タイ王国(Kingdom of Thailand)
通信
Ⅰ 監督機関等
1 デジタル経済社会省(MDES)
Ministry of Digital Economy and Society
| Tel. | +66 2086657 |
|---|---|
| URL | https://www.mdes.go.th/ |
| 所在地 | 120 Moo 3, Prathunam Bldg, 6-9 floors, Government Complex, Thanon Chaeng Watthana, Thung Song Hong, Khet Laksi, 10210, THAILAND |
| 幹部 | Chaichanok Chidchob(大臣/Minister) |
所掌事務
2016年9月、省庁再編に伴い設立された。前身である情報通信技術省(Ministry of Information and Communications Technology:MICT)から概ねすべての部局と権限を引き継ぎ、以下を設立目的とする。
- デジタル分野における国家計画・政策・規制の提案・管理・評価
- 国家経済社会のための電気通信網の開発と管理
- 国家競争力の強化、生活水準の向上に資するデジタル人材育成を含むデジタル技術の利活用・イノベーション・研究開発の振興と支援
- デジタル政府実現に向けた政府機関によるデジタル技術利活用の振興と支援
同省は、通信、放送、電子取引、データプライバシー、コンピュータ犯罪、インターネットコンテンツを所掌する。また、所掌業務を補完する外局として電子取引開発庁(Electronic Transactions Development Agency:ETDA)、デジタル経済振興庁(Digital Economy Promotion Agency:DEPA)を有するほか、国有通信事業者National Telecom(NT)(Ⅲ-2(1)の項参照)、タイ郵便(Thailand Post)も同省の所管である。
2 国家放送通信委員会(NBTC)
National Broadcasting and Telecommunications Commission
| Tel. | +66 2670 8888 |
|---|---|
| URL | https://www.nbtc.go.th/ |
| 所在地 | 87 Phaholythin 8 (Soi Sailom), Samsen Nai, Phayathai, Bangkok 10400, THAILAND |
| 幹部 | Sarana Boonbaichaiyapruck (委員長/Chairman) |
所掌事務
NBTCの前身である国家通信委員会(National Telecommunications Commission:NTC)は「1997年タイ王国憲法」第40条を受けて2000年3月に公布された「NTC-NBC法」に基づき、2004年10月に設立、同年11月1日より業務を開始した。2010年12月には、通信事業と放送事業を監督するNBTCの設置を規定する法律「周波数割当及び放送・電気通信規制のための組織に関する法律(NBTC法)」(Ⅱ-1の項参照)が施行され、2011年9月にはNBTCの委員が選出された。NBTCの主な所掌事務は以下のとおりである。
- 政策立案及び電気通信部門のマスタープランの策定
- 周波数の利用免許付与及び規制
- 電気通信事業の免許付与及び規制
- 電気通信サービスのための標準化と技術仕様の決定
- 相互接続の規則及び手続の規定の策定
- 消費者保護の規則と手続の規定の策定
- 公正で自由な競争のための規定の策定
NBTCの委員数は従来11名であったが、2016年改正で7名となった。2022年に委員改選が実施され、2025年11月時点では定員7名が選出されている。
Ⅱ 法令
1 周波数割当及び放送・電気通信規制のための組織に関する法律(NBTC法)(Act on Organizations to Assign Radio-Frequency Spectrum and to Regulate Sound Broadcasting, Television Broadcasting and Telecommunication Services)
2010年12月施行。電気通信事業と放送事業を監督するNBTCの設置及び所掌業務等を規定している。NBTCの主な所掌業務には、当該分野での政策立案及び電気通信部門のマスタープランの策定、 周波数の利用免許付与及び規制、電気通信事業の免許付与及び規制、電気通信サービスのための標準化と技術仕様の決定、相互接続の規則及び手続の規定の策定、消費者保護の規則と手続の規定の策定、公正で自由な競争のための規定の策定等がある。
