スペイン王国(Kingdom of Spain)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 デジタルトランスフォーメーション・公務省(MTDFP)

Ministry of Digital Transformation and Public Function

URL https://digital.gob.es/index.html
所在地 Calle del Mármol 2 – Parque empresarial Río 55, Madrid, SPAIN
幹部 Óscar López Águeda(大臣/Minister)
所掌事務

2020年1月12日付「Royal Decree 2/2020」により、経済ビジネス支援、デジタル化・AI、電気通信・デジタルインフラの各分野を所管する部門を統合した経済デジタルトランスフォーメーション省(MINECO)が設立された。その後、同月28日付「Royal Decree 139/2020」により同省の内部組織の構成を規定された。2023年12月、内閣改造に伴い、財務省の公務管理機能が移管され、名称もデジタルトランスフォーメーション・公務省に変更された。また、この内閣改造に伴い、MINECOは経済商業企業省(Ministry of Economy, Trade and Enterprise)に再編された。MTDFPの主な所掌事項は以下のとおり。

2 国家市場競争委員会(CNMC)

The National Commission on Markets and Competition

URL https://www.cnmc.es/
所在地 Calle Alcala 47 Madrid E28014, SPAIN
幹部 Cani Fernández Vicién(委員長/President)
所掌事務

2013年6月、国会は「2013年6月4日の法律第3号(Act 3/2013)」を採択し、国家競争委員会(National Competition Commission:CNC)や電気通信市場委員会(Telecommunications Market Commission:CMT)を統合した新しい規制機関として国家市場競争委員会(CNMC)を設立することを決定した。CNMCは電気通信分野やエネルギー、競争環境等の規制監督機関として2013年10月に業務を開始した。電気通信分野については1996年に発足したCMTの業務(「2003年11月3日の法律第32号(Law 32/2003)」に基づく)を引き継いだ。主な所掌事項は以下のとおり。

Ⅱ 法令

1 2014年5月9日の法律第9号(General Telecommunications Law 9/2014 of 9 may)

EUの「2002年通信規制パッケージ」を反映した「2003年11月3日の法律第32号(一般電気通信法)」が制定され、2014年に、将来のデジタル経済促進や電気通信関連事業者の更なるサービス展開機会を提供することを目的に同法を改正し、「2014年一般電気通信法」として同年5月より施行している。規制機関の役割として、事業者の登録制度、相互接続、ユニバーサルサービス、番号計画、市場において顕著な支配力を有する(Significant Market Power:SMP)事業者等に関する総則的規定を設けている。2022年6月には、EUの欧州電子通信コード(European Electronic Communications Code:EECC)の国内法制化のための改正が行われ、100Mbps速度のインターネットを国民の100%に提供する事業者義務等が規定されている。同法は、以下の八つの部(Title)で構成されている(全84条)。

なお、EU「デジタルサービス法(Digital Service Act:DSA)」の国内法制化作業が進められており、2025年7月、「2014年一般電気通信法」改正法案が公表された。主な内容は以下のとおり。

2 情報社会サービス・電子商取引法(Law on the Information Society Services and Electronic Commerce

正式名称は「情報社会サービス及び電子商取引に関する2002年7月11日の法律第34号(Law 34/2002)」。2002年7月、EUの「電子商取引指令(2000/31/EC)」の国内法制化措置として制定された。インターネット・電子商取引関連法規として、電子商取引への物理的商取引と同等の法的枠組の付与、電子認証の有効性、スパムメールの大量送信の禁止、有害コンテンツの排除とISPの責任範囲等の規定のほか、ISPに対し利用者の個人情報を1年以上保存する義務を課している。

Ⅲ 政策動向

1 免許・認可制度

「2014年一般電気通信法」において、免許・認可制度が変更された。EUの認可指令に従い免許制から一般認可制に移行するためのもので、国内あるいはEU加盟国の事業者であって、電子通信網の開発あるいは電子通信サービスの提供を希望する者は、CNMCに申請書を提出し、事業者登録の認可を得てサービスを提供することとなった。CNMCは15日以内に審査を実施し、審査を通過した事業者を登録する(第2部第6条、第7条)。ただし、周波数を利用して通信サービスを提供する事業者は、周波数利用に関する免許取得が要件とされている(第5部第60条~第62条)。

