTCが技術と行政手続の両面から電波監理を実施している。その中には周波数利用データベースの構築や電波監視等も含まれている。

電波監理政策に係る国家計画や戦略には、2019年に閣僚会議で承認された国家周波数計画(National Frequency Plan:NFP)や2020年に公表された「国家スペクトル戦略2025(National Spectrum Strategy 2025)」がある。2021年には「国家スペクトル戦略2025」の一環として、「サウジアラビアにおけるスペクトルの商業的・革新的使用に関する3年間の見通し(3-year Outlook for Commercial and Innovative Use of the Spectrum in Saudi Arabia)」と題した文書が発表され、2021年から2023年の間に合計23GHz幅を様々な用途に割り当てる計画が明らかにされた。うち移動体通信用途として、600MHz帯、700MHz帯、1500MHz帯、3800-4000MHz帯、26GHz帯のオークションを2022年に開催する予定としていたが、2022年9月現在、進展は確認されていない。

2 無線局免許制度

CITC(現CSTC)の免許付与の原則は「技術中立・サービス特定(Technology Neutral and Service Specific)」であったが、世界的に「技術・サービス中立」の枠組みの検討が進められていることから、CITC(現CSTC)は固定・移動の両サービスの提供を認める単一免許制度を導入することを決定し、2016年10月にSTC、Etihad Etisalat、Zain、Etihad Atheeb Telecomに統一免許を正式に付与した。ただし、新規事業者Etihad Atheeb Telecomは同年に実施された周波数オークションの支払いができず、免許を取り消された。

無線通信機器の利用に際しては、CSTCの規定条件に基づいた周波数免許が必要となる。各免許には無線機器の情報、割当周波数、技術的パラメータ等が規定されている。免許期間は免許ごとに異なる。

免許の付与は、競合がある場合には、比較審査、オークション又はCSTCの判断で行われる。オークション実施の根拠となっているのは、電気通信法付則(Telecommunications Bylaws issued by the Ministerial Resolution No. (11)(17/05/1423H(西暦27/07/2002)))である。国内初の周波数オークションは2017年5月に実施された。対象とされたのは700MHz帯と1800MHz帯であった。

5G免許については、2020年、2300-2400MHzの免許をSTC、2496-2690MHzの免許を Etihad EtisalatとZain、3300-3800MHzの免許をSTC、Etihad Etisalat、Zainの3社に付与した。26GHz帯については2022年内の割当てが予定されているが、2022年9月現在、進展は確認されていない。

3 電波利用料

電波利用料は、帯域幅、アンテナ高度、アンテナの移動性・無指向性、周波数需要、利用都市、地理的カバレッジを勘案し、算定される。航空・海上無線航行やアマチュア無線、捜索・救助通信については固定額である。低出力機器、市民バンド無線機、携帯端末、受信専用機、GPS受信機は電波利用料が免除される。

4 免許不要局

「2001年電気通信法」ではすべての無線接続事業者は免許を取得する義務があるとしているが、CITC(現CSTC)は2008年に「無線LAN規則」を定め、国際的に認められている2.4GHz及び5GHzの周波数帯で運用されるWi-Fi機器については2次的利用で使用可能とした。また、2022年2月には同規則を改訂し、6GHz帯及び57-71GHz帯も免許不要帯域又は軽免許帯域として無線LANに利用することを承認した。無線LANへの割当帯域幅としては世界最多となる。

5 電波監視

周波数の効率的な利用促進を目指し、CSTCが電波監視を行っている。首都を含めた国内5か所に電波監視局が置かれ、測定結果がCSTCに報告される。リヤドの中央監視センターは地方の監視局と広域ネットワークによって接続されており、地方の監視局はVHF/UHF及びマイクロ波用の電波監視用移動車両を保有している。

6 電波の安全性に関する基準

2009年に人体への電磁波被ばく基準をWHOの基準に準じて策定した。また、3か月ごとに固定送信局の12.5%以上に関して電磁界強度の測定を実施し、公表することを定めた。CSTCのウェブサイト等を通じて測定結果を公表するとともに、電波の安全性に関する広報活動を行っている。2021年10月には8.3kHz-300GHzを対象とする新たな「電磁界ばく露に関する規制(Regulations on Exposure to Electromagnetic Fields)」が策定された。

Ⅲ 周波数分配状況