ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)

通信

Ⅰ 監督機関等

情報通信省(MIC)

Ministry of Information and Communications

URL https://mic.gov.vn/
所在地 18 Nguyen Du, quan Hai Ba Trung, Ha Noi, VIETNAM
幹部 Nguyen Manh Hung(大臣/Minister)
所掌事務

2007年7月、国会は省庁再編案を可決し、2002年に設立された郵電省(Ministry of Post and Telematics:MPT)に文化情報省の出版・メディア部を移管し、情報通信省(MIC)とした。単一の省が、通信と放送の両方を所掌し、報道と出版に関しても所管する。

主な情報通信関連の所掌事務は以下のとおりである。

Ⅱ 法令

1 電気通信法(Law on Telecommunications 41/2009/QH12)

競争促進と電気通信セクターの発展を目的として、2009年11月に可決された。10章63条で構成され、投資、電気通信事業、ユニバーサル・サービス、設備と構築、個人と組織の電気通信に関する権利と義務を規定する。2010年7月1日より施行された。

2 無線周波数法(Law on Radio Frequencies 42/2009/QH12)

「電気通信法」と同時に可決、8章49条で構成され、2010年7月1日より施行された。2022年6月に周波数の有効利用を促進するための改正について、MICから政令案が提出され実施された。

3 情報技術法(Law on Information Technology 67/2006/QH11)

2006年6月に可決、情報通信分野の開発を促進するために制定された。ITアプリケーション利用と開発活動を規定し、この分野での知的財産権の保護を促進する等の内容を含む。

4 サイバーセキュリティ法(Law on Cybersecurity 24/2018/QH14)

2018年6月に可決し、2019年1月より施行されている。法は、7章47条からなり、安全保障に関連する重要情報のセキュリティ確保、ネットワークの安全を侵害する行為の防止、データやネットワーク防護の実施等について規定している。法では、重要情報システム管理者に対するデータの国内保存義務、データの国外提供(持出し)する際の安全評価義務が含まれ、個人情報及び重要データが対象となる。また、外国の電気通信及びインターネット・サービス提供者に対し、ベトナム国内ユーザのデータを対象としたサーバの国内設置や事務所の国内設置を義務付けている。

5 その他

2015年11月に、「ネットワーク情報安全法(Law on Network Information Security 86/2015/QH13)」を可決した。法は8章54条で構成されており、個人データ保護、スパム、不適切な情報の流通といった課題に対応するために制定された。

2018年に施行された「インターネット・サービス及びオンライン情報の管理、提供及び利用に関する首相令(Decree 27/2018/ND-CP)」が、インターネット接続の提供、サービス提供のあり方、情報管理原則、ソーシャル・ネットワークやニュースブログでの情報提供、オンラインゲーム等について規定している。SNSや情報サービスを提供するためには国内にサーバを設置する義務や、利用者の個人情報に関する取扱い、若年者のオンラインゲームの時間制限等の規定が追加された。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

設備を保有してサービスを提供する事業免許と、設備を保有せずにサービスを提供する事業免許が存在する。3G、4G、ISP、IXP、固定電話、MVNO等の事業免許が発行されている。

(1)事業免許

3G免許では、比較審査の結果、2009年4月にベトナム郵便電気通信グループ(Vietnam Posts and Telecommunications Group:VNPT)系の旧Vietnam Mobile Telecom Service (VMS)と旧Vietnam Telecom Services (GPC)、軍隊通信産業グループ(Military Industry and Telecommunications Group)系のViettel Telecom(Viettel)等4社に対して、免許が付与された。

4G免許については、2010年から準備され、2016年10月に大手3社(Viettel、MobiFone Telecom Corporation(MobiFone)、VNPT-Vinaphone及びGlobal Telecommunications Corporation(G-Tel、ブランド名:Gmobile))に対して商用免許が交付され、次いでHanoi Telecom(ブランド名:Vietnamobile)に対して2017年12月に商用免許が交付されている。

2020年末の時点で61の事業者が固定ブロードバンド・インターネット・サービス免許を保有している。また、2022年8月時点、MICは11事業者に対しVoIPサービスの免許を交付している。なお、ISPがVoIPサービスを提供するためには固定電話免許も必要となる。

(2)外資規制

政府は2007年のWTO加盟に従い、合弁形式の参入を認めた。設備ベースの基本サービスについては、外資による49%を超えない投資が可能になった。一方、非設備ベースの基本サービスについては、外資による65%を超えない投資が可能になった。また、VPNについては、非設備ベースだと外資による70%を超えない投資が可能になる。付加価値サービスでは、設備ベースだと外資による50%を超えない投資が可能、非設備ベースでは外資による65%を超えない投資が可能となった。

Hanoi Telecomに対しては香港のハチソン・テレコム(Hutchison Telecom)が出資している。

2 競争促進政策

(1)新規参入と事業者再編

1995年の規制緩和以来、順次、新規参入が認められ、事業者数が増加したが、EVN Telecomの吸収合併等、淘汰も行われた。競争の激しい移動体通信市場においては、2007年7月に、料金規制が認可制から届出制へと変更された(支配的事業者・サービスについては、引き続き認可制)。2015年3月には、接続規制文書(Cicular 7/2015/TT-BTTTT)が発出されている。

