タイ王国(Kingdom of Thailand)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 デジタル経済社会省(MDES)

Ministry of Digital Economy and Society

Tel. +66 2141 6747
URL https://www.mdes.go.th/
所在地 120 Moo 3, Prathunam Bldg, 6-9 floors, Government Complex, Thanon Chaeng Watthana, Thung Song Hong, Khet Laksi, 10210, THAILAND
幹部 Chaiwut Thanakmanusorn(大臣/Minister)
所掌事務

2016年9月、省庁再編に伴い設立された。前身である情報通信技術省(Ministry of Information and Communications Technology:MICT)から概ねすべての部局と権限を引き継ぎ、以下を設立目的とする。

同省は、通信、放送、電子取引、データ・プライバシー、コンピュータ犯罪、インターネット・コンテンツを所掌する。また、所掌業務を補完する外局として電子取引開発庁(Electronic Transactions Development Agency:ETDA)、デジタル経済振興庁(Digital Economy Promotion Agency:DEPA)を有するほか、国有通信事業者National Telecom(NT)(TOTとCAT Telecom等が合併して設立)、タイ郵便(Thailand Post)も同省の所掌である。

2 国家放送通信委員会(NBTC)

National Broadcasting and Telecommunications Commission

Tel. +66 2670 8888
URL https://www.nbtc.go.th/
所在地 87 Phaholythin 8 (Soi Sailom), Samsen Nai, Phayathai, Bangkok 10400, THAILAND
幹部 Sarana Boonbaichaiyapruck (委員長/Chairman)
所掌事務

NBTCの前身である国家通信委員会(National Telecommunications Commission:NTC)は「1997年タイ王国憲法」第40条を受けて2000年3月に公布された「NTC-NBC法」に基づき、2004年10月に設立、同年11月1日より業務を開始した。2010年12月には、通信事業と放送事業を監督するNBTCの設置を規定する法律「NBTC法」(Ⅱ-1の項参照)が施行され、2011年9月にはNBTCの委員が選出された。NBTCの主な所掌事務は以下のとおりである。

NBTCの委員数は従来11名であったが、2016年改正で7名となった。2022年に委員改選が実施され、2022年12月時点では6名が選出されている。

Ⅱ 法令

1 周波数割当及び放送・電気通信規制のための組織に関する法律(Act on Organizations to Assign Radio-Frequency Spectrum and to Regulate Sound Broadcasting, Television Broadcasting and Telecommunication Services:NBTC法)

2010年12月施行。電気通信事業と放送事業を監督するNBTCの設置及び所掌業務等を規定している。NBTCの主な所掌業務には、当該分野での政策立案及び電気通信部門のマスタープランの策定、 周波数の利用免許付与及び規制、電気通信事業の免許付与及び規制、電気通信サービスのための標準化と技術仕様の決定、相互接続の規則及び手続の規定の策定、消費者保護の規則と手続の規定の策定、公正で自由な競争のための規定等がある。

2017年6月及び2019年一部改正。2017年改正でNBTCが既存の免許人から未使用又は利用率の悪い周波数を再割当のために回収し、免許人と他の関係者間で周波数を共有できるようなった。また、周波数需要が逼迫していなければ、周波数オークションは免除可能となった。

2 電気通信事業法(Telecommunications Business Act

2001年施行、2006年及び2019年一部改正。事業免許、市場競争のセーフガード、相互接続、料金、ユニバーサル・サービス、線路敷設権に関する手続の整備等、市場競争の環境整備について規定している。

3 憲法

2007年憲法第47条では、放送分野及び通信分野の規律、周波数監理を行う単一の機関の設置を規定している。その後、新憲法が2017年4月に施行された。2017年憲法第60条では、周波数と衛星軌道を国家資産と位置付け、同第274条でNBTCがこれらの国家資産の管理を行うと規定している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)事業免許

「電気通信事業法」第7条において、電気通信分野の事業免許は、以下の3種類が規定されている。

事業免許種類
免許 定義

第1種

事業免許

  • 非設備ベースのサービス
  • 自由なサービス提供が妥当と思われる性格のサービス
  • NTC(現NBTC)への届け出後、認可

第2種

事業免許

  • 非設備ベース、あるいは設備ベースのサービス
  • 特定の利用者に提供されるサービス
  • 自由で公正な競争、公の利益、消費者保護の観点から、重大な影響のないサービス
  • NTC(現NBTC)が定めた免許条件に事前に完全に合致後、認可