2 競争促進政策

(1)相互接続

「2014年一般電気通信法」によれば、公衆電子通信網事業者は、自らの電子通信網を、他の公衆電子通信網事業者の要請に応じて相互接続する交渉に応じるよう義務付けられている。事業者間の相互接続に関する制約は、国内・国外事業者にかかわらず存在しないが、協定は無差別・透明・公平な条件の下に行われなければならず、事業者は相互に情報公開の義務を負う。紛争の際にはCNMCが介入する。電子通信網の正常な機能を維持するうえで必要と認められる場合には、CNMCは提供される電子通信網に関して技術的条件を課すことができる。また、CNMCは最終利用者の利便のため、特定の事業者を指定して相互接続を命じることもできる(第12条、第14条)。

また、CNMCによりSMP事業者に指定された公衆電子通信網事業者には、相互接続を要求するすべての事業者に対し、同一の条件で相互接続を提供する義務が課される。SMP事業者は、相互接続契約条件を公表し、料金設定が実際の費用に基づいたものであることを証明しなければならない(第14条)。

(2)移動体通信事業者の統合承認

2022年7月、移動体通信2位であった旧オレンジ・スペイン(Orange Spain)と同4位の旧マスモビル(MasMovil)は事業統合し、新会社を設立することで合意を発表。2023年4月より欧州委員会が同事業統合による市場競争の阻害の可能性を調査し、2024年2月に同事業統を承認したため、スペイン政府もこれに従い承認した。当初、欧州委員会は、新電子通信事業者による通信サービスの市場競争後退に関して懸念を示していたが、MVNOのDigiスペイン(Digi Spain)が、上記2事業者の統合により余剰となる周波数帯域を引き継ぎ、移動体通信市場への新規参入の条件を整えたため、欧州委員会は、市場競争の阻害への懸念が払しょくされると判断し、事業統合が承認された。また、この承認によりDigiスペインは周波数免許を取得し、移動体通信市場への参入を果たした。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサルサービス

「2014年一般電気通信法」の第25条が、ユニバーサルサービスに関して規定しており、「一定の品質を有し、地理的条件にかかわらず、利用可能な価格で、すべての利用者が利用できる、一連の定義された電子通信サービス」としている。主なユニバーサルサービスの対象は、①採算が見込めない地域における固定電話・1Mbps以上の固定インターネット接続、②身障者への便宜サービス、③特定の社会層(低所得層等)への特別料金での通信接続がユニバーサルサービスの対象とされた。ユニバーサルサービス事業者については、過去の業績を基に通信所管省が指定することとされており、2025年1月にテレフォニカ(Telefonica)を2025~26年のユニバーサルサービス事業者に指定することが決定されている。

また、ユニバーサルサービス提供に要する資金調達のため、CNMCの管理下に、国家ユニバーサル電気通信サービス基金(National Universal Telecommunications Service Fund)が設けられ、年間売上100万EUR以上の電子通信事業者が、ユニバーサルサービス基金に拠出する形で負担することが義務化されている。CNMCが2025年5月に公表したユニバーサルサービス決済文書では、2022年度のユニバーサルサービスの費用は総額約538万EUR。前年度の約864万EURよりも減少しており、デジタルディバイド政策によるサービス未提供地域の減少等により費用総額は縮小傾向にある。2021年度の費用負担について、CNMCは2025年4月に、国内電子通信事業者20社に対し各負担額を割り当てる決定を下しており、2022年度のユニバーサルサービス費用の各電子通信事業者の負担額については、2026年第2四半期に決定されることが見込まれている。

(2)ブロードバンド整備計画

2021年6月、旧MINECO(現MTDFP)は2025年間までに国内完全ブローバンド化を目指す「デジタルインフラのユニバーサル化プログラム(2021~25年)(Universalisation of Digital Infrastructures for Cohesion Programme(UNICO 2021-25))」を発表した。特に、ルーラル地域のデジタルディバイドの是正が課題とされており、政府は、以下のルーラルブロードバンド支援策を進めている。

これらのルーラル支援施策により、2025年6月に公表された「ブロードバンドカバレッジ報告書(Broadband Coverage Report)」では、固定ブロードバンドで、1Gbps以上のルーラルブロードバンドの世帯カバレッジが83.92%(前年79.07%)となり、また、ルーラル地域における2024年6月現在の5Gの人口カバレッジは80.01%(前年68.93%)となったと報告されている。