政府は、2014年4月にVNPTの再編を指示し、6月の「首相決定第888号(Decision 888/2014/QD-TTg)」により再編案を承認した。この再編案により、移動体通信事業会社の旧VMSが2014年7月にMICの直下に移管され、同年12月にMobiFone Telecom Corporationとなった。VNPTは、2015年7月に事業会社を、電気通信サービスを提供するVNPT-Vinaphone、基盤を管理する各子会社を再編したVNPT-Net、付加価値サービスやコンテンツ、ソフトウェア開発を行う各子会社を再編したVNPT Mediaに再編した。

2018年1月に、2020年までにVNPTが主なデジタル・サービスを供給するための経済グループとして再々編することを認める首相決定(Decision 2129/2017/QD-TTg)がなされ、持株会社の下に、VNPT-Vinaphone、VNPT-Net、VNPT Mediaのほか、新技術を用いた事業を進めるVNPT-IT、機器や技術の開発や販売を進めるVNPT Technology、VNPT Global Investment等を子会社としてグループ内に置く。

競争の進展に伴って新規参入事業体の再編も行われており、2010年10月、首相府が、FPT TelecomによるEVN Telecom株式50%の取得を認めた。2011年4月にFPT Telecomは、貨幣価値が下がり、相対的に株式取得コストが高くなったことを理由にEVN Telecomの株式取得を取り下げたが、その後、2011年12月に政府は、ViettelによるEVN Telecomの吸収合併を認め、2012年5月に一連の手続が終了した。

ベトナム政府は、2019年8月、民営化戦略を加速するため国有企業93社の株式売却の計画を発表しており、MobiFone及びVNPTグループの株式一部売却の計画が含まれている。

(2)番号ポータビリティ

移動電話の番号ポータビリティ(Mobile Number Portability:MNP)については、2006年、MICが検討を開始し、2017年9月に大手3社がテスト運用を開始し、2018年11月から本格運用が開始され、2022年5月時点で約290万番号が制度を利用した。

3 情報通信基盤整備政策

2004年11月に、ユニバーサル・サービスの実施を支援するため「公益通信サービス基金に関する首相決定(Decision 191/2004/QD-TTg)」が公布された後、2014年1月に、本基金に関する新たな首相決定「ベトナム公益通信サービス基金の組織及び活動」が制定され、同年3月に施行された。また2015年7月に、首相決定(Decision 1168/2015/QD-TTg)により「2020年に向けた公益通信サービス供給プログラム」が制定された。

2010年9月公布の「ICT早期強化プロジェクトに関する首相決定(Decision 1755/2010/QD-TTg)」では、2020年までの目標として、ほぼすべての村へのブロードバンド・ネットワークの整備、人口の95%をモバイル・ブロードバンド網でカバーすること、ほぼすべての世帯がデジタルテレビを視聴できることとされた。また、2012年7月の首相決定(Decision 32/2012/QD-TTg)により「2020年に向けた国家電気通信発展計画」が制定された。本決定では、遠隔地を含めた大容量電気通信基盤の整備、多様な需要に応えるサービス供給、電気通信市場の持続的発展、安全な通信インフラの確保等を目的としていた。

2030年に向けては、引き続きすべての村落レベルへの電気通信サービスの提供実現と貧困世帯等へのアクセス向上策を中心に、公益通信サービス基金を利用して展開するとしている。また、子どものための接続と端末を確保するための試みを開始する。

4 ICT政策

(1)国家デジタル戦略

2020年6月、フック首相(当時)は「2030年に向けた2025年までの国家デジタル・トランスフォメーション計画(National Digital Transformation Program)」を承認する決定(Decision No.749/QD-TTg)を下した。同計画において、デジタル政府及びデジタル経済・社会の形成と、世界的競争力のあるデジタル産業の確立を二つの主要政策目標とし、デジタル経済の目標として国内総生産に占める割合を20%、各経済セクターにおける同割合を10%以上、年間労働生産性については7%以上の増加を目指す。インフラについては、2025年に向けて光ファイバ・ネットワーク・インフラを全世帯の80%、コミューン・レベルでは100%カバレッジを達成し、4G及び5Gサービス及びスマートフォン利用のユニバーサル化、全人口の約半数の電子決済利用を実現するとした。

MICは、2020年8月、2020~2025年における主要ICT計画8項目を発表した。主な内容は、通信インフラをデジタル経済インフラへと変革し、ベトナムをサイバーセキュリティ大国にし、電子政府をデジタル政府へと変革すること等である。また、製造業をアウトソーシングから製品開発へと変革し、デジタル技術関連企業を5万から10万社までに拡大するともしている。