第3種

事業免許

  • 事業者が基盤として運営する設備をベースとするサービス
  • 一般公共に対して提供されるサービス
  • 自由で公正な競争、公の利益の観点から、重大な影響のあるサービス、消費者を保護する理由のあるサービス
  • NTC(現NBTC)による審査後、認可

同法によると、NTC(現NBTC)は以上の3種類の免許について免許取得条件を定め、「電気通信事業法」施行以前からの既存事業者には免許を発行しなければならないと規定している。なお、同法の各免許基準については、NBTCが詳細を規定する。

(2)免許条件とユニバーサル・サービス基金

2012年にユニバーサル・サービス基金制度の改革が実施された。従来のユニバーサル・サービス基金をNBTC基金(Broadcasting and Telecommunications Research and Development Fund for the Public Interest)へ移管し、用途についても高速インターネットに拡大するものとされた。任期3年の11名の基金管理委員会がユニバーサル・サービス基金の管理を担うことになった。

2 競争促進政策

(1)新国有事業者National Telecom(NT)の設立

政府系事業の合理化のために、 国有事業者のTOTとCAT Telecomの統合と新事業者National Telecom(NT)の設立が進められ、タイ内閣が2020年1月にこれを承認し、2021年1月7日に新会社として登記された。これに伴い、旧CAT Telecomと旧TOTの通信ネットワーク・インフラを含め新会社に移管された。なお、合併後の資産はMDESが保有する。

(2)事業者合併

総合通信事業者Trueと移動体通信事業者DTACの両社は2021年11月、事業統合で合意した。DTACの親会社ノルウェーのテレノール(Telenor)グループと、Trueの親会社であるタイのコングロマリットCPグループが新通信会社設立へ向けて覚書に署名したことによるもの。NBTCは、同事業者合併に関し、国内通信市場や業界への影響等について調査を実施し、2022年10月、両社の合併を認める決定を下した。両社の合併により、移動体通信分野における加入者ベースの国内市場シェアは54%となり、これまでの第1位の事業者AISのシェア44%を超えるため、NBTCは、料金上限及び平均コストに基づく料金設定等の規制を行うこととしている。また、新会社が現在の事業者名を3年間使用することも合併承認の条件としている。

(3)外資規制

「電気通信事業法」では、第2種事業免許及び第3種事業免許の事業者の外資規制は、25%と規定されていた。2012年7月、NBTCは外資規制に関する規制の改正を承認し、電気通信事業における外資の優越の防止を図った。その一方で、国内の電気通信事業に対して、「電気通信事業法」及び「外国人事業法(Foreign Business Act)」を順守し、改めて外資の上限比率は50%未満という指針を示した。

(4)MVNO

2012年以降、NBTCはMNVO法によりMNOに対しネットワーク容量の10%をMVNOに提供するよう義務付けるとともに、MVNOに対して以下の項目を順守することを要求している。

3 情報通信基盤整備政策

(1)「ICT2020」(2011~2020年)

2011年5月に内閣承認。同政策枠組では以下の目標が掲げられた。

このビジョンについて、「ICT2020」では、「スマート・タイランド構想(The “Smart Thailand 2020”Vision)」と命名している。同構想の実現に向け以下の七つの戦略が策定された。

  1. 戦略1:
    全社会階層がどこからでも利用可能で安全なインフラとしてのブロードバンド通信の構築
  2. 戦略2:
    世界レベルの専門的知識を有するIT専門家の育成
  3. 戦略3:
    ASEAN経済統合や自由貿易を利用したICT産業の競争力強化
  4. 戦略4:
    ICTを活用した行政サービスの革新
  5. 戦略5:
    ICT活用による製造業、農業、サービス産業の競争力強化
  6. 戦略6:
    ICT活用を推進して社会的経済的格差を是正し、教育・医療といった基本的な公共サービスにおいて、全国民がアクセス可能となる環境の構築
  7. 戦略7:
    ICTを利用した環境に配慮した社会・経済の創造
(2)国家ICTマスタープラン