2017年6月及び2019年一部改正。2017年改正でNBTCが既存の免許人から未使用または利用率の悪い周波数を再割当のために回収し、免許人と他の関係者間で周波数を共有できるようなった。また、周波数需要が逼迫していなければ、周波数オークションは免除可能となった。
2 電気通信事業法(Telecommunications Business Act)
2001年施行、2006年及び2019年一部改正。事業免許、市場競争のセーフガード、相互接続、料金、ユニバーサルサービス、線路敷設権に関する手続の整備等、市場競争の環境整備について規定している。
3 憲法
2007年憲法第47条では、放送分野及び通信分野の規律、周波数監理を行う単一の機関の設置を規定している。その後、新憲法が2017年4月に施行された。2017年憲法第60条では、周波数と衛星軌道を国家資産と位置付け、同第274条でNBTCがこれらの国家資産の管理を行うと規定している。
Ⅲ 政策動向
1 免許制度
(1)事業免許
「電気通信事業法」第7条において、電気通信分野の事業免許は、以下の3種類が規定されている。同法によると、NTC(現NBTC)は各免許について免許取得条件を定め、「電気通信事業法」施行以前からの既存事業者には免許を発行しなければならないと規定している。なお、同法の各免許基準については、NBTCが詳細を規定する。
| 免許 | 定義 |
|---|---|
第1種 事業免許 |
|
第2種 事業免許 |
|
第3種 事業免許 |
|
(2)免許条件とユニバーサルサービス基金
2012年にユニバーサルサービス基金制度の改革が実施された。従来のユニバーサルサービス基金をNBTC基金(Broadcasting and Telecommunications Research and Development Fund for the Public Interest)へ移管し、用途についても高速インターネットに拡大するものとされた。任期3年の11名の基金管理委員会がユニバーサルサービス基金の管理を担うことになった。
2 競争促進政策
(1)新国有事業者National Telecom(NT)の設立
政府系事業の合理化のために、 国有事業者のTOTとCAT Telecomの統合と新事業者NTの設立が進められ、タイ内閣が2020年1月にこれを承認し、2021年1月7日に新会社として登記された。これに伴い、旧CAT Telecomと旧TOTの通信ネットワークインフラを含め新会社に移管された。なお、合併後の資産はMDESが保有する。
(2)事業者合併
総合通信事業者Trueと移動体通信事業者DTACの両社は2021年11月、事業統合で合意した。DTACの親会社ノルウェーのテレノール(Telenor)グループと、Trueの親会社であるタイのコングロマリットCPグループが新通信会社設立へ向けて覚書に署名したことによるもの。NBTCは、同事業者合併に関し、国内通信市場や業界への影響等について調査を実施し、2022年10月、両社の合併を認める決定を下した。両社の合併後、新事業者の加入者ベースの国内市場シェアは54%となり、これまでの第1位の事業者AISのシェア44%を超えるため、NBTCは、料金上限及び平均コストに基づく料金設定等の規制を行うこととしている。また、新会社が現在の事業者名を3年間使用することも合併承認の条件としている。2023年3月、両社は合併プロセスを完了し、新たに「True Corporation(True Corp)」が設立された。
また、2022年7月に、移動体通信大手AISが、ブロードバンド事業大手Triple T Broadband(TTTBB)の買収と、Jasmine Broadband Internet Infrastructure Fund(JASIF)への出資を表明し、2023年11月にNBTCが株式の取得の承認を決議し、AISは買収と出資が完了したことを公表した。これにより、AISの子会社であるAdvances Wireless Network(AWN)とTTTBBが合併した。
(3)外資規制
「電気通信事業法」では、第2種事業免許及び第3種事業免許の事業者の外資規制は、25%と規定されていた。2012年7月、NBTCは外資規制に関する規制の改正を承認し、電気通信事業における外資の優越の防止を図った。その一方で、国内の電気通信事業に対して、「電気通信事業法」及び「外国人事業法(Foreign Business Act)」を順守し、改めて外資の上限比率は50%未満という指針を示した。