2022年3月の首相決定(Decision No. 411/QD-TTg)では、デジタル経済・社会の開発に力点が置かれ、GDPに占めるデジタル経済の規模を2025年に20%、2030年に30%とする目標を示した。それを可能とするために、2025年までに成人の80%がスマートフォンを持ち、家庭の80%がブロードバンドでカバーされるようになり、勤労年齢の70%以上が基礎的なデジタル技能を持つようにするとした。一方では、サイバー・セキュリティの確保についても取り組み、デジタル人材の確保にも努力するとした。また、デジタル経済・社会形成の促進のために、法規制の改正を行い、トライアルのための制度的なデジタル・サンド・ボックスを整備することについても示されている。

(2)電子政府

電子政府関連では、2015年に「2016~2020年におけるIT化に関する政府機関における行動計画(Decision 1819/2015/QD-TTg)」の首相決定が発出され、ITアプリケーションの開発・改善のほか、電子政府の基礎となるインフラや情報システム等の開発と完成といった目標が示された。また、ハノイ、ダナン、ホーチミンをスマートシティのパイロット・プロジェクトの実施都市とし、公共サービス・ポータルの整備等が実施された。

2018年9月には、国家電子政府委員会の設置を定める「首相決定(Decision 1072/2018/QD-TTg)」に基づいて首相が議長を務める国家電子政府委員会が設置された。委員会では、2025年をターゲットに法制度や政策策定、関連アプリケーションの開発、データの収集・分析・シェア、個人情報の保護、電子認証の促進について方針を決定する。最初の会議では、特に国家データベース早期構築の必要性が強調された。

MICは2020年8月、「2021~2025年電子政府発展戦略案」を公表した。同戦略案では、電子政府が新たな社会経済モデルの柱となり、各個人や企業のニーズに対応したサービスを提供し、その発展過程は国内のデジタル・トランスフォメーション(DX)、スマートシティ、サイバーセキュリティ、国家デジタル主権と緊密に関連しなくてはならないと指摘している。同戦略案における主な目標として以下の項目を挙げている。

2021年6月に「2021~2025年デジタル政府に向けた電子政府発展戦略(Decision No. 942/QD-TTg)」を首相決定した。この戦略では、中央政府や地方政府のみならず、市民や企業等も巻き込んで電子政府に係る取組みを進めることとされ、その結果として、サービスの向上、適時の意思決定、よりよい政策立案、ひいては社会経済課題の解決を実現するとしている。2021年には人口に関する国家データベースが稼動を開始している。

5 消費者保護政策

電気通信のサービス品質については、「電気通信サービスに関する質の管理に関する通達(Circular 08/2013/TT-BTTTT)」によって規律され、「品質管理を受ける電気通信サービスリスト(Circular 35/2015/TT-BTTTT)」が公表されている。

6 その他

ベトナムの政府機関等が行うICTシステム、サービス、機器の調達やICTサービスのリース利用に関し、ベトナム国内の企業を優遇する旨の法令が存在する。例えば、2014年4月に施行された通達「国家予算資金を使用することによる、国内IT製品・サービス投資・購入の優遇に係る詳細通達(Circular 01/2014/TT-BTTTT)」では、一定範囲のICT機器・サービスを国家予算により政府機関が調達する際、ベトナムの法人・自然人が支配権を持つ企業が生産する製品等を優先することとされている。また、2014年12月に公布され2015年2月から施行された首相決定「政府機関におけるICTサービスのレンタルに関する規定(Decision 80/2014/QD-TTg)」では、政府機関におけるある一定分野のICTアプリケーションに関して、レンタル・サービスの利用を推奨するとともに、そのサービス提供元はベトナムの法人・自然人が支配権を持つ企業・組織を優先するとされている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

MICが電気通信機器の基準認証を所掌しており、MICは、無線局免許及び技術基準に従って、無線機器の適合を検査する。その際、法律に基づき電磁適合性についても検査し確認する。そのために、MICの下に技術センターが設置され、無線機器の認証が行われている。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

(1)固定電話

固定電話は、VNPT-Vinaphone、国防省(Ministry of National Defense)傘下のViettel、VNPTとホーチミン市等の合弁会社であるSPT、民間ICT大手企業FPTコーポレーション等が出資するFPT Telecom等の事業者が、設備を保有してサービスを提供している。

移動体通信サービスの需要が大きく、供給側も投資等を移動体通信に集中させる傾向にあるため、例えば、2006年には固定通信網の整備について政府による指導が行われた。

主な固定電話事業者(2022年10月現在)
事業者

免許

付与年

保有サービス免許 主な関係機関、出資者等
VNPT- Vinaphone 1995年 市内・長距離・国際 MIC傘下の国営企業VNPT傘下
SPT 1995年 市内・長距離・国際 SaigonTel、Saigon Investment Corporation、VNPT
Viettel Telecom 1995年 市内・長距離・国際 国防省傘下、2012年5月にEVN Telecomを吸収合併

FPT

Telecom

2006年 市内・長距離・国際 データ通信会社から事業を拡大した民間企業

出所:各社ウェブサイト等

(2)衛星通信基盤

衛星通信サービスは、遠隔地を中心にVSATサービスが提供されており、基盤の弱い地域で高速の接続を確保するために使用されるのに加え、遠隔地を接続するための主な手段となっている。政府は、通信基盤の整備のため、2008年4月、東経132度にVinasat-1衛星を打ち上げた。衛星は日本、オーストラリア東岸からインドをカバーする20本の中継器を装備している。VNPTがVinasat事業の20%を出資している。

