Ministry of Economic Affairs and Digital Transformation
Tel | +34 91 258 2852 |
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URL | https://portal.mineco.gob.es/en-us/Pages/index.aspx |
所在地 | P. de la Castellana, 162. 28071 - Madrid, SPAIN |
幹部 | Nadia Calviño(第1副首相兼大臣/First Vice President of the Government and Minister of Economic Affairs and Digital Transformation) |
2020年1月12日付Royal Decree 2/2020により、経済ビジネス支援、デジタル化・人工知能(AI)、電気通信・デジタルインフラの各分野を所管する部門を統合した経済デジタルトランスフォーメーション省(MINECO)が設立された。その後、同月28日付Royal Decree 139/2020により同省の内部組織の構成を規定された。
The National Commission on Markets and Competition
URL | https://www.cnmc.es/ |
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所在地 | Calle Alcala 47 Madrid E28014, SPAIN |
幹部 | Cani Fernández Vicién(委員長/President) |
2013年6月、国会は「2013年6月4日の法律第3号(Act 3/2013)」を採択し、国家競争委員会(National Competition Commission:CNC)や電気通信市場委員会(Telecommunications Market Commission:CMT)を統合した新しい規制機関として国家市場競争委員会(CNMC)を設立することを決定した。CNMCは電気通信分野やエネルギー、競争環境等の規制監督機関として2013年10月に業務を開始した。電気通信分野については1996年に発足したCMTの業務(「2003年11月3日の法律第32号(Law 32/2003)」に基づく)を引き継ぐ。
EUの「2002年通信規制パッケージ」を反映した「2003年11月3日の法律第32号」(「一般電気通信法」)が制定され、2014年に、将来のデジタル経済促進や電気通信関連事業者の更なるサービス展開機会を提供することを目的に同法を改正し、「2014年一般電気通信法」(Ley 9/2014, de 9 de mayo, General de Telecomunicaciones)として同年5月より施行している。規制機関の役割が、事業者の登録制度、相互接続、ユニバーサル・サービス、番号計画、市場において顕著な支配力を有する(Significant Market Power:SMP)事業者等に関して総則的規定を設けている。2022年6月には、EUの欧州電子通信コード(European Electronic Communications Code:EECC)の国内法制化のための改正が行われ、100Mbps速度のインターネットを国民の100%に提供する事業者義務等が規定されている。なお、同法は、以下の八つの部(Title)で構成されている(全84条)。
第1部:一般規定
第2部:自由競争体制におけるネットワーク運用と電子通信サービスの提供
第3部:公共サービスの義務及びネットワーク運用と電子通信サービスの提供における公共性格の権利と義務
第4部:設備・装置の適合評価
第5部:公共無線分野
第6部:電気通信の管理
第7部:電気通信料金
第8部:監査・罰則
正式名称は「情報社会サービス及び電子商取引に関する2002年7月11日の法律第34号(Law 34/2002)」。2002年7月、EUの「電子商取引指令(2000/31/EC)」の国内法制化措置として制定された。インターネット・電子商取引関連法規として、電子商取引への物理的商取引と同等の法的枠組の付与、電子認証の有効性、スパムメールの大量送信の禁止、有害コンテンツの排除とISPの責任範囲等の規定のほか、ISPに対し利用者の個人情報を1年以上保存する義務を課している。