4 ICT政策

(1)スペイン・デジタル2026

旧MINECOは、2020年11月に「スペイン・デジタル2025」を、また2022年7月にこれを更新した「スペイン・デジタル2026」を公表した。デジタル接続の普及、5G展開、サイバーセキュリティの高度化、行政分野及び中小企業等のビジネス分野のデジタル化、オーディオ・ビジュアル産業のハブ化、データ経済・AI技術の普及、市民のデジタル権利の保障を進めていくこととしている。同計画は以下の10の戦略項目で構成され、50の施策が実施される。

(2)5Gインフラ構築・技術開発支援

旧MINECOは、5G・6G技術の研究開発プロジェクトを進めており、2021年11月にEUの研究プログラム「Horizon2020」における5G PPP(5G Infrastructure Public Private Partnership)と連携し、国内にある13の大学研究機関、公共研究機関が進める115の研究プロジェクトを対象にした資金援助を発表した。技術開発のほか、同分野の専門技術者の確保・育成も図るとしている。予算規模は9,520万EUR。そのほか、2022年8月には、主要経済部門における5Gアプリケーション開発支援及び5Gアドバンスド(5G+)・6Gの研究開発支援プログラム「UNICO-Advanced 5G & 6G R&D」を発表した。また、2023年10月に、旧MINECOは、5Gアプリケーション及びサービスの実験的開発のプロジェクトの実施を目的とした「UNICO 5G Sectorial 2023 Phase I」により七つのプロジェクトに対して950万EURを助成し、2024年4月にはPhase IIにより九つのプロジェクトに対し610万EURを助成することを発表した。

(3)AI政策

2024年5月、主要閣僚で構成される閣僚理事会(Council of Ministers)は「AI戦略2024」を採択した。「スペイン・デジタル2026」における国家AI戦略の強化・拡大を図るため2024~2025年に以下の施策を実施するとした。予算は15億EUR。

2025年7月には、戦略産業及び医療分野へのAI導入に関する助成プログラムに1億8,000万EURを拠出することを発表した。このうち、AIによる国内戦略産業の高度化を図る「RedIAプログラム」には1億3,000万EURが、医療分野へのAI導入により国民の健康の維持・増進を図る「RedIA Saludプログラム」には5,000万EURが割り当てられる。MTDFP傘下のデジタル推進企業Red.esの所管の下、以下の条件で国内企業から申請を受け付け、助成対象プロジェクトを選定する。

また、EU「AI法(Artificial Intelligence Act)」の国内法制化を進めており、2025年3月に国内AI法案が公表された。AIの倫理性・包摂性を保証するためのAIガバナンスを確立することを目的に、AIシステムをリスク別に「禁止されるAIシステム」「高リスクAIシステム」「低リスクAIシステム」「最小リスクAIシステム」に分類し、それぞれの義務・罰則を明文化している。また、国家データ保護庁(生体認証)、法務評議会(司法分野)、中央選挙管理委員会(民主主義関連)、AESIA(その他)が監視業務を所管することの規定を設けている。

(4)オンラインの子ども保護

2024年6月、閣僚理事会はデジタル環境における子ども・青少年の保護に関する基本法案を承認した。デジタル環境の安全性の確保に向けた公共機関・民間企業の義務や刑法適用範囲の拡大等を法的に規定したもの。主な内容は以下のとおり。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

無線機器の基準認証については、EUの「R&TTE指令(1999/5/EC)」に準じて「2022年一般電気通信法」により定められており、MTDFPが所掌している。

Ⅴ 事業の現状

電気通信市場は、1998年1月に完全自由化された。旧独占事業者テレフォニカのほか、ボーダフォン・スペイン(Vodafone Spain)、MasOrange、Digiスペインが事業を展開している。

固定電話普及率は年々減少しており、市場ではテレフォニカが強力な市場支配力を有するが、そのシェアは年々低下している。

VoIP加入数は増加を続け、2014年以降はVoIP加入数がPSTN回線加入数を上回っている。

2 移動体通信

移動電話加入率は2005年に100%を超え、2024年は130.3%である。主な事業者はテレフォニカ(ブランド名:モビスター(Movistar))、ボーダフォン・スペイン、MasOrangeである。市場シェアは、MasOrangeが国内最大となり、その他2事業者の市場シェアは拮抗している。3社ともLTEサービスを提供し、CNMCによれば、LTE基地局数は、2024年末現在、6万3,862でほぼ国内全域をカバーしている。