(4)MVNO
2012年以降、NBTCはMVNO法により移動体通信事業者(MNO)に対しネットワーク容量の10%をMVNOに提供するよう義務付けるとともに、MVNOに対して以下の項目を順守することを要求している。
- すべてのMVNOは第1種事業免許(非設備ベース)に分類
- 標準的なMVNOの免許期間は5年かつ更新可能
- MVNOは毎年免許料を支払う。また、ユニバーサルサービス基金への支払いも行う
- MVNOは免許を取得してから1年以内にサービスを開始することが望ましい
また、NBTCは2024年1月に、MNO以外の通信サービスへのアクセス機会を拡大するために、1地域にMVNO 1社を設立する「One Region, One MVNO」体制を構築する方針を明らかにした。同方針に従い2026年にMVNO 4社が新設されるとしている。
3 情報通信基盤整備政策
MDESは、2023年9月、「電気通信開発の方向と利用に関する提案」を公表した。今後5年間(2024~2028年)の電気通信サービスや技術の提供・利用に関する将来予測(Foresight)を踏まえ、開発・活用の方向性について検討したもので、タイにおける通信・デジタル技術の活用を促進するエコシステムを構築するうえで必要となる政策目標として「あらゆる地域をカバーするブロードバンドネットワークの構築と利用を推進」「電気通信の発展に有益な情報開示の推進」「産業におけるデジタル技術の活用に適したインフラの整備」等が掲げられている。
4 ICT政策
(1)2024年デジタル経済政策
MDESは2024年1月、同年に展開するデジタル経済への取組骨子を発表した。経済成長の15~30%をデジタル化で担い、国民所得増加の基盤づくりを進めることを基本コンセプトに、以下の施策を実施するとしている。
- 政府機関のデータをクラウド化し、政府業務の冗長性・コスト高を改善する「クラウド・ファースト」政策の実施
- デジタル技術を活用した農業のスマート化により、準郡レベルの行政区域(Tambon)における雇用・所得の増加を図る「1 Tambon 1 Digital」(OTOD)プロジェクトの推進
- スマートシティ開発とデジタルスタートアップ企業の育成
- デジタル行政サービスの提供アプリ「One ID」の開発と国民への普及
(2)電子政府
デジタル政府開発庁(Digital Government Development Agency:DGA)は2022年9月に、「外国人向け次世代政府サービス・ロードマップ(Next of Digital Government Service for Foreigners Roadmap)」を策定した。2022~2027年の間に、観光客、外国人の労働者、ビジネス訪問者・投資家、長期滞在者が、入国から出国までに必要とする公的情報を提供するデジタルサービスプラットフォームを構築するもので、外国人滞在者に関係する31の公的機関サービスをワンストップで提供することを目指している。ビザ、観光、医療、公共安全、金融・税、ビジネスにかかわる既存サービスをデジタル技術で改善するほか、これら分野に新たに38種のサービスを追加し、単一ポータルで提供する。
また、2025年9月には、DGAがデジタル政府構築のためのブループリント「公共部門の新時代のデジタル基準」を公表し、デジタル処理・運用、政府情報管理、政府情報リンク・交換、基準監視に関する4分野のデジタル化に関する技術標準を策定することを発表している。
(3)生成AIガバナンス・ガイドライン
MDESとETDAは2024年10月、民間企業・公共機関を対象とした「生成AIガバナンス枠組ガイドライン(Generative AI Governance Guideline for Organizations)」を共同で発表した。政府は2022年に、AI利用に関する社会・倫理・法令面の制度整備、持続可能なAI開発の国内インフラ、AI分野の人材能力開発・AI教育の改善、AI技術・イノベーション開発、官民部門におけるAI利用の推進を盛り込んだ「タイ国家AI戦略・アクションプラン(2022~2027年)」を公表しており、これに基づく取組みとして同ガイドラインが策定された。主に以下の5事項を骨子に企業・公共機関による取組みの指針が示されている。
- 生成AIへの理解:AI利用の原則・将来展望に関する組織関係者の基本理解
- 生成AIの利益と限界:AIの実際のユースケースから得られる利益範囲の見定め
- 生成AIのリスク:生成AIの利用によるリスクの理解と組織管理
- 生成AIの利用:組織運営に合致する生成AIの利用形態