「2014年一般電気通信法」において、免許・認可制度が変更された。EUの認可指令に従い免許制から一般認可制に移行するためのもので、国内あるいはEU加盟国の事業者であって、電子通信網の開発あるいは電子通信サービスの提供を希望する者は、CNMCに申請書を提出し、事業者登録の認可を得てサービスを提供することとなった。CNMCは15日以内に審査を実施し、審査を通過した事業者を登録する(第2部第6条、第7条)。ただし、周波数を利用して通信サービスを提供する事業者は、周波数利用に関する免許取得が要件とされている(第5部第60条~第62条)。
「2014年一般電気通信法」によれば、公衆電子通信網事業者は、自らの電子通信網を、他の公衆電子通信網事業者の要請に応じて相互接続する交渉に応じるよう義務付けられている。事業者間の相互接続に関する制約は、国内・国外事業者にかかわらず存在しないが、協定は無差別・透明・公平な条件の下に行われなければならず、事業者は相互に情報公開の義務を負う。紛争の際にはCNMCが介入する。電子通信網の正常な機能を維持するうえで必要と認められる場合には、CNMCは提供される電子通信網に関して技術的条件を課すことができる。また、CNMCは最終利用者の利便のため、特定の事業者を指定して相互接続を命じることもできる(第12条、第14条)。
また、CNMCによりSMP事業者に指定された公衆電子通信網事業者には、相互接続を要求するすべての事業者に対し、同一の条件で相互接続を提供する義務が課される。SMP事業者は、相互接続契約条件を公表し、料金設定が実際の費用に基づいたものであることを証明しなければならない(第14条)。
「2014年一般電気通信法」の第25条が、ユニバーサル・サービスに関して規定しており、「一定の品質を有し、地理的条件にかかわらず、利用可能な価格で、すべての利用者が利用できる、一連の定義された電子通信サービス」としている。主なユニバーサル・サービスの対象は、固定電話、電話帳(印刷版・電子版)、番号案内、身障者向け措置、固定ブロードバンドとなっている。ユニバーサル・サービス事業者については、過去の業績を基に通信所管省が指定することとされており、固定電話、固定ブロードバンドについては、テレフォニカ(Telefonica)が、2023年1月1日までのユニバーサル・サービス提供事業者として指定されている。電話帳、番号案内についてはサービスが十分に提供されているとし、ユニバーサル・サービス事業者は指定されていない。MINECOは、2022年11月に、2023~2024年のユニバーサル・サービス提供事業者に関するパブリック・コンサルテーションを開始し、ブロードバンドの最低下り速度を従来の1Mbpsから10Mbpsに引き上げることを提案している。
また、ユニバーサル・サービス提供に要する資金調達のため、CNMCの管理下に、国家ユニバーサル電気通信サービス基金(National Universal Telecommunications Service Fund)が設けられ、CNMCの指定によりユニバーサル・サービスのコスト負担義務を有する事業者から拠出された負担金が、同基金に預託される。ユニバーサル・サービス提供事業者(テレフォニカ)は、同基金からサービス提供に必要な純費用の支給を受ける。CNMCが公表しているユニバーサル・サービス決済文書(2023年発行)では、2020年度のユニバーサル・サービスの費用は982万7,480EURである。
2020年までに30Mbpsレベルのブロードバンド・サービスの普及を目標とするEUデジタル・アジェンダを踏まえ、「2017~20年ブロードバンド拡張プログラム(Programa de Extension de Banda Ancha:PEBA)」が実施された。また、PEBAの後継プログラムとして、2021年6月、MINECOは「デジタル・インフラのユニバーサル化プログラム(2021~25年)(Universalisation of Digital Infrastructures for Cohesion Programme(UNICO 2021-25))」の一環として、2025年間までに国内完全ブローバンド化を図る「UNICOブロードバンド」を実施している。2021年6月末現在の固定ブロードバンドの世帯普及率は90%で、更に2023年の世帯カバレッジが94.2%の見込みであるが、ルーラル地域のデジタル・ディバイドの是正が課題とされており、政府は、2022年10月に2億4,460万EURの公的資金を投じ、新規に72万8,500の世帯・企業を100Mbpsのブロードバンドに接続する計画を発表している。主な対象地域は、30Mbpsサービスが提供されておらず、また今後3年間でも同サービスの提供が見込まれない「ホワイトゾーン」及び100Mbps以下のサービスが通信事業者1社のみにより提供され、事業者競争が見込まれない「グレーゾーン」としている。