2012年5月15日にはVinasat-2衛星を打ち上げた。衛星は日本、オーストラリア東岸からインドをカバーする24本のKuバンドの中継器を装備し、15年の耐用年数を予定している。

2 移動体通信

1992年5月、アナログ方式で移動体通信サービスが開始され、1993~1996年にはVNPT傘下の旧VMSと旧GPCがデジタル・サービスを開始した。2002年以降、S-Telecom(ブランド名:S-Fone)、Viettel、EVN Telecom(2012年にViettelが吸収合併)が参入し、2007年にHanoi Telecom(ブランド名:Vietnamobile)、2009年に公安省(Ministry of Public Safety)系のG-Tel(ブランド名:Gmobile)が参入した。2009年4月に3G免許が付与され、10月から各社が順次サービスの提供を開始した。2010年8月からLTE網の試験運用が開始され、2016年10月にVNPT-Vinaphone(2015年8月にVNPTを再編改称)、MobiFone、Viettel、G-telに事業免許が交付された。その後、Hanoi Telecom(12月)についても免許が付与され、2021年8月時点で、4G網の人口カバレッジは98%とされている。主要事業者は、Viettel、VNPT-Vinaphone、MobiFoneの3社である。

2015年6月に公布された通達「Circular 15/2015/TT-BTTTT」により、移動体通信事業に関しては、Viettelのみがドミナント認定され、他の移動体通信事業者のドミナント認定が外れた。

加入数増大を受け、携帯端末SIM用に11桁番号を使用していたが、2018年9月より10桁番号への移行を行った。

2009年時点でMVNO事業者に対する免許がなされていたが、市場環境が好ましくないという理由を中心に実際の参入は見送られてきた。2019年4月にIndochina Telecom Company (ITelecom)がVNPT-Vinaphoneのネットワークを利用して事業を開始し、2020年6月にはMobicastが2番目のMVNO事業者として参入した。

5Gに関して、2011年11月に情報通信大臣が、「2019年に試験を開始し、2020年からサービス開始」の意向を表明した。主要事業者のうちViettelは、2019年1月に5G試験免許を受け、4月にハノイで国内初の5G基地局を設置、5月に試験サービスを開始し、9月にはホーチミン市での実験を開始した。MobiFoneは2019年4月に試験免許を受け、2020年3月にホーチミン市、ハノイ、ハイフォン、ダナンにおいて実験を開始し、12月にホーチミン市で商用のための実験を開始した。VNPT-Vinaphoneは2019年7月に5G試験免許を受け、10月にホーチミン市での実験を開始した。3事業者に付与された試験免許の期限は1年間とされていたが、順次延長されている。2021年5月には、3事業者間でインフラ・シェアリングの協定が結ばれている。

2022年も5G網の試験サービスの展開が進められており、4月時点で16の政令指定都市及び省で実験が行われている。

3 インターネット

2021年末時点で、固定回線によるブロードバンド利用者は、約1,879万人である。2022年6月現在、固定ブロードバンドの主要事業者は、Viettel、VNPTグループ、FPT Telecomである。

ブロードバンド化が戦略的に進められており、後発のFPT Telecomは2014年に主要都市で固定インターネット回線を光ファイバに置き換えるプロジェクトを開始し、2018年末時点で63の第1級行政区のすべてでサービス提供が行われている。

ネット上で流通する情報に関して政府は敏感で、2013年9月に、SNSサービス(個人ウェブサイト設置サービス、フォーラム、オンライン・チャット、音楽・動画共有サービスを含む)や「一般ウェブサイト」(公式な情報源の正確な引用等を基に「一般情報」を提供するウェブサイト)の設置に当たり免許を必要とする等の内容を含む「インターネット・サービス及びネット上の情報の管理・提供・使用に関する政令(Decree 72/2013/ND-CP)」を施行して規制の明確化を開始した。2018年4月には、インターネットを取り巻く環境変化に対応して、上記政令を改定する「Decree 27/2018/ND-CP」を施行した。

また、2018年6月には「サイバーセキュリティ法」(Ⅱ-4の項参照)が成立し、国家の安全を脅かすような目的でサイバースペースを利用することや、社会の安寧を揺るがすような誤情報の流布、誹謗中傷の拡散、社会的な害悪をもたらすような利用を明確に禁止した。加えて、ネットワークそのものに対する攻撃やサイバー犯罪についても禁止し、そうした行為を予防する権限を規定している。また、ベトナム国民(国内)の重要な情報については国内にあるサーバでの管理を義務付け、外国事業者にはベトナム事務所の設置を必要とする内容となっている。