5Gについては3社がサービスを提供している。うち、ボーダフォン・スペインが2019年に15都市を対象に国内初の5Gサービスを開始し、次いで2020年9月にテレフォニカ、MasOrange(当時:オレンジ・スペイン及びマスモビル)が5Gサービスを開始している。CNMCによれば、国内における5G基地局数は2024年末現在3万1,007基で、前年比30.8%増、人口カバレッジは2024年6月現在95.76%である。

3 インターネット

CNMCによれば、2025年6月末現在、固定ブロードバンド回線総数は1,918万回線で、テレフォニカ、MasOrange、ボーダフォン・スペインがブロードバンド回線全体の82.2%を占める。また、光ファイバ(FTTH)回線数は1,730万回線で90.2%を占める。

4 新成長サービス

IPTVサービス

CNMCによれば、IPTVサービスの加入数は、2023年末の577万から2024年末の623万に増加しており、有料テレビ加入全体の約86%を占め、衛星放送、ケーブルテレビを抜き、国内最大のプラットフォームになっている。

Ⅵ 運営体

1 テレフォニカ

Telefonica

Tel. +34 91 482 38 00
URL

https://www.telefonica.com/en/

https://www.movistar.es/(移動体通信)

幹部 José María Álvarez-Pallete López(会長兼最高経営責任者/Chairman and CEO)
概要

旧国営の国内最大の電気通信事業者である。1997年2月、政府保有株式の民間放出により、完全民営化を果たした。

テレフォニカの年次報告書によれば、同社が提供するサービスの国内加入数は、2024年末現在、固定電話777万、移動電話2,105万、ブロードバンド602万である。

また、国外では、欧州・ブラジルのほか、Telefónica Hispam傘下に中南米地域のスペイン語圏8か国(アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア、メキシコ、エクアドル、ベネズエラ、ウルグアイ)に通信子会社を有するグローバルメガキャリアとして海外通信事業を展開している。全世界加入数は、2024年末現在、3億8,995万加入(固定電話2,439万加入、移動電話3億27万加入、ブロードバンド2,740万加入、有料テレビ1,011万加入等)である。また、2024年度のテレフォニカグループ全体の売上額413億1,500万EURに対し、スペインが約31%、ドイツが約21%、ブラジルが約23%を占め、Telefónica Hispam傘下の中南米諸国の売上シェアは22%となっている。

現在、経営資源を、欧州・ブラジルに集中し、中南米のスペイン語圏から事業を撤退する経営戦略を進めている。2025年に入り、アルゼンチン、コロンビア、ペルー、ウルグアイ、エクアドルの現地子会社の売却が公表されており、テレフォニカの中南米地域からの事業撤退が加速化している。

2 その他の主な事業者

主要事業者 URL
MasOrange https://masorange.es/
ボーダフォン・スペイン https://www.vodafone.es/

MasOrangeは、旧オレンジ・スペインと旧マスモビルが事業統合して設立された新事業者。2022年7月に事業統合計画に署名し、2024年4月に両社が50%ずつ出資する合弁会社として正式に設立された。その後、旧オレンジ・スペインの親会社である仏オレンジグループ(Orange Group)がMasOrangeの完全子会社化の意向を表明し、2025年12月に、旧マスモビルの出資会社Lorcaが有するMasOrange株式の残り50%を42億5,000万EURで買収することで最終合意している。また、ボーダフォン・スペインは2023年10月に英国投資会社Zegonaへの売却を発表。スペイン政府による承認を経て、2024年5月にZegonaが50億EURで完全買収した。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 デジタルトランスフォーメーション・公務省(MTDFP)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

2 国家市場競争委員会(CNMC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

Ⅱ 法令

2010年3月31日の法律第7号(Law no. 7 / 2010 of 31 March

従来の放送関連法規を統合した新放送法「視聴覚コミュニケーション一般法」として2010年5月に施行された。テレビ広告に関する規制、未成年者保護のためのコンテンツ規制、放送事業者によるスペイン及び欧州の映画産業への投資、商業放送局の合併案件等について規定している。