なお、MINECOが2022年7月に公表したブロードバンド報告書では、全国普及率とルーラル普及率の格差は、2021年6月現在で20%と報告しており、2023年に10%に縮小することを見込んでいる。2023年には欧州次世代基金の資金提供を受けているUNICO農村需要プログラム(Programa UNICO Demanda Rural)により、農村地域や遠隔地におけるユーザに月額35EURの価格で下り100Mbpsの衛星経由のブロードバンド接続を提供することとしている。これにより50Mpbsのブロードバンド・サービスにアクセスできない地域の世帯のすべてのデジタル・ディバイドを解消するとしている。
2020年11月、MINECOは、「スペイン・デジタル2025」を、また2022年7月にこれを更新した「スペイン・デジタル2026」を公表した。デジタル接続の普及、5G展開、サイバーセキュリティの高度化、行政分野及び中小企業等のビジネス分野のデジタル化、オーディオ・ビジュアル産業のハブ化、データ経済・AI技術の普及、市民のデジタル権利の保証を進めていくこととしている。同計画は以下の10の戦略項目で構成され、50の施策が実施される。
国家安全保障と外交政策について議論するために2013年7月に設立された国家安全保障会議(National Security Council)は、12月の会議後に、将来的なオンライン上の脅威から国を守るためのサイバーセキュリティ戦略を発表した。同戦略は、サイバー脅威に対する予防、防衛、検出、対応活動を実現するため、政府がサイバー空間保護のための国家安全保障戦略規定を作成することを支援するものである。国家サイバーセキュリティ会議(National Cybersecurity Council)が戦略実行を監督することを念頭に、政策枠組が作成されている。同会議の長は毎年交代し、内閣、内務省、エネルギー・観光・デジタルアジェンダ省、国防省、外務省各局の代表から選ばれる。また副会長は国家安全保障局の代表が務める。
2016年8月、産業・エネルギー・観光省(現:産業・商業・観光省)は、EUの欧州地域開発基金(European Regional Development Fund:ERDF)からの総額6,300万EURの拠出に基づくスマートシティ・プロジェクトが14件新たに選定されたと発表した。
スペイン政府は、2025年までの5G人口カバレッジ75%を目指しており、5Gサービスの提供が見込まれない地域を中心に5Gインフラ構築支援を実施している。2022年6月、MINECOは、道路・鉄道・ルーラル地域における5Gパッシブインフラ構築を支援する「UNICO 5G」プログラムの実施を公表した。ルーラル地域及び主要道路・鉄道を対象に、鉄塔・マスト・バックホールインフラ等のパッシブインフラの敷設に関し、通信事業者への資金支援を行うもので、1億5,000万EURが供与される。また、同年11月、人口5,000人以下のルーラル地域において5G基地局間の光ファイバ・バックホールを敷設するための支援プログラム「UNICO 5Gネットワーク-バックホール光ファイバ」の実施を発表した。国内50県(provincias)における条件不利地域でのネットワーク拡張を促すことを目的に、インフラ構築を請け負う通信事業者を募集し、インフラ建設及び施設・資材調達にかかる費用に対し、2023~2024年の2年間で総額4億5,000万EURを供与する。さらに、人口が1万人未満の小規模な都市中心部の自治体において、観光、農業、 公共 サービスなどの分野におけるデジタル経済へのアクセスを促進することを目的として、5Gインフラ構築の提供をするために、総額5億4,400万EURを供与することを発表した。
また、MINECOは、5G・6G技術の研究開発プロジェクトも進めており、2021年11月、にEUの研究プログラム「Horizon2020」における5G PPP(5G Infrastructure Public Private Partnership)と連携し、国内にある13の大学研究機関、公共研究機関が進める115の研究プロジェクトを対象にした資金援助を発表した。技術開発のほか、同分野の専門技術者の確保・育成も図るとしている。予算規模は9,520万EUR。そのほか、2022年8月には、主要経済部門における5Gアプリケーション開発支援及び5Gアドバンスド(5G+)・6Gの研究開発支援プログラム「UNICO-Advanced 5G & 6G R&D」を発表した。