4 新成長サービス

(1)IPTV

2005年からFPT TelecomがIPTVサービスの実験提供を行い、2006年には地上波のサイマル放送の実験を始めていた。2009年3月にはFPT Telecomがハノイ市とホーチミン市で、5月にはVTC Digicomがホーチミン市で、9月にはVNPTの子会社がハノイ市とハイフォンでIPTVの提供を開始した。2013年にはVNPTグループ、ViettelにもIPTVサービス免許が交付されている。

(2)モバイルテレビ

DVB-H方式による携帯端末への放送実験が2006年12月に始まり、VTC Digicomが2009年から商用放送を行っている。移動体通信大手も、MobiFoneのMobiTVやViettelのViettel TVといったサービスを開始している。

(3)OTTサービス

移動体通信大手3社(Viettel、VNPT-Vinaphone、MobiFone)はZaloやViber、WhatsApp等のようなOTT(Over The Top)サービスにも参入している。2014年12月にVNPT-Vinaphoneがチャットアプリ「VietTalk」によるサービスを開始し、2015年4月にはViettelが「Mocha」を、2015年8月にはMobiFoneが「Hai」を公開している。

(4)モバイルマネー

2021年3月より、銀行口座を保有せずとも、移動電話端末だけで決済が完了する「モバイルマネー」の試験運用を開始。VNPT-Vinaphone、Viettel、MobiFoneがそれぞれ国家銀行(中央銀行)から事業認可を受け、2年間のパイロット事業として実施。移動電話契約者1人が1社で開設できる口座は1件に制限され、1か月の取引額の上限は1,000万VND未満に制限される。

Ⅵ 運営体

1 ベトナム郵便電気通信グループ(VNPT)

Vietnam Posts and Telecommunications Group

URL https://vnpt.com.vn/
所在地 57 Huynh Thuc Khang Str., Lang Ha, Dong Da District, Hanoi, VIETNAM
概要

1995年に会社化され、2002年7月に、郵便と電気通信の事業部門を分離した。子会社を通じて、固定電話、移動体通信、VSAT、インターネット等、あらゆる電気通信分野のサービスを提供している。

2010年7月にベトナム政府から得た再編にかかわる承認を受けて、2011年1月からは国有企業となっている。2014年6月の首相決定を受けて、再再編され、2014年7月に移動体通信事業を実施するVMS(現MobiFone)が分離され、2015年7月に事業会社がVNPT-Vinaphone、VNPT-Net、VNPT Mediaに再編された。

2018年1月の決定「Decision 2129/2017/QD-TTg」では、持株会社の下に、VNPT-Vinaphone、VNPT-Net、VNPT Mediaのほかにも、新技術を用いた事業を進めるVNPT-IT、機器や技術の開発を進めるVNPT Technology、VNPT Global Investment等をグループ内に置く方針が発表された。

2018年11月に国有企業改革の一環として、管理権がMICから国家資本管理委員会に移管された。また、株式上場に向けての作業が継続されている。

2 MobiFone Telecom Corporation(旧VMS)

URL https://www.mobifone.vn/
所在地 No.1, Pham Van Bach Street, Yen Hoa Ward, Cau Giay District, Hanoi, VIETNAM
概要

当初は、VNPTの移動体通信子会社として、1994年に事業を開始した。ブランド名はMobiFoneである。Millicom Cellular Internationalの子会社のスウェーデンのComvikが協力を行ったほか、2008年11月にはNTTドコモと3G技術等に関する協力関係を締結した。VNPTグループの再再編に従い、2014年7月にVNPTグループから切り離されてMICに移管、2014年12月にMobiFone Telecom Corporationとなった。

分離会社化は株式上場に向けたステップとされ、株式上場に向けての作業が継続されている。2018年11月に国有企業改革の一環として、管理権がMICから国家資本管理委員会に移管された。

3 軍隊通信産業グループ(Military Industry and Telecommunications Group:­­Viettelグループ)

URL https://viettel.vn/
所在地 No.1, Giang Van Minh Street, Ba Dinh district, Hanoi, VIETNAM
概要

1993年に人民解放軍の出資の下に作られた事業体。2005年に系列のViettel Telecomが開始した移動体通信事業が国内最大の加入者数を有している。2011年12月には電力会社系のEVN Telecomを合併することを発表し、2012年5月に統合を完了させた。

ラオスとカンボジアに対して積極的に投資を行い、インドシナ半島での足場を確立しようとしており、2016年にはベトナム、ラオス(Unitel)、カンボジア(Viettel(Cambodia))間、2018年にミャンマー(Mytel)を加えローミング・チャージを廃止する等、積極的な展開を行っている。また、東ティモール、モザンビーク、ケニア、ハイチ、ペルーでも出資を行う等、10か国で電気通信事業に進出している。

4 その他の主な事業者

事業者 事業分野 URL
SPT 固定 https://www.spt.vn/

FPT Telecom Company

(FPT Telecom)

固定 https://fpt.vn/vi

Hanoi Telecom

(Vietnamobile)

移動体 https://www.vietnamobile.com.vn/

放送

Ⅰ 監督機関等

情報通信省(MIC)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

出版、映画、著作権、広告、放送の活動全般に関する規制監督、政策立案を所掌する。また、関連分野で国営企業や政府が投資している企業の監督権限を持つ。なお、ベトナム国営放送VTV(Vietnam Television)も国内放送事業者の指導・監督を行っている。