- 生成AIガバナンス:生成AIの利用とリスク管理の均衡確保
5 消費者保護政策
タイ政府はオンライン詐欺対策を強化するため、2023年11月に「アンチオンライン詐欺業務センター(AOC1441)」を開設した。政府報告によれば、2022年3月から2023年9月までの間のオンライン詐欺の被害状況は、被害件数33万件、被害総額450億THBと深刻さを増しており、オンライン犯罪の防止と被害の解決を図るために専門機関の設置に至ったとしている。同センターは、MDESの所管の下、以下の業務を実施する。
- 100回線のホットライン(1441番)の設置と24時間体制での市民からの通報・相談の受付け
- オンライン詐欺の犯罪に使用される銀行口座の凍結
- オンライン詐欺の被害状況の把握と問題解決
- 損害に対する補償処理
- デジタル技術による訴訟手続の効率性向上と他の政府機関とのデータ共有
また、2025年8月に、MDESはソーシャルメディア上のフェイクニュース対策として「国家アンチフェイクニュース・センター」の設置を発表した。政府は、2019年から2025年7月までに約11億8,800万件のオンライン情報をスクリーニングしているが、近年、社会的影響を強めているソーシャルメディア上の情報を24時間体制で監視し、フェイクニュースのブロッキングを行うほか、フェイクニュースの影響や市民保護に関する情報を提供する等の啓発活動を実施する。
Ⅳ 関連技術の動向
基準認証制度
「電気通信事業法」及び「無線通信法」の規定に基づいて、NBTCが電気通信機器の技術規則の制定を行う。NTC(現NBTC)は2007年に無線機器を含む電気通信機器の新しい基準認証制度を発表した。機器はNBTCが定める技術規則を満たしたことをNBTCまたは外部の試験認証機関によって証明された後、NBTCによる登録(Class A)または認証(Class B)を受けて市場に出される。また、短距離無線機器等の簡易な機器については、供給者適合宣言(Supplier’s Doclaration of Conformity:SDOC)での販売が可能である。
Ⅴ 事業の現状
1 固定電話
固定電話回線数は2024年末現在約390万であり、年々減少傾向にある。NTが最大の事業者となっている。
2 移動体通信
(1)概要
国内初の商用LTEサービスは、旧True(現True Corp)が2013年5月に2.1GHz帯を利用して開始し、2016年に商用LTE-Aサービスを開始した。AISは2016年1月、1800MHz帯及び2100MHz帯のLTE-Advanced(LTE-A)サービスを開始した。一方、旧DTACは2015年11月に従来の2100MHz帯のLTEサービスを拡張し、バンコク都内で1800MHz帯のLTEサービスを開始した。また、国有事業者NTに統合される以前の旧CAT Telecomと旧TOTが、それぞれ2016年11月と2018年6月からLTE方式でのサービスを開始した。
5Gについては、AISが2020年2月に、旧Trueが同年3月に、旧DTACが同年12月にそれぞれ5G商用サービスを開始した。使用周波数は、AISと旧DTACが700MHz帯、2.6GHz帯、26GHz帯で、旧Trueが700MHz帯。
衛星と移動端末間の直接通信D2C(Direct to Cell)サービスについて、True Corpが2025年2月に中国の低軌道衛星(LEO)通信事業者Galaxy Space Corp.(銀河航天)とブロードバンド提供に向けた協力協定のMoUを締結している。
(2)MVNO
主要MVNOはFeels、The White Space Co(Penguin SIM)、i-Koolである。
3 インターネット
主な固定ブロードバンド事業者はAIS、NT、True Corpであり、AISは、2023年11月に固定ブロードバンド大手であったTTTBBを統合し、これを契機に加入者シェアを拡大した。
Ⅵ 運営体
1 National Telecom Public Company Limtied(NT)
| Tel. | +66 2 104 1999 |
|---|---|
| URL | https://www.ntplc.co.th/ |
| 所在地 | 99 Chaengwattana Road, Thung Song Hong Subdistrict, Lak Si District, Bangkok 10210, THAILAND |
| 幹部 | Sanpachai Huwanan(社長/President) |
概要