第3次国家ICTマスタープラン(The Third Thailand Information and Commu­nications Technology Master Plan)(2014~2018年)における八つの目標は以下のとおり。

2019年には「第4次マスタープラン(2019~2023年)」が発表され、効率的包括的なICTインフラ開発の促進とデジタル主導の経済及び社会の発展のための政策枠組が提示されている。

(3)デジタル経済社会開発計画案

2015年3月に、国家デジタル経済社会準備委員会が設置されており、2016年2月には同委員会がデジタル経済社会開発計画案を作成し、同年4月に閣議で承認された。

同計画の特徴は、4フェーズ20年間という長期にわたる計画である点である。1年半の期間の第1フェーズでは、デジタル基盤を構築、5年目までの第2フェーズでは、すべての人がデジタル技術の恩恵が受けられるように包括性を向上させ、10年目までの第3フェーズでは、デジタル技術とイノベーションにより国を変革する、20年目までにデジタル・リーダーシップを獲得し、先進国となるという計画である。戦略的な取組領域は六つ設定されており、①全国に大容量のデジタル・インフラの構築、②デジタル技術による経済活性化、③知識駆動型のデジタル社会の創出、④デジタル政府への変革、⑤デジタル時代に対応した労働力の育成、⑥デジタル技術の利用における信頼の構築となっている。

(4)「Thailand 4.0」ビジョン

Thailand 4.0」を長期的な経済発展のモデルとして位置付けている。2016年7月に、プラユット・チャンオーチャー首相が演説の中で「Thailand 4.0」政策に言及し、同政策は、従来の政権のポピュリスト的な政策とは異なり、長期的に課題に取り組み、民間が主導する持続的な発展を目指すものだとしている。具体的には、20年間を対象とする戦略計画により、創造性、イノベーション、技術を重視して、経済政策と構造改革を実施していくとしている。同政策がターゲットとしている産業分野は、引き続き奨励する産業として①次世代自動車、②スマート・エレクトロニクス、③メディカル&ウェルネス・ツーリズム、④農業・バイオ技術、⑤食品加工、新しい産業として⑥ロボティックス、⑦バイオ燃料・バイオ化学、⑧航空・ロジスティックス、⑨医療ハブ、双方に跨がる産業として⑩デジタルが挙げられている。なお、首相府広報局の記事によると、タイの発展は以下の3段階を経ており、「Thailand 4.0」はその次の発展段階を指すものとされている。

  1. Thailand 1.0:農業中心の社会構造
  2. Thailand 2.0:軽工業の開発により低所得から中所得国への移行
  3. Thailand 3.0:重工業化により経済成長を持続
(5)ブロードバンド普及拡大策

MDESは、2017年5月、低価格のブロードバンド・アクセスを2018年中盤までに、民間事業者がネットワークを敷設する可能性が低い地域も含めて、すべての村落に普及させる意向を明らかにした。

(6)デジタルパークタイランド(EECd)の開発

MDES等が中心となり、チョンブリ県シラチャにデジタル産業の集積エリア(デジタル産業・スタートアップ企業のサポートやイノベーション拠点、教育用施設等を含む)を構築するプロジェクトが進行中。2021年10月には、デジタル産業の振興を目的に、新たなテクノロジーの試験・開発拠点「デジタル・イノベーション・センター」の開設に向けて詳細を発表した。デジタル・イノベーション・センターは、面積4万m2の敷地に、5G、AI、IoT、VR/AR、クラウド技術に関する設計・開発・試験等の設備を開設する。

4 コンピュータ犯罪法とコンテンツ規制状況

コンテンツ規制として、インターネットのポルノ取締り等を目的としたコンピュータ関連犯罪法が2006年から施行されている。2020年8月、タイ政府が、同法を根拠に、フェイスブック(Facebook、現メタ(Meta))に対しタイ王室批判グループの運営ページへのアクセスを遮断することを求めている。また、2021年11月、僧侶姿を戯画化した画像のSNS掲載について、下院宗教委員会が同法の適用を警察に求めている。そのほか、2021年1月に、王室批判動画のネット投稿者に関して、刑事裁判所が、刑法112条の不敬罪による禁固刑の判決を下している。これらの法律に関して、国連人権高等弁務官事務所が、2020年12月に表現の自由の侵害の可能性を指摘したが、これに対しタイ政府は、表現の自由、平和デモは禁止せず、国家の安全保障を脅かす行為に対し適用すると主張している。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