このうち5Gアプリケーション開発支援は、コネクテッド・モビリティ、デジタルヘルス、スマート観光、セキュリティ、デジタル農業等の5Gユースケースの開発プロジェクトに300万~1,500万EURを助成するほか、プライベート・ネットワークにおいて5G周波数を利用した技術開発・実証が認められる。予算総額は9,070万EUR。5G+・6Gの研究開発支援は、2022年・2023年の2か年プロジェクトで、大学や公的研究機関を対象に、科学技術関連設備の調達・整備に総額2,300万EURを助成するほか、スペイン民間企業を対象に、光工学、機械学習、RANシステム、エッジ・コンピューティング、プライバシー・セキュリティ等との統合技術の技術開発プロジェクトに総額9,300万EURを助成する。2023年10月、MINECOは、5Gアプリケーション及びサービスの実験的開発のプロジェクトの実施を目的としたUNICO 5G Sectorial 2023 Phase I補助金の最終決議案を発表した。今回の募集で提示された12プロジェクトのうち、5G技術の機動的な適用を促進する企業と通信事業者間のエコシステムの開発を促進する7つのプロジェクトに対して950万EURを助成するものである。
無線機器の基準認証については、EUの「R&TTE指令(1999/5/EC)」に準じて「2022年一般電気通信法」により定められており、MINECOが所掌している。
電気通信市場は、1998年1月に完全自由化された。オノ(ONO)、オレンジ・スペイン(Orange Spain)、エウスカルテル(Euskaltel)、ジャズテル(Jazztel/Jazz Telecom、オレンジ・スペインが2015年5月に買収)等の新規参入事業者が事業を展開している。
固定電話普及率は年々減少しており、市場では旧国営事業者テレフォニカが強力な市場支配力を有するが、そのシェアは年々低下している。
VoIP加入者数は増加を続け、2014年以降はVoIP加入者数がPSTN回線加入者数を上回っている。
移動電話普及率は2005年に100%を超え、2021年は119.6%である。主な事業者はオレンジ・スペイン、テレフォニカ(ブランド名:モビスター(Movistar))、ボーダフォン・スペイン(Vodafone Spain)、Masmovil Group(MVNO事業者MasmovilがスウェーデンのテリアからXfera Moviles(ブランド名:Yoigo)を2016年10月に買収)である。長らくテレフォニカが市場シェアで首位であったが、2017年6月にオレンジ・スペインが初めて逆転し、現在4事業者の市場シェアは拮抗している。4社ともLTEサービスを提供し、人口カバレッジは、2021年6月末現在、都市部で99.91%、ルーラル地域で99.6%とほぼ国内全域をカバーしている。
5Gについては4社がサービスを提供している。うち、ボーダフォン・スペインが2019年に15都市を対象に国内初の5Gサービスを開始し、次いで2020年9月にテレフォニカ、オレンジ・スペイン、Masmovil Groupが5Gサービスを開始している。国内における5Gの人口カバレッジは2021年6月現在、59%で、うちスタンドアロン(SA)型5Gのカバレッジは33.53%である。国内における5Gの人口カバレッジは2022年6月現在、82%となっており、昨年度よりも23ポイント増加した。また、うちスタンドアロン(SA)型5Gのカバレッジは58%であり、昨年よりも25ポイント増加した。地方ではカバレッジが1年で2倍となり、50.52%に上昇した。2022年にはDigital Spainアジェンダの目標の中で、2025年までに人口の75%をカバーするという目標を立てている。2021年6月現在、ボーダフォン・スペインのサービスエリアは25都市に拡大されおり、またテレフォニカの人口カバレッジは80%である。
事業者 | 事業開始年 | システム | 加入者シェア |
オレンジ・ スペイン |
1999年 | LTE1800/2600、GSM1800、W-CDMA 、LTE、LTE-A、5G |
25.2% |
テレフォニカ | 1990年 | LTE1800/2600、GSM900/1800、 W-CDMA、LTE、LTE-A、5G |
28.6% |
ボーダフォン・ スペイン |
1995年 | LTE1800/2600、GSM900/1800、 W-CDMA、LTE、LTE-A、5G |
24.2% |
2023年8月現在、固定ブロードバンド回線総数は1711万8,000回線。光ファイバ(FTTH)回線数は1,440万回線で、うちモビスターが520万回線と全体の36.3%を占める。DSLは61万5,000回線と全体の3.5%を占める。そのほかHFCが154万1000回線である。モビスター、オレンジ・スペイン、ボーダフォン・スペインがブロードバンド回線全体の74.3%を占める。