EU「視聴覚メディアサービス(Audiovisual Media Service:AVMS)指令」の国内法制化に伴い、改正法が7月9日に施行された。これまでの規制対象を、テレビ放送事業者からオンライン上で視聴覚配信サービスを提供する事業者に適用範囲が拡大された。また、配信プラットフォーム事業者は、配信サービスの透明性の向上を図るため事業者情報の政府登録が義務付けられたほか、未成年ユーザの視聴に対し、コンテンツの年齢レーティングの表示、年齢確認システムの設定、広告コンテンツが含まれる場合の事前通知等が義務付けられた。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

首相府が免許付与を行うほか、自治政府も地域公営放送の免許を付与することが認められている。「2010年3月31日の法律第7号」では、全国放送の免許は中央政府の所管とし、一つまたは複数の自治体(municipios)をまたぐ地域放送及び島しょ部の放送は地方免許によることを規定している(第22条)。

2 公共放送関連政策

公共放送の財源

テレビ・ラジオとも受信料制度はない。公共放送のスペイン放送協会(Corporación de Radio y Televisión Española:RTVE)は、広告収入と国庫補助金を財源としていたが、2009年7月、国会でRTVEの広告放送の全面廃止を盛り込んだ法律が可決、2010年1月よりRTVEの広告放送は廃止された。代わりに、商業放送事業者・電子通信事業者が、年間売上高の一部(0.9~3%)をRTVEの財源として拠出することになった。国からの補助は、従来の国庫補助金に加え、電波税の8割(現在は10割)がRTVEの財源に充当されることになった。

3 コンテンツ規制

(1)番組規制

「視聴覚コミュニケーション一般法」は、未成年者の健全な発育を阻害する番組の規制を打ち出している。ポルノ・暴力を含む番組が排除され、賭け事等を含む番組は深夜の時間帯に放送が限定される等の規制が盛り込まれている。また、欧州制作コンテンツの振興について、同法2022年改正に伴い、テレビ事業者に対し年間放送時間の51%を欧州で制作されたコンテンツの放送に割り当て、更にそのうち50%をスペイン語または地方自治体の公用語を用いたコンテンツの放送に割り当てることが定められた。更に未成年者の保護を強化し、規制対象を動画コンテンツにも拡大したほか、海外に拠点を置く事業者が国内で事業を展開する場合もこの対象に含まれることになった。

(2)広告規制

番組広報も含め、1時間当たり12分までと規定されていたが、「2010年3月31日の法律第7号」の改正法では、午前6時~午後6時に放送される番組については最長144分、午後6時~深夜0時の番組については、最長72分の範囲で柔軟に放送できるようになった。

4 地上デジタルテレビ(DTT)

DTTは、2005年11月に20局で放送が開始された。2008年9月、政府は「DTT移行全国計画」を決定し、全国を73地域に分割して段階的にアナログ停波を進め、2010年4月2日にアナログ放送終了とデジタル放送への移行を完了した。

2010年に一部の放送免許が一般入札を経ずに商業放送事業者らに割り当てられていたことに対し、2012年、最高裁判所は免許を無効とする判断を示した。これを受け、2014年5月までに商業放送局4社に付与された9件のチャンネルが廃止された。政府は改めて2015年4月に事業者の募集・入札を実施し、10月に6事業者に免許を付与した。

DTTへ割り当てられた700MHz帯(694-790MHz)の5G利用について、2020年10月に周波数移行が完了し、地方公共放送テレビガルシア(Televisión de Galicia)が2021年7月にテレフォニカの5G網を使った放送を実施している。

また、RTVEは2024年1月、同年2月から超高精細(UHD)規格によるDTTを開始し、これに伴い、サイマルキャストで提供されてきた高精細放送(HDTV)と標準解像放送(SDTV)のうちSDTVを停止することを発表した。

また、政府は2025年10月、DVB-T2規格の新たなDTT免許を入札により交付する意向を明らかにした。2025年3月に閣僚評議会で採択された「国家地上デジタル放送計画」に基づくもので、DVB-T2無料放送を全国規模で提供する免許1件を交付し、コンテンツの多様化とサービス品質向上を図るとしている。免許期間は15年間で、同期間の更新が可能とされている。免許申請期間は2025年10月20日から11月20日までとし、12か月以内に免許を付与する予定である。

そのほか、政府は2025年10月にデジタル音声放送「DAB+」の導入を義務化する新規則案を公表した。DAB+の導入を全国・ローカルの両レベルで義務化し、DAB+の国内普及を図るとともに、緊急情報を音声・テキストで提供する「自動安全アラート(ASA)」システムの普及促進や欧州地域におけるDAB+対応ラジオの車載義務へ対応するとしている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