国有通信事業者CAT Telecom及びTOTの合併により、2021年1月に設立された新事業者。MDES傘下の国有企業として旧CAT Telecom・旧TOTの事業を継承する。資産管理はMDESが所管する。
2 その他の主な事業者
| 事業分野 | 事業者 | URL |
|---|---|---|
| 移動体通信等 | AIS | https://www.ais.th/ |
| True Corp | https://www.true.th/home | |
| 衛星通信 | Thaicom | https://www.thaicom.net/ |
放送
Ⅰ 監督機関等
1 国家放送通信委員会(NBTC)
(通信/Ⅰ-2の項参照)
所掌事務
「2007年憲法」では、通信事業と放送事業を監督するNBTCの設置が規定され、2010年12月には設置のための法律「NBTC法」(通信/Ⅱ-1の項参照)が施行され、放送事業の監督、周波数監理等を担うこととなった。
2 首相府広報局(PRD)
Government Public Relations Department
| Tel. | +66 2 618 2323 |
|---|---|
| URL | https://thailand.prd.go.th/ |
| 所在地 | Rama VI Rd., Soi 30, Bangkok 10400, THAILAND |
所掌事務
政府の広報的役割を所掌している。放送、出版及びマルチメディア政策を通じて政府の広報活動を行っている。教育放送的性格を有する国営地上テレビ放送と国営ラジオ放送を所有している。財源は国庫交付金のほか、広告時間帯の使用料収入である。
Ⅱ 法令
1 2008年ラジオ・テレビ放送法
2008年3月に同法が制定された。同法では、放送免許の枠組みを定めている。2017年一部改正。
2 周波数割当及び放送・電気通信規制のための組織に関する法律(通称:NBTC法)(2010年・2017年改正)
(通信/Ⅱ-1の項参照)
Ⅲ 政策動向
1 免許制度
「2008年放送法」では、放送免許を三つ(公共サービス用、地域サービス用、商業サービス用)に分類し、免許を付与された放送事業者は公共の利益と視聴者の利益を目的として事業を行うことと定めている。放送免許体系では、設備免許とネットワーク免許とは別に、個別の放送系統を提供するサービス免許枠が用意され、設備免許を保有する事業者であっても、放送サービスの系統を提供する場合には、サービス免許も合わせて取得する必要がある。2013年12月の入札では15年間の免許は民間の16の事業者(24系統)により取得された。
2 コンテンツ規制
「2008年放送法」では、民主主義体制、国家の安全、国民の良心、道徳、健康を脅かす番組は禁止されている。
3 デジタル放送
NBTCは、2012年にデジタル放送の方式を欧州方式(DVB-T2)と決定、2013年12月末に高画質(HD)バラエティ7局、標準画質(SD)バラエティ7局、報道7局、子ども・教育局3局の合計24局分の放送免許についてオークションを実施した。
2014年4月から、公共サービス部門の3系統と商業サービス部門の24系統(2015年12月以降は22系統)の地上デジタル放送が、バンコク都、チェンマイ県、ナコンラーチャシーマー県等で開始された。その後、2015年に商業2系統が終了し、また2019年に7系統がNBTCに返納されている。2019年10月のデジタル放送事業は、13商業事業(15系統)、4公共事業(5系統)。
なお、アナログ放送を行っていた6系統のうち、Channel 3のみアナログ放送を継続(2020年に完全移行)し、他系統はデジタル化移行を終えた。
4 放送事業基本計画
NBTCは2020年9月、「第2次放送事業基本計画(2020~2025)(Notification of The NBTC on the Second Broadcasting Master Plan B.E. 2563–2568(2020-2025))」を公示した。①放送サービスの運用のための周波数の利用免許と認可、②ラジオ放送・テレビ放送サービスにおける自由で公正な競争の開発と推進、③非営業目的及び市民向けでのラジオ・テレビ放送用周波数の利用推進を原則に、以下の目標を達成することとしている。
- 周波数の免許付与とラジオ・テレビ放送の効率的かつ普遍的で公平な運用からの利益を国民が享受する。
- 放送事業の運用から生じる不利益から国民を保護する。
- 国民が、情報へ平等にアクセスする権利と自由を保障する。
- 放送事業者が、多様な品質と信頼性を有するコンテンツの自由かつ公平な競争と適切な対象グループに向けたコンテンツの提供を可能にする。
- ラジオ・テレビ放送に関係する免許人、番組制作者、専門家の行動規範を確立する。