IPTVサービスの加入者数は、2021年末508万3,700から2022年565万8,100に増加しており、有料テレビ加入者全体の80%を占め、衛星放送、ケーブルテレビを抜き、国内最大のプラットフォームになっている。加入者数増加の要因は、通信事業者のパッケージ・サービス強化である。テレフォニカが、自社網を用いたIPTVサービス「Movistar TV+」を提供している。
公共放送のスペイン放送協会(Corporación de Radio y Televisión Española:RTVE)は、2013年9月、テレビ放送とインターネットを融合したハイブリッド・ブロードバンド放送(Hybrid broadcast broadband TV:HbbTV)サービス「Botón Rojo」を開始した。ニュース等をテレビ画面からインターネット経由で視聴できるほか、オンデマンド・サービスやキャッチアップ・サービスも利用できる。
Telefonica
Tel. | +34 91 584 47 13 |
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URL | https://www.telefonica.com/en/ https://www.movistar.es/(移動体通信) |
幹部 | José María Álvarez-Pallete López(会長兼最高経営責任者/Chairman and CEO) |
旧国営の国内最大の電気通信事業者である。1997年2月、政府保有株式の民間放出により、完全民営化を果たした。
世界12か国で事業を展開するグローバル・メガキャリアで、欧州ほか、ラテンアメリカ中心の海外戦略を展開している。
テレフォニカが提供するサービスの国内加入者数は、2022年末現在、固定電話810万2,300、移動電話1,934万7,300、ブロードバンド585万4,500である。
一方、全世界加入者数は、2022年末現在、3億5,721万(固定電話2,794万1,900、移動電話2億9,216万8,100、ブロードバンド2,630万3,900、有料テレビ1,058万6,500等)である。2022年の売上総額は399億9,300万EURで、主な国別の売上比率は、スペイン32.3%、ドイツ21.2%、ブラジル22.9%、で、これら3か国で売上全体の76.4% を占める。その他HispAmと呼ばれる中南米諸国(アルゼンチン、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー、メキシコ、ウルグアイ、ベネズエラ、その他中米地域)の売上シェアは23.6%である。
主要事業者 | URL |
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オレンジ・スペイン | https://www.orange.es/ |
ボーダフォン・スペイン | https://www.vodafone.es/ |
Masmovil Group | https://www.grupomasmovil.com/ |
オレンジ・スペインとMasmovil Groupは、2022年7月、事業統合計画に署名したことを発表している。新会社は、両社が50%ずつ出資する合弁会社として設立される。スペイン政府の承認後、2023年下半期までの正式発足が見込まれている。
(通信/Ⅰ-1の項参照)
(通信/Ⅰ-2の項参照)
従来の放送関連法規を統合した新放送法であり、2010年5月に施行された。「視聴覚コミュニケーション一般法」と呼称される。テレビ広告に関する規制、未成年者保護のためのコンテンツ規制、放送事業者によるスペイン及び欧州の映画産業への投資、商業放送局の合併案件等について規定している。
EU「視聴覚メディアサービス(Audiovisual Media Service:AVMS)指令」の国内法制化に伴い、改正法が7月9日に施行された。これまでの規制対象を、テレビ放送事業者からオンライン上で視聴覚配信サービスを提供する事業者に適用範囲が拡大された。また、配信プラットフォーム事業者は、配信サービスの透明性の向上を図るため事業者情報の政府登録が義務付けられたほか、未成年ユーザの視聴に対し、コンテンツの年齢レーティングの表示、年齢確認システムの設定、広告コンテンツが含まれる場合の事前通知等が義務付けられた。