「電気通信事業法」及び「無線通信法」の規定に基づいて、NBTCが電気通信機器の技術規則の制定を行う。NTC(現NBTC)は2007年に無線機器を含む電気通信機器の新しい基準認証制度を発表した。機器はNBTCが定める技術規則を満たしたことをNBTC又は外部の試験認証機関によって証明された後、NBTCによる登録(Class A)又は認証(Class B)を受けて市場に出される。また、短距離無線機器等の簡易な機器については、供給者適合宣言(Supplier’s Doclaration of Conformity:SDOC)での販売が可能である。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

タイにおける固定電話回線数は減少傾向にある。NTが最大の事業者となっている。

2 移動体通信

(1)概要

国内初の商用LTEサービスは、総合通信事業者のTrue傘下のTrueMove H(当時TrueMove)が2013年5月に2.1GHz帯を利用して開始し、2016年に商用LTE-Aサービスを開始した。AISは2016年1月、1800MHz帯及び2100MHz帯のLTE-Advanced (LTE-A)サービスを開始した。一方、DTACは2015年11月に従来の2100MHz帯のLTEサービスを拡張し、バンコク都内で1800MHz帯のLTEサービスを開始した。また、国有事業者NTに統合される以前の旧CAT Telecomと旧TOTが、それぞれ2016年11月と2018年6月からLTE方式でのサービスを開始した。

5Gについては、AISが2020年2月に2.6GHz帯、TrueMove Hが同年3月に2.6GHz帯、DTACが同年8月に26GHz帯及び700MHz帯でそれぞれサービスを開始した。

(2)MVNOの動向

主な事業者は、DTAC子会社のFinn Mobile(旧Line Thailand)、White Space(旧Penguin SIM)。なお、移動体通信の全加入者から見れば、MVNOの加入者シェアは1%未満である。

3 インターネット

主な固定ブロードバンド事業者はAIS、NT、Triple T Broadband(3BB)、Trueである。

Ⅵ 運営体

1 National Telecom Public Company Limtied(NT)

Tel. +66 2 104 3000
URL https://www.ntplc.co.th/
所在地 99 Chaengwattana Road, Thung Song Hong Subdistrict, Lak Si District, Bangkok 10210, THAILAND
幹部 Col Sanphachai Huvanandana(社長/President)
概要

国有通信事業者CAT Telecom及びTOTの合併により、2021年1月に設立された新事業者。MDES傘下の国有企業として旧CAT Telecom・旧TOTの事業を継承する。資産管理はMDESが所管する。

2 その他の主な事業者

事業分野 事業者 URL
移動体通信 AIS https://www.ais.th/
DTAC https://www.dtac.co.th/
TrueMove H https://truemoveh.truecorp.co.th/
衛星通信 Thaicom https://www.thaicom.net/

放送

Ⅰ 監督機関等

1 国家放送通信委員会(NBTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

「2007年憲法」では、通信事業と放送事業を監督するNBTCの設置が規定され、2010年12月には設置のための法律「NBTC法」(通信/Ⅱ-1の項参照)が施行され、放送事業の監督、周波数監理等を担うこととなった。

2 首相府広報局(PRD)

Government Public Relations Department

Tel. +66 2 618 2323
URL https://thailand.prd.go.th/
所在地 Rama VI Rd., Soi 30, Bangkok 10400, THAILAND
所掌事務

政府の広報的役割を所掌している。放送、出版及びマルチメディア政策を通じて政府の広報活動を行っている。教育放送的性格を有する国営地上テレビ放送と国営ラジオ放送を所有している。財源は国庫交付金のほか、広告時間帯の使用料収入である。

Ⅱ 法令

1 2008年ラジオ・テレビ放送法

2008年3月に同法が制定された。同法では、放送免許の枠組みを定めている。2017年一部改正。

2 周波数割当及び放送・電気通信規制のための組織に関する法律(通称:NBTC法)(2010年・2017年改正)