公共放送RTVE傘下のスペイン・ナショナル・ラジオ(Radio Nacional de España:RNE)が4系統の全国放送及び1系統のカタルーニャ自治州向け放送を実施している。そのほか多くの地方自治体と商業放送事業者が全国放送・地方放送を実施しており、大手ラジオ局としてメディア企業Prisa傘下のSER(Sociedad Española de Radiodifusión)、キリスト教系ラジオ局COPE(Cadena de Ondas Populares Españolas)、テレビ局Atresmedia傘下のOnda Ceroがある。また国際放送は、RTVEが「REE」の名称で、7言語で衛星・インターネット・短波で放送・配信している。

デジタル放送については、1998年4月にマドリード、バルセロナ、バレンシアでDAB方式のデジタルラジオ放送が始まった。2024年2月にRNEが主要6都市でDAB+サービス開始し、その後1年間でサービス地域が16都市に拡大されている。

2 テレビ

公共放送については、RTVE傘下のTVE(Televisión Española)が5系統の放送を行う。このうち、「La 1」(総合編成)は、最高視聴率を得ていたが、近年商業放送各局のシェアが増加し、視聴率が低下している。全国放送のほかに、地方局制作の独自番組を放送している。また、「TVE Internacional」という国際放送も放映している。

商業放送については、Mediaset España、Atresmedia(旧Antena 3)等が放送を行っている。最大の商業放送局でTelecinco社を所有していたMediaset Españaは、2010年12月にTV Cuatroを吸収合併した。無料DTT放送9系統を全国向けに放送している。そのほか、AtresmediaがDTT放送8系統を全国向けに放送し、また、南北アメリカ大陸や英国向けに有料の国際放送を行っている。

地方公営放送については、スペイン17自治州のうち13州が公営放送機関を持ち、地域放送を行っている。このうち12州の放送機関が自治州放送機構連合(Federación de Organismos de Radio y Televisión Autonómicos:FORTA)を組織し、放送権の共同購入、番組の共同制作、外国通信社からの共同受信と分配、各局の番組素材交換等を行っている。また、FORTAは、2021年7月にRTVEと国内、欧州、国際市場における地方公営放送の位置付け強化、番組制作・財源の安定化に関する協力協定を締結している。

3 衛星放送・ケーブルテレビ

衛星放送加入数は、2023年末の18万9,000から2024年末の15万1,700に減少した。

テレフォニカが有料放送「Movistar+」を提供している。同社はIPTV「Movistar」を提供していたが、2015年4月に衛星放送「Canal+」を買収し、7月に名称を「Movistar+」とした。

ケーブルテレビは、1996年に事業免許が交付されて放送が開始された。ケーブルテレビ加入は、2023年末の89万5,500から2024年末の82万9,800に減少している。

そのほかOTTコンテンツプラットフォームサービスも成長を見せており、加入数は2023年末の2,280万から2024年末の2,710万に達している。このうち2,310万加入(85.2%)は国際プラットフォーム事業者(アマゾン・プライム・ビデオ(Amazon Prime Video)、ネットフリックス(Netflix)、Disney+、MAX、SkyShowtime)が占めている。

また、公共放送のRTVEは、2013年9月、テレビ放送とインターネットを融合したハイブリッドブロードバンド放送(Hybrid broadcast broadband TV:HbbTV)サービス「Botón Rojo」を開始した。ニュース等をテレビ画面からインターネット経由で視聴できるほか、オンデマンドサービスやキャッチアップサービスも利用できる。

Ⅴ 運営体

スペイン放送協会(RTVE)

Corporación de Radio y Televisión Española

Tel. +34 91 581 7000
URL https://www.rtve.es/
幹部 José Pablo López(会長/President)
概要

RNE(ラジオ)、TVE(テレビ)、TVE Internacional(テレビ国際放送)等を統括している。政府補助金と広告収入を財源としていたが、1990年に商業放送が開始されたことで広告収入が減少し赤字化した。累積赤字が増大する中、2006年、国有ラジオ・テレビ法が成立、抜本的改革が行われ、政府所有の株式会社RTVEコーポレーションになった。9名の経営委員によって経営されている。職員数は約6,000人である。