Ⅱ 法令 

2016年に大幅に改正された「プレス法(Press Law 103/2016/QH13)」が、インターネットを含めたメディアに対する規制を定めている。2011年2月には「苦情申立法(02/ 2011/QH13)」が発令され、記者に対して情報源を公開するよう義務付ける一方、記者の活動を妨害した際には罰金を設ける等、記者の活動の保護も強化している。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)受信規制

1996年11月、政府は外国の衛星放送の受信に関する政令を出し、個人による受信を禁止した。2002年6月、更に厳格な衛星放送受信規制として、衛星放送の受信機器を購入する際、商工省(Ministry of Industry and Trade)の許可が必要となった。外国のテレビ番組を放送する場合は、政府の認可を必要とする。

2009年1月よりベトナム・マルチメディア(Vietnam Multimedia Corporation:VTC)が、衛星直接受信(DTH)サービスを開始し、同放送の直接受信が可能となった。また、2014年10月よりベトナム国営放送(VTV)も衛星放送に参入した。

(2)外資規制

WTO加盟に従い、放送分野においても外資の参入を認める方針である。2006年7月1日施行「共通投資法」及びそれを修正する法令では、投資を条件付きで認める分野として、放送分野をリストアップしている。2009年6月にはVTV系列のベトナム・ケーブルテレビ(Vietnam Cable Television)とフランスのカナル・プラス(Canal+)グループが共同出資して衛星放送の合弁会社を設立し、2010年1月から有料放送である「K+」の放送を行っている。

(3)その他

2016年1月、「ラジオ・テレビ・サービスの管理、提供、利用に関する政令(Decree 06/2016/ND-CP)」が公布され、3月1日より施行された。本規制により、有料で放送される外国番組は、ベトナム文化の観点から健全で、「プレス法」を順守し、適切に権利関係を処理したものでなければならないとされた。また、番組の越語訳、免許事業者によって編集されること等を義務付け、外国からの広告を禁止している。

2 デジタル放送

2001年からハノイでDVB-T方式による試験放送を開始したことに始まる。2011年12月、「2020年までの地上テレビ放送のデジタル化プロジェクトの承認に関する首相決定(Decision 2451/2011/QD-TTg)」が公布され、ベトナムにおける地上デジタル放送の技術標準はDVB-T方式及びその次世代方式を基礎とすることとされた。

政府は、2011年の「首相決定(Decision 2456/2011/QD-TTg)」により2015年から中央直轄市を中心に段階的にアナログ停波を行い、2020年までにアナログ放送を終了してテレビ放送のデジタル移行を完了することとした。移行は、地域によって以下の4段階に分けられた。

MICは、デジタル化に関して約4兆4,000億VNDを投じる計画を起草し、国民に対してデジタルテレビ機材の購入支援を行うほか、デジタルテレビ・チャンネルの啓蒙を行う予定とし、予算のうち1兆3,000億VNDは公益通信サービス基金で賄うとした。

5大都市からアナログ停波が開始され、2017年には、計画の第2段階が完了し、国内34の省と中央直轄市での停波が完了した。第3段階に指定されている各省では、様々な難条件があり、解決のための方策がとられながら順次実行され、2020年6月、MICは21省においてアナログ停波が行われたことを報告した。2021年1月、MICがデジタル放送への完全移行を発表した。

3 4K/8K

2017年6月から、VTCがハノイ、ダナン、カントー等の主要都市において4Kの試験放送を実施し、DTVを中心に提供されている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

1945年9月に放送開始した国営ラジオ局VOV(Radio the Voice of Vietnam)は、全国放送4チャンネル(VOV 1、VOV 2、VOV 3、VOV 6)、少数民族向け1チャンネル(VOV 4)、国際放送1チャンネル(VOV 5)を実施している。また、各省及び中央直轄市の人民委員会が管理・運営する地方局(ホーチミン市以外はテレビ局と兼営。ホーチミン市はVOHというラジオ専門局が存在)がラジオ放送を行っている。2019年末時点で、87チャンネルでラジオ放送を行っている。

2 テレビ

ハノイ市に本拠地を置くベトナム国営放送VTVとVTCの全国放送局、各省及び中央直轄市の人民委員会が管理・運営する64の地方局が地上放送を実施しており、2019年末時点で、71事業者に免許が交付されている。

地方局は、それぞれの放送設備や番組の調達能力に応じてサービスを行っている。地方局は、VTVが配信するニュースや番組を再送信し、一部の番組は自主制作番組や他の放送事業者からの購入番組で編成している。

2010年8月に国営のベトナム通信社(Vietnam News Agency:VNA)が経済・投資関連ニュースを主に扱うニュース・チャンネル「VNEWS」を開局し、放送局からの番組やVNPTのIPTV等で放送される。2015年1月には、VOVが運営する「国会テレビ(National Assembly TV Channel)」が放送を開始し、2015年9月には、ベトナム共産党機関紙であるニャンザン(Nhan Dan:人民)新聞傘下の「ニャンザンTV」が開局した。