(通信/Ⅱ-1の項参照)

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「2008年放送法」では、放送免許を三つ(公共サービス用、地域サービス用、商業サービス用)に分類し、免許を付与された放送事業者は公共の利益と視聴者の利益を目的として事業を行うことと定めている。放送免許体系では、設備免許とネットワーク免許とは別に、個別のチャンネルを提供するサービス免許枠が用意され、設備免許を保有する事業者であっても、放送サービスのチャンネルを提供する場合には、サービス免許も合わせて取得する必要がある。2013年12月の入札では15年間の免許は民間の16の事業者(24チャンネル)により取得された。

2 コンテンツ規制

「2008年放送法」では、民主主義体制、国家の安全、国民の良心、道徳、健康を脅かす番組は禁止されている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

2019年8月現在、コミュニティ向け、公共サービス・ラジオを合わせ、4,000局以上の免許が交付されている。主なラジオ放送事業者は、首相府広報局直轄のタイ国営放送局(National Broadcasting Service of Thailand:NBT)が運営するRadio Thailandである。

国際放送は、NBTが海外向けサービスとして、12言語で「Radio Thailand World Service」を提供している。

2 テレビ

2019年末現在、公共サービス部門の5系統と商業部門の15系統のサービスを提供している。

3 衛星放送・ケーブルテレビ

衛星放送とケーブルテレビ・サービスのプラットフォーム事業者は、True VisionsやPSI(Poly Satellite Industry)等がある。最大手事業者は、2003年に設立されたCPグループ傘下のTrue Visions。PSIはIPTVも提供している。

また、メディア企業のプージャッガーンが保有するASTV(Asia Satellite TV)がNSS6衛星を使用している。

Ⅴ 運営体

1 首相府広報局(PRD)

(Ⅰ-2の項参照)

概要

PRDが、NBT、Radio Thailandを所有している。

2 タイ公共放送(TPBS)

Thai PBS

Tel. +66 2790 2000
URL https://www.thaipbs.or.th/
所在地 Head Office Building, 145 Vibhavadi Rangsit Road Bangkhen Market Subdistrict Laksi, , Bangkok 10210, THAILAND
幹部 Vilasinee Pipitkul(会長/Director General)
概要

2007年10月に成立、2008年1月に施行された「公共放送機構法」により設置されたタイで唯一の公共放送。広告は入れず、財源は酒税とたばこ税による税収総額の1.5%で20億THBを超えない額と定められている。

3 タイ・マスコミ公団(MCOT)

Mass Communication Organization of Thailand Public Company Limited

Tel. +66 2201 6000
URL https://www.mcot.net/
所在地 63/1 Rama IX Rd., Huay Kwang, Bangkok 10310, THAILAND
概要

地上デジタル・チャンネル(9 MCOT HD チャンネル30)を提供している。タイ国営企業法BE 2542(1999)により株式会社化され、2004年8月にタイ証券取引所に上場した。発行済株式の66%を財務省が、12%を政府貯蓄銀行が保有しており「公団」の名称は続いている。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

国家放送通信委員会(NBTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2 標準化機関

タイ産業標準機構(TISI)

Thai Industrial Standards Institute

Tel. +66 2430 6815
URL https://www.tisi.go.th/
所在地 75/42 Rama VI Rd., Ratchathewi, Bangkok 10400, THAILAND
幹部 Banjong Sukreetha(事務総長/Secretary General)
所掌事務

消費者保護、自然環境保護、産業育成、標準化の推進による貿易の推進を目的として、1966年に設立された。TISIは、「産業製品標準法(Industrial Products Standards Act B.E. 2511(1968))」「国家標準化法(National Standardization Act B.E.2551(2008))」や工業省(Ministry of Industry)の政策及びマスタープラン、政府の政策等に基づき活動を行っている。

標準化関連では以下の活動を行っている。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理の概要

NBTCは、2011年に発足後、2012年4月には、「電波管理・通信・放送基本計画」を施行した。その中で周波数管理については「2012年周波数管理基本計画」が定められ、国民に対して最高の利益を生み出すように周波数管理を行うこととして、自由で公正な競争を考慮し、公共の利益に関する多様な事業にあまねく周波数利用を普及させるとのビジョンに基づいて、次の六つの目標を掲げている。