首相府が免許付与を行うほか、自治政府も地域公営放送の免許を付与することが認められている。2010年3月31日の法律第7号では、全国放送の免許は中央政府の所管とし、一つ又は複数の自治体(municipios)をまたぐ地域放送及び島しょ部の放送は地方免許によることを規定している(第22条)。
テレビ・ラジオとも受信料制度はない。公共放送RTVEは、広告収入と国庫補助金を財源としていたが、2009年7月、国会でRTVEの広告放送の全面廃止を盛り込んだ法律が可決、2010年1月よりRTVEの広告放送は廃止された。代わりに、商業放送事業者・通信事業者が、年間売上高の一部(0.9~3%)をRTVEの財源として拠出することになった。国からの補助は、従来の国庫補助金に加え、電波税の8割(現在は10割)がRTVEの財源に充当されることになった。
広告放送の廃止以来、RTVEの経営は一時黒字に転じたが、2019年度は10億EURの収入に対し3,000万EURの損出を出し、2020年はコロナ禍の影響により放送事業者からの拠出金の減少のため損失額が5,000万EURに拡大した。
2021年は政府交付金の増額や商業収入の拡大に伴い、2022年2月の資産ベースで4,600万EURの収益があった。2022年10月政府は、RTEVの2023年度予算を2011年以降最多となる5億3,000万EURとすることを発表した。
「視聴覚コミュニケーション一般法」は、未成年者の健全な発育を阻害する番組の規制を打ち出している。ポルノ・暴力を含む番組が排除され、賭け事等を含む番組は深夜の時間帯に放送が限定される等の規制が盛り込まれている。また、欧州制作コンテンツの振興について、同法2022年改正に伴い、テレビ事業者に対し年間放送時間の51%を欧州で制作されたコンテンツの放送に割り当て、更にそのうち50%をスペイン語又は地方自治体の公用語を用いたコンテンツの放送に割り当てることが定められた。さらに未成年者の保護をさらに強化し、規制対象を動画コンテンツにも拡大したほか。海外に拠点を置く事業者が国内で事業を展開する場合もこの対象に含まれることになった。
番組広報も含め、1時間当たり12分までと規定されていたが、改正法では、午前6時~午後6時に放送される番組については最長144分、午後6時~深夜0時の番組については、最長72分の範囲で柔軟に放送できるようになった。
地上デジタル放送は、2005年11月に20局で放送が開始された。2008年9月、政府は「DTT移行全国計画」を決定し、全国を73地域に分割して段階的にアナログ停波を進め、2010年4月2日にアナログ放送終了とデジタル放送への移行を完了した。
2010年に一部の放送免許が一般入札を経ずに商業放送事業者らに割り当てられていたことに対し、2012年、最高裁判所は免許を無効とする判断を示した。これを受け、2014年5月までに商業放送局4社に付与された9件のチャンネルが廃止された。政府は改めて2015年4月に事業者の募集・入札を実施し、10月に6事業者に免許を付与した。
地上デジタル放送へ割り当てられた700MHz帯(694-790MHz)の5G利用について、2020年10月に周波数移行が完了し、地方公共放送テレビガルシア(Televisión de Galicia)が2021年7月にテレフォニカの5G網を使った放送を実施している。
公共放送RTVE傘下のスペイン・ナショナル・ラジオ(Radio Nacional de España:RNE)が4系統の全国放送及び1系統のカタルーニャ自治州向け放送を実施している。そのほか多くの地方自治体と商業放送事業者が全国放送・地方放送を実施しており、大手ラジオ局としてメディア企業Prisa傘下のSER(Sociedad Española de Radiodifusión)、キリスト教系ラジオ局COPE(Cadena de Ondas Populares Españolas)、テレビ局Atresmedia傘下のOnda Ceroがある。また国際放送は、RTVEが「REE」の名称で、7言語で衛星・インターネット・短波で放送・配信している。
デジタル放送については、1998年4月にマドリード、バルセロナ、バレンシアでDAB方式のデジタル・ラジオ放送が始まった。現在ではマドリードとバルセロナの2都市だけで放送され、人口カバレッジは約20%にとどまる。
公共放送については、RTVE傘下のTVE(Televisión Española)が5系統の放送を行う。このうち、「La 1」(総合編成)は、最高視聴率を得ていたが、近年商業放送各局のシェアが増加し、視聴率が低下している。全国放送のほかに、地方局制作の独自番組を放送している。また、「TVE Internacional」という国際放送も放映している。