2019年末時点の有料地上デジタルテレビ放送の契約数は20万となっている。

3 衛星放送

自国衛星の打上げ(2008年Vinasat 1、2012年Vinasat 2)によって、直接受信の規制が緩和された。VTVが1997年から放送を開始しており、2009年1月にVTCがHDTV番組を含む多チャンネルのDTHを開始した。また、VTVとフランスのカナル・プリュス・グループが共同出資して、2010年1月に「K+」のブランド名で放送を開始したベトナム衛星テレビ(Vietnam Satellite Digital Television:VSTV)は、HDチャンネルを強化する等し、2022年10月時点で、100以上のチャンネルを提供している。

2019年末時点の有料のDTHの免許数は3、契約数は107万、9,471億VND程度の売上げとなっている。

4 ケーブルテレビ

ホーチミンでは、VTVと民間企業の合弁会社SCTVとHTV系列のHTV-TMS(旧HTVC)がサービスを提供している。ハノイでは、VTV傘下のVTVCab(旧VCTV)が1998年から、ハノイ・ケーブルテレビジョン・ネットワークが2002年からサービスを提供している。SCTVは2015年より地方においてFTTH接続サービスの導入も開始している。

2019年末現在、21事業者にケーブルテレビ・サービス・プロバイダの免許を付与している。国内最大事業者はVTV系列のVTVcabであり、全国60地域でサービスを提供している。2014年4月、大手の電気通信事業者Viettel Telecomがサービスを開始し、IPTVの参入もあり、加入者数が1,000万を超えた。

2019年末時点の有料のケーブルテレビの契約数は1,107万で、6兆2,550億VND程度の売上げで全有料放送の約80%を占めている。

Ⅴ 運営体

1 ベトナム国営放送(VTV)

Vietnam Television

Tel +84 4 66 897 897
URL https://vtv.vn/
所在地 43 Nguyen Chi Thanh Avenue, Ba Dinh District, Hanoi, VIETNAM
概要

国営の放送事業者で、機能や組織、運営については2018年の「政令2号(No. 02/2018/ND-CP)」により規定されている。財源は交付金、広告収入等で構成されている。各チャンネルの番組内容は「VTV 1」が主に政治・経済番組、「VTV 2」は科学・教育番組、「VTV 3」はスポーツ・音楽、「VTV 4」は海外にいるベトナム人向けニュース・娯楽番組、「VTV 5」は少数民族向け番組、「VTV 6」は子ども・青年層向けの番組、「VTV 7」は若者向け教育番組、「VTV 8」は中部向け、「VTV 9」はホーチミン市・南部向けの番組となっている。また、「VTV 5」は少数民族向けの番組をローカル言語で放送している。地上デジタル放送の開始に伴い、デジタル放送でのチャンネル数を増やしている。

2016年に有料放送事業の効率化のために傘下のVTVcab、SCTV、K+といった事業体を分社化して、経営の独自性を持たせた。SCTVの持ち分については2020年までに37.5%とする予定であった。2018年にVTVcabの上場を計画していたが、市場の反応が鈍かったため、延期した。

2 ベトナムの声放送局(VOV)

Voice of Vietnam

URL https://vov.vn/
所在地 37 Ba Trieu, Hoan Kiem, Hanoi, VIETNAM
概要

1945年に設立された、首相府直属の国営ラジオ放送事業者で、5系統の国内放送と、国際放送の「VOV 5」を行っている。

2015年1月には、政治・生活ニュース等を放送する「国会テレビ(National Assembly TV Channel)」の放送を開始した。また、2015年7月にVTC傘下のVTCテレビジョンを吸収合併しVOV TVとした。

3 ベトナム・マルチメディア(VTC)

Vietnam Multimedia Corporation

URL http://vtc.org.vn/
所在地 VTC Building, 23 Lac Trung St., Hanoi, VIETNAM
概要

2005年にマルチメディア関係の事業体を整理してその親会社として設立された100%国有会社である。2015年7月に傘下のVTCテレビジョンがVOVに吸収合併されたが、VTC自体は引き続き衛星放送インフラを保有するとともに、IPTV事業を運営し、デジタル・コンテンツの開発に力を入れている。株式公開を目指して準備を開始している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 情報通信省(MIC)

(通信/Ⅰの項参照)

所掌事務

ベトナムの電波監理は、MICが所掌する。現在のMICの機能、権限、任務及び組織体系は「首相令(Decree No.123/2016/ND-CP)」によって規定されている。周波数関係の業務としては、周波数割当計画の策定、周波数の分配と割当て、技術基準の策定、無線機器の管理、周波数免許の付与、周波数の国際調整、電波監視、電波利用料の徴収、安全保障用及び公共業務用周波数の管理、国際周波数・衛星軌道位置の登録、競売及び周波数使用権の移転の規則等を実施する。その業務は、MICの無線周波数局(Radio Frequency Department:RFD)が行っている。

2 無線周波数局(RFD)