- ラジオ・テレビ放送サービスが、近代的な運用の下、資源の効率的な利用を果たす。
また、2025年10月には、NBTCは「第3次放送事業基本計画(2026-2030)案」を提出した。同案では、①効率的周波数管理、②公正な競争環境の確保、③責任ある表現の自由を促進する公的情報空間の構築、④消費者保護の強化、⑤情報・サービスへの公平なアクセスの保障、⑥社会的に脆弱なグループによるコンテンツアクセスの改善のための技術開発等を骨子に放送政策を実施するとしている。
Ⅳ 事業の現状
1 ラジオ
NBTCが2012年11月以降に放送内容別に3種類のラジオ放送免許を交付している。2019年8月時点、コミュニティ向け、公共サービス・ラジオを合わせ、4,000局以上の免許が交付されている。
主なラジオ放送事業者は、PRD直轄のタイ国営放送局(National Broadcasting Service of Thailand:NBT)が運営するRadio Thailandである。
国際放送は、NBTが海外向けサービスとして、12言語で「Radio Thailand World Service」を提供している。
2 テレビ
デジタル放送開始時には参入が多数あり27系統で始まった。その後も、新規参入や退出が相次ぎ、競争激化で経営状態の悪い局が出てきたため、2018年5月23日、タイ国家平和秩序評議会(National Council for Peace and Order:NCPO)は2017年憲法44条に基づき、NBTCに対してデジタルテレビ事業権料の支払いが困難な放送事業者に3年の猶予を設ける命令を発出した。2019年8月に4系統、9月に3系統が放送を終了した。2019年末時点、公共サービス部門の5系統と商業部門の15系統のサービスを提供している。
3 衛星放送・ケーブルテレビ
衛星放送とケーブルテレビサービスのプラットフォーム事業者は、True VisionsやPSI(Poly Satellite Industry)等がある。最大手事業者は、2003年に設立されたCPグループ傘下のTrue Visionsで、2006年には1998年設立のUBCを合併した。PSIはIPTVも提供している。
また、メディア企業のプージャッガーンが保有するASTV(Asia Satellite TV)がNSS6衛星を使用している。ASTVでは、規格に合致した衛星アンテナを設置することで、国内外の放送を無料で受信できる。
Ⅴ 運営体
1 首相府広報局(PRD)
(Ⅰ-2の項参照)
概要
PRDが、NBT、Radio Thailandを所有している。
2 タイ公共放送(TPBS)
Thai PBS
| Tel. | +66 2790 2000 |
|---|---|
| URL | https://www.thaipbs.or.th/ |
| 所在地 | Head Office Building, 145 Vibhavadi Rangsit Road Bangkhen Market Subdistrict Laksi., Bangkok 10210, THAILAND |
| 幹部 | Vanchai Tantivitayapitak(会長/Director General) |
概要
2007年10月に成立、2008年1月に施行された「公共放送機構法」により設置されたタイで唯一の公共放送。広告は入れず、財源は酒税とたばこ税による税収総額の1.5%で20億THBを超えない額と定められている。
3 タイ・マスコミ公団(MCOT)
Mass Communication Organization of Thailand Public Company Limited
| Tel. | +66 2201 6000 |
|---|---|
| URL | https://www.mcot.net/ |
| 所在地 | 63/1 Rama IX Rd., Huay Kwang, Bangkok 10310, THAILAND |
| 幹部 | Sommai Suwannawong(総裁代理/Acting Director - General) |
概要
地上デジタルチャンネル(9 MCOT HD チャンネル30)を提供している。タイ国営企業資本法(Capital of State Enterprise Act)BE 2542(1999年)により株式会社化され、2004年8月にタイ証券取引所に上場した。発行済株式の66%を財務省が、12%を政府貯蓄銀行が保有しており「公団」の名称は続いている。
電波
Ⅰ 監督機関等
1 監督機関
国家放送通信委員会(NBTC)