2 無線局免許制度

「NBTC法」第41条及び第45条により、すべての無線機器の製造、保有、輸出入、売買、利用には、別に定める場合を除いて、免許を必要とする。一部移動電話、コードレス電話、CB無線機器等については、個別に省令で定めることによって、免許不要での使用を許可している。

3 周波数割当

2011年のNBTC設立により、民間企業に対してオークションによって周波数を割り当てる権限がNBTCに付与され、民間企業が周波数免許を保有することが認められるようになった。同国初となる周波数オークションは2012年12月に実施され、既存事業者3社(AIS、DTAC、TrueMove(当時))が2100MHz帯(1920-1965MHz/2110-2155MHz)の15MHz幅×2の3枠を獲得、3G免許が付与された。更に、NBTCは1.8GHz帯(1710-1740MHz/1805-1835MHz)を4Gに割り当てるための周波数オークションを2015年11月に実施、15MHz幅×2の2枠をTrueMove(当時)とAISの2社が落札した。2015年12月に900MHz帯(895-915MHz/940-960MHz)の4Gオークションが実施され、10MHz幅×2の2枠をTrueMove(当時)とJas Mobile Broadbandが落札した。ただし、Jas Mobile Broadbandは支払期限までに免許料を用意できず免許を取得できず、2016年5月に900MHz帯のオークションが再び行われ、AISが756億5,000万THBで落札し900MHz帯の免許を取得した。

NBTCは2018年8月に、1800MHz帯の45MHz幅×2と900MHz帯5MHz幅×2のオークションを実施した。1800MHz帯は、AISとDTACがそれぞれ、一つのロット5MHz幅×2を125億1,100万THBで落札した。一方、900MHz帯は、近接する帯域に、NBTCが高速列車の移動体通信システムとして使用するとして運輸省と了解覚書を締結している帯域があり、入札条件には入札者が干渉対策をすることとなっていること等から敬遠され、応札者がなかった。

NBTCは落札されなかった900MHz帯の再オークションを2018年10月に実施、DTAC 1社が入札に応じ、379億8,000万THBで落札した。

なお、政府は5G投資促進政策のため、通信大手3社に対し、2019年6月に実施された700MHz帯の周波数割当に参加して2020年までの5Gの商用化を約束すれば、4Gの周波数ライセンス料の支払期限を従来の最長2021年から最長2026年まで延長することを認めた。

2020年2月、NBTCは、700MHz、2600MHz、及び26GHz帯域のオークションを行い、48の落札があり1,005億THBを得た。うち、AISが23、True及びTrueMove Hが計17、旧TOTが4、DTAC及び旧CAT Telecomがそれぞれ2の免許を取得した。なお、旧CAT Telecomは700MHz帯を、旧TOTは26GHz帯を割り当てられており、新統合事業者NTが両事業者の統合後も、これら割当周波数を引き継ぐ。

4 周波数取引

「NBTC法」第43条及び第46条において、通信放送事業における周波数免許の取引を禁じている。

5 電波利用料制度

「NBTC法」第42条及び第45条において、NBTCが電波利用料額の設定と徴収の権限を有することが定められている。NBTCは電波の利用目的、利用周波数、帯域幅等に比例する電波利用料を徴収している。料額は定期的に見直される。

ただし、政府は適用が除外されているほか、3か月以下の短期利用、試験研究用、国連等の傘下にある専門機関、大使館及び領事館も除外される。基本的な計算式は、以下のとおり。

周波数利用料=(帯域幅×周波数定数×用途定数)+最低料金

6 電波の安全性に関する基準

電磁界ばく露に関する基準は整備されていないが、公衆衛生省(Ministry of Public Health:MOPH)の医療科学部(Department of Medical Science:DMSc)を中心に検討されている。

その結果、NBTCは、安全基準及び測定法を策定したほか、地域センターで電界強度の測定も実施している。

Ⅲ 周波数分配状況

NBTCにより国家周波数分配表(2017年)が掲載されている。