Radio Frequency Department

URL http://www.rfd.gov.vn/
所在地 115, Tran Duy Hung Street, Trung Hoa Ward, Cau Giay District, Hanoi, VIETNAM
所掌事務

RFDは、国レベルの周波数機関として1993年6月8日に「郵便電気通信庁令(Decision No.494/1993/QD-TCBD)」によって設立され、2008年7月4日に「首相令(Decision No.88/2008/QD-TTg)」によってMICの傘下になり、MICの周波数関係の業務を担当している。現在のRFDの所掌と権限は、「省令(Decision No.1459/QD-BTTTT)」によって規定され、無線局の検査・監視・無線機器の認証・無線専門家の育成等も行っている。

RFDは、財政的に独立しており、その予算は徴収した周波数利用料を充てることが「首相決定(Decision No. 40/2017/QD-TTG)」により認められている。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

「無線周波数法」が、2010年7月1日より施行されている。同法では、周波数計画、免許割当手続の透明性・公開性、オークション又は比較審査による周波数免許割当、電磁環境の管理、周波数試験及び干渉管理、周波数及び衛星軌道の国際登録及び国際調整、国防及び安全保障上の周波数管理等が規定されている。

2 無線局免許制度

電波を使用するためには、無線局の免許が必要である。ただし、MICの省令により定められた条件に従った無線機器を免許不要とすることもできる。

免許期間は、「無線周波数法」では、免許の種類ごとに、最大10年、15年、20年(衛星)と定めているほか、免許付与から2年経過しても電波が使用されない場合は、免許が取り消されることになっている。

「無線周波数法」の成立によって市場原理が導入され、2012年の「首相決定(Decision 16/2012/QD-TTg)」によってオークションの実施が可能となった。オークションにかけられる周波数帯の決定や、オークション参加者の適格性審査の実施等は首相決定が規定し、審査規定等はMICの省令によって定められる。2014年6月、「無線周波数帯の使用権の競売に関する決定(Decision 835/2014/QD-TTg)」が首相決定され、2300-2400MHz帯、2500-2570MHz帯及び2620-2690MHz帯がオークション対象とされた。

MICは、2016年12月に「通達(Circular 44/2016/TT-BTTTT)」を発行し2600MHz帯(2620-2690MHz/2500-2570MHz)をIMT用とすると決定、更に、2017年6月30日の「通知(Notice No.1412/CTS-HDDG)」により、2600MHz帯の四つのブロックA1(2500-2510MHz、2620-2630MHz)、A2(2510-2530MHz、2630-2650MHz)、B(2530-2550MHz、2650-2670MHz)、C(2550-2570MHz、2670-2690MHz)のオークションを実施するとしたが、入札は実施されておらず、MICは、財務省、法務省、計画投資省等の関係省庁に対し、同帯域のオークションの早期実施のための調整を要請した。

5Gの試験サービスはViettelが2019年1月、MobiFoneが5月、VNPT-Vinaphone が7月に免許され、ハノイ、ホーチミン市等で開始された。期間は1年間とされたが、順次延長された。2021年10月には、MICが5Gの商用に向けた周波数オークションを実施したい旨の発言をしている。

MICは、周波数帯域の有効な利用のため、2022年に2G、3G網の運用停止を目指すとしており、2021年7月に、ベトナム国内で製造される、あるいは輸入される移動体通信端末は、4Gないしそれより後の技術を実装しなければいけない規制を導入した。

3 周波数割当・電波再分配制度

周波数割当は、透明性の高い公開手続により、周波数マスター計画(周波数分配計画、バンドプラン、チャンネルプラン、チャンネル調整)及び技術基準に適合することが求められ、オークション又は比較審査により実施される。周波数マスター計画の策定はMICが行い、首相が承認する。

なお、周波数再編に伴って既存免許の廃止や周波数移転が生じる場合には、損失補償を行うことが規定されている。また、周波数オークションで割り当てられた免許については、周波数の2次取引を認めている。

4 電波監視体制

全国8か所にあるRFDの無線周波数センター(Radio Frequency Center)により実施されている。

5 電波利用料制度

周波数利用料は、周波数の管理、試験、統制及び有害な干渉の取扱いに必要な直接・間接の費用を埋め合わせるために徴収される。周波数利用は、免許が認可される地域の当該周波数帯域の価値、占有帯域幅、カバレッジ、周波数利用密度を勘案して計算される。料額は、随時見直しが行われており、現在は財政省の「通達(Circular 265/2016/TT-BTC)」に示されている。

6 デジタル・ディバイド対策

「無線周波数法」第4条では、遠隔地離島への周波数割当を優先するとしている。

Ⅲ 周波数分配状況

国家周波数分配計画は、MICが首相の承認を得て策定する。国防及び公共安全にかかわる周波数の分配計画は、国防省及び公安省とMICが調整を行う。

最新の2021年の「National Allocation TableDecision No. 38/2021/QD-TTg )」は、以下のURLに掲載されている。

移動体・固定通信への周波数割当(30-30000MHz)は以下のとおりである(2018年12月現在)。