商業放送については、Mediaset España、Atresmedia(旧Antena 3)等が放送を行っている。最大の商業放送局でTelecinco社を所有していたMediaset Españaは、2010年12月にTV Cuatroを吸収合併した。無料DTT放送9系統を全国向けに放送している。そのほか、AtresmediaがDTT放送8系統を全国向けに放送し、また、南北アメリカ大陸や英国向けに有料の国際放送を行っている。
地方公営放送については、スペイン17自治州のうち13州が公営放送機関を持ち、地域放送を行っている。このうち12州の放送機関が自治州放送機構連合(Federación de Organismos de Radio y Televisión Autonómicos:FORTA)を組織し、放送権の共同購入、番組の共同制作、外国通信社からの共同受信と分配、各局の番組素材交換等を行っている。また、FORTAは、2021年7月にRTVEと国内欧州、国際市場における地方公営放送の位置付け強化、番組制作・財源の安定化に関する協力協定を締結している。
衛星放送加入者数は、2021年末の31万3,400から24万6,700に減少した。
テレフォニカが有料放送「Movistar+」を提供している。同社はIPTV「Movistar」を提供していたが、2015年4月に衛星放送「Canal+」を買収し、7月に名称を「Movistar+」とした。
ケーブルテレビは、1996年に事業免許が交付されて放送が開始された。ケーブルテレビ加入者は、2021年末の121万4,500から2022年末の1149万9,000に減少している。最大手事業者はボーダフォンTV(Vodafone TV(旧オノ))で、サービス加入者数は、2020年末現在、約161万。
そのほかOTT(Over The Top)コンテンツ・プラットフォーム・サービス(アマゾン・プライム・ビデオ(Amazon Prime Video)、Netflix、Disney+等)も成長を見せており、2022年末加入者は13.5%増加し、2150万に達している。
Corporación de Radio y Televisión Española
Tel. | +34 91 581 7000 |
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URL | https://www.rtve.es/ |
幹部 | Elena Sanchez Caballero(会長/President) |
RNE(ラジオ)、TVE(テレビ)、TVE Internacional(テレビ国際放送)等を統括している。政府補助金と広告収入を財源としていたが、1990年に商業放送が開始されたことで広告収入が減少し赤字化した。累積赤字が増大する中、2006年、国有ラジオ・テレビ法が成立、抜本的改革が行われ、政府所有の株式会社「RTVEコーポレーション」になった。9名の経営委員によって経営されている。職員数は約6,000人である。
(通信/Ⅰ-1の項参照)
一般電気通信法第60条により、MINECOが、周波数の管理、利用計画の策定、使用権の付与、違法電波の検出、衛星軌道の割当管理、無線機器規格の指定及び適合性評価、市場監視、電波利用料の管理等を所掌している。
2014年5月9日に改正された一般電気通信法(Ley 9/2014, de 9 de mayo, General de Telecomunicaciones)の趣旨に合わせて、無線通信法が2017年に改訂され、「2017年3月8日法律第123号(REGLAMENTO SOBRE EL USO DEL DOMINIO PÚBLICO RADIOELÉCTRICO)」が施行された。
同法第37条において公共の周波数を排他的に利用する場合、及び限られた周波数に対し需要が超えている場合にオークションにより割り当てることとしている。
一般電気通信法第67条で認められている周波数の2次取引市場の詳細については、無線通信法第6章に規定されている。
また、同条第2項では、必要と認められる場合、免許の発行数を制限できることを定めている。
2002年5月、GSM900の周波数オークションを実施し、既存の4社(テレフォニカ、オレンジ・スペイン(当時Retevision Movil)、ボーダフォン・スペイン、Masmovil Group(当時Xfera Moviles))が獲得した。
2011年6月、4Gを使途とする800MHz帯、900MHz帯、2.6GHz帯における計270MHz帯の58ブロックでオークションが実施された。2016年1月に行われたオークションでは、オレンジ・スペインが2600MHz帯で10の地域ブロックと3.5GHz帯20MHz、テレフォニカが2600MHz帯の残り2地域のブロックを獲得した。