電波

Ⅰ 監督機関等

デジタルトランスフォーメーション・公務省(MTDFP)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

「2014年一般電気通信法」第60条により、周波数の管理、利用計画の策定、使用権の付与、違法電波の検出、衛星軌道の割当管理、無線機器規格の指定及び適合性評価、市場監視、周波数利用料の管理等を所掌している。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 無線局免許制度

2014年5月9日に改正された「一般電気通信法」の趣旨に合わせて、「公共ドメインの無線利用に関する2017年2月24日の規則第123号(Royal Decree 123/2017, of 24 February, approving the Regulation on the use of the public domain radio)」が施行された。

同規則第37条において公共の周波数を排他的に利用する場合、及び限られた周波数に対し需要が超えている場合にオークションにより割り当てることとしている。

「2014年一般電気通信法」第67条で認められている周波数の2次取引市場の詳細については、上記「規則第123号」第6章に規定されている。また、同条第2項では、必要と認められる場合、免許の発行数を制限できることを定めている。

2 周波数割当制度・電波再配分制度

5Gについて、2018年に3.6-3.8GHz帯を対象としたオークションが実施され、7月に終了した。ボーダフォン・スペインが5MHz幅×18ブロックを取得したほか、旧オレンジ・スペインが5MHz幅×12ブロック、テレフォニカが5MHz幅×10ブロックを落札した。免許期間はいずれも20年。

2021年7月、700MHz帯(703-733MHz/758-788MHz)を対象とした5Gオークションが実施され、ボーダフォン・スペインが10MHz幅×2を、テレフォニカが10MHz幅×2を、旧オレンジ・スペインが二つの周波数ブロック(各5MHz幅×2)を落札した。免許期間は20年間で、更新可能とされている。なお、下り周波数のみで738-753MHz(5MHz幅)がオークション対象となったが、入札がなかった。

26GHz帯の割当てについては、2022年11月に5G用26GHz帯周波数オークション要件を発表した。全国免許(concession)に25.1-27.5GHz、地域免許に24.7-25.1GHzを分配するというもので、全国免許は計12件(計2400MHz幅)とし、地方免許については、17の自治州とアフリカ地域の自治都市セウタとメリーリャを対象に各2件ずつ、計38件(各地域400MHz幅)の免許を付与するとした。免許期間はいずれも20年間で、更に20年の延長が可能である。オークションは12月21日に実施され、全国免許は、テレフォニカ、ボーダフォン・スペイン、旧オレンジ・スペインの3事業者が計9免許、計1800MHz幅を落札し、地域免許についてはカスティーリャ・イ・レオン州の地域免許の200MHz幅を現地事業者Globe Operator Telecomが落札した。落札総額は、3,620万EUR。なお、旧MINECOは、同帯域で、移動体通信事業者以外の機関による独自の5G網構築(日本のローカル5Gに相当)の導入を検討しており、CNMCが、10月にこの方針を認める意見書を提出している。

3 電波監視制度

「2017年2月24日の規則第123号」第8章に基づき、無線局をはじめとした電波監視を行っている。電波監視設備としては、固定局、リモート局、移動局、携帯局が整備されている。

4 周波数利用料制度

周波数利用料は、「2014年一般電気通信法」第71条及びその付属1において規定されており、対象となる周波数の利用状況、サービスの種類、帯域幅、使用される技術、経済的価値等に応じて決定される。

5 電波の安全性に関する基準

スペインにおける電磁界公衆ばく露の基準に関しては、2001年9月に、「欧州理事会勧告1999/519/EC」に基づき、「Royal Decree1066/2001:公衆領域における健康防護のための電波放射制限と測定に関する規則」を制定している。また、これを電子通信事業者に適用するために、2002年1月に、「Order CTE/23/2002」を制定している。

また、2016年5月6日に、EUの「無線機器指令2014/53/EU」に対応して「Royal Decree186/2016」を、「電磁両立性指令2014/30/EU」に対応して「Royal Decree 188/2016」が制定されている。

Ⅲ 周波数分配状況

MTDFPが、欧州郵便電気通信主管庁会議(CEPT)やITUによる周波数分配に従って、国内における周波数分配のため、「国家周波数分配計画(Cuadro Nacional de Atribución de Frecuencias:CNAF)」を策定している。最新版は「Orden ETD/1449/2021」とし2021年12月に発表されている。また、「Orden ETD/625/2023」にて、周波数の分配内容が一部改正されている。