(通信/Ⅰ-2の項参照)
2 標準化機関
タイ産業標準機構(TISI)
Thai Industrial Standards Institute
| Tel. | +66 2430 6815 |
|---|---|
| URL | https://www.tisi.go.th/ |
| 所在地 | 75/42 Rama VI Rd., Ratchathewi, Bangkok 10400, THAILAND |
| 幹部 | Ekniti Romyanon(事務総長/Secretary General) |
所掌事務
消費者保護、自然環境保護、産業育成、標準化の推進による貿易の推進を目的として、1966年に設立された。TISIは、「1968年産業製品標準法(Industrial Products Standards Act B.E. 2511(1968))」「2008年国家標準化法(National Standardization Act B.E.2551(2008))」や工業省(Ministry of Industry)の政策及びマスタープラン、政府の政策等に基づき活動を行っている。
標準化関連では以下の活動を行っている。
- 国内/地域/国際標準の策定作業
- 基準認証
なお、ISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議:International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission)の委託を受けて、同規格の標準設定・審査も行っている。
Ⅱ 電波監理政策の動向
1 電波監理の概要
NBTCは、2011年に発足後、2012年4月には、「電波管理・通信・放送基本計画」を施行した。同計画は、周波数管理、通信分野、放送分野における基本計画を定めたものである。その中で周波数管理については「2012年周波数管理基本計画」が定められ、国民に対して最高の利益を生み出すように周波数管理を行うこととして、自由で公正な競争を考慮し、公共の利益に関する多様な事業にあまねく周波数利用を普及させるとのビジョンに基づいて、次の六つの目標を掲げている。
- 国際周波数管理に関する協力メカニズムを用意する。
- 周波数の割当て・調整のために周波数の返還に関する原則規定と時期を定める。
- 国の安全保障面での周波数管理の原則とメカニズムを用意する。
- 公共災害の防止・緩和や緊急事態・災害対応のための周波数割当とその使用の原則を定める。
- 地上デジタル放送の変更計画を用意する。
- 民間セクターに対する周波数割当やコミュニティサービスを行う非営利活動向けに各エリアでの周波数帯全体の20%以上を使用できるようにする。
2 無線局免許制度
「NBTC法」第41条及び第45条により、すべての無線機器の製造、保有、輸出入、売買、利用には、別に定める場合を除いて、免許を必要とする。一部移動電話、コードレス電話、市民バンド(CB)無線機器等については、個別に省令で定めることによって、免許不要での使用を許可している。なお、旧法で認められた免許不要局は継続して有効であり、Wi-Fi機器については、2004年1月に、ワイヤレスマイク、コードレス電話機、GSM端末、工業科学医療(ISM)機器、2.4-2.5GHzで100mW以下の無線機器等の免許不要での使用が認定された。また、RFIDについてはUHF帯(920-925MHz)が割り当てられているが、出力0.5W以上では免許が必要である。
3 周波数割当
タイでは、NBTCが設立される2011年以前は、国有企業の旧TOTと旧CAT Telecomに対してのみ、周波数が割り当てられていた。一方で、民間企業(AIS、旧DTAC、旧True等)は、BTO(Build-Transfer-Operate)方式により、国有企業からモバイル事業権(mobile concession)を付与されることによって、モバイルサービスを提供していた。BTO方式は、民間企業が整備したインフラ資産は国有企業が保有し、民間企業の収益はレベニューシェアによって国有企業へその一部が還元される仕組みで、現在でも存続している。また、2011年のNBTC設立により、民間企業に対してオークションによって周波数を割り当てる権限がNBTCに付与され、民間企業が周波数免許を保有することが認められるようになった。
2020年2月、NBTCは、700MHz帯、2600MHz帯、及び26GHz帯のオークションを行った。48件の落札があり、うち、AISが23件、旧Trueが計17件、旧TOTが4件、旧DTAC及び旧CAT Telecomがそれぞれ2件の免許を取得した。なお、旧CAT Telecomは700MHz帯を、旧TOTは26GHz帯を割り当てられており、新統合事業者NTが両事業者の統合後も、これら割当周波数を引き継いだ。NBTCは、2024年10月、マルチ周波数オークションを実施する意向を明らかにし、2025年1月、850MHz帯、1500MHz帯、1800MHz帯、2100MHz帯、2300MHz帯、26GHz帯の六つの周波数帯域のオークションの実施計画を公表した。うち、850MHz帯、2100MHz帯、2300MHz帯は、2025・2027年に免許期限を迎える帯域で、1500MHz帯はかつてマイクロウェーブに割り当てられ、現在空き周波数となっている帯域とされている。2025年4月には、以下の割当計画を公表、最低入札価格の同額を約1,210億3,000万THBとした。
- 850MHz帯(FDD):2周波数ブロック(各5MHz幅×2)
- 1800MHz帯(FDD):7周波数ブロック(各5MHz幅×2)
- 2100MHz帯(FDD):12周波数ブロック(各5MHz幅×2)
(TDD/SDL):3周波数ブロック(各5MHz幅)
- 1500MHz帯(TDD/SDL(下り追加帯域)):11周波数ブロック(各5MHz幅)
- 2300MHz帯(TDD/SDL):7周波数ブロック(各10MHz幅)
- 26GHz帯:(TDD):1周波数ブロック(各100MHz幅)
2025年6月にNBTCは850MHz帯、1500MHz帯、2100MHz帯、2300MHz帯のオークションを実施し、主要移動体通信事業者AISとTrue Corpが、1500MHz帯、2100MHz帯、2300MHz帯における以下の帯域を落札した(850MHz帯は不落)。
- AIS:2100MHz帯3ブロック(計30MHz幅)(落札価格:148億5,000万THB)
- True Corp:1500MHz帯4ブロック(計20MHz幅)(落札価格:46億5,396万THB)、2300MHz帯7ブロック(計70MHz幅)(落札価格:217億7,000万THB)
AISは、落札した2100MHz帯を4G/5Gサービスのトラヒック増への対応に使用する。また、True Corpは2300MHz帯を4G/5Gサービスの伝送速度・カバレッジの向上に、1500MHz帯をキャリアアグリゲーションによるモバイルデータ伝送の高速化に利用する予定である。
4 周波数取引
「NBTC法」第43条及び第46条において、通信放送事業における周波数免許の取引を禁じている。
5 電波利用料制度
「NBTC法」第42条及び第45条において、NBTCが電波利用料額の設定と徴収の権限を有することが定められている。NBTCは電波の利用目的、利用周波数、帯域幅等に比例する電波利用料を徴収している。料額は定期的に見直される。
ただし、政府は適用が除外されているほか、3か月以下の短期利用、試験研究用、国連等の傘下にある専門機関、大使館及び領事館も除外される。基本的な計算式は、以下のとおり。
- 周波数利用料=(帯域幅×周波数定数×用途定数)+最低料金
- –帯域幅はkHzの単位
- –周波数定数は、10kHzから1GHzまで10、3GHzまで5、10GHzまで0.5、20GHzまで0.05、それ以上は0.001
- –用途定数は、公共用用途は5、民間用途は10
- –最低料金は、無線呼出、ラジオ放送は5万THB、テレビ放送、有料放送は10万THB
6 電波の安全性に関する基準
電磁界ばく露に関する基準は整備されていないが、公衆衛生省(Ministry of Public Health:MOPH)の医療科学部(Department of Medical Science:DMSc)を中心に検討されている。
その結果、NBTCは、安全基準及び測定法を策定したほか、地域センターで電界強度の測定も実施している。
Ⅲ 周波数分配状況
NBTCにより国家周波数分配表(2017年)が掲載されている。
- URL:https://www.nbtc.go.th/spectrum_management/%E0%B9%81%E0%B8%9C%E0%B8%99%E0%B9%81%E0%B8%A1%E0%B9%88%E0%B8%9A%E0%B8%97/Thailand-National-Frequency-Allocation-Table-(Engl/29318.aspx?lang=th-th
また、周波数分配図(2022年7月)は以下のとおり。
- URL:https://www.nbtc.go.th/spectrum_management/masterplan/50321.aspx?lang=th-TH