2018年に3.6-3.8GHz帯を対象とした5G用オークションが実施され、7月に終了した。入札総額は4億3,760万EURで、ボーダフォン・スペインが1億9,810万EURで5MHz幅×18ブロックを取得したほか、オレンジ・スペインが1億3,210万EURで5MHz幅×12ブロック、テレフォニカが1億740万EURで5MHz幅×10ブロックを落札した。免許期間はいずれも20年。
2021年7月、700MHz帯(703-733MHz/758-788MHz)を対象とした5Gオークションが実施され、ボーダフォン・スペインが10MHz幅×2を3億5,000万EURで、テレフォニカが10MHz幅×2を3億1,008万9,000EURで、オレンジ・スペインが5MHz幅×2の二つの周波数ブロックを計1億7,500万EURで落札した。免許期間は20年間で、更新可能とされている。なお、下り周波数のみで738-753MHz(5MHz幅)がオークション対象となったが、入札が無かった。
26GHz帯の割当てについては、2021年12月に、MINECOが、26GHz帯を5Gに割り当てるための新周波数分配表を承認し、2022年9月に26GHz帯の5Gオークションに関するパブリック・コンサルテーションを実施。同年11月に5G用26GHz帯周波数オークション要件を発表した。全国免許(concession)に25.1-27.5GHz、地域免許に24.7-25.1GHzを分配するというもので、各免許に200MHz幅を割り当てることとした。全国免許は計12件(計2400MHz幅)とし、地方免許については、17の自治州とアフリカ地域の自治都市セウタ(Ceuta)とメリーリャ(Melilla)を対象に各2件ずつ、計38件(各地域400MHz幅)の免許が付与される。免許期間はいずれも20年間で、更に20年の延長が可能である。オークションは12月21日に実施され、全国免許は、テレフォニカ、ボーダフォン・スペイン、オレンジ・スペインの3事業者が計9免許、計1800MHz幅を落札し、地域免許についてはカスティーリャ・イ・レオン州(Castilla y León)の地域免許の200MHz幅を現地事業者Globe Operator Telecomが落札した。落札総額は、3,620万EUR。なお、同省は、同帯域で、通信事業者以外の機関による独自の5Gネットワーク構築(日本のローカル5Gに相当)の導入を検討しており、CNMCが、10月にこの方針を認める意見書を提出している。
さらに2023年5月、同省は既存の携帯電話免許の延長に関するパブリックコンサルテーションを開始した。一般電気通信法(2022年6月28日付)に基づき、既存の免許期間は合計40年まで延長できる。規制当局は、提案されている免許の延長はより大きな安定性を提供し、免許取得者がネットワーク投資を計画する際に役立つと指摘している。
「2017年3月8日法律第123号」第8章に基づき、無線局をはじめとした電波監視を行っている。電波監視設備としては、固定局、リモート局、移動局、携帯局が整備されている。
電波利用料は、一般電気通信法第71条及びその付属1において規定されており、対象となる周波数の利用状況、サービスの種類、帯域幅、使用される技術、経済的価値等に応じて決定される。
スペインにおける電磁界公衆ばく露の基準に関しては、2001年9月に、「欧州理事会勧告1999/519/EC」に基づき、「勅令1066/2001:公衆領域における健康防護のための電波放射制限と測定に関する規則」を制定している。また、これを通信事業者に適用するために、2002年1月に、「政令CTE/23/2002」を制定している。
また、2016年5月6日に、EUの無線機器指令2014/53/EUに対応してRoyal Decree 186/2016を、電磁両立性指令2014/30/EUに対応してRoyal Decree 188/2016が制定されている。
MINECOが、CEPTやITUによる周波数分配に従って、国内における周波数分配のため、「国家周波数分配計画(Cuadro Nacional de Atribución de Frecuencias:CNAF)」を策定している。最新版は「Orden ETD/1449/2021」とし2021年12月に発表されている。また、「Orden ETD/625/2023」にて、周波数の分配内容が修正されている。
https://www.boe.es/buscar/doc.php?id=BOE-A